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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078614
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】燃料電池の製造方法または燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/88 20060101AFI20220518BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20220518BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20220518BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20220518BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220518BHJP
【FI】
H01M4/88 K
H01M4/86 B
H01M4/86 M
H01M4/92
H01M8/1004
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189419
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】510009832
【氏名又は名称】エムテックスマート株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511097692
【氏名又は名称】松永 正文
(72)【発明者】
【氏名】松永 正文
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB03
5H018BB05
5H018BB06
5H018BB08
5H018CC06
5H018DD01
5H018DD08
5H018DD10
5H018EE03
5H018EE05
5H018HH05
5H126BB06
5H126FF01
5H126FF04
5H126HH02
5H126HH03
5H126HH04
5H126JJ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液体や粉体、加熱溶融体などの所望する種類や形態でハンドリングし所望する電極構造にすることができる、燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【解決手段】複数の液体、必要により粉体、フィルムを含む加熱溶融体等を用意し複数の流体を選択し、電解質膜の両サイドに少なくとも二つの流体から所望する構造のアノードとカソードを形成し、ガス拡散層を積層して膜電極アッセンブリー(MEA)を形成する。水素を有効活用する燃料電池にするために燃料極の上には水素貯蔵膜やプレートを積層してその上にガス拡散層を積層できる。更にガスケットやセパレーターを設置して単一セルを350乃至400程度積層して燃料電池スタックにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を形成して燃料電池を製造するにあたり、電極形成用の液体、粉体、加熱溶融体の流体のなかから少なくとも二つの流体を選択する工程と、少なくとも二つの流体ハンドリング装置で少なくとも対象物への塗布直前で混合し塗布装置で塗布する、または少なくとも二つの流体を少なくとも二つの塗布装置で対象物に積層塗布する工程により電極を形成して燃料電池を製造することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項2】
前記電極形成用粉体は触媒を含み少なくとも溶媒を加えたスラリーにする工程と、該スラリーと異種のスラリーまたは電解質溶液を用意する工程と、前記対象物は電極層、電解質膜、ガス拡散層、転写フィルム、電極とガス拡散層の間にあって水素を貯蔵または移動可能なフィルムまたはプレートから少なくとも一つを選択し、少なくとも電解質膜表面側とガス拡散層表面側の電極の触媒比率または触媒の種類が異なるように塗布または積層することを特徴とする請求項1の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項3】
前記液体の少なくとも一つは電解質溶液であって少なくとも電解質膜側とガス拡散層側の電極の電解質密度が異なることを特徴とする請求項1または2の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項4】
前記触媒は主に白金またはコアシェル型触媒であって該触媒はカーボンに担持されていることを特徴とする請求項1乃至3の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項5】
