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2022-78847酸素吸収用樹脂、酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078847
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】酸素吸収用樹脂、酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/16 20060101AFI20220518BHJP
   C09J 163/10 20060101ALI20220518BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C08G59/16
C09J163/10
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189795
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591176225
【氏名又は名称】桜宮化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】太田 奈月
(72)【発明者】
【氏名】山村 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】北村 英之
(72)【発明者】
【氏名】深石 憲司
【テーマコード(参考)】
3E086
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
3E086DA06
4J036AC01
4J036AC03
4J036AD08
4J036CA20
4J036DA01
4J036DB15
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC06
4J036DC10
4J036DC22
4J036DC27
4J036JA06
4J036JA08
4J036JA15
4J040EC322
4J040ED001
4J040EF281
4J040JB02
4J040KA16
4J040NA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな構造を有する、接着性及び酸素吸収性を有する酸素吸収用樹脂、当該樹脂を含む酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用組成物を用いた酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルムを提供する。
【解決手段】ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂のヒドロキシ基及び/又はエポキシ基と、不飽和脂肪酸のカルボキシル基と、が反応して形成されたエステル結合を有し、酸素吸収性能を発現するエチレン性不飽和結合を、エポキシ樹脂に導入した酸素吸収用樹脂とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂のヒドロキシ基及び/又はエポキシ基と、不飽和脂肪酸のカルボキシル基と、が反応して形成されたエステル結合を有する、酸素吸収用樹脂。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項1に記載の酸素吸収用樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の酸素吸収用樹脂を含む、酸素吸収用組成物。
【請求項5】
硬化剤を含む、請求項4に記載の酸素吸収用組成物。
【請求項6】
触媒を含む、請求項4又は5に記載の酸素吸収用組成物。
【請求項7】
飽和ポリエステルを含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の酸素吸収用組成物。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム。
【請求項9】
請求項4~7のいずれか1項に記載の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用接着剤。
【請求項10】
請求項9に記載の酸素吸収用接着剤を含む酸素吸収用接着剤フィルム。
【請求項11】
請求項4~7のいずれか1項に記載の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層を備える、酸素吸収用積層体。
【請求項12】
請求項9に記載の酸素吸収用接着剤からなる酸素吸収用接着剤層を備える、酸素吸収用積層体。
【請求項13】
酸素バリア層と、前記酸素吸収用組成物層と、ヒートシール層とが、この順で積層された、請求項11に記載の酸素吸収用積層体。
【請求項14】
酸素バリア層と、前記酸素吸収用接着剤層と、ヒートシール層とが、この順で積層された、請求項12に記載の酸素吸収用積層体。
【請求項15】
請求項3又は8に記載の酸素吸収用フィルム、請求項10に記載の酸素吸収用接着剤フィルム、及び請求項11~14に記載の酸素吸収用積層体からなる群より選ばれるいずれかを備える包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収用樹脂、酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の内容物の品質劣化を抑制する目的で、酸素吸収性能を有する包材が広く使用されている。
【0003】
