(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078751
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】殻割装置
(51)【国際特許分類】
A23N 5/00 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
A23N5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189640
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】503049508
【氏名又は名称】有限会社アイエスマック
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 茂
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA02
4B061BA10
4B061BB07
4B061CB04
4B061CB11
(57)【要約】
【課題】ピスタチオ等の堅果類の硬い外殻を自動的に割ることができる殻割装置を提供する。
【解決手段】ピスタチオや銀杏等の堅果類1の外殻2を割る殻割装置であって、前記堅果類1を挟む対向位置に配された一対の挟持体3から成る挟持体対4と、前記堅果類1を挟持押圧するように前記一対の挟持体3を駆動する駆動機構とを備え、前記一対の挟持体3の挟持先端部には、前記一対の挟持体3で前記堅果類1を挟持した際、前記堅果類1を案内する凹部3aを設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピスタチオや銀杏等の堅果類の外殻を割る殻割装置であって、
前記堅果類を挟む対向位置に配された一対の挟持体から成る挟持体対と、
前記堅果類を挟持押圧するように前記一対の挟持体を駆動する駆動機構とを備え、
前記一対の挟持体の挟持先端部には、前記一対の挟持体で前記堅果類を挟持した際、前記堅果類を案内する凹部が設けられていることを特徴とする殻割装置。
【請求項2】
請求項1記載の殻割装置において、前記挟持体対を複数備え、少なくとも二つの前記挟持体対の挟持方向が互いに交差するように設けられていることを特徴とする殻割装置。
【請求項3】
請求項2記載の殻割装置において、前記駆動機構は、一の前記挟持体対を駆動させた後、他の前記挟持体対を駆動させるように構成されていることを特徴とする殻割装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の殻割装置において、前記一対の挟持体の挟持先端部には、前記凹部を構成する半環状の凹面が設けられていることを特徴とする殻割装置。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の殻割装置において、前記一対の挟持体間に、前記堅果類を供給する供給手段を有することを特徴とする殻割装置。
【請求項6】
請求項5記載の殻割装置において、前記一対の挟持体間に供給される前記堅果類を選別する選別口を有することを特徴とする殻割装置。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載の殻割装置において、前記挟持体対に挟持される前記堅果類の位置を保持する位置保持手段を有することを特徴とする殻割装置。
【請求項8】
ピスタチオや銀杏等の堅果類の外殻を割る殻割装置であって、
前記堅果類を挟む対向位置に配された一対の挟持体から成る第一の挟持体対と、
前記堅果類を挟む対向位置に配された一対の挟持体から成り、前記第一の挟持体対と交差状態に設けられる第二の挟持体対と、
前記両挟持体対の一対の挟持体が夫々前記堅果類を挟持押圧するように駆動する駆動機構とを備え、
前記第一の挟持体対が前記堅果類の前記外殻に対する割り作動をした後、当該割り作動が行われた位置において前記第二の挟持体対が前記堅果類の前記外殻に対する割り作動をするように構成されていることを特徴とする殻割装置。
【請求項9】
請求項8記載の殻割装置において、前記両挟持体対の一対の挟持体により前記堅果類の外殻を割る位置に該堅果類を供給する供給手段を有し、前記二回の割り作動後に前記位置から前記堅果類を排出する排出手段を有することを特徴とする殻割装置。
【請求項10】