前記流体の少なくとも一つは電極とガス拡散層間に積層する充電可能な水素貯蔵膜またはプレートの少なくとも一部を形成することを特徴とする請求項1乃至4の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項6】
前記転写用フィルムの電極形成面の電極最上層に電解質溶液を分散塗布し、または薄膜を形成し、該塗布面を電解質膜に圧着転写または熱圧着転写することを特徴とする請求項1乃至5の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項7】
前記転写用フィルムは多孔質であって、前記フィルムに電極を形成させ、該電極を少なくとも電解質膜へ圧着転写または熱圧着転写時、またはそれ以前に少なくとも電解質膜と接する電極表面に少なくとも溶媒を含侵させて電解質膜に転写し、前記圧着時乃至前記転写フィルムを剥離するまでの間多孔質部からも溶媒を揮発させることを特徴とする請求項6の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項8】
前記電極触媒スラリーまたは電解質溶液の塗布はスロットノズル塗布装置、圧縮気体アシストスロットノズル装置、スプレイ塗布装置、微粒子発生塗布装置、ロールコート装置、スクリーンプリンティング装置の少なくとも1つを選択し塗布することを特徴とする請求項1乃至7の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項9】
前記電極層に少なくともメソポアまたは少なくとも電極内部へ延びる複数の微小孔を形成させることを特徴とする請求項1乃至8の燃料電池の製造方法。
【請求項10】
前記塗布装置は圧縮気体アシストスロットノズル塗布装置、スプレイ塗布装置または微粒子発生塗布装置であってスプレイ流を対象物にパルス的に噴出することを特徴とする請求項1乃至9の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池の製造方法または燃料電池に係る。
従来燃料電池の正極、負極の電極形成は所望する数や種類の液体や粉体を一つの触媒スラリーにして電極形成をするのが一般的であった。
本発明による塗布或いは装置とはスロットノズル、マイクロカーテンコート、エアレススプレイ、2流体スプレイ、圧縮気体アシストスロットノズル、スリットノズルスプレイ、ディスペンサー、インクジェット、あるいはそれらを圧縮気体等で微細化できる装置、更には粉体スプレイなど特に限定しない。液膜による塗布工法であるマイクロカーテンコートでは比較的低圧例えば0.05乃至 0.7MPa程度の液圧でスプレイすることにより理想的な三角形や釣り鐘状の液膜パターンを形成できる。マイクロカーテンコートとは本発明者によりその基礎が発明された方法であって、広角スプレイパターンのエアレススプレイノズル(例えば米国ノードソン社製のクロスカットノズル)で液体などを0.05~0.7MPa程度の比較的低圧でスプレイし、霧になる前のマイクロ的液膜(マイクロカーテン)の部分を使用して被塗物とスプレイノズルを相対移動して塗布する方法であってオーバースプレイ粒子の発生がないので100パーセントの液体の塗着効率が期待できる。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の電極形成は一般的にスロットノズル装置や2流体スプレイ、超音波スプレイなどのスプレイ装置により実施されている。特にスロットノズル方式は間欠パターン塗布と高速生産が魅力的であるが、近年白金担持量が極めて少なくなりつつあり、そのため低粘度で低固形分の電極スラリーを選択する傾向にあるので薄膜でかつ間欠でパターンコーティングするには難があった。
ナノサイズの白金触媒の平方センチメートル当たりの塗布量はアノードで0.05mgまたはそれ以下、カソードで0.3mgまたはそれ以下が求められている。そのためスロットノズルで対象物に近づけて薄膜のウェット膜を形成し、かつゲルなどの異物による筋(ストリーク)無しの間欠のパターンコーティングを行うには大きな課題があった。
一方スプレイ方式では塗着効率が悪く、かつRoll to Roll(以下 R to R)などに用いる長尺の電解質膜やガス拡散層(以下GDL)あるいは離形フィルム等の基材への電極スラリー塗布生産処理スピードに難があった。
触媒は白金あるいは白金/コバルト合金等の微粒子が通常カーボン粒子に担持される。或いはパラジウムをコアとし、白金をシェルとした白金の使用効率を向上させたコアシェル型の触媒も使用されている。また燃料極で 単原子状態で分散された共有結合性トリアジン構造体が優れた水素酸化物触媒として機能することが発表されている。白金触媒微粒子は通常2乃至3ナノメートルと小さいが白金とカーボンの重量比は5:5乃至7:3程度と白金の比率が昨今高くなってきている。白金の比率を少なくし、カーボン量を多くしてウェットやドライ膜厚を厚くすることができるが、特にスロットノズルなどによるドライ膜厚が厚くなると電極にクラックが発生するなど電極性能低下につながっていた。白金を担持するカーボン粒子も数十ナノメートルサイズの1次粒子で、電解質溶液も一般的に固形分は5乃至10%でかつ電極に含まれるトータル含有量も少ないので上記の白金量を少なくするには電極膜厚を極薄膜にする必要があった。そのため固形分を5乃至10パーセント、更には0.5乃至3パーセントにさえする必要さえあった。その場合溶媒量が多いので、固形分の粒子径が小さくても前記のように比重が重くカーボンと電解質溶液で生じる凝集体の影響もあり沈殿傾向にあった。また溶媒量が多くなりすぎると所望する電極形成や電極性能面に難があった。