特許文献1には、炭素-炭素不飽和結合及び反応性官能基を有する酸素吸収性樹脂成分と、架橋剤とが含まれる酸素吸収性塗膜層を有し、酸素バリア層、酸素吸収性塗膜層、及びヒートシール層が、この順に積層された酸素吸収用積層体が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された酸素吸収性樹脂は、接着性を有していないため、ヒートシール層を有する積層体を形成するために、後工程により、ヒートシール剤を塗工したり、ヒートシール性フィルムをラミネートしたりする必要があった。そして、このような後工程を実施することで、酸素吸収性能が失活する場合があった。
【0005】
これに対して、特許文献2には、接着性及び酸素吸収性に優れた酸素吸収性樹脂組成物として、テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体、又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体を原料として用いた酸素吸収性ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物が提案されている。
【0006】
特許文献2に記載された酸素吸収性組成物からなる酸素吸収用接着剤層を有する酸素吸収性フィルムは、原料となるテトラヒドロフタル酸やテトラヒドロ無水フタル酸等が、酸素との非常に高い反応性を有するため、優れた酸素吸収性能を発現する。
【0007】
また、不飽和脂環構造と酸素との反応においては、樹脂の自動酸化反応による副生成物である、低分子量の分解成分の発生を抑制することができる。このため、食品包装等の分野において問題となる、匂い等の発生を抑制できるとともに、酸素吸収前後にわたって強いラミネート強度を維持することができるとされている。
【0008】
また、特許文献3には、新たな構造を有する酸素吸収性物質として、シクロヘキセン環を含むポリマーによる酸素スカベンジャー、及び当該酸素スカベンジャーを用いた容器等が提案されている。
【0009】
特許文献3に記載されたシクロヘキセン環を含む酸素スカベンジャーは、酸化後に環が断片化あるいは分裂する傾向が小さい環状アリル構造を有することから、匂い又は味に悪影響を与える酸化副生物の発生を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-268310号公報
【特許文献2】特開2014-136421号公報
【特許文献3】特表2003-521552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
酸素吸収性を有する物質については、今後も様々なニーズに対応する必要があり、更なる種類の樹脂等が要請されている。
【0012】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、引用文献1~3には記載されていない構造を有する、接着性及び酸素吸収性を有する酸素吸収用樹脂、当該樹脂を含む酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用組成物を用いた酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、酸素吸収性を有する物質について鋭意研究し、酸素吸収性能を発現するエチレン性不飽和結合を、エポキシ樹脂に導入すれば、接着性と酸素吸収性の両者を良好に示す樹脂となることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0014】
《態様1》
ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂のヒドロキシ基及び/又はエポキシ基と、不飽和脂肪酸のカルボキシル基と、が反応して形成されたエステル結合を有する、酸素吸収用樹脂。
《態様2》
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、態様1に記載の酸素吸収用樹脂。
《態様3》
態様1又は2に記載の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム。
《態様4》
態様1又は2に記載の酸素吸収用樹脂を含む、酸素吸収用組成物。
《態様5》
硬化剤を含む、態様4に記載の酸素吸収用組成物。
《態様6》
触媒を含む、態様4又は5に記載の酸素吸収用組成物。
《態様7》
飽和ポリエステルを含む、態様4~6のいずれか一態様に記載の酸素吸収用組成物。
《態様8》
態様4~7のいずれか一態様に記載の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム。
《態様9》
態様4~7のいずれか一態様に記載の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用接着剤。
《態様10》
態様9に記載の酸素吸収用接着剤を含む酸素吸収用接着剤フィルム。
《態様11》
態様4~7のいずれか一態様に記載の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層を備える、酸素吸収用積層体。
《態様12》
態様9に記載の酸素吸収用接着剤からなる酸素吸収用接着剤層を備える、酸素吸収用積層体。
《態様13》
酸素バリア層と、前記酸素吸収用組成物層と、ヒートシール層とが、この順で積層された、態様11に記載の酸素吸収用積層体。
《態様14》
酸素バリア層と、前記酸素吸収用接着剤層と、ヒートシール層とが、この順で積層された、態様12に記載の酸素吸収用積層体。
《態様15》
