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特開2022-78745空気調和装置、および、空気調和システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078745
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】空気調和装置、および、空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/00 20060101AFI20220518BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20220518BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20220518BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20220518BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20220518BHJP
   F24F 11/86 20180101ALN20220518BHJP
【FI】
F24F3/00
F24F11/47
F24F11/62
F25B13/00 104
F25B49/02 Z
F24F11/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189633
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 萌
【テーマコード(参考)】
3L053
3L092
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB00
3L092AA02
3L092BA13
3L092DA14
3L092EA11
3L092FA03
3L260AB06
3L260AB07
3L260BA42
3L260BA43
3L260BA48
3L260BA54
3L260CA29
3L260CB62
3L260EA06
3L260FA02
3L260FB05
3L260FB43
(57)【要約】
【課題】ガス消費機器および電力消費機器のうち一方の消費機器や、当該消費機器用のセンサや制御機構が故障した場合であっても他方の消費機器を駆動して空気調和装置を運転させる。
【解決手段】空気調和装置100は、ガス消費機器(ガスエンジン112を駆動源として冷媒を圧縮するエンジン駆動式圧縮機114)を有するガス消費ユニット(GHPユニット110)と、ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器(電動機152を駆動源として冷媒を圧縮する電気駆動式圧縮機154)を有する電力消費ユニット(EHPユニット150)と、ガス消費ユニットおよび電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器220と、室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部222とを有する室内機ユニット200とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置される空気調和装置であって、
ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットおよび前記電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、該室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、
を備える空気調和装置。
【請求項2】
前記施設には、当該施設での所定期間における電力の最大使用量である契約電力が設定されており、
前記電力消費ユニットの駆動に要する電力の料金は、少なくとも前記契約電力に応じて決定される基本料金と、電力の使用量に応じて決定される従量料金との合算値であり、
前記ガス消費ユニットの駆動に要するガスの料金は、当該ガスの使用量に応じて決定され、
前記室内機ユニットにおいて要求される所定の空調負荷を実現するための、前記ガス消費機器の駆動量と前記電力消費機器の駆動量との比は、前記電力の料金と前記ガスの料金との合計が最も少なくなるように設計される請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記施設には、当該施設での所定期間における電力の最大使用量である契約電力が設定されており、
前記電力消費ユニットの駆動に要する電力の料金は、少なくとも前記契約電力に応じて決定される基本料金と、電力の使用量に応じて決定される従量料金との合算値であり、
前記施設において前記契約電力を超えて電力を使用すると、前記基本料金および前記従量料金に加えて、ペナルティ料金が科され、
前記電力消費ユニットの使用電力量と、前記施設における他の装置の使用電力量との総計が、契約電力未満の所定の制限値に収まる範囲となるように該電力消費ユニットの運転出力を制御する運転制御部を備える請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記所定の制限値に収まる範囲となるように前記電力消費ユニットの運転出力を制御する場合であって、前記室内機ユニットにおいて要求される所定の空調負荷を実現できない場合には、前記ガス消費ユニットが停止していると該ガス消費ユニットの運転を開始し、該ガス消費ユニットが運転中であると、該ガス消費ユニットの運転出力を上昇させる請求項3に記載の空気調和装置。
【請求項5】
施設に設置される空気調和装置であって、
ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットおよび前記電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、該室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、
前記ガス消費ユニットが故障したか否かを判定するガス消費ユニット故障判定部と、
前記ガス消費ユニット故障判定部が前記ガス消費ユニットの故障を判定したとき、前記電力消費ユニットが停止している場合には該電力消費ユニットの運転を開始させ、該電力消費ユニットが運転中である場合には該電力消費ユニットの運転出力を上昇させる運転制御部と、
を備える空気調和装置。
【請求項6】
前記電力消費ユニットが受ける電力に制限値が設けられる場合、前記運転制御部は、前記ガス消費ユニット故障判定部が前記ガス消費ユニットの故障を判定したときに、前記電力消費ユニットに供給される電力が前記制限値内に収まる範囲で該電力消費ユニットの運転出力を上昇させる請求項5に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記施設には、当該施設での所定期間における電力の最大使用量である契約電力が設定されており、
前記施設において前記契約電力を超えて電力を使用すると、ペナルティ料金が科され、
前記制限値は、前記契約電力から前記施設における他の装置の使用電力量を減じた値未満に設定される請求項6に記載の空気調和装置。
【請求項8】
施設に設置される空気調和装置であって、
ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットおよび前記電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、該室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、
前記電力消費ユニットが故障したか否かを判定する電力消費ユニット故障判定部と、
前記電力消費ユニット故障判定部が前記電力消費ユニットの故障を判定したとき、前記ガス消費ユニットが停止している場合には該ガス消費ユニットの運転を開始させ、該ガス消費ユニットが運転中である場合には該ガス消費ユニットの運転出力を上昇させる運転制御部と、
を備える空気調和装置。
【請求項9】
施設に設置される、複数の空気調和装置を含んで構成される空気調和システムであって、
前記空気調和装置は、
ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットおよび前記電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒又は水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、該室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、
前記ガス消費ユニットが故障したか否かを判定するガス消費ユニット故障判定部と、
を備え、
前記空気調和システムは、
前記ガス消費ユニット故障判定部によって前記ガス消費ユニットが故障したと判定された空気調和装置であるガス消費ユニット故障空気調和装置が生じたとき、該ガス消費ユニット故障空気調和装置以外の空気調和装置の電力消費ユニットの運転出力を低下させて該電力消費ユニットに供給される電力を減少させ、該減少させた分の電力が該ガス消費ユニット故障空気調和装置の電力消費ユニットに供給され、該ガス消費ユニット故障空気調和装置の前記電力消費ユニットが停止している場合には該電力消費ユニットの運転を開始させ、該電力消費ユニットが運転中である場合には該電力消費ユニットの運転出力を上昇させるとともに、該ガス消費ユニット故障空気調和装置以外のガス消費ユニットが停止している場合には該ガス消費ユニットの運転を開始させ、該ガス消費ユニット故障空気調和装置以外のガス消費ユニットが運転中である場合には該ガス消費ユニットの運転出力を上昇させる運転制御部をさらに備える空気調和システム。
【請求項10】
複数の前記空気調和装置の電力消費ユニットが受ける電力の合計に制限値が設けられる場合、前記運転制御部は、前記ガス消費ユニット故障判定部が前記ガス消費ユニットの故障を判定したときに、前記電力消費ユニットに供給される電力の合計が前記制限値内に収まる範囲で該電力消費ユニットの運転出力を上昇させる請求項9に記載の空気調和システム。
【請求項11】
前記施設には、当該施設での所定期間における電力の最大使用量である契約電力が設定されており、
前記施設において前記契約電力を超えて電力を使用すると、ペナルティ料金が科され、
前記制限値は、前記契約電力から前記施設における他の装置の使用電力量を減じた値未満に設定される請求項10に記載の空気調和システム。
【請求項12】
施設に設置される、複数の空気調和装置を含んで構成される空気調和システムであって、
前記空気調和装置は、
ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、
前記ガス消費ユニットおよび前記電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、該室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、
前記電力消費ユニットが故障したか否かを判定する電力消費ユニット故障判定部と、
を備え、
前記空気調和システムは、