【0003】
本発明の目的は扱いづらい薄い電解質膜であっても直接電解質膜(以下PEM)に電極スラリーを塗布することを理想とするが、高速生産性を考えた場合転写フィルムに電極インクを塗布し電解質膜やガス拡散層等に転写することもできるようにし、それを高性能化することもできるようにする。
電解質膜にバックフィルムが積層されている時は電解質フィルムの強度が安定しているので所望する方法で所望する電極インクを電解質膜に例えばスロットノズルで直接塗布し乾燥して電解質膜の片側の電極は形成できる。そのため塗布手段にかかわらず界面の抵抗を少なく密着性を高くできることになる。その後反対側に電極を形成する場合バックフィルムを剥離する必要がある。そのため高速生産性を求める場合、必要により電極形成反対面のPEMのバックフィルムを全体的あるいは部分的に剥離しながらまたは剥離後、例えば転写フィルムに形成した電極層をPEMに熱圧着等で転写し両極を形成したCCM( Catalyst Coated Membrane)を生産できる。
PTFEなどの転写フィルムへの電極形成もスロットノズルで行えば生産量のみの追求では目的を達成することになる。特にスロットノズルでは所望する四角形の電極形成と未塗布部の周淵を自動で高速で形成できるので魅力的である。
周淵のある所望する形状の電極形成を所望する方法として本発明者により発明された特許文献1はPEMの片面または両面にマスクで電極開口部を形成し、複雑な所望する開口部であってもスプレイやスロットノズル等で簡単に所望する電極を形成し生産できる方法として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-063780
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし前記参考文献では電極用スラリーや粉粒体をマスク開口部に積層塗布したり充填をしている。本参考文献を含み従来の膜電極アッセンブリーや燃料電池の電極形成では複数の独立したスラリーを含む燃料電池用液体や粉体を独立した複数のハンドリング装置や塗布装置で混合し塗布したり、複数の異種材料を特に薄膜で積層塗布する思想は無かった。電解質膜とガス拡散層間の電極厚み方向の触媒の平方センチメートル当たりの重量比率や電解質の重量比率を段階的に或いは連続的に傾斜的に変えることはなかった。また本発明者が過去の参考文献等でMEAの性能を上げる手段として電極の表面積を広くする手段として電極表面を凹凸構造にするためパルス的スプレイを提案しているが、電解質膜等の少なくとも片面を凹凸構造にし 表面積を広くすることも本発明の方向性と一致する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題を解決するためになされたもので、本発明は特に電極形成を中心に複数の液体、必要により粉体やフィルムなどを含む加熱溶融体の中から少なくとも2つを選択し複数の流体のハンドリング装置や塗布装置、転写装置を駆使して所望する電極やセルの構造体にする。
これらの流体を複数選択しハンドリングする装置は独立した複数の装置からなり、複数の流体を合流させた場合塗布装置は一つでも良く複数でも良い。
前記液体の少なくとも一つはスラリーであって、それに含まれる触媒、例えば白金触媒やコアシェル触媒等は単独で使用できるしカーボンに担持された触媒であって良い。液体特にスラリーには電解質溶液や増粘剤は含まれても含まれなくても良い。アイオノマーのナフィオン(DuPont社の商標登録)溶液等は単独の液体として扱っても良く、予め電極スラリーに含有しても良い。また塗布装置や液体ハンドリング装置でスラリーや粉体等を希釈する単一溶媒または混合溶媒も本発明では液体として取り扱う。塗膜性能に悪影響を与える界面活性剤や発泡剤、泡消剤等は極力含まない方が良い。