ピスタチオや銀杏等の堅果類の外殻を割る殻割装置であって、
第一の方向から供給される前記堅果類を挟み、前記第一の方向と直交する第二の方向において対向位置に配された一対の挟持体から成る第一の挟持体対と、
前記堅果類を挟み、前記第一の方向および前記第二の方向と直交する第三の方向において対向位置に配された一対の挟持体から成る第二の挟持体対と、
前記堅果類を挟持押圧するように前記一対の挟持体を駆動する駆動機構とを備え、
前記一対の挟持体の挟持先端部には、前記一対の挟持体で前記堅果類を挟持した際、前記堅果類を案内する凹部が設けられていることを特徴とする殻割装置。
【請求項11】
請求項10記載の殻割装置において、前記挟持体対に挟持される前記堅果類の前記第一の方向における位置を保持する位置保持手段を有することを特徴とする殻割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殻割装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
堅果類(ナッツ)の一種であるピスタチオは、成熟すると外殻Aの一辺(外殻半体の継ぎ目線Dの一部)に裂け目Bが生じ、種子Cがわずかに露出した独特の形状となる(
図15(a)→(b))。この種子を外殻ごと焙煎し、塩味を付けたものが酒類のつまみ、スナック菓子等として食されている。
図15中、符号Eは枝との接続部である。
【0003】
ピスタチオは、主にイラン・米国で生産されたものが流通しているが(二国合計で50万トン程度。世界全体の生産量の80%程度)、農場の全てのピスタチオに裂け目が生じた後、収穫するのではなく、例えば全体の70%~80%程度のピスタチオに裂け目が生じた時点で収穫される。そのため、成熟前で裂け目が生じていないピスタチオも大量に収穫される。
【0004】
ところで、ピスタチオは、外殻Aに裂け目Bが生じていると、焙煎時に裂け目Bが外殻半体の継ぎ目線Dの残部に沿って拡大することで開いた貝のようになり(
図15(b)→(c))、食する際に手で容易に外殻Aをむき取れるようになる。
【0005】
しかし、裂け目がないものは焙煎しても裂け目が生じないため、収穫後に人手により外殻を割ることで裂け目を生じさせている。
【0006】
ピスタチオは、収穫後は品質を保つために迅速に出荷する必要があるが、人手によりピスタチオの硬い外殻を割るのは非常に手間がかかる。また、外殻を強く押し過ぎると、外殻半体の継ぎ目線に直角に裂け目が生じてしまい(所謂横割れとなってしまい)、価値が下がる場合がある。
【0007】
特許文献1には、ピスタチオ粒の選別装置が開示されているが、ピスタチオの外殻を自動的に割る装置は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ピスタチオ等の堅果類の硬い外殻を自動的に割ることができる殻割装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
ピスタチオや銀杏等の堅果類1の外殻2を割る殻割装置であって、
前記堅果類1を挟む対向位置に配された一対の挟持体3から成る挟持体対4と、
前記堅果類1を挟持押圧するように前記一対の挟持体3を駆動する駆動機構とを備え、
前記一対の挟持体3の挟持先端部には、前記一対の挟持体3で前記堅果類1を挟持した際、前記堅果類1を案内する凹部3aが設けられていることを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の殻割装置において、前記挟持体対4を複数備え、少なくとも二つの前記挟持体対4の挟持方向が互いに交差するように設けられていることを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0013】
また、請求項2記載の殻割装置において、前記駆動機構は、一の前記挟持体対4を駆動させた後、他の前記挟持体対4を駆動させるように構成されていることを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の殻割装置において、前記一対の挟持体3の挟持先端部には、前記凹部3aを構成する半環状の凹面が設けられていることを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の殻割装置において、前記一対の挟持体3間に、前記堅果類1を供給する供給手段を有することを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0016】
