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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078856
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220518BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220518BHJP
   C08F 263/04 20060101ALI20220518BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220518BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20220518BHJP
   C09D 101/08 20060101ALI20220518BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20220518BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F265/06
C08F263/04
C09D4/02
C09D133/04
C09D101/08
C09D127/06
E04F13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189806
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山澤 英人
【テーマコード(参考)】
2E110
4J026
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
2E110AA48
2E110AA49
2E110AA65
2E110AB04
2E110AB05
2E110BA02
2E110BA03
2E110BB04
2E110GA33W
2E110GB44W
2E110GB46W
4J026AA02
4J026AA04
4J026AA25
4J026AA38
4J026AA44
4J026AA45
4J026AC09
4J026AC33
4J026AC34
4J026BA27
4J026BA50
4J026BB02
4J026BB03
4J026BB04
4J026BB08
4J026DA03
4J026DA04
4J026DA07
4J026DA12
4J026DB06
4J026DB12
4J026DB32
4J038BA041
4J038CD041
4J038CG141
4J038FA111
4J038NA05
4J038NA11
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BB222
4J127BD172
4J127BD411
4J127CB141
4J127DA38
4J127DA44
4J127DA45
4J127DA46
4J127FA07
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】本発明は、塗装作業性が良好な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、耐汚染性、耐衝撃性及び引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を含む積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】下記成分(A)、下記成分(B)及び1種以上の下記成分(C)を含有し、前記成分(A)~(C)の合計100質量%に対して、前記成分(A)を65質量%~85質量%含む硬化性樹脂組成物:
成分(A):炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレート
成分(B):数平均分子量が3,000~18,000であるウレタン(メタ)アクリレート
成分(C):前記成分(B)以外の重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)及び1種以上の下記成分(C)を含有し、前記成分(A)~(C)の合計100質量%に対して、前記成分(A)を65質量%~85質量%含む硬化性樹脂組成物:
成分(A):炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレート
成分(B):数平均分子量が3,000~18,000であるウレタン(メタ)アクリレート
成分(C):前記成分(B)以外の重合体。
【請求項2】
前記成分(A)~(C)の合計100質量%に対して、前記成分(B)を1質量%~15質量%含む請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(A)として、メチルメタクリレートを含有し、前記メチルメタクリレートの含有量が、前記成分(A)の合計100質量%に対して、60質量%~100質量%である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(C)が、(メタ)アクリル系重合体、セルロースエステル系樹脂及び塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂から選択される1種以上の重合体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(C)として、(メタ)アクリル系重合体とセルロースエステル系樹脂とを含む請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
B型粘度計により測定した23℃における粘度が75~350mPa・sである請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を含む積層体。
【請求項8】
前記硬化物は、JIS K 6251:2010に準拠し、引張速度200mm/minで測定した23℃における切断時引張強さが、40N/mm以上であり、切断時伸びが5%以上である請求項7に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及び前記硬化性樹脂組成物の硬化物を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系の硬化性樹脂組成物は、低温硬化性、耐候性及び耐薬品性に優れることから、床面、壁面又は道路の舗装面等に塗布され、硬化されて、被覆材として用いられてきた。例えば、特許文献1には、アクリル系シラップと固体状ベンゾイルパーオキサイドを含有する硬化剤からなる低温硬化性及び耐黄変性に優れた硬化物が得られる土木建築用常温硬化型液状組成物が記載されている。また、特許文献2には、速硬化性に優れ、一度に厚塗りが可能であり、施工性が良好で、ゴム弾性や高伸張性、高復元性等が充分な軟質な樹脂モルタル組成物及び該樹脂モルタル組成物の硬化物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-253076号公報
【特許文献2】特開2004-083845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の土木建築用常温硬化型液状組成物を硬化して得られる硬化物は、耐衝撃性や引張破断伸度が十分ではない為、工具等を落下させた際に、硬化物が割れることがあり、衝撃性や引張破断伸度を改善する余地が認められた。また、特許文献2に記載の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、引張破壊強度が不十分であり、改善の余地が認められた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、塗装作業性が良好な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、耐汚染性、耐衝撃性及び引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[8]を要旨とする。
[1]下記成分(A)、下記成分(B)及び1種以上の下記成分(C)を含有し、前記成分(A)~(C)の合計100質量%に対して、前記成分(A)を65質量%~85質量%含む硬化性樹脂組成物:
成分(A):炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレート
成分(B):数平均分子量が3,000~18,000であるウレタン(メタ)アクリレート
成分(C):前記成分(B)以外の重合体。
[2]前記成分(A)~(C)の合計100質量%に対して、前記成分(B)を1質量%~15質量%含む[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]前記成分(A)として、メチルメタクリレートを含有し、前記メチルメタクリレートの含有量が、前記成分(A)の合計100質量%に対して、60質量%~100質量%である[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]前記成分(C)が、(メタ)アクリル系重合体、セルロースエステル系樹脂及び塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂から選択される1種以上の重合体である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[5]前記成分(C)として、(メタ)アクリル系重合体とセルロースエステル系樹脂とを含む[4]に記載の硬化性樹脂組成物。
[6]B型粘度計により測定した23℃における粘度が75~350mPa・sである[1]~[5]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0007】
[7][1]~[6]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を含む積層体。
[8]前記硬化物は、JIS K 6251:2010に準拠し、引張速度200mm/minで測定した23℃における切断時引張強さが、40N/mm以上であり、切断時伸びが5%以上である[7]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗装作業性が良好な硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、耐汚染性、耐衝撃性及び引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を含む積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲に亘って適用される。
「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
<硬化性樹脂組成物>
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、下記成分(A)、下記成分(B)及び1種以上の下記成分(C)を含有し、前記成分(A)~(C)の合計100質量%に対して、前記成分(A)を65質量%~85質量%含有する:
成分(A):炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレート
成分(B):数平均分子量が3,000~18,000であるウレタン(メタ)アクリレート
成分(C):前記成分(B)以外の重合体。
以下、本実施形態に用いる各成分について説明する。
【0011】
(成分(A):炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレート)
炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を一つのみ有する単官能の(メタ)アクリレートである。単官能の(メタ)アクリレート(A)を配合することで、硬化性樹脂組成物の硬化物の硬化性、耐衝撃性、引張破壊強度、引張破断伸度、耐候性、耐薬品性、耐汚染性及び耐磨耗性等の各種物性を制御することが可能となる。
【0012】
炭素数1以上6以下のアルキル基を有する単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐状のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環状のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
成分(A)としては、前述した中でも、粘度を低減し、耐候性、耐薬品性、引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を得られる点から、メチルメタクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、メチルメタクリレートを含むことがより好ましい。
【0014】
(成分(B):数平均分子量が3,000~18,000であるウレタン(メタ)アクリレート)
数平均分子量が3,000~18,000であるウレタン(メタ)アクリレートを配合することで、硬化性樹脂組成物の粘度調整を行うことができ、さらに硬化時間を短縮させることができる。また、成分(B)を配合することで、耐衝撃性及び引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
【0015】
数平均分子量が3,000~18,000であるウレタン(メタ)アクリレートはオリゴマーであり、(メタ)アクリロイル基と複数のウレタン結合とを有する多官能の(メタ)アクリレートである。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基(-NCO)を有するウレタンオリゴマーと、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0016】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0017】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、ヒドロキシフェニル基を2つ有する化合物と、アルキレンオキサイドとの付加反応生成物が挙げられる。ヒドロキシフェニル基を2つ有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0018】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多塩基酸との反応で得られるポリエステルポリオールが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、メチルペンタンジオール等が挙げられる。多塩基酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸等が挙げられる。
【0019】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、アルキレングリコールとラクトンとから得られるポリラクトンジオールが挙げられる。
【0020】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、ジオールと、カーボネート化剤との反応で得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。ジオールとしては、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。カーボネート化剤としては、ホスゲン、ジメチルカーボネート等が挙げられる。
【0021】
前記ポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート;イソシアネートと、水と、トリメチロールプロパン等とのアダクト化合物;イソシアネートの三量体環化化合物が挙げられる。
前記イソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられる水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造において、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基以外のビニル基を有する化合物(アリル基を有するアルコール等)とを併用してもよい。この場合、前記ウレタン(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基に加えて、水酸基及び(メタ)アクリロイル基以外のビニル基を有する化合物由来のビニル基を有する。