一方本発明での対象物は電解質膜、GDL、転写フィルム、電極とガス拡散層間に積層する充電可能な水素貯蔵膜またはプレート等であるがいずれの表面も表面積を広くするため所望する凹凸を形成すると良い。凹凸は細長いストライプ状で良く凹部は小さい円形でよい。凹凸は微細なものが好ましいが、それより大きな凹凸を形成しそれに更に微細な凹凸を複合的に形成することもできる。特に電解質膜は昨今25マイクロメートル以下、更には15マイクロメートル以下と薄いので電解質膜形成中の例えばキャスティング時、流動性材料をベルトやロール更にはバックフィルム等に形成された微細な凹面に充填しながら塗布し形成することもできる。またナノインプリント技術を応用した工法で行うともできる。更に少なくとも片側に凹凸のあるロール等で電解質膜を両側から挟み込みながら電解質膜少なくとも片面、必要により両面に凹凸を加圧し必要により加熱加圧、更には真空成型等で形成できる。両側を所望する場合は電解質膜と対峙して凹部と凸部は重なるようにしたら良く、電解質膜などの流れ方向または流れ方向と直行して形成された凹凸溝でも良い。例えばナノサイズ乃至ミリサイズの凹凸面であっても本発明者が発明したインパクトパルス的スプレイ法であればスラリーを含む液体を凹凸部まで均一に薄膜でコーティングできる。更に併せて少なくとも電極表面層は例えばスプレイ、更にはパルス的スプレイで凹凸を形成して電極性能を向上できる。
【0007】
本発明の種類の異なるスラリーは白金とカーボンの比率、電解質溶液の固形分比率、電極触媒スラリー内の電解質固形分比率、またはいずれの比率が異なっても良い。また電極内のいずれの比率が異なる構造にしても良く例えば電解質膜を起点に段階的または連続的に傾斜構造にすることができる。
また前記異なる種類の少なくとも一つの電極スラリーの触媒はコアシェルタイプにすることができる。
更に本発明では、触媒とガスまたはプロトンの接触を効率よくすること、電気的抵抗を少なくするため電極の膜厚は可能な限り薄くすること、電解質膜と電極の接触界面抵抗を可能な限り低くすること、耐久性の為にも電解質膜と電極の密着性を高くすること等を目標にする。特にカソード電極内はマイクロポア、メソポア、マクロポアのポーラス構造をできやすい構造にして水の発生と排出をサポートする。そのためにも転写フィルムへの電極形成にも上記性能を付加する必要がある。本発明は以下の内容にした。
【0008】
本発明は電極を形成して燃料電池を製造するにあたり、電極形成用の液体、粉体、加熱溶融体の流体のなかから少なくとも二つの流体を選択する工程と、少なくとも二つの流体ハンドリング装置で少なくとも対象物への塗布直前で混合し塗布装置で塗布する、または少なくとも二つの流体を少なくとも二つの塗布装置で対象物に積層塗布する工程により電極を形成して燃料電池を製造することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0009】
本発明の前記電極形成用粉体は触媒を含み少なくとも溶媒を加えたスラリーにする工程と、該スラリーと異種のスラリーまたは電解質溶液を用意する工程と、前記対象物は電極層、電解質膜、ガス拡散層、転写フィルム、電極とガス拡散層の間にあって水素を貯蔵または移動可能なフィルムまたはプレートから少なくとも一つを選択し、少なくとも電解質膜表面側とガス拡散層表面側の電極の触媒比率または触媒の種類が異なるように塗布または積層することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0010】
本発明の前記液体の少なくとも一つは電解質溶液であって少なくとも電解質膜側とガス拡散層側の電極の電解質密度が異なることを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0011】
本発明の前記触媒は主に白金またはコアシェル型触媒であって該触媒はカーボンに担持されていることを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0012】
本発明の前記流体の少なくとも一つは電極とガス拡散層間に積層する充電可能な水素貯蔵膜またはプレートの少なくとも一部を形成することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0013】
本発明は前記転写用フィルムの電極形成面の電極最上層に電解質溶液を分散塗布し、または薄膜を形成し、該塗布面を電解質膜に圧着転写または熱圧着転写することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0014】
本発明の前記転写用フィルムは多孔質であって、前記フィルムに電極を形成させ、該電極を少なくとも電解質膜へ圧着転写または熱圧着転写時、またはそれ以前に少なくとも電解質膜と接する電極表面に少なくとも溶媒を含侵させて電解質膜に転写し、前記圧着時乃至前記転写フィルムを剥離するまでの間多孔質部からも溶媒を揮発させることを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0015】
本発明の前記電極触媒スラリーまたは電解質溶液の塗布はスロットノズル塗布装置、圧縮気体アシストスロットノズル装置、スプレイ塗布装置、微粒子発生塗布装置、ロールコート装置、スクリーンプリンティング装置の少なくとも1つを選択し塗布することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0016】
