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  • 特開-紙および紙製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078851
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】紙および紙製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/01 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
D21H17/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189801
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】311010475
【氏名又は名称】KJ特殊紙株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508373888
【氏名又は名称】三菱王子紙販売株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520447525
【氏名又は名称】永紘商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】上原 信行
(72)【発明者】
【氏名】佐野 克美
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 明洋
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF09
4L055AF46
4L055AH01
4L055AH02
4L055AH18
4L055CA09
4L055CG32
4L055EA04
4L055EA13
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】ボーガスペーパーとしての用途に適し、手で簡単に任意の位置で引きちぎることが可能な手切れ性のよい、かつ柔軟性が高く箱詰めにおける作業性のよい紙を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の紙は、ペーパースラッジを材料として抄紙され、0.2mm未満の成分の質量基準の割合であるファイン率が20%以上40%以下であり、灰分が全質量中の15質量%以上50質量%以下である、ロール状にまかれた長尺状のものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイン率が20%以上40%以下であることを特徴とする紙。
【請求項2】
灰分が15質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の紙。
【請求項3】
ロール状にまかれた長尺状のものであることを特徴とする請求項1または2記載の紙。
【請求項4】
ペーパースラッジを得るペーパースラッジ入手工程と、
前記ペーパースラッジ入手工程で入手した前記ペーパースラッジを用いて抄紙する抄紙工程とを備えたことを特徴とする紙製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙および紙製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信販売の拡大により、宅配物の量が急増している。それに伴い、こわれやすい食器や瓶類の破損や、輸送時の揺れによる家電製品への衝撃を防ぐ用途や、梱包時に生じる隙間などの空間を埋める用途に用いられる、梱包箱や梱包袋の内部に詰め込む緩衝材の需要が増加している。
【0003】
緩衝材としては、発泡スチロールや気泡緩衝材が多く使用されている。「エアーキャップ」(登録商標)、「エアークッション」等の気泡緩衝材は、塩化ビニールの伸縮性と空気の圧力で衝撃吸収機能を持つ。また、発泡スチロールはポリスチレンなどの合成樹脂を発泡させ、弾力性を持たせている。さらに近年は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂を使った発泡緩衝材も登場している。
【0004】
これら合成樹脂を使った緩衝材は、水濡れや湿気に強い反面、不適切に廃棄されることがあり、その場合はいつまでも分解されず土壌、河川または海に残るために環境負荷が大きいことが問題になってきた。このため合成樹脂を素材とした緩衝材に代わってセルロースやコーンスターチ(トウモロコシデンプン)など生分解性のある素材を用いた緩衝材が開発されている。また、企業から排出されるシュレッダー屑も使用されるようになってきたが、いずれも供給量が少ないことから、古紙、新聞紙、わら半紙等を、いわゆるボーガスペーパー(緩衝材用紙)として使用することが行われている。ボーガスペーパーを不定形に箱へ詰め込むことで、紙のもつ弾力を活かした緩衝材として使用することができる。
【0005】