また、請求項5記載の殻割装置において、前記一対の挟持体3間に供給される前記堅果類1を選別する選別口5を有することを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0017】
また、請求項1~6いずれか1項に記載の殻割装置において、前記挟持体対4に挟持される前記堅果類1の位置を保持する位置保持手段を有することを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0018】
また、ピスタチオや銀杏等の堅果類1の外殻2を割る殻割装置であって、
前記堅果類1を挟む対向位置に配された一対の挟持体3から成る第一の挟持体対4と、
前記堅果類1を挟む対向位置に配された一対の挟持体3から成り、前記第一の挟持体対4と交差状態に設けられる第二の挟持体対4と、
前記両挟持体対4の一対の挟持体3が夫々前記堅果類1を挟持押圧するように駆動する駆動機構とを備え、
前記第一の挟持体対4が前記堅果類1の前記外殻2に対する割り作動をした後、当該割り作動が行われた位置において前記第二の挟持体対4が前記堅果類1の前記外殻2に対する割り作動をするように構成されていることを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0019】
また、請求項8記載の殻割装置において、前記両挟持体対4の一対の挟持体3により前記堅果類1の外殻2を割る位置に該堅果類1を供給する供給手段を有し、前記二回の割り作動後に前記位置から前記堅果類1を排出する排出手段を有することを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0020】
また、ピスタチオや銀杏等の堅果類1の外殻2を割る殻割装置であって、
第一の方向から供給される前記堅果類1を挟み、前記第一の方向と直交する第二の方向において対向位置に配された一対の挟持体3から成る第一の挟持体対4と、
前記堅果類1を挟み、前記第一の方向および前記第二の方向と直交する第三の方向において対向位置に配された一対の挟持体3から成る第二の挟持体対4と、
前記堅果類1を挟持押圧するように前記一対の挟持体3を駆動する駆動機構とを備え、
前記一対の挟持体3の挟持先端部には、前記一対の挟持体3で前記堅果類1を挟持した際、前記堅果類1を案内する凹部3aが設けられていることを特徴とする殻割装置に係るものである。
【0021】
また、請求項10記載の殻割装置において、前記挟持体対4に挟持される前記堅果類1の前記第一の方向における位置を保持する位置保持手段を有することを特徴とする殻割装置に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように構成したから、ピスタチオ等の堅果類の硬い外殻を自動的に割ることができる殻割装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本実施例の挟持体の挟持先端部の概略説明正面図である。
【
図3】本実施例の駆動機構を説明する概略説明正面図である。
【
図4】本実施例の要部を説明する概略説明平面図である。
【
図5】本実施例の要部を説明する概略説明平面図である。
【
図6】本実施例の要部を説明する概略説明平面図である。
【
図7】本実施例の要部を説明する概略説明平面図である。
【
図8】本実施例の挟持体の挟持先端部の概略説明平面図である。
【
図10】本実施例の歯車体の概略説明背面図である。
【
図11】本実施例のカム溝とローラー部との関係を説明する概略説明図である。
【
図12】本実施例のカム溝とローラー部との関係を説明する概略説明図である。
【
図13】本実施例のカム溝とローラー部との関係を説明する概略説明図である。
【
図14】本実施例のカム溝とローラー部との関係を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
ピスタチオ等の堅果類1を一対の挟持体3で挟持押圧して外殻2を割り、外殻2に裂け目を生じさせる。この際、挟持先端部の凹部3aにより堅果類1を所定の挟持位置に案内して良好に堅果類1を挟持押圧して外殻2を割ることができる。
【0026】
