(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078818
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】台車、台車の操舵方法および操舵装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220518BHJP
B66F 9/10 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
G05D1/02 W
B66F9/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189753
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 優司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 俊介
(72)【発明者】
【氏名】谷 卓
【テーマコード(参考)】
3F333
5H301
【Fターム(参考)】
3F333AA20
3F333BA07
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD05
5H301DD15
(57)【要約】
【課題】幅寄せ走行や小回りの利く旋回操作を容易に行える台車、台車の操舵方法および操舵装置を提供する。
【解決手段】台車本体12と、台車本体12から前方に突出した左右一対の突出部14と、突出部14の間に設けられた荷台部18と、台車本体12の下面側に設けられるとともに走行駆動可能および操舵可能に構成された駆動操舵輪20と、突出部14の下面側に設けられるとともに操舵可能に構成された操舵輪22とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車本体と、前記台車本体から前方に突出した左右一対の突出部と、前記突出部の間に設けられた荷台部と、前記台車本体の下面側に設けられるとともに走行駆動可能および操舵可能に構成された駆動操舵輪と、前記突出部の下面側に設けられるとともに操舵可能に構成された操舵輪とを備えることを特徴とする台車。
【請求項2】
請求項1に記載の台車を操舵するための方法であって、
前記台車を所定のルートに沿って移動させるための移動ルート指令情報を前記台車に向けて送信するステップと、
受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を設定するステップと、
設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を制御するステップとを有することを特徴とする台車の操舵方法。
【請求項3】
請求項1に記載の台車を操舵するための装置であって、
前記台車を所定のルートに沿って移動させるための移動ルート指令情報を前記台車に向けて送信する操作手段と、
受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を設定する設定手段と、
設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を制御する制御手段とを備えることを特徴とする台車の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリーチ式フォークリフトなどの台車、台車の操舵方法および操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リーチ式フォークリフトが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
図3に示すように、従来のリーチ式フォークリフトは、後側に配置される本体1と、本体1の左右下部から前方へ突出した左右一対のリーチレッグ部2と、リーチレッグ部2間に設けられたマスト部3と、荷物を支持するフォーク部4を備えている。マスト部3は、リーチレッグ部2の内面側のレール5に沿って前後方向に移動可能に設けられ、フォーク部4は、マスト部3に沿って上下方向に昇降可能に設けられる。
【0003】
本体1の下面には、駆動操舵輪6が設けられ、各リーチレッグ部2の前端側にはそれぞれ自由輪7が設けられる。駆動操舵輪6は、前後方向に対する車輪の角度を変更可能な操舵手段を有するとともに、駆動手段によって駆動される車輪である。自由輪7は、車輪の向きが前後方向に固定されて回転自在に設けられた従動輪である。これら駆動操舵輪6および自由輪7に支持されてリーチ付フォークリフトは走行面上を走行する。リーチ式フォークリフトの進行方向への操舵方法として、自由輪7・駆動操舵輪6の組み合わせによる走行動作が一般的に行われている。
【0004】
一方、予め定めた走行経路に沿って走行する無人搬送車がカーブ路を走行するときの安定性を確保するための従来の方法として、駆動輪の走行モータを制御する方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-082532号公報
【特許文献2】特開2017-126163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の従来のリーチ式フォークリフトは、自由輪を用いることにより構造が簡素となる反面、幅寄せ走行や小回りの利く旋回操作が難しいという問題があった。旋回等の操作が難しい場合には、リーチ式フォークリフトを用いた作業の効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、幅寄せ走行や小回りの利く旋回操作を容易に行える台車、台車の操舵方法および操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る台車は、台車本体と、前記台車本体から前方に突出した左右一対の突出部と、前記突出部の間に設けられた荷台部と、前記台車本体の下面側に設けられるとともに走行駆動可能および操舵可能に構成された駆動操舵輪と、前記突出部の下面側に設けられるとともに操舵可能に構成された操舵輪とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る台車の操舵方法は、上述した台車を操舵するための方法であって、前記台車を所定のルートに沿って移動させるための移動ルート指令情報を前記台車に向けて送信するステップと、受