(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078705
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】サーモスタット装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
F16K27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189575
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】熊代 毅
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB02
3H051CC11
3H051CC12
3H051DD07
3H051EE04
3H051FF02
(57)【要約】
【課題】ハウジングを構成するハウジング部材同士を容易に組み立てることでき、製造にかかるコストを低減可能なサーモスタット装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ハウジング1と、冷却液の温度に応じて軸方向へ移動するサーモエレメント17と、前記サーモエレメントの移動により、前記ハウジングの内側に設けられた弁座20bに遠近して第1の流通口21と第2の流通口7との連通部を開閉する弁体15と、前記弁体を弁座側へ付勢する付勢部材16とを備え、前記ハウジングは、本体部20と、前記第一の流通口と、前記第二の流通口とを有する第1のハウジング部材2と、前記第1のハウジング部材に対する周方向の回転によって前記第1のハウジング部材に締結されるとともに前記第3の流通口22を有する第2のハウジング部材3とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータを経由した冷却液をエンジンに循環させる冷却路と、前記冷却路に接続されて前記ラジエータを迂回した冷却液を前記エンジンに循環させるバイパス路との接続部に配置されるサーモスタット装置であって、
筒状で内側に収容室が形成される本体部と、前記冷却路のラジエータ側と前記収容室とを連通する第1の流通口と、前記冷却路のエンジン側と前記収容室とを連通する第2の流通口と、前記バイパス路と前記収容室とを連通する第3の流通口とを有するハウジングと、前記収容室に収容されて冷却液の温度に応じて前記本体部内を軸方向へ移動するサーモエレメントと、前記サーモエレメントの移動により、前記ハウジングの内側に設けられた弁座に遠近して前記第1の流通口と前記第2の流通口との連通部を開閉する弁体と、前記弁体を弁座側へ付勢する付勢部材とを備え、
前記ハウジングは、
前記本体部と、前記第一の流通口と、前記第二の流通口とを有する第1のハウジング部材と、前記第1のハウジング部材に対する周方向の回転によって前記第1のハウジング部材に締結されるとともに前記第3の流通口を有する第2のハウジング部材とを備えることを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項2】
前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材との締結部は、前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材の一方に形成された複数の爪部と、他方に形成され、前記複数の爪部に対応する複数の係止部とが係合するバヨネット構造であることを特徴とする請求項1に記載されたサーモスタット装置。
【請求項3】
前記第2のハウジング部材は、内側に前記第3の流通口が形成されるバイパス側パイプを有し、
前記バイパス側パイプは、該バイパス側パイプの中心が前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材とを周方向の相対回転によって締結する際の回転軸上に位置するように配置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーモスタット装置。
【請求項4】
前記第2のハウジング部材は、
内側に前記第3の流通口が形成されるバイパス側パイプと、
筒状で内側に前記サーモエレメントが軸方向へ移動可能に挿入されるエレメント保持部と、
前記付勢部材を支持するスプリングシートとを有し、
前記バイパス側パイプと、前記エレメント保持部と、前記スプリングシートが一体形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたサーモスタット装置。
【請求項5】
前記エレメント保持部は、前記収容室内に突出する円筒部を有し、
前記円筒部には、円筒部の内周に軸方向に沿う溝と、前記溝に開口する横孔が形成されており、
前記溝により、前記バイパス路と前記収容室とを連通する第1の流通路が形成され、
