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特開2022-78610回転する車輪を備える試験対象物を試験するための試験装置および試験方法
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  • 特開-回転する車輪を備える試験対象物を試験するための試験装置および試験方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078610
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】回転する車輪を備える試験対象物を試験するための試験装置および試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20220518BHJP
   B60C 19/00 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189412
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】森下 真年
(72)【発明者】
【氏名】高柳 裕次
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 隆行
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA21
3D131LA39
(57)【要約】
【課題】回転する車輪を備える試験対象物を試験するための試験装置および試験方法において、試験対象物と試験装置との接続が正常であるか否かを適切に判定できるものを提供する。
【解決手段】試験装置20は、回転する車輪12を備える試験対象物10を試験する。試験装置20は、試験対象物10の振動を検出するための第1振動センサ33と、試験装置20の振動を検出するための第2振動センサ34と、判定部40と、を備える。判定部40は、第1振動センサ33の出力に基づいて、試験対象物10の状態を推定する。判定部40は、試験対象物10の状態と、第2振動センサ34の出力とに基づいて、試験対象物10と試験装置20との接続が正常であるか否かを判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する車輪を備える試験対象物を試験するための試験装置であって、
前記試験対象物の振動を検出するための第1振動センサと、
前記試験装置の振動を検出するための第2振動センサと、
判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記第1振動センサの出力に基づいて、前記試験対象物の状態を推定し、
前記判定部は、前記試験対象物の状態と、前記第2振動センサの出力とに基づいて、前記試験対象物と前記試験装置との接続が正常であるか否かを判定する、
試験装置。
【請求項2】
前記試験装置は、前記試験装置におけるダンパ負荷を検出するセンサを備え、
前記判定部は、さらに前記ダンパ負荷に基づいて前記試験対象物の状態を推定する、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記試験装置は、前記試験対象物の少なくとも一部を含む画像を取得する撮像装置を備え、
前記判定部は、さらに前記画像に基づいて前記試験対象物の状態を推定する、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項4】
前記試験装置は、前記車輪の回転に関連して回転する回転構造を備え、
前記第2振動センサは前記回転構造に取り付けられ、
前記判定部は、前記第2振動センサの出力に基づいて前記回転構造の回転周波数を取得し、前記試験装置の回転周波数に基づいて前記試験対象物の状態を推定する、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項5】
前記試験装置は、前記車輪の回転に関連して回転する回転構造を備え、
前記接続は、前記車輪と前記回転構造との接続を含む、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項6】
前記試験装置は、前記車輪の回転に関連して回転する回転構造を備え、
前記試験装置は、前記回転構造の回転速度を検出する回転速度センサを備え、
前記判定部は、さらに、前記回転構造の前記回転速度に基づいて、前記試験対象物と前記試験装置との接続が正常であるか否かを判定する、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項7】
前記試験対象物の状態は、前記試験対象物の種類を含む、請求項1に記載の試験装置。
【請求項8】
前記試験対象物の状態は、前記試験対象物の前記試験装置への搭載状態を含む、請求項1に記載の試験装置。
【請求項9】
前記試験対象物の状態は、前記試験対象物の整備状態を含む、請求項1に記載の試験装置。
【請求項10】
前記試験装置は、前記試験対象物の一部を固定支持するためのフレームを備え、
前記試験対象物は、前記車輪を回転可能に支持するための車軸を備え、前記接続は、前記フレームと前記車軸との接続を含む、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項11】
前記試験装置は、前記試験対象物の一部を固定支持するためのフレームを備え、
前記第1振動センサは前記フレームに取り付けられる、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記第1振動センサの出力に基づいて前記試験対象物の回転周波数を取得し、前記試験対象物の回転周波数に基づいて前記試験対象物の状態を推定する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項13】