【0025】
前記アリル基を有するアルコールとしては、例えば、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが挙げられる。
【0026】
成分(B)の数平均分子量は、3,000~18,000である。成分(B)の数平均分子量が3,000未満であると、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐衝撃性及び引張破断伸度が不十分となる。また、成分(B)の数平均分子量が18,000を超えると、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、硬化物の引張破壊強度が劣る傾向にある。粘度調整、硬化時間短縮、耐衝撃性及び引張破壊強度と引張破断伸度のバランスの点から、成分(B)の数平均分子量は、4,500~15,000が好ましい。
なお、成分(B)の数平均分子量は、樹脂を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0027】
(成分(C):前記成分(B)以外の重合体)
成分(C)は、単官能の(メタ)アクリレート(A)に溶解可能であり、かつガラス転移温度(以下、「Tg」と記す)が20~155℃である重合体であることが好ましい。成分(C)を含有することにより、硬化性樹脂組成物の粘度及び硬化性が向上する。
【0028】
成分(C)としては、(メタ)アクリル系重合体、セルロースエステル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂等が挙げられる。成分(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化性樹脂組成物の粘度及び硬化性の点から、成分(C)としては、(メタ)アクリル系重合体、セルロースエステル系樹脂が好ましく、成分(C)として、(メタ)アクリル系重合体とセルロースエステル系樹脂とを含むことがより好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体である。(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリレート(共)重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体、重合性二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体が挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル酸(共)重合体は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体である。(メタ)アクリル酸(共)重合体としては、例えば、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と他の単量体(ただし、(メタ)アクリレートを除く)との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基を有するモノマーが挙げられる。他の単量体を用いる場合、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(メタ)アクリレート(共)重合体は、(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体である。(メタ)アクリレート(共)重合体としては、例えば、1種以上の(メタ)アクリレートのみを重合した(共)重合体、1種以上の(メタ)アクリレートと他の単量体(ただし、(メタ)アクリル酸を除く)との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基を有するモノマーが挙げられる。他の単量体を用いる場合、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(メタ)アクリレートとしては、前記成分(A)及び後述する成分(A)以外の単官能の(メタ)アクリレートの説明において例示する単官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体は、前記(メタ)アクリル酸に由来する構成単位と前記(メタ)アクリレートに由来する構成単位とを有する共重合体である。
【0034】
重合性二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を有し、かつ重合性二重結合を有する単独重合体又は共重合体である。
【0035】
セルロースエステル系樹脂としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
また、ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート、アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース、アセチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルヒドロキシプロピルセルロースを挙げることができる。
セルロースエステル系樹脂としては、前述した中でも、粘度を低減し、引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を得られる点から、セルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。
【0036】
塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂は、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合した共重合樹脂である。引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れた硬化性樹脂組成物の硬化物が得られる点から、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、10~50質量%であることが好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、50~90質量%であることが好ましい。
【0037】
(還元剤及び硬化剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、レドックス系重合開始剤から発生するラジカルによって、重合反応が進行し、硬化する。レドックス系重合開始剤は、還元剤と硬化剤とを併用した重合開始剤である。レドックス系重合開始剤に用いられる還元剤と硬化剤の組み合わせの例として、例えば、下記の(i)~(iv)が挙げられる。
(i)還元剤:芳香族3級アミン類と、硬化剤:ジベンゾイルパーオキサイド(過酸化ベンゾイル)との組み合わせ。
芳香族3級アミン類としては、例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N-(2-ヒドロキシエチル)N-メチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン;N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン又はN,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
芳香族3級アミン類は、p(パラ)体に限定されず、o(オルト)体、m(メタ)体でもよい。
【0038】
(ii)還元剤:金属石鹸類と、硬化剤:ハイドロパーオキサイドとの組み合わせ。
金属石鹸類としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸ニッケル、コバルトアセチルアセトネート、亜鉛アセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネートが挙げられる。
【0039】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-アミルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0040】
