(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007860
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】蓋部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 83/08 20060101AFI20220105BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B65D83/08 B
A47K7/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161547
(22)【出願日】2020-09-26
(62)【分割の表示】P 2020137162の分割
【原出願日】2020-08-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019200328
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019203588
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019211882
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019212009
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020012014
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020025686
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020087772
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020135463
(32)【優先日】2020-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520034174
【氏名又は名称】高野 朗
(72)【発明者】
【氏名】高野 朗
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014LB02
3E014LB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】閉蓋時における密閉性を十分確保することができ、かつ強度に優れた蓋部材の製造方法を提供する。
【解決手段】包装体内に収納された内容物の乾燥を抑制するために前記包装体の開口部に設けられる、紙系素材よりなる基部及び前記基部に対して開閉可能な蓋部とを有する蓋部材の製造方法であって、紙系素材よりなる原反材料から、少なくとも前記蓋部及び前記基部を構成するための蓋部材形成体を打ち抜き加工する工程と、前記蓋部材において前記蓋部となる蓋部形成部、及び前記基部となる基部形成部をプレス成形するプレス工程とを有し、前記プレス工程は、前記蓋部材形成体の周縁部を、前記周縁部よりも内側の部分を押圧する力よりも弱い力で押圧して前記蓋部材形成体を支持し、前記周縁部よりも内側の部分を深絞り成形する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装体内に収納された内容物の乾燥を抑制するために前記包装体の開口部に設けられる、紙系素材よりなる基部及び前記基部に対して開閉可能な蓋部とを有する蓋部材の製造方法であって、
紙系素材よりなる原反材料から、少なくとも前記蓋部及び前記基部を構成するための蓋部材形成体を打ち抜き加工する工程と、
前記蓋部材において前記蓋部となる蓋部形成部、及び前記基部となる基部形成部をプレス成形するプレス工程とを有し、
前記プレス工程は、
前記蓋部材形成体の周縁部を、前記周縁部よりも内側の部分を押圧する力よりも弱い力で押圧して前記蓋部材形成体を支持し、前記周縁部よりも内側の部分を深絞り成形することを特徴とする蓋部材の製造方法。
【請求項2】
前記蓋部材形成体は、前記蓋部形成部と前記基部形成部との間にヒンジ部形成部を有し、
前記ヒンジ部形成部に折り曲げ部を形成した後に前記プレス加工を行う請求項1記載の蓋部材の製造方法。
【請求項3】
前記原反材料に吸湿処理を行った後に前記プレス加工を行う請求項1記載の蓋部材の製造方法。
【請求項4】
前記プレス工程の前に、前記蓋部が前記基部と閉蓋する状態を維持するための閉止手段を形成する請求項1記載の蓋部材の製造方法。
【請求項5】
取出口が開口した蓋部材の形成部材を形成した後、複数の前記形成部材を重ねた状態で少なくとも前記形成部材の取出口端縁部に耐水処理が行われる請求項1記載の蓋部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布などで形成された基布に薬液等を含浸させて形成されているウェットシート等の清拭シートを袋体や箱体等に収容した包装体が従来から知られている。一般に、清拭シートは、複数枚重ねた状態で収容されており、袋体等に形成されている開口部から取り出すことができるように構成されている。開口部は、通常は蓋部材によって閉じられており、清拭シートを取り出す時などに開かれる。
【0003】
蓋部材としては、例えば下記に示す特許文献1において開示されているように、袋体等の開口部を、シール部材により開閉する簡易なものが知られている。しかしながら、特許文献1に開示されているシール部材は、再剥離可能なシールを用いて形成されてはいるものの、貼付の動作と剥離の動作を何回も行っているうちにだんだんと接着力が弱くなって袋体等にも貼り付きにくくなるために密閉性が低下しやすいという問題があった。また、このシール部材は、特に袋体に用いられる場合、該袋体に収容されている清拭シートの量の減少に伴って開口部周辺にも皺が寄りやすくなり、シール部材を貼り付ける際に該シール部材と袋体との間に隙間が生じやすく、密閉性を維持することが困難であるといった問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、近年は、下記に示す特許文献2において開示されている、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった熱可塑性の合成樹脂材料を用いて形成された包装体用の蓋部材が従来から知られている。特許文献2において開示されている蓋部材は、収容物に取り付けられる基盤部、この基盤部に開口形成された口部、基盤部に対して開閉される蓋部を備えており、包装体の開口部と蓋部材における基盤部の口部とが同じ位置となるように包装体に貼り付けて用いられる。この蓋部材は、通常は蓋部が閉蓋し、清拭シートを取り出す場合のような使用時には蓋部を開蓋可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-016883号公報
【特許文献2】実用新案登録第3207763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献2に開示されている蓋部材は、プラスチック材料等を用いて形成されているため、近年積極的に行われている環境問題への取り組みに反するといった問題があった。一方、環境にやさしいと言われる生分解性プラスチック材料も種々開発されており、生分解性プラスチック材料を用いることで環境に配慮した蓋部材を製造することも可能となりつつある。しかしながら、生分解性プラスチック材料は、従来から広く用いられているプラスチック材料と比べると高価であり、使用量が増えるとそれだけ製造コストも増加する。特に、上記した包装体用等として用いる蓋部材は市場の流通量が著しく多いため、蓋部材1個当たりの製造コストの増加はわずかであったとしても、大量の蓋部材となった場合における製造コストの増加は莫大なものとなる。そのため、環境問題への対応策として高価な生分解性プラスチック材料を蓋部材に用いることは、現在のところ現実的とは言い難かった。
【0007】
このような問題を解決するためには、蓋部材に紙材料を利用することも考えられる。しかしながら、紙材料は、プラスチック材料のように、自由な成形加工を行うことが難しいため、紙材料を用いて密閉性の高い蓋部材を安価に提供することが容易ではないという問題を有している。このような問題を解決するためには、紙厚を厚くしたり、蓋部材の成形工程を何回かに分けて行ったり、別体の部材を接合したりする方法も考えられる。しかし、このような方法は、蓋部材の構造が複雑になって原料コストや製造コストが増加したり、製造工程が増加することで製造効率が低下し、製品コストが高くなる等の問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、紙材料を用いて閉蓋時における密閉性を十分に確保することができ、かつ強度に優れた環境にやさしい蓋部材を安価に提供すること、及びこのような蓋部材の品質を維持しつつ、製造効率を向上させることのできる蓋部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願に係る発明者は、これら従来技術が有する各種の問題点に鑑み、鋭意検討した。その結果、環境への配慮をするために原材料として紙材料を用いつつ、合成樹脂成形体で形成された蓋部材のような優れた密閉性を有し、かつ全体的な強度に優れ、形状の変化や崩れを生じ難く、さらには耐水・耐薬品性にも優れた蓋部材を安価で実現し得ることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明に係る蓋部材の製造方法は、
(1)包装体内に収納された内容物の乾燥を抑制するために前記包装体の開口部に設けられる、紙系素材よりなる基部及び前記基部に対して開閉可能な蓋部とを有する蓋部材の製造方法であって、紙系素材よりなる原反材料から、少なくとも前記蓋部及び前記基部を構成するための蓋部材形成体を打ち抜き加工する工程と、前記蓋部材において前記蓋部となる蓋部形成部、及び前記基部となる基部形成部をプレス成形するプレス工程とを有し、前記プレス工程は、前記蓋部材形成体の周縁部を、前記周縁部よりも内側の部分を押圧する力よりも弱い力で押圧して前記蓋部材形成体を支持し、前記周縁部よりも内側の部分を深絞り成形することを特徴とする蓋部材の製造方法、
(2)前記蓋部材形成体は、前記蓋部形成部と前記基部形成部との間にヒンジ部形成部を有し、前記ヒンジ部形成部に折り曲げ部を形成した後に前記プレス加工を行う上記(1)記載の蓋部材の製造方法、
(3)前記原反材料に吸湿処理を行った後に前記プレス加工を行う上記(1)記載の蓋部材の製造方法、
(4)前記プレス工程の前に、前記蓋部が前記基部と閉蓋する状態を維持するための閉止手段を形成する上記(1)記載の蓋部材の製造方法、
(5)取出口が開口した蓋部材の形成部材を形成した後、複数の前記形成部材を重ねた状態で少なくとも前記形成部材の取出口端縁部に耐水処理が行われる上記(1)記載の蓋部材の製造方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る蓋部材は、閉蓋時に基部の取付部から立ち上がる立ち上がり壁の外壁と、
蓋部の内壁との間に接触部が形成されるようにしたことで、接触部における立ち上がり壁
と蓋部の内壁との間での密閉性を大きく向上させることができ、閉蓋時に蓋部材によって
高い密閉性を保って、閉蓋した状態を維持することのできる蓋部材を提供することができ
る。
【0012】
また、本発明に係る蓋部材は、閉蓋時に立ち上がり壁上端側の被押圧部に、蓋部が押圧
力を付与して閉蓋状態が維持されるようにしたため、閉蓋状態が保持されている間は蓋部
と基部との間における密閉性を大きく向上させることができ、蓋部材の気密性、ひいては
蓋部材が取り付けられた包装体の気密性を保持することが可能になる。また、閉蓋状態の
保持が解除されたときは、蓋部が被押圧部から開蓋する方向への力を付与されるので、煩
雑な操作をすることなく簡単に開蓋させることができ、開蓋時における取扱性も向上させ
ることが可能になる。
【0013】
このような蓋部材は、使用者が片手で蓋部の開蓋及び閉蓋を行えることが望まれている
ところ、本発明に係る蓋部材は、蓋部を片手で閉蓋方向に回動させるといった簡単な操作
によって蓋部の開閉をすることができるため、包装体に取り付けられた蓋部材の蓋部の開
蓋、内容物の取出、蓋部の閉蓋といった一連の動作をストレスなく行うことができ、使用
者の利便性を向上させることができる。
また、本発明に係る蓋部材は、密閉性も優れているため、例えばウェットシート等とい
った各種の内容物の乾燥を抑制することができる。しかして、本発明に係る蓋部材は、環
境にやさしい安価な紙材料よりなる蓋部材でありながら、密閉性に優れ、収納された内容
物の乾燥を効果的に抑制することができ、使用後の廃棄時における包装体と蓋部材との分
別といった煩わしさも低減することのできる蓋部材を提供することができる。
【0014】
さらに本発明に係る蓋部材の製造方法によれば、優れた蓋部材をプレス成形によって低
コストで効率よく製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る蓋部材の第1の実施の形態を包装体に適用した例を示す外観斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る蓋部材の外観斜視図であり、
図2(a)は閉蓋時における蓋部材の外観斜視図、
図2(b)は開蓋時における蓋部材の外観斜視図である。
【
図3】本実施の形態に係る蓋部材の外観図であり、
図3(a)は蓋部材の正面図、
図3(b)は蓋部材の側面図である。
【
図4】本実施の形態に係る蓋部材の閉蓋時における断面図である。
【
図5】本実施の形態に係る蓋部材の開蓋時における断面図である。
【
図6】本実施の形態に係る蓋部材の非湿潤処理の態様を説明するための説明図である。
【
図7】本実施の形態に係る蓋部材の作用効果を説明するための説明図である。
【
図8】本実施の形態に係る蓋部材の作用効果を説明するための説明図である。
【
図9】本実施の形態に係る蓋部材の作用効果を説明するための説明図であり、
図9(a)は蓋部材をスタッキングした状態で正面側から見た断面図、
図9(b)は蓋部材をスタッキングした状態で側面側から見た断面図である。
【
図10】本発明に係る蓋部材の第1の製造方法を説明するための説明図である。
【
図11】本発明に係る蓋部材の第2の製造方法を説明するための説明図である。
【
図12】本発明に係る蓋部材の第3の製造方法を説明するための説明図である。
【
図13】本発明に係る蓋部材における蓋部材形成体を深絞り成形する際の工程を説明する説明図である。
【
図14】非吸湿処理を行う方法を説明するための説明図である。
【
図15】非湿潤処理を行う方法を説明するための説明図である。
【
図16】非湿潤処理を行う方法を説明するための説明図である。
【
図17】非湿潤処理を行う方法を説明するための説明図である。
【
図18】本発明に係る蓋部材の好ましい態様を説明するための説明図である。
【
図19】本発明に係る蓋部材におけるフランジ部の変更例を説明するための説明図である。
【
図20】本発明に係る蓋部材の別の態様を表す断面図である。
【
図21】本発明に係る蓋部材のさらに別の態様の断面構成等を表す説明図である。
【
図22】本発明に係る蓋部材のさらに別の態様を表す断面図である。
【
図23】本発明に係る蓋部材の別の態様を表す外観斜視図であり、
図23(a)は閉蓋時、
図23(b)は開蓋時の状態を表した図である。
【
図25】本発明に係る蓋部材の別の態様を表す外観斜視図であり、
図25(a)は閉蓋時、
図25(b)は開蓋時の状態を表した図である。
【
図26】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図27】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図28】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図29】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図30】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図31】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図32】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図33】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図34】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図35】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図36】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図37】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図38】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図39】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図40】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図41】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図42】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図43】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図44】係止部及び係止受け部を形成する方法を説明するための説明図である。
【
図45】係止部及び係止受け部を形成する方法を説明するための説明図である。
【
図46】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図47】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図48】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図49】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図50】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図51】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図52】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図53】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図54】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図55】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図56】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図57】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図58】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図59】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図60】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図61】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図62】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図63】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図64】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図65】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図66】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図67】閉止手段の別の態様を説明するための説明図である。