前記電力消費ユニット故障判定部によって前記電力消費ユニットが故障したと判定された空気調和装置である電力消費ユニット故障空気調和装置が生じたとき、該電力消費ユニット故障空気調和装置の電力消費ユニットに供給されていた電力を、該電力消費ユニット故障空気調和装置以外の空気調和装置の電力消費ユニットに供給して運転出力を上昇させ、該電力消費ユニット故障空気調和装置の前記ガス消費ユニットが停止している場合には該ガス消費ユニットの運転を開始させ、該ガス消費ユニットが運転中である場合には該ガス消費ユニットの運転出力を上昇させる運転制御部をさらに備える空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内を空調する空気調和装置、および、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和装置は、ガスエンジンを駆動源としたエンジン駆動式圧縮機を含んで構成される室外機ユニットを備えたGHP(ガスヒートポンプエアコン)と、電動機を駆動源とした電気駆動式圧縮機を含んで構成される室外機ユニットを備えたEHP(電気式ヒートポンプエアコン)とに大別される。
【0003】
EHPは、ガスエンジンを備えないため、GHPに必要なエンジンオイルの補充や交換、オイルフィルタの交換、点火プラグの点検や交換等のメンテナンスを行う必要がなく、メンテナンスに要するコストがかからない。
【0004】
一方、GHPは、ヒートポンプによる暖房(室内空気の加熱)に加えて、ガスエンジンの排熱を回収して空気を加熱することができるため、EHPと比較して効率的に室内を暖めることが可能となる。また、GHPは、ほとんど電力を消費しないため、EHPと比較して、消費電力を大幅に削減することができるという利点がある。
【0005】
このように、GHPとEHPとはそれぞれ異なる利点を有している。そこで、それぞれの利点を活かすために、1筐体で構成される室外機ユニットに、エンジン駆動式圧縮機と、電気駆動式圧縮機と、室外熱交換器と、各種センサとを収容し、双方の圧縮機を並行して駆動させる空気調和装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-10291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したエンジン駆動式圧縮機等のガスを消費するガス消費機器と、電気駆動式圧縮機等の電力消費機器とが一体的に構成される室外機ユニットでは、ガス消費機器と電力消費機器とでセンサや制御機構を共用しているため、センサや制御機構といった共用部が故障した場合、室外機ユニット全体が利用できなくなり、空気調和装置の運転が不可能となる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、ガス消費機器と、電力消費機器とを双方とも備えた空気調和装置において、一方の消費機器や、当該消費機器用のセンサや制御機構が故障した場合であっても他方の消費機器を駆動して空気調和装置を運転させることができる空気調和装置、および、空気調和システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の空気調和装置は、施設に設置される空気調和装置であって、ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、ガス消費ユニットおよび電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、を備える。
【0010】
また、施設には、当該施設での所定期間における電力の最大使用量である契約電力が設定されており、電力消費ユニットの駆動に要する電力の料金は、少なくとも契約電力に応じて決定される基本料金と、電力の使用量に応じて決定される従量料金との合算値であり、ガス消費ユニットの駆動に要するガスの料金は、当該ガスの使用量に応じて決定され、室内機ユニットにおいて要求される所定の空調負荷を実現するための、ガス消費機器の駆動量と電力消費機器の駆動量との比は、電力の料金とガスの料金との合計が最も少なくなるように設計されてもよい。
【0011】
また、施設には、当該施設での所定期間における電力の最大使用量である契約電力が設定されており、電力消費ユニットの駆動に要する電力の料金は、少なくとも契約電力に応じて決定される基本料金と、電力の使用量に応じて決定される従量料金との合算値であり、施設において契約電力を超えて電力を使用すると、基本料金および従量料金に加えて、ペナルティ料金が科され、電力消費ユニットの使用電力量と、施設における他の装置の使用電力量との総計が、契約電力未満の所定の制限値に収まる範囲となるように電力消費ユニットの運転出力を制御する運転制御部を備えてもよい。
【0012】
また、運転制御部は、所定の制限値に収まる範囲となるように電力消費ユニットの運転出力を制御する場合であって、室内機ユニットにおいて要求される所定の空調負荷を実現できない場合には、ガス消費ユニットが停止しているとガス消費ユニットの運転を開始し、ガス消費ユニットが運転中であると、ガス消費ユニットの運転出力を上昇させてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の他の空気調和装置は、施設に設置される空気調和装置であって、ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、ガス消費ユニットおよび電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、ガス消費ユニットが故障したか否かを判定するガス消費ユニット故障判定部と、ガス消費ユニット故障判定部がガス消費ユニットの故障を判定したとき、電力消費ユニットが停止している場合には電力消費ユニットの運転を開始させ、電力消費ユニットが運転中である場合には電力消費ユニットの運転出力を上昇させる運転制御部と、を備える。
【0014】
また、電力消費ユニットが受ける電力に制限値が設けられる場合、運転制御部は、ガス消費ユニット故障判定部がガス消費ユニットの故障を判定したときに、電力消費ユニットに供給される電力が制限値内に収まる範囲で電力消費ユニットの運転出力を上昇させてもよい。
【0015】
また、施設には、当該施設での所定期間における電力の最大使用量である契約電力が設定されており、施設において契約電力を超えて電力を使用すると、ペナルティ料金が科され、制限値は、契約電力から施設における他の装置の使用電力量を減じた値未満に設定されてもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の他の空気調和装置は、施設に設置される空気調和装置であって、ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、ガス消費ユニットおよび電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、電力消費ユニットが故障したか否かを判定する電力消費ユニット故障判定部と、電力消費ユニット故障判定部が電力消費ユニットの故障を判定したとき、ガス消費ユニットが停止している場合にはガス消費ユニットの運転を開始させ、ガス消費ユニットが運転中である場合にはガス消費ユニットの運転出力を上昇させる運転制御部と、を備える。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の空気調和システムは、施設に設置される、複数の空気調和装置を含んで構成される空気調和システムであって、空気調和装置は、ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、ガス消費ユニットおよび電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒又は水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、ガス消費ユニットが故障したか否かを判定するガス消費ユニット故障判定部と、を備え、空気調和システムは、ガス消費ユニット故障判定部によってガス消費ユニットが故障したと判定された空気調和装置であるガス消費ユニット故障空気調和装置が生じたとき、ガス消費ユニット故障空気調和装置以外の空気調和装置の電力消費ユニットの運転出力を低下させて電力消費ユニットに供給される電力を減少させ、減少させた分の電力がガス消費ユニット故障空気調和装置の電力消費ユニットに供給され、ガス消費ユニット故障空気調和装置の電力消費ユニットが停止している場合には電力消費ユニットの運転を開始させ、電力消費ユニットが運転中である場合には電力消費ユニットの運転出力を上昇させるとともに、ガス消費ユニット故障空気調和装置以外のガス消費ユニットが停止している場合にはガス消費ユニットの運転を開始させ、ガス消費ユニット故障空気調和装置以外のガス消費ユニットが運転中である場合にはガス消費ユニットの運転出力を上昇させる運転制御部をさらに備える。
【0018】
また、複数の空気調和装置の電力消費ユニットが受ける電力の合計に制限値が設けられる場合、運転制御部は、ガス消費ユニット故障判定部がガス消費ユニットの故障を判定したときに、電力消費ユニットに供給される電力の合計が制限値内に収まる範囲で電力消費ユニットの運転出力を上昇させてもよい。
【0019】
また、施設には、当該施設での所定期間における電力の最大使用量である契約電力が設定されており、施設において契約電力を超えて電力を使用すると、ペナルティ料金が科され、制限値は、契約電力から施設における他の装置の使用電力量を減じた値未満に設定されてもよい。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の他の空気調和システムは、施設に設置される、複数の空気調和装置を含んで構成される空気調和システムであって、空気調和装置は、ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却するガス消費ユニットと、ガス消費ユニットとは独立して構成され、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却する電力消費ユニットと、ガス消費ユニットおよび電力消費ユニットによって加熱または冷却された、冷媒または水と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器と、室内熱交換器に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部とを有する1または複数の室内機ユニットと、電力消費ユニットが故障したか否かを判定する電力消費ユニット故障判定部と、を備え、空気調和システムは、電力消費ユニット故障判定部によって電力消費ユニットが故障したと判定された空気調和装置である電力消費ユニット故障空気調和装置が生じたとき、電力消費ユニット故障空気調和装置の電力消費ユニットに供給されていた電力を、電力消費ユニット故障空気調和装置以外の空気調和装置の電力消費ユニットに供給して運転出力を上昇させ、電力消費ユニット故障空気調和装置のガス消費ユニットが停止している場合にはガス消費ユニットの運転を開始させ、ガス消費ユニットが運転中である場合にはガス消費ユニットの運転出力を上昇させる運転制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガス消費機器および電力消費機器のうち一方の消費機器や、当該消費機器用のセンサや制御機構が故障した場合であっても他方の消費機器を駆動して空気調和装置を運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】空気調和装置の構成を説明するための図である。