態様3又は8に記載の酸素吸収用フィルム、態様10に記載の酸素吸収用接着剤フィルム、及び態様11~14に記載の酸素吸収用積層体からなる群より選ばれるいずれかを備える包装材。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸素吸収用樹脂は、エポキシ樹脂に、酸素吸収性能を発現するエチレン性不飽和結合を導入したことで、接着性と酸素吸収性の両者を良好に示す樹脂となる。
【0016】
本発明の酸素吸収用樹脂は、接着性を有することから、接着層として機能することができる。このため、本発明の酸素吸収用樹脂を用いて酸素吸収性能を有する積層体を形成する際に、隣接する層と接着するための工程が必要なくなり、当該工程に起因する酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《酸素吸収用樹脂》
本発明の酸素吸収用樹脂は、酸素吸収性能を発現するエチレン性不飽和結合が導入されたエポキシ樹脂である。具体的には、ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂のヒドロキシ基及び/又はエポキシ基と、不飽和脂肪酸のカルボキシル基と、が反応して形成されたエステル結合を有する、酸素吸収用樹脂である。
【0018】
エチレン性不飽和結合である炭素-炭素不飽和結合を有する物質は、不飽和結合と酸素とが反応することで、酸素吸収性能を発現することが知られている。本発明の酸素吸収用樹脂は、酸素吸収性能を発現するエチレン性の炭素-炭素不飽和結合を、エポキシ樹脂に導入したものであるため、酸素吸収性能を有する。
【0019】
また、エポキシ樹脂は、接着性を有するため、本発明の酸素吸収用樹脂は、接着層として機能することができる。このため、本発明の酸素吸収用樹脂を用いて酸素吸収性能を有する積層体を形成する際には、隣接する層と接着するための工程が必要なくなり、当該工程に起因する酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【0020】
なお、本発明の酸素吸収用樹脂は、構成原料となるヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂のヒドロキシ基及び/又はエポキシ基の部分に、エステル結合が形成されるものであるが、エポキシ樹脂におけるヒドロキシ基及びエポキシ基の、全てにエステル結合が形成されている必要はなく、未反応のヒドロキシ基又はエポキシ基が残存していてもよい。
【0021】
本発明の酸素吸収用樹脂が、未反応のヒドロキシ基又はエポキシ基を有する場合には、当該基が官能基となって硬化剤等と反応し、架橋等を行うことができる。
【0022】
<エポキシ樹脂>
本発明の酸素吸収用樹脂の構成原料となるエポキシ樹脂は、1分子中に1個以上のヒドロキシ基を有するとともに、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物である。本発明においては、本条件を満たせば、特に限定されるものではない。
【0023】
1分子中に、少なくとも1個のヒドロキシ基と、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を構成原料とし、当該ヒドロキシ基及び/又はエポキシ基に、後記するもう1つの構成原料である不飽和脂肪酸のカルボキシル基を反応させて、エステル結合を形成し、これにより、エポキシ樹脂と不飽和脂肪酸とを結合させて、不飽和脂肪酸が有するエチレン性不飽和結合である炭素-炭素不飽和結合を、エポキシ樹脂に導入する。
【0024】
1分子中に、少なくとも1個のヒドロキシ基と、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等の芳香族型エポキシ樹脂や、1、6-ナフタレンジオールグリシジルエーテル等のナフタレン型エポキシ樹脂、1,4-ジヒドロアントラセン-9,10-ジオールグリシジルエーテル等のジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂等の多環芳香族型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0025】
これらの中では、入手の容易性や取り扱い性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが好ましい。市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、jER(登録商標)-1001、jER(登録商標)-1002、jER(登録商標)-1003、jER(登録商標)-1004、jER(登録商標)-1007、jER(登録商標)-1009、jER(登録商標)-1010(三菱ケミカル社)、YD-011、YD-012、YD-013、YD-014、YD-017、YD-019(日鉄ケミカル&マテリアル社)、DER661-E、DER662-E、DER663-U、DER664-U、DER667-E、DER669-E(オーリン社)等が挙げられる。
【0026】
<不飽和脂肪酸>
本発明の酸素吸収用樹脂のもう1つの構成原料となる不飽和脂肪酸は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合である炭素-炭素不飽和結合を有し、下記の一般式(1)を有する炭化水素の1価カルボン酸であってよい。
COOH ・・・(1)
【0027】
本発明の酸素吸収用樹脂の構成原料となる不飽和脂肪酸において、上記式(1)における炭素数nは、特に限定されるものではない。本発明においては、炭素数が6以下の短鎖不飽和脂肪酸であっても、8~10の中鎖不飽和脂肪酸であっても、12以上の長鎖不飽和脂肪酸であってもよい。
【0028】