【
図68】蓋部材の別の態様を説明するための説明図である。
【
図69】蓋部材の別の態様を説明するための説明図である。
【
図70】蓋部材の別の態様を説明するための説明図である。
【
図71】蓋部材の別の態様を説明するための説明図である。
【
図72】蓋部材の別の態様を説明するための説明図である。
【
図73】蓋部材の別の態様を説明するための説明図である。
【
図74】蓋部材の別の態様を説明するための説明図である。
【
図75】蓋部材の別の態様を説明するための説明図である。
【
図76】本発明に係る蓋部材を容器の蓋として適用した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る蓋部材の第1の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本明細書では、蓋部材を用いる対象物として各種の包装体、より具体的には、ウェットティッシュのような清拭シートなどの清浄用物品を内容物として収容する包装体とし、この包装体に対して本発明に係る蓋部材を適用した例を用いて説明するが、蓋部材を適用可能な対象物は、このような清浄用物品を収容した包装体に限定されるものではない。また、包装体の内容物としては、上記したウェットタイプのもののほか、いわゆるドライタイプの清浄用物品や清掃用品であってもよい。また、包装体において内容物を収容する収容物は、袋体や箱体その他の内容物を収容可能なものであればいずれでもよい。
【0017】
図1に示すように、本発明に係る蓋部材1は、包装体101に収納された内容物である清拭シート(複数の清拭シートを積層させた積層体103を含む)の乾燥を抑制する等をするためのものであり、包装体101の開口部(図示せず)に接合して設けられる。接合の方法としては、ホットメルト等のような各種接着剤による接合、ヒートシール等による接合、超音波接合、高周波接合、低周波接合、熱融着による接合など、従来から公知の接合方法を任意に採用してよい。
【0018】
包装体101は、収容物としての袋体102及び積層体103を有しており、袋体102の内部に積層体103が収容されている。袋体102は、開口部(図示せず)を備えている。開口部は、使用前の状態では気密性を有するフィルムやシートからなるシール体(図示せず)で密封されており、使用するときに使用者がこのシール体を取り除くことにより、開口するようになっている。袋体102は、気密性を有するプラスチックシートやフィルム等の端部をヒートシール等によりシールした、ピロー形状の袋状に形成されている。袋体102は、気密性素材よりなり、たとえば内層と外層とからなる2層構成の積層体で構成されている。
【0019】
内層には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、セロハンの1種又は2種以上の積層体や、さらにアルミ箔を積層してなる複合体が用いられている。また、外層には、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が用いられている。なお、本明細書においては、袋体102の例として、上記した内層及び外層の2層から構成されている例を用いて説明したが、袋体102の構成は上記したものに限定されず、例えば3層以上を有する多層のものであってもよいし、1層のみからなる単層のものであってもよい。また、内層及び外層に用いられる材料としては、上記したものに限定されず、他の材質のものを任意に選択して用いてよい。
【0020】
積層体103は、清拭シートを複数積層して形成されている。清拭シートは、例えば不織布などで形成された基布に薬液等を含浸させて形成されているシート状物である。清拭シートの積層の仕方や折り方、また清拭シートを用いて積層体103を形成する積層方法は従来から知られている種々の態様から任意に選択して採用してよい。また、積層体103は、上記したウェットタイプの積層体のみならず、薬液等が基布に含浸していないドライタイプの積層体であってもよい。
【0021】
次に、蓋部材1の構成について、
図2から
図5に基づいて説明する。
図2は、本実施の形態に係る蓋部材1の外観構成を示す外観斜視図であり、
図2(a)は閉蓋状態、
図2(b)は開蓋状態を表している。
図3は、蓋部材1の外観図であり、
図3(a)は蓋部材1の正面図、
図3(b)は蓋部材1の側面図である。
図4は、蓋部材1の閉蓋状態での断面図であり、
図5は蓋部材1の開蓋状態での断面図である。
【0022】
蓋部材1は、蓋部2、基部3及びヒンジ部4を備えており、蓋部2及び基部3がヒンジ部4を介して一体に連結されて構成され、開蓋及び閉蓋が可能に形成されている。なお、
図2では、これら蓋部2、基部3及びヒンジ部4が一体成形されている例を示しているが、別体の蓋部2、基部3、ヒンジ部4を介して一体に連結してもよい。また、蓋部2又は基部3のいずれか一方にヒンジ部4が一体的に形成されており、このヒンジ部4を蓋部2又は基部4のいずれか他方と接合して、蓋部2と基部3とを、ヒンジ部4を介して一体に連結されていてもよい。さらには、蓋部2及び基部3のいずれにもヒンジ部形成部が一体的に形成されており、蓋部2側のヒンジ部形成部と基部3側のヒンジ部形成部とを接合してヒンジ部4とし、蓋部2と基部3とが、ヒンジ部4を介して一体に連結されていてもよい。なお、蓋部材1の製造のしやすさ等の観点から、蓋部材1は、蓋部2、基部3及びヒンジ部4が一体成形されていることが好ましい。また、
図2等にも示すように、本明細書における蓋部材1は楕円形状をなしており、この態様のものを用いて説明するが、蓋部材1の形状は楕円形状に限定されるものではなく、他の形状、例えば円形状や角形状であってもよいし、それ以外の従来から公知となっている種々の形状であってもよい。
【0023】
本発明の蓋部材1は、パルプ系素材より形成され、蓋部2、基部3、ヒンジ部4をパルプ系素材の原材料から一体成形して得ることができる。また、本発明の蓋部材1において、別体の蓋部2と基部3とをヒンジ部4を介して一体に連結形成する場合には、すべてがパルプ系素材で形成されていなくてもよいが、この場合には少なくとも蓋部2、基部3はパルプ系素材で形成されていることが好ましい。
【0024】
パルプ系素材は、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ等のパルプを主体とするもので、パルプを好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上含むもの、特にパルプ100%からなるものが好ましい。パルプ系素材におけるパルプ以外の素材としては、非パルプ系の天然繊維や合成繊維、再生繊維等が挙げられる。パルプ系素材としては、パルプ系繊維原料のスラリーを網状に抄き取り、乾燥ないし押圧乾燥、抄紙してシート状にして得られるいわゆる紙や、粉砕パルプ等の開繊繊維原料を空気流によって積繊し、積繊体の繊維をバインダーで固定して得られるいわゆるパルプ系エアレイド等やこれらを複数枚積層したもの等、更には紙やパルプ系エアレイドと、合成樹脂や天然樹脂のフィルムや樹脂繊維の不織布等の樹脂材料、アルミ箔等の金属系素材、木箔等の木質系素材等の他の素材との複合材料も用いることができるが、複合材料の場合、パルプを50%以上含むことが好ましい。
【0025】
パルプ系素材に用いられるパルプは、赤松、トド松、エゾ松、ダグラスファー、ヘムロック、スプルース等の針葉樹パルプ、ブナ、ナラ、カバ、ユーカリ、ポプラ、アルダー等の広葉樹パルプ、針葉樹パルプと広葉樹パルプの混合物等の木材パルプ、ケナフ、バガスパルプ、タケパルプ、シリアルパルプ、ワラパルプ、アバカパルプ、木綿パルプ等の非木材パルプ、古紙パルプ等を用いることができる。また、粉砕パルプとしては、パルプ系繊維からなる原料シートを粉砕機で粉砕して得られるものが挙げられる。
【0026】
紙材料は、多数の繊維の集合体により構成されている。針葉樹パルプは、粉砕後においても広葉樹パルプに比べて繊維長が長い。そのため、針葉樹パルプより得た粉砕パルプを用いた紙材料は、繊維相互の絡み具合が高まり、その結果、強度が向上する。紙材料は、液透過性を有する繊維により形成されるが、パルプ紙又はパルプを主原料とする繊維が好ましい。紙材料に用いる繊維は、パルプの配合が50%以上であることが好ましい。パルプの配合が50%以上の繊維により紙材料を形成する場合、紙材料の柔軟性を全体的に向上させたり、製造時の生産効率を向上させることができる。また、パルプの配合を高くすることにより、この紙材料を用いて形成される蓋部材が水中や土中、空中のいずれかにおいて分解されやすく、環境負荷をより低減し、環境面に対する配慮をより向上させることができる。
【0027】
蓋部材1を形成するためのパルプ系素材は、複数層重ねて形成する場合には、それぞれの材料の厚さや材料等は同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。また、パルプ系素材としては、目付量が300g/m2から1000g/m2の厚紙を用いることが好ましく、400g/m2から900g/m2の厚紙を用いることが好ましい。パルプ系素材として用いられる紙系素材である紙材料は、1枚の厚紙から構成してもよく、目付量が200g/m2から500g/m2の厚紙を複数枚張り合わせて、上記した目付量としたものでもよい。パルプ系素材として厚紙を用いる場合、厚紙の目付量が300g/m2よりも少ないと、蓋部材1としての剛性を十分に確保することが難しくなり、一方で厚紙の目付量が1000g/m2よりも多いと、材料費が高くなり製造コストが増加する。それに加えて、蓋部材1を製造する際に、厚紙に対する穴あけ加工や折り加工といった、種々の加工を施すことも難しくなる。
【0028】
蓋部材1は、パルプ系素材に打ち抜き、プレス加工等を施して製造することができる。プレス加工することにより、パルプ系素材により成形された蓋部材1の全体的な強度を確保することができる。また、厚さが薄い紙材料を複数枚重ね合わせてプレス加工することにより貼り合わせたものであると、紙の繊維の並ぶ方向を比較的面方向に沿った方向へと向けることが可能であるため、より一層、紙材料の強度を向上させることができる。
【0029】
蓋部材1に用いるパルプ系素材としては、予めコート層を設けたコート紙等の耐水紙を用いるか、パルプ系素材の片面又は両面にコート層を設けたり、あるいはコート紙等の片面又は両面に更にコート層を設けて耐水性を更に向上させたものを用いることが好ましい。耐水性を向上させるためのコート層は、パルプ系素材のいずれか一方の面に有していてもよいが、水分等の液体に対するパルプ系素材の耐久性、この素材を用いて形成された蓋部材1の強度を維持するとともに耐久性を向上させる観点から、耐水性を向上させるためのコート層は両面に有することが好ましい。
【0030】
コート層は、フィルムを貼着したり、塗工剤を塗布する等により形成することができる。コート層を形成するフィルムとしては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルシアノアクリレート、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、エステル化デンプン等のデンプン系樹脂、酢酸セルロース、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコ―ル、ポリグリコール酸、キトサン/セルロース/デンプン、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等の天然分解性樹脂や天然分解性樹脂混合物;天然分解性バイオマス樹脂や天然分解性バイオマス樹脂の混合物;フッ素樹脂、シリコーン樹脂、紫外線硬化樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、アクリル-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等、上記樹脂を構成するモノマーの共重合体、天然樹脂、パラフィン、ゼラチン、セロファン、ポリメチルペンテン等からなるフィルムを用いることができる。これらの中でも、天然分解性樹脂、天然分解性バイオマス樹脂、天然樹脂等の天然分解性樹脂フィルムが好ましく、疎水性の高いものがより好ましい。
【0031】
コート層を形成するための塗工剤としては、上記合成樹脂、天然分解性樹脂、天然分解性バイオマス樹脂、天然樹脂、さらには松ヤニ、漆、コハク、ゼラチン、カゼイン、鼈甲、キチン、キトサン、牡蠣、ガム等天然高分子類の溶液や分散液からなる塗料、例えば水系インクをはじめとする各種のインク等が挙げられる。
【0032】
塗工剤を塗布する方法としては、スプレーコート、ロールコート(リバースロールコート、正回転ロールコートなど)、ナイフコート、ダイコート、スロットオリフィスコート、エアドクタコート、キスコート、ブレードコート、キャストコート、スピンコート、押出コート、ホットメルトコート、オフセットコート等が挙げられるが、フレキソコート、グラビアコート、スクリーンコート、オフセットコートが好ましく、グラビアコート、フレキソコートがより好ましい。塗工剤を塗布してコート層を形成する場合、蓋部材1の耐水性とリサイクル性の面から、塗工剤の塗布量は、固形分換算で2g/m2から30g/m2であることが好ましく、4g/m2から20g/m2であることがより好ましい。
【0033】
コート層を形成するフィルムとしては、単層フィルムでも複層フィルムでもよく、塗工剤も1種類を塗工するのみならず、2種類以上の塗工剤を重ね塗工してもよい。フィルムや塗工剤は、デンプン系樹脂、ポリ乳酸等の天然分解性樹脂や天然分解性樹脂混合物を用いることが好ましく、環境負荷を少なくすることもできる。なお、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等でも、40%程度の含有量であれば天然分解性を有する。なお、本明細書における「天然分解性」とは、空中、土中、水中のいずれかにおいて、微生物、紫外線、気候の変化等によって分解される性質をいう。この天然分解性を有するものを蓋部材1に用いることにより、環境負荷を大きく低減することができる。特に、蓋部材1は、一般に市場の流通量が著しく多いため、天然分解性を有する材料で該蓋部材1を形成することは、環境負荷を大きく低減し、環境問題への貢献の度合いも飛躍的に大きなものとなる。
【0034】
図2に示すように、蓋部2は、基部3に対して開蓋及び閉蓋することができるように構成されている。この蓋部2は、膨出部5及び外周部6を備えており、膨出部5の外周縁に外周部6が該膨出部5の周囲を囲むようにして形成されている。これら膨出部5及び外周部6は、蓋部材1を形成するための形成部材をプレス成形して折り曲げ形成することにより、一体的に形成することができる。
【0035】
膨出部5は、側壁部7及び天蓋部8を有している。これら側壁部7及び天蓋部8は、プレス成形により蓋部2を形成する際に、外周部6とともに一体的に形成されている。側壁部7は、一端側が外周部6と連続的に形成され、他端側が天蓋部8と連続的に形成されており、これら外周部6と天蓋部8との間において、上方に向けて立ち上がり形成するように構成されている。また、この側壁部7は、下部に位置する外周部6側寄りの大きさ(径)よりも、上部に位置する天蓋部8側寄りの大きさ(径)の方が小さくなるように、上方に向かって先細り状に傾斜形成されている。例えば、
図2等において示しているように、側壁部7は、外周部6側寄りの下部から天蓋部8寄りの上部に向けて先細り状、すなわちテーパ状となるように形成されている。なお、
図2等においては、側壁部7は全体的に上記した先細り状に形成されているが、先細り状に形成する態様は上記したものに限定されない。例えば、側壁部7は、該側壁部7が下部から上部へ行くにつれて曲面状に形成され、側壁部7全体として先細り状に形成されていてもよく、また側壁部7が下部から上部へ行くにつれて全体的に先細る階段状に形成されていてもよい。また、これら以外の形状絵側壁部7全体として先細り形状となるように形成されていてもよい。
【0036】
また、側壁部7は、該側壁部7の全体が先細り状に形成されていることには限定されず、側壁部7の一部のみが下部から上部に向けて先細るテーパ状に形成されていてもよいし、また側壁部7の大部分が下部から上部に向けて先細るテーパ状に形成されているのに対し、側壁部7の一部のみがテーパ形状を有しないように形成されていてもよい。さらには、側壁部7を上記した先細るテーパ状に形成する場合には、そのテーパ角度は、下部から上部に向けて一定の角度である必要はなく、下部から上部へと行く間の所定位置においてテーパ角度が異なるように任意に変更して形成してもよい。また、これら以外の形状を有するように形成してもよい。
【0037】
天蓋部8は、側壁部7の上端部に形成されている蓋状の部材である。上記した通り、天蓋部8は、側壁部7とともにプレス成形等によって一体的に形成されていることが好ましいが、側壁部7と別体として形成してもよい。
図2に示すように、本実施の形態では、天蓋部8が平板状に形成されている。
【0038】
膨出部5において、側壁部7は、該側壁部7の内側の壁を構成する内壁9に内壁面10が形成されている(以下においては、内壁9と言った場合には内壁面10も含むものとして説明する)。また、膨出部5は、側壁部7と連接形成された天井壁11が該天蓋部8の内側の壁を構成するように形成されており、この天井壁11には天井面12が形成されている。内壁9は、閉蓋時に、基部3に形成されている囲繞状壁13の外壁14及び外壁面15(以下においては、外壁14と言った場合には外壁面15も含むものとして説明する)と接触することができるように形成されている。なお、ここでの内壁9(内壁面10)と外壁14(外壁面15)との接触は、内壁面10と外壁面15とが全体的に接触している場合を含むほか、内壁9と外壁14とが部分的に接触する場合も含む。ここで、内壁9と外壁14とが「全体的に接触する」とは、内壁9における内壁面10と外壁14における外壁面15とが全体的に面接触していることを意味する。また、内壁9と外壁14とが「部分的に接触する」とは、内壁面10と外壁面15とが全体的に面接触していないものの、内壁9及び外壁14同士が部分的に接触していることを意味する。なお、この部分的に接触するのは種々の態様があり、例えば内壁9及び外壁14同士が一部で面接触していたり、線接触や点接触している態様や、内壁9及び外壁14に突出状物(例えば
図2等に示すような第1突出部18や第2突出部19)を突出させる等して、接触させたりする態様、これら以外の態様をも含む。
【0039】
図2等に示すように、蓋部2における膨出部5の内壁9と、基部3における囲繞状壁13の外壁14とは、内壁9が外壁14に沿うような相似形状に形成されており、蓋部2が基部3に対して閉蓋したときに、膨出部5の内壁9が囲繞状壁13の外壁14に嵌まるように構成されている。すなわち、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、膨出部5及び囲繞状壁13における高さ方向での任意の高さの地点において、膨出部5の内壁9の長径側の内径をD1、短径側の内径をD2とし、囲繞状壁13の外壁14の長径側の外径をd1、短径側の外径をd2とすると、それぞれD1(又はD2)とd1(又はd2)との関係はほぼ等しいか、又はD1(又はD2)がd1(又はd2)よりも大きい関係(すなわちD1>d1(D2とd2の場合にはD2>d2)の関係)となるように形成されていることが、閉蓋時に膨出部5の内壁9と囲繞状壁13の外壁とが緊密に接触し、密閉性が向上するため好ましい。また、閉蓋時における蓋部2と基部3との密閉性を向上させるといった観点からは、上記したD1とd1及びD2とd2の関係は、D1=d1,D2=d2となり、それぞれD1とd1が等しく、D2とd2とが等しくなるように形成することが好ましい。膨出部5の内壁9と囲繞状壁13の外壁14との関係を上記した通りに形成することにより、これら膨出部5の内壁9と囲繞状壁3の外壁14との間に接触部16が形成されて全体的に接触する状態を形成することが可能になり、蓋部2が取出口27を閉止することができるとともに、蓋部2と基部3との密閉性、ひいては蓋部材1の閉蓋時における密閉性をより高く向上させることができる。なお、内壁9と外壁14とが部分的に接触している場合においても、これら内壁9と外壁14とが密閉性を有する状態で接触しているため、やはり閉蓋時における蓋部2と基部3との密閉性、そして蓋部材1の閉蓋時における密閉性をより高く向上させることができるようになっている。
【0040】
なお、
図2から
図5において示す蓋部材1のように、蓋部2と基部3とにおいて内壁9と外壁14とが部分的に接触する場合においては、蓋部2において第1突出部18が内側に突出する突出端までの寸法がD2となり、基部3において第2突出部19が外側に突出する突出端までの寸法がd2となる。そして、これらD2とd2との関係が、d2≦D2となるように構成される。このように、蓋部2の内壁9と基部3の外壁14とが部分的に接触している場合においても、閉蓋時における密閉性を向上させることができるようになっている。