ここで、ピスタチオ等の堅果類1は篩にかけられて大きさが選別された状態(S,M,L等のいずれかのランクに統一された状態)で供給されるため、挟持体3間の間隔(挟持駆動時の最接近間隔)を供給される堅果類1の大きさのランクに応じて適宜設定することで、横割れが生じる程強くない押圧力で外殻2を良好に割ることができる。
【0027】
例えばピスタチオの場合、ピスタチオの一端部を挟持押圧し、
図15(d)に図示したように、外殻2の枝との接続部以外の略全周に存在する外殻半体の継ぎ目線2a(縫合線。稜線)の一部を割って裂け目6を生じさせることで、成熟して自然に割れた場合と同様に、焙煎時に裂け目6を外殻半体の継ぎ目線2aに沿って拡大させ、
図15(c)の状態とすることができる。
【0028】
また、ピスタチオは外殻2の外殻半体の継ぎ目線2aに沿って割れるが、この外殻半体の継ぎ目線2aと挟持体3の挟持方向(挟持体3が挟持する位置)との位置関係によっては良好に割れないことがある。
【0029】
例えば外殻2の外殻半体の継ぎ目線2a位置に対して直交する位置を挟持すると、外殻半体の継ぎ目線2aに力が加わらず外殻2が割れない可能性がある。
【0030】
この場合、少なくとも二つの挟持体対4により、ピスタチオの外殻2を異なる挟持方向から挟持押圧する構成とすれば、一の挟持体対4で外殻半体の継ぎ目線2a位置に対して直交する位置を挟持押圧したとしても、他の挟持体対4でそれ以外の位置を挟持押圧でき、裂け目6の形成不良を抑制できる。
【0031】
また、少なくとも二つの挟持体対4を堅果類1の離れた部位を夫々挟持押圧するように間隔をおいて配置しても良い。
【0032】
この場合、例えば銀杏の外殻2の一側寄り部分と他側寄り部分とを割ることができ、裂け目の形成範囲を拡大して良好に外殻2を手でむき取ることが可能となる(銀杏の外殻は硬いが脆く、一部が割れても手では裂け目を広げ難い場合がある。)。
【0033】
以上、本発明によれば、ピスタチオ等の堅果類の硬い外殻を良好に割って裂け目を生じさせることが可能となる。
【実施例0034】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0035】
本実施例は、堅果類1であるピスタチオの外殻2を割る殻割装置に本発明を適用した例である。なお、本発明は、銀杏等、他の堅果類1の外殻を割る場合にも同様に適用できる。
【0036】
本実施例は、
図1および
図2に図示したように、ピスタチオを挟む対向位置に配された一対の挟持体3から成る第一の挟持体対4と、ピスタチオを挟む対向位置に配された一対の挟持体3から成り、前記第一の挟持体対4と交差状態に設けられる第二の挟持体対4と、前記両挟持体対4の一対の挟持体3が夫々前記ピスタチオを挟持押圧するように駆動する駆動機構とを備えている。
【0037】
また、前記駆動機構が、前記第一の挟持体対4が前記ピスタチオの前記外殻2に対する割り作動をした後、当該割り作動が行われた位置において前記第二の挟持体対4が前記ピスタチオの前記外殻2に対する割り作動をするように構成されている。
【0038】
各部を具体的に説明する。
【0039】
挟持体対4には、搬送手段が連設(沿設)されている。搬送手段は、
図3および
図4に図示したように、一つのピスタチオ(堅果類1)を収容可能な収容体30が搬送方向に多数並設されたベルトコンベア31と、ベルトコンベア31を駆動するベルト駆動部(図示省略)とを有する。この搬送手段により、各収容体30に収容されたピスタチオを、挟持体対4の一対の挟持体3間(殻割位置)に供給可能な供給位置まで搬送する。
【0040】
収容体30は、前後に貫通する断面視略V字状の溝部32を有し、この溝部32にピスタチオを一つ収容可能な縦長のブロック状体である。収容されるピスタチオは、収容体30(溝部32)の長手方向とその長手方向が揃うように収容される。溝部32の縦横寸法、深さおよび側面の傾斜度合いは、供給されるピスタチオの大きさのランクに応じて適宜設定される。また、ピスタチオは、溝部32により溝幅方向略中央位置に誘導される。
【0041】
本実施例では、溝部32の溝幅寸法(短手方向寸法)をピスタチオの長手方向寸法より小さくしておくことで、搬送手段の上流側に位置するホッパー部(図示省略)から溝部32に投入されるピスタチオが、溝部32に、その長手方向同士が揃った状態で収容されるように構成している。
【0042】