しかしながら、古紙、新聞紙、わら半紙等は、一定の大きさに裁断されているため、近年の様々な形の商品を最適な緩衝材量で梱包することは難しいという問題がある。この問題に対応するため、梱包箱や梱包袋の内部に詰め込む量を必要に応じて調整できる、ロール状に巻かれた長尺のボーガスペーパーが使用されるようになってきた。
【0006】
また、例えばトイレットペーパーや紙テープなどのように、ボーガスペーパーの他にもロール状に巻かれた長尺の紙から好みの長さを引出し、手で引きちぎって使用する紙がある。以下、ボーガスペーパーやトイレットペーパーや紙テープなどでロール状に巻かれた長尺の紙をロール紙と称する。
【0007】
従来、これらのロール紙には、所定の長さ毎であれば手で簡単に引きちぎるようにミシン目が施されていた。ミシン目が施されたロール紙は、ミシン目が施された位置以外の任意の位置では切断しにくいといった問題がある。これに対し、切断装置を備えるロール紙ホルダを用いることでロール紙を任意の位置で切断することも行われている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載されたロール紙ホルダーを使用することで、ミシン目が施されていないロール紙であっても任意の長さで切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018- 87030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたロール紙ホルダーを用いるには、軸材にロール紙を通してロール紙ホルダーにセットする手間がかかることなどもあり、最近ではロール紙ホルダーを用いなくても任意の位置で手で容易に引きちぎることが可能な手切れ性のよい紙が要求されている。また、所定の大きさに裁断された紙に対しても、手で引きちぎることで任意の大きさの小片に変更したいといった要求が存在するが、ロール紙ホルダーでは裁断された紙は対応できない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、手切れ性のよい紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を解決する本発明の紙は、繊維長がファイン率が20%以上40%以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、適度な引裂度を備えた手切れのよい紙を提供することができる。なお、ファイン率は、メッツォ社製の繊維分析計「FS5」によって測定した0.2mm未満の成分の質量基準の割合である。
【0013】
この紙において、灰分が15質量%以上50質量%以下であってもよい。
【0014】
こうすることで、この紙の柔軟性が向上する。
【0015】
また、この紙は、ロール状にまかれた長尺状のものであってもよい。
【0016】
ロール状の紙にすることで任意の量を引き出して手でちぎって使用することができる。
【0017】
上記目的を解決する本発明の紙製造方法は、ペーパースラッジを得るペーパースラッジ入手工程と、
前記ペーパースラッジ入手工程で入手したペーパースラッジを用いて抄紙する抄紙工程とを備えたことを特徴とする。
【0018】
主に産業廃棄物として処理されるペーパースラッジを紙の材料として用いることで、産業廃棄物を削減することができる。しかも、産業廃棄物として処理されるものを材料として用いるので、紙を安価に製造できる。その上、ペーパースラッジは、長さが0.2mm未満の成分を多く含むので、手切れ性のよい紙を製造することができる。
【0019】
ここで、前記抄紙工程は、ペーパースラッジから得られた固形分を全固形分における40質量%以上100質量%以下含んだ材料を用いて抄紙する工程であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、手切れ性のよい紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に相当する紙の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、ロール状に巻かれた紙とその紙の製造方法に本発明を適用した例を用いて説明する。
【0023】
本実施形態の紙は、ロール状に巻かれた、いわゆるロール紙である。紙の利用者は、そのロール紙から任意の長さを引き出して手で引きちぎることで、所望の量の紙を使用することができる。
【0024】
ロール紙を構成する紙は、セルロース繊維をベースにして無機填顔料(灰分)と紙力剤などの薬品が加えられた原材料によって作製されたものである。このセルロース繊維としては、各種木材パルプ(機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ)や非木材繊維が使用できる。無機填顔料としては、カオリン、二酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化鉄、カオリンクレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。