(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078715
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ロックボルト継ぎ足し方法及びロックボルト構造
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
E21D20/00 G
E21D20/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189588
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】平山 博靖
(57)【要約】
【課題】トンネル施工におけるロックボルトの継ぎ足しを短時間で効率的に実施可能とする。
【解決手段】地山2に打込まれた先行ロックボルト11の後方に、次に打ち込まれる後続ロックボルト12を一直線に配置する。継手スリーブ20を、これら2つのロックボルト11,12の外周に跨るように配置する。その後、継手スリーブ20を圧潰装置40によって圧潰して、2つのロックボルト11,12に密着させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に打込まれた先行ロックボルトの後方に、次に打ち込まれる後続ロックボルトを一直線に配置し、
継手スリーブを、これら2つのロックボルトの外周に跨るように配置し、
その後、前記継手スリーブを圧潰装置によって圧潰して前記2つのロックボルトに密着させるロックボルト継ぎ足し方法。
【請求項2】
地山に打ち込まれたロックボルト構造であって、
一直線に配列された複数のロックボルトと、隣接する2つのロックボルトの外周に跨る継手スリーブとを備え、前記継手スリーブが、圧潰されて前記2つのロックボルトに密着されていることを特徴とするロックボルト構造。
【請求項3】
前記2つのロックボルトのうち一方のロックボルトにおける他方との対向端部には、前記圧潰前の継手スリーブを引っ掛ける引掛突起が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のロックボルト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばNATM工法(New Austrian Tunneling Method)によって施工される山岳トンネルにおけるロックボルトの継ぎ足し方法及びロックボルト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に山岳トンネルの施工においては、掘削したトンネル周辺の地山にロックボルトを打ち込んで地山を安定化させる。ロックボルトの所要長さが1本のロックボルトの長さより大きい場合は、複数本のロックボルトを合計で所要長さに達するように順次一列に継ぎ足す(特許文献1等参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロックボルト継ぎ足し用の筒状の継手スリーブが開示されている。継手スリーブの内周面には雌ネジが刻設されている。該継手スリーブが、2本の全ネジ構造のロックボルトの対向端部の外周に跨っている。各ロックボルトの雄ネジが、継手スリーブの雌ネジと螺合されている。これによって、2本のロックボルトが、継手スリーブを介して一直線に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2本のロックボルトを前掲特許文献1のようなネジ締結によって接合するには、先行して打ち込まれたロックボルトに対して継手スリーブを回してねじ込む操作、及び該継手スリーブに対して後続のロックボルトを回してねじ込む操作が必要である。このため、継ぎ足し作業が煩雑で時間を要する。
本発明は、かかる事情に鑑み、トンネル施工におけるロックボルトの継ぎ足しを短時間で効率的に実施可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るロックボルト継ぎ足し方法は、
地山に打込まれた先行ロックボルトの後方に、次に打ち込まれる後続ロックボルトを一直線に配置し、
継手スリーブを、これら2つのロックボルトの外周に跨るように配置し、
その後、前記継手スリーブを圧潰装置によって圧潰して前記2つのロックボルトに密着させることを特徴とする。
当該方法によれば、圧潰装置による圧潰操作によって2つのロックボルトをワンタッチ的に継ぎ足すことができる。継ぎ足しのために、継手スリーブ及びロックボルトをねじ回し操作する必要はない。
【0007】
本発明構造は、地山に打ち込まれたロックボルト構造であって、
一直線に配列された複数のロックボルトと、隣接する2つのロックボルトの外周に跨る継手スリーブとを備え、前記継手スリーブが、圧潰されて前記2つのロックボルトに密着されていることを特徴とする。これによって、圧潰された継手スリーブを介して2本のロックボルトどうしが連結されている。前記継手スリーブには圧潰跡が形成されている。
【0008】