また、上記式(1)における水素数mは、2n+1-2a(aは、炭素-炭素二重結合の数であって、例えば、1~5、特に1~3)であってよい。
【0029】
中では、エポキシ樹脂中の一つのヒドロキシ基に対して、より多くの不飽和結合を付加できることから、炭素数nが12以上の長鎖不飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0030】
また、本発明の酸素吸収用樹脂の構成原料となる不飽和脂肪酸において、不飽和結合は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合である炭素-炭素不飽和結合を有していればよく、複数の不飽和結合を有していてもよい。
【0031】
不飽和結合の種類としても、特に限定されるものではなく、炭素-炭素二重結合であっても、三重結合であってもよい。中では、入手の容易性から、炭素-炭素二重結合であることが好ましい。
【0032】
したがって、本発明の酸素吸収用樹脂の構成原料となる不飽和脂肪酸としては、二重結合の数が1つであるモノエン脂肪酸(一価不飽和脂肪酸)であっても、二重結合の数が2つ以上であるポリエン脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)であってもよい。
【0033】
本発明の酸素吸収用樹脂においては、不飽和脂肪酸に由来する不飽和結合によって、酸素吸収性能を発現するため、必要となる酸素吸収性能のレベルに応じて、不飽和結合の数を適宜選択することができる。不飽和結合の数が多く存在するほど、酸素吸収性能は高くなる傾向がある。
【0034】
<酸素吸収用樹脂の製造方法>
本発明の酸素吸収用樹脂の製造方法は、特に限定されるものではない。ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂のヒドロキシ基及び/又はエポキシ基と、不飽和脂肪酸のカルボキシル基と、を反応させて、エステル結合を形成するものであればよい。
【0035】
したがって、ヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂が有するヒドロキシ基及びエポキシ基の個数や、不飽和脂肪酸の炭素鎖の長さ、不飽和結合の数等によって、供給原料のモル比や、反応条件を適宜設定することができる。
【0036】
《酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム》
本発明の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルムは、上記の本発明の酸素吸収用樹脂を原料として含むフィルムである。酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルムは、本発明の酸素吸収用樹脂に、必要に応じて、酸素吸収用樹脂を架橋させるための硬化剤や、機能性等を付与するための添加剤等の他の成分が配合されていてもよい。
【0037】
酸素吸収用フィルムにおける本発明の酸素吸収用樹脂の含有率は、酸素吸収用フィルムの構成材料全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%異様、95質量%以上であってよい。
【0038】
酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルムは、例えば、本発明の酸素吸収用樹脂、及び必要に応じて配合された硬化剤や添加剤等の他の成分を含む組成物を、フィルム状に押出しすることで成形することができる。
【0039】
硬化剤や添加剤等の他の成分については、後記する酸素吸収用接着剤に関する記載を参照することができる。
【0040】
《酸素吸収用組成物》
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂を含む組成物である。
【0041】
本発明の酸素吸収用組成物は、本発明の酸素吸収用樹脂を含むことで、酸素吸収性能とともに接着性を有する。このため、本発明の酸素吸収用組成物からなる層を2層の間に挟み込むことで、酸素吸収性能を有する積層体を形成することができる。
【0042】
したがって、例えば、従来、ヒートシール層を有する積層体を形成するために必要とされていた、ヒートシール剤を塗工したり、ヒートシール性フィルムをラミネートしたりする等の工程、又はヒートシール性フィルムを貼り付けるために接着層を予め形成する工程等が必要なくなり、当該工程に起因する酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【0043】
<酸素吸収用組成物の構成成分>
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂以外に、任意の成分や溶媒等が配合されていてもよい。
【0044】
(硬化剤)
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂以外に、任意の成分として、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤を存在させることで、エポキシ樹脂を三次元架橋させることができ、機械的強度や耐薬品性に優れた硬化物を形成することができる。また、硬化スピードを調整することができ、用途に応じてコントロールすることが可能となる。
【0045】
硬化剤としては、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂の分野において用いられている、公知の硬化剤を用いることができる。例えば、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系等の硬化剤を挙げることができる。