図2】エンジン駆動式圧縮機および電気駆動式圧縮機の容量比と、空気調和装置が配される施設全体のガスの料金および電力の料金、空気調和装置に要するコストの合計と、電力の最大使用量とをシミュレーションした結果を説明する図である。
図3】エンジン駆動式圧縮機および電気駆動式圧縮機の運転比率をシミュレーションした結果を説明する図である。
図4】運転比率テーブルを示す図である。
図5】第2実施形態にかかる空気調和装置の構成を説明するための図である。
図6】運転比率テーブルを示す図である。
図7】第3実施形態にかかる空気調和システムの構成を説明するための図である。
図8】装置間運転比率テーブルを示す図である。
図9】GHPチラーを説明する図である。
図10】吸収式冷温水機を説明する図である。
図11】EHPチラーを説明する図である。
図12】ターボ冷凍機を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
[第1実施形態:空気調和装置100]
図1は、本実施形態にかかる空気調和装置100の構成を説明するための図である。空気調和装置100は、ビルや学校等の施設に設置され、室外機ユニットとして機能するGHPユニット110と、当該GHPユニット110とは別体であり室外機ユニットとして機能するEHPユニット150と、室内機ユニット200と、GHPユニット110、EHPユニット150、室内機ユニット200に冷媒を循環させるための冷媒管230と、GHPユニット110、EHPユニット150、室内機ユニット200を制御する運転制御部250とを含んで構成される。なお、図1中、冷房時の冷媒の流れを実線の矢印で、信号線を破線で示す。
【0025】
GHPユニット110(ガス消費ユニット)は、ガスエンジン112(ガス消費機器)と、ガスエンジン112を駆動源とするエンジン駆動式圧縮機114(ガス消費機器)と、四方弁120と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うGHP室外熱交換器130と、GHP室外熱交換器130に空気を送り熱交換を促進させるGHP送風部132と、GHP制御部140とを含んで構成される。エンジン駆動式圧縮機114の出口は、冷媒管230によって四方弁120の第1ポート(図1中「1」で示す)に接続され、エンジン駆動式圧縮機114の入口は、冷媒管230によって四方弁120の第3ポート(図1中「3」で示す)に接続される。また、GHP室外熱交換器130の一端側は、冷媒管230によって四方弁120の第2ポート(図1中「2」で示す)に接続される。GHP室外熱交換器130の他端側は、冷媒管230によって後述する室内機ユニット200の減圧部210に接続される。四方弁120の第4ポート(図1中「4」で示す)は、冷媒管230によって後述する室内機ユニット200の室内熱交換器220の一端側に接続される。GHP制御部140は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、後述する運転制御部250からの制御指令に基づいて、GHPユニット110全体(例えば、ガスエンジン112、GHP送風部132、各種センサ等)を制御する。
【0026】
EHPユニット150(電力消費ユニット)は、GHPユニット110とは独立して構成され、電動機152(電力消費機器)と、電動機152を駆動源とする電気駆動式圧縮機154(電力消費機器)と、四方弁160と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うEHP室外熱交換器170と、EHP室外熱交換器170に空気を送り熱交換を促進させるEHP送風部172と、EHP制御部180とを含んで構成される。電気駆動式圧縮機154の出口は、冷媒管230によって四方弁160の第1ポート(図1中「1」で示す)に接続され、電気駆動式圧縮機154の入口は、冷媒管230によって四方弁160の第3ポート(図1中「3」で示す)に接続される。また、EHP室外熱交換器170の一端側は、冷媒管230によって四方弁160の第2ポート(図1中「2」で示す)に接続される。EHP室外熱交換器170の他端側は、冷媒管230によって室内機ユニット200の減圧部210に接続される。四方弁160の第4ポート(図1中「4」で示す)は、冷媒管230によって室内機ユニット200の室内熱交換器220の一端側に接続される。EHP制御部180は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、運転制御部250からの制御指令に基づいて、EHPユニット150全体(例えば、電動機152、EHP送風部172、各種センサ等)を制御する。
【0027】
本実施形態において、空気調和装置100は、2つの室内機ユニット200(図1中、200a、200bで示す)を備えている。室内機ユニット200は、冷媒を減圧する減圧部210(膨張弁)と、冷媒管230によって減圧部210に接続され冷媒と室内の空気とで熱交換を行う室内熱交換器220と、室内熱交換器220に空気を送り熱交換を促進させる室内送風部222とを含んで構成される。上述したように、減圧部210の一端側は、冷媒管230によってGHP室外熱交換器130、EHP室外熱交換器170の他端側に接続され、減圧部210の他端側は冷媒管230によって室内熱交換器220の他端側に接続され、室内熱交換器220の一端側は冷媒管230によって四方弁120、160の第4ポートに接続されている。
【0028】
したがって、エンジン駆動式圧縮機114や電気駆動式圧縮機154が駆動されると、冷媒は、冷媒管230を循環することとなり、冷媒管230によって一連の循環路が形成される。また、本実施形態において、冷媒が循環する一連の循環路は、GHPユニット110、EHPユニット150、室内機ユニット200aを通る循環路と、GHPユニット110、EHPユニット150、室内機ユニット200bを通る循環路とに分岐されている。
【0029】
なお、室内機ユニット200を冷房として機能させる場合、四方弁120の第1ポートと第2ポートとを接続し、第4ポートと第3ポートとを接続するとともに、四方弁160の第1ポートと第2ポートとを接続し、第4ポートと第3ポートとを接続することで、図1中矢印で示す方向に冷媒を流通させて、圧縮された冷媒をGHP室外熱交換器130、EHP室外熱交換器170に送出する。一方、室内機ユニット200を暖房として機能させる場合、四方弁120の第1ポートと第4ポートとを接続し、第2ポートと第3ポートとを接続するとともに、四方弁160の第1ポートと第4ポートとを接続し、第2ポートと第3ポートとを接続することで、図1中矢印で示す方向とは逆の方向に冷媒を流通させて、圧縮された冷媒を室内熱交換器220に送出する。
【0030】
運転制御部250は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して空気調和装置100全体を管理および制御する。運転制御部250は、ユーザによる操作部(例えば、リモートコントローラ)への操作入力に応じて、冷媒の循環方向を切り換え、室内機ユニット200の機能を冷房または暖房に切り換える。
【0031】
また、本実施形態において運転制御部250は、不図示の記憶部に予め記憶された運転比率テーブルに基づいて、GHPユニット110とEHPユニット150との運転比率を制御する。運転比率テーブルおよびこれを用いた運転制御部250による運転比率の制御については後に詳述する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態にかかる空気調和装置100によれば、GHPユニット110とEHPユニット150とを独立して構成することにより、GHPユニット110およびEHPユニット150のいずれか一方が故障したとしても、室内熱交換器220に冷媒を循環させることができ、空気調和装置100を運転させることが可能となる。
【0033】
また、GHPユニット110とEHPユニット150とは、別体であるため、GHPユニット110の数、および、EHPユニット150の数をそれぞれ増減させて空気調和装置100を構成することができ、効率的に容量の増減を図ることが可能となる。したがって、1のGHPユニット110自体の部品や、1のEHPユニット150自体の部品を大型化する必要がなく、部品の大型化に伴うコスト上昇を回避することが可能となる。
【0034】
続いて、空気調和装置100における、GHPユニット110のエンジン駆動式圧縮機114およびEHPユニット150の電気駆動式圧縮機154の容量比の設計について説明する。
【0035】
(エンジン駆動式圧縮機114および電気駆動式圧縮機154の容量比の設計)
GHPユニット110を構成するガスエンジン112はガスで駆動力を発生させ、EHPユニット150を構成する電動機152は電力で駆動力を発生させる。したがって、GHPユニット110およびEHPユニット150を双方とも運転させる場合、ガスおよび電力が必要となるため、ガス供給会社や電力供給会社からガスおよび電力を購入することとなる。
【0036】
ガスおよび電力の料金は、使用量に依存しない基本料金と、予め設定された単価と使用量とに応じて決定される従量料金との2つの料金体系で構成される。一般的に、基本料金は、電力の方がガスよりも高く、従量料金は、ガスの方が電力よりも高いことが多い。
【0037】
また、ガスの料金において、基本料金および従量料金は、いずれも使用量に依存しており、使用量が多いほど高くなる。
【0038】
一方、電力の料金において、基本料金は、契約電力に基づいて決定される。ここで、契約電力は、所定期間(例えば、1年)における電力の最大使用量(kWh)(詳細には、例えば、所定時間(例えば、30分間)の平均電力使用量の最大値)である。なお、契約電力を超えて電力を使用すると、基本料金および従量料金に加えてペナルティ料金が科されることとなる。
【0039】
したがって、契約電力を超えない範囲であれば、使用量が同一である場合、基本料金が低いほど電力の料金(基本料金と従量料金との合算値)は安くなる。そのため、可能な限り基本料金を低くすることが望ましいが、基本料金を低くしすぎると、使用量が契約電力を超える頻度が高くなり、ペナルティ料金が科されて却って電力の料金が増加してしまうおそれもある。そこで、基本料金を適切に低く設定し、契約電力を超えないように電力の使用量を制御することが望ましい。
【0040】
そこで、本実施形態では、空気調和装置100におけるエンジン駆動式圧縮機114と電気駆動式圧縮機154との容量比を、ガスの料金と電力の料金との合計が最も少なくなるように設計する。
【0041】
本願発明者らは、エンジン駆動式圧縮機114および電気駆動式圧縮機154の容量比を変化させることで、空気調和装置100が配される施設全体のガスの料金および電力の料金の合計と、電力の最大使用量とがどのように変化するかのシミュレーションを行った。
【0042】
図2は、エンジン駆動式圧縮機114および電気駆動式圧縮機154の容量比と、空気調和装置100が配される施設全体のガスの料金および電力の料金、空気調和装置100に要するコストの合計と、電力の最大使用量とをシミュレーションした結果を説明する図である。
【0043】
図2において、室内機ユニット200において要求される最大の空調負荷を実現するための容量を100%とする。また、空気調和装置100が配される施設における空気調和装置100以外の他の機器に要する電力の基本料金および従量料金は、一定であると仮定している。
【0044】