また、薬品としては、ポリアクリルアマイドを挙げることができるが、これに限られず、メラミンホルムアルデヒド系、尿素ホルムアルデヒド系、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤などの紙力剤、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミ等の無機凝結剤や有機凝結剤などの凝結剤、アルミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどのpH調整剤を使用していてもよい。紙には、PAM(ポリアクリルアマイド)系の薬品またはPAE(ポリアミドエピクロロヒドリン)系の薬品に由来する窒素が1600mg/kg以上5000mg/kg以下含まれていることが好ましい。窒素を1600mg/kg以上有することで、抄紙工程において紙が断裂してしまうことを防止することができる。また、窒素を5000mg/kg以下に抑制することで、紙が高価になってしまうことを抑制できる。加えて、PAEのような湿潤紙力剤が含んでいることより、適度な吸水性や耐水性も付与されている。これにより、この紙を、工業用ウエス、紙テープおよびボーガスペーパーの他、水気のあるもの、例えば花、青果用包材及びその基材にも使用することができる。
【0025】
これらのセルロース繊維、無機填顔料および薬品を含む原材料として、紙製造工程において廃棄物として生成されてしまうペーパースラッジが利用できる。ペーパースラッジは、セルロース繊維と、紙製造工程において使用される無機物とが主成分であり、それにPAEのような湿潤紙力剤などの薬品を含んだものである。このペーパースラッジは、紙製造工程上の水分を含み、コロイド状で脱水性、濾過性が劣悪であり、流動性、粘着性が強く、特有の悪臭があり、取り扱い、処分が極めて困難であった。このため、通常は産業廃棄物として費用をかけて処分していた。このペーパースラッジの活用方法として、水分含有量を減らして、焼却可能とした上で焼却するサーマルリサイクルや、焼却した際に得られるスラッジ灰を、植物を育てるための土壌に混ぜて使用されたり、セメントの原料として使用する方法が取られるようになってきた。しかし、ペーパースラッジの主成分である繊維は焼却されてしまうので、直接的な材料リサイクルとは言い難いものであった。また、ペーパースラッジの一部は、産業廃棄物として埋め立てされている。本実施形態では、このペーパースラッジを利用して紙を再生している。ペーパースラッジに多く含まれる微細なセルロース繊維を用いて作成した紙は、例えば、ボーガスペーパーのように紙質が問われず、手切れ性が要求される用途に適している。そして、本実施形態では、ペーパースラッジを本来の目的物である紙として再生しているので、サーマルリサイクルなどと比較して、循環型社会の形成およびCO2の削減に、より大きく寄与することができて好ましい。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に相当する紙の製造工程を示すフローチャートである。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の紙の製造工程は、まず、原木からえられた木材パルプや非木材パルプなどを用いて紙を製造する際や古紙から得られたパルプを用いて紙を製造する際に生成されるペーパースラッジを入手する(ステップS11)。このステップS11は、ペーパースラッジ入手工程の一例に相当する。ペーパースラッジは、ワイヤーの隙間から脱落した白水やチェストに残った残渣を脱水することで得られる。ペーパースラッジは、脱水しても50質量%程度の水分を含んでいる。このペーパースラッジには、ワイヤーの隙間から脱落した繊維長が0.2mm未満の微細なセルロース繊維が多く含まれている。また、無機填顔料もワイヤーの隙間から脱落しやすい。このため、白水を入手した際に製造されていた紙の種類にもよるが、ペーパースラッジには無機填顔料も多く含まれている。さらに、脱落しやすい微細なセルロース繊維にはPAMやPAEなどの薬品が付着しがちであるため、ペーパースラッジにはこれらの薬品も多く含まれている。
【0028】
次に、入手したペーパースラッジに、必要に応じて無機填顔料、薬品またはパルプのうち一つまたは複数を加え、さらに水を加えて調成することで紙の原料となるスラリーを作製する(ステップS12)。そして、そのスラリーを抄紙機を用いて抄紙する(ステップS13)。上述したようにペーパースラッジにはPAMやPAEなどの薬品が多く含まれているので、抄紙の際にフロックを形成してワイヤーから脱落することが抑制される。このステップS13は、抄紙工程の一例に相当する。最後に抄紙された紙をロール状に巻き取る(ステップS14)ことで紙の製造が完了する。
【0029】
製造された紙には、繊維長が0.2mm未満のセルロース繊維等が多く存在するので、適度な引裂度を備えた手切れのよい紙になる。特に、ファイン率が20%以上40%以下になるように原料を調成することで、手切りして使用する紙としての手切れ性と紙の生産性とのバランスがよい紙になる。ファイン率は、長さが0.2mm未満の成分の質量基準の割合である。このファイン率は、メッツォ社製の繊維分析計「FS5」によって測定することができる。なお、「FS5」は0.01mmを測定限界としているため、より正確には、ファイン率は、長さが0.01mm以上、0.2mm未満の成分の割合といえる。この長さが0.01mm以上、0.2mm未満の成分は、主に微細なセルロース繊維で構成されているが、長径が0.01mmを超える填料を含んでいる場合もある。