【0046】
樹脂に配合する硬化剤の量は、本発明の酸素吸収用樹脂のエポキシ当量に基づいて適宜設定することができる。例えば、硬化剤として酸無水物を用いる場合には、エポキシ基1個に対して、酸無水物基0.8~0.9個程度としてもよい。
【0047】
本発明の酸素吸収用組成物には、硬化剤とともに、硬化促進剤を含有させていてもよい。硬化促進剤としては、例えば、第三アミンが挙げられ、第三アミンを用いる場合には、硬化剤はエポキシ当量配合することが好ましい。
【0048】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミンや、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0049】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸等が挙げられる。
【0050】
ポリアミド系硬化剤としては、例えば、主としてダイマー酸とポリアミンの縮合により生成した、分子中に反応性の一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミンが挙げられる。
【0051】
また、本発明の酸素吸収用樹脂が、未反応のヒドロキシ基を有している場合には、硬化剤として、イソシアネート系硬化剤を用いてもよい。イソシアネート系硬化剤によれば、酸素吸収用樹脂が有するヒドロキシ基とイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合を形成することで、酸素吸収用樹脂の三次元架橋が行われる。
【0052】
イソシアネート系硬化剤としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、3,3'-ジクロロ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、又は、3,3'-ジメチル-4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
なお、イソシアネート系硬化剤は、分子量が増大されたポリイソシアネート化合物であってもよい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、アダクトやイソシアヌレート、ビュレット体等が挙げられる。また、イソシアネート系硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(触媒)
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂以外に、任意の成分として、触媒を含んでいてもよい。触媒を存在させることで、酸素吸収用樹脂の酸素吸収性能を高めることができる。
【0055】
触媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、遷移金属又は第12族元素と、有機酸とからなる金属塩が挙げられる。遷移金属としては、例えば、鉄、コバルト等が挙げられ、第12族元素としては、例えば亜鉛が挙げられる。また、有機酸としては、例えばステアリン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、ラウリン酸、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、2,4-ペンタンジオン等が挙げられる。
【0056】
したがって、本発明の酸素吸収用組成物に配合される触媒としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄等が挙げられ、いずれによっても、本発明の酸素吸収用組成物の酸素吸収性能を高めることができる。
【0057】
本発明の酸素吸収用組成物が触媒を含む場合には、その配合量は、酸素吸収用組成物の全固形分質量に対する遷移金属又は第12族元素の質量換算で、例えば、10~500ppmであってよい。
【0058】
触媒の配合量は、酸素吸収用組成物の全固形分質量に対する遷移金属又は第12族元素の質量換算で、20ppm以上、40ppm以上、60ppm以上、80ppm以上、100ppm以上、150ppm以上、又は200ppm以上であってよく、450ppm以下、400ppm以下、350ppm以下、300ppm以下、250ppm以下、又は200ppm以下であってよい。
【0059】
(飽和ポリエステル)
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂以外に、任意の成分として、飽和ポリエステルを含んでいてもよい。飽和ポリエステルを存在させることで、ラミネート強度をさらに向上させることができる。
【0060】
飽和ポリエステルとしては、特に限定されるものではなく、反応性の不飽和結合を有さないポリエステルから適宜選択して用いることができる。例えば、脂肪族ポリエステルであっても、芳香族ポリエステルであっても、脂環式ポリエステルであってもよく、これらの2種以上を、同時に適用してもよい。
【0061】
本発明の酸素吸収用組成物が飽和ポリエステルを含む場合には、その配合量は、組成物の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、酸素吸収用組成物を構成する不飽和ポリエステルと飽和ポリエステルとの合計100質量%に対して、1~99質量%であってよい。
【0062】