図2に示すように、空気調和装置100の導入時に要するGHPユニット110の料金(図2中、イニシャル(GHP))およびガス工事費用(図2中、イニシャル(ガス工事))は、エンジン駆動式圧縮機114の容量比が大きくなるほど(図2中、左になるにつれて)高くなる。空気調和装置100の導入時に要するEHPユニット150の料金(図2中、イニシャル(EHP))およびキュービクル式高圧受電設備(図2中、イニシャル(キュービクル))は、電気駆動式圧縮機154の容量比が大きくなるほど(図2中、右になるにつれて)高くなる。一方、空気調和装置100の導入時に要する室内機ユニット200の料金は、エンジン駆動式圧縮機114の容量比、電気駆動式圧縮機154の容量比に拘わらず、一定の料金を要する。
【0045】
また、空気調和装置100の運転時に要する電力の基本料金および従量料金は、電気駆動式圧縮機154の容量比が大きくなるほど高くなり、特に、電力の基本料金は、電気駆動式圧縮機154の容量比が50%の場合、電気駆動式圧縮機154の容量比が33%(エンジン駆動式圧縮機114の容量比が67%)の場合と比較して、著しく上昇することが確認できる。
【0046】
また、空気調和装置100の運転時に要するガスの基本料金および従量料金、空気調和装置100のメンテナンス費用は、エンジン駆動式圧縮機114の容量比が大きくなるほど高くなる。
【0047】
さらに、図2に示す例では、電力の最大使用量は、エンジン駆動式圧縮機114(GHPユニット110)の容量比が80%であり、電気駆動式圧縮機154(EHPユニット150)の容量比が20%である場合に最小となるものの、空気調和装置100の導入時に要するコストおよび運転に要するコスト全体(年間コスト)は、エンジン駆動式圧縮機114の容量比が67%であり、電気駆動式圧縮機154の容量比が33%である場合に最も少なくなることが分った。
【0048】
ガスの料金および電力の料金は、空気調和装置100が設置される施設が契約するガス供給会社、電力供給会社によって異なる。そこで、上述したように、エンジン駆動式圧縮機114の容量(駆動量)と電気駆動式圧縮機154の容量(駆動量)との比を、ガスの料金、電力の料金、空気調和装置100に要するコストの合計(年間コスト)が最も少なくなるように設計することで、室内機ユニット200において要求される空調負荷を実現しつつ、コストを最小限に抑えることが可能となる。
【0049】
図2に示す例では、シミュレーションの結果、エンジン駆動式圧縮機114の容量比が67%であり、電気駆動式圧縮機154の容量比が33%である場合に年間コストが最も少なくなることが分った。
【0050】
そこで、本願発明者らは、エンジン駆動式圧縮機114の容量比を67%とし、電気駆動式圧縮機154の容量比を33%とした空気調和装置100(年間コストが最も少なくなるように設計された空気調和装置100)を用いて、エンジン駆動式圧縮機114の運転比率と電気駆動式圧縮機154の運転比率を変化させることで、年間コストがどの程度変化するかのシミュレーションを行った。
【0051】
図3は、エンジン駆動式圧縮機および電気駆動式圧縮機の運転比率をシミュレーションした結果を説明する図である。図3中、Aは、エンジン駆動式圧縮機114を最大の運転出力で駆動させ、室内機ユニット200において要求される空調負荷の不足分を、電気駆動式圧縮機154を駆動させて補った場合を、Bは、エンジン駆動式圧縮機114の運転比率および電気駆動式圧縮機154の運転比率を最適値として、室内機ユニット200において要求される空調負荷を実現する場合を、Cは、電気駆動式圧縮機154を最大の運転出力で駆動させ、室内機ユニット200において要求される空調負荷の不足分を、エンジン駆動式圧縮機114を駆動させて補った場合を示す。
【0052】
図3に示すように、上記年間コストが最も少なくなるように設計された空気調和装置100において、Bの場合、年間コストが最も小さくなるものの、A、B、Cいずれの場合であっても、年間コストが著しく変化することはないことが確認された。
【0053】
したがって、エンジン駆動式圧縮機114の容量と電気駆動式圧縮機154の容量との比を、年間コストが最も少なくなるように設計することで、どのような運転比率で、GHPユニット110(エンジン駆動式圧縮機114)およびEHPユニット150(電気駆動式圧縮機154)を運転させたとしても、年間コストにほとんど変化させることなく、室内機ユニット200において要求される空調負荷を実現することが可能となることが確認できた。
【0054】
(運転制御部250による運転比率制御)
続いて、運転制御部250による制御について説明する。本実施形態において運転制御部250は、記憶部に予め記憶された運転比率テーブルに基づいて、GHPユニット110と、EHPユニット150との運転比率を制御する。ここで、運転比率テーブルは、空気調和装置100が設置される施設における他の機器(例えば、照明、パーソナルコンピュータ、冷蔵庫等)の使用電力量とEHPユニット150の使用電力量との総計、ガスの料金、電力の料金、および、契約電力に基づいて決定される運転状況と、室内機ユニット200において要求される空調負荷とに基づいて、1つの運転比率を一義的に導出するためのものである。
【0055】
図4は、運転比率テーブルを示す図である。図4では、室内機ユニット200において要求される最大の空調負荷を200%とした場合のGHPユニット110、EHPユニット150の運転比率が設定された運転比率テーブルを示し、GHPユニット110と、EHPユニット150との容量比が100%:100%で設計された空気調和装置100を例に挙げて説明する。
【0056】
また、運転状況として、通常運転する際に参照される「通常Aモード」および「通常Bモード」、GHPユニット110を主に運転する際に参照される「GHP主体モード」、EHPユニット150を主に運転する際に参照される「EHP主体モード」、他の機器の使用電力量が契約電力に逼迫している際に参照される「デマンド1モード」および「デマンド2モード」を例に挙げて説明する。
【0057】
運転制御部250は、空気調和装置100が設置される施設に設けられた使用電力量を検知する検知器からのデマンド信号に基づいて、運転状況を把握する。検知器は、契約電力と、施設全体の使用電力量(空気調和装置100が設置される施設における他の機器の使用電力量とEHPユニット150の使用電力量との総計)との差分Zに応じて、デマンド信号1、デマンド信号2を送信する。ここで、検知器は、例えば、契約電力が100kWである場合に、差分Zが30kW(すなわち、施設全体の使用電力量が70kW)となった場合にデマンド信号1を運転制御部250に送信し、差分Zが10kW(すなわち、施設全体の使用電力量が90kW)となった場合にデマンド信号2を運転制御部250に送信する。
【0058】
運転制御部250は、デマンド信号1およびデマンド信号2のいずれも受信していない場合、通常運転を行うべく、運転比率テーブルの「通常Aモード」または「通常Bモード」を参照して、GHPユニット110およびEHPユニット150の運転比率を設定する。なお、「通常Aモード」は、GHPユニット110およびEHPユニット150を並行して駆動する際にGHPユニット110を先に立ち上げ、「通常Bモード」は、GHPユニット110およびEHPユニット150を並行して駆動する際にEHPユニット150を先に立ち上げるように構成されている。このため、運転制御部250は、通常運転を実行する場合、「通常Aモード」と「通常Bモード」とを交互に参照することで、GHPユニット110およびEHPユニット150の駆動回数を実質的に均一化している。
【0059】
また、通常運転を行う場合であって、例えば、ガス供給会社や、電力供給会社、時間帯等によって、EHPユニット150を最大の運転出力で駆動させたときに要する電力の料金が、GHPユニット110を最大の運転出力で駆動させたときに要するガスの料金より高い場合、運転制御部250は、「GHP主体モード」を参照する。これにより、EHPユニット150よりGHPユニット110の運転比率を高くすることができ、低コストで、室内機ユニット200において要求される空調負荷を実現することが可能となる。
【0060】
一方、通常運転を行う場合であって、例えば、地域や時間帯等によって、GHPユニット110を最大の運転出力で駆動させたときに要するガスの料金が、EHPユニット150を最大の運転出力で駆動させたときに要する電力の料金より高い場合、運転制御部250は、「EHP主体モード」を参照する。これにより、GHPユニット110よりEHPユニット150の運転比率を高くすることができ、低コストで、室内機ユニット200において要求される空調負荷を実現することが可能となる。
【0061】
また、運転制御部250は、施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫しており、EHPユニット150の運転出力によっては、契約電力を超えてしまう場合、つまり、デマンド信号1を受信した場合、「デマンド1モード」を参照して、EHPユニット150に供給される電力と他の機器の使用電力量との総計が契約電力未満の所定の制限値(例えば、80kW)内に収まる範囲で、運転比率を設定する。
【0062】
具体的に説明すると、「デマンド1モード」においては、EHPユニット150に供給される電力と他の機器の使用電力量との総計が最大でも制限値内となる運転出力(例えば、EHPユニット150の運転出力が60%)となるように運転比率が割り当てられている。これにより、運転制御部250は、EHPユニット150の使用電力量と、施設における他の装置の使用電力量との総計が、契約電力未満となるようにEHPユニット150に供給する電力を制限することができる。したがって、空気調和装置100が設置される施設の総計使用電力量が、契約電力を超え、ペナルティ料金が科されてしまう事態を回避することが可能となる。
【0063】
また、この際、GHPユニット110が停止している場合、GHPユニット110の運転を開始し、GHPユニット110が運転中である場合、GHPユニット110の運転出力を上昇させる。これにより、ペナルティ料金が科されてしまう事態を回避しつつ、室内機ユニット200において要求される空調負荷を実現することが可能となる。
【0064】
なお、「デマンド1モード」において、GHPユニット110のみで実現できる室内機ユニット200の空調負荷(例えば、40%、100%)が要求された場合には、GHPユニット110のみが駆動されるように運転比率が割り当てられている。また、GHPユニット110のみでは実現できない室内機ユニット200の空調負荷(例えば、160%、200%)が要求された場合には、GHPユニット110に加えてEHPユニット150を最大でも制限値内となる運転出力の60%まで駆動させるように運転比率が割り当てられている。
【0065】
なお、「デマンド1モード」において、室内機ユニット200において要求される空調負荷が最大の200%である場合には、EHPユニット150を最大でも制限値内となる運転出力60%で駆動させるため、GHPユニット110を運転出力100%で駆動させたとしても、室内機ユニット200において要求される空調負荷を実現できないものの、ペナルティ料金が科される事態を回避することができる。
【0066】
また、運転制御部250は、施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫しており、EHPユニット150を駆動させれば、契約電力を超えてしまう場合、つまり、デマンド信号2を受信した場合、EHPユニット150を駆動させないように設定された「デマンド2モード」を参照する。これにより、運転制御部250は、空気調和装置100によって契約電力を超えてしまう事態を防止することができる。
【0067】