判定部を備える試験装置によって、回転する車輪を備える試験対象物を試験するための、試験方法であって、
前記判定部が、前記試験対象物の振動を検出するための第1振動センサの出力に基づいて、前記試験対象物の状態を推定するステップと、
前記判定部によって推定された前記試験対象物の状態と、前記試験装置の振動を検出するための第2振動センサの出力とに基づいて、前記試験対象物と前記試験装置との接続が正常であるか否かを判定するステップと、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試験装置に関し、とくに、回転する車輪を備える試験対象物を試験するための試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する車輪を備える構造を試験するための試験装置が公知である。このような試験装置の例は、特許文献1、2および3に記載される。特許文献1および2の技術では、試験対象物の振動を検出することにより、試験対象物の状態を判定する。試験の結果として、たとえば試験対象物の整備が正しく行われたか否かを判定することができる。また、特許文献3の技術では、試験対象物の固定装置にかかる負荷を計測することで、簡便かつ安定した試験対象物の固定装置を実現している。
【0003】
なお、試験装置ではないが、同様に車輪を備える構造の振動を検出するための構成が、特許文献4および5に記載されている。
【0004】
試験では、試験対象物と試験装置とを正常に接続することが重要である。たとえば、ある試験装置では、月に1回程度の頻度で試験中に異常が発生する。このとき、異常の発生原因は、試験対象物もしくは試験装置の不具合が原因である場合と、試験対象物と試験装置との接続が正常でないことから自励振動が発生し異常に発展した場合と、が考えられる。このため、試験対象物と試験装置との接続が正常であるか否かを判定することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-60529号公報
【特許文献2】特開2009-186363号公報
【特許文献3】特開2007-212148号公報
【特許文献4】特開2007-218791号公報
【特許文献5】特開2019-174180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、試験対象物と試験装置との接続が正常であるか否かを判定するのが困難であるという課題があった。
【0007】
判定は、人手で行うことも可能であるが、人手で行う場合には、試験装置の構造および挙動に関する作業員の習熟が必要であり、すべての試験において適切な判定を行うのは困難である。
【0008】
特許文献1および2では、試験対象物の振動を検出しているが、試験対象物の振動だけでは、試験対象物と試験装置との接続を正確に判定するのは困難である。
【0009】
また、カメラ、測距センサ、振動センサ、油圧センサ、温度センサ、等を用いて判定を自動で行う場合もあるが、判定精度が低く、たとえば試験対象物の種類によって判定基準を適切に変更することができない。
【0010】
機械学習を用いる場合であっても、試験対象物の種類によって車輪径等が異なるので、単一の学習済みモデルを複数種類の試験対象物に適用するのは困難である。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、回転する車輪を備える試験対象物を試験するための試験装置および試験方法において、試験対象物と試験装置との接続が正常であるか否かを適切に判定できるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る試験装置の一例は、
回転する車輪を備える試験対象物を試験するための試験装置であって、
前記試験対象物の振動を検出するための第1振動センサと、
前記試験装置の振動を検出するための第2振動センサと、
判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記第1振動センサの出力に基づいて、前記試験対象物の状態を推定し、
前記判定部は、前記試験対象物の状態と、前記第2振動センサの出力とに基づいて、前記試験対象物と前記試験装置との接続が正常であるか否かを判定する。
【0013】
本発明に係る試験方法の一例は、
判定部を備える試験装置によって、回転する車輪を備える試験対象物を試験するための、試験方法であって、
前記判定部が、前記試験対象物の振動を検出するための第1振動センサの出力に基づいて、前記試験対象物の状態を推定するステップと、
前記判定部によって推定された前記試験対象物の状態と、前記試験装置の振動を検出するための第2振動センサの出力とに基づいて、前記試験対象物と前記試験装置との接続が正常であるか否かを判定するステップと、
を備える。
なお、本明細書において「試験対象物の状態」という場合には、試験対象物の種類を考慮した上での整備状態のことを示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る試験装置および試験方法によれば、試験対象物と試験装置との接続が正常であるか否かを適切に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る試験装置を含む概要ブロック図。
図2図1の試験装置の、より具体的な構成例を示す図。
図3図1の判定部が実行する処理の例を示すフローチャート。
図4図1の判定部が扱う情報の流れの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施形態1.