飽和ポリエステルの配合量は、酸素吸収用組成物を構成する不飽和ポリエステルと飽和ポリエステルとの合計100質量%に対して、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、60質量%以上、又は80質量%以上であってよく、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0063】
なお、本発明の酸素吸収用組成物に配合する飽和ポリエステルの構成材料となるジオールの種類は、特に限定されるものではなく、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、又は脂環族ジオールのいずれであってもよい。中では、脂環式ジオールに由来する脂環式構造を有する脂環式ポリエステルであれば、より高度な酸素吸収性能を実現することができる。
【0064】
脂環式ジオールに由来する脂環式構造は、エチレン性不飽和結合である炭素-炭素不飽和結合による酸素吸収性能を補助する。具体的には、脂環式構造による立体障害により空間ができ、当該空間を通して組成物を構成する酸素吸収用樹脂の内部まで酸素が入り込み易くなり、その結果、酸素と炭素-炭素不飽和結合との接触機会を向上させると考えられる。
【0065】
脂環式ジオールは、少なくとも1個の芳香族性を有しない炭素環を有する脂環式構造を有していればよく、脂環式構造は、飽和炭化水素であっても、炭素-炭素二重結合を環内に1個含む不飽和環状炭化水素であってもよい。環内に炭素-炭素二重結合を有する場合には、当該二重結合は、酸素と反応して酸素吸収性能を発揮することが可能となる。
【0066】
また、脂環式ジオールは、単環であっても縮合環であってもよい。縮合環の場合には、少なくとも1個の芳香族性を有しない炭素環を備えていればよく、芳香族性を有する環が縮合していてもよい。
【0067】
脂環式ジオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、5-ノルボルネン-2,3-ジメチロール等が挙げられる。
【0068】
なお、脂環式ジオールは、1種のみならず、2種以上が併用されていてもよい。脂環式ジオールが異性体を有する場合には、シス、トランスのいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0069】
立体障害の大きい構造を有する脂環式ジオールは、より酸素を入り込み易くすることから、例えば、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等の縮合環を有する脂環式ジオールを構成原料とする飽和ポリエステルによれば、より高い効果を享受することが可能となる。
【0070】
(溶媒)
本発明の酸素吸収用組成物は、任意の成分として、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、本発明の酸素吸収用樹脂及び任意の成分を溶解して、組成物としての取り扱い等を向上させることができる。
【0071】
本発明の酸素吸収用組成物に用いられる溶媒は、特に限定されるものではなく、エポキシ系組成物の溶媒として用いられている公知の溶媒を適用することができる。
【0072】
溶媒の配合量についても特に限定されるものではなく、組成物の用途や成形サイクル等に応じて、適宜選択することができる。
【0073】
<酸素吸収用組成物の製造方法>
本発明の酸素吸収用組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、エポキシ系組成物の製造方法として公知の方法を適用することができる。
【0074】
《酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム》
本発明の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルムは、上記の本発明の酸素吸収用組成物を原料として含むフィルムである。
【0075】
酸素吸収用フィルムにおける本発明の酸素吸収用組成物の含有率は、酸素吸収用フィルムの構成材料全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%異様、95質量%以上であってよい。
【0076】
酸素吸収用組成物からなるフィルムは、例えば、本発明の酸素吸収用組成物を溶媒に溶解した後に、得られた溶液を離型紙等の対象物の上に塗布し、溶媒を除去して硬化等させて得られるフィルムであってもよい。
【0077】
《酸素吸収用接着剤》
本発明の酸素吸収用接着剤は、上記した本発明の酸素吸収用組成物を含む接着剤である。本発明の酸素吸収用接着剤は、本発明の酸素吸収用樹脂を含む組成物を含むため、酸素吸収性能を有する。同時に、接着性を有する。
【0078】
このため、本発明の酸素吸収用接着剤を接着層として2層の間に挟み込むことで、酸素吸収性能を有する積層体を形成することができ、例えば、従来、ヒートシール層を有する積層体を形成するために必要とされていた、ヒートシール剤を塗工したり、ヒートシール性フィルムをラミネートしたりする等の工程、又はヒートシール性フィルムを貼り付けるために接着層を予め形成する工程等が必要なくなり、当該工程に起因する酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【0079】
<酸素吸収用接着剤の構成成分>
本発明の酸素吸収用接着剤は、上記した本発明の酸素吸収用組成物以外に、機能性を付与するための任意の成分、又は溶媒等を配合することができる。
《酸素吸収用接着剤フィルム》
本発明の酸素吸収用接着剤フィルムは、上記の本発明の酸素吸収用接着剤を原料として含むフィルムである。
【0080】