【0041】
また、蓋部2において、内壁面10と天井面12とにより囲まれた部分には、
図4に示すように閉蓋時に基部3の囲繞状壁13が収容される空間部17が形成されている、この空間部17は、閉蓋時に基部3に形成された囲繞状壁13が収容可能な大きさであれば任意に決定してよいが、閉蓋時に密閉性を向上させるといった観点からは、空間部17の容積は閉蓋時に囲繞状壁13を包み込むことができる大きさであることが好ましく、この際に内壁9と外壁14との接触面積が大きくなるように形成することが好ましい。
【0042】
また、蓋部2において、膨出部5の内壁9においては、囲繞状壁13の外壁14と重なる重なり部分に、耐水性を有する塗工剤が塗布されて、摩擦力向上措置が施されていることが好ましい。この摩擦力向上措置は、少なくとも内壁9と外壁14とが重なる重なり部分において、閉蓋時にこれら内壁9と外壁14との間で生じる摩擦力を向上させることのできる措置であればよく、例えばこれら内壁9の内壁面10と外壁14の外壁面15との少なくともいずれかを、表面に微細な凹凸等を形成すること等により非光沢面にすることなどが挙げられる。この場合、内壁面10と外壁面15との少なくともいずれかを非光沢面として形成することにより、内壁面10と外壁面15との間における摩擦抵抗力を大きくすることができ、閉蓋時における蓋部2の密閉性をさらにより向上させることができる。
【0043】
この摩擦力向上措置として非光沢面とすることは、蓋部材1の全体であることが好ましいが、蓋部2の膨出部5と基部3の囲繞状壁13との少なくともいずれかが非光沢面であることが好ましく、さらには膨出部5と囲繞状壁13のうち、囲繞状壁13における外壁14の外壁面15と、膨出部5における側壁部7の内壁9の内壁面10とが少なくとも非光沢面であることが好ましく、さらには膨出部5と囲繞状壁13のうち、内壁9の内壁面10と外壁14の外壁面15の少なくともいずれかが非光沢面であることが好ましい。
【0044】
また、蓋部2のヒンジ部4と相対向する側の側壁部7の内壁9には、閉蓋状態を保持するための閉止手段として第1突出部18が形成され、基部3の囲繞状壁13には、第1突出部18と係合可能な第2突出部19が形成されている。この第1突出部18は、閉蓋時に第2突出部19と上下に噛み合って蓋部2による閉蓋状態を維持することのできる位置に設けられる。また、側壁部7において外壁面の第1突出部18と対応する箇所は、第1凹部20が形成されている。この第1凹部20には必要に応じて補強材21が塗布等の方法で設けられており、このような補強材21を設けることにより、第1突出部18の強度及び繰り返しの開閉に対する耐久性を向上させることができる。この補強材21としては、従来から公知のものを任意に選択して用いることができ、例えば熱硬化性樹脂材料や熱可塑性樹脂材料を用いた接着剤などが挙げられる。なお、この補強材21には、第1突出部18の強度を向上させ、かつ繰り返しの開閉に伴う耐久性を持たせやすく、かつ製造コストも低く抑えられるといった点から、ホットメルト接着剤等を用いることが好ましい。また、補強材21には、上記した各種の接着剤等にフィラーを添加して混ぜ込むことにより、第1突出部18及び第2突出部19の強度を向上させることができる点で好ましい。フィラーは、従来から公知のものを適宜選択して用いることができ、その中でも100μmから10nm程度の、球状、針状、繊維状、板状、無定形等の種々のものを用いることができる。フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、タルク、シリカ、クレー、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、チタン酸カリウム、マイカ、ガラスビーズ、ゼオライト、活性白土、アルミナ、アルミ粉、鉄粉、ガラスバルーン、シラスバルーン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0045】
外周部6は、膨出部5における側壁部7の外周側において、膨出部5を囲む囲繞状に形成されている。外周部6は、膨出部5に対して外側に張り出すように延出するフランジ状に形成されており、蓋部2の全体的な強度を維持することができるとともに、閉蓋時に基部3の取付部25と当接して密閉性が向上するように形成されている。この外周部6の外側への張り出し長さは任意に決定してよい。また、この外周部6は、蓋部2を深絞りプレス成形などのような深絞り加工やプレス成形をする際に、膨出部5とともに形成されるようになっている。
図2等に示すように、外周部6は、ヒンジ部4と連続するように形成されるとともに、ヒンジ部4と連続する箇所とは反対側に、蓋部2を開閉するための摘まみ部22が形成されている。
【0046】
基部3は、ヒンジ部4を介して蓋部2と一体的に形成されており、蓋部2が上方から開閉されるようになっている。この基部3は、包装体101への取付部25と、取付部25から立ち上がり形成される囲繞状壁13と、取付部25の上方であって囲繞状壁13の上部側に、被押圧部として形成されたフランジ部26及び取出口27とを備え、取付部25の上面25aは、閉蓋時に蓋部2の外周部6の裏面6bと対向するように配置形成されている。取付部25の下面側は、袋体102に取り付ける取付面28となる。
【0047】
囲繞状壁13、フランジ部26は、深絞り成形やプレス成形をする等により取付部25とともに一体的に成形することができる。また、この囲繞状壁13は、下部に位置する取付部25側寄りの大きさよりも、上部に位置するフランジ部26側寄りの大きさの方が小さくなるように形成されている。例えば、
図2等においても示しているように、囲繞状壁13は、取付部25側寄りの下部からフランジ部26側寄りの上部に向けて先細りのテーパ状に形成されている。なお、囲繞状壁13は、
図2に示したような直線面的なテーパ形状に限らず、曲面状的なテーパ形状にしてもよい。また、囲繞状壁13が階段状に順次先細り状となるように形成してもよい。囲繞状壁13を先細り状に形成する際の、囲繞状壁13の形状は任意である。また、これら以外の形状で囲繞状壁13が全体的に先細り形状となるように形成してもよい。また、囲繞状壁13は、一部分がテーパ形状に形成されていてもよい。
【0048】
取出口27は、囲繞状壁13の内側面13a及びフランジ部26の裏面26aによって囲まれた箇所に形成されている収納部32の容積を大きく確保する観点から、本実施の形態に示すように囲繞状壁13の上端部に開口形成することが好ましい。取出口27に向かってフランジ部26が張り出して形成されていることにより、囲繞状壁13とフランジ部26とによって、これら取出口27周辺の全体的な強度を大きく向上させることができ、袋体102内のウェットシート等の内容物を取り出す際にも、基部3を変形しにくくすることができるとともに、蓋部2を繰り返し開閉した場合においても、閉蓋時におけるフランジ部26と天井壁11との間における密閉性、及び囲繞状壁13の外壁14と膨出部5の内壁9との間における密閉性を維持することが可能となる。
【0049】
フランジ部26は、該フランジ部26の内側周縁26bに非吸湿処理が行われていることが好ましい。このように非吸湿処理を行うことで、清拭シート等に含まれる薬液や薬剤等が、フランジ部26の内側周縁26b等から紙材料の中に浸入し、該紙材料を軟化させたり、それにより壊れやすくなることを防止することができ、長期間にわたる繰り返しの使用にも耐えられる程度の耐久性を持たせることが可能になっている。
【0050】
非吸湿処理としては、例えば
図6(a)に示すように、フランジ部26の内側周縁26bを全周覆うように保護部材29を取り付けたり、
図6(b)に示すように、例えばフランジ部26の少なくとも一方の面(
図6(b)において図示するのはフランジ部26の表面26c及び裏面26aの両面)にフィルム部材30を積層しておき、内側周縁26bよりも内側でこれらフィルム部材30を接合することにより、フランジ部26の内側周縁26bを保護することができる。また、
図6(c)に示すように、フランジ部26の内側周縁26bに塗工剤31を塗布して含浸させたり、又は塗工剤31をコーティングしてもよいし、
図6(d)に示すように、フランジ部26の内側周縁26bを
図6(d)中のA方向から圧縮することにより圧縮部31aを形成し、内側周縁26bにおける紙材料の繊維密度を大きくして、薬液等の各種液体が含浸しにくくなるように形成してもよい。なかでも、塗工剤31によるコーティング処理は、低コストで非吸湿処理を施すことができるため好ましい。上記した非吸湿処理において用いられるフィルム部材や塗工剤は、紙材料にコート層を形成するものと同様のものと用いることができる。
【0051】
なお、
図6において示したように、内側周縁26bに非吸湿処理を行った場合には、保護部材29、フィルム部材30等を内側周縁26bの内側に配置させたり、塗工剤をフランジ部26の内側周縁26bに含浸させるのみならず、皮膜を形成して内側周縁26bの内側に配置させ、この内側周縁26bを全体的に包み込むように配置させてもよい。このように非吸湿処理を行うことにより、内側周縁26bと清拭シートとの間の摩擦力が高められると、清拭シート等の内容物を引き出す際に、この清拭シートの一部を触れさせながら引き出すことができ、その際に該清拭シートに対して、この清拭シートが引き出される方向の力とは反対向きの抵抗力を生じさせることができる。そのため、使用者が指を挿入して清拭シートを摘まみやすく、かつ清拭シートを引き出す際に効果的な抵抗力を該清拭シートに付与することができ、袋体102の中で積層体103として収容されている清拭シート同士を分離して取り出すことができる。なお、取出口27の内側周縁26bについての上記した態様は、それぞれ単独で用いることも含まれるし、上記した複数の態様を組み合わせて用いることも含まれる。例えば、内側周縁26bに圧縮部31aを形成しつつ塗工剤を塗布してもよいし、他の態様をそれぞれ組み合わせて用いてもよい。
【0052】
図5に示すように、フランジ部26は、囲繞状壁13の端縁部側から取出口27方向に向かって斜め上に張り出して形成されており、閉蓋時に蓋部2の天井面12と接触し、閉蓋状態が保持されているときは、この蓋部2によって押圧力が付与された状態が維持されるように構成されている。また、フランジ部26は、蓋部2の閉蓋状態の保持が解除されたときは、押圧されていたフランジ部26が押圧前の状態に復元しようとする力を蓋部2が開蓋する方向に作用する。
【0053】
収納部32は、袋体102内に収容されている清拭シートの一部(次に取り出す清拭シートの先端部等)を取出口27の近傍に予め位置させておくことができるようにするための空間として利用することができる。この収納部32が形成されていることによって、包装体101内から引き出された残りの清拭シート等の一端部を、いちいち包装体101内にまで戻さなくても閉蓋が容易に行えるとともに、次回に清拭シートを使用する際の引き出しが容易となる。
【0054】
ヒンジ部4は、蓋部2と基部3との間に一体的に形成されている。このヒンジ部4には折り曲げ部33が形成されており、この折り曲げ部33において蓋部材1が折り曲げられるようになっている。言い換えると、この折り曲げ部33を支点として、基部3に対して蓋部2が開閉できるようになっている。なお、ヒンジ部4の大きさや形状は任意に決定してよく、また折り曲げ部33の形成の仕方についても、プレス成形で行うなど従来から任意の方法を選択して行ってよい。また、
図2等においては、ヒンジ部4において折り曲げ部33が形成されている箇所には孔部が開口形成されているが、この孔部を開口形成するか否か、孔部を開口形成する場合にその孔部の大きさや形状などは任意に決定してよい。
【0055】
次に、本発明に係る蓋部材1の作用効果について説明する。まず、蓋部材1の開閉動作時における作用効果を
図7及び
図8に基づいて説明する。
図7(a)は、蓋部2が開いた状態を示し、取出口27は開放された状態となっている。使用者は、この取出口27に指を挿入して清拭シート(図示せず)の一部を摘まんで袋体102の外部に引き出すことができる。
【0056】
次に、使用者が蓋部2を閉じる方向(
図7(a)中のA方向)に、ヒンジ部4を基点として蓋部2を閉蓋する方向に回動させていくと、
図7(b)に示すように、蓋部2における天井壁11の内面側(天井面12)がフランジ部26と当接する。ここで、さらに使用者が蓋部2を閉じる方向(
図7(b)中のA方向)に蓋部2を回動させると、
図7(b),(c)に示すように天井面12と当接したフランジ部26は徐々に押圧されて
図7(d)に示すように閉蓋状態となる。このとき、フランジ部26には、開蓋時における元の形状に復元しようとする復元力が天井面12を押し上げる方向に作用している。そのため、第1突出部18と第2突出部19との係合によって閉蓋状態を保持させている間は、フランジ部26から天井面12に対して、押圧への反発力が保持された状態が維持されるため、蓋部の内面側とフランジ部26との密着性が高まり、密閉性を向上させることができる。
【0057】
また、このように閉蓋状態にある場合において、蓋部2の裏面及び/又は基部3の表面、特に蓋部2における膨出部5の内壁9の内面10と基部3の囲繞状壁13の外壁面15とを非光沢面とする等により、閉蓋状態における蓋部2と基部3との間の摩擦抵抗力を増加させることができる。したがって、蓋部材1が閉蓋状態である場合に、蓋部2と基部3との密閉性をさらにより向上させることができる。このため、本発明の蓋部材1を取り付けた包装体101は、袋体102の開口部が開放された後でも、蓋部材1が閉蓋状態にあるときは、袋体102内の清拭シートに含浸されている薬液等が蒸発して清拭シートが乾燥するといったことを大きく低減することが出来、長期間にわたって清拭シートを保管しつつ使用に供することが可能になる。
【0058】
さらに、本発明の蓋部材1は、製造後の時間経過に伴って気密性が向上してくる。これは該蓋部材1を形成する紙材料に元々含まれている水分が、内部で膨張して紙材料が膨潤して蓋部2の膨出部5と基部3の囲繞状壁13との密着性がより高くなるのではないかと考えられる。このため、長期間にわたって良好な状態の清拭シートを袋体102内に収容しておくことができ、使用者の利用に供することが可能になる。
【0059】
また、
図7においても示している通り、蓋部材1は、閉蓋時に蓋部2を
図7中A方向へと押すことによって、閉蓋状態を形成し、かつこの閉蓋状態を保持することができる。蓋部材1は、第1突出部18と第2突出部19との係合によって閉蓋状態を維持することが出来るようになっている。このため、使用者は片手だけのワンタッチ操作で容易に閉蓋することが可能である。
【0060】
次に、蓋部材1において、閉蓋状態を保持している蓋部2を開蓋するときの作用効果を
図8に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、蓋部材1が閉蓋状態を保持しているときは、フランジ部26は蓋部2によって押圧されており、押圧力に抗して復元しようとする力が作用しており、これによりフランジ部26が天井面12に密に当接する。そのため、蓋部材1の気密性が良好に保持されている。
【0061】
ここで、使用者が摘まみ部22を摘まんで第1突出部18と第2突出部19との係合を解除すると、蓋部2は、フランジ部26の復元力によって
図8(b)中のB方向に押され、ヒンジ部4を基点として開蓋方向に回動して開蓋する。この状態では、フランジ部26は押圧力が作用する前の状態となっている。蓋部2は、フランジ部26の復元力により、この位置まで開蓋方向に回動する。その後、使用者は摘まみ部22を摘まんでさらに
図8(c)中のB方向へと蓋部2を回動させることで、取出口27から清拭シートの取り出しが容易な状態まで開蓋することができる。
【0062】
このように、蓋部材1は、第1突出部18及び第2突出部19の係合を解除することのみによって、閉蓋状態にある蓋部2を容易に開蓋した状態にすることができるため、本発明の蓋部材1によれば、煩雑な操作やストレスを感じさせることなく、開蓋動作をも行わせることができる。
【0063】
通常、蓋部材1は、袋体102に収容された積層体103を全て使い切るまでの間に、
図7(a)から
図7(d)並びに
図8(a)から
図8(c)に示した開閉動作が複数回にわたって繰り返し行われる。第1突出部18に対応する第1凹部20は補強材21によって補強され、かつ第2突出部19に対応する第2凹部21も補強材35によって補強されている。このため、繰り返しの開閉動作を行っても、第1突出部18や第2突出部19が破損したり、係合が甘くなったりすることがなく、長期間にわたって優れた密閉性を維持することができ、袋体102内に収容されている清拭シートを最後まで使い切ることが容易となる。
【0064】
また、この蓋部材1は、上記した通り紙材料を用いて形成されている。そのため、近年は特に大きな関心ごととなっている環境問題への取り組みや配慮といった観点からも、この蓋部材1は大きく貢献することができるとともに、リサイクル性にも非常に優れているため、廃棄時においても使用者が感じがちな煩雑さや面倒を大きく低減させることが可能になる。
【0065】
また、蓋部材1が取り付けられる袋体102が、プラスチックシートやフィルム等からなる場合には、該袋体102内に収容されている清拭シートの減少に伴って袋体102に皺が寄りやすい状態となる。しかしながら、本発明の蓋部材1を予め袋体102に接合していることによって、収納されている清拭シートの残りが少なくなった場合でも、清拭シートの取り出し易さや、袋体102の密閉性は、初期の状態のまま保持することが可能である。
【0066】
また、この蓋部材1は、囲繞状壁13、膨出部5の側壁7がテーパ状に形成されていることにより、
図9にも示すように、複数の部材を上下に重ねて保管、流通することができ、流通・保管時におけるスタッキング性を大きく向上させることができる。
図9(a)及び
図9(b)に示すように、複数の蓋部材1を順次積み重ねようとする場合、蓋部材1aの収納部32が形成されている空間に、別の蓋部材1bの膨出部5が入り、さらにその蓋部材1bの収納部32が形成されている空間に、さらに別の蓋部材(
図9では図示せず)の膨出部5が入るといった具合にして、複数の蓋部材1を少ないスペースで積み重ねることができる。この場合、膨出部5の側壁7と囲繞状壁13の側壁とがテーパー状に形成されているため、複数の蓋部材1を積み重ねた際の積み重ね高さは、最上部の膨出部5の高さと、その下側に重ねられる蓋部材1の蓋部2の紙厚と基部3の紙厚とを合計した値にほぼ等しい高さですむが、スタッキング性に劣る場合には蓋部材1の積み重ね高さは、蓋部材1の膨出部5の高さと紙厚とを合計した高さの蓋部材1の積み重ね数分となるため、非常に大きなスペースを必要とする。そのため、上記した蓋部材1によれば、限られたスペースにより多くの蓋部材1を収容することができ、スタッキング性をも大きく向上させることができ、一回の流通でより多くの蓋部材をまとめて輸送することができ、輸送コストも大幅に削減することができる。
【0067】
次に本発明に係る蓋部材1の製造方法について、蓋部2、基部3、ヒンジ部4を一体成形して製造する場合について説明する。本発明に係る蓋部材1は、パルプ系素材の原反材料から、蓋部材を形成するための形成部材を作成する工程(打ち抜き工程)、蓋部材の形成部材の周縁部分を、当該周縁部分を保持し得るが固定し得ない状態で支持する工程(支持工程)、蓋部材の形成部材の周縁部よりも内側の部分を深絞り成形して、少なくとも囲繞状壁を形成する工程(深絞り工程)を経て製造することができる。打ち抜き工程は、原反材料から、蓋部材1における蓋部2、基部3、ヒンジ部4が連続した外形形状に沿って蓋部材の形成部材を形成する工程である。この工程で、取出口27相当部分を開口形成してもよく、打ち抜き工程後に取出口27相当部分を形成してもよい。深絞り工程では、少なくとも基部3における囲繞状壁13に相当する部分を深絞り成形して形成するが、蓋部2に膨出部5を形成する場合には、この深絞り工程で膨出部5を成形することができる。また、深絞り工程を行う前に、蓋部2が基部3と閉蓋する状態を維持するための閉止手段を形成してもよい。また、この閉止手段には、補強コーティング剤が塗布されていてもよい。さらには取出口27相当部分を開口形成した後、取出口端縁部分を含む部分に耐水処理を行ってもよい。また、深絞り工程の前にヒンジ部形成部に折り曲げ部33をプレス加工してもよい。深絞り工程前に、あらかじめヒンジ部形成部に折り曲げ加工を施しておくと、深絞り加工時に、ヒンジ部4や取出口27周辺の破損を防止することが可能になる。また耐水処理を、取出口相当部分を形成後に行うことにより、大量の蓋部材に対してまとめて非吸湿処理を行うことができ、上記した通りの湿気等に対する耐久性に優れた蓋部材1を、効率よく製造することができ、蓋部材1の製造効率を大きく向上させることが可能になる。