図1は、本発明の実施形態1に係る試験装置20を含む概要ブロック図である。試験装置20は、本明細書に記載される試験方法を実施することにより、試験対象物10を試験するための装置である。試験対象物10は、回転する車輪12と、車輪12を回転可能に支持するためのフレーム11とを備える。試験対象物10は、たとえば自動車の車輪(タイヤ)を含む構造であるが、車輪12を備えるものであればこれに限らない。
【0017】
試験装置20は、試験対象物10に接続されて試験対象物10を試験する。試験の目的は、たとえば整備作業後の試験対象物10について、整備状態が適切であるか否かを判定することである。また、試験装置20は、試験対象物10と試験装置20との接続が正常であるか否かを判定する。これによって、試験が正常に行える状態であるか否か(または、試験が正常に行われたか否か)を判定することができる。
【0018】
試験装置20は、装置本体30および判定部40を備える。装置本体30は試験対象物10に接続される。この接続は物理的な接続であり、物理的振動を伝達することができる。
【0019】
装置本体30は、固定具31およびローラ32を備える。ローラ32は、車輪12の回転に関連して回転する回転構造の例である。ローラ32は、たとえば車輪12の回転に応じて受動的に回転するものであるが、ローラ32が能動的に回転して車輪12を回転させる構成であってもよい。
【0020】
本実施形態では、装置本体30と試験対象物10との接続の一部は、ローラ32と車輪12との接続として実現される。ローラ32と車輪12との接続とは、たとえば摩擦を介して回転運動を適切に伝達することができるように、適切に接触することをいう。具体例として、ローラ32と車輪12とが実質的に滑らずに回転している場合には、接触が正常であるということができ、ローラ32と車輪12との間に滑りが発生している場合には、接触が正常でないということができる。接触が正常である状態で、ローラ32と車輪12との間で、例えば自励振動などに代表される装置の運用上意図しない現象が発生した場合、接続が正常でないということができる。
【0021】
また、本実施形態では、装置本体30と試験対象物10との接続の別の一部は、ローラ32および車輪12を介さずに実現される。たとえば、接続の一部は固定具31とフレーム11との接続として実現することができる。固定具31は、試験対象物10の一部(この例ではフレーム11)を固定支持するとともに、適切な力を印加して車輪12をローラ32に押し付け、これによって車輪12とローラ32との間の摩擦を維持する。
【0022】
なお、本実施形態では、固定具31とフレーム11との接続は直接的な接触を介して実現されるが、これは、より間接的な接続であってもよい。たとえば、固定具31とフレーム11との間に他の接続部材を仲介させてもよい。
【0023】
試験装置20は、第1振動センサ33および第2振動センサ34を備える。これらは装置本体30に取り付けられる。
【0024】
第1振動センサ33は、試験対象物10の振動を検出するためのセンサであり、たとえば固定具31に取り付けられる。ここで、第1振動センサ33が振動を検知する直接の対象は試験対象物10でなく固定具31であるが、上述のように固定具31は試験対象物10を固定支持しており、固定具31には試験対象物10の振動がよく伝達されるので、第1振動センサ33は試験対象物10の振動を適切に検出することができる。
【0025】
第2振動センサ34は、試験装置20の振動(この例では装置本体30の振動)を検出するためのセンサであり、たとえばローラ32に取り付けられる。この例では、第2振動センサ34はローラ32に直接取り付けられるが、ローラ32(とくにその車軸)を固定支持する他の部材を介して間接的に試験装置20の振動を検出してもよい。
【0026】
なお、装置本体30と試験対象物10との接続は、上述の2通りの接続態様以外の接続を含んでもよい。また、装置本体30と試験対象物10との接続は、上述の2通りの接続態様のうちいずれか一方のみによって実現されてもよい。そのような構成であっても、2種類の振動センサをそれぞれ適切な位置に取り付けることにより、および/または、2種類の振動センサの出力に対してそれぞれ適切な処理を行うことにより、試験対象物10の振動および試験装置20の振動を区別して検出することが可能である。
【0027】