酸素吸収用接着剤フィルムにおける本発明の酸素吸収用接着剤の配合量は、酸素吸収用接着剤フィルムの構成材料全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0081】
酸素吸収用接着剤フィルムは、例えば、本発明の酸素吸収用接着剤を溶媒に溶解した後に、得られた溶液を離型紙等の対象物の上に塗布し、溶媒を除去して硬化等させて得られる、未延伸フィルムであってもよい。
【0082】
《酸素吸収用積層体》
本発明の酸素吸収用積層体は、上記した本発明の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層、又は上記した本発明の酸素吸収用接着剤からなる酸素吸収用接着剤層を備える積層体である。
【0083】
本発明の酸素吸収用積層体は、本発明の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層、を備えていれば、その他の層は特に限定されるものではない。その他の層としては、例えば、積層体に機能を付与するための酸素バリア層、ヒートシール層等、あるいは、各層を接着するための接着層等が挙げられる。
【0084】
本発明の酸素吸収用組成物又は本発明の酸素吸収用接着剤は、2層の間に挟み込むことで、当該2層を接着するとともに、自身は酸素吸収性能を有する層となる。したがって、酸素吸収性能を備える層を形成するために、別に接着層を設ける工程を必要とせずに、酸素吸収用積層体を形成することができる。そして、別に設ける必要のあった工程に起因する、酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【0085】
本発明の酸素吸収用積層体は、例えば、酸素バリア層と、本発明の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層と、ヒートシール層とが、この順で積層された構成であってもよい。
【0086】
本発明の酸素吸収用積層体が、酸素バリア層と、酸素吸収用組成物層又は酸素吸収用接着剤層と、ヒートシール層とが、この順で積層された構成となっている場合には、ヒートシール層を熱溶着させることで各種の包装体を形成することができる。包装体に充填された内容物が接する面は、ヒートシール層となり、包装体の外部である大気等に含まれる酸素が接触する面は、酸素バリア層となる。
【0087】
したがって、酸素吸収用積層体が、酸素バリア層と、酸素吸収用組成物層又は酸素吸収用接着剤層と、ヒートシール層とが、この順で積層された構成となっていれば、外部からの酸素透過を防ぎつつ、包装体内部の酸素を吸収することができる。その結果、より高度なレベルで、包装体内部に存在する酸素を排除することができ、内容物の酸化劣化を回避することができる。
【0088】
<その他の層>
(酸素バリア層)
酸素バリア層は、酸素を遮断する機能を発現し、酸素吸収用積層体に酸素バリア性を付与するための層となる。
【0089】
酸素バリア層としては、特に限定されるものではなく、包装材料の分野にて公知の材料から作製することができる。例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、又はポリアクリロニトリル(PAN)や、シリカ、アルミナ、又はアルミ等が蒸着されたPETフィルムやナイロンフィルム、更には、アルミ箔や、PETとアルミ箔との積層体、ナイロンとアルミ箔との積層体等が挙げられる。
【0090】
本発明の酸素吸収用積層体においては、酸素バリア層の厚み等については特に限定されるものではなく、積層体の用途に応じて、適宜設定することができる。
【0091】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、例えば包装体等の構造体を形成する際に、熱溶着される層となる。このため、ヒートシール層は、積層体の最内層となるように配置される。
【0092】
ヒートシール層を構成する材料としては、熱接着が可能であり、成形された構造体に十分なシール強度を付与できるものであれば、特に限定されるものではない。公知の材料を適用することができ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0093】
なお、ヒートシール層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0094】
<酸素吸収用積層体の製造方法>
本発明の酸素吸収用積層体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0095】
《用途》
本発明の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム、本発明の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム、本発明の酸素吸収用接着剤を含む酸素吸収用接着剤フィルム、及び本発明の酸素吸収用積層体は、包装材として好適に用いることができる。
【0096】
本発明の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム、本発明の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム、本発明の酸素吸収用接着剤を含む酸素吸収用接着剤フィルム、及び本発明の酸素吸収用積層体から成る群より選ばれるいずれかを備える包装材は、酸素吸収性能を発揮することができるため、例えば、内容物と酸素との接触を遮断したい、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、塗料等の包装材として、好適に用いることができる。
【実施例0097】