本発明は前記電極層に少なくともメソポアまたは少なくとも電極内部へ延びる複数の微小孔を形成させることを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0017】
本発明の前記塗布装置は圧縮気体アシストスロットノズル塗布装置、スプレイ塗布装置または微粒子発生塗布装置であってスプレイ流を対象物にパルス的に噴出することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0018】
本発明では液体、粉体、加熱溶融体の数量、形状、種類、比重を問わない。
【0019】
また本発明では異種の液体や粉体を順番に、または非順序で
清掃できる。
粉体は粉体のまま、またはスラリーにして混合塗布や積層塗布できる。液体粉体にかかわらず本発明のスプレイや微粒子発生装置での塗布は静電気を利用して塗布することができる。
【0020】
本発明の燃料電池はPEFCあるいはDMFCで良い。また燃料極側の水素貯蔵膜またはプレートで水素の下流への移動量を調整できる。更にはSOFC又はそれに類似した燃料電池でも良い。また更に本発明は太陽電池、2次電池全般にも応用できる。
【0021】
PEMはフッ素系で良く、炭化水素系で良い。更に特に衝撃性が求められる燃料電池車(FCV)向けPEM内には繊維質また微細多孔質の補強構造を形成しても良い。
【0022】
また本発明ではPEMをキャスティング法等で形成しながら、その上に少なくとも片側の電極を形成して、膜電極アッセンブリーを形成できる。PEMの成形時前後例えば乾燥前にも粉体またはドライ粒子のスラリー等の触媒を塗布できる。
【0023】
本発明ではGDLのマイクロポーラスレイヤー(MPL)を膜電極アッセンブリー(MEA)の製造過程の一貫で形成できる。カーボンやPTFE等を含むポリマー粒子や短繊維、撥水処理剤、浸水処理剤を所望する構造になるようにGDL側あるいは電極側、更には両方に形成できる。
【0024】
また本発明では 枚葉は勿論のこと長尺のPEMの少なくとも片側に電極部が開口した長尺のサブガスケットを貼り付けMEAの高速生産システムを構築できる。必要によりサブガスケットには安価な薄い離形フィルム等を積層することができるので、電極スラリー等を例えばスプレイ等でも積層塗布でき剥離フィルムを剥がすだけでサブガスケット部に触媒粒子の飛散の無いMEAを高速生産でき後工程まで自動化できる。
【0025】
薄い例えば15マイクロメートル以下のPEMを触媒スラリー塗布時損傷させないため加熱吸着による乾燥が望まれる。
しかし吸着すると開口したサブガスケットの端部(エッジ)で傷つける可能性があるので端部を膜とサブガスケットの接着剤等でコーキングされた構造にするのが良い。特に限定するものでないが発泡性接着剤やコーキング材は泡で柔らかくでき、また嵩高くできるのでサブガスケットの端面をカバーするには好都合である。特に接着層から圧着時押し出された発泡等の接着剤はサブガスケットの端部をカバーできるので、その場合あえて端部を別工程でコーキングする必要がないので好都合である。
【0026】
本発明の混合塗布とは例えば本発明者により発明された 特開昭63-104679 で提案されているような吐出時コンパクトな構造で流体である液体、粉体、或いは加熱溶融体を衝突させ混合し吐出または噴出して塗布する方法も含まれる。流体は複数の流体で良い。スロットノズルに複数のシムで複数の独立した液体流路を形成させたスロットノズル先端から吐出し内部混合または外部混合することでまたは合流しただけの液体の数の多層塗布もできる。混合は圧縮気体アシストスロットノズルの圧縮気体を複数の液体流に吹き付けることでより効果を発揮できる。スプレイの場合も所望する液体或いは粉体の数の流路を設け、あるいは例えば2重パイプや多重パイプから所望する液体を流出させ塗布ヘッド下流で2流体スプレイノズルのスプレイ圧縮気体でスプレイできる。更に例えば多重パイプの可能な限り外側流路に溶媒を流出させ他の液体に溶媒を合流させ他の液体や粉体にスプレイ用圧縮気体で特に溶媒を潰しながら混合して塗布する方法も含まれる。溶媒は再溶解しにくい液体や乾燥しやすい液体のノズル先端を潤しアイオノマーやポリマー等の溶媒蒸発による皮張りを防ぐ効果もある。液体例えば電極触媒スラリーの溶媒が水リッチの場合、皮張り防止や同時スプレイ用溶媒は水より沸点の高いグリセリンや水より沸点の低いアルコール系溶媒との所望する比率の混合溶媒が良い。
【0027】
更に本発明では 粒子等は導電性、非導電性の材質や形状を問わないが、例えば導電性粉体はカーボン粒子のみでなく単層カーボンナノチューブ(SWCNT)や複層ナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、グラフェンなどの繊維や微粒子のカーボン系導電材料やそれらの複合体等も粉体として取り扱う。
またフッ素系粒子例えばPTFE微粒子や短繊維或いは他のポリマーのそれらの形状のものも粉体として取り扱う。さらに表面を導電材や触媒等で薄膜あるいは分散状態でカプセル化した粒子もサイズに関係なく粉体として取り扱う。比較的大きな粒子は特にカソードの電極構造で厚み方向の膜厚を厚くし例えば水の排出に寄与する多孔質構造にするとき便利である。粒子径は数百ナノメートル以上で良い。