(iii)還元剤:チオ尿素化合物と、硬化剤:ハイドロパーオキサイドとの組み合わせ。
チオ尿素化合物としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジプロピルチオ尿素、N,N’-ジ-n-ブチルチオ尿素、N,N’-ジラウリルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、1-アセチル-2-チオ尿素、1-ベンゾイル-2-チオ尿素が挙げられる。
ハイドロパーオキサイドとしては、前記(ii)に記載のハイドロパーオキサイドと同じ化合物を使用することができる。
【0041】
(iv)還元剤:チオ尿素化合物と、硬化剤:モノカーボネート型過酸化物との組み合わせ。
チオ尿素化合物としては、前記(ii)に記載のチオ尿素化合物と同じ化合物を使用することができる。
モノカーボネート型過酸化物としては、例えば、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサンが挙げられる。
【0042】
還元剤及び硬化剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤と硬化剤との組み合わせとしては、アクリル樹脂の硬化時間を短くして生産性が向上する点から、(i)の組み合わせが好ましい。(i)の組み合わせにおける芳香族3級アミン類としては、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが好ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前述した成分(A)、成分(B)、成分(C)、還元剤及び硬化剤以外の成分(以下、「他の成分」とも記す)をさらに含んでいてもよい。
【0044】
他の成分としては、例えば、成分(A)以外の単官能の(メタ)アクリレート、成分(B)以外の多官能の(メタ)アクリレート、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー、パラフィンワックス、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、揺変剤、消泡剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、各種添加剤、硬化剤以外のラジカル重合開始剤(熱重合開始剤、光重合開始剤等)が挙げられる。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性組成物の粘度を調整する目的で、成分(A)以外の単官能の(メタ)アクリレートを加えてもよい。
成分(A)以外の単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
また、成分(A)以外の単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環骨格を有する(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトシキエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等のアルキル基末端(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0047】
また、成分(A)以外の単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性組成物の硬化性を向上させる目的で、成分(B)以外の多官能の(メタ)アクリレートを加えてもよい。
【0049】
成分(B)以外の多官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0050】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0051】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0052】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0054】
前記エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分との反応物である。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、固形状のもの、液状のもの等、様々な形状のものを用いることができる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に用いられる(メタ)アクリル酸を含む単量体成分には、必要に応じて(メタ)アクリル酸以外の他の単量体が含まれていてもよい。他の単量体としては、(メタ)アクリル酸と共重合可能であれば特に制限されない。
【0056】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基とポリエステル骨格とを有する化合物である。ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを反応させて得られたポリエステルと、その末端水酸基又はカルボキシ基とエステル結合が可能な官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて製造することができる。
【0057】
前記ポリエステルの製造に用いられる多塩基酸としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸等の二塩基酸が挙げられる。多塩基酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記ポリエステルの製造に用いられる多価アルコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の2価アルコールが挙げられる。多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化時間をより短縮する目的で、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを加えてもよい。末端にイソシアネート基を有するプレポリマーは、反応性が高く、空気中の水分や硬化性樹脂組成物中の単量体成分と反応しやすい。したがって、硬化性樹脂組成物がイソシアネート基を有するプレポリマーを含有する場合は、硬化時間をより短縮できる。末端にイソシアネート基を有するプレポリマーとしては、イソシアネートプレポリマー、及びイソシアネートプレポリマーと2個以上の活性水素基を有するポリオール又はポリアミンとから合成されるプレポリマーが挙げられる。
【0060】
イソシアネートプレポリマーとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等をプレポリマー化したポリイソシアヌレートが挙げられる。イソシアネートプレポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
2個以上の活性水素基を有するポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール類;ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレンプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(カプロラクトン)ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリ(ブチレンカーボネート)ポリオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ポリオール、ポリ(エチレンアジペート)ジオール、ポリ(プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ(ヘキサンアジペート)ジオール等の高分子ポリオールが挙げられる。2個以上の活性水素基を有するポリオールは、通常、平均分子量が400~8,000で、平均官能基数が2~6であるものが好ましい。2個以上の活性水素基を有するポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