搬送装置により、ピスタチオが一対の挟持体3による殻割位置に隣接する供給位置まで搬送されると(殻割位置の手前にピスタチオが搬送されると)、供給体33(供給手段)により、後方から押されて前方に押し出され(後記排出体34の先端部に当接するまで)、一対の挟持体3間に位置せしめられる(
図4→
図5)。供給体33は、平面視略V字状の先端部を有するロッド状で、収容体30の溝部32の溝底面(ベルトコンベア31の搬送上面)と平行に前後動する構成である。この供給体33による押出方向を、一対の挟持体3間へのピスタチオの供給方向(第一の方向X)とする。
【0043】
また、本実施例では、殻割位置と供給位置との間には選別口5が設けられ、選別口5を通過できる大きさのピスタチオのみが一対の挟持体3により挟持押圧される。具体的には、選別口5は、入口側のテーパー部と中央部のストレート部と出口側のテーパー部とが連設された構成である。テーパー部は夫々出口側に向かって先細る形状である。
【0044】
また、選別口5は、供給されるピスタチオの一対の挟持体3に対する位置をある程度位置決めする役割も果たす。即ち、選別口5を通過したピスタチオは、一対の挟持体3の挟持面間に位置するように設定される(更に後記排出体34の先端部によっても挟持体3の挟持面の略中央位置となるように案内される。)。なお、テーパー部の出口近傍の径は、ピスタチオの最大径部が挿通し得ない径に設定して、このテーパー部によりピスタチオの脱落を阻止する構成としても良い。
【0045】
本実施例は、第一の方向Xから供給されるピスタチオを挟み、第一の方向Xと直交する第二の方向Yにおいて対向位置に配された一対の挟持体3から成る第一の挟持体対4と、ピスタチオを挟み、第一の方向Xおよび第二の方向Yと直交する第三の方向Zにおいて対向位置に配された一対の挟持体3から成る第二の挟持体対4とを有する。
【0046】
殻割位置(一対の挟持体3の挟持面間)に位置せしめられたピスタチオは、各挟持体対4の割り作動により一対の挟持体3によりY方向およびZ方向から順次挟持押圧されて外殻2が割られる(
図5→
図6)。この際、ピスタチオは凹部3a同士に案内されて挟持されることで良好に凹部3aの底部で押圧される。各挟持体対4および駆動機構についての詳細な説明については後述する。
【0047】
挟持体対4(挟持体3)により外殻2が割られたピスタチオは、挟持体対4の奥側に位置する排出体34(排出手段)により押し出されて挟持体3間から排出され、収容体30上に戻される(
図6→
図7)。排出体34も供給体33と同様、平面視略V字状の先端部を有するロッド状で、溝部32の溝底面(ベルトコンベア31の搬送上面)と平行に前後動する。なお、排出体34は、供給体33による供給時にピスタチオの先端が当接する位置で待機する(供給されるピスタチオの位置決めをする。)。
【0048】
また、供給体33は、一対の挟持体3による前端部の挟持押圧時に、ピスタチオが後ずさりしないようにピスタチオの後端部を押さえる構成としている。従って、供給体33は、挟持押圧時の第一の方向Xに対する位置を保持する位置保持手段としての役割も果たす。即ち、排出体34の先端面と供給体33の先端面とで一対の挟持体3間におけるピスタチオの位置が定められ、常にピスタチオ先端から所定の位置に挟持体3の挟持先端部が当接するように構成されている。
【0049】
外殻2が割られたピスタチオが元の収容体30上に戻されると、ベルトコンベア31が収容体30一つ分だけコマ送りされ、新たなピスタチオが収容された収容体30が供給位置に位置せしめられ、供給手段で殻割位置に供給される。
【0050】
以上の工程を繰り返すことで、順次ピスタチオの外殻2を割ることができる。
【0051】
なお、供給位置(搬送手段)の下流側には、収容体30上の殻割済みピスタチオが順次集積される集積部(図示省略)が設けられる。
【0052】
本実施例の駆動機構および挟持体対4の構成について以下更に具体的に説明する。
【0053】
挟持体対4は、搬送手段に沿設される矩形状の基準プレート10に設けられている。具体的には、挟持体対4を構成する夫々の挟持体3は、基準プレート10の取付面(垂直面)に、この取付面と平行な第二の方向Yおよび第三の方向Zに夫々案内するレール11・13と直動ブロック12・14とからなるリニアガイドを介して設けられている。図中符号40は、設置面に立設された固定板部、41は固定板部40と基準プレート10とを連結する連結体である。
【0054】
