(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078593
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】コンクリート
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20220518BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20220518BHJP
C04B 24/00 20060101ALI20220518BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20220518BHJP
B09B 3/20 20220101ALI20220518BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20220518BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/08 Z
C04B24/00
C04B22/08 B
B09B3/00 301N
B09B3/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189371
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長塩 靖祐
(72)【発明者】
【氏名】丸田 浩
【テーマコード(参考)】
4D004
4G112
【Fターム(参考)】
4D004AA37
4D004BA02
4D004CA15
4D004CA45
4D004CB21
4D004CC03
4D004CC11
4D004CC13
4D004CC15
4D004DA03
4D004DA09
4D004DA10
4D004DA17
4G112PA27
4G112PB07
4G112PB14
(57)【要約】
【課題】フライアッシュを使用した場合においても、凍結融解抵抗性を確保でき、かつ初期及び長期強度が良好に強度発現するコンクリートを提供する。
【解決手段】少なくともフライアッシュ、パラフィン及び亜硝酸塩を含むコンクリートであって、前記フライアッシュは、1~5質量%の未燃カーボンを含有し、且つフライアッシュの化学成分の質量比(SiO2+Al2O3)/CaOが8~58であり、前記パラフィンのコンクリート中の単位量が、0.5~5.0kg/m3であることを特徴とするコンクリート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフライアッシュ、パラフィン及び亜硝酸塩を含むコンクリートであって、
前記フライアッシュは、1~5質量%の未燃カーボンを含有し、且つフライアッシュの化学成分の質量比(SiO2+Al2O3)/CaOが8~58であり、
前記パラフィンのコンクリート中の単位量が、0.65~4.5kg/m3であることを特徴とするコンクリート。
【請求項2】
前記亜硝酸塩のコンクリート中の単位量が、0.5~4.0kg/m3であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート。
【請求項3】
前記パラフィンは、パラフィン粒子が分散したパラフィン分散液であること特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート。
【請求項4】
前記パラフィン分散液は、さらに起泡成分を含むことを特徴とする請求項3に記載のコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュを含むコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減の観点から、製造の際に炭酸ガスを多量に排出するポルトランドセメントに替わって、フライアッシュや高炉スラグ微粉末を混合することにより、その分、製造する際に炭酸ガスの排出量が少ない混合セメントが注目されている。しかし、混合セメントを用いたコンクリートや、フライアッシュ等を混和したコンクリートは、凝結が遅れ早期の強度発現性が低いため、初期の圧縮強度は低下する傾向にある(例えば特許文献1、2)。
また、フライアッシュを使用したコンクリートは、フライアッシュ中の未燃カーボン量の影響によりコンクリート中の空気量の調整が難しくなるため凍結融解抵抗性が低下することが多い。さらに、未燃カーボン量が多いフライアッシュは所要の空気量を確保しても凍結融解抵抗性が低下することがある。このような課題に対して、フライアッシュ含有セメント組成物用空気連行剤が提案されたり(特許文献3)、中空微小球を主体とする耐久性向上材の使用が提案されたりしている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-124136号報
【特許文献2】特開2018-150211号報
【特許文献3】特開平08-295545号報
【特許文献4】特開2006-104026号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フライアッシュを使用した場合においても、凍結融解抵抗性を確保でき、かつ初期及び長期強度が良好に強度発現するコンクリートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決すべく、フライアッシュの成分と添加剤について種々検討を重ねた結果、特定のフライアッシュと特定の添加剤を組み合わせて用いてコンクリートを製造することによって、前記課題が解消できる知見を得て、本発明を完成するに至った。ここでコンクリートとは、セメントペースト、モルタル及びコンクリートを総称するものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕少なくともフライアッシュ、パラフィン及び亜硝酸塩を含むコンクリートであって、前記フライアッシュは、1~5質量%の未燃カーボンを含有し、且つフライアッシュの化学成分の質量比(SiO2+Al2O3)/CaOが8~58であり、前記パラフィンのコンクリート中の単位量が、0.65~4.5kg/m3であるコンクリート。