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を設定するステップと、設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を制御するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る台車の操舵装置は、上述した台車を操舵するための装置であって、前記台車を所定のルートに沿って移動させるための移動ルート指令情報を前記台車に向けて送信する操作手段と、受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を設定する設定手段と、設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る台車によれば、台車本体と、前記台車本体から前方に突出した左右一対の突出部と、前記突出部の間に設けられた荷台部と、前記台車本体の下面側に設けられるとともに走行駆動可能および操舵可能に構成された駆動操舵輪と、前記突出部の下面側に設けられるとともに操舵可能に構成された操舵輪とを備えるので、台車の任意方向への移動が容易になり、台車の駆動性が向上する。幅寄せ走行や小回りの利く旋回操作を容易に行えるので、台車による搬送作業の効率を向上することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る台車の操舵方法によれば、上述した台車を操舵するための方法であって、前記台車を所定のルートに沿って移動させるための移動ルート指令情報を前記台車に向けて送信するステップと、受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を設定するステップと、設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を制御するステップとを有するので、台車の自動運転における駆動性を向上することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る台車の操舵装置によれば、上述した台車を操舵するための装置であって、前記台車を所定のルートに沿って移動させるための移動ルート指令情報を前記台車に向けて送信する操作手段と、受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を設定する設定手段と、設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を制御する制御手段とを備えるので、台車の自動運転における駆動性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る台車、台車の操舵方法および操舵装置の実施の形態を示す要部平面図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態における車輪操舵バリエーションを示す説明図である。
【
図3】
図3(a)は、従来のリーチ式フォークリフトの概略斜視図であり、(b)は要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る台車、台車の操舵方法および操舵装置の実施の形態について、台車がリーチ式フォークリフトである場合を例にとり、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
(台車)
まず、本発明に係る台車の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る台車は、
図3(1)に示すような外観のリーチ式フォークリフトを想定している。
図1に示すように、本実施の形態に係る台車10は、後側に配置される略直方体状の本体12(台車本体)と、本体12の前面の左右下部から前方に突出した左右一対のリーチレッグ部14(突出部)と、リーチレッグ部14の間に設けられたマスト部16およびフォーク部18(荷台部)と、本体12の下面略中央に設けられた駆動操舵輪20と、各リーチレッグ部14下面の前端側に設けられた操舵輪22とを備える。
【0017】
マスト部16は、上下方向に延びる構造体であり、リーチレッグ部14の内面側の前後方向に配置されたレール24に沿って前後方向に移動可能に設けられる。フォーク部18は、マスト部16の前面側の左右から前方に突出して配置された左右一対の荷台部であり、マスト部16に沿って上下方向に昇降可能に構成されている。
【0018】
駆動操舵輪20および操舵輪22は、台車10と台車10に積載された荷の荷重を支えながら台車10を自在に移動させるためのものである。後述するように、台車10の自在な動きを実現するために、駆動操舵輪20および操舵輪22は互いに独立して操舵される。
【0019】
駆動操舵輪20は、走行および操舵のための車輪であり、台車10の後方に一つ設けられる。駆動操舵輪20は、上下方向の旋回軸を中心として左右に旋回できるように設けられる。本体12には、駆動操舵輪20の車軸を走行のために駆動する図示しない走行用モータと、駆動操舵輪20を操舵のために駆動する図示しない操舵用モータ、回転速度や操舵角などを検出するセンサが設けられている。図示しない制御装置(制御手段)が所定の操作信号、センサの検出値等に基づいて、これら走行用モータ、操舵用モータに対し、それぞれ駆動指令信号を出力することによって、駆動操舵輪20の回転速度、操舵角を駆動制御する。
【0020】
操舵輪22は、操舵のための車輪であり、台車10の前方左右に設けられる。操舵輪22は、上下方向の旋回軸を中心として左右に旋回できるように設けられる。リーチレッグ部14には、操舵輪22を操舵のために駆動する図示しない操舵用モータ(アクチュエータ)、回転速度や操舵角などを検出するセンサが設けられている。操舵輪22の旋回軸と操舵用モータはチェーン、ベルト等からなる伝達機構を介して連係しており、操舵用モータの回転力はこの伝達機構を介して操舵輪22に伝達可能である。図示しない制御装置(制御手段)が所定の操作信号、センサの検出値等に基づいて、操舵用モータに対し駆動指令信号を出力することによって、操舵輪22の操舵角を駆動制御する。なお、操舵輪22の操舵は、台車10に備わる図示しないハンドルの手動操作によっても可能である。
【0021】
上記の構成によれば、駆動操舵輪20および操舵輪22を備えるので、台車10の任意方向への移動が容易になり、台車10の駆動性が向上する。幅寄せ走行や小回りの利く旋回操作を容易に行えるので、台車10による搬送作業の効率を向上することができる。