判定部40は、試験対象物と試験装置との接続が正常であるか否かを判定する。判定部40は、たとえば公知のコンピュータとしての構成を有し、たとえば演算手段41および記憶手段42を備える。演算手段41はたとえばプロセッサを含み、記憶手段42はたとえば半導体メモリ装置および磁気ディスク装置等の記憶媒体を含む。記憶媒体の一部または全部が、過渡的でない記憶媒体であってもよい。
【0028】
また、判定部40は入出力手段を備えてもよい。入出力手段は、たとえばキーボードおよびマウス等の入力装置と、ディスプレイおよびプリンタ等の出力装置とを含んでもよい。
【0029】
また、判定部40は、たとえば専用のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。また、判定部40は単一のコンピュータによって構成されるものに限らず、複数のコンピュータを含むコンピュータシステムによって実現されてもよい。
【0030】
判定部40は、装置本体30と通信可能に接続される。とくに、判定部40は、第1振動センサ33および第2振動センサ34の出力を受信することができる。このために、判定部40は、ネットワークインタフェース等の通信装置を含んでもよい。
【0031】
記憶手段42はプログラムを記憶してもよい。プロセッサがこのプログラムを実行することにより、判定部40は本明細書において説明される方法を実行してもよい。また、記憶手段42は過去の試験記録や機械学習に用いる学習データ、機械学習結果を記憶してもよく、判定部40は記憶手段42に保存されているデータを判定のために活用してもよい。
【0032】
図2に、図1の試験装置20の、より具体的な構成例を示す。試験対象物10が固定具31およびローラ32の間に配置されている。図2には1つの試験対象物10を示すが、試験対象物10は2以上であってもよい。また、図2の例では1つの試験対象物10が2つの車輪12を備えるが、車輪12の数は2に限らない。
【0033】
固定具31には、1つの第1振動センサ33が取り付けられているが、第1振動センサ33の数は2以上であってもよい。
【0034】
試験装置20は、1つ以上の試験対象物保持部負荷計測用センサ35を備えてもよい。図2の例では1つの試験対象物保持部負荷計測用センサ35が固定具31に取り付けられている。試験対象物保持部負荷計測用センサ35は、試験装置20におけるダンパの負荷を検出する。センサの種類は、例えば圧力やカメラ、レーザ変位計などのセンサが考えられるが、これに限らない。例えば、固定具31が油圧式である場合、試験対象物保持部にかかる負荷は油圧に現れるため油圧センサを用いることが考えられ、固定具31がフレームやベルト式である場合、試験対象物保持部にかかる負荷は歪や張力となって接続部に現れるため、歪センサや張力センサなどを用いることが考えられる。
【0035】
試験装置20は、1つ以上の撮像装置36を備えてもよい。撮像装置36は、たとえば公知の構成を有するカメラを備えており、試験対象物10の少なくとも一部を含む画像を取得する。
【0036】
図2の例では、ローラ32は2つの車輪を備える。装置本体30はシャフト37を備え、このシャフト37がローラ32を回転可能に支持する。第2振動センサ34は、ローラ32またはこれに関するギヤボックスに取り付けることができる。ただし、第2振動センサ34の取り付け位置はこれに限らず、たとえばローラ32に取り付けられてもよいし、シャフト37または装置本体30の他の部分に取り付けられてもよい。なお、図2の例では1つの第2振動センサ34が取り付けられているが、第2振動センサ34の数は2以上であってもよい。
【0037】
以上のように構成される試験装置20の動作を、以下に説明する。試験において、まず試験装置20は、試験対象物10(たとえば車輪12)を回転させ、回転速度を所定値に維持する。この状態で、図3に示す処理が実行される。ここで、回転速度を所定値に維持することにより、試験ごとのばらつきを抑制することができる。なお、本明細書において「回転速度」という場合には、回転距離(たとえば車輪外縁の移動距離)と回転角速度とをとくに区別しないが、これらは適宜互いに換算可能である。
【0038】
図3は、判定部40が実行する処理の例を示すフローチャートである。このフローチャートは、本実施形態に係る試験方法の一例を表す。判定部40は、図3の処理を実行することにより、試験対象物10と試験装置20との接続が正常であるか否かを判定する。また、図4は、判定部40が扱う情報の流れの例を示す図である。
【0039】