[第2実施形態:空気調和装置300]
図5は、第2実施形態にかかる空気調和装置300の構成を説明するための図である。図5中、冷房時の冷媒の流れを実線の矢印で、信号線を破線で示す。
【0068】
図5に示すように、第2実施形態に係る空気調和装置300は、GHPユニット310と、EHPユニット320と、1または複数の室内機ユニット200と、冷媒管230と、運転制御部350とを含む。
【0069】
GHPユニット310(ガス消費ユニット)は、ガスエンジン112(ガス消費機器)と、ガスエンジン112を駆動源とするエンジン駆動式圧縮機114(ガス消費機器)と、四方弁120と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うGHP室外熱交換器130と、GHP室外熱交換器130に空気を送り熱交換を促進させるGHP送風部132と、GHP制御部312とを含んで構成される。
【0070】
EHPユニット320(電力消費ユニット)は、GHPユニット310とは独立して構成され、電動機152(電力消費機器)と、電動機152を駆動源とする電気駆動式圧縮機154(電力消費機器)と、四方弁160と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うEHP室外熱交換器170と、EHP室外熱交換器170に空気を送り熱交換を促進させるEHP送風部172と、EHP制御部322とを含んで構成される。
【0071】
なお、上記した第1実施形態の空気調和装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、ここでは、構成の異なるGHP制御部312、EHP制御部322、運転制御部350について詳述する。
【0072】
GHP制御部312は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、後述する運転制御部350からの制御指令に基づいて、GHPユニット310全体(例えば、ガスエンジン112、GHP送風部132、各種センサ等)を制御する。
【0073】
また、本実施形態において、GHP制御部312は、ガス消費ユニット故障判定部314としても機能し、GHPユニット310が故障したか否か、詳細には、GHPユニット310を構成する、ガスエンジン112、GHP送風部132、四方弁120、各種センサが故障したか否かを判定し、GHPユニット310が故障した場合、その旨を運転制御部350に出力する。
【0074】
EHP制御部322は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、運転制御部350からの制御指令に基づいて、EHPユニット320全体(例えば、電動機152、EHP送風部172、各種センサ等)を制御する。
【0075】
また、本実施形態において、EHP制御部322は、電力消費ユニット故障判定部324としても機能し、EHPユニット320が故障したか否か、詳細には、EHPユニット320を構成する、電動機152、EHP送風部172、四方弁160、各種センサが故障したか否かを判定し、EHPユニット320が故障した場合、その旨を運転制御部350に出力する。
【0076】
運転制御部350は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して空気調和装置300全体を管理および制御する。運転制御部350は、ユーザによる操作部(例えば、リモートコントローラ)への操作入力に応じて、冷媒の循環方向を切り換え、室内機ユニット200の機能を冷房または暖房に切り換える。
【0077】
また、本実施形態において運転制御部350は、不図示の記憶部に予め記憶された運転比率テーブルに基づいて、GHPユニット310とEHPユニット320との運転比率を制御する。ここで、運転比率テーブルは、GHPユニット310が故障しているか否か、EHPユニット320が故障しているか否か、空気調和装置300が設置される施設における他の機器(例えば、照明、パーソナルコンピュータ、冷蔵庫等)の使用電力量とEHPユニット320の使用電力量との総計、および、契約電力に基づいて決定される運転状況と、室内機ユニット200において要求される空調負荷とに基づいて、1つの運転比率を一義的に導出するためのものである。なお、運転比率テーブルは、空気調和装置300の室内機ユニット200において要求される空調負荷ごとに複数記憶されている。
【0078】
図6は、運転比率テーブルを示す図である。図6では、室内機ユニット200において要求される空調負荷を100%とした場合のGHPユニット310、EHPユニット320の運転比率が割り当てられた運転比率テーブルを示し、GHPユニット310と、EHPユニット320との容量比が100%:100%で設計された空気調和装置300を例に挙げて説明する。
【0079】
また、運転状況として、GHPユニット310およびEHPユニット320が故障していないときに参照される「通常モード」、GHPユニット310が故障しており、EHPユニット320が故障していないときに参照される「GHP故障モード」、EHPユニット320が故障しており、GHPユニット310が故障していないときに参照される「EHP故障モード」、GHPユニット310およびEHPユニット320は故障していないが施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫している際に参照される「通常デマンド優先モード」、GHPユニット310が故障しており、EHPユニット320が故障していないが施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫している際に参照される「GHP故障デマンド優先モード」を例に挙げて説明する。
【0080】
空気調和装置300が設置される施設には、当該施設での所定期間(例えば、1年)における電力の最大使用量(kWh)(詳細には、例えば、所定時間(例えば、30分間)の平均電力使用量の最大値)である契約電力が設定されている。そして契約電力を超えて電力を使用すると、ペナルティ料金が科されることとなる。
【0081】
そこで、運転制御部350は、まず、ガス消費ユニット故障判定部314によってGHPユニット310が故障していると判定されたか否かを確認し、電力消費ユニット故障判定部324によってEHPユニット320が故障していると判定されたか否かを確認し、続いて、空気調和装置300が設置される施設に設けられた使用電力量を検知する検知器からのデマンド信号に基づいて、運転状況を把握する。検知器は、契約電力と、施設全体の使用電力量(空気調和装置300が設置される施設における他の機器の使用電力量とEHPユニット320の使用電力量との総計)との差分Xに応じて、デマンド信号を送信する。ここで、検知器は、例えば、契約電力が100kWである場合に、差分Xが30kW(すなわち、施設全体の使用電力量が70kW)となった場合にデマンド信号を運転制御部350に送信する。なお、GHPユニット310(エンジン駆動式圧縮機114)の消費電力量は、運転出力に応じてほとんど変化しないため、ここでは、実際の契約電力からGHPユニット310の消費電力を減じた値を契約電力として扱うこととする。
【0082】
例えば、ガス消費ユニット故障判定部314によってGHPユニット310が故障していないと判定されるとともに、電力消費ユニット故障判定部324によってEHPユニット320が故障していないと判定されたとき、運転制御部350は、デマンド信号を受信したか否かを判定する。
【0083】
そして、デマンド信号を受信していない場合、運転制御部350は、運転比率テーブルの「通常モード」を参照して、GHPユニット310およびEHPユニット320の運転比率を設定する。「通常モード」では、例えば、GHPユニット310、EHPユニット320の運転出力が50%に割り当てられており、運転制御部350が「通常モード」を参照して運転比率を設定することで、室内熱交換器220において要求される空調負荷(100%)を実現する。
【0084】
また、運転制御部350は、施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫しており、EHPユニット320の運転出力によっては、契約電力を超えてしまう場合、つまり、デマンド信号を受信した場合、「通常デマンド優先モード」を参照して、EHPユニット320に供給される電力と他の機器の使用電力量との総計が契約電力未満の所定値(例えば、80kW)内に収まる範囲となるように運転比率を設定する。
【0085】
運転比率テーブルの「通常デマンド優先モード」では、EHPユニット320に供給される電力が所定の制限値内に収まる範囲となるように運転比率が割り当てられている。ここで、制限値は、契約電力から、施設における他の装置の使用電力量を減じた値未満に設定される。
【0086】
具体的に説明すると、「通常デマンド優先モード」においては、例えば、EHPユニット320に供給される電力が制限値内となる運転出力(ここでは、40%)に低下させた運転比率がEHPユニット320に割り当てられている。また、「通常モード」と比較して、EHPユニット320の運転出力が制限された分(10%)上昇させた運転出力(60%)にGHPユニット310の運転比率が割り当てられており、運転制御部350が「通常デマンド優先モード」を参照して運転比率を設定することで、室内機ユニット200において要求される空調負荷(100%)を実現する。
【0087】
一方、ガス消費ユニット故障判定部314によってGHPユニット310が故障していると判定されたが、電力消費ユニット故障判定部324によってEHPユニット320が故障していないと判定されたとき、運転制御部350は、デマンド信号を受信したか否かを判定する。
【0088】
そして、デマンド信号を受信していない場合、運転制御部350は、運転比率テーブルの「GHP故障モード」を参照して、EHPユニット320の運転比率を設定する。
【0089】
ここでは、「GHP故障モード」において、EHPユニット320の運転出力が100%となるように割り当てられている。運転制御部350は、このように割り当てられた運転比率でEHPユニット320を運転させることにより、EHPユニット320のみで室内機ユニット200において要求される空調負荷(100%)を実現することができる。
【0090】
つまり、運転制御部350は、ガス消費ユニット故障判定部314がGHPユニット310の故障を判定したとき、EHPユニット320が停止している場合にEHPユニット320の運転を開始させ、EHPユニット320が運転中である場合にEHPユニット320の運転出力を上昇させる。
【0091】
このように本実施形態にかかる空気調和装置300では、GHPユニット310とEHPユニット320とを独立して構成することにより、GHPユニット310が故障したとしても、EHPユニット320を駆動させて、室内熱交換器220に冷媒を循環させることができ、空気調和装置300の運転を維持することが可能となる。
【0092】
また、運転制御部350は、ガス消費ユニット故障判定部314によってGHPユニット310が故障していると判定されたが、電力消費ユニット故障判定部324によってEHPユニット320が故障していないと判定されたときであって、施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫しており、EHPユニット320の運転出力によっては、契約電力を超えてしまう場合、つまり、デマンド信号を受信した場合、「GHP故障デマンド優先モード」を参照して、EHPユニット320に供給される電力と他の機器の使用電力量との総計が契約電力未満の所定値(例えば、80kW)内に収まる範囲に運転比率を設定する。具体的に説明すると、運転比率テーブルの「GHP故障デマンド優先モード」においては、EHPユニット320に供給される電力が制限値内に収まる範囲となる運転出力(ここでは、40%)に低下させた運転比率がEHPユニット320に割り当てられている。