【0068】
図10(a)に示すように、打ち抜き工程では、原反材料41から蓋部材1の基材となる蓋部材形成体42を形成する(
図10(b))。この打ち抜き加工は、いわゆるビク型やトムソン型と呼ばれる抜き型を用いて行うなど、公知の方法で行うことができる。
図10(c)は、この蓋部材形成体42に対して、蓋部材1のヒンジ部4となるヒンジ部形成部43に折り曲げ部33をプレス加工により形成した状態を示す。次に、蓋部材形成体42に対して蓋部2と、基部3とを形成する。蓋部2と基部3とは一度の成形で同時に形成することもできるが、別々に成形してもよい。
図10(d)はまず、膨出部5を有する蓋部2を成形し、次いで、
図10(e)に示すように囲繞状壁13をプレス成形して基部3を形成する。
図10に示す例では、基部3を成形する工程と同時、あるいはその工程後に、取出口27を抜き加工等によって形成する場合を示す。最後に、折り曲げ部33において折り曲げ加工を行い、蓋部材1を得ることができる(
図10(f))。
【0069】
また、
図11に示すように、蓋部材1の他の製造方法は、蓋部材形成体42を得るための原反材料41(
図11(a))に対して、最初にヒンジ部形成部43に折り曲げ部33をプレス加工により形成し(
図11(b))、次に蓋部材形成体42を打ち抜き加工する(
図11(c))。次に、先に示した方法と同様にして、蓋部材形成体42において膨出部5を有する蓋部2を形成し(
図11(d))、その後に囲繞状壁13を有する基部4をプレス成形し、取出口27を設け(
図11(e))、最後に、折り曲げ部33において折り曲げ加工を行うことにより、蓋部材1を得る(
図11(f))。
【0070】
さらに、
図12に示す他の製造方法は、原反材料41(
図12(a))に対して蓋部材形成体42を打ち抜き加工するとともに、基部形成部45に取出口27を抜き加工等によって形成する(
図12(b))。なお、この方法では、蓋部材形成体42の外形部分の抜き打ち加工と、取出口形成部分の抜き加工とを同時に行っても、別々に行っても良く、原反材料41に対して取出口27を形成した後に蓋部材形成体42を打ち抜き加工してもよいし、逆に蓋部材形成体42を打ち抜き加工した後に取出口27を形成してもよい。次に、この取出口27を形成した蓋部材形成体42に対して非湿潤処理を行う(
図12(c))。非湿潤処理は、少なくとも蓋部材形成体42の外周部分42aと取出口27の周縁部分27a(蓋部材1に成形した際に、上記したフランジ部26の内側周縁26bとなる部分)に対して行う。この非湿潤処理の方法については後述する。次に、この蓋部材形成体42に対して、蓋部材1のヒンジ部4となるヒンジ部形成部43に折り曲げ部33をプレス加工により形成(
図12(d))した後、蓋部材形成体42に対して蓋部2と基部3とを、同時または別々に成形し(
図12(e))、最後に折り曲げ部33において折り曲げ加工を行い、蓋部材1を得ることができる(
図12(f))。
【0071】
図10から
図12において説明した工程の中で、プレス加工により膨出部5及び囲繞状壁13を形成する際には、膨出部5を形成する箇所、及び囲繞状壁13を形成する箇所の周囲を、保持できるが固定し得ない状態で支持して深絞り加工を行うことが好ましい。より具体的には、以下に述べるように、成形時に膨出部5、囲繞状壁13をプレスする際の押圧力と、その周囲部分を押さえる押圧力とが異なるように行うことが好ましく、膨出部5や囲繞状壁13を成形する際の押圧力に対し、その周囲部分を支持する際の押圧力が小さくなるようにして成形を行うことが好ましい。
【0072】
図13に示すのは、蓋部材1の製造に当たり、蓋部材形成体42を深絞りプレス加工等を行うことにより、蓋部形成部44への膨出部5の成形や基部形成部45への囲繞状壁13の成形を行う際の手順等を説明するための説明図である。まず、
図13(a)等に示すように、上記した製造方法により蓋部材1を製造する場合には、金型112を用いて深絞りプレス成形して行う。この金型112は、第1金型113、第2金型114及び第3金型115を備えている。第1金型113は、深絞りプレス成形時に蓋部材形成体42における蓋部形成部44や基部形成部45において膨出部5や囲繞状壁13を形成するための下型凹部116と、蓋部材形成部42における蓋部形成部44や基部形成部45を載置する載置部117とが形成されている。また、第2金型114及び第3金型115は第1金型113の上方に位置しており、それぞれが別々に動作可能に構成されている。また第2金型114には、弾性部材としてのスプリング118,119が設けられている。このスプリング118,119は、プレス成形時における押圧力を調整するために設けられている。
【0073】
このように構成されている金型112を用いて蓋部材1を形成するときは、まず
図13(b)に示すように、載置部117に蓋部材形成体42を載置する。そして、
図13(c)に示すように、まずは第2金型114により、蓋部材形成体42の周縁部を押圧して蓋部材形成体42を支持する。このとき、第2金型114は、スプリング118,119を用いて押圧力が調整されており、具体的には
図13(d)で示すように深絞りプレス成形する際における第3金型での押圧力よりも弱い力で押圧して蓋部材形成体42を支持できるようになっている。このように、スプリング118,119によって押圧力を調整することにより「保持し得るが固定し得ない状態で支持する」という状態を形成することができる。そして、
図13(d)に示すように、第3金型115によって蓋部材形成体42を押圧してプレス成形する。このように、プレス成形する部分の周囲を、保持し得るが固定し得ない状態で支持した状態でプレス成形することで、膨出部5や囲繞状壁13等を深絞り成形する場合でも、蓋部材1に亀裂が生じたりすることなく、良好な蓋部材1を成形することができる。また、上記したほか、折り曲げ部33を形成した後に膨出部5や囲繞状壁13等を深絞り成形することによって、蓋部材1の形成時に亀裂や破れが生じることを防止することも可能になる。
【0074】
そのため、膨出部5及び囲繞状壁13をプレス成形するときに蓋部材形成体42に破れが生じる事態を大きく軽減させることができ、かつ膨出部5及び囲繞状壁13をプレス成形した後に形成される外周部6及び取付部25、並びに膨出部5の側壁部7や天蓋部8、フランジ部26などに皺が寄ることも大きく軽減させることができる。すなわち、このような押圧力で外周部6及び取付部25となる箇所をプレス加工することにより、プレス加工後の蓋部材1の外観も良好な状態で形成することができるのみならず、蓋部材1の気密性をより良好なものにすることが可能になる。
【0075】
なお、
図10から
図12において説明したそれぞれの工程については、一つの金型内において順次成形するように構成しても良いし、複数の金型を用いて順次成形するように構成してもよい。また、プレス成形する際におけるプレス加工の方法などについては、従来から公知の方法を任意に採用してよい。
【0076】
次に、
図12(c)を用いて説明した非湿潤処理の方法について
図14を用いて説明する。まず、
図14(a)に示すように、取出口27を開口形成した蓋部材形成体42を複数枚(例えば500枚)重ねた蓋部材積層体51を形成する。この蓋部材積層体51を構成するそれぞれの蓋部材形成体42は、原反材料41から打ち抜き加工によって形成されたものを順次並べたり積み重ねる等して形成されている。また、この蓋部材積層体51はそれぞれの蓋部材形成体42を挟持する等の方法によって形成することができる(
図14(a)では、蓋部材形成体42を挟持する挟持体の図示は省略している)。このように形成された蓋部材積層体51を、
図14(b)に示すように、塗工剤52中に浸漬する。塗工剤52中に蓋部材積層体51を浸漬することにより、蓋部材積層体51を構成するそれぞれの蓋部材形成体42における開口部27が形成されている周縁部分27a及び蓋部材形成体42の外周縁部分42aにこの塗工液(溶液)が含浸・塗工される。そして、所定時間だけ塗工剤52中に浸漬した後に該塗工剤52中から蓋部材積層体51を引き上げて乾燥等を行う。
図14(b)までの工程を経た後は、例えば
図14(c)に示すように蓋部材積層体51を構成する蓋部材形成体42のうち、表面側の蓋部材形成体42bと裏面側の蓋部材形成体42cとを取り除く。この表面側の蓋部材形成体42bと裏面側の蓋部材形成体42cとを取り除くのは、手作業で行っても良いし、何らかの方法により自動化させてもよい。これら蓋部材形成体42b,42cを取り除くのは、蓋部材形成体42b,42cは蓋部材積層体51の表面側及び裏面側に配置されていたものであるため、上記した塗工剤52中にドブ漬けしたときに、周縁部分27a及び外周縁部分42aのみならず、蓋部材形成体42の表面や裏面にも塗工剤52が塗布された状態となっているからである。
【0077】
この非湿潤処理は、周縁部分27a及び外周縁部分42aについて上記した塗工剤52を含浸させるための処理であるから、蓋部材形成体42の表面や裏面にも塗工剤52が塗布された状態となっているものを使用すると蓋部材1の品質面においてムラが出てしまうため、好ましくない。そのため、上記したように蓋部材形成体42b,42cを取り除き、残った蓋部材形成体42を用いることとすれば、周縁部分27a及び外周縁部分42aにのみ塗工剤52が含浸及び塗布された蓋部材形成体42を得ることができ、蓋部材1の品質にムラが生じることもなく、安定した品質の蓋部材1を提供することが可能になる。また、このような方法で非湿潤処理を行うことによって、多数枚の蓋部材形成体42に対して一度にまとめて非湿潤処理を行うことができるから、処理効率も飛躍的に向上させることができる。最後に、
図14(c)に示すように蓋部材積層体51をばらして各蓋部材形成体42にし、それぞれの蓋部材形成体42に対してプレス加工等を行って蓋部材1を形成することになる。このような非湿潤処理の方法によれば、一度に大量の蓋部材形成体42の処理を行うことができるとともに、蓋部材1の製造効率も大幅に向上させることができ、かつ製造された蓋部材1の品質や液体に対する耐久性も大きく向上させることができる。なお、本例では、表面側の蓋部材形成体42bと裏面側の蓋部材形成体42cとを取り除く例を用いて説明しているが、例えばこれら蓋部材形成体42bの表面と蓋部材形成体42cの裏面に塗工剤が塗布されず、これら蓋部材形成体42bと蓋部材形成体42cとの間にある蓋部材形成体と同様の態様で塗工剤を塗布することが可能であれば、
図14(c)に示している工程は行わなくてもよい。
【0078】
このように、本発明に係る蓋部材1の製造方法によれば、蓋部材1の製造にあたっての製造効率を飛躍的に向上させることができるとともに、膨出部5や囲繞状壁13等を深絞り成形する場合でも、得られる蓋部材に亀裂や皺が生じることを防止することができ、優れた蓋部材1を容易に製造することができる。
【0079】
なお、上記した非湿潤処理の方法においては、蓋部材積層体51を塗工剤52の中にドブ漬けすることにより行う例を用いて説明したが、非湿潤処理の方法はこれ以外の態様でもよく、例えば一枚ずつ取出口27の周縁部27aと蓋部材形成体42の外周縁部分42aとに塗料を塗布してもよいし、塗布する態様も例えば筆で塗る態様やコーターなどを使用して塗布する態様など従来から公知の方法を採用してもよい。
【0080】
次に、
図15から
図17に示すのは、取出口27における周縁部27a(開口端縁部ともいう)の塗工剤の異なる含浸方法である。この含浸方法では、取出口27の周縁部27aに対して1枚ずつ塗工剤を含浸させる。
図15(a)に示すのは治具301であり、この治具301は上部302と下部303とが一体的に形成されており、上部302が下部303よりも小さくなるように形成されている。また、この上部302の形状は、蓋部材1の基部3に形成される取出口27と同じ形状に形成されており、上部302は取出口27に挿入できるよう、取出口27とほぼ等しい大きさに形成されている。下部303は、上部302よりも大きくなるように形成されており、上部302が形成されていない箇所に平坦部304が形成されている。また、この上部302の側面302aと平坦部304との境界部分には、角部304aが形成されている。
【0081】
このような治具301に対して、下部303の平坦部304であって角部304aの近傍に塗工剤40を滴下する。すると、平坦部304に滴下された塗工剤40は、表面張力によって角部304aに溜まる。塗工剤40の滴下は、
図15(b)にも示すように、角部304aの全周に回り込むようにするために適切な量だけ行う。このように塗工剤40を滴下すると、角部304aに塗工剤40が付着したかのようになる。塗工剤40をこのように滴下して角部304aの全周に回り込ませた後、
図15(c)に示すように、蓋部材形成体42(
図15(c)では、説明の便宜上、蓋部材形成体42を板状に形成しているが、蓋部材42の形状は先に説明した形状であってもよいし、それ以外の形状であってもよい。仮に、原反材料41から蓋部材形成体42を打ち抜き加工する前に取出口27を開口形成したのであれば、蓋部材形成体42は
図15(c)に示すような態様になる。)を治具301よりも離れた位置から該治具301に近接する位置へと図中のC方向へ移動させ(
図15(c)では治具301の上方から蓋部材形成体42を下ろしている)、蓋部材形成体42の裏面が平坦部304と接する位置までC方向へと移動させる。蓋部材形成体42が平坦部304と接すると角部304aにおいて溜められていた塗工剤40が、取出口27の周縁部27aに効率よく含浸し周縁部27aに塗工される。周縁部27aでは、このように塗工剤40が塗工されると、まずは蓋部材形成体42に含浸され、その後、周縁部27aの表面にも塗工された状態となる。このように、取出口27の周縁部27aに塗工剤40と含浸して塗工すると、蓋部材1として形成したときに、この周縁部27a(蓋部材1として形成した場合には、フランジ部26の内側周縁26bともいう)から各種の液体をはじめとする液状体が使用時に含浸して、蓋部材1を構成する材料を弱くするといったことをあらかじめ防止することができる。また、このような方法により周縁部27aに塗工剤40を塗工すると、周縁部27aの全周囲に満遍なく塗工剤40を塗布することができる。そのため、周縁部27aにおいて、塗工剤40の含浸や塗布にムラがなくなり、特定の箇所から液状体が含浸しやすくなったりして、蓋部材1を形成する材料を弱くしたりして、蓋部材1の全体的な強度を低下させるといったことをあらかじめ防止することができる。
【0082】
なお、塗工剤40を含浸させた後に温度を上げて該塗工剤を硬化させる場合においては、その塗布した塗工剤が硬化して膜状体を形成する温度(ここでは造膜温度という)まで加熱することが好ましい。この造膜温度まで加熱しなければ、安定的な膜状体を形成することが難しくなり、使用時に周縁部27aから液状体が含浸したり、液状体の含浸によって蓋部材1を形成する材料が弱くなり、蓋部材1の全体的な強度を低下させるといったことを防止するのが難しくなるからである。また、ここで用いられる塗工剤40としては、従来から公知のものを任意に選択して用いることができ、また本明細書においても塗工剤やコート剤等として列挙している各材料を任意に選択して用いることができる。例えば、具体的には、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、EVAといったものを用いることができるし、また造膜する特性を有しないものであっても、例えばシリコンやフッ素、各種油類、パラフィンなども用いることができる。
【0083】
また、ここで用いる塗工剤40は、複数のものを混合して用いてもよいし、一種類のものを用いてもよい。さらに、塗工剤40の塗布は、1回のみでもよいし、複数回行ってもよい。また、塗工剤40を複数回塗布する場合には、その都度、塗工剤40の種類を変えてもよいし、複数回、同じ塗工剤40を用いてもよく、任意に決定してよい。また、塗工剤40を加熱する方法についても、例えばヒーターを用いて乾燥加熱してもよいし、赤外線を用いて加熱する方法であってもよい。さらには、電磁波や超音波など、従来から公知の方法を任意に選択して用いてよい。
【0084】
治具301は、塗工剤40を滴下した際に、その滴下した塗工剤40が角部304aに溜まりやすい形状であることが好ましい。例えば、
図16(a)に示すように、上部302の平坦部302bと側面302aに溝状の誘導路305を形成しておき、この誘導路305に対して塗工剤40を滴下すると、この滴下された塗工剤40が誘導路305を伝って角部304aに溜まりやすくするといった構成であってもよい。また、
図16(b)に示すのは、角部304aに、上部302の側面302aの内径側に誘導路305を形成した態様である。つまり、この態様では、角部304aに誘導路305が形成されている。このような箇所に誘導路305を形成しても、角部304aに塗工剤40を溜めやすくすることができる。また、この角部304aに誘導路305を形成すると、より多くの塗工剤40を溜めることができるので、より蓋部材形成体42における開口部27の周縁部27aに対して塗工剤40を含浸・塗布をさせやすくすることも可能になる。また、
図16(c)に示すように、治具301は、下部303の平坦部304において、上部302の側面302aに近接する位置、より具体的には側面302aと隣接する位置に、誘導路305を形成している。この
図16(c)に示す態様は、誘導路305を形成する溝が平坦部304側に形成されている。このような位置に誘導路305を形成して塗工剤40を角部304aに溜めるようにしても、塗工剤40をより溜めやすくすることができる。また、この角部304aに塗工剤40をより多く溜めることができるので、より蓋部材形成体42における開口部27の周縁部27aに対して塗工剤を含浸・塗布させやすくすることも可能になる。なお、
図16を用いて説明した治具301の構成は、それぞれの態様を個別に適用してもよいし、上記した態様を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
また、
図17に示すように、治具301は、円錐台形状であってもよい。この治具301は、一方の端部(
図17では上端部)の外径は取出口27の孔径より小さく、他方の端部(
図17では下端部)の外径は取出口27の孔径より大きくなる円錐台形状となっており、この一方の端部と他方の端部との間に、治具301の外径と取出口27の孔径とが同じになる位置が存在するように形成されている。そして、円錐台形状に形成された治具301において、この治具301の外径と取出口27の孔径とが同じになる中間部分に誘導路305が形成されており、この誘導路305を境にして上部302と下部303とが形成されている。この誘導路305が形成されている箇所は、該誘導路305が形成されている箇所における治具301の外径が、蓋部材形成体42における取出口27の孔径と同じ寸法となる位置である。したがって、蓋部材形成体42に開口形成している取出口27に治具301を挿入させていくと、挿入時は治具301の外径が取出口27の孔径よりも小さいのでスムーズに挿入される。ここで、治具301は円錐台形状に形成されており、順次外径が大きくなるように形成されているので、取出口27の孔径と治具301の外径が同じとなる位置がある。この位置に誘導路305が形成されている。このとき、誘導路305は、治具301の側面301aに対して溝状に形成されており、この誘導路305に対して取出口27が嵌合することによって、該誘導路305に溜まっている塗工剤40が取出口27の周縁部27aに含浸し、塗布される。このようにして塗工剤40を塗布しても、蓋部材形成体42に形成されている取出口27の周縁部27aに対して塗工剤40を均一かつ簡単に塗布することができる。
【0086】
このように、非湿潤処理の方法に関する態様について、図面を用いて説明したが、上記したのは非湿潤処理の方法の例を示したに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更してよい。例えば、上記した通り、囲繞状壁13の外壁14や膨出部5の内壁9に対して上記した塗工剤やコート剤を塗布する場合には、少なくとも一部に塗工剤やコート剤が塗布されていればよく、全周にわたって塗工剤やコート剤が塗布されていてもよい。また、上記した塗工剤やコート剤は、例えば所定の強度を得ることが必要などといった場合には、上記した場所に限らず、蓋部材1における他の箇所にも適宜塗布してよい。また、閉止手段として後述する係止部や係止受け部などを形成する場合、例えばホットメルト接着剤などを任意に選択して用いると、摩擦抵抗の大きさのみならず、接着剤自体が有する粘度などを調節することもできる。そのため、蓋部材1を形成する際の製造効率を大きく向上させることができるのみならず、製造された蓋部材1の閉蓋時における締まり具合も良好にすることができる。また、取出口27の周縁部27aに塗工剤40を塗布する場合において、治具301によって塗工剤40を塗布する方法としては、上記したもの以外に、先に説明した以外の態様によるドブ漬けによる方法や、スプレー塗布などでもよいし、コーターによる塗布やスポンジ、筆塗りといった方法により行ってもよい。また、これら以外の方法を任意に選択して用いてもよい。