前記横孔により、前記バイパス路と前記収容室とを連通する第2の流通路が形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載されたサーモスタット装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記横孔よりも、前記サーモエレメントの移動方向における弁座側に位置することを特徴とする請求項5に記載されたサーモスタット装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のサーモスタット装置の製造方法であって、
冷却液が流通する第1の流通口を有する第1のハウジング部材と、冷却液が流通する第2の流通口を有する第2のハウジング部材のいずれか一方に、被収容ユニットを収容する第一工程と、
前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材とを、周方向の相対回転により締結する第二工程とを備えることを特徴とするサーモスタット装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーモスタット装置及びその製造方法に関し、ハウジング構成部材同士を容易に組み付けることでき、製造にかかるコストを低減可能なサーモスタット装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモスタット装置は、例えば自動車用エンジンの入口側又は出口側に配置され、エンジンを冷却する冷却液の温度に応じてラジエータを経由した冷却液をエンジンに循環させたり、ラジエータを迂回した冷却液をエンジンに循環させたりして、エンジンを循環する冷却液の温度を制御するのに利用される。
【0003】
ところで、このサーモスタット装置の外郭となるハウジングの構造については、例えば特許文献1に開示されるように(
図5参照)、ラジエータに通じるラジエータ側パイプ51aを含む部材51(第1のハウジング部材)と、ラジエータを迂回するバイパス路に通じるバイパス側パイプ52aを含む部材52(第2のハウジング部材)とが別体に形成され、それらが例えばレーザ光線により溶着接合されている。或いは、例えば特許文献2に開示されるようにボルト接合される場合もある。
【0004】
このように、別体形成された複数のハウジング部材が接合によりハウジングとして一体化されるのは、ハウジング部材内に、サーモエレメント(感温部)や弁体、弁体を付勢するコイルスプリング等を収容した後、ハウジング部材を接合し、内部を密封する必要があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-342767号公報
【特許文献2】特開平07-301362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数のハウジング部材を溶着により結合する場合、振動溶着装置などの溶着設備が必要となり、コストが高くなるという課題があった。
また、複数のハウジング部材をボルト締結する場合、ボルト挿通孔にスリーブ(金属製の筒)を圧入する工程が必要となるため、部品数、及び工程数が多くなり、コストが高くなるという課題があった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、ハウジングを構成するハウジング部材同士を容易に組み立てることでき、製造にかかるコストを低減可能なサーモスタット装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係るサーモスタット装置は、ラジエータを経由した冷却液をエンジンに循環させる冷却路と、前記冷却路に接続されて前記ラジエータを迂回した冷却液を前記エンジンに循環させるバイパス路との接続部に配置されるサーモスタット装置であって、筒状で内側に収容室が形成される本体部と、前記冷却路のラジエータ側と前記収容室とを連通する第1の流通口と、前記冷却路のエンジン側と前記収容室とを連通する第2の流通口と、前記バイパス路と前記収容室とを連通する第3の流通口とを有するハウジングと、前記収容室に収容されて冷却液の温度に応じて前記本体部内を軸方向へ移動するサーモエレメントと、前記サーモエレメントの移動により、前記ハウジングの内側に設けられた弁座に遠近して前記第1の流通口と前記第2の流通口との連通部を開閉する弁体と、前記弁体を弁座側へ付勢する付勢部材とを備え、前記ハウジングは、前記本体部と、前記第一の流通口と、前記第二の流通口とを有する第1のハウジング部材と、前記第1のハウジング部材に対する周方向の回転によって前記第1のハウジング部材に締結されるとともに前記第3の流通口を有する第2のハウジング部材とを備えることに特徴を有する。
【0009】