図3の処理において、まず判定部40は、第1振動センサ33の出力を取得する(ステップS1)。この出力は振動を表す振動信号である。振動信号は、図示しないアンプやフィルタを介して取得されてもよい。
【0040】
次に、判定部40は、第1振動センサ33の出力に基づいて、試験対象物10の状態を推定する(ステップS2)。このステップS2において、図4に示すように、まず判定部40は、第1振動センサ33の出力(振動信号)に基づいて試験対象物10の回転周波数を取得する。試験対象物10の回転周波数とは、たとえば車輪12の回転周波数であり、振動信号におけるピーク周波数に対応する。
【0041】
ここで、試験対象物10の回転周波数を取得するために、判定部40は追加で他の情報を用いてもよい。たとえば、図4に示すように、試験装置20は、試験装置20の回転速度(たとえばローラ32の回転速度)を検出する回転速度センサを備えてもよく、判定部40は、この回転速度を用いてもよい。回転速度を併用することにより、試験対象物10の回転周波数を精度良く決定することができる。なお、回転速度センサは図2には示さないが、当業者は適宜回転速度センサを取り付けることができる。
【0042】
そして、判定部40は、試験対象物10の回転周波数に基づいて、試験対象物10の状態を推定する。図4に示すように、試験対象物10の状態とは、試験対象物10の種類と、試験対象物10の整備状態と、試験対象物10の搭載状態とを含む。
【0043】
試験対象物10の種類は、たとえば、試験対象物10の型式、車輪12の径、試験対象物10に用いられるモータの仕様、等のうち少なくとも1つを表す。試験対象物10の種類を推定するために、判定部40はさらに分類部(図示せず)を備えてもよい。
【0044】
試験対象物10の整備状態は、たとえば、試験前に完了した試験対象物10の整備が、正しく行われたか否かを表す。
【0045】
試験対象物10の搭載状態は、たとえば試験装置20に対する試験対象物10の「載せ方」を表し、より具体的な例では、試験対象物10と試験装置20との位置関係を表す。さらに具体的には、車輪12とローラ32との位置関係を表してもよい。
【0046】
このような試験対象物10の状態を推定するための具体的手法は、当業者が適宜設計することができる。たとえば、公知の分類器またはクラスタリング手法を用いてもよい。分類またはクラスタリングに係るデータの入力および出力の形式もまた、当業者が適宜設計することができる。また、機械学習を用いるものに限らず、ルールベースの推定方法を用いてもよい。さらに、推定において、第1振動センサ33の出力に応じ、適宜補正を行ってもよい。
【0047】
試験装置20は、このような試験対象物10の状態を推定するために、追加で他の情報を用いてもよい。たとえば、図4に示すように、試験装置20に対する試験対象物10の位置変位を用いることができる。
【0048】
位置変位は、試験対象物保持部負荷計測用センサ35によって検出されるダンパ負荷、撮像装置36によって撮影される画像、回転速度センサによって検出される試験装置20の回転速度、等のうち少なくとも1つに基づいて取得することができる。位置変位を併用することにより、試験対象物10の状態を精度良く推定することができる。
【0049】
このようにして、ステップS2において試験対象物10の状態が推定される。
【0050】
次に、判定部40は、第2振動センサ34の出力を取得する(ステップS3)。この出力は振動を表す振動信号である。振動信号は、図示しないアンプやフィルタを介して取得されてもよい。
【0051】
ステップS3の後、判定部40は、ステップS2で推定された試験対象物10の状態と、ステップS3で取得された第2振動センサ34の出力とに基づいて、試験対象物10と試験装置20との接続が正常であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0052】
このステップS4において、図4に示すように、まず判定部40は、第2振動センサ34の出力(振動信号)に基づいて試験装置20の回転周波数を取得する。試験装置20の回転周波数とは、たとえばローラ32の回転周波数であり、振動信号におけるピーク周波数に対応する。
【0053】
そして、判定部40は、試験装置20の回転周波数に基づいて、試験装置20の状態を推定する。試験装置20の状態とは、たとえば試験装置20の運転状態および整備状態の少なくとも一方を含む。試験装置20の運転状態とは、たとえば、ローラ32の回転速度、試験装置20の特定部分に加わる力、等を表す。試験装置20の整備状態とは、たとえば、試験前に完了した試験装置20の整備が、正しく行われたか否かを表す。