【0028】
前記種類の異なるスラリーは白金とカーボンの比率、または電解質溶液の固形分比率、または両方の比率が異なる等所望する方法を選択できる。
また前記異なる種類の少なくとも一つの電極スラリーの触媒はコアシェルタイプにすることができる。複数種の触媒を混合した単独スラリーで積層塗布することもできるが、それに限定するものでなく種類の異なる複数のスラリーや複数の導電材料微粒子等のディスパージョンなどを作成しそれに対応した複数のハンドリング装置や塗布装置を使用して混合または積層して所望する分布の電極形成ができる。
本発明では スラリーは例えばマイクロカーテンコート法の液膜塗布やスロットノズル塗布あるいはスプレイ特にパルス的スプレイあるいはそれらの組み合わせにより好適に電極を形成できる。
【0029】
さらに、本発明では特に開発用実験装置では少量のスラリーや粉体しか扱えない場合もあるので、インクジェットによる液滴やディスペンサー液滴を圧縮気体などで更に微細化して塗布し複数の液体や粉体の混合塗布や積層塗布を行うことができる。
【0030】
また本発明では対象物を加熱することができる。加熱温度はバインダーの粘度を急激に低下させ、溶媒を蒸発させることができるので30乃至200℃、更に好まくは薄膜塗布で溶媒を突沸させずに蒸発するには50乃至150℃が好ましい。更に対象物を吸着できる例えば加熱吸着プレートやドラム等は気体の断熱層が無く加熱できるので、特にPEMへのダイレクトスラリー塗布に好適であり,溶媒の気化熱による温度低下も防止でき溶媒の蒸発を促進できる。有機溶媒を95%以上蒸発させるまでの時間は数秒以内が可能になる。
【0031】
本発明では対象物の移動は高速でも低速でも良く、確実に初期の目的を達成することである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば複数の液体や粉体、加熱溶融体を独立したハンドリング装置や塗布装置で所望する形態で混合し或いは組合せて電極として製作できるので所望する電極や水素貯蔵プレートあるいはGDLを積層しMEA等を製造でき燃料電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態に係る膜電極アッセンブリー(MEA)の略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る別な電極構造のMEAの略断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る更に別な電極構造のMEAの略断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る転写フィルムに電極を形成させた断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る転写フィルムの電極層略をPEMに転写する様の略断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る転写フィルムの電極をPEMに圧着または熱圧着した略断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る電極層とGDL間に水素貯蔵プレートを積層した略断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係るPEMにサブガスケットを貼り付けサブガスケットの電極形成部端面にガスケットまたは接着剤を施与した略断面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る複数種の液流や粉体流等のノズル部の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎない。
【0035】
図面は本発明の好適な実施の形態を概略的に示している。図面は本発明の好適な実施の形態を概略的に示している。
【0036】
図1においてPEM1の上に第1の電極層3がその上に第2の電極層4が、更にその上に第3の電極層5が形成され更にその上にGDL2が積層されている。各電極層は触媒の比率や電解質の比率が異なるように異なる塗布装置で塗布しても良く、それぞれを粉体やスラリーとしてハンドリングして
所望する比率に混合して図のように段階的にあるいは連続的に電極膜厚方向へ徐々に比率を変化させ傾斜的に塗布しても良い。第3の触媒層は触媒を含まなくてよくGDLの表面あるいは近い層に形成されるMPLを形成して良い。更に酸素極側のMPLには親水性と撥水性材料を所望形態により単独で積層あるいは交互に積層することができる。
【0037】
図2においてPEM21側の電極層にはアイオノマー層23またはアイオノマーリッチの触媒層を積層して更に別の触媒層を形成しその上にGDL22を積層している。カソード電極では触媒層24を多孔体にして生成された水を排出するとよい。