尚、前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材との締結部は、前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材の一方に形成された複数の爪部と、他方に形成され、前記複数の爪部に対応する複数の係止部とが係合するバヨネット構造であることが望ましい。
また、前記第2のハウジング部材は、内側に前記第3の流通口が形成されるバイパス側パイプを有し、前記バイパス側パイプは、該バイパス側パイプの中心が前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材とを周方向の相対回転によって締結する際の回転軸上に位置するように配置されていることが望ましい。
また、前記第2のハウジング部材は、内側に前記第3の流通口が形成されるバイパス側パイプと、筒状で内側に前記サーモエレメントが軸方向へ移動可能に挿入されるエレメント保持部と、前記付勢部材を支持するスプリングシートとを有し、前記バイパス側パイプと、前記エレメント保持部と、前記スプリングシートが一体形成されていることが望ましい。
【0010】
また、前記エレメント保持部は、前記収容室内に突出する円筒部を有し、前記円筒部には、円筒部の内周に軸方向に沿う溝と、前記溝に開口する横孔が形成されており、前記溝により、前記バイパス路と前記収容室とを連通する第1の流通路が形成され、前記横孔により、前記バイパス路と前記収容室とを連通する第2の流通路が形成されていることが望ましい。
また、前記弾性部材は、前記横孔よりも、前記サーモエレメントの移動方向における弁座側に位置することが望ましい。
【0011】
このような構成によれば、ラジエータ側流通口を有する第1のハウジング部材に対し、バイパス側流通口を有する第2のハウジング部材が、前記第1のハウジング部材に対する周方向の回転によって容易に締結される。そのため、ボルト締結や溶着を用いた締結の場合よりも、かかるコスト、工数を大きく抑えることができる。
【0012】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係るサーモスタット装置の製造方法は、前記サーモスタット装置の製造方法であって、冷却液が流通する第1の流通口を有する第1のハウジング部材と、冷却液が流通する第2の流通口を有する第2のハウジング部材のいずれか一方に、被収容ユニットを収容する第一工程と、前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材とを、周方向の相対回転により締結する第二工程とを備えることに特徴を有する。
【0013】
このような方法によれば、ラジエータ側流通口を有する第1のハウジング部材とバイパス側流通口を有する第2のハウジング部材とが、周方向の相対回転(好ましくはバヨネット方式)により容易に締結される。そのため、ボルト締結や溶着を用いた締結の場合よりも、かかるコスト、工数を大きく抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハウジングを構成するハウジング部材同士を容易に組み立てることでき、製造にかかるコストを低減可能なサーモスタット装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るサーモスタット装置の断面図である。
【
図2】
図2(a)は、サブハウジングの斜視図であり、
図2(b)は、サブハウジングの底面図である。
【
図3】
図3は、メインハウジングとサブハウジングの組み付け前の下方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、従来のサーモスタット装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るサーモスタット装置の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係るサーモスタット装置の断面図である。
図1に示すサーモスタット装置10は、例えばエンジンの冷却液系に設けられる。具体的には、サーモスタット装置10は、ラジエータを経由した冷却液をエンジンに循環させる冷却路と、この冷却路に接続されてラジエータを迂回した冷却液を前記エンジンに循環させるバイパス路との接続部に配置され、冷却路及びバイパス路を流れる冷却液の流量を調整することにより、エンジンを循環する冷却液温度を制御する。
【0017】
前記サーモスタット装置10は、筒状で内側に収容室20aが形成される本体部20を有するサーモスタット用ハウジング1(以下、単にハウジング1と呼ぶ)と、本体部20内にその軸線方向へ移動可能に収容されるサーモエレメント17(感温部)と、このサーモエレメント17内に進退可能に挿入されるピストン18とを備える。以下、説明の便宜上、
図1に示すサーモスタット装置10の上下を単に「上」「下」という。