【0054】
このような試験装置20の状態を推定するための具体的手法は、当業者が適宜設計することができる。たとえば、公知の分類器またはクラスタリング手法を用いてもよい。分類またはクラスタリングに係るデータの入力および出力の形式もまた、当業者が適宜設計することができる。また、機械学習を用いるものに限らず、ルールベースの推定方法を用いてもよい。さらに、推定において、第2振動センサ34の出力に応じ、適宜補正を行ってもよい。
【0055】
また、試験装置20の状態を推定するために、判定部40は、追加で、ステップS2において推定された試験対象物10の種類を用いてもよい。試験対象物10の種類を用いることにより、試験装置20の状態をより高精度に推定することができる。
【0056】
判定部40は、このように推定された試験装置20の状態と、ステップS2で推定された試験対象物10の状態とに基づき、接続の判定を行う。より具体的な例として、判定は、試験装置20の状態と、試験対象物10の整備状態と、試験対象物10の搭載状態とに基づいて実行される。このようにしてステップS4が完了する。
【0057】
ステップS4における判定の具体的手法は、当業者が適宜設計することができる。たとえば、公知の分類器またはクラスタリング手法を用いてもよい。分類またはクラスタリングに係るデータの入力および出力の形式もまた、当業者が適宜設計することができる。また、機械学習を用いるものに限らず、ルールベースの推定方法を用いてもよい。さらに、推定において、第1振動センサ33および/または第2振動センサ34の出力に応じ、適宜補正を行ってもよい。
【0058】
また、本実施形態では、試験対象物10と試験装置20との接続は、図1に示すように2通りの接続態様を含むが、接続に関する判定は任意の単位で行うことができる。すなわち、2通りの接続態様を区別せず、総合的に判定が行われるように設計してもよいし、各接続態様について判定を行い、各判定結果に基づいて最終的な判定を行ってもよい。
【0059】
ステップS4における判定を行うために、判定部40はさらに診断部(図示せず)を備えてもよい。
【0060】
次に、判定部40は、判定の結果を出力する(ステップS5)。出力は、たとえば、判定部40の記憶手段42に対して行われてもよいし、判定部40の出力装置(ディスプレイまたはプリンタ等)に対して行われてもよいし、通信ネットワークを介して他のコンピュータに対して行われてもよい。
【0061】
以上説明するように、本発明の実施形態1に係る試験装置20によれば、試験対象物10と試験装置20との接続が正常であるか否かを適切に判定することができる。
【0062】
とくに、試験対象物10の振動に加え、試験装置20の振動も利用して判定を行うので、試験対象物10の振動のみに基づく判定よりも正確な判定が可能である。より具体的には、試験装置20の回転周波数を利用することができる。
【0063】
判定部40は自動的に判定を行うので、試験装置の構造および挙動に関する作業員の習熟は要求されず、より広範囲の試験においてより適切な判定を行うことができる。
【0064】
判定部40は、判定の過程において試験対象物10の種類を推定するので、試験対象物10の種類によって判定基準を適切に変更することができる。なお、各種類に対する具体的な判定基準の例はとくに示さないが、たとえば分類器またはクラスタリング手法において実質的に実現することができる。
【0065】
試験装置20が試験対象物保持部負荷計測用センサ35を備える場合には、判定部40はさらにダンパ負荷に基づいて試験対象物10の状態を推定するので、試験対象物10の位置変位を考慮することができ、推定の精度が向上する。
【0066】
試験装置20が撮像装置36を備える場合には、判定部40はさらに画像に基づいて試験対象物10の状態を推定するので、試験対象物10の位置変位を考慮することができ、推定の精度が向上する。
【0067】
試験装置20が追加の回転速度センサを備える場合には、判定部40はさらに、ローラ32の回転速度に基づいて、試験対象物10と試験装置20との接続が正常であるか否かを判定するので、判定の精度が向上する。
【0068】
試験装置20はローラ32を備え、ローラ32と車輪12とが接続されるので、ローラ32の回転周波数を接続の判定に利用することができ、判定の精度が向上する。また、ローラ32に関連して第2振動センサ34を取り付けることにより、ローラ32の回転周波数を適切に検出することができる。