また、2個以上の活性水素基を有するポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、エチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ポリ(オキシアルキレン)ポリアミン等の脂肪族ポリアミン;4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0063】
末端にイソシアネート基を有するプレポリマーは、イソシアネート基(-NCO)が、ポリオールやポリアミン等の活性水素基を有する化合物の活性水素基(-OH,-NH等)に対し、例えば、NCO/Hの当量比が、1.2~10となる割合で、反応温度約40~130℃において4~10時間反応させて製造することができる。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物には、酸素による硬化阻害を抑制するために、パラフィンワックスを加えてもよい。
パラフィンワックスの融点は、40~80℃が好ましい。融点が40℃以上であれば、硬化性樹脂組成物を硬化させる際に十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。融点が80℃以下であれば、硬化性樹脂組成物を調製する際、パラフィンワックスの溶解性が良好となる。
【0065】
パラフィンワックスは、融点の異なる2種以上を併用することが好ましい。融点の異なるパラフィンワックスを併用することによって、温度が変わったときであっても、十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。パラフィンワックスを併用する際には、融点の差が5~20℃程度のパラフィンワックスを併用することが好ましい。
【0066】
パラフィンワックスとしては、表面硬化性を向上させる点で、有機溶剤に分散したワックスを用いてもよい。ワックスが有機溶剤に分散状態にあり、分散状態のワックスの粒子径が0.1~50μmに微粒子化されていることにより、空気遮断作用を効果的に発現する。分散状態のパラフィンワックスは市販されており、市販品のパラフィンワックスをそのまま本発明の硬化性樹脂組成物に添加することができる。
【0067】
パラフィンワックスの具体的な製品名としては、例えば、パラフィン115(商品名、カタログ記載の融点:47℃、日本精蝋(株)製)、パラフィン130(商品名、カタログ記載の融点:55℃、日本精蝋(株)製)、パラフィン150(商品名、カタログ記載の融点:66℃、日本精蝋(株)製)が挙げられる。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化時の収縮の低減を図るために可塑剤を加えてもよい。可塑剤を加えることで、成分(A)と成分(B)との配合割合が低くなり、硬化性樹脂組成物の硬化時の収縮を低減することができる。
【0069】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル等のフタル酸エステル;ジ-2-エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル;ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル;ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソペンチルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキサンジカルボン酸エステル;塩素化パラフィン等のパラフィン(ただし、前記パラフィンワックスを除く)が挙げられる。
可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化物の酸化劣化を防止するために、酸化防止剤を加えてもよい。酸化防止剤としては、例えば、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト等のリン系酸化防止剤;ジヘキシルスルフィド、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化物の光劣化を抑制するために、紫外線吸収剤を加えてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-オクチルオキシベンゾフェノン等の2-ヒドロキシベンゾフェノンの誘導体;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、又はこれらのハロゲン化物;フェニルサリシレート、p-t-ブチルフェニルサリシレート等のフェニルサリシレート類が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物には、揺変剤を加えてもよい。揺変剤としては、例えば、ウレタンウレア系揺変剤、脂肪酸アマイド、有機ベントナイト等の有機系揺変剤;微粒子シリカ等の無機系揺変剤が挙げられる。揺変剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性樹脂組成物中の気泡を取り除くために、消泡剤を加えてもよい。消泡剤としては、例えば、アクリル系重合物を溶剤に溶解させたアクリル系消泡剤、ビニル系重合物を溶剤に溶解させたビニル系消泡剤が挙げられる。
【0074】
消泡剤の具体的な製品名としては、例えば、楠本化成(株)製のディスパロンシリーズである、OX-880EF、OX-881、OX-883、OX-8040、1922、1927、P-410EF、P-420、P-425、PD-7、1970、230、230HF、LF-1982;ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK-052、BYK-1752が挙げられる。消泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
本発明の硬化性樹脂組成物には、貯蔵安定性を向上するために、重合禁止剤を加えてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールが挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物には、アスファルトやコンクリート等の基材との密着性を向上するために、シランカップリング剤を加えてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上するために、熱重合開始剤を加えてもよい。熱重合開始剤としては、公知の過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上するために、公知の光重合開始剤を加えてもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物は、成形時の硬化収縮の抑制、強度の向上、耐摩耗性等の耐久性の向上を目的として、他の成分として骨材をさらに含むことができる。
骨材としては、例えば、砂、硅砂、川砂、寒水石、エメリー、大理石、炭酸カルシウム、カオリン、ベントナイト、マイカ、タルク、炭化珪素粉、窒化珪素粉、窒化ホウ素粉、アルミナ、スラグ、ガラス粉末、セラミック骨材、陶器屑、着色骨材が挙げられる。前記骨材は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0079】
骨材の粒径は、硬化性樹脂組成物の硬化物の厚さにもよるが、ふるい分けによる粒径で5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。骨材の粒子径が5mm以下であれば、硬化物の柔軟性が得られやすい。骨材の粒度分布は、硬化性樹脂組成物の粘度、骨材の形状、成形する硬化物の厚さ等に起因するため、特に規定されるものではなく、適宜調整すればよい。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物は、着色のために顔料を含んでいてもよい。顔料としては、例えば、有機顔料(アゾ顔料、フタロシアニン顔料等)、無機顔料(セラミック顔料、酸化鉄、酸化チタン等)が挙げられる。顔料は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0081】
[各成分の配合量]