【0093】
運転制御部350が「GHP故障デマンド優先モード」を参照することで、EHPユニット320が受ける電力が制限値内に収まるように、EHPユニット320の運転出力を40%に低減させるため、室内機ユニット200において要求される空調負荷(100%)は実現できないが、室内熱交換器220が全く機能しない、つまり、空気調和装置300が運転できないという事態を回避することが可能となる。
【0094】
これにより、運転制御部350は、EHPユニット320の使用電力量と、施設における他の装置の使用電力量との総計が、契約電力未満となるようにEHPユニット320に供給する電力を制限することができる。したがって、空気調和装置300が設置される施設の総計使用電力量が、契約電力を超え、ペナルティ料金が科されてしまう事態を回避することが可能となる。
【0095】
また、電力消費ユニット故障判定部324によってEHPユニット320が故障していると判定されたが、ガス消費ユニット故障判定部314によってGHPユニット310が故障していないと判定されたとき、運転制御部350は、GHPユニット310のみで、要求される空調負荷(100%)を実現するために、運転比率テーブルの「EHP故障モード」を参照して、GHPユニット310の運転比率を設定する。
【0096】
ここでは、「EHP故障モード」において、GHPユニット310の運転出力が100%となるように割り当てられている。運転制御部350は、このように割り当てられた運転比率でGHPユニット310を運転させることにより、GHPユニット310のみで室内機ユニット200において要求される空調負荷(100%)を実現することができる。
【0097】
つまり、運転制御部350は、電力消費ユニット故障判定部324がEHPユニット320の故障を判定したとき、GHPユニット310が停止している場合にGHPユニット310の運転を開始させ、GHPユニット310が運転中である場合にGHPユニット310の運転出力を上昇させる。
【0098】
このように本実施形態にかかる空気調和装置300では、GHPユニット310とEHPユニット320とを独立して構成することにより、EHPユニット320が故障したとしても、GHPユニット310を駆動させて、室内熱交換器220に冷媒を循環させることができ、空気調和装置300の運転を維持することが可能となる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態にかかる空気調和装置300によれば、GHPユニット310が故障したとしても、EHPユニット320を駆動させて、空気調和装置300を運転させることが可能となる。また、EHPユニット320が故障したとしても、GHPユニット310を駆動させて、空気調和装置300を運転させることが可能となる。
【0100】
[第3実施形態:空気調和システム400]
第3実施形態では、GHPユニット310とEHPユニット320と室内機ユニット200とを備えた空気調和装置410を複数備えた空気調和システム400について説明する。
【0101】
図7は、第3実施形態にかかる空気調和システム400の構成を説明するための図である。図7に示すように、空気調和システム400は、ビルや学校等の施設に設置され、複数(ここでは、3つ)の空気調和装置410(図7中、410a~410cで示す)と、運転制御部450とを含んで構成される。空気調和装置410は、室外機ユニットとして機能するGHPユニット310と、当該GHPユニット310とは別体であり室外機ユニットとして機能するEHPユニット320と、1または複数の室内機ユニット200と、GHPユニット310、EHPユニット320、室内機ユニット200に冷媒を循環させるための冷媒管230とを含んで構成される。
【0102】
なお、上記した第1実施形態の空気調和装置100および第2実施形態の空気調和装置300と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、ここでは、構成の異なる運転制御部450について詳述する。
【0103】
運転制御部450は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して空気調和システム400全体を管理および制御する。運転制御部450は、ユーザによる操作部(例えば、リモートコントローラ)への操作入力に応じて、冷媒の循環方向を切り換え、各空気調和装置410の室内機ユニット200の機能を冷房または暖房に切り換える。
【0104】
また、本実施形態において運転制御部450は、不図示の記憶部に予め記憶された装置間運転比率テーブルに基づいて、各空気調和装置410におけるGHPユニット310とEHPユニット320との運転比率を制御する。ここで、装置間運転比率テーブルは、GHPユニット310が故障しているか否か、EHPユニット320が故障しているか否か、空気調和システム400が設置される施設における他の機器の使用電力量とすべてのEHPユニット320の使用電力量との総計、および、契約電力に基づいて決定される運転状況と、室内機ユニット200において要求される空調負荷とに基づいて、1つの運転比率を一義的に導出するためのものである。なお、装置間運転比率テーブルは、複数の空気調和装置410それぞれの室内機ユニット200において要求される空調負荷ごとに複数記憶されている。
【0105】
図8は、装置間運転比率テーブルを示す図である。図8では、各室内機ユニット200において要求される空調負荷を100%とした場合の各空気調和装置410a、410b、410cにおけるGHPユニット310、EHPユニット320の運転比率が割り当てられた装置間運転比率テーブルを示し、GHPユニット310と、EHPユニット320との容量比が100%:100%で設計された空気調和装置410a、410b、410cを備えた空気調和システム400を例に挙げて説明する。
【0106】
また、運転状況として、GHPユニット310が故障している空気調和装置410(以下、「ガス消費ユニット故障空気調和装置」と称する)、および、EHPユニット320が故障している空気調和装置410(以下、「電力消費ユニット故障空気調和装置」と称する)が生じていない時に参照される「通常モード」、電力消費ユニット故障空気調和装置は生じていないがガス消費ユニット故障空気調和装置が生じた時に参照される「GHP故障モード」、ガス消費ユニット故障空気調和装置およびEHP空気調和装置は生じていないが施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫している際に参照される「通常デマンド優先モード」、電力消費ユニット故障空気調和装置は生じていないがガス消費ユニット故障空気調和装置が生じており施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫している際に参照される「GHP故障デマンド優先モード」、ガス消費ユニット故障空気調和装置は生じていないが電力消費ユニット故障空気調和装置が生じた時に参照される「EHP故障モード」を例に挙げて説明する。
【0107】
なお、図8では、各空気調和装置410a、410b、410cのうち、ガス消費ユニット故障空気調和装置または電力消費ユニット故障空気調和装置を「故障」で示し、ガス消費ユニット故障空気調和装置、電力消費ユニット故障空気調和装置のいずれでもない空気調和装置410(以下、「正常空気調和装置」と称する)を「正常」で示す。
【0108】
運転制御部450は、まず、ガス消費ユニット故障空気調和装置が生じたか否かを確認し、電力消費ユニット故障空気調和装置が生じたか否かを確認し、続いて、空気調和システム400が設置される施設に設けられた使用電力量を検知する検知器からのデマンド信号に基づいて、運転状況を把握する。検知器は、契約電力と、施設全体の使用電力量(空気調和システム400が設置される施設における他の機器の使用電力量とすべてのEHPユニット320の使用電力量との総計)との差分Yに応じて、デマンド信号を送信する。ここで、検知器は、例えば、契約電力が100kWである場合に、差分Yが30kW(すなわち、施設全体の使用電力量が70kW)となった場合にデマンド信号を運転制御部450に送信する。なお、GHPユニット310(エンジン駆動式圧縮機114)の消費電力量は、運転出力に応じてほとんど変化しないため、ここでは、実際の契約電力からGHPユニット310の消費電力を減じた値を契約電力として扱うこととする。
【0109】
ガス消費ユニット故障空気調和装置および電力消費ユニット故障空気調和装置が生じていないとき、運転制御部450は、デマンド信号を受信したか否かを判定する。
【0110】
そして、デマンド信号を受信していない場合、運転制御部450は、装置間運転比率テーブルの「通常モード」を参照して、GHPユニット310およびEHPユニット320の運転比率を設定する。「通常モード」では、例えば、すべてのGHPユニット310、すべてのEHPユニット320の運転出力が50%に割り当てられており、運転制御部450が「通常モード」を参照して運転比率を設定することで、各空気調和装置410の室内機ユニット200において要求される空調負荷(100%)を実現する。この場合、空気調和システム400を構成するすべてのGHPユニット310の運転出力の合計は150%となり、すべてのEHPユニット320の運転出力の合計は150%となる。
【0111】
また、運転制御部450は、施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫しており、EHPユニット320の運転出力によっては、契約電力を超えてしまう場合、つまり、デマンド信号を受信した場合、「通常デマンド優先モード」を参照して、すべてのEHPユニット320に供給される電力と他の機器の使用電力量との総計が契約電力未満の所定値(例えば、80kW)内に収まる範囲(例えば、EHPユニット320の運転出力の合計が120%)となるように運転比率を設定する。
【0112】
具体的に説明すると、「通常デマンド優先モード」においては、例えば、すべてのEHPユニット320に供給される電力の合計が制限値内となる運転出力(ここでは、120%)に低下させた運転比率(それぞれ40%ずつ)が3つのEHPユニット320に割り当てられている。また、「通常モード」と比較して、EHPユニット320の運転出力が制限された分(10%)上昇させた運転出力(60%)にGHPユニット310それぞれの運転比率が割り当てられており、運転制御部450が「通常デマンド優先モード」を参照して運転比率を設定することで、各空気調和装置410の室内機ユニット200において要求される空調負荷(100%)を実現する。
【0113】
この場合、空気調和システム400を構成するすべてのGHPユニット310の運転出力の合計は180%となり、すべてのEHPユニット320の運転出力の合計は、電力の制限値に相当する運転出力の120%となり、空気調和システム400が設置される施設の総計使用電力量が、契約電力を超え、ペナルティ料金が科されてしまう事態を回避することが可能となる。
【0114】
一方、ガス消費ユニット故障空気調和装置が生じているが、電力消費ユニット故障空気調和装置が生じていないとき、運転制御部450は、デマンド信号を受信したか否かを判定する。