〔2〕前記亜硝酸塩のコンクリート中の単位量が、0.5~4.0kg/m3である〔1〕のコンクリート。
〔3〕前記パラフィンは、粒子径0.1~1.0μmのパラフィン粒子が分散したパラフィン分散液である〔1〕または〔2〕のコンクリート。
〔4〕前記パラフィン分散液は、さらに起泡成分を含む〔3〕のコンクリート。
ここで、前記「単位量」とは、コンクリート1m3当たりの各成分の含有量を云う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フライアッシュを使用した場合においても、凍結融解抵抗性を確保でき、かつ初期及び長期強度が良好に強度発現するコンクリートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明で使用されるフライアッシュは、石炭の燃焼により発電する火力発電設備から排出されるもののうち、特定の化学組成を有するフライアッシュである。具体的には、未燃カーボンを1~5質量%含有する。且つ、フライアッシュの化学成分の質量比(SiO2+Al2O3)/CaOが8~58である。具体的には、フライアッシュ中の化学成分CaOの含有量(質量%)に対する、SiO2の含有量(質量%)とAl2O3の含有量(質量%)の合量(質量%)の質量比である。このような化学成分を有するフライアッシュであれば、本発明における添加剤と組み合わせることによって、本願発明の効果を確保することができる。また、前記質量比は9~55がより好ましく、10~45がさらに好ましい。
【0008】
フライアッシュの粒度については特に限定されないが、ブレーン比表面積が1500~5000cm2/gのものを用いるのがフレッシュ時の流動性及びコンクリートの強度発現の点で好ましい。また、フライアッシュの混和率は、コンクリート中のセメントに対して、5~30質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましい。ここでフライアッシュの混和率とは、フライアッシュとセメントの合計量に対するフライアッシュの質量比率をいう。
【0009】
本発明で用いるパラフィンは、CnH2n+2(nは、一般的には、20以上の整数)で表される脂肪族飽和炭化水素である。前記パラフィンとしては、例えば固形パラフィン(常温において、半透明ないしは白色の軟らかい固体(蝋状))、流動パラフィン(常温において、無色の液体で非揮発性)、パラフィンが分散した分散液の形態が挙げられる。パラフィン分散液は、μmオーダーの微細なパラフィン粒子が分散しており、コンクリートへの添加(分散)が極めて容易であり、特に好ましい。パラフィン分散液の分散媒としては、一般的には水を主成分とする水性媒体であり、好ましくは水が用いられるが、必要に応じて少量の有機溶媒、例えばアルコール類を含んでいてもよい。パラフィン粒子の大きさとしては、粒子径が0.1~2.0μmが好ましく、0.2~1.0μmがより好ましい。分散液中におけるパラフィンの固形分濃度は、例えば10~50質量%である。
【0010】
パラフィンのコンクリート中の単位量は、0.65~4.5kg/m3である。好ましくは0.7~4.4kg/m3であり、より好ましくは0.9~4.2kg/m3である。単位量が0.65kg/m3未満の場合、本発明が目的とする特長(凍結融解抵抗性)が奏され難い。逆に、4.5kg/m3を超えた場合、スランプの低下が大きくなるとともに、初期強度発現性が損なわれる虞がある。
【0011】
前記パラフィン分散液として用いる場合、パラフィン分散液中には、起泡成分が含まれることが好ましい。起泡成分としては、一般的なコンクリート用起泡剤の主成分として用いられるものが挙げられる。例えば、樹脂酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物の硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ロジン酸塩類等が挙げられる。パラフィン分散液中の起泡成分の量としては、コンクリート中に安定した空気量を確保する観点から、0.1~3.0質量%が好ましい。コンクリートの空気量を調整しようとする場合、後からAE剤を添加して調整する方法があるが、フライアッシュを含むコンクリートを製造する場合は空気量の調整が難しい。予め起泡性成分が含むパラフィン分散液を用いることによって、安定した空気量を保持するコンクリートを簡便に製造することができ、凍結融解抵抗性に優れるコンクリートが得られる。
【0012】
本発明で用いる亜硝酸塩としては、例えば亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ベリリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸亜鉛、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム等が挙げられる。本発明において、好ましい亜硝酸塩は亜硝酸リチウム、亜硝酸カルシウムである。経済的な点からは亜硝酸カルシウムが好ましい。前記亜硝酸塩は、水溶液の形態で用いられることが好ましい。水溶液のものを用いることによって、セメントへの添加(分散)が極めて容易である。溶液中における固形分濃度は、例えば10~60質量%である。
【0013】
亜硝酸塩のコンクリート中の単位量は、初期強度発現性およびスランプ保持性の観点から、0.5~4.0kg/m3であることが好ましい。より好ましくは0.6~3.6kg/m3であり、さらに好ましくは0.8~2.3kg/m3である。
【0014】
本発明で用いるセメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、及びエコセメント等から選ばれる1種以上が挙げられる。