第一の挟持体対4を構成する各挟持体3は、第二の方向Yにおいて対向位置に配されたリニアガイドの直動ブロック12の上面に夫々取り付けられている。この直動ブロック12は第二の方向Yに延びるレール11に沿って直動案内される。
【0055】
第二の挟持体対4を構成する各挟持体3は、第三の方向Zにおいて対向位置に配されたリニアガイドの直動ブロック14の上面に夫々取り付けられている。この直動ブロック14は第三の方向Zに延びるレール13に沿って直動案内される。
【0056】
挟持体3は、直動ブロックの案内方向と同方向に延びる細長い薄板状で、挟持先端部に凹部3aが設けられている。具体的には、挟持先端部に凹部3aを構成する半環状の凹面が設けられている。
【0057】
本実施例においては、各挟持体対4の挟持体3の先端は、各挟持体対4の一対の挟持体3を夫々最も離間させた位置において第一の方向から見た時、挟持先端部の一部(半環状の両端部)が重なり、各挟持体3の先端の凹部3a中央部の円弧を組み合わせて円形の孔が形成されるように構成されている。この孔(各挟持体3の挟持先端部で囲まれる空間)が搬送手段の供給位置と略同じ高さに設けられる。また、この孔と供給位置との間に選別口5が設けられる。
【0058】
また、挟持先端部は他の部分(基部)より薄い肉薄部3bに設定されている。これにより、ピスタチオを挟持する先端をよりシャープにでき、外殻2を挟持する際に滑り難い構成となる。図中符号29は、挟持体3の高さ調整用のスペーサである。
【0059】
本実施例では、第一の挟持体対4と第二の挟持体対4とは、挟持体3を表裏反転させて背中合わせにして用いている。即ち、選別口5を通過したピスタチオを夫々ほぼ同じ長手方向位置で挟持押圧し得るように第一の方向において可及的に近接して設けている(各挟持体対4の挟持体3の挟持先端が略同一平面上を移動し得る構成としている。)。従って、選別口5を通過したピスタチオに対し、第一の挟持体対4の割り作動の直後、第二の挟持体対4の割り作動が行われる構成とすることができ、第一の挟持体対4の割り作動後、他の場所に搬送することなくその場所で第二の挟持体対4の割り作動を行えるのは勿論、第二の挟持体対4で第一の挟持体対4で挟持押圧した部分とほぼ同じ部分を異なる方向から挟持することができることになる(
図8参照)。
【0060】
なお、スペーサ29の高さを変えて各挟持体対4による挟持高さを意図的に大きくしても良い。即ち、
図9に図示したように、二つの挟持体対4の挟持体3を、夫々堅果類1の別の部位を挟持押圧するように基準プレート10からの取付高さ方向に間隔をおいて配置しても良い。この場合、例えば銀杏の外殻2の一側寄り部分と他側寄り部分とを順次割ることが可能となり、裂け目の形成範囲を拡大して良好に外殻2を手でむき取ることが可能となる(この場合も、銀杏の大きさに合わせて挟持体3の挟持駆動時の最接近間隔を適宜設定する。)。
【0061】
挟持体3の上面には、ローラー部(カムフォロア)15が設けられたブロック体16が取り付けられている。このローラー部15は、モーターの回転軸側の駆動歯車17と噛み合う歯車体18(従動歯車)の裏面に形成されたカム溝19に摺動可能に係合するものである。ローラー部15の外周径はカム溝19の溝幅と略等しい径に設定されている。
【0062】
従って、挟持体3と一体のローラー部15が、駆動歯車17により回転せしめられる歯車体18の回転に応じてカム溝19に沿って移動(摺動)することで、挟持体3が挟持方向に移動する。即ち、カム溝19とローラー部15とで挟持体3の開閉機構が構成される。カム構造を採用することで、それだけ簡易構造で且つ制御も容易となる。
【0063】
歯車体18の中心部には、円形の開口23が設けられており、この開口23に選別口5が設けられている。選別口5は歯車体18の開口23にボルト8で固定される選別口形成部材7に設けられている。各挟持体3は、ピスタチオの選別口5を通過した部分を挟持するように歯車体18と基準プレート10との間に設けられる。
【0064】
本実施例においては、カム溝19は環状であり、
図10に図示したように、第一カム形状部20、第二カム形状部21および第三カム形状部22が連続的に設けられている。この第一カム形状部20、第二カム形状部21および第三カム形状部22は、歯車体18の中心点を対称に二組設けられる。即ち、各挟持体対4を構成する一対の挟持体3同士は、同じ機能を果たすカム形状部により移動せしめられる。歯車体18を一回転させるとローラー部15は二組の第一カム形状部20、第二カム形状部21および第三カム形状部22を順次移動する。