【0087】
なお、上記した方法により蓋部材1を製造する場合、原反材料41に予め加圧プレス処理をすると該原反材料41の表面及び/又は裏面に塗工剤が乗りやすくなるために好ましい。また、蓋部材1を製造する場合、蓋部材形成体42をプレス加工等する際には、1回のプレス工程で成形することのみならず、複数回のプレス工程を経て段階的にプレス加工をしてもよい。このようにプレス加工を行うことで、蓋部材形成体42の加工性を向上させることが可能になる。また、蓋部材1を製造する場合においては、蓋部材形成体42に予め湿潤した状態(所定量だけ液体により湿らされた状態)にしておき、その後にプレス加工等を行うことも、蓋部材1を成形する際の加工性を向上させることができるので、好ましい。
【0088】
次に、本発明に係る蓋部材1のより好ましい態様について説明する。
図18(a)に示すのは、蓋部材1において、蓋部2、基部3及びヒンジ部4に非湿潤処理を行った態様である。この態様の場合、蓋部2における天井壁11の天井面12、並びにフランジ部26の表面26c及び内側周縁26bに非湿潤処理を行っている。具体的には、上記した塗工剤を塗布して塗膜36を形成することにより、非湿潤処理が行われている。この場合、紙材料を全体的に覆うようにして塗膜36が形成されているので、天井面12に形成された塗膜36とフランジ部26の内側周縁26bに形成された塗膜36とが閉蓋時に接触する。この場合、塗膜36同士が接触することによって、内側周縁26bにおける端面に微小な凹凸が形成されていた場合であっても、塗膜36が形成されることによって、その微小な凹凸をある程度平滑化させることができる。そのため、閉蓋時において蓋部2の天井面12と基部3におけるフランジ部26の内側端縁26bとの密着性をより向上させることができ、蓋部材1全体の気密性をより向上させることが可能になる。
【0089】
次に
図18(b)に示すのは、フランジ部26の内側周縁26bにのみ塗膜36を形成した例である。この場合には、蓋部2における天井面と基部3におけるフランジ部26の内側周縁26bに形成された塗膜36とが閉蓋時に接触する。したがって、この態様によっても、蓋部材1全体の気密性をより向上させることが可能になる。
【0090】
次に、
図18(c)に示すのは、フランジ部26の表面26cと、当該部分と接する蓋部2の天井面12との間に、自己接着性(又は自己粘着性)を有する塗料(塗工剤)を塗布して形成した自己接着層37を形成した例である。このように自己接着層37を形成すると、閉蓋時における蓋部2の密着性をより高めることができる。また、この自己接着層37を形成すると、蓋部2を押圧操作したときの押圧力で蓋部2と基部3とが閉蓋した状態を形成することができ、かつこの閉蓋した状態を維持することができる。そのため、上記したような第1突出部18と第2突出部19との係合に代えて閉止手段としての機能を持たせることもできるし、又は第1突出部18と第2突出部19との係合に加えて、この自己接着層37を形成することにより閉蓋状態をより強固に維持することも可能になる。自己接着層37を形成するための自己接着剤は、自己接着剤同士の間のみで感圧接着する接着性を示すが、他の素材に対する接着性を有さない。そのため、自己接着層37は、フランジ部26の表面26c側と、天井面12のフランジ部26の表面26cと接触する部分の両方に設けることが必要である。
【0091】
この自己接着層37は、天然ゴムラテックス等のラテックスや、天然ゴムラテックスと合成樹脂エマルジョンとの混合物等が挙げられる。合成樹脂エマルジョンとしては、例えば酢酸ビニルエマルジョンや、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル系共重合体等のアクリル系エマルジョンなどが挙げられる。このような自己接着層37を設けると、閉蓋時における蓋部2と基部3との間の気密性をより向上させることができる。また、自己接着層37は、長期間にわたって再接着、再剥離を繰り返し行うことが可能である。
図18(c)では、自己接着層37が閉蓋時にフランジ部26の表面26cと天井面12との間に位置するようにしているが、閉蓋時に蓋部2と基部3とが接触する他の部分に自己接着層37を設けてもよい。
【0092】
図19に示すのは、基部3における被押圧部の別の態様である。上記した通り、被押圧部は、閉蓋時に蓋部2からの押圧力を付与され、かつ閉蓋した状態が保持されているときは、押圧力が付与された状態が維持されるように形成されていればよい。特に、被押圧部をフランジ部26として形成した場合には、このフランジ部26は、上記した態様のほか、例えば
図19(a)に示すように、フランジ部26の内側周縁26bが径方向中心向きとなるように形成せず、フランジ部26を折り曲げ形成して内側周縁26bが径方向中心向きかつ上方向きとなるように該フランジ部26を形成してもよいし、
図19(b)に示すように、フランジ部26の上端部26dをアール形状にして、内側周縁26bを上端部26dよりも下方に位置するように形成してもよい。また、
図19(c)に示すように、フランジ部26を囲繞状壁13から取出口27に向けて先細りとなる直線のテーパ状に傾斜形成してもよい。また、これだけでなく、被押圧部は、
図19(d)に示すように、囲繞状壁13の上端部を湾曲形成させた張出部として成形し、この上端部が閉蓋時に天井面12と当接可能な構成としてもよい。囲繞状壁13をこのように形成しても、上記したのと同様の作用効果を得ることが可能である。なお、これらの例では、取出口27は囲繞状壁13の上部又は上端部に位置する態様を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、取出口27は、囲繞状壁13の下部や下端部に開口形成してもよいし、他の位置に形成してもよい。
【0093】
図20に示すのは、蓋部2の変形例である。
図20に示す蓋部2は、天井壁11が側壁部7と連接する周縁部から内側方向に向けて凹嵌状に形成されている態様である。すなわち、天蓋部8が側壁部7の上端部よりも下側に位置するように設けられ、天蓋部8と側壁部7との連接部分には、環状凸条部8aが形成されている。このように、天蓋部8が側壁部7の上端部よりも下側に位置するように構成すると、閉蓋時にフランジ部26に対してより大きな押圧力が付与されるため、蓋部2とフランジ部26との間の密着性がより高まる。また、環状凸条部8aが形成されていると、膨出部5全体の強度も向上し、蓋部2を開閉する際の蓋部2の歪み、変形等を防止することができる。
【0094】
図21に示すのは、蓋部2のさらに別の変形例である。
図21に示す蓋部2は、外周部6のヒンジ部4寄り側に屈曲部33aが形成されている。この屈曲部33aが形成されている箇所は、外周部6のヒンジ部4寄りの任意の箇所に形成されていればよい。この屈曲部33aを形成すると、
図21(a)に示す開蓋状態から図中のA方向に蓋部2を回動させるときは、ヒンジ部4を支点として蓋部2を回動させると、
図21(b)に示すように基部3の取付部25の表面25aに屈曲部33aがまず当接する。そして、
図21(b)の状態からさらに蓋部2を図中A方向に回動させるときは、屈曲部33aが支点となって蓋部2が図中A方向に回動し、
図21(c)に示す閉蓋した状態となる。
【0095】
このように閉蓋すると、
図21(c)にも示すように、ヒンジ部4から屈曲部33aに至る箇所においては、蓋部2と基部3との間に隙間が生じるところ、屈曲部33aから膨出部5に至る箇所においては、蓋部2の外周部6と基部3の取付部25とを密着させることができる。また、この部分を密着させると、蓋部2における膨出部5と基部3における囲繞状壁13、さらには蓋部2における天井壁11と基部3におけるフランジ部26とをより強固に密着させることができる。そのため、蓋部材1全体としての密閉性をさらにより向上させることができる。
【0096】
図22に示すのは、蓋部2の別の変形例である。この蓋部2は、外周部6のヒンジ部4寄りが全体的に傾斜角を有するように形成されている。すなわち、
図22(a)に示すように蓋部2が開蓋しているときは、外周部6のヒンジ部4寄りの部分は、基部3における取付部25と平行となるように形成されておらず、該外周部6と取付部25との間に所定角度の角度が形成されることとなるように、該外周部6は形成されている。また、外周部6と膨出部5との境界部分には凸角状部33bが形成されている。蓋部2を閉蓋する方向に回動させ、蓋部2が
図22(b)に示す位置まで回動すると、該蓋部2における凸角状部33bは、基部3の取付部25と囲繞状壁13との境界部分の凹状角部33cと当接する。このように、凸角状部33bと凹角状部33cとが当接した位置では、まだ蓋部2が完全に閉蓋せず、基部3の上方に位置した状態となっている。
【0097】
そして、
図22(b)に示す状態からさらに蓋部2を閉蓋する方向へと回動させると、蓋部2は、凸角状部33bと凹角状部33cとが当接している点を回動支点として、閉蓋する方向へと回動する。このとき、蓋部2は、膨出部5と囲繞状壁13とが互いに密着しながら閉蓋することになる。また、
図22(c)に示すように蓋部2が完全に閉蓋した際には、フランジ部26に天井壁11の天井面12がより強く密着し合った状態で閉蓋する。そのため、この例における蓋部材1によれば、閉蓋時における蓋部材1の全体的な気密性をさらにより向上させることが可能になる。
【0098】
図23に示すのは、蓋部材1の変形例である。
図23に示す蓋部材は、蓋部2の外周部6に、膨出部5の周囲に沿った蓋部側補強リブ23aが設けられ、該補強リブ23aに更に突出部24が設けられている。一方、基部3には、基部側補強リブ23bが形成されている。蓋部側補強リブ23aは、外周部6において、外周部表面6aから上方に向けて所定高さだけ盛り上がり形成するように形成されている。また、この蓋部側補強リブ23aは、外周部表面6aにおいて、該外周部6を周回するように形成されている。この蓋部側補強リブ23aを形成することによって、蓋部2における外周部6の強度を大きく向上させることができ、開閉動作に伴う蓋部2の耐久性も大きく向上させることができる。また、外周部6には、蓋部側補強リブ23aが形成されている箇所に、4つの突出部24が形成されている。これら突出部24は、蓋部側補強リブ23aとともに外周部6の強度及び蓋部2の耐久性を向上させるとともに、以下に述べるように蓋部材1の流通時において、複数の蓋部材1を積み重ねるときのスタッキング性能を向上させるためのものである。
【0099】
図24(a)及び(b)に示すように、これら4つの突出部24は、突出高さをH1として同じ突出高さとなるように形成されている。これら突出部24の突出高さH1は、側壁部7の突出高さH2よりも低い高さ寸法となるように形成されている。このようにして突出部24の高さをH1として高さを揃えることにより、スタッキング時など複数の蓋部材1を積み重ねるときにも、蓋部材1同士の間でのガタツキやぐらつき、崩れなどを防ぎ、安定した状態で複数の蓋部材1を積み重ねることが可能になる。なお、
図23,24を用いた本例では、突出部24を4か所に配置した例を用いて説明したが、突出部24を配置するのは4か所に限定されるものではない。また、突出部24が配置される箇所についても、上記した例の態様には限定されない。
【0100】
図25に示すのは、蓋部材1の他の変形例である。
図25(a)は閉蓋状態の蓋部材1を表し、
図25(b)は開蓋状態の蓋部材1を表している。この蓋部材1は、蓋部2の外周部6に突出リブ80が形成され、また基部3の取付部25に突出リブ81が形成されている。これら突出リブ80,81は、蓋部2及び基部3の中央部分から外周縁部に向けて放射状に形成されている。また、これら突出リブ80,81は、外周部6や取付部25の周方向に向けて所定の間隔をあけて形成されている。また、
図25(a)において示すように、閉蓋時には、突出リブ80と突出リブ81とが重なるように形成されている。
【0101】
このように、外周部6及び取付部25に突出リブ80,81を形成することによって、外周部6及び取付部25の強度を大きく向上させることが可能になる。また、このように突出リブ80,81を形成することにより、蓋部材1を成形するときに外周部6や取付部25に生じがちな皺の発生を低減させることも可能になる。すなわち、この蓋部材1においては、成形時に生じがちな皺となり得る部分が突出リブ80,81として予め成形されるように構成されているため、これら突出リブ80,81が皺を集中的に形成する箇所としての機能をも持たせることができる。そのため、突出リブ80,81を形成することにより、これら突出リブ80,81が形成されていない箇所に皺を発生させることを低減させることができる。
【0102】
次に、閉止手段のについて適宜図面を用いて説明する。閉止手段は、蓋部2と基部3との閉蓋状態を保持するためのものである。この閉止手段としては、上記した囲繞状壁13の外壁14と膨出部5の内壁9との間における接触部16での摩擦応力によるものがあるほか、下記において図面を用いて説明するような態様が挙げられる。まず、
図26は、膨出部5の側壁と、囲繞状壁13側の側壁との間の突出部と凹部との係合による場合を表し、
図26(a)に示す態様は、蓋部2において膨出部5の側壁部7に、囲繞状壁13の方向に突出した第1突出部18を形成するとともに、基部3における囲繞状壁13には、第1突出部18と係合する孔部38を設け、閉蓋時に第1突出部18と穴部38との係合により閉蓋状態が保持されるようになっている。第1突出部18の裏面側(膨出部5における側壁部7の外面側)の凹部(第1凹部20)には、第1突出部18の強度を向上するために、必要により補強材21を設ける。
【0103】
また、
図26(b)に示す態様は、
図26(a)の態様とは逆に蓋部2における膨出部5の側壁部7に孔部39を開口形成し、基部3における囲繞状壁13に第2突出部19を形成し、閉蓋時に第2突出部19と孔部39とが係合して閉蓋状態が保持されるようになっている。この場合には、必要に応じて第2突出部19の裏面側(囲繞状壁13の内面側)の凹部(第2凹部34)には、第2突出部19の強度を向上するために、必要により補強剤35を設ける。
【0104】
図27(a)に示す態様は、蓋部2における膨出部5の側壁部7に、囲繞状壁13方向に突出する突片18aを形成するとともに、囲繞状壁13にこの突片18aと係合する孔部38aを設け、突片18aが孔部38a内に嵌まりこんで係合するようになっている。突片18aの表面側の凹陥部20aに補強剤21と形成しておくと、紙材料の厚さが薄い場合でも突片18aと孔部38aとの係合を確実に行うことができる。
図27(b)に示す態様は、
図27(a)とは逆に、囲繞状壁13に対して、該囲繞状壁13の外側に突出する突片19aを設け、膨出部5の側壁7に孔部39aを設け、突片19aが孔部39aに嵌まりこむことにより係合するように構成されている。
図27(b)中の符号35は、突片19aの補強のため、該突片19aの凹陥部20bに塗布等の方法により必要により設けた補強剤である。
【0105】
また、
図28に示す態様は、
図27において示した態様をさらに変形した例である。この蓋部材1は、蓋部2における膨出部5の側壁部7に囲繞状壁13方向へ突出する突片18aを形成し、基部3における囲繞状壁13に側壁部7方向へ突出する突片19aが形成されており、これら突片18aと突片19aとが係合することによって蓋部2と基部3との閉蓋状態が維持されるように構成されている。また、突片18aの表面側に形成されている凹陥部20aには補強材21が塗布等の方法により設けられ、突片19aの裏面側に形成されている凹陥部20bには補強材35が塗布等の方法により設けられている。これら補強材21と補強材35とは、それぞれ突片18aと突片19aとを補強するためのものである。これら補強材21及び補強材35には、上記した接着剤等のほか、接着剤に各種のフィラーを混ぜ込んだものを用いるのが好ましい。また、
図28に示すように、突片18aは、端縁部としての上端縁部18cと側壁部7との間に隙間が生じるように形成されており、突片19aは、端縁部としての下端縁部19cと囲繞状壁13との間に隙間が生じるように形成されている。この隙間からは、補強材21,35が露出するようになっており、閉蓋時に第1突出部18と第2突出部19とが係合すると、補強材21と補強材35同士が接触した状態で、閉蓋状態が維持されるようになっている。第1突出部18において補強材21が露出している部分、及び第2突出部19において補強材35が露出している部分においては、これら補強材21と補強材35との露出面は平滑面ではなく細かい凹凸が形成されてザラザラした感触を有する凹凸面となりやすい。そのため、蓋部材1の閉蓋時に補強材21と補強材35とが係合すると、これら補強材21と補強材35との凹凸面同士が接触することによる摩擦抵抗力が増えるため、より閉蓋した状態を維持しやすくなり、かつ気密性も向上させることが可能になるように構成されている。また、
図29及び
図30に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の態様である。この態様における蓋部材1では、閉止手段として蓋部2には孔部2aが形成され、基部3には、閉蓋時に孔部2aと係合可能な位置に突出片3aが形成されている。これら孔部2a及び突出片3aは、
図30に示すように、閉蓋時に係合するようになっており、閉蓋状態が保持されるように構成されている。これら孔部2a及び突出片3aは従来から公知の方法を任意に用いて形成することができるが、蓋部材1を例えばプレス成形などにより成形する際に、蓋部2や基部3等が形成される工程の中で形成されることが、蓋部材1の製造効率を向上させ、かつ製造コストを低減することができる点において好ましい。この場合、突出片3aは、囲繞状壁13を成形する工程においてフランジ部26と外壁部14との境界部分に形成され、かつフランジ部26及び外壁部14が折り曲げ形成される前に突出片3aが形成される形成部を形成しておくことが好ましい。
図29に示す通り、外壁部14とフランジ部26とは互いに屈曲するように形成されているため、突出片3aを形成する箇所としてこれら外壁部14とフランジ部26との境界部分に形成すると、外壁部14とフランジ部26とを形成することのみによって、突出片3aを形成することが可能となる。なお、この突出片3aや該突出片3aの近傍には、例えば上記した塗工剤を塗布する等して、突出片3aを構成する紙材料に剥がれ等を生じにくくし、耐久性を向上させる処理を行うことが好ましい。
【0106】
図31は、膨出部5の側壁部7と囲繞状壁13の一部とを、それぞれ突出状に折り曲げて形成した凹凸部を相互に係合させるようにした態様を示し、膨出部5の側壁7には、その一部を内側に折り曲げて突起した第1突出部18を設け、囲繞状壁13の上端部にはその一部を外側に突出状に折り曲げて形成した第2突出部19とを設けてある。これら第1突出部18及び第2突出部19は、これらを形成する箇所を挟み込んで押し潰す等の方法で折り曲げ形成することができる。
【0107】
図31(a)に示す態様は、第1突出部18と第1係合部46とを蓋部2の側壁部7に形成し、第2突出部19と第2係合部47とを基部3の囲繞状壁13に形成している例である。また、この第1突出部18は、内側端縁部18bを有している。内側端縁部18bは、側壁部7のうち、内側に向けて折り曲げ形成された後、さらに外側に向けて折り曲げ形成することにより形成された端縁部である。内側端縁部18bが形成されることにより、側壁部7には該側壁部7を形成する紙材料が折り返された折り返し部分7aが形成されている。この折り返し部分7aは、折り返されることにより複数の紙が重ね合わされている。これら重ね合わされた紙材料はそのまま配置してもよいが、折り返し部分7a及び第1突出部18の強度及び繰り返しの開閉動作に伴う耐久性を向上させるために接着剤等で重ね合わせられた紙材料同士を接着固定することが好ましい。また、第1突出部18が形成されている箇所とは異なる箇所に、第1係合部46が形成されている。本態様では、第1係合部46は第1突出部18の上方に形成されており、この第1係合部46は、第2突出部19が挿入されて係合可能に形成されている。
【0108】