前記2つのロックボルトのうち一方のロックボルトにおける他方との対向端部には、前記圧潰前の継手スリーブを引っ掛ける引掛突起が形成されていることが好ましい。これによって、一方のロックボルトの引掛突起に継手スリーブを引っ掛けることによって、前記一方のロックボルトに継手スリーブを支持させておき、その状態で、他方のロックボルトの対向端部を継手スリーブに差し込む作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トンネル施工におけるロックボルトの継ぎ足しを短時間で効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、施工中のNATMトンネルを、ロックボルト打ち込み工程で示す側面断面図である。
【
図4】
図4は、ロックボルトどうしの連結部分を継手スリーブの圧潰前の状態で示す、
図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】
図5は、継手スリーブの一態様を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態を示し、ロックボルトどうしの連結部分を、継手スリーブの圧潰前の状態で示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態を示し、ロックボルトどうしの連結部分を、圧潰前の継手スリーブに後続ロックボルトを差し入れる状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1は、NATM工法によって施工中のNATMトンネル1を示したものである。掘削したトンネル1周辺の地山2には、複数(図では1つだけ図示)の長尺ロックボルト3(ロックボルト構造)が打ち込まれている。図示は省略するが、複数の長尺ロックボルト3は、互いにトンネル1の周方向および軸方向に間隔を置いて配置されている。各長尺ロックボルト3は、一直線に配列された複数(図では2本だけ図示)のロックボルト10と、継手スリーブ20とを備えている。
以下、隣接するロックボルト10を互いに区別するときは、先にうち込まれたものを「先行ロックボルト11」と称し、その次に打ち込まれるものを「後続ロックボルト12」と称す。
【0012】
図2に示すように、継手スリーブ20は、筒状に形成されており、隣接する2つのロックボルト11,12の対向する端部11e,12eの外周に跨っている。これら対向端部11e,12eが、継手スリーブ20のそれぞれ対応する約半分の長さ部分の内部に挿し入れられている。継手スリーブ20は、圧潰されて、ロックボルト11,12の対向端部11e,12eの外周面に圧接されて密着されている。これによって、隣接するロックボルト11,12どうしが、圧潰された継手スリーブ20を介して連結されている。
図3に示すように、継手スリーブ20には、凹凸状の圧潰跡28が形成されている。
【0013】
NATMトンネル1は、次のようにして施工される。
地山2を所定の長さ掘削するごとに、掘削面にアーチ支保工及び吹付けコンクリートを含む一次覆工(図示せず)を設置するとともに、周辺の地山2に長尺ロックボルト3を打ち込む。打ち込みに際して、予め、打ち込み孔を穿ち、該打ち込み孔にグラウト材を注入する。グラウト材が硬化する前に打ち込みを行う。
【0014】
図1に示すように、ロックボルト10の打ち込みには、ドリルジャンボ30(打ち込み機)が用いられる。ドリルジャンボ30によって、先行ロックボルト11を地山2に打ち込む。
図4に示すように、該先行ロックボルト11の後端部11eが地山2内に埋め込まれる前に、打ち込みを停止する。
【0015】
別途、圧潰前の継手スリーブ20Aを用意する。圧潰前の継手スリーブ20Aは、筒状に形成されており、当然に圧潰跡28は形成されていない。
図5に示すように、継手スリーブ20Aの内周面には、圧潰されたときのロックボルト10との密着度を高めるために、凹凸が形成されていてもよい。
【0016】
図4に示すように、先行ロックボルト11の後方に、次に打ち込まれる後続ロックボルト12を一直線に配置するとともに、継手スリーブ20Aを、これら2つのロックボルト11,12の対向する端部11e,12eの外周に跨るように配置する。すなわち、継手スリーブ20Aの先端側部分の内部に先行ロックボルト11の後端部11eを挿し入れ、かつ継手スリーブ20Aの後端側部分の内部に後続ロックボルト12の先端部12eを挿し入れる。
【0017】
後続ロックボルト12は、
図1に示すドリルジャンボ30のガイドセル31に支持させる。ガイドセル31の先端部には、圧潰装置40が設けられている。該圧潰装置40に継手スリーブ20Aを保持させる。
【0018】
図6に示すように、圧潰装置40は、油圧式のクランプ41と駆動機構43を含む。クランプ41は、環状に配置された複数のダイ42を含む。
図6においてはダイ42の数は3つであるが、これに限らず、2つ又は4つ以上であってもよい。各ダイ42に油圧駆動機構43が接続されている。油圧駆動機構43は、複数のダイ42を互いに同期させて径方向へ進退させる。これによって、クランプ41が縮径及び拡径される。
【0019】