成分(A)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び、成分(C)の含有量の合計100質量%中、65質量%~85質量%であり、70質量%~80質量%が好ましい。成分(A)の含有量が多いほど、硬化性樹脂組成物の粘度が低くなる。また、成分(A)の含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。
【0082】
成分(A)は、メチルメタクリレートを含有することが好ましい。メチルメタクリレートの含有量は、成分(A)の含有量100質量%中、50質量%~100質量%が好ましく、60質量%~100質量%がより好ましく、70質量%~100質量%がさらに好ましい。
メチルメタクリレートの含有量が多いほど硬化性樹脂組成物の粘度が低くなる。また、メチルメタクリレートの含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物が揮発しにくくなり、塗装作業性が良好となる。
【0083】
成分(B)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び、成分(C)の含有量の合計100質量%中、1質量%~15質量%が好ましく、2質量%~13質量%がより好ましく、3質量%~10質量%がさらに好ましい。成分(B)の含有量が多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短縮させることができる。また、成分(B)の含有量が多いほど、耐衝撃性及び引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を得ることができる。成分(B)の含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物の粘度が低くなる傾向がある。
【0084】
成分(C)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び、成分(C)の含有量の合計100質量%中、10質量%~50質量%が好ましく、15質量%~30質量%がより好ましい。成分(C)の含有量が多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化時間が短縮される。また、成分(C)の含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物の粘度が低くなる傾向がある。
【0085】
還元剤の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、任意成分である成分(A)以外の単官能の(メタ)アクリレート及び成分(B)以外の多官能の(メタ)アクリレートの含有量の合計100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましく、0.3質量部~3質量部がさらに好ましい。還元剤の含有量が多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。また、還元剤の含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物のゲル化時間が長くなり、硬化性樹脂組成物の撹拌作業を行いやすくなる。
【0086】
硬化剤の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、任意成分である成分(A)以外の単官能の(メタ)アクリレート及び成分(B)以外の多官能の(メタ)アクリレートの含有量の合計100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましく、0.3質量部~3質量部がさらに好ましい。硬化剤の含有量が多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。また、硬化剤の含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物のゲル化時間が長くなり、硬化性樹脂組成物の撹拌作業を行いやすくなる。
【0087】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法としては、通常使用される撹拌機を用いて前述の各成分を混合撹拌する方法を挙げることができる。
【0088】
[硬化性樹脂組成物の粘度]
硬化性樹脂組成物の粘度は、23℃においてB型粘度計を用いた回転速度60rpmにおける測定値が10~1,000mPa・sであることが好ましく、50~500mPa・sであることがより好ましく、75~350mPa・sであることがさらに好ましく、100~300mPa・sであることが特に好ましい。硬化性樹脂組成物の粘度が上記範囲内であれば、塗工における作業性が良好となる。
【0089】
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記作製方法にて硬化性樹脂組成物から得られた試験片が、下記条件(a)を満足することが好ましい。硬化性樹脂組成物が下記条件(a)を満足することにより、耐汚染性及び耐衝撃性を両立することができる。
【0090】
(試験片の作製方法)
温度23℃、湿度50%の雰囲気下、硬化剤未配合の硬化性樹脂組成物100質量部に、硬化剤として過酸化ベンゾイル(純度50%)2部を加えて、硬化剤入り硬化性樹脂組成物を調製する。硬化剤入り硬化性樹脂組成物を型に注入し、温度23℃の雰囲気下、2時間かけて硬化させ、厚さ3mmの硬化物を得る。打ち抜き具を用いて硬化物からJIS K 6251:2010に準拠したダンベル状1号形試験片を採取する。
【0091】
(条件(a))
試験片について、JIS K 6251:2010に準拠し、引張速度200mm/minで測定した23℃における切断時引張強さが、40N/mm以上であり、切断時伸びが、5%以上である。
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して硬化物を得る方法としては、以下の方法が好ましい。すなわち、まず、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び還元剤、必要に応じて他の成分を混合して硬化剤未配合の樹脂組成物を調製する。そして、硬化反応を行う直前に、硬化剤を、硬化剤未配合の硬化性樹脂組成物に配合する方法によって重合反応を開始し、硬化物を得る。
【0093】
硬化性樹脂組成物の塗工手段としては、ローラー、金鏝、刷毛、自在ボウキ、塗装機(スプレー塗装機等)等を用いる公知の塗工方法が挙げられる。
また、施工性の点から、硬化性樹脂組成物の塗工時の温度は-30℃~60℃が好ましく、-10℃~40℃がより好ましい。
【0094】
重合時間は20分間~300分間が好ましい。重合時間が20分間以上であると、硬化性樹脂組成物の良好な塗装作業性が得られ、300分間以下であると、全体の重合時間を短くすることができる。還元剤及び硬化剤の配合量を塗工時の温度に応じて調整することで、重合時間を調整できる。
【0095】
重合反応後、養生を行うことが好ましい。養生温度は、-10℃~65℃が好ましく、10℃~60℃がより好ましく、15℃~55℃がさらに好ましい。養生温度を-10℃~65℃とすることで、硬化性樹脂組成物の重合反応が十分に進行し、硬化物の特性が良好となる。養生時間は、養生温度によって異なるが、10分間~24時間が好ましい。
【0096】
また、硬化物中の気泡を抑制するために、硬化性樹脂組成物に硬化剤を配合した後に、硬化性樹脂組成物に対して真空脱泡や振動脱泡等を実施してもよい。
【0097】
硬化性樹脂組成物の用途としては、例えば、塗料、注型材料、バインダー材、接着剤、補修材、目地材が挙げられる。
【0098】
塗料としては、例えば、下記のものが挙げられる。道路用塗料:滑り止め用塗料、排水性塗料、遮熱塗料、道路マーキング用塗料、床版防水工法用塗料等。土木建築用塗料:壁面用塗料、床用塗料、屋根用塗料、橋梁用塗料、プラント用塗料、鉄構造物用塗料、コンクリート用塗料等。家具用塗料、装飾品用塗料、電子機器用塗料、モバイル機器用塗料、家電用塗料、防水用塗料、自動車用塗料、バイク用塗料、重機用塗料、鉄道車両用塗料、船舶用塗料等。
【0099】