また、灰分が多いので、紙の柔軟性が比較的高い紙になる。特にボーガスペーパーとして利用する紙を作製する場合は、紙の灰分が15質量%以上50質量%以下になるように原料を調成することで、梱包箱や梱包袋に詰め込む作業がしやすく、クッション性も適度にある紙に仕上げることができる。
【0030】
なお、以上の説明では、ロール紙を例にあげて説明したが、紙は、任意の大きさに切断された、いわゆる枚葉紙であってもよい。また、ペーパースラッジを主な材料として用いる例で説明したが、パルプを濾過してファイン率の高い原料を入手し、その原料を用いて抄紙してもよい。
【実施例0031】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例に記載した物性の測定方法を以下に示す。
【0032】
1)米坪
JIS P8124記載の方法にて測定した。単位はg/mである。
【0033】
2)厚さおよび密度
JIS P8118記載の方法にて測定した。厚さの単位はmmであり、密度の単位はg/cmである。
【0034】
3)引張強度
JIS P8113記載の方法にて測定した。単位はkN/mである。
【0035】
4)灰分
JIS P8251記載の方法にて測定した。単位は質量%である。
【0036】
5)ファイン率
ファイン率は、メッツォ社製の繊維分析計「FS5」によって測定した。単位は%である。
【0037】
6)引裂度
JIS P8116記載の方法にて測定した。引裂度の単位はmNである。この値が低いほど手切れ性がよく、手で容易にちぎることができる。
【0038】
7)柔軟性
250mm×250mmの紙を用いて官能試験にて測定した。測定は、柔らか過ぎる例として市販のクレープ紙、硬すぎる例として市販のボーガスペーパーを用意して各例の紙と比較し、測定結果は、クレープ紙程度の柔軟性が3、市販のボーガスペーパー程度の柔軟性が1、それらの中間を2とした。
【0039】
以下の実施例1~6および比較例1では、ファイン率が40%を超えていると、紙粉が舞い散ってしまい、用途に関わらず紙としての特性に問題があるため、以下に記載する実施例1~6および比較例1では、ファイン率が40%以下になるように紙を作製した。
【0040】
同様に、灰分が紙成分中の50質量%を超えていると、紙粉が舞い散ってしまい、用途に関わらず紙としての特性に問題があるため、灰分が紙成分中の50質量%以下になるように紙を作製した。
【0041】
(実施例1)
ファイン率が45%、無機填顔料が固形分(全繊維成分+無機填顔料)における58質量%、水分50質量%のペーパースラッジ50.0gに水950.0gを加えて固形分を2.5質量%に希釈した後、離解機で5分間離解する。さらに9870gの水を加え固形分を0.23質量%まで希釈したスラリーから固形分量0.95gになるように413gを採取し、三菱ケミカル社製凝集剤ダイヤフロック(登録商標)KP-8040を600mg/kg添加し攪拌する。その後、角型手抄き機を用いて湿紙を作製し、鏡面板と濾紙で挟み、プレス機を用いてプレス圧3kg/cmで3分間搾水する。これにより得られたシートを風乾で1時間乾燥させた後、シリンダードライヤーを用いて130~140℃で2分間乾燥させ実施例1の紙を得た。この紙の米坪は56.0g/mであった。
【0042】
(実施例2)
ファイン率が45%、無機填顔料が固形分における58質量%、水分50質量%のペーパースラッジ45.0gに、JIS8121―2に従う方法で測定した叩解度が400mlのLBKP2.5gと水952.5gを加えて固形分を2.5質量%に希釈した後、離解機で5分間離解する。さらに9870gの水を加え固形分を0.23質量%まで希釈したスラリーから固形分量0.95gになるように413gを採取し、三菱ケミカル社製凝集剤ダイヤフロック(登録商標)KP-8040を600mg/kg添加し攪拌する。その後、実施例1と同様に搾水と乾燥を行い実施例2の紙を得た。この紙の米坪は55.0g/mであった。なお、LBKPは、広葉樹晒しクラフトパルプの略であり、本実施例では広葉樹としてユーカリを用いた。
【0043】
(実施例3)
ファイン率が45%、無機填顔料が固形分における58質量%、水分50質量%のペーパースラッジ40.0gにJIS8121―2に従う方法で測定した叩解度が400mlのLBKP5.0gと水955.0gを加えて固形分を2.5質量%に希釈した後、離解機で5分間離解する。さらに9870gの水を加え固形分を0.23質量%まで希釈したスラリーから固形分量0.95gになるように413gを採取し、三菱ケミカル社製凝集剤ダイヤフロック(登録商標)KP-8040を600mg/kg添加し攪拌する。その後、実施例1と同様に搾水と乾燥を行い実施例3の紙を得た。この紙の米坪は55.5g/mであった。
【0044】
(実施例4)