また、囲繞状壁13には、該囲繞状壁13よりも外側に突出する第2突出部19が形成されている。この第2突出部19は、外側に突き出る突起状に形成されている。また、この第2突出部19は、外側端縁部19bを有している。外側端縁部19bは、天井壁11から囲繞状壁13へと連続する位置に、外側へ向けて突出するように折り曲げられて形成されている。この外側端縁部19bが形成されることにより、囲繞状壁13には、該囲繞状壁13を形成する紙材料(基部3を形成する紙材料)が折り返された折り返し部分13bが形成されている。この折り返し部分13bは、折り返されることにより複数の紙が重ね合わされている。これら重ね合わされた紙材料はそのまま配置してもよいが、折り返し部分13b及び第2突出部19の強度及び繰り返しの開閉動作に伴う耐久性を向上させるため、上記したように複数枚の紙材料が一体化される程度の力を加えて潰したり、接着剤等で重ね合わせられた紙材料同士を接着固定することが好ましい。また、第2突出部19で形成されている箇所とは異なる箇所に、第2係合部47が形成されている。本態様では、第2係合部47は第2突出部19の下方に形成されており、この第2係合部47は、第1突出部18が挿入されて係合可能に形成されている。
【0109】
図31(b)に示す態様は、第1突出部18と第1係合部46とを蓋部2の側壁部7に形成し、第2突出部19と第2係合部47とを基部3の囲繞状壁13に形成している例の別の態様である。この態様では、側壁部7の一部を折り曲げ形成するなどして側壁部7よりも内側に突出する第1突出部18を形成するとともに、同じく側壁部7の一部を折り曲げ形成するなどして、外側折り曲げ部7bを形成することにより、第1係合部46を形成している。第1突出部18は内側に突き出る突起状に形成されている。また、この第1突出部18に形成されている内側端縁部18bは、側壁部7を上記したようにして折り曲げ形成するなどして形成されている。また、内側端縁部18bが形成されることにより、上記した折り返し部分7aが形成されている。この折り返し部分7aは、上記したように複数枚の紙材料をそのまま配置させてもよいし、複数枚の紙材料が一体化する程度まで強固に潰してもよい。また、複数枚の紙材料を接着剤により接着固定させてもよい。第1係合部46は、第1突出部18の上方に形成されており、上記した通り、側壁部7において外側折り曲げ部7bを形成することによって形成されている。この外側折り曲げ部7bについても、折り返し部分7aと同様の方法により、上記したように複数枚の紙材料をそのまま配置させてもよいし、複数枚の紙材料が一体化する程度まで強固に潰してもよい。これら折り返し部分7a及び外側折り返し部7bは、複数枚の紙材料を接着剤により接着固定させてもよい。複数枚の紙材料を潰して一体化させたり、接着剤等により接合することが、全体的な強度を向上させたり繰り返しの開閉動作に伴う耐久性を向上させることができる点で好ましい。
【0110】
閉止部としての第1突出部18及び第2突出部19は、例えば上方向に向けて突出させた突起状の閉止部を横方向に折り曲げて形成してもよいし、直接、横方向に向けて形成してもよい。なお、この閉止部としての第1突出部18及び第2突出部19を形成する向きは任意に定めてよく、蓋部2が基部3に対して閉蓋することができれば、どの方向でもよい。閉蓋時は、蓋部2に形成されている第1突出部18と基部3に形成されている第2突出部19とがそれぞれ係合することによって閉蓋状態を維持することができるようになる。この場合蓋部2に形成されている第1突出部18が基部3側に形成されている第2突出部19よりも下方に位置し、第1突出部18における係合と第2突出部9における係合とにより、係止されている構成とすることが好ましい。
【0111】
図32に示すのは、閉止手段の別の態様であり、蓋部2及び/又は基部3に片状部材を取り付けることにより閉止手段を形成した態様である。
図32(a)は、蓋部2に係合孔49を形成し、基部3には第1片状部材48を設けておき、閉蓋時には第1片状部材48が係合孔49に嵌合し係合することにより、蓋部2の閉蓋状態を維持することができるように構成されている。なお、この態様において、蓋部に第1片状部材48に相当する片状部材を設け、基部3に係合孔49に相当する係合孔を開口形成してもよい。
図32(b)は、蓋部2には係合孔49が開口形成されるとともに、この係合孔49の下端部に係合片部50が形成されている。この係合片部50は、側壁部7に係合孔49を開口形成する際に一体的に形成してもよく、また係合片部50を後付けで取付固定してもよいが、繰り返しの開閉に伴う耐久性を維持する点においては、一体的に形成することが好ましい。また、基部3には、第1片状部材48が設けられている。また、この第1片状部材48の下方には、上記した係合片部50が侵入可能な空間部48aが形成されている。この態様では、閉蓋時には第1片状部材48の下方に形成された空間部48aに係合片部50が侵入し、第1片状部材48の下端縁が係合片部50と係合する。そのため、蓋部2は閉蓋状態を維持することができるようになっている。
図32(c)は、蓋部2には係合孔53が開口形成されており、基部3には、該基部3を形成する紙材料の一部を折り返すことによって爪状に形成された爪状部材52が形成されている。この爪状部材52は、基部3においてフランジ部26と囲繞状壁13の一部を覆うように折り返されている。囲繞状壁13において折り返し部分が形成されている場所並びに形状及び大きさは、係合孔53と対応するものとなっている。そして、閉蓋時には、蓋部2の係合孔53内に爪状部材52が嵌合して係合することにより、蓋部2の閉蓋状態が維持されるようになっている。
図32(d)は、蓋部2に第2片状部材54が設けられ、基部3に第1片状部材48が設けられている。第1片状部材48は閉蓋時に第2片状部材54よりも上方に位置する箇所に設けられている。そして、蓋部材2が閉蓋しているときは、第1片状部材48の下端縁と第2片状部材54の上端縁とが係止するようになり、蓋部2の閉蓋状態が維持されるようになっている。
【0112】
図33に示すのは、別の態様の閉止手段を有する蓋部材1の例である。この蓋部材1は、閉止手段として、蓋部2の膨出部5に係止部55が形成され、基部3の囲繞状壁13に係止受け部56が形成されている。係止部55は、膨出部5の側壁部7に形成されており、この側壁部7のテーパとは逆方向のテーパとなるように形成されている。つまり、側壁部7のテーパが上方に向けて先細りになる角度のテーパであるのに対し、係止部55におけるにおけるテーパは、下方に向けて先細りになる角度を有するテーパである。また、係止部55は、このように側壁部7のテーパとは異なる角度でのテーパとなるように形成されているため、側壁部7の内壁9側に向けて突出するように形成されている。
【0113】
また、基部3の囲繞状壁13には、蓋部2が閉蓋したときにおける上記した係止部55が形成されている箇所と対応する箇所に係止受け部56が形成されている。この係止受け部56の形状は、側壁部7の内壁9から内側に向けて突出した形状と対応する形状に形成されており、閉蓋時に、これら係止部55と係止受け部56とが互いに係合し合うことにより、閉止手段としての機能、すなわち蓋部2の閉蓋時にこの閉蓋した状態を維持することができるように形成されている。
【0114】
また、
図34及び
図35に示す蓋部1では、閉止手段が周回状に形成されている。まず、
図34及び
図35に示す蓋部材1では、閉止手段として蓋部2の膨出部5の側壁部7に周回状に係止部55が形成されており、基部3の囲繞状壁13には係止受け部56が周回状に形成されている。係止部55が係止受け部56に係合して閉蓋状態が保持されるようになっている。なお、
図34及び
図35において上記したこの係止部55及び係止受け部56の形状や、設ける位置は例示に過ぎないものであり、係止部55と係止受け部56とが互いに係合することにより係止され、蓋部2が基部3に対して閉蓋状態を維持することができればよく、上記した構造に限定されるものではない。なお、この係止部55及び係止受け部56は、蓋部材形成体42をプレス加工等するときに形成してもよいし、他のタイミング、例えば膨出部5や囲繞状壁13が形成された後に形成してもよい。さらには、これら以外の任意のタイミングで形成してもよい。また、係止部55及び係止受け部56は、連続的に形成されているものに限定されるものではなく、断続的、例えば左右両側に設けたり、一定の周期で係止部55及び係止受け部56が形成されていてもよい。
【0115】
次に、
図36に示すのは、閉止手段を有する蓋部材1の他の例の断面を表す模式図である。この蓋部材1では、係止部55及び係止受け部56が蓋部2及び基部3の一部に形成されている。すなわち、
図36に示す閉止手段では、蓋部2と基部3とにおいて、ヒンジ部4の折り曲げ部33が形成されている箇所とは反対の箇所に係止部55及び係止受け部56が形成されている。係止部55は、膨出部5の外周部6寄りの位置において、内側に向けて突出するように形成されており、係止受け部56は、囲繞状壁13取付部25寄りの位置に、閉蓋時に係止部55と対応する位置に凹状に形成されている。なお、
図36においては、係止部55及び係止受け部56は角形状となるように形成した例を示しているが、係止部55及び係止受け部56の形状は限定されず、閉蓋時に蓋部2が基部3に対して閉蓋している状態を維持することができるように係止部55及び係止受け部56が係合することにより蓋部2と基部3とが係止されれば、他の形状であってもよい。
【0116】
図37(a)に示すのは、蓋部材1における蓋部2の膨出部5における側壁部7と、基部3の囲繞状壁13における外壁14と間に形成された閉止手段の別の例である。ここで、側壁部7には内側に向けて突出した係止部55が形成されており、外壁14には、凹状の係止受け部56が形成されている。
図37(a)に示す例では、これら係止部55及び係止受け部56はいわゆる楔形となるように形成されている。このように、楔形の係止部55と係止受け部56との係合による閉止手段は、蓋部の閉止状態をより確実に維持することができる。
【0117】
図37(b)に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例である。
図37(b)に示す閉止手段は、蓋部2及び基部3のいずれか(
図37(b)では蓋部2)に係止部55が形成されており、蓋部2及び基部3のいずれか(
図37(b)では基部3)に係止受け部56が形成されている。係止部55は、側壁部7の内壁9よりも内側に突出する端部が形成されており、係止受け部56は、基部3の取付部25の上面25aよりも上方に配置されており、この係止受け部56と取付部25の上面25aとの間には、係止部55が侵入可能な幅を有する隙間が形成されている。蓋部材1は、閉蓋状態が維持されているときは、係止部55の端部が係止受け部56と取付部25の上面25aとの間に形成されている隙間に侵入し、さらにこれら係止部55と係止受け部56とが係止することにより、蓋部2が基部3に対して閉蓋した状態を維持することができるように構成されている。
【0118】
この場合において、係止部55及び係止受け部56は、蓋部材1と同じ材料を用いて形成してもよいし、異なる材料を用いて形成してもよい。蓋部材1と異なる材料は、係止部55及び係止受け部56として形成したときに互いに係止可能であって、かつ所定の耐久性があるものであること、並びに蓋部2及び基部3と接合可能であるものであることが好ましい。このような材料であれば、特に限定することなく従来から公知のものを任意に選択して用いることができる。
【0119】
例えば、これら係止部55及び係止受け部56として用いられる材料であって蓋部材1の材料とは異なるものとしては、各種のプラスチック材料、例えばポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエテルケトン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などがあり、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが用いられる。また、上で例示したような天然分解性を有する材料を任意に選択して用いることもできる。
【0120】
このように、係止部55及び係止受け部56を形成して、これら係止部55及び係止受け部56を係止することで、確実に基部3に対して蓋部2を閉蓋した状態を強固に維持することができる。また、係止部55及び係止受け部56は、耐久性に優れているため、蓋部材1における蓋部2の繰り返しの開閉動作にも耐えうる蓋部材1を提供することも可能になる。
【0121】
なお、この例では、蓋部2の内面に係止部55を設け、基部3の囲繞状壁13の外壁面15に係止受け部56を設けた例を用いて説明しているが、これに限定されることはなく、蓋部2に係止受け部56を設けて基部3に係止部55を設けてもよいし、他の方法によって係止部55及び係止受け部56を設けてもよい。
【0122】
図37(c)に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例である。蓋部材1において、蓋部2及び基部3には、シール部材としての面ファスナー(マジックテープ(登録商標)ともいう)57が接合されている。接合の態様としては、ヒートシールや超音波接合、低周波接合、高周波接合、ホットメルト接着剤のような各種の接着剤による接合など、従来から公知の手段を任意に選択して用いることができる。
図37(c)において、この面ファスナー57は、蓋部2における側壁部7の内壁9に接合されている面ファスナー57aと、また基部3における囲繞状壁13の外壁14にも接合されている面ファスナー57bとからなる。これら面ファスナー57a,57bは、一般的には雄型の形状を有するシール部と雌型の形状を有するシール部とがあり、雄型の形状のシール部と雌型の形状を有するシール部とを互いに接合するのが一般的ではあるが、ここでの蓋部材1においては、用いる面ファスナー57a,57bとしては、例えば雄型と雄型とを接合したり、メス型と雌型とを接合するといった具合に、同一の型を用いることが好ましい。このように同一の型の面ファスナー57a,57bを用いることにより、蓋部材1における蓋部2での側壁部7の内壁9と基部2の囲繞状壁13の外壁14のような接合においては、閉蓋時に面ファスナー57a,57b同士がより接合しやすくなり、蓋部材1としても閉蓋した状態を維持しやすくすることができる。なお、ここでの蓋部材1においては、膨出部5における側壁部7の内壁9と囲繞状壁13における外壁14のそれぞれに面ファスナー57a,57bを接合している例を用いているが、蓋部2が基部3に対して閉蓋した状態を維持することができるのであれば、他の態様であってもよい。また、上記したように、面ファスナー57a,57bを上記した両側に接合しなくてもよく、蓋部2と基部3とのどちらか片側にのみ面ファスナー57を接合してもよいし、蓋部2と基部3とのいずれか一方の片側には面ファスナー57を接合し、また蓋部2と基部3とのいずれか他方の片側には、面ファスナー57とは異なる態様の部材を任意に選択して用い、接合するようにしてもよい。
【0123】
図37(c)に示す態様としては、面ファスナー57以外のものを用いてもよい。例えば、蓋部2における側壁部7の内壁9及び基部における囲繞状壁13の外壁14に所定厚さを有する部材、例えば上記した種々の材質の板材や膜剤、フィルムなどを用いてもよいし、また各種のコート剤(塗工剤)、インクなどを用いてもよい。さらには、各種の樹脂材料を用いてもよい。これら板材、膜剤、フィルム、コート剤(塗工剤)、インク、各種の樹脂材料としては、本明細書において上記したものを任意に選択して適宜用いることができる。上記した所定厚さを有する部材として各種の樹脂材料を用いる場合、塗布時には液状の態様であって、所定の条件(例えば温度や紫外線照射など)を与えることによって硬化するものを用いるのが好ましい。例えば、この場合には、塗布時には液状であるのに対し、紫外線を照射することにより硬化するUVコート剤を用いることが好ましい。UVコート剤は、紫外線を照射することにより硬化するので、蓋部2や基部3を形成する紙材料に対して接合しやすく、かつ硬化後は所定の膜厚を有するように形成することができるので、生産性を向上させることができる。また、紫外線照射により硬化させることができるため、蓋部材1の全体に対しての影響も比較的少ない状態で硬化させることができる。さらには、このように所定厚さの部材を形成することにより、膨出部5における側壁部7の内壁9及び/又は囲繞状壁13の外壁14を部分的に補強することができる。蓋部材1は、一般的に蓋部2と基部3との間における開閉動作が繰り返し行われることが多いため、特に閉止手段としての係止部55や係止受け部56が形成される箇所は特に強度が必要になる場合がある。このような場合に、例えば閉止手段としての係止部55や係止受け部56が形成されている箇所に上記したUVコート剤などを塗布硬化させることにより、当該箇所の強度を大きく向上させることができ、繰り返しの使用、特に開閉動作の繰り返し使用に対する耐久性も大きく向上させることができる。
【0124】
なお、上記した例では、所定厚さを有する部材としてUVコート剤を用いた例であって、かつ膨出部5における側壁部7の内壁9と、基部3の囲繞状壁13の外壁14との両方に該UVコート剤を塗布硬化した例を用いて説明したが、これに限定されることはない。例えば、上記した内壁9と外壁14のどちらか一方にのみUVコート剤を塗布硬化させてもよいし、また、用いるコート剤についても、UVコート剤に限定されることはなく、本明細書において上記した各種のコート剤などを任意に選択して用いることができる。また、先の説明では、上記したような各種コート剤は、閉止手段としての係止部55及び係止受け部56が設けられる箇所において用いられる例を用いて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、蓋部材1において、所定の強度が必要とされる箇所の補強として、上記した態様で各種コート剤等を用いて補強されてもよい。なお、この各種コート剤の厚さは、補強する強度に応じて任意に設定してよい。このように厚さを任意に設定することにより、蓋部2と基部3との間における摩擦抵抗の大きさを調節又は増減させることができる。そのため、蓋部2の閉まり具合などを簡単に調節することが可能になる。
【0125】
また、上記した例以外としてはUVコート剤等のような各種の塗工剤のほか、各種の接着剤を用いることもできる。接着剤としては、従来から公知のものを任意に選択して用いることができるが、その中でも例えばホットメルト接着剤を用いることが好ましい。ホットメルト接着剤は、接着時に加熱溶融して対象物に接着させる接着剤であり、常温では固体状に形成されているものである。このホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)系ホットメルト、オレフィン系ホットメルト、ゴム系ホットメルト、ポリアミド(ナイロン)系ホットメルト、ポリエステル系ホットメルト、ポリウレタン系ホットメルトなどがあり、用途や特性(例えば粘度等)に応じて適宜用いてよい。また、ホットメルト接着剤を塗布する方法についても、スプレー塗布(例えば、カーテンスプレーやスパイラルスプレーなど)、コート(例えば、スロットコート、E・コート、デザインコート、パターンコートなど)、フォーミングメルト、ビート/ドット、ホットメルトをZ状のパターンで塗布するZIPコート、ホットメルトをランダム状のパターンで塗布するWAVEコート、コームガンによる塗布などが挙げられる。これらの方法によってホットメルト接着剤を塗布硬化させることによっても、膨出部5における側壁部7の内壁9と、囲繞状壁13の外壁14との間における摩擦抵抗力を増加させることができたり、またホットメルト接着剤が有する粘度を用いることによって、蓋部2の閉蓋状態を維持しやすくすることができるようになる。
【0126】
なお、ホットメルト接着剤の粘度等については、上記した通り従来から公知のものを任意に選択して用いてよく、例えば、上記した高粘度のものを用いて蓋部材1における蓋部2の基部3に対しての閉蓋状態を維持することができるようにしてもよいし、または再剥離・再接着可能な特性を有するホットメルト接着剤を用いて蓋部3の閉蓋状態を維持することができるようにしてもよい。
【0127】
図37(d)に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例である。この蓋部材1は、蓋部2及び基部3において、閉止手段としての係止部55及び係止受け部56が形成されている。この例での係止部55及び係止受け部56は、係止片として形成されており、これら係止部55及び係止受け部56は閉蓋時に互いに係止することが出来る位置に形成されている。具体的には、係止受け部56となる係止片59が係止部55となる係止片58の上側に位置するように形成されている。これら係止部55としての係止片58及び係止受け部56としての係止片59は、例えば上記したような板材やコート剤などを用いて行うことができ、また例えばホットメルト接着剤のような、各種の接着剤を塗布した後に硬化させることにより形成することができる。このように、各種の接着剤を用いることにより天然分解性の材料を用いやすく、かつ閉止手段としての機能を持たせやすくするといったことも可能になる。また、このように係止部55としての係止片58、及び係止受け部56としての係止片59を形成することによっても、蓋部2と基部3との間における摩擦抵抗を大きくすることができる。そのため、より確実に蓋部2が閉蓋している状態を維持しやすくなり、密閉性にも優れた蓋部材1を提供することが可能になる。