【0115】
そして、デマンド信号を受信していない場合、運転制御部450は、運転比率テーブルの「GHP故障モード」を参照して、各空気調和装置410の運転比率を設定する。
【0116】
ここでは、「GHP故障モード」において、正常空気調和装置のGHPユニット310、EHPユニット320の運転出力が50%となるように割り当てられ、ガス消費ユニット故障空気調和装置のEHPユニット320の運転出力が100%となるように割り当てられている。運転制御部450は、このように割り当てられた運転比率で、各空気調和装置410を運転させることにより、各空気調和装置410の室内機ユニット200において要求される空調負荷(100%)を実現する。
【0117】
この場合、空気調和システム400を構成するすべてのGHPユニット310の運転出力の合計は150%となり、すべてのEHPユニット320の運転出力の合計は200%となる。
【0118】
つまり、運転制御部450は、ガス消費ユニット故障空気調和装置が生じたとき、ガス消費ユニット故障空気調和装置のEHPユニット320が停止している場合にEHPユニット320の運転を開始させ、EHPユニット320が運転中である場合にEHPユニット320の運転出力を上昇させる。
【0119】
また、運転制御部450は、ガス消費ユニット故障空気調和装置が生じたが、電力消費ユニット故障空気調和装置が生じていないときであって、施設全体の使用電力量が契約電力に逼迫しており、EHPユニット320の運転出力によっては、契約電力を超えてしまう場合、つまり、デマンド信号を受信した場合、「GHP故障デマンド優先モード」を参照して、すべてのEHPユニット320に供給される電力と他の機器の使用電力量との総計が契約電力未満の所定値内に収まる範囲(例えば、EHPユニット320の運転出力の合計が120%)となるように運転比率を設定する。
【0120】
具体的に説明すると、「GHP故障デマンド優先モード」においては、「GHP故障モード」と比較して、正常空気調和装置のEHPユニット320の運転出力が低下するように運転比率が割り当てられ、当該EHPユニット320に供給される電力を減少させ、減少させた分の電力がガス消費ユニット故障空気調和装置のEHPユニット320に供給されるようにする。また、「GHP故障優先デマンドモード」においては、すべてのEHPユニット320に供給される電力の合計が制限値内となる運転出力(ここでは、120%)に低下させた運転比率となるように、かつ、ガス消費ユニット故障空気調和装置のEHPユニット320の運転出力が最も大きくなるように運転比率が割り当てられている。
【0121】
ここでは、例えば、正常空気調和装置のEHPユニット320の運転出力が10%に割り当てられており、ガス消費ユニット故障空気調和装置のEHPユニット320の運転出力が100%に割り当てられている。
【0122】
なお、正常空気調和装置の室内機ユニット200において、要求される空調負荷(100%)を実現するために、正常空気調和装置のGHPユニット310には、EHPユニット320の運転出力を低下させた分(40%)上昇させた運転出力(90%)が割り当てられている。
【0123】
この場合、空気調和システム400を構成するすべてのGHPユニット310の運転出力の合計は180%となり、すべてのEHPユニット320の運転出力の合計は、電力の制限値に相当する運転出力の120%となる。したがって、各空気調和装置410の室内機ユニット200において、要求される空調負荷(100%)を実現しつつ、空気調和システム400が設置される施設の総計使用電力量が、契約電力を超え、ペナルティ料金が科されてしまう事態を回避することが可能となる。
【0124】
また、電力消費ユニット故障空気調和装置が生じているが、ガス消費ユニット故障空気調和装置が生じていないとき、運転制御部450は、運転比率テーブルの「EHP故障モード」を参照して、各空気調和装置410の運転比率を設定する。
【0125】
ここでは、「EHP故障モード」において、「通常モード」と比較して、電力消費ユニット故障空気調和装置のEHPユニット320に供給されていた電力を、正常空気調和装置のEHPユニット320に供給して(按分して)運転出力を上昇させるような運転比率が割り当てられている。そして、「EHP故障モード」では、正常空気調和装置において、EHPユニット320の運転出力が上昇された分、GHPユニット310の運転出力が低下するように運転比率が割り当てられている。
【0126】
図8に示す例では、正常空気調和装置のGHPユニット310の運転出力が25%、EHPユニット320の運転出力が75%となるように割り当てられ、電力消費ユニット故障空気調和装置のGHPユニット310の運転出力が100%となるように割り当てられている。運転制御部450は、このように割り当てられた運転比率で、各空気調和装置410を運転させることにより、各空気調和装置410の室内機ユニット200において要求される空調負荷(100%)を実現する。
【0127】
この場合、空気調和システム400を構成するすべてのGHPユニット310の運転出力の合計は150%となり、すべてのEHPユニット320の運転出力の合計は150%となる。
【0128】
つまり、運転制御部450は、電力消費ユニット故障空気調和装置が生じたとき、電力消費ユニット故障空気調和装置のGHPユニット310が停止している場合にGHPユニット310の運転を開始させ、GHPユニット310が運転中である場合にGHPユニット310の運転出力を上昇させる。
【0129】
以上説明したように、本実施形態にかかる空気調和システム400によれば、GHPユニット310が故障した空気調和装置410が生じたとしても、EHPユニット320を駆動させて、空気調和装置410を運転させることが可能となる。また、EHPユニット320が故障した空気調和装置410が生じたとしても、EHPユニット320を駆動させて、空気調和装置410を運転させることが可能となる。
【0130】
[変形例]
上記第1~第3実施形態において、室外機ユニットとして機能するガス消費ユニットとしてGHPユニット110、310を例に挙げた。しかし、ガス消費ユニットは、ガス消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却することができればその構成に限定はない。例えば、ガス消費ユニットは、水を加熱または冷却するGHPチラー500、または、吸収式冷温水機600であってもよい。
【0131】
また、上記第1~第3実施形態において、室外機ユニットとして機能する電力消費ユニットとしてEHPユニット150、320を例に挙げた。しかし、電力消費ユニットは、電力消費機器を有し、冷媒または水を、加熱または冷却することができれば構成に限定はない。例えば、電力消費ユニットは、水を加熱または冷却するEHPチラー700、または、ターボ冷凍機800であってもよい。
【0132】
なお、ガス消費ユニットが、GHPチラー500、または、吸収式冷温水機600である場合、および、電力消費ユニットが、EHPチラー700、または、ターボ冷凍機800である場合、室内機ユニット200は、減圧部210を備えない。そして、室内機ユニット200(室内熱交換器220)には、GHPチラー500、吸収式冷温水機600、EHPチラー700、または、ターボ冷凍機800によって加熱または冷却された水が循環する。
【0133】
以下、GHPチラー500、吸収式冷温水機600、EHPチラー700、および、ターボ冷凍機800の一例を説明する。
【0134】
[GHPチラー500]
図9は、GHPチラー500を説明する図である。なお、図9中、冷房時の冷媒の流れを実線の矢印で示す。また、図9中、冷却水の流れを破線の矢印で示す。
【0135】
図9に示すように、GHPチラー500は、冷媒が循環する冷媒管510と、ガスエンジン512(ガス消費機器)と、ガスエンジン512を駆動源とするエンジン駆動式圧縮機514(ガス消費機器)と、四方弁520と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うチラー室外熱交換器530と、チラー室外熱交換器530に空気を送り熱交換を促進させるチラー送風部532と、冷媒を減圧する減圧部540(膨張弁)と、冷却水熱交換器550と、チラー制御部560とを含んで構成される。
【0136】
エンジン駆動式圧縮機514の出口は、冷媒管510によって四方弁520の第1ポート(図9中「1」で示す)に接続され、エンジン駆動式圧縮機514の入口は、冷媒管510によって四方弁520の第3ポート(図9中「3」で示す)に接続される。また、チラー室外熱交換器530の一端側は、冷媒管510によって四方弁520の第2ポート(図9中「2」で示す)に接続される。チラー室外熱交換器530の他端側は、冷媒管510によって減圧部540の一端側に接続される。減圧部540の他端側は、冷媒管510によって冷却水熱交換器550の一端側に接続される。冷却水熱交換器550の他端側は、冷媒管510によって、四方弁520の第4ポート(図9中「4」で示す)に接続される。したがって、エンジン駆動式圧縮機514が駆動されると、冷媒は、冷媒管510を循環することとなり、冷媒管510によって一連の循環路が形成される。
【0137】
また、冷却水熱交換器550は、冷媒と、冷却水戻り管10を通じて室内熱交換器220から返送された冷却水とを熱交換する。冷却水熱交換器550によって熱交換された冷却水は、冷却水送り管20を通じて、室内熱交換器220に導かれる。
【0138】
チラー制御部560は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、上記運転制御部250、350、450からの制御指令に基づいて、GHPチラー500全体(例えば、ガスエンジン512、チラー送風部532、各種センサ等)を制御する。
【0139】
なお、室内機ユニット200を冷房として機能させる場合、四方弁520の第1ポートと第2ポートとを接続し、第4ポートと第3ポートとを接続することで、図9中、実線の矢印で示す方向に冷媒を流通させて、圧縮された冷媒をチラー室外熱交換器530に送出する。一方、室内機ユニット200を暖房として機能させる場合、四方弁520の第1ポートと第4ポートとを接続し、第2ポートと第3ポートとを接続することで、図9中、実線の矢印で示す方向とは逆の方向に冷媒を流通させて、圧縮された冷媒を冷却水熱交換器550に送出する。
【0140】
[吸収式冷温水機600]
図10は、吸収式冷温水機600を説明する図である。図10に示すように、吸収式冷温水機600(ガス消費機器)は、蒸発器610と、吸収器620と、再生器630と、凝縮器640と、冷却塔650と、冷却水循環路660と、冷温水機制御部670とを含んで構成される。なお、図10中、吸収式冷温水機600内を循環する水、吸収液、および、水蒸気の流れを実線の矢印で示す。また、図10中、冷却水循環路660を循環する冷却水の流れを一点鎖線の矢印で示す。さらに、図10中、室内熱交換器220を循環する冷却水の流れを破線の矢印で示す。
【0141】
蒸発器610は、内部に蒸発熱交換器612を備える。蒸発熱交換器612は、一端側に冷却水戻り管10が接続され、他端側に冷却水送り管20が接続される。室内機ユニット200を冷房として機能させる場合、蒸発器610は、後述する凝縮器640から導かれた水(液体)を蒸発させて、気化熱により蒸発熱交換器612を冷却する。また、室内機ユニット200を暖房として機能させる場合、蒸発器610は、後述する再生器630から導かれた高温の水蒸気で蒸発熱交換器612を加熱する。
【0142】