サーモエレメント17の軸線方向上段部分には、メイン弁体15が設けられ、このメイン弁体15がハウジング1の内周壁に形成された環状の弁座20bに離着座可能となっている。また、このサーモスタット装置10は、前記メイン弁体15を弁座20bへ向けて付勢する付勢部材としてのコイルスプリング16を備え、このコイルスプリング16がサーモエレメント17の周りを囲うように配置されている。また、前記サーモエレメント17内には、ワックス等の熱膨張体が封入され、前記ピストン18の先端が熱膨張体内に臨んで配置される。
【0018】
そして、サーモエレメント17の周囲の冷却液が高温になり、熱膨張体が温められて膨張すると、ピストン18がサーモエレメント17から退出する。ピストン18の上端は、ハウジング1に形成された筒状の保持部20cに篏合し、ハウジング1に対する上方への移動が規制されている。このため、サーモエレメント17がコイルスプリング16の付勢力に抗して下方へ移動することで、ピストン18がサーモエレメント17から退出する。このとき、メイン弁体15がサーモエレメント17とともに下方へ移動して、弁座20bから離れる。
その一方、サーモエレメント17の周囲の冷却液が低温になり、熱膨張体が冷やされて収縮すると、コイルスプリング16の付勢力に従ってサーモエレメント17が上方へ移動して、ピストン18がサーモエレメント17内へ侵入する。このとき、メイン弁体15がサーモエレメント17とともに上方へ移動して、弁座20bに近づく。
【0019】
前述のピストン18、サーモエレメント17、メイン弁体15、コイルスプリング16等、サーモスタット装置10においてハウジング1の内側に収容される部材をまとめて被収容ユニットという。ハウジング1は、被収容ユニットを収容して下方へ開口する筒状の本体部20と、ラジエータ側パイプ5とを有するメインハウジング2(第1のハウジング部材)と、本体部20の下端開口2aを塞ぐように、サーモエレメント17の下方に設けられ、バイパス側パイプ6を有するサブハウジング3(第2のハウジング部材)とを有する。
【0020】
ラジエータ側パイプ5の内側が、収容室20aへの冷却液入口となる第1の流通口21となっている。前記メインハウジング2には、第1の流通口21の他、サーモエレメント17の側部に対向するように開口し、収容室20aからの冷却液出口となる第2の流通口7が形成されている。第1の流通口21と第2の流通口7とは、それぞれエンジンとラジエータとを連通する冷却路に通じており、ラジエータを経由した冷却液が第1の流通口21、収容室20a、第2の流通口7を通り、エンジンへと向かう。このように、第1の流通口21は、冷却路のラジエータ側と収容室20aとを連通し、第2の流通口7は、冷却路のエンジン側と収容室20aとを連通する。
【0021】
そして、前述のようにサーモエレメント17が温められてメイン弁体15が弁座20bから離れると、第1の流通口21から第2の流通口7へ向かう冷却液の流量が増える。反対に、サーモエレメント17が冷やされてメイン弁体15が弁座20bに近づくと、第1の流通口21から第2の流通口7へ向かう冷却液の流量が減る。このように、メイン弁体15は、弁座20bに遠近して第1の流通口21と第2の流通口7との連通部を開閉する。
【0022】
図2(a)は、サブハウジング3の斜視図であり、
図2(b)は、サブハウジング3の底面図である。前述のように、サブハウジング3は、バイパス側パイプ6を有する。このバイパス側パイプ6の内側が、収容室20aへの冷却液入口となる第3の流通口22となっている。このサブハウジング3は、バイパス側パイプ6の他、前記サーモエレメント17を摺接可能に保持するエレメント保持部3aと、エレメント保持部3aの外周と本体部20の下端との間を塞ぐ環状の蓋部3dと、この蓋部3dより上側のエレメント保持部3aの周囲に形成され、コイルスプリング16の下端を支持するスプリングシート3bとを有する。
【0023】
前記蓋部3dは、エレメント保持部3aの外周であって軸方向の中央部から外周側へ張り出すように形成される。前記エレメント保持部3aは、円筒状で、内側がバイパス側パイプ6の内側(第3の流通口22)に連通する。エレメント保持部3aの蓋部3dより上側部分を円筒部3a2とすると、この円筒部3a2が収容室20a内に突出する。この円筒部3a2の内周には、軸方向に沿って複数の溝が形成されており、隣り合う溝と溝の間にリブ3a1が形成される。リブ3a1は、円筒部3a2の周方向に等間隔に配設されている。
【0024】
周方向に並ぶリブ3a1の内側に、サーモエレメント17が摺動可能に挿入される。リブ3a1のサーモエレメント17側の端面は、エレメント保持部3aの蓋部3dより下側部分(溝の形成されていない部分)の内周面と面一となっており、当該部分までサーモエレメント17が進入すると、第3の流通口22が閉塞されて、収容室20aとバイパス路との連通が断たれる。このように、本実施の形態では、サーモエレメント17がバイパス路を開閉するサブ弁体として機能する。