【0022】
図2は、本実施の形態の車輪操舵バリエーションの一例を示したものである。
図2(1)は直進走行、(2)は前方操舵走行、(3)は後方操舵走行、(4)は平行走行、(5)は横行走行、(6)は自転走行である。
【0023】
図2(1)に示すように、台車10を前後方向に直進走行させる場合には、駆動操舵輪20および操舵輪22の操舵角をゼロ(車軸を左右方向に向ける制御)にして、駆動操舵輪20の走行用モータを正回転または逆回転に駆動する。
【0024】
また、
図2(2)に示すように、前方操舵走行を行う場合には、操舵輪22を操舵するとともに、駆動操舵輪20の操舵角をゼロにして、駆動操舵輪20の走行用モータを駆動する。
【0025】
また、
図2(3)に示すように、後方操舵走行を行う場合には、操舵輪22の操舵角をゼロにするとともに、駆動操舵輪20を操舵して、駆動操舵輪20の走行用モータを駆動する。
【0026】
また、
図2(4)に示すように、台車10を平行走行させたい場合には、駆動操舵輪20および操舵輪22の操舵角を同一角度に傾斜させて、駆動操舵輪20の走行用モータを正回転または逆回転に駆動する。
【0027】
また、
図2(5)に示すように、台車10を横行走行させたい場合には、駆動操舵輪20および操舵輪22の操舵角を真横にして(車軸を前後方向に向ける制御)、駆動操舵輪20の走行用モータを正回転または逆回転に駆動する。
【0028】
また、
図2(6)に示すように、台車10を自転走行させたい場合には、駆動操舵輪20の操舵角を真横にするとともに(車軸を前後方向に向ける制御)、左右の操舵輪22の操舵角が台車10の平面中心に対し点対称となるように傾斜させて、駆動操舵輪20の走行用モータを正回転または逆回転に駆動する。
【0029】
(台車の操舵方法および操舵装置)
次に、本発明に係る台車の操舵方法および操舵装置の実施の形態について説明する。
上記の台車10が自律走行可能であるものとし、本実施の形態は、この台車10の自動運転を遠隔操作する場合に適用されるものとする。台車10は、例えば施工現場の位置情報を表す図面データに基づいて自己位置を推定しながら自律走行可能に構成されていてもよい。
【0030】
本実施の形態の操舵装置は、所定の移動ルート指令情報を台車10に向けて無線または有線の通信回線を介して送信する操作手段と、受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪20および操舵輪22の操舵角を設定する設定手段と、設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪20および操舵輪22の操舵角を制御する制御手段とを備える。
【0031】
操作手段は、例えばクラウドサーバーや携帯端末などによって構成することができる。設定手段および制御手段は、例えば、台車10の本体12に備わる遠隔操作用PLC、車輪操舵用PLC、車輪コントローラなどによって構成することができる。
【0032】
上記の構成において、操作手段からの移動ルート指令情報は、遠隔操作用PLCに出力される。移動ルート指令情報は、台車10を所定のルートに沿って移動させるために予め作成された情報である。遠隔操作用PLCは、移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪20および操舵輪22の操舵角を設定し、車輪操舵用PLCに出力する。設定した操舵角は車輪操舵用PLCから車輪コントローラに出力される。車輪コントローラは、移動ルート上における駆動操舵輪20および操舵輪22の操舵角を設定した操舵角に適宜制御するとともに、移動ルート指令情報に応じて駆動操舵輪20の走行用モータを駆動する。こうすることで、台車10を予め設定した移動ルートに沿って自動運転することができる。
【0033】
本実施の形態によれば、移動ルート上における駆動操舵輪20および操舵輪22の操舵角が適宜制御されるので、台車10の自動運転における駆動性を向上することができる。幅寄せ走行や小回りの利く旋回操作を容易に行えるので、台車10による搬送作業の効率を向上することができる。
【0034】
以上説明したように、本発明に係る台車によれば、台車本体と、前記台車本体から前方に突出した左右一対の突出部と、前記突出部の間に設けられた荷台部と、前記台車本体の下面側に設けられるとともに走行駆動可能および操舵可能に構成された駆動操舵輪と、前記突出部の下面側に設けられるとともに操舵可能に構成された操舵輪とを備えるので、台車の任意方向への移動が容易になり、台車の駆動性が向上する。幅寄せ走行や小回りの利く旋回操作を容易に行えるので、台車による搬送作業の効率を向上することができる。
【0035】
また、本発明に係る台車の操舵方法によれば、上述した台車を操舵するための方法であって、前記台車を所定のルートに沿って移動させるための移動ルート指令情報を前記台車に向けて送信するステップと、受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を設定するステップと、設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を制御するステップとを有するので、台車の自動運転における駆動性を向上することができる。
【0036】
また、本発明に係る台車の操舵装置によれば、上述した台車を操舵するための装置であって、前記台車を所定のルートに沿って移動させるための移動ルート指令情報を前記台車に向けて送信する操作手段と、受信した移動ルート指令情報に基づいて、移動ルート上で必要となる駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を設定する設定手段と、設定した操舵角に基づいて、移動ルート上における駆動操舵輪および操舵輪の操舵角を制御する制御手段とを備えるので、台車の自動運転における駆動性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係る台車、台車の操舵方法および操舵装置は、リーチ式フォークリフトなどの搬送台車に有用であり、特に、幅寄せ走行や小回りの利く旋回操作を容易に行うのに適している。
【符号の説明】
【0038】
10 台車
12 本体(台車本体)
14 リーチレッグ部(突出部)
16 マスト部
18 フォーク部(荷台部)
20 駆動操舵輪
22 操舵輪
24 レール