蒸発器610において、蒸発熱交換器612と熱交換が為された後の水蒸気は、吸収器620に導かれる。
【0143】
吸収器620は、蒸発器610から導かれた水蒸気と、後述する再生器630から導かれた吸収液(リーン吸収液)とを接触させて、吸収液に水蒸気を溶け込ませる。吸収液は、例えば、臭化リチウム水溶液である。水蒸気が溶け込んだ吸収液(リッチ吸収液)は、再生器630に導かれる。
【0144】
また、吸収器620内には、吸収液への水蒸気の溶解を向上させるために、吸収液を冷却する吸収熱交換器622が設けられる。
【0145】
再生器630(ガス消費機器)は、ガスを燃焼させるバーナを有し、バーナによってリッチ吸収液を加熱する。そうすると、リッチ吸収液から水蒸気が気化し、リッチ吸収液から水蒸気が取り除かれる。再生器630において、気化した水蒸気は、蒸発器610、または、凝縮器640に導かれる。また、水蒸気が取り除かれたリーン吸収液は、吸収器620に返送される。
【0146】
凝縮器640は、内部に凝縮熱交換器642を備える。凝縮熱交換器642は、後述する冷却水循環路660を通じて冷却塔650から導かれた冷却水と、再生器630から導かれた水蒸気とを熱交換させる。これにより、水蒸気が冷却されて(凝縮して)、水となる。凝縮器640で生成された水は、蒸発器610に導かれる。
【0147】
冷却塔650は、内部に塔熱交換器652を備える。塔熱交換器652は、冷却水循環路660を通じて凝縮熱交換器642から導かれた冷却水と外気とを熱交換する。凝縮熱交換器642によって冷却された冷却水は、冷却水循環路660を通じて、吸収熱交換器622に導かれる。
【0148】
そして、吸収熱交換器622で吸収液と熱交換されることで加熱された冷却水は、凝縮熱交換器642においてさらに加熱されて、塔熱交換器652に導かれる。
【0149】
冷温水機制御部670は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、上記運転制御部250、350、450からの制御指令に基づいて、吸収式冷温水機600全体(例えば、バーナ、バルブ680、682、各種センサ等)を制御する。
【0150】
冷温水機制御部670は、室内機ユニット200を暖房として機能させる場合、再生器630と蒸発器610とを接続する配管に設けられたバルブ680を開弁し、再生器630と凝縮器640とを接続する配管に設けられたバルブ682を閉弁する。また、冷温水機制御部670は、室内機ユニット200を冷房として機能させる場合、再生器630と蒸発器610とを接続する配管に設けられたバルブ680を閉弁し、再生器630と凝縮器640とを接続する配管に設けられたバルブ682を開弁する。
【0151】
[EHPチラー700]
図11は、EHPチラー700を説明する図である。なお、図11中、冷房時の冷媒の流れを実線の矢印で示す。また、図11中、冷却水の流れを破線の矢印で示す。
【0152】
図11に示すように、EHPチラー700は、冷媒が循環する冷媒管710と、電動機712(電力消費機器)と、電動機712を駆動源とする電気駆動式圧縮機714(電力消費機器)と、四方弁720と、冷媒と室外の空気とで熱交換を行うチラー室外熱交換器730と、チラー室外熱交換器730に空気を送り熱交換を促進させるチラー送風部732と、冷媒を減圧する減圧部740(膨張弁)と、冷却水熱交換器750と、チラー制御部760とを含んで構成される。
【0153】
電気駆動式圧縮機714の出口は、冷媒管710によって四方弁720の第1ポート(図11中「1」で示す)に接続され、電気駆動式圧縮機714の入口は、冷媒管710によって四方弁720の第3ポート(図11中「3」で示す)に接続される。また、チラー室外熱交換器730の一端側は、冷媒管710によって四方弁720の第2ポート(図11中「2」で示す)に接続される。チラー室外熱交換器730の他端側は、冷媒管710によって減圧部740の一端側に接続される。減圧部740の他端側は、冷媒管710によって冷却水熱交換器750の一端側に接続される。冷却水熱交換器750の他端側は、冷媒管710によって、四方弁720の第4ポート(図11中「4」で示す)に接続される。したがって、電気駆動式圧縮機714が駆動されると、冷媒は、冷媒管710を循環することとなり、冷媒管710によって一連の循環路が形成される。
【0154】
また、冷却水熱交換器750は、冷媒と、冷却水戻り管10を通じて室内熱交換器220から返送された冷却水とを熱交換する。冷却水熱交換器750によって熱交換された冷却水は、冷却水送り管20を通じて、室内熱交換器220に導かれる。
【0155】
チラー制御部760は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、上記運転制御部250、350、450からの制御指令に基づいて、EHPチラー700全体(例えば、電動機712、チラー送風部732、各種センサ等)を制御する。
【0156】
なお、室内機ユニット200を冷房として機能させる場合、四方弁720の第1ポートと第2ポートとを接続し、第4ポートと第3ポートとを接続することで、図11中、実線の矢印で示す方向に冷媒を流通させて、圧縮された冷媒をチラー室外熱交換器730に送出する。一方、室内機ユニット200を暖房として機能させる場合、四方弁720の第1ポートと第4ポートとを接続し、第2ポートと第3ポートとを接続することで、図11中、実線の矢印で示す方向とは逆の方向に冷媒を流通させて、圧縮された冷媒を冷却水熱交換器750に送出する。
【0157】
[ターボ冷凍機800]
図12は、ターボ冷凍機800を説明する図である。ターボ冷凍機800は、室内機ユニット200を冷房として機能させる。図12に示すように、ターボ冷凍機800は、冷媒が循環する冷媒管810と、電動機812(電力消費機器)と、電動機812を駆動源とする電気駆動式ターボ圧縮機814(電力消費機器)と、凝縮器820と、減圧部830と、蒸発器840と、ターボ制御部850とを含んで構成される。なお、図12中、冷媒の流れを実線の矢印で示す。また、図12中、室内熱交換器220を循環する冷却水の流れを破線の矢印で示す。
【0158】
電気駆動式ターボ圧縮機814は、冷媒を圧縮する。電気駆動式ターボ圧縮機814は、例えば、遠心式圧縮機である。電気駆動式ターボ圧縮機814によって圧縮された冷媒は、凝縮器820に導かれる。
【0159】
凝縮器820は、内部に凝縮熱交換器822を備える。凝縮熱交換器822には、不図示の冷却塔、または、空気熱交換器によって冷却された冷却水が導かれる。凝縮熱交換器822において、冷媒と熱交換されることで加熱された冷却水は、冷却塔、または、空気熱交換器に返送される。
【0160】
減圧部830は、膨張弁、または、エコノマイザで構成される。減圧部830によって膨張された冷媒は、蒸発器840に導かれる。
【0161】
蒸発器840は、内部に冷却水熱交換器842を備える。冷却水熱交換器842は、冷媒と、冷却水戻り管10を通じて室内熱交換器220から返送された冷却水とを熱交換する。冷却水熱交換器842によって熱交換された冷却水は、冷却水送り管20を通じて、室内熱交換器220に導かれる。
【0162】
ターボ制御部850は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、上記運転制御部250、350、450からの制御指令に基づいて、ターボ冷凍機800全体(例えば、電動機812、各種センサ等)を制御する。
【0163】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0164】
例えば、上述した第1実施形態において、エンジン駆動式圧縮機114および電気駆動式圧縮機154の容量比を設計する際に、ガスの料金と電力の料金との合計が最も少なくなるように設計する構成を例に挙げて説明した。しかし、ガスの料金と電力の料金の合計に加えて、GHPユニット110自体の費用、EHPユニット150自体の費用、これらのメンテナンス費用を加算した値で容量比を設計してもよい。
【0165】
また、上述した第1実施形態において、施設全体の使用電力量の逼迫状況を把握するために、デマンド信号を利用した構成を例に挙げて説明した。しかし、施設における他の機器の使用電力量を予め入力しておき、GHPユニット110およびEHPユニット150で使用している電力量を推定して、入力した他の機器の使用電力量と、GHPユニット110およびEHPユニット150の推定使用電力量との和から施設全体の使用電力量の逼迫状況を把握するとしてもよい。
【0166】
また、上述した第2、第3実施形態において、空気調和装置300、410は、ガス消費ユニット故障判定部314および電力消費ユニット故障判定部324を双方とも備える構成を例に挙げて説明したが、ガス消費ユニット故障判定部314および電力消費ユニット故障判定部324のうちいずれか一方を備えるとしてもよい。
【0167】
また、上述した第2、第3実施形態において、施設全体の使用電力量の逼迫状況を把握するために、デマンド信号を利用した構成を例に挙げて説明した。しかし、施設における他の機器の使用電力量を予め入力しておき、GHPユニット310およびEHPユニット320で使用している電力量を推定して、入力した他の機器の使用電力量と、GHPユニット310およびEHPユニット320の推定使用電力量との和から施設全体の使用電力量の逼迫状況を把握するとしてもよい。
【0168】
また、上述した第1~第3実施形態において、ガス消費ユニットとして、GHPユニット110、310を、電力消費ユニットとして、EHPユニット150、320を例に挙げた。しかし、ガス消費ユニットとして、GHPユニット110、310、GHPチラー500、および、吸収式冷温水機600の群から選択される1または複数を採用してもよい。また、電力消費ユニットとして、EHPユニット150、320、EHPチラー700、および、ターボ冷凍機800の群から選択される1または複数を採用してもよい。
【0169】
また、空気調和装置100、300、410は、複数の電力消費ユニットを備えてもよい。同様に、空気調和装置100、300、410は、複数のガス消費ユニットを備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、室内を空調する空気調和装置、および、空気調和システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0171】
100、300、410 空気調和装置
110、310 GHPユニット(ガス消費ユニット)
112 ガスエンジン(ガス消費機器)
114 エンジン駆動式圧縮機(ガス消費機器)
150、320 EHPユニット(電力消費ユニット)
152 電動機(電力消費機器)
154 電気駆動式圧縮機(電力消費機器)
200 室内機ユニット
220 室内熱交換器
222 室内送風部
250、350、450 運転制御部
314 ガス消費ユニット故障判定部
324 電力消費ユニット故障判定部
400 空気調和システム
500 GHPチラー(ガス消費ユニット)
512 ガスエンジン(ガス消費機器)
514 エンジン駆動式圧縮機(ガス消費機器)
600 吸収式冷温水機(ガス消費ユニット)
630 再生器(ガス消費機器)
700 EHPチラー(電力消費ユニット)
712 電動機(電力消費機器)
714 電気駆動式圧縮機(電力消費機器)
800 ターボ冷凍機(電力消費ユニット)
812 電動機(電力消費機器)
814 電気駆動式ターボ圧縮機(電力消費機器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12