【0128】
図38に示すのは、蓋部材1における閉止手段のさらに別の態様であり、蓋部2と基部3とが開蓋しているときの閉止手段の態様を表した模式図(一部分を切り欠いた拡大斜視図)である。また、
図39に示すのは、この態様における蓋部材1において、蓋部2及び基部3が開蓋したときの閉止手段の状態を表した模式図であり、
図39(b)に示すのは、蓋部2と基部3とが閉蓋したときの閉止手段の状態を表した模式図である。この例における閉止手段は、膨出部13の外壁14に形成された係止部55としての突起部60と、側壁部7に形成された係止受け部56としての貫通孔61とから構成されており、閉蓋時にはこの突起部60が貫通孔61に挿通し、かつ突起部60の先端部により挿通した状態が維持できるようになっている。このような態様によっても、閉止手段において蓋部2と基部3とが閉蓋した状態を維持することが可能になる。なお、
図38及び
図39においては、閉止手段を蓋部2の膨出部5における側壁部7と、基部3の囲繞状壁13における外壁14とに形成している例を用いて説明しているが、閉止手段を設ける場所については先に説明した例に限定されるものではない。例えば、蓋部2における外周部6と基部3における取付部25とのいずれか一方に突起部60を形成し、外周部6と取付部25のいずれか他方に貫通孔61を形成するようにしてもよいし、上記した以外の場所に設けてもよい。また、ここでの閉止手段は、側壁部7や外壁14に対して一体成形により形成してもよいし、別体で形成したものを適宜接合するなどして取付固定するようにしてもよい。
【0129】
図40から
図42に示すのは、蓋部材1における閉止手段のさらに別の態様である。これら
図40から
図42に示すように、蓋部材1は、閉止手段として蓋部2に係止受け部56が形成され、基部3に係止部55が形成されている。これら係止部55及び係止受け部56は、前方に向けて突出するように形成されている。すなわち、係止部55は、基部3の囲繞状壁13よりも前方に向けて突き出るように突出形成されており、同様に、係止受け部56は、蓋部3の膨出部5よりも前方に向けて突き出るように突出形成されている。これら係止部55及び係止受け部56は、閉蓋時に係止部55及び係止受け部56が互いに嵌合し合うとともに、係止部55及び係止受け部56との間において閉蓋した状態を維持することができるようになっている。また、蓋部材1は、開蓋時には係止部55及び係止受け部56の嵌合が解除される。
【0130】
上記した通り、閉止手段は基部3の囲繞状壁13及び蓋部2の膨出部5に形成されている。また、囲繞状壁13及び膨出部5において、閉止手段としての係止部55及び係止受け部56が形成されている箇所における立ち上がり角θの角度が、囲繞状壁13の外壁14及び膨出部5における側壁部7の内壁9に形成されている箇所におけるテーパ角(この角度も必要に応じて立ち上がり角ともいう)の角度とは異なる角度で形成されている。この場合における所定の立ち上がり角は、側壁部7の内壁9のテーパ角や囲繞状壁13の外壁14のテーパ角とは異なる角度であることが好ましい。また、この立ち上がり角θは、内壁9や外壁14のテーパ角とは異なり、かつ該テーパ角と直交する角度以下であることが好ましい。
【0131】
また、この閉止手段としての係止部55及び係止受け部56が形成されている箇所における囲繞状壁13及び膨出部5は、下方、すなわち囲繞状壁13にあっては取付部25が形成されている方、膨出部5にあっては、外周部6が形成されている方に向けて先細り状に形成されていることが好ましく、またテーパ状に形成されていることがより好ましい。なお、テーパ状に形成されている箇所を少なくとも一部に含んでいればよく、例えばこの閉止手段としての係止部55及び係止受け部56を複数個所に設けてもよい。閉止手段を複数個所に設ける場合は、その設ける数は特に限定されるものではない。
【0132】
このような構成において、蓋部材1の蓋部2を基部3に対して閉蓋する際の作用を
図42に基づいて説明する。まず、
図42(a)に示すのは、蓋部材1において蓋部2が基部3に対して開蓋している状態である。この状態において、ヒンジ部4を軸として同図に示すA方向に蓋部2を回動させると、
図42(b)に示すように、蓋部2が基部3に近接する方向へと回動する。そして、
図42(c)に示すように、蓋部2における係止受け部56の下端部62aが基部3における係止部55の上端部61aと当接する。このように、係止部55の上端部61aと係止受け部56の下端部62aとが当接した状態でさらに図中A方向へと向かうように力を加えると、係止受け部56が弾性変形をして図中B方向へと変形する。そして、係止受け部56の下端部62aが係止部55の上端部61aの外周側へと位置するようになり、さらに図中のA方向へと回動させると、
図42(d)に示すように閉蓋される。
【0133】
このような動作を経て閉蓋した蓋部2は、係止受け部56における内面62bと係止部55における外面61bとが互いに接する箇所が形成され、これら外面61bと内面62bとが接触した状態を形成することができる。このような状態になると、使用者が所定の力でA方向とは逆の方向へと回動させるようにしなければ、蓋部2が開蓋する方向に向けて回動することもなく、より閉蓋した状態を維持しやすくなり、蓋部材1としての密閉性などをより大きく向上させることができる。
【0134】
図43に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例である。
図43(a)は本例の閉止手段を有する蓋部材1の全体的な断面を表しており、
図43(b)は、
図43(a)における蓋部材1において閉止手段が形成されている箇所を部分的に拡大した図である。この蓋部材1は、蓋部2の天井壁11における天井面12に係止受け部56が設けられている。この係止受け部56は、天井壁11を形成する際に一体的に形成してもよいし、天井壁11とは別部材で形成して、該天井壁11に対して取付固定してもよい。係止受け部56は、閉蓋時には基部3に形成されているフランジ部26の内側周縁26bの近傍を係止することができるように形成されている。すなわち、この例における蓋部材1では、係止受け部56と軽視されるのはフランジ部26であり、フランジ部26の内側周縁26bが係止部55としても機能するように形成されている。この例においては、係止受け部56は、断面L字形に形成されており、外周部6の内側周縁26bと係止することができるように形成されているが、上記した通り蓋部2の閉蓋状態が維持することができるのであれば、係止受け部56を形成する位置や大きさ、形状などは限定されない。このような態様の蓋部材1によれば、蓋部2が閉蓋している状態を確実に維持することができるとともに、蓋部2を開けるときや蓋部2を閉蓋するときは、係合受け部56が係合部55と係合するため、係合時は、この開閉した感触を維持するとともに、係合時や係合を解除したときの感触を使用者にも伝えることができるようになっている。
【0135】
図44に示すのは、蓋部2の閉蓋状態を維持するために設ける係止部55及び/又は係止受け部56として係止片を用いる場合に、この係止片を蓋部2の側壁部7及び/又は基部3の囲繞状壁13に取付固定する態様を説明するための説明図である。
図44に示した通り、この例では、係止部55及び/又は係止受け部56としての係止片となる片状部材65を超音波接合により接合する。この場合、この片状部材65にはダイヤモンドカッター等で切断したものを用い、さらに蓋部2及び/又は基部3の裏面側にはホーン63又はアンビル64が位置し、かつ基部3の表面側にはアンビル64又はホーン63が位置している。この蓋部2及び/又は基部3の表面側に位置するアンビル64又はホーン63は、片状部材65が入る程度の小孔66が形成されており、この小孔66に片状部材65を配置し、かつホーン63とアンビル64とを用いて超音波により融着し、片状部材65を接合している。
【0136】
なお、ホーン63及びアンビル64は上記した以外の態様であることには限定されず、たとえば
図45に示すような、図中A方向に回転する回転体として形成されており、一部がフランジ状に突出形成されている接合部67を有するホーン63と、固定体として形成されているアンビル64とからなり、超音波接合する対象物Mを連続的に接合していく態様のものを用いてもよい。
【0137】
なお、蓋部材1を形成する場合には、プレス成形を行う前に予め筋状の溝を形成しておくと、プレス成形しやすくなるため、好ましい。また、蓋部2及び基部3を係止部55及び係止受け部56で係止させる場合において、この係止部55や係止受け部56を所定の色で着色したり、係止部55及び係止受け部56が係止されている状態のときにその着色されている箇所を使用者が視認できる状態にすると、使用者は係止部55と係止受け部56とが係止され、蓋部2と基部3とが閉蓋している状態にあることを視覚的に確認することができるようになるため、より好ましい。
【0138】
図46及び
図47に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例である。この蓋部材1は、蓋部2及び基部3において、ヒンジ部4が形成されている側(ヒンジ部4が形成されている端部を基端部68という)とは反対側である先端側の端部(以下、この端部を先端部69という)に、閉止手段としての係止部55及び係止受け部56が形成されている。
図46においては、蓋部2及び基部3のいずれか一方(例えば蓋部2)には係止部55が形成されており、蓋部2及び基部3いずれか他方(例えば基部3)には係止受け部56が形成されている。係止部55は、蓋部2における外周部6において、該蓋部2の先端部69に形成されている。この係止部55は、外周部6よりもさらに外方向に向けて延出するように片状に形成されており、その先端縁部70には傾斜部72が形成されている。この傾斜部72は、係止部55が係止受け部56と係止したときに、係止受け部56に形成されている係止用突起71が外れるのを防止し、蓋部2と基部3との閉蓋状態を維持しやすくするためのものである。また、係止部55には、複数(
図46では2つ)のリブ73が形成されるとともに、外周部6においてこのリブ73に近接する位置にも複数のリブ74が形成されている。これらリブ73,74は、係止部55の強度を向上させ、係止受け部56との係止及び係止解除を繰り返し行った場合の耐久性を向上させることができるようになっている。
【0139】
係止受け部56は、基部3に形成されており、閉蓋時に蓋部2における係止部55と係止することが可能な位置に形成されている。この係止受け部56は、取付部25からさらに外側に延出する片状に形成されるとともに、閉蓋時に係止部55と係止するための係止用突起71が形成されている。この係止用突起71は、L字形に屈曲形成されており、この屈曲形成された先端部71aが閉蓋時においては係止部55の上方に位置することにより、蓋部2の閉蓋状態が維持されるようになっている。なお、蓋部2を開蓋するときは、この係止受け部56の係止用突起71の係止部55との係止状態を解除すればよい。
【0140】
図46,
図47に示すような態様の閉止手段を形成する場合、蓋部材1において最も先端側の端部において蓋部2及び基部3との閉蓋状態を維持するため、閉蓋時における蓋部材1の気密性をよりよくすることが可能になる。また、この態様の場合には、係止部55及び係止受け部56の大きさを比較的自由に形成することができるため、これら係止部55及び係止受け部56の強度を持たせやすくすることも可能になる。さらに、この態様の場合には、蓋部2及び基部3において、先端部側に閉止手段が形成されているので、使用者の操作性を向上させることもでき、開閉作業時の煩雑さを低減することも可能になる。
【0141】
図48に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例である。この態様は、先に
図46及び
図47に基づいて説明したのと同様の構成を有する閉止手段としての係止部55及び係止受け部56を備えている点で構成が共通している。一方で、先に説明した例は、楕円形状に形成された蓋部材1において、短径の一端を基端部68とし、短径の他端を先端部69としているのに対し、この態様では、楕円形状に形成された蓋部材1において、長径の一端を基端部68とし、長径の他端を先端部69としている点で構成が相違する。なお、基端部68にヒンジ部4が形成されているのと、先端部69に閉止手段としての係止部55及び係止受け部56が形成されているのは、先に説明した態様と同様である。
【0142】
このようにヒンジ部4及び閉止手段を形成することにより、蓋部材1における蓋部2の開閉動作を良好に行える状態を維持しつつ、短径側の大きさを大きく形成することができる。すなわち、
図1において説明したように、包装体101における袋体102の大きさが決まっている場合においても、その決まった大きさの中で先に説明した態様の蓋部材1に比べて取出口27の大きさを大きくすることが可能になり、使用者が積層体103を取り出す際の取り出しやすさを向上させることが可能になる。
【0143】
図49に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例であり、
図46から
図48に示す態様の変形例である。この態様は、閉止手段としての係止部55及び係止受け部56が形成されている点で先の態様と構成が共通しているが、この態様に係る蓋部材1は、係止受け部56における係止用突起71の形状が相違する。即ち、例えば
図46から
図48において説明した態様の係止用突起71は、断面形状がL字形状に形成されているものの、
図49に示す態様の係止用突起71は、先端部分が傾斜状に形成されており、閉蓋時には蓋部2における係止部55よりも上方に位置し、係止することができるように形成されている。このように形成することでも、蓋部2の閉蓋状態を維持することが可能となり、先に説明した作用効果も奏する。
【0144】
図50に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例であり、
図46から
図49に示す態様の変形例である。この態様は、蓋部2に係止部55が形成され、基部3に係止受け部56が形成されている。これら係止部55及び係止受け部56は、係止部55の側縁部75と、係止受け部56における係止部55の側縁部75と対向接触する側縁部76とが接触することにより、蓋部2の閉蓋状態が維持できるようになっている。このように係止部55及び係止受け部56を形成することにより、使用者の操作性を向上させつつ、蓋部2の開閉使用に対する耐久性も持たせることが可能になる。
【0145】
図51及び
図52に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の例である。この態様は、蓋部2に係止部55が形成されるとともに基部3に係止受け部56が形成されている。この係止受け部56は、外周部6から外側に向けて延出形成されるとともに、この延出形成された箇所が、
図51中のA方向から見た場合の形状(
図52(b)に示す形状)が円弧状となり、かつ
図51中のB方向から見た場合の形状(
図52(a)に示す形状)が先端部分のみ曲線状に形成された形状となっている。また、この曲線状に形成された部分は、上部が平面状に形成された平面部75となっている。また、この係止受け部56は、外周部6から一部湾状に形成された凹部77を有するとともに、円弧状に形成された箇所に複数の補強用リブ76a,76b,76c,76dが形成されている。これら補強用リブのうち、補強用リブ76aは、係止受け部56が係止部55と係止されているとき等に、該係止部55との間において作用する力に対して補強する趣旨で形成されている。また、補強用リブ76b,76c,76dは、係止受け部56が湾曲状に形成されているため、外周部6から延出形成されている箇所の強度を向上させるために形成されている。これら補強用リブを形成することにより、係止受け部56の強度を大きく向上させることができ、蓋部2との繰り返し開閉に対する耐久性も大きく向上させることができるようになっている。なお、平面部75は、係止部55と係止する際に、該係止部55と面接触させることで係止しやすくするために形成されている。本態様では、係止部55の形状をL字形状の片状部材として形成しているが、係止部55の形状は任意に決定してよい。
図46から
図52に示す態様では、蓋部2を基部3側に押し閉めるだけで、係止部55と係止受け部56との係合が容易に行えるとともに、係止部55の端を上方に引き上げるだけで、容易に開蓋させることができる。
【0146】
図53は、蓋部材1の別の変形例を説明するための斜視図である。この蓋部材1においては、閉止手段としての係止部55と係止受け部56とが蓋部2の外周部6の裏面と基部3の取付部25の表面に設けられている。これら係止部55と係止受け部56は、例えば蓋部2に係止部55、基部3の取付部25に係止受け部56が形成される態様、蓋部2の外周部6の裏面に係止受け部56、基部3の取付部25に係止部55が形成される態様がある。この閉止手段のさらに別の例を
図54以降において説明する。
図54に示すのは、
図53において示した閉止手段の例を示しており、
図54(a)は蓋部2と基部3とが開蓋しているときの閉止手段の状態を表した模式図であり、
図54(b)は蓋部2と基部3とが閉蓋しているときの閉止手段の状態を表した模式図である。
図54の例における閉止手段は、蓋部2に形成された係止凸部82と、基部3に形成された係止凹部83とを有しており、係止凸部82の外寸L1が係止凹部82の内寸L2と同じか又はL2よりも大きくなる関係、L1≧L2の関係となるように形成されている。このように形成することにより、
図54(b)に示すように蓋部2と基部3とを閉蓋した場合に、閉止手段の係止凸部82が係止凹部83に嵌合した場合に、係止凸部82が収縮する方向に弾性変形をしながら係止凹部83へ嵌合するので、嵌合しているときに係止凸部82は弾性力によって係止凹部83を広げる方向に向けて力を作用させることになる。そのため、閉蓋時には係止凸部82と係止凹部83とが嵌合している状態をより保ちやすくすることができる。
【0147】
図55に示すのは、蓋部材のさらに別の変形例であり、
図55(a)は蓋部2と基部3とが開蓋しているときの閉止手段の状態を表した模式図であり、
図55(b)は蓋部2と基部3とが閉蓋しているときの閉止手段の状態を表した模式図である。
図55の例における閉止手段は、蓋部2に形成された嵌合凸部84と、基部3に形成された嵌合孔部85とを有しており、嵌合凸部84の下端部における外寸L3が嵌合孔部85の内寸L4と同じか又はL4よりも大きくなる関係、L3≧L4の関係となるように形成されている。このように形成することにより、
図55(b)に示すように蓋部2と基部3とを閉蓋した場合に、閉止手段の嵌合凸部84が嵌合孔部85へ嵌合した場合に、嵌合凸部84が収縮する方向に弾性変形をしながら嵌合孔部85へ嵌合するので、嵌合している時に嵌合凸部84は弾性力によって嵌合孔部85を広げる方向に向けて力を作用させることになる。そのため、閉蓋時には嵌合凸部84と嵌合孔部85とが嵌合している状態を保ちやすくすることができる。なお、嵌合凸部84は、上端部における外寸が下端部における外寸L3と同じであってもよいし、又はL3よりも小さくなるように形成されていてもよい。このように形成することにより、嵌合孔部85への嵌合がよりしやすくなる。
【0148】
図56に示すのは、蓋部材1のさらに別の変形例であり、
図56(a)は蓋部2と基部3とが開蓋したときの閉止手段の状態を表した模式図であり、
図56(b)は蓋部2と基部3とが閉蓋しているときの閉止手段の状態を表した模式図である。
図56の例では、閉止手段にホック86を使用している。つまり、蓋部2には、ホック86の一方側の固定片87が取付固定され、基部3には、ホック86の他方側の固定片88が取付固定されている。
図56においては、固定片87に形成されている孔部に対して固定片88に形成されている突出部が挿入した状態で固定されるホックを用いているが、閉蓋時に蓋部2及び基部3が閉まっている状態を維持することができるのであれば、ホックの態様は上記したものに限定されることはない。このようにして、ホック86を用いて蓋部2と基部3との閉蓋した状態を維持することもできる。
【0149】
図57に示すのは、蓋部材1のさらに別の変形例であり、
図57(a)は蓋部2と基部3とが開蓋したときの閉止手段の状態を表した模式図であり、
図57(b)は蓋部2と基部3とが閉蓋したときの閉止手段の状態を表した模式図である。
図57の例では、閉止手段に面ファスナーを用いている。蓋部2の外周部6の裏面に面ファスナー89が取付固定されており、また、基部3における取付部25の表面であって、閉蓋時に面ファスナー89が取付固定されている位置と対応する位置(閉蓋時に、取付部25において面ファスナー89と対向する所定の位置)には、面ファスナー89に対して互いに係止可能な構造を有する面ファスナー90が取付固定されている。そして、