【0069】
判定部40は、試験対象物10の状態として搭載状態を推定するので、試験装置20に試験対象物10を搭載する際の位置ずれ(ミスアラインメント)を考慮することができ、判定の精度が向上する。
【0070】
判定部40は、試験対象物10の状態を推定する際に試験対象物10の回転周波数を用いるので、状態を高精度に推定することができる。
【0071】
判定部40は、試験対象物10の状態として整備状態を推定するので、接続が正常である場合には、従来の試験装置と同様に、試験対象物10の整備が正しく行われたか否かを判定することができる。
【0072】
装置本体30は固定具31を備えるので、試験対象物10を適切に固定して接続することができる。とくに、固定具31とフレーム11との接続が適切であるか否かを判定することができる。また、第1振動センサ33を固定具31に取り付けた場合に、試験対象物10の振動を適切に検出することができる。
【0073】
上述の実施形態1において、以下のような変形を施すことができる。
【0074】
図3に示す各ステップの実行タイミングは、図3に示すものに限らない。たとえば、ステップS3の実行タイミングは、ステップS1の前であってもよいし、ステップS1とステップS2の間であってもよい。
【0075】
また、ステップS2とステップS4とを並列的に実行してもよい。その場合には、図4に示すように、まず試験対象物10の種類に基づいて試験装置20の状態を推定しておき、その後、試験対象物10の整備状態および搭載状態を推定する際に、試験装置20の状態を参照してもよい。
【0076】
判定部40は、図3の処理を実行するタイミングを自動的に決定してもよい。たとえば、ステップS1およびS3において、それぞれ第1振動センサ33および第2振動センサ34の出力を取得する期間を決定してもよい。とくに、各センサの振動のRMS(実効値)に基づいて、車輪12およびローラ32の回転速度が一定である時刻を決定し、その時刻を含む所定期間における各センサの出力を利用してもよい。このような構成によれば、回転速度センサを用いずに図3の処理の進行を制御することができる。
【0077】
各センサの取り付け位置は、図2に示す位置に限らず、任意の位置に取り付けることができる。ここで、第1振動センサ33は、試験対象物10の回転周波数が強く伝搬する位置に取り付けると好適である。同様に、第2振動センサ34は、試験装置20の回転周波数が強く伝搬する位置に取り付けると好適である。
【0078】
図4に示すように、試験対象物保持部負荷計測用センサ35、撮像装置36および回転速度センサは省略可能である。いずれかを省略した場合には、そこから得られる情報は利用せずにステップS4の判定を行うことが可能である。
【0079】
回転速度センサを省略し、第1振動センサ33または第2振動センサ34の出力に基づいて試験装置20の回転速度を推定してもよい。このようにすると、センサの数を低減しつつ回転速度を利用することができるので、コストを抑制しつつ判定精度を向上させることができる。また、センサの数が低減するので、試験装置20の故障率が低下する。
【0080】
試験装置20は、さらに他の種類の追加センサを備えてもよい。たとえば、音声を検出するマイク、試験対象物10の位置変位を検出する変位計、ToFセンサ(飛行時間型センサ)、温度センサ、等を備えてもよい。
【0081】
ローラ32は省略してもよい。その場合には、車輪12を適切に回転させるための他の構造が設けられてもよい。
【0082】
試験対象物10の状態の具体例は、図4に示すものに限らない。また、試験対象物10の状態は、図4に示すように3種類の態様を含む必要はなく、いずれか1つまたは2つであってもよい。とくに、試験対象物10の状態として、試験対象物10の整備状態が推定されない場合には、整備状態の推定は、試験装置20とは別の試験装置によって行われてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…試験対象物
11…フレーム
12…車輪
20…試験装置
30…装置本体
31…固定具
32…ローラ(回転構造)
33…第1振動センサ
34…第2振動センサ
35…試験対象物保持部負荷計測用センサ(ダンパ負荷を検出するセンサ)
36…撮像装置
37…シャフト
40…判定部
41…演算手段
42…記憶手段
図1
図2
図3
図4