【0025】
その一方、サーモエレメント17の下端が円筒部3a2(溝の形成された部分)の途中にある場合には、バイパス路の冷却液が溝によって円筒部3a2とサーモエレメント17との間にできる隙間を通って収容室20aへ流入する。このように、円筒部3a2の内周側であって、隣り合うリブ3a1の間(溝)にできる隙間により、バイパス路と収容室20aとを連通する第1の流通路L1が形成される。これにより、冷却液がバイパス路から第1の流通路L1を通って収容室20aへ流入する際に、サーモエレメント17の外周側部に接触するので、バイパス路を通過する冷却液の温度に対するサーモエレメント17の感温性が向上する。
【0026】
また、
図2(a)に示すように、前記複数のリブ3a1は、前記円筒部3a2の下方において周方向位置が一致する複数の柱体3gに繋がっている。前記スプリングシート3bは、前記複数の柱体3gによって蓋部3dに対し底上げされている。スプリングシート3bと蓋部3dとの間において、隣り合う柱体3gの間には前記円筒部3a2の内外に繋がる横孔が形成されており、この横孔が隣り合うリブ3a1の間に開口する。これにより、サーモエレメント17の下端が円筒部3a2(溝の形成された部分)の途中にある場合には、バイパス路の冷却液が第1の流通路L1の他にも横孔を通って収容室へ流入する。このように、横孔により、バイパス路と収容室20aとを連通する第2の流通路L2が形成される。これにより、バイパス路を流れる冷却液の十分な流量が確保される。
また、コイルスプリング16は、横孔(第2の流通路L2)よりも上方(サーモエレメント17の移動方向における弁座20b側)に位置するため、第2の流通路L2を通過する冷却液の流れがコイルスプリング16に邪魔されて大きな圧力損失が発生するのを防ぎ、バイパス路を流れる冷却液の十分な流量を確実に確保できる。
【0027】
このようにサブハウジング3にあっては、エレメント保持部3aと、スプリングシート3bと、バイパス側パイプ6とが例えば射出形成により一部材(単一の部材)として一体形成されているため、サーモスタット装置としての部品数を低減し、組み立て工数を削減することができる。また、エレメント保持部3a及びスプリングシート3bのガタつきを抑え、部品の耐久性を向上することができる。
【0028】
次に、メインハウジング2とサブハウジング3との組み付け構造について説明する。
図2(a)、(b)に示すようにサブハウジング3は、円環状の蓋部3dを有し、その周縁部には、等間隔に複数(図では4つ)の爪部3d1が径方向外側に突出して形成されている。
一方、
図3の下方から見た斜視図に示すようにメインハウジング2の下端内周には、前記各爪部3d1に対応して、爪部3d1が係止可能な係止部2bが形成されている。尚、係止とは、互いに係わり合って止まることであり、係止部2bに対して爪部3d1が引っ掛かった状態で止まることを意味する。係止部2bは、前記爪部3d1の挿入路2b1と係止片2b2とを有する。即ち、メインハウジング2の下端開口2aにサブハウジング3を差し込むことにより爪部3d1が挿入路2b1に嵌まる状態となる(
図3の符号S1で示す矢印)。
【0029】
次にメインハウジング2に対し、サブハウジング3を周方向に少量正回転する(ひねる)ことにより、爪部3d1が係止片2b2に係止し(
図3の符号S2で示す矢印)、メインハウジング2とサブハウジング3とが嵌合される(バヨネット方式による締結構造)。
また、サブハウジング3の蓋部3dの周縁には、
図2(b)に示すように複数の切り欠き凹部3fが形成されている。一方、
図3に示すようにメインハウジング2の下部には、貫通孔2cが形成されている。メインハウジング2に対しサブハウジング3を嵌合させた状態で、前記貫通孔2cといずれか一つの前記切り欠き凹部3fとの位置が一致し、そこに
図3に示すようにピン4を嵌入することによりサブハウジング3の正逆方向の回転が阻止され、組み付けが完了するようになされている(
図3の符号S3で示す矢印)。
このようにラジエータ側パイプ5を有するメインハウジング2とバイパス側パイプ6を有するサブハウジング3とがボルト締結や溶着を用いずに周方向の相対回転により容易に締結されるため、かかるコスト、工数を抑えることができる。
【0030】
また、メインハウジング2とサブハウジング3との回転締結の際の回転中心となる回転軸上に前記バイパス側パイプ6の軸中心が設けられている。そのためメインハウジング2の下部開口2aに対しサブハウジング3の周方向の差し込み位置は気にしなくてもよい。即ち、周方向の差し込み位置がどこであっても、ラジエータ側パイプ5に対するバイパス側パイプ6の位置、或いはエンジン側流路7に対するバイパス側パイプ6の位置は変わらない。また、メインハウジング2の下部開口2aに対するサブハウジング3の周方向の差し込み位置がどこであっても、複数の切り欠き凹部3fのいずれかの位置が必ずメインハウジング2の貫通孔2cの位置に一致するように構成されている。