図6において実線で示すように、ロックボルト11,12どうしの連結に際して、圧潰装置40のクランプ41を拡径状態にして、その内部に継手スリーブ20Aを差し入れる。好ましくは、クランプ41の中心に継手スリーブ20Aをセットする。そして、
図6において二点鎖線で示すように、油圧駆動機構43によって、クランプ41を縮径させる。すなわち、複数のダイ42を互いに同期させて径方向内側へ押し込む。
【0020】
これによって、
図2及び
図3に示すように、継手スリーブ20Aが、径方向内側へ圧潰される。圧潰された継手スリーブ20は、ロックボルト11,12の対向端部11e,12eに圧接されて密着される。この結果、継手スリーブ20を介して、ロックボルト11,12どうしが連結される。言い換えると、先行ロックボルト11に後続ロックボルト12が継ぎ足される。圧潰後の継手スリーブ20には、圧潰跡28が形成される。
【0021】
当該連結方法によれば、圧潰装置4による圧潰操作によって、2つのロックボルト11,12をワンタッチ的に継ぎ足すことができる。継手スリーブ20及びロックボルト11,12をねじ回し操作する必要はない。したがって、トンネル施工におけるロックボルト11,12の継ぎ足しを短時間で効率的に実施することができる。
【0022】
前記の連結操作後、油圧駆動機構43によってダイ42を径方向外側へ退避させ、クランプ41を拡開させる。これによって、継手スリーブ20が圧潰装置40から解放される。
続いて、ドリルジャンボ30によるロックボルトの打ち込みを再開する。
以上の連結及び打ち込み操作をロックボルトの所要本数分だけ繰り返すことによって、地山2に長尺ロックボルト3が打設される。トンネル1の周方向および軸方向に間隔を置いて、複数の長尺ロックボルト3が周辺の地山2に打ち込まれる。これによって、地山2が安定化される。
その後、図示しない一次覆工の内面側に防水シートを張設し、更に二次覆工を構築する。
【0023】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図7)>
図7に示すように、第2実施形態においては、隣接する2つのロックボルト11,12のうち、先行(一方)のロックボルト11における後端部11e(他方との対向端部)に、一対の引掛突起13が形成されている。引掛突起13は、ロックボルト11から径方向へ突出されている。一対の引掛突起13がロックボルト11の周方向の180°離れて設けられている。引掛突起13の数は1つだけでもよく、3つ以上でもよい。
継手スリーブ20Aにおける先端側部分には係止孔24が貫通形成されている。
【0024】
先行ロックボルト11に後続ロックボルト12を接続する際は、先ず、後端部11eを継手スリーブ20Aの先端側部分に挿し入れるとともに、1の引掛突起13を係止孔24に通すことによって、継手スリーブ20Aを先行ロックボルト11の後端部11eに引っ掛けて支持させる。これによって、挿し入れた継手スリーブ20Aが落下するのを防止でき、継手スリーブ20Aから手を離して、後続ロックボルト12の差し込み作業へ移ることができる。ひいては、継ぎ足し作業を一層容易化できる。
引掛突起13を先行ロックボルト11の周方向に離して複数設けておくことで、先行ロックボルト11の回転角度に応じて、継手スリーブ20Aが落下することなく引っ掛かる引掛突起13を選択することができる。
【0025】
<第3実施形態(
図8)>
図8に示すように、第3実施形態においては、圧潰前の継手スリーブ20Cの後端部が、後続側へ向かってテーパ状に拡開する拡開端部25となっている。これによって、後続ロックボルト12の先端部12eを継手スリーブ20Cに差し込みやすくなる。
【0026】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、隣接する2つのロックボルト11,12のうち後続(一方)のロックボルト12における先端部12e(他方との対向端部)に引掛突起13が形成されていてもよい。
圧潰装置40のクランプ41の周方向の1又は複数の所定箇所における隣接するダイ42どうしが分離及び接合可能であってもよく、これにより、クランプ41が開閉可能になっていてもよい。この場合、クランプ41を開状態にして、継手スリーブ20Aをクランプ41の内側に配置した後、クランプ41を閉じて閉環状にして圧潰操作を行う。その後、クランプ41を開状態にして、圧潰後の継手スリーブ20の外周からクランプ41を離すことで、継手スリーブ20を圧潰装置40から解放できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えばNATMトンネルの施工に適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 トンネル
2 地山
3 長尺ロックボルト(ロックボルト構造)
10 ロックボルト
11 先行ロックボルト
11e 後端部(対向端部)
12 後続ロックボルト
12e 先端部(対向端部)
13 引掛突起
20 圧潰された継手スリーブ
20A 圧潰前の継手スリーブ
20C 継手スリーブ
28 圧潰跡
24 係止孔
25 拡開端部
30 ドリルジャンボ(打ち込み機)
31 ガイドセル
40 圧潰装置
41 クランプ
42 ダイ
43 駆動機構