注型材料として用いた場合に得られる成形品としては、例えば、フィルム、シート、レンズ、光導波路、封止材が挙げられる。成形品は、例えば、発光ダイオードモジュール、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピューター、カメラ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、電子ペーパー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、プロジェクターに用いられる。成形品は、光学部材として用いることもできる。
【0100】
バインダー材としては、例えば、人工大理石、繊維強化プラスチック、点字タイル等のバインダーが挙げられる。
接着剤としては、例えば、ガラス用接着剤、樹脂用接着剤、金属用接着剤、第二世代のアクリル系接着剤(SGA)が挙げられる。
補修材としては、例えば、コンクリート用補修材、道路用補修材が挙げられる。
目地材としては、例えば、タイル用目地材、石材用目地材、コンクリート用目地材、アスファルト用目地材が挙げられる。
【0101】
これら用途のうち、本発明の硬化性樹脂組成物の用途としては、道路用塗料、土木建築用塗料、補修材、目地材等が好ましい。
【0102】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物を含む積層体であり、道路用塗料、土木建築用塗料、補修材、目地材等の土木建築用途における土木建築用積層体として好適に使用できる。
土木建築用積層体は、前記本発明の積層体であって、アスファルトやコンクリート等の床面、壁面、道路の舗装面等の被覆材料として使用できる。
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、例えば、施工面に直接形成した被覆層、施工面に下塗り層及び上塗り層の2層を形成する場合の少なくとも一方の層に用いたり、施工面に下塗り層、中塗り層及び上塗り層の3層を形成する場合の少なくとも1つの層に用いたりすることができる。特に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐汚染性、耐衝撃性及び引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れるため、上塗り層として好適に使用できる。例えば、道路の滑り止め舗装においては、骨材を配合したモルタル組成物を塗工して形成した下塗り層又は中塗り層の上に、上述した本発明の硬化性樹脂組成物を塗料として塗工し、硬化して形成した本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる上塗り層を設けることが好ましい。ここで、前記下塗り層と前記中塗り層との間及び、前記中塗り層と前記上塗り層との間のうちの少なくとも1方には、他の層が設けられていてもよい。
【実施例0103】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中、「部」は「質量部」を意味する。
【0104】
[合成例1:(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)の合成]
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置内に、135部の脱イオン水、及び分散剤として0.4部のポリビニルアルコール(ケン化度:80モル%、重合度:1700)を加えて攪拌し、ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、一旦攪拌を停止した。92.5部のメチルメタクリレート、7.5部のn-ブチルアクリレート、重合開始剤として0.2部の2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、連鎖移動剤として0.8部のn-ドデシルメルカプタン、電解質として0.1部の炭酸ナトリウムを加えて再度攪拌し、75℃に昇温して2.5時間反応させた。さらに、98℃に昇温して1.5時間保持した後、反応を終了させた。
40℃に冷却した後、得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水した後、40℃で16時間乾燥して、粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)を得た。
得られた粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)のガラス転移温度(Tg)は87℃であり、質量平均分子量は73,000であった。
【0105】
[合成例2:(メタ)アクリル系重合体(ポリマー2)の合成]
メチルメタクリレートとn-ブチルアクリレートの使用量を60部のメチルメタクリレート、40部のn-ブチルメタクリレートとした以外は合成例1と同様の操作を行うことで、粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー2)を得た。
得られた粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー2)のガラス転移温度(Tg)は65℃であり、質量平均分子量は42,000であった。
【0106】
[実施例1]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた1Lフラスコに、成分(A)として76部のメチルメタクリレートと、成分(B)として、4部の2官能ウレタンアクリレート(亜細亜工業(株)製、商品名:SUA-017、数平均分子量:6,300)と、還元剤として0.6部のN,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン(以下、「DIPT」と略す)と、他の成分として0.25部のパラフィン115(日本精蝋(株)製)、0.15部のパラフィン130(日本精蝋(株)製)、及び0.1部のパラフィン150(日本精蝋(株)製)と、0.05部の2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(以下、「BHT」と略す)とを投入した後、攪拌しながら、成分(C)として10部のポリマー1及び10部のセルロースアセテートブチレート樹脂(EASTMAN CHEMICAL製、商品名:CAB-381-0.1)を投入した。引き続き、60℃で2時間加熱して溶解した。溶解を確認後、40℃に冷却し、樹脂組成物(S-1)を得た。得られた樹脂組成物(S-1)の配合組成を表1に示す。
【0107】
[実施例2~9、比較例1~8]
表1及び表2に記載の配合組成にした以外は、樹脂組成物(S-1)の調製と同様にして樹脂組成物(S-2)~(S-17)を得た。
【0108】
表中の略号は下記の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
n-BMA:n-ブチルメタクリレート
SUA-017:数平均分子量6,300の2官能ウレタンアクリレート(商品名、亜細亜工業(株)製)
SUA-008:数平均分子量16,300の2官能ウレタンアクリレート(商品名、亜細亜工業(株)製)
ポリマー1:合成例1で製造したMMA/n-ブチルアクリレート=92.5/7.5の共重合体、質量平均分子量は73,000
ポリマー2:合成例2で製造したMMA/n-ブチルメタクリレート=60/40の共重合体、質量平均分子量は42,000
CAB-381-0.1:セルロースアセテートブチレート樹脂(商品名、EASTMAN CHEMICAL製)
ソルバインC5R:塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂(商品名、日信化学工業製)
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
THFMA:テトラヒドロフルフリルメタクリレート
RUA-012:数平均分子量1,500の2官能ウレタンアクリレート(商品名、亜細亜工業(株)製)
SUA-015:数平均分子量20,000の2官能ウレタンアクリレート(商品名、亜細亜工業(株)製)
ブレンマーPDP-400N:ポリプロピレングリコールジメタクリレート(商品名、日油(株)製)
Etercure6240:エポキシアクリレート(長興材料工業(株)製)
DIPT:N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン(日本乳化剤(株)製)
パラフィン115、パラフィン130、パラフィン150:パラフィンワックス(商品名、日本精蝋(株)製)
BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