ファイン率が45%、無機填顔料が固形分における58質量%、水分50質量%のペーパースラッジ30.0gにJIS8121―2に従う方法で測定した叩解度が400mlのLBKP10.0gと水960.0gを加えて固形分を2.5質量%に希釈した後、離解機で5分間離解する。さらに9870gの水を加え固形分を0.23質量%まで希釈したスラリーから固形分量0.95gになるように413gを採取し、三菱ケミカル社製凝集剤ダイヤフロック(登録商標)KP-8040を600mg/kg添加し攪拌する。その後、実施例1と同様に搾水と乾燥を行い実施例4の紙を得た。この紙の米坪は55.8g/mであった。
【0045】
(実施例5)
ファイン率が45%、無機填顔料が固形分における58質量%、水分50質量%のペーパースラッジ25.0gにJIS8121―2に従う方法で測定した叩解度が400mlのLBKP12.5gと水962.5gを加えて固形分を2.5質量%に希釈した後、離解機で5分間離解する。さらに9870gの水を加え固形分を0.23質量%まで希釈したスラリーから固形分量0.95gになるように413gを採取し、三菱ケミカル社製凝集剤ダイヤフロック(登録商標)KP-8040を600mg/kg添加し攪拌する。その後、実施例1と同様に搾水と乾燥を行い実施例5の紙を得た。この紙の米坪は55.1g/mであった。
【0046】
(実施例6)
ファイン率が45%、無機填顔料が固形分における58質量%、水分50質量%のペーパースラッジ20.0gにJIS8121―2に従う方法で測定した叩解度が400mlのLBKP15.0gと水965.0gを加えて固形分を2.5質量%に希釈した後、離解機で5分間離解する。さらに9870gの水を加え固形分を0.23質量%まで希釈したスラリーから固形分量0.95gになるように413gを採取し、三菱ケミカル社製凝集剤ダイヤフロック(登録商標)KP-8040を600mg/kg添加し攪拌する。その後、実施例1と同様に搾水と乾燥を行い実施例6の紙を得た。この紙の米坪は55.2g/mであった。
【0047】
(比較例1)
ファイン率が45%、無機填顔料が固形分における58質量%、水分50質量%のペーパースラッジ10.0gにJIS8121―2に従う方法で測定した叩解度が400mlのLBKP20.0gと水970.0gを加えて固形分を2.5質量%に希釈した後、離解機で5分間離解する。さらに9870gの水を加え固形分を0.23質量%まで希釈したスラリーから固形分量0.95gになるように413gを採取し、三菱ケミカル社製凝集剤ダイヤフロック(登録商標)KP-8040を600mg/kg添加し攪拌する。その後、実施例1と同様に搾水と乾燥を行い比較例1の紙を得た。この紙の米坪は56.0g/mであった。
【0048】
(参考例1)
市販のA社製ボーガスペーパーを参考例1とした。
【0049】
(参考例2)
市販のB社製ボーガスペーパーを参考例2とした。
【0050】
作製した紙(実施例1~6,比較例1)の特性を評価した結果を表1に示し、市販品のボーガスペーパー(参考例1~2)の特性を評価した結果を表2に示す。なお、表1における「スラッジ」とは、ペーパースラッジに含まれる固形分を指す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】

{評価}
(手切れ性)
引裂度が低い方が手切れ性は良好になる。紙を手で容易に引きちぎることができる引裂度は、245mN以下である。その一方、引裂度が低すぎると紙の製造工程中や紙の使用者が意図しないときに、紙の断裂が生じてしまうため、引裂度は、147mN以上245mN以下が最も好ましい。
【0053】
手切れ性は、ファイン率が高いほど良好になる傾向がある。ファイン率が20%以上である実施例1~6の紙は、引裂度が167mN以上245mN以下であり、最も好ましい範囲にある。また、実施例1~6の紙は、ペーパースラッジから得られた固形分を材料における全固形分に対して40質量%以上100質量%以下含んだ材料を用いて抄紙しているので、ペーパースラッジの利用率が高く循環型社会の形成への寄与率も高い。一方、ファイン率が15%である比較例1の紙は、引裂度が、294mNと高いため、手切れ性がよくない。また、比較例1の紙は、ペーパースラッジから得られた固形分を材料における全固形分に対して20質量%しか含んでいないので循環型社会の形成への寄与率も高くない。また、参考例1~2の市販のボーガスペーパーは、引裂度が、274mNおよび353mNと高いため、手切れ性がよくない。
【0054】
(柔軟性)
特にボーガスペーパーとして使用される紙は、柔らかい方が梱包箱や梱包袋に詰め込む作業がしやすいが、柔らか過ぎるとクッション性が低くなりすぎて緩衝材として作用し難くなるため、適度な柔軟性が求められている。現在市販されているボーガスペーパーは、やや硬めであり、より柔らかな紙が要求されている。このため、市販のボーガスペーパーと、柔らかすぎて緩衝材として不向きなクレープ紙の間を適した柔軟性として官能試験を行った。
【0055】
柔軟性は、灰分が多いと高まる(柔らかくなる)傾向がある。実施例1~6の紙の柔軟性は、ボーガスペーパーとして好ましい範囲内にある。一方、比較例1の紙と参考例1~2の市販のボーガスペーパーは、柔軟性が低く硬いため、梱包箱や梱包袋に梱包箱や梱包袋に詰め込む作業がしにくい。
図1