【0038】
図3はPEM31に白金触媒がリッチな層33、その上に白金触媒が少ないあるいはGDLのMPLと同じ或いは類似した構造層34を形成できる。さらにその上にはGDL32を形成できGDLにはMPLを設けても良い。
【0039】
図4は転写フィルム45の上に電極層42、更にその上にアイオンマー層43を設ける。触媒層は単一触媒層だけでなく複数の触媒を積層して良く、複数の触媒を混合して塗布しても良い。またアイオノマーそう43はアイオノマーリッチな触媒層で良い。アイオノマーがリッチなことでPEMへの転写の密着性が上がる。
【0040】
図5図4で形成した転写フィルム55の触媒52やアイオノマー層53を反転させPEM51を転写する様である。更に図示してないが転写フィルム55を多孔質フィルムにしアイオノマー53や触媒層52に溶媒を少量含侵させPEM51との圧着時または加熱圧着時。密着性を向上させ溶媒蒸気を多孔質フィルムからも蒸発させることができる。
【0041】
図6はPEM61と電極の密着性を上げるために触媒層63との間に電解質溶液を薄膜塗布し電解質層62の薄膜層にするか、またはスプレイやスクリーン印刷塗布等で粒子にしてまばらに分散塗布することができる。電解質膜層は電解質比率を増やした触媒層でも良い。
【0042】
図7は燃料極側のPEM71に形成された電極72とGDL74の間に水素貯蔵プレート73を積層している。水素貯蔵プレートはフィルムでも良い。本発明では水素貯蔵プレート73と電極72の密着性を向上させるため電極72の水素貯蔵プレート側の特に界面のアイオノマー比率を多くすることができる。
【0043】
図8はPEM81に電極やガス通路などが開口されたサブガスケット84を接着剤などで貼り付けることができる。サブガスケット84の開口部エッジでPEM81を損傷させないためサブガスケットの開口部エッジ部にはコーキング85を行うことができる。コーキングの代わりにPEMとサブガスケット間の接着剤86を圧着してサブガスケットの開口部側にはみ出させてコーキングの代わりにすることができる。接着剤は発泡型接着剤にすると柔軟性が向上し、嵩が増えるのでより少ない量で効果がある。熱硬化性2液反応シリコーン接着剤や熱硬化タイプで湿度でも硬化するウレタン(PUR)等は窒素ガスによりフォーム化させることで効果的である。短時間での接着作業を終了したい場合は問題ない箇所に紫外線硬化型接着剤やウレタン系ホットメルト接着剤等で仮固定し完全接着は硬化時間が長くても品質や性能的に問題ない接着剤を選定すべきである。前記サブガスケットとの接着工程はPEM81にバックシート87が積層されている時行えば、より生産的である。
【0044】
図9は圧縮気体により複数の液体流等を混合しながらスプレイする圧縮気体アシストノズルアッセンブリー97である。A液91はA液壁面94でB液92と縁切りされ更に圧縮気体99はB液壁面と圧縮気体壁面98で縁切りされていてそれぞれ開口部で合流し、所望する角度で圧縮気体を噴出することでA液B液は混合し粒子化しスプレイ粒子になって噴出される。液体は2つだけでなく所望する数にすることができる。スプレイの場合流路は2重管と圧縮気体流路追加、或いは3重管で3流体の処理、更に液体等の数を増やす場合は例えば5重菅にすることができる。更にスロットノズルの多流体積層塗布もノズル内をシムで同じように区切ることで圧縮気体なしで多層積層塗布ができるし、圧縮気体アシストスロットノズルで混合塗布もできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば燃料電池の電極スラリー用の複数の材料を混合しあえて合理的に一つのスラリーにして電極形成していたものを、性能を含めた機能性を追求し、コストを追求し、所望する電極形成にすることである。そのため本発明はPEFC燃料電池だけでなく、DMFC燃料電池、SOFC等全般的燃料電池に応用でき電池全般例えば太陽電池、2次電池、特に高効率が期待できる次世代太陽電池、次世代2次電池に応用できる。
【符号の説明】
【0046】
1、21,31、41、51、 PEM
61、71、81
2、22,32,74 GDL
3、33,42,63,72 触媒層
4、 第2触媒層
5、 第3触媒層
23、42 アイオノマーリッチ層
34、 ガス流入サポート層
45、55 (離形)転写フィルム
53、62 アイオノマー層
73、 水素貯蔵プレート
84、 サブガスケット
85、 コーキング
86、 接着層
87、 バックフィルム
91、 A流体
92、 B流体
93、 溶媒
94、 A流体ノズル壁
95、 B流体ノズル壁
96、 溶媒ノズル壁
97、 ノズルアッセンブリー
98、 圧縮気体ノズル壁
99、 圧縮気体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2020-11-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正の内容】
図8