【0031】
また、
図1に示すように前記複数の爪部3d1の上側には、メインハウジング2とサブハウジング3との締結部を液密に塞ぐシール部材としてのOリング8が設けられている。このように、Oリング8より外側に爪部3d1が配置され、爪部3d1が冷却液に浸ることがないので、耐久性の上で有利である。
また、前記したように爪部3d1と係止部2bとの係合によりメインハウジング2とサブハウジング3とが結合され、その締結の際のサブハウジング3の回転は少量(ひねる程度)でよいため、Oリング8やコイルスプリング16の捩れを最小限にすることができる。
【0032】
また、
図3、
図4(
図4は、ハウジング1の底面図)に示すようにサブハウジング3の裏側には、複数(図では4つ)のリブ9がバイパス側パイプ6の周面から外側に向かって放射状に等間隔で形成されている。このようにリブ9を設けることによって、メインハウジング2に対するサブハウジング3の回転締結の際に、前記リブ9に工具を引っ掛け回転させることができ、バイパス側パイプ6を掴まずに締結作業を行うことができる。
【0033】
このようなハウジング1を適用したサーモスタット装置10を製造する場合、メインハウジング2の下部開口2aより本体部20内にメイン弁体15、コイルスプリング16、ピストン18、サーモエレメント17等の被収容ユニットを適切に収容する。
次いで、前述したようにメインハウジング2の下端開口2aにサブハウジング3を差し込む。このときエレメント保持部3aによりサーモエレメント17の下部を保持した状態とする。また、このとき爪部3d1が挿入路2b1に嵌まった状態となる。
【0034】
次にサブハウジング3の裏面に形成されたリブ9に工具を引っ掛け、この工具を用いて、メインハウジング2に対しサブハウジング3を周方向に少量正回転する。それにより爪部3d1が係止片2b2に係止し、メインハウジング2とサブハウジング3とが嵌合し締結される。
最後に、メインハウジング2の下部側面に形成された貫通孔2c側からピン4を嵌入してサブハウジング3の周り止めをし、組み付けが完了する。
【0035】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ラジエータ側パイプ5を有するメインハウジング2とバイパス側パイプ6を有するサブハウジング3とが、複数の爪部3d1と係止部2bとの係合(バヨネット方式による締結構造)により容易に締結される。そのため、ボルト締結や溶着を用いた締結の場合よりも、かかるコスト、工数を大きく抑えることができる。
【0036】
尚、本発明に係るサーモスタット装置にあっては、図示した実施の形態に限定されるものではなく、ラジエータ側パイプを有するハウジング部材とバイパス側パイプを有するハウジング部材とが締結されるハウジングを用いるサーモスタット装置に広く適用することができる。例えば、本実施の形態のサーモスタット装置は、エンジンの入口側に配置され、第1の流通口がラジエータからの冷却液が流入する第1の入口、第2の流通口がエンジン側へ通じる冷却液の出口、第3の流通口がバイパス路からの冷却液が流入する第2の入口となっている。しかし、サーモスタットは、エンジンの出口側に配置され、第1の流通口がラジエータ側へ通じる冷却液の第1の出口、第2の流通口がエンジンからの冷却液が流入する入口、第3の流通口がバイパス路側へ通じる冷却液の第2の出口となっていてもよい。
【0037】
また、前記実施の形態においては、ラジエータ側パイプ5を有するメインハウジング2とバイパス側パイプ6を有するサブハウジング3とが、バヨネット方式により嵌合し(周方向に相対回転させて)締結されるものとしたが、本発明にあっては、バヨネット方式に限定されるものではなく、メインハウジング2とサブハウジング3とが相対的に回転し締結されるものであればよい(例えば一方に形成された雄螺子部と他方に形成された雌螺子部とが螺合し締結)。
さらに、前記実施の形態においては、ピン4でメインハウジング2に対するサブハウジング3の周り止めをしているが、周り止めの方法は、ピン4に限られず、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0038】
1 サーモスタット用ハウジング
2 メインハウジング(第1のハウジング部材)
2b 係止部
3 サブハウジング(第2のハウジング部材)
3a エレメント保持部(感温部保持部)
3a1 リブ
3a2 円筒部
3b スプリングシート
3d1 爪部
5 ラジエータ側パイプ
6 バイパス側パイプ
7 エンジン側流路(第2の流通口)
10 サーモスタット装置
15 メイン弁体(弁体)
16 コイルスプリング
20 本体部
20a 収容部
20b 弁座
21 第1の流通口
22 第3の流通口