図57(b)に示すように閉蓋時には、これら面ファスナー89と面ファスナー90とが互いに接合し閉蓋した状態を維持することができるようになる。
【0150】
なお、閉止手段に面ファスナーを用いる場合には、
図58に示すように、外周部6において面ファスナー89を取付固定する位置だけを上方に向けて突出する山型に形成し、取付部25において面ファスナー90を取付固定する位置だけを下方に向けてへこませる凹型に形成してもよい。このように山型に形成した箇所(山型部91)に面ファスナー89と取付固定し、さらに凹型に形成した箇所(凹型部92)に面ファスナー90を取付固定することにより、取付部25の表面7aと外周部6の裏面8aとを接触させつつ、面ファスナー89と面ファスナー90とを接合させることもできる。つまり、取付部25と外周部6とを上記したように形成することで、外周部6の裏面8aと面ファスナー89の裏面(接合面)の位置を面一にし、かつ取付部25の裏面7aと面ファスナー90の表面(接合面)の位置を面一にして、これら面ファスナー89と面ファスナー90とを接合し、蓋部2と基部3とを閉蓋した状態にしてもよい。また、面ファスナー89と面ファスナー90とを接合する箇所は、より接合しやすいような態様を用いることも可能である。
【0151】
図59及び
図60に示すのは、蓋部2の外周部6と基部3の取付部25とに係止部55及び係止受け部56を形成した例である。この例では、係止部55が係止片80aを有し、係止受け部56が係止受け片80bを有しており、これら係止片80aと係止受け片80bとが互いに係合し合い、閉止手段としての機能を得ることができるようにしているものである。また、これら係止片80aと係止受け片80bとは、
図59に示すように、1か所であってもよいし、
図60に示すように、2箇所(複数個所)であってもよい。このように、本発明に係る蓋部材1は、膨出部5や囲繞状壁13に閉止手段を形成することに限定されず、外周部6及び取付部25に形成することもできる。
【0152】
次に、閉止手段のさらに別の例を説明する。
図61は、本発明に係る蓋部材1の別の例に係る断面構成を表した模式図である。この例においては、係止部55及び係止受け部56の例として、第1の係合部材108aと第2の係合部材108bを用いて説明する。なお、これら第1の係合部材108a及び第2の係合部材108bのことを合わせて、単に係合部材108と表記する場合もある。
図61に示すように、蓋部材1は、蓋部2に設けられた第1の係合部材108aと、基部3において、閉蓋時に蓋部2における第1の係合部材108aと対応する位置に設けられた第2の係合部材108bとが設けられており、これら第1の係合部材108aと第2の係合部材108bとの係合により、閉蓋時に蓋部2が基部3に固定保持され得るように構成されている。
【0153】
係合部材108は、複数の係合部材が互いに係合し合うよう構造部として形成されている。係合部材108を形成する互いに係合し合う構造部は、上記した第1の係合部材108aと第2の係合部材108bとがそれぞれ係合しあう部分の組み合わせで構成されている。第1の係合部材180aと第2の係合部材180bは、第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとが互いに係合する構造部を形成してもよいし、一部が係合し合う構造部を形成するようにしてもよい。また、これら第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとの形状は、それぞれ後述する形状と同様な条構造をなしていることが好ましい。したがって、係合部材180a,180bは、凹溝条係合部108d、凸条係合部108cをなす部分(凹溝条係合部108d、凸条係合部108cの定義は後述する)で構成されることが好ましいだけでなく、蓋部2や基部3に対する取り付け端となるそれぞれの足材の上にそれぞれ凹溝条係合部108d、凸条係合部108cを形成した形状など、凹溝条係合部108d、凸条係合部108cを取り付けた形状を含む形状で構成されることも好ましい。
凹溝条係合部と凸条係合部との係合による場合、比較的安価な部材を用いて確実に閉蓋状態を保持することが可能である。
【0154】
このように、係合部材180a,180bは、凸条部材と凹溝条部材をなすことが好ましい。また、係合部材の一方(本例では第1の係合部材180a)は蓋部2に固定され、他方の係合部材(本例では第2の係合部材180b)は基部3に固定される。それぞれ第1の係合部材180aと第2の係合部材180bの固定位置は、蓋部2と基部3とを閉蓋したときに第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとが線条係合して蓋部2と基部3とを互いに固定するような位置に定められている。ここで線条係合とは、例えば
図62に示すように、第1の係合部材180aと第2の係合部材80bのそれぞれに設けられた線条の係合部による係合状態を意味する。
図62の例では、第1の係合部材180aには、先端側に形成された凸条膨出部で構成される係合部(この係合部を凸条係合部108cと呼ぶ)が形成されており、第2の係合部材180bには、先端側に形成された凹溝条部で構成される係合部(この係合部を凹溝条係合部108dと呼ぶ)が形成されている。凸条係合部108cと凹溝条係合部108dとが係合することで、第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとが線条係合される。
【0155】
第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとの係合部は、互いにスライド可能な構成を有していることが好ましい。具体的に
図62の例では、凸条係合部108cと凹溝条係合部108dは、互いにスライド可能な構造を有していることが好ましい。凸条係合部108cと凹溝条係合部108dとが相互にスライド可能に構成されていると、第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとを線条係合させる際に、相互の係合が容易となり係合部材の取付位置の微細なズレや、蓋部2や基部3に多少のゆがみや蓋部2と基部3との相互間に多少のゆがみなどが生じたとしても、凸条係合部108cと凹溝条係合部108dとが適度にスライド移動することでこれらのゆがみやズレを補償して第1の係合部材108aと第2の係合部材108bを容易に係合させることができ、また蓋部2の開蓋も容易に行うことができる。
【0156】
このように、凸条係合部108cと凹溝条係合部108dとが互いにスライド可能な構造を有していることで、蓋部材1がプラスチック材料などに比べて耐久性の低い紙材料などで形成されているにも関わらず、第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとの係合位置にわずかな位置ズレが生じても、蓋部2の開閉の際に蓋部2や基部3に加わる負荷が過剰にならずに、第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとの係合を実現することができる。このため、蓋部2の開閉を繰り返しても、蓋部2やヒンジ部4等が損傷する虞が少なく、蓋部材1の耐久性が高いものとなる。
【0157】
凸条係合部108cの凸条長さ(凸条の長手方向の長さ):L10と、凹溝条係合部108dの凹溝条長さ(凹溝条の長手方向の長さ):L20とは、同じであっても異なっていてもよいが、これらの長さは、上記したように、
図62の条方向:X(凸条、凹溝条の長手方向)に相互にスライド可能であるように定められることが好ましい。
【0158】
具体的には、凸条係合部108cの凸条長さ:L10が、凹溝条係合部108dの凹溝条長さ:L20と同じか、長い場合には、
図62に示すように凹溝条係合部108dの両端部は解放された構造が好ましい。
【0159】
凸条係合部108cの凸条長さが、凹溝条係合部108dの凹溝条長さよりも短い場合には、凹溝条係合部108dの両端は解放されていても封止されていてもよい。いずれの場合でも、凸条係合部108cと凹溝条係合部108dとが相互にスライドが可能である。
【0160】
凸条係合部108cと凹溝条係合部108dとの係合の度合いについては、凸条係合部108c及び凹溝条係合部108dが全体的に係合しているだけでなく、凸条係合部108c及び凹溝条係合部108dが部分的に係合していてもよい。例えば、凸条係合部108cと凹溝条係合部108dとが
図62中のX方向にずれた位置にそれぞれが配置されており、これら凸条係合部108cの一部分凹溝条係合部108dと係合し、他の部分が凹溝条係合部108dと係合していないようにしていてもよい。また、この場合には、凸条係合部108cの一部分が凹溝条係合部108dと係合する係合長さは任意に選択してよい。係合長さを任意に選択することにより、係合部108における係合強さ、言い換えると蓋部2の閉蓋時における閉まり強さを任意に選択することができる。
【0161】
凸条係合部108cを有する第2の係合部材108bと、凹溝条係合部108dを有する第1の係合部材108aとは、連続条のファスナー部材を所定長さに切断したものを用いて形成することができる。連続条のファスナー部材は、凸条係合部108cに対応する形状や凹溝条係合部108dに対応する形状に押し出し成型することにより、容易に製造することができる。第1の係合部材108a、第2の係合部材108bは、ヒートシール、超音波接合、ホットメルト接着等により、蓋部2や基部3に取り付けることができる。なお、蓋部2や基部3に第1の係合部材108aや第2の係合部材108bやこれらに相当するものが一体的に成形することができるのであれば、別体で形成することに限定されるものではない。
【0162】
本例では、第1の係合部材180aと第2の係合部材180bの条方向が、蓋部2の開閉軸の方向と平行する方向となるように取り付けられており、この場合、凹溝条係合部108dの凹溝を構成する両側壁109a,109bは、ヒンジ部4寄りの側壁(例えば側壁109a)が他方の側壁109bを、肉薄に形成する等により低強度としたり、
図63に示すようにヒンジ部4寄りの側壁109aの高さよりも、他方の側壁109bの高さの方が低くなるように構成すると、閉蓋時の第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとの係合、開蓋時の係合解除が容易となり、蓋部2の開閉が容易となる。
【0163】
蓋部2の第1係合部材180aの取付箇所の周辺や基部3の第2の係合部材180bの取付箇所の周辺には、圧縮加工が施されていることが好ましい。このような圧縮加工が施されている場合、蓋部2の開閉を繰り返し行っても、第1の係合部材180a、第2の係合部材180bが取り付けられている部分が損傷する虞を低減することができる。
【0164】
第1の係合部材180a、第2の係合部材180bは、それぞれの周辺における色とは別の異なる色を呈していることが好ましい。この場合、第1の係合部材180a、第2の係合部材180bを周囲に対して視覚上目立たせることができ、使用者が容易に蓋部材1における蓋部2の開蓋を行うことができるとともに、蓋部2を開閉するうちに、第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとの間における係合位置にズレが生じても、目視により正しい係合位置の確認が可能となる。
【0165】
第1の係合部材180a、第2の係合部材180bは、それぞれ一色で着色されていてもよいし、異なる色で着色されていてもよい。また、第1の係合部材180a、第2の係合部材180bは、それぞれ、一色で着色されていてもよいし、二色以上の色で着色されていてもよい。例えば、第1の係合部材180aの凸条係合部108cと、第1の係合部材180aの蓋部2への取付ベース(図示せず)、あるいは第2の係合部材180bの凹溝条係合部108dと、第2の係合部材80bの基部3への取付ベース(図示せず)とを異なる色に着色することができる。
【0166】
上記した第1の係合部材180aの取付箇所の周辺や第2の係合部材180bの取付箇所の周辺の少なくともいずれか一方には、没入部(図示せず)が形成されていることが好ましい。没入部は、基部3に形成される場合には、囲繞状壁16よりも外側に形成される。この没入部は、蓋部2に形成される場合には、膨出部5よりも外側に形成される。没入部は、閉蓋時に蓋部2と基部3との間に隙間を形成させるように構成される。このような没入部が形成されることによって、第1の係合部材180aや第2の係合部材180bが立体障害となって、蓋部材1における蓋部2の閉蓋を規制する虞を防止することができる。
【0167】
なお、本例において、第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとは、条方向(
図62のX方向)が、蓋部2の開閉軸(ヒンジ部4)の方向と平行する方向となるように取り付けられている場合について説明したが、これら第1係合部材180a及び第2の係合部材180bは、条方向(
図62のX方向)が、蓋部2の開閉軸(ヒンジ部4)の方向と直交する方向となるように取り付けられていてもよい。このように取り付けることによって閉蓋時に蓋部2が横方向に捻じれるのを防止することができ、閉蓋時の密閉性を向上させることができる。
【0168】
なお、上記した例では、蓋部材1において、凹溝条係合部108dを有する第1の係合部材180aを蓋部2側に設け、凸条係合部180cを有する第2の係合部材180bを基部3側に設けた場合について説明したが、蓋部2側に凸条係合部108cを有する第2の係合部材180bを設け、基部3側に凹溝条係合部108dを有する第2の係合部材180aを設けてもよい。また、第1の係合部材108a、第2の係合部材108bは、一対のみ設ける場合に限らず、複数対を設けてもよい。この場合、蓋部2に凸条係合部108cを有する第1の係合部材180aと、凹溝条係合部108dを有する第2の係合部材180bとを設け、基部3側には、これらとそれぞれ係合するような位置に凹溝条係合部108dを有する第2の係合部材180bと凸条係合部108cを有する第1の係合部材180aを設けてもよい。さらに、これら第1の係合部材180aと第2の係合部材180bとの組み合わせは、凸条係合部108cと凹溝条係合部108dの組み合わせに限定されるものではなく、
図63に示すように錨状の凸条係合部108eを有する係合部材を組み合わせてもよい。このように、第1の係合部材180a、第2の係合部材180bに代えて、
図63に示すような錨状の凸条係合部108e,108e同士を係合させ合うようにすることで、それぞれの係合部材の係合状態が形成される。また、
図63に示すように、錨状の凸条係合部108eを有する係合部材と、凸条係合部108eとは異形の凸条係合部108fを有する係合部材とを組み合わせてもよい。
【0169】
このような各種の係合部材を蓋部2や基部3に取り付ける方法としては、連続状のファスナー部材を用いて第1の係合部材180aを蓋部2に取り付け、第2の係合部材180bを基部3に取り付ける場合、例えば図示しないアンビルとホーンとの間に蓋部材を挟み、連続状のファスナー部材を用いて第1の係合部材180a、第2の係合部材180bを取り付けることが行われる。アンビルには連続状のファスナー部材を挿通できる溝が、それぞれ基部3に取り付けられる第2の係合部材180bの取付位置と、蓋部2に取り付けられる第1の係合部材180aの取付位置と対応する位置に設けられている。
【0170】
連続状のファスナー部材は、溝に挿通され、切断具により所定長さに切断される。切断された係合部材は蓋部材に押し当てられて、ホーンを介して供給される超音波によって蓋部材1に接合される。このように、超音波によって第1の係合部材180a及び第2の接合部材180bを超音波接合することにより連続状のファスナー部材を切断しながら蓋部2及び基部3に取り付けることができ、効率よく係合部材を蓋部2及び基部3に取り付けることができる。
【0171】
なお、本例では、蓋部2をヒンジ部4を介して基部3に開閉自在に構成された蓋部材1において蓋部2と基部3とを固定するための係合部材として、連続状のファスナー部材が用いられる場合を説明したが、連続状のファスナー部材は、蓋部材1の係合部材として用いられる場合に限らず、紙製部材等の形状保持性を有する複数の部材を相互に固定するための固定部材としても用いることができる。この場合、複数の部材はヒンジ部4により連結されていてもよいし、ヒンジ部4を有していないものであってもよい。
【0172】
図64から
図67に示すのは、蓋部材1における閉止手段の別の態様である。この閉止手段は、蓋部に係合部55が形成されるとともに、基部3に係合受け部56が形成されている。係合部55は、蓋部2の外周部6において、該外周部6の裏面側に突出形成されており、この突出片のそれぞれ対向する位置に係止孔91が形成されている。この係止孔91は、係合受け部56における係合受け片92が閉蓋時に侵入することが可能な大きさに形成されており、係止されるように形成されている。基部3には、係合受け部56が形成されている。この態様では、係合受け部56が形成されている箇所は取付部25が全体的に山形に盛り上がり形成されており、この頂部に孔部93が開口形成されるとともに、この穴部を形成することにより、上記した係合受け片92が形成されている。
【0173】
このような構成において、蓋部2が閉蓋する方向へと回動すると、
図67(a)にも示すように、係止孔91が形成されている係合部55の幅よりも係合受け部56において対向配置されて形成されている係止受け片92の間隔は広くなるように形成されている。そのため、蓋部2が基部3に対して閉蓋すると、係止受け片92は係止孔91の中に侵入し、係止部55と係止受け部56とが係合され、
図67(b)示すように係止した状態となる。このように閉止手段を形成すると、蓋部材1の製造時に簡単に形成することができ、低コストで製造することが可能になる。また、蓋部材1の操作についても簡単な操作で蓋部2の開閉を行うことができ、操作性も向上させることが可能になる。
【0174】
図68から
図71に示すのは、蓋部材の別の形態である。この蓋部材1は、基部3の3か所に外側方向に向けて突出する突起部94が形成されている。この突起部94は、ヒンジ部4に近い箇所に2つ、ヒンジ部4から遠い箇所に1つ形成されているが、この形成する数や場所は特に限定されない。なお、この突起部94をヒンジ部4に近い箇所に形成することにより、蓋部2を閉蓋したときに、膨出部5と囲繞状壁13との間において奥行き方向(ヒンジ部が形成されている基端から操作部22が形成されている先端との間における向き)へのすべりが生じるのを防止することができるようになる。なお、蓋部2において形成されている突出部24は、蓋部材1をスタッキングするときの台座としての機能を有している。
【0175】
図72、
図73に示すのは、蓋部材の別の形態である。この蓋部材1は、基部3の4か所に突起部94が形成されている。この突起部94はヒンジ部4に近い箇所へ2つ、ヒンジ部4から遠い箇所へ2つ形成されており、蓋部2が閉蓋するときにおいて、蓋部2の膨出部5と囲繞状壁13との間に生じる上記した奥行き方向へのすべりの問題をより確実に防止することができ、閉蓋したときの密閉性をより向上させることができるようになっている。なお、この突起部94の配置は任意に決定してよい。例えば、
図74、
図75に示すように、蓋部材1において最も対向する間隔が遠い箇所に突起部94を対向配置してもよい。このような位置に形成しても、上記したすべりの問題を解消することができる。
【0176】
次に、本発明に係る蓋部材の別の例について
図76を用いて説明する。
図76に示す蓋部材1は、容器175の口部に取り付けて用いるように構成したもので、基部3に受け部171が形成されている。この受け部171は、取付部25の下方に延出形成されており、容器175の蓋部材として使用することができるようにしたものである。このように蓋部材1を容器175の蓋部材として使用する場合、受け部171の内側に形成されている内側部分176に容器175の上端部分の例えばカール部と係合するような形状にしておき、容器175の蓋部材として使用することもできる。
【0177】
以上、本明細書における上記した記載は本発明に係る蓋部材の例を示したのは上記した通りである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意に変更してよい。
【符号の説明】
【0178】
1 蓋部材
2 蓋部
3 基部
4 ヒンジ部
5 膨出部
6 外周部
7 側壁部
13 囲繞状壁
14 外壁
16 接触部
18 第1突出部
19 第2突出部
25 取付部
26 フランジ部
27 取出口
33 折り曲げ部
37 自己接着層