単位セメント量は、好ましくは190~360kg/m3、より好ましくは210~320kg/m3である。単位セメント量が190~360kg/m3の範囲にあれば、高い強度が得られる。
【0015】
本発明で用いる細骨材は、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材等から選ばれる1種以上が挙げられ、粗骨材は川砂利、山砂利、砕石、スラグ粗骨材、及び軽量粗骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、前記粗骨材及び細骨材は、天然骨材のほか、人工骨材や再生骨材を用いることができる。
また、前記細骨材及び粗骨材の単位量は、いずれの骨材も、良好なワーカビリティの観点から、好ましくは500~1100kg/m3、より好ましくは600~1000kg/m3である。
【0016】
本発明で用いる水は、上水道水、下水処理水、及び生コンの上澄み水等の、コンクリートの強度発現性や流動性等に影響を与えないものであれば用いることができる。また、単位水量は、良好なワーカビリティの観点から、好ましくは100~200kg/m3、より好ましくは120~180kg/m3である。
【0017】
本発明におけるコンクリートには、その特長が損なわれない範囲で各種添加剤(材)が併用されても良い。この種の添加剤としては、例えば減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等の分散剤、AE剤、凝結遅延剤、強度促進材、セメント用ポリマー、繊維、発泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0018】
本発明におけるコンクリートは、良好な凍結融解抵抗性を確保でき、かつ良好な初期及び長期強度発現性が得られる。
具体的には、下記のような良好な特性を得ることができる。
(1)凍結融解抵抗性試験おける相対動弾性係数が80%以上であること。
(2)材齢3日、28日及び91日における強度発現性がよいこと。
(3)混練直後から30分経過後も、スランプ保持性に優れること。
従って、本発明によれば、フライアッシュを用いた場合であっても、凍結融解抵抗性に優れたコンクリートを得ることができる。よって、副産物であるフライアッシュを有効利用することが可能となり、環境負荷が低減されたコンクリートを製造することができる。
【実施例0019】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0020】
<フライアッシュ>
本発明で使用したフライアッシュを表1に示す。
化学成分及び未燃カーボン量の異なる数種類のフライアッシュを準備し、(SiO2+Al2O3)/CaOの質量比が所定の水準となるよう混合して調製した。未燃カーボン量の少ない水準については、水中凝集法により未燃カーボン量を一部除去することにより調製し、脱水後乾燥させたものを使用した。逆に未燃カーボン量の多い水準については、未燃カーボンを追加添加して所定の水準とした。
【0021】
【0022】
<使用材料>
フライアッシュ以外に使用した材料について以下に示す。
(1)セメント(記号C):普通ポルトランドセメント、太平洋セメント社製、密度;3.16g/cm3
(2)パラフィン(記号PA):パラフィン分散液(分散媒は水;パラフィン固形分濃度30%)、起泡成分としての樹脂酸塩を含む
(3)亜硝酸塩(記号N):亜硝酸カルシウム水溶液(固形分濃度30%)
(4)粗骨材(記号S):桜川産砕石
(5)細骨材(記号A):掛川産山砂
(6)混和剤:AE減水剤(商品名:マスターポリヒード15S BASFジャパン社製リグニンスルホン酸化合物とポリカルボン酸エーテルの複合体 )
(7)AE剤:商品名:マスターエア202(BASFジャパン社製 変性ロジン酸化合物系陰イオン界面活性剤)
【0023】
上記使用材料を用いて、コンクリートを製造した。コンクリート配合を表2に示す。なお、表のPA及びAの単位量は、それぞれパラフィン分散液及び亜硝酸カルシウム水溶液の単位量である。[ ]内にパラフィン及び亜硝酸カルシウムとしての単位量を示す。また、記号Pは結合材を表し、ここではセメント(C)とフライアッシュ(FA)の合量を表す。
【0024】
【0025】
<評価試験>
実施した評価試験を以下に記す。
(1)凍結融解抵抗性試験:JIS A 1148に準拠し、コンクリートの凍結融解作用に対する抵抗性を評価した。
(2)圧縮強度:JIS A 1108に準拠し、材齢3,28及び91日における圧縮強度を測定した。
(3)スランプ:スランプはJIS A 1101に準拠し、練混ぜ直後及び30分後のスランプを測定した。
【0026】
<試験結果>
試験結果を表3に示す。
実施例1~20は相対動弾性係数が80%を超え、30分後のスランプ低下が小さくスランプ保持率が85%以上あり、材齢3日強度、材齢28日強度及び材齢91日の強度発現も良好である。
一方、(SiO2+Al2O3)/CaOの質量比が5と小さい比較例1及び2は、実施例と比較して材齢91日強度が低く、また30分後のスランプ低下が大きくスランプ保持率85%未満となっている。逆に(SiO2+Al2O3)/CaOの質量比が60と大きい比較例3及び4は、実施例と比較して材齢3日強度が低く、また30分後のスランプ低下が大きくスランプ保持率85%未満となっている。
未燃カーボン量が6質量%と多い比較例5及び6は、実施例と比較して相対相対動弾性係数が小さく80%未満である。逆に未燃カーボン量が0.5質量%と少ない比較例7も、実施例と比較して相対動弾性係数が小さく80%未満である。
比較例8~11は、パラフィンの単位量が本発明の範囲外の比較例である。パラフィン混和量が少ない比較例8、10は、相対動弾性係数が小さく70%未満である。一方、パラフィン単位量が多い比較例9、11は、材齢3日強度が低く、また30分後のスランプ低下が大きくスランプ保持率80%未満となっている。
【0027】