【0109】
<評価>
実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物について、下記の方法により粘度を測定した。また、実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を用いて、下記の方法により試験片を作製し、引張試験を実施して、切断時引張強さ及び切断時伸びを測定した。測定結果及び評価結果を表1及び表2に示す。
【0110】
(粘度)
硬化性樹脂組成物の液温を23℃とし、B型粘度計を用いて回転速度60rpmの条件にて粘度を測定した。
【0111】
(引張試験)
温度23℃で、硬化剤未配合の硬化性樹脂組成物100部に、過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)CH-50L、化薬アクゾ(株)製、純度50%)2部を加えて、撹拌、混合し、硬化剤入り硬化性樹脂組成物を得た。これを型に注入し、温度23℃の雰囲気下、2時間かけて硬化させた後に硬化物を取り出して、厚さ3mmの注型板を得た。打ち抜き具を用いて、注型板から、JIS K 6251:2010に準拠したダンベル状1号形試験片を採取した。試験片について、JIS K 6251:2010に準拠し、23℃で引張試験を実施し、引張速度200mm/minにおける切断時引張強さ及び切断時伸びを測定した。
【0112】
<硬化性樹脂組成物の塗装作業性>
JIS A 5371:2016「プレキャスト無筋コンクリート製品」で規定された300mm×300mm×60mmのコンクリート平板((株)ユーコウ商会製)の一方の面をディスクグラインダーで表面研磨してレイタンスを取り除いた。研磨面の削り粉を払い落とした後、温度23℃でラジカル重合型アクリル樹脂系プライマー(商品名:XD-115、(株)菱晃製)100部に過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)CH-50L、化薬アクゾ(株)製、純度50%)2部を加えて、撹拌、混合し、0.3kg/mの塗布量となるようにローラーを用いて塗布し、硬化させて、下塗り層を形成した。
温度35℃、湿度50%の環境可変室内で、実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物と下塗り層を形成したJISモルタル板とを、温度35℃、相対湿度50%の環境可変室(3m×7m×高さ3m)内に4時間以上放置して、環境可変室の温度と同じになるように調整した。その後、実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物100部に、過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)CH-50L、化薬アクゾ(株)製、純度50%)を1.5部加え混合し、5分後に、前記環境可変室内にて下塗り層の表面に0.3kg/mの塗布量で、ウーローラーを用いて塗装したときの塗装作業性を以下の評価基準に基づき評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0113】
(評価基準)
○:硬化性樹脂組成物の糸曳及び塗工ムラが発生しない
△:硬化性樹脂組成物の糸曳が生じるが、塗工ムラは発生しない
×:硬化性樹脂組成物の糸曳及び塗工ムラが発生する
【0114】
<積層体の作製>
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を用いて、以下のとおり、積層体を作製した。
JIS A 5371:2016「プレキャスト無筋コンクリート製品」で規定された300mm×300mm×60mmのコンクリート平板((株)ユーコウ商会製)の一方の面をディスクグラインダーで表面研磨してレイタンスを取り除いた。研磨面の削り粉を払い落とした後、室内温度23℃の室内でラジカル重合型アクリル樹脂系プライマー(商品名:XD-115、(株)菱晃製)100部に過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)CH-50L、化薬アクゾ(株)製、純度50%)2部を加えて、撹拌、混合し、0.3kg/mの塗布量となるようにローラーを用いて塗布し、硬化させて、下塗り層を形成した。
【0115】
次いで、温度23℃でラジカル重合型アクリル樹脂系ベースコート(商品名:XD-3009、(株)菱晃製)100部に、骨材(商品名:アクリトーンフロアーKC-1A、(株)菱晃製)213部を混合した。得られた混合物に、過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)CH-50L、化薬アクゾ(株)製、純度50%)2部を添加して、中塗り塗料を調製した。調製した中塗り塗料を下塗り層の表面に金鏝を用いて厚み3mmとなるように塗布し、硬化させた。硬化した表面をNo.400のサンドペーパーを用いて研磨し、削り粉を払い落として、中塗り層を形成した。
中塗り層の表面に、温度23℃で、硬化剤未配合の硬化性樹脂組成物100部に、過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)CH-50L、化薬アクゾ(株)製、純度50%)2部を加えて、撹拌、混合した硬化剤入り硬化性樹脂組成物を、0.3kg/mの塗布量になるようにローラーを用いて塗布して上塗り塗膜を形成し、積層体を作製した。得られた積層体について、以下のとおり、耐汚染性及び耐衝撃性の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0116】
<耐汚染性の評価>
タイヤ据え切り試験機(インテスコ(株)製)を用いて、実施例及び比較例にて得た積層体を試験体として用いてタイヤ据え切り試験機に装着して、以下の条件で据え切り試験を行った。据え切り部におけるタイヤ痕付着状況を、以下の基準に基づいて評価した。
【0117】
(試験条件)
試験体駆動方式:試験体反復角度:±30°
反復速度:6rpm
載荷荷重:3KN
測定温度:23℃
据え切り回数:10往復
【0118】
(評価基準)
○:上塗り塗膜にタイヤ痕が残らない
△:タイヤ痕が薄く残るが消しゴムで擦ると消えた
×:上塗り塗膜にタイヤ痕がはっきりと残り、消しゴムで擦っても消えなかった
【0119】
<耐衝撃性の評価>
積層体の耐衝撃試験を、下記の方法に従って実施した。温度23℃において、積層体の上塗り塗膜の表面から鉛直方向に100cmの位置から平タガネ(刃幅:22mm、全長:200mm、重さ430g、直径38mm、(株)小山刃物製作所製)を前記上塗り塗膜の表面に落下した。目視にて上塗り塗膜の割れの発生の有無を観察して、以下の基準に基づいて耐衝撃性を評価した。試験は5回実施した。
【0120】
(評価基準)
〇:上塗り塗膜に打撃跡は残るが、上塗り塗膜の割れが残らない
△:5回中1回~2回、上塗り塗膜の割れが確認された
×:5回中3回以上、上塗り塗膜の割れが確認された
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
表1に示すように、実施例1~9に係る硬化性樹脂組成物は、塗装作業性が良好であり、その硬化物は、耐汚染性、耐衝撃性及び引張破壊強度(切断時引張強さ)と引張破断伸度(切断時伸び)のバランスに優れていた。
これに対して、比較例1及び3に係る硬化性樹脂組成物は、成分(B)を含まない為、その硬化物は、耐衝撃性及び引張破断伸度が不良であった。比較例2に係る硬化性樹脂組成物は、成分(A)の含有量が少ない為、塗装作業性が低下し、硬化物の耐汚染性は低位であった。比較例4に係る硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が大きい為、硬化物の耐汚染性及び引張破壊強度が低位であった。比較例5に係る硬化性樹脂組成物は、成分(A)の添加量が少ない為、硬化物の耐汚染性及び引張破壊強度が低位となった。比較例6に係る硬化性樹脂組成物は、成分(A)を含まない為、樹脂組成物の粘度が高くなり、かつ、硬化物の引張破壊強度と引張破断伸度のバランスが不良となり、耐衝撃性が低位であった。比較例7に係る硬化性樹脂組成物は、成分(C)を含まない為、ウレタン(メタ)アクリレート(B)の配合量が相対的に増えた結果、塗装作業性が不良となり、硬化物の耐汚染性は低位であった。比較例8に係る硬化性樹脂組成物は、成分(A)の添加量が多い為、塗装作業性が低下した。