以下、実施例及び比較例等により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
<酸素吸収用樹脂の製造>
酸素吸収用樹脂の原料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER(登録商標)-1004(三菱ケミカル社製)と、不飽和脂肪酸として亜麻仁油脂肪酸と脱水ひまし油脂肪酸とを、表1に示す質量となるようそれぞれ準備した。
【0099】
《製造例1》
水分離器、コンデンサー、窒素導入管、及び温度計を備えたフラスコに、jER-1004を100部、脱水ひまし油脂肪酸を8部、亜麻仁油脂肪酸を12部仕込んだ。窒素ガスを導入しながら3時間かけて230℃まで昇温し、酸価20となるまで反応させた後、キシレン100部を加えることで、酸素吸収用樹脂Aを得た。
【0100】
酸価は、樹脂0.5gを10mlのシクロヘキサノンに溶解し、キシレン10mlを加えて希釈した溶液を、0.2M水酸化カリウムエタノール溶液で中和滴定することで求めた。このとき、指示薬としては、フェノールフタレインを使用した。
【0101】
《製造例2》
水分離器、コンデンサー、窒素導入管、及び温度計を備えたフラスコに、jER-1004を100部、脱水ひまし油脂肪酸を20部仕込み、窒素ガスを導入しながら3時間かけて240℃まで昇温し、酸価1となるまで反応させた後、キシレン180部を加えることで、酸素吸収用樹脂Bを得た。
【0102】
《製造例3》
水分離器、コンデンサー、窒素導入管、及び温度計を備えたフラスコに、jER-1004を100部、脱水ひまし油脂肪酸を80部仕込み、窒素ガスを導入しながら3時間かけて240℃まで昇温し、酸価6となるまで反応させた後、トルエン60部、MEK60部を加えることで、酸素吸収用樹脂Cを得た。
【0103】
《製造例4》
水分離器、コンデンサー、窒素導入管、及び温度計を備えたフラスコに、jER-1004を100部、脱水ひまし油脂肪酸を100部仕込み、窒素ガスを導入しながら3時間かけて240℃まで昇温し、酸価1となるまで反応させた後、トルエン67部、MEK67部を加えることで、酸素吸収用樹脂Dを得た。
【0104】
《製造例5》
水分離器、コンデンサー、窒素導入管、及び温度計を備えたフラスコに、jER-1004を100部、亜麻仁油脂肪酸を80部仕込み、窒素ガスを導入しながら3時間かけて240℃まで昇温し、酸価2となるまで反応させた後、トルエン60部、MEK60部を加えることで、酸素吸収用樹脂Eを得た。
【0105】
《製造例6》
水分離器、コンデンサー、窒素導入管、及び温度計を備えたフラスコに、jER-1004を100部、亜麻仁油脂肪酸を100部仕込み、窒素ガスを導入しながら3時間かけて240℃まで昇温し、酸価1となるまで反応させた後、トルエン67部、MEK67部を加えることで、酸素吸収用樹脂Fを得た。
【0106】
【表1】
【0107】
《実施例1~8、比較例1》
<組成物の作製>
製造例1~6で得られた、酸素吸収用樹脂A、B、C、D、E及びFを用いて、これらを含む組成物を作製した。
【0108】
(組成物の成分)
組成物に配合した各種成分を以下に示す。
【0109】
1.酸素吸収用樹脂
・製造例1で得られた酸素吸収用樹脂A
・製造例2で得られた酸素吸収用樹脂B
・製造例3で得られた酸素吸収用樹脂C
・製造例4で得られた酸素吸収用樹脂D
・製造例5で得られた酸素吸収用樹脂E
・製造例6で得られた酸素吸収用樹脂F
【0110】
2.飽和ポリエステル
・ポリエステル系ポリオール(タケラック(登録商標)A-525S、三井化学株式会社)
・ポリエステル系ポリオール(タケラック(登録商標)A-525、三井化学株式会社)
【0111】
3.硬化剤
・イソシアネート化合物(タケネート(登録商標)A-50、三井化学株式会社)
【0112】
4.触媒
・ステアリン酸コバルト(II)
・ステアリン酸亜鉛(II)
・ステアリン酸鉄(III)
【0113】
(操作)
表1に示される、酸素吸収用樹脂、及び飽和ポリエステルを、表1に示される固形分質量比となるように準備した。続いて、酸素吸収用樹脂と飽和ポリエステルの合計固形分質量100質量部に対して、7質量部の硬化剤を混合した。
【0114】
更に、表1に示される触媒を、組成物の全固形分質量に対する、コバルト、鉄、又は亜鉛の質量換算で80ppm添加し、続いて、酢酸エチルを添加して、固形分33質量%となる酢酸エチル溶液である組成物を調製した。
【0115】
<酸素吸収量の測定>
(積層体の作製)
実施例1~8、及び比較例1で得られた酢酸エチル溶液である組成物を、厚み12μmのシリカ蒸着PETフィルム(テックバリア(登録商標)L、三菱ケミカル株式会社)に、塗布量が5g/mとなるように塗工し、厚み30μmのLLDPEフィルム(SE620N、タマポリ株式会社)と貼り合わせることで、積層体を作製した。
【0116】
(測定)
得られた積層体を10cm×10cm(100cm)にカットし、43mLの密閉容器に空気とともに封入し、23℃で7日間保管した。7日後の容器内の酸素濃度を、非破壊酸素濃度計(Fibox3、PreSens社)を用いて測定し、得られた酸素濃度と大気中の酸素濃度とから、積層体の面積当りの酸素吸収量(mL/m)を算出した。結果を表2示す。
【0117】
【表2】
【0118】
<考察>
実施例1~8より、酸素吸収性能を発現するエチレン性不飽和結合をエポキシ樹脂に導入することにより、接着性と酸素吸収性の両者を良好に示す樹脂が得られることが判る。
【0119】
また、エポキシ樹脂100質量部に対して不飽和脂肪酸20質量部反応させた酸素吸収用樹脂A及び酸素吸収用樹脂Bを用いた実施例1~4の組成物は、酸素吸収性能が高くなることが判った。