【0065】
また、第一の挟持体対4および第二の挟持体対4は、その挟持方向が90°交差するように設けられており、本実施例においては、駆動機構は、一の挟持体対4を挟持駆動させた後、90°遅れて他の挟持体対4を挟持駆動させるように構成されている。
【0066】
第一カム形状部20は、一対の挟持体3(のローラー部15)が互いに近接するように移動する部分である。第二カム形状部21は、当該一対の挟持体3が互いに離反するように移動する部分である。第三カム形状部22は、所定の離反位置まで離反した当該一対の挟持体3がこの離反位置に留まる部分である。
【0067】
従って、歯車体18が一回転すると、第一の挟持体対4および第二の挟持体対4は、夫々二回挟持動する(二回割り作動する)。本実施例では、歯車体18が180°回転(半回転)する、即ち第一の挟持体対4および第二の挟持体対4が一回ずつ割り作動すると、排出体34の排出作動が行われるように構成されている。なお、排出体34による排出作動が歯車体が360°回転したときに行われるようにしても良い。
【0068】
カム構造を用いることで、挟持体3の挟持駆動時の所定の最接近間隔を一定とすることができ、上述の位置保持手段によりピスタチオの挟持位置を管理することと併せ、常にピスタチオの先端から一定の距離部分を一定の挟持力で挟持押圧することが可能となり、可及的に横割れが生じ難い構成とすることができる。また、銀杏に対しても同様に挟持位置および挟持力を一定とすることで(
図9に示すように挟持位置が離れた構成とした場合も含め)、種子を傷付けることなく良好に外殻2を割ることが可能となる。
【0069】
また、基準プレート10にして歯車体18の周囲(基準プレート10の四隅近傍位置)には、歯車体18を回転自在に支持する小歯車24が設けられている。小歯車24は、基準プレート10の取付面に立設された筒体25の先端に回転自在に設けられている。具体的には、筒体25の内面または基準プレート10に穿設された孔内面の螺合部(図示省略)と螺合する螺子部26が先端に形成された押さえボルト27を、歯車体18の脱落防止用の円盤体28の挿通孔および小歯車24の挿通孔を挿通させて螺子部26を螺合することで、押さえボルト27の頭部で円盤体28および小歯車24を抜け止めした状態(回転可能な程度に押さえ込んだ状態)で止着している。
【0070】
従って、歯車体18は基準プレート10に対して平行な状態で回転可能に保持される。
【0071】
以上の構成の挟持体対4によるピスタチオの外殻2の割り作動を具体的に説明する。
【0072】
図11に図示したように、二つの挟持体対4が互いに離間した状態から歯車体18が反時計回りに45°回転すると、
図12に図示したように、第一の挟持体対4のローラー部15が第一カム形状部20により近接してピスタチオを挟持押圧する。この際、第二の挟持体対4のローラー部15は第三カム形状部22において離反状態が維持される。
【0073】
更に歯車体18が45°回転すると、
図13に図示したように、第一の挟持体対4のローラー部15が第二カム形状部21により離反する。
【0074】
更に歯車体18が45°回転すると、
図14に図示したように、第一の挟持体対4のローラー部15の離反状態が第三カム形状部22において維持され、第二の挟持体対4のローラー部15が第一カム形状部20により近接してピスタチオを挟持押圧する。
【0075】
更に歯車体18が45°回転すると、
図11に図示したように、第二の挟持体対4のローラー部15が第二カム形状部21により離反する。
【0076】
以上の歯車体18の回転に伴う上記作動の繰り返しにより、ピスタチオの殻割りが自動的に行われることになる。
【0077】
本実施例は上述のように構成したから、ピスタチオを一対の挟持体3で挟持押圧して外殻2を割り、外殻2に裂け目を生じさせる際、挟持先端部の凹部3aにより堅果類1を所定の挟持位置に案内して良好に堅果類1を挟持押圧して外殻2を割ることができる。
【0078】
また、二つの挟持体対4により、ピスタチオの外殻2を異なる挟持方向から挟持押圧可能な構成であり、一の挟持体対4で外殻半体の継ぎ目線2a位置に対して直交する位置を挟持押圧したとしても、他の挟持体対4でそれ以外の位置を挟持押圧でき、裂け目6の形成不良を抑制できる。
【0079】
よって、本実施例は、ピスタチオの硬い外殻を自動的に割ることができる殻割装置となる。