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特開2022-78860酸素吸収用樹脂、当該樹脂を含む酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用組成物を用いた酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078860
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】酸素吸収用樹脂、当該樹脂を含む酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用組成物を用いた酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/83 20060101AFI20220518BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220518BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220518BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20220518BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220518BHJP
   C09J 167/06 20060101ALI20220518BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20220518BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220518BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220518BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C08G18/83
B32B27/30 A
B32B27/00 M
B32B27/26
B32B27/36
C09J167/06
C09J175/14
C09J11/06
C09J7/30
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189814
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591176225
【氏名又は名称】桜宮化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】太田 奈月
(72)【発明者】
【氏名】山村 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】北村 英之
(72)【発明者】
【氏名】深石 憲司
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J004
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
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3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
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3E086CA01
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3E086CA29
3E086CA35
3E086DA08
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4F100JL12D
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(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな構造を有する、接着性及び酸素吸収性を有する酸素吸収用樹脂、当該樹脂を含む酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用組成物を用いた酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルムを提供する。
【解決手段】酸素吸収性能を発現するエチレン性不飽和結合としてアクリロイル基を有する高分子である酸素吸収用樹脂であり、好ましくは、前記高分子がポリエステル樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロイル基を有する高分子である、酸素吸収用樹脂。
【請求項2】
前記高分子は、ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の酸素吸収用樹脂。
【請求項3】
ウレタン結合を有する、請求項1又は2に記載の酸素吸収用樹脂。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素吸収用樹脂を含む、酸素吸収用組成物。
【請求項6】
硬化剤を含む、請求項5に記載の酸素吸収用組成物。
【請求項7】
触媒を含む、請求項5又は6に記載の酸素吸収用組成物。
【請求項8】
飽和ポリエステルを含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の酸素吸収用組成物。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項に記載の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム。
【請求項10】
請求項5~8のいずれか1項に記載の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用接着剤。
【請求項11】
請求項10に記載の酸素吸収用接着剤を含む酸素吸収用接着剤フィルム。
【請求項12】
請求項5~8のいずれか1項に記載の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層を備える、酸素吸収用積層体。
【請求項13】
請求項10に記載の酸素吸収用接着剤からなる酸素吸収用接着剤層を備える、酸素吸収用積層体。
【請求項14】
酸素バリア層と、前記酸素吸収用組成物層と、ヒートシール層とが、この順で積層された、請求項12に記載の酸素吸収用積層体。
【請求項15】
酸素バリア層と、前記酸素吸収用接着剤層と、ヒートシール層とが、この順で積層された、請求項13に記載の酸素吸収用積層体。
【請求項16】
請求項4又は9に記載の酸素吸収用フィルム、請求項11に記載の酸素吸収用接着剤フィルム、及び請求項12~15に記載の酸素吸収用積層体からなる群より選ばれるいずれかを備える包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収用樹脂、当該樹脂を含む酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用組成物を用いた酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の内容物の品質劣化を抑制する目的で、酸素吸収性能を有する包材が広く使用されている。
【0003】
特許文献1には、炭素-炭素不飽和結合及び反応性官能基を有する酸素吸収性樹脂成分と、架橋剤とが含まれる酸素吸収性塗膜層を有し、酸素バリア層、酸素吸収性塗膜層、及びヒートシール層が、この順に積層された酸素吸収用積層体が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された酸素吸収性樹脂は、接着性を有していないため、ヒートシール層を有する積層体を形成するために、後工程により、ヒートシール剤を塗工したり、ヒートシール性フィルムをラミネートしたりする必要があった。そして、このような後工程を実施することで、酸素吸収性能が失活する場合があった。
【0005】
これに対して、特許文献2には、接着性及び酸素吸収性に優れた酸素吸収性樹脂組成物として、テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体、又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体を原料として用いた酸素吸収性ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物が提案されている。
【0006】
特許文献2に記載された酸素吸収性組成物からなる酸素吸収用接着剤層を有する酸素吸収性フィルムは、原料となるテトラヒドロフタル酸やテトラヒドロ無水フタル酸等が、酸素との非常に高い反応性を有するため、優れた酸素吸収性能を発現する。
【0007】
また、不飽和脂環構造と酸素との反応においては、樹脂の自動酸化反応による副生成物である、低分子量の分解成分の発生を抑制することができる。このため、食品包装等の分野において問題となる、匂い等の発生を抑制できるとともに、酸素吸収前後にわたって強いラミネート強度を維持することができるとされている。
【0008】
また、特許文献3には、新たな構造を有する酸素吸収性物質として、シクロヘキセン環を含むポリマーによる酸素スカベンジャー、及び当該酸素スカベンジャーを用いた容器等が提案されている。
【0009】
特許文献3に記載されたシクロヘキセン環を含む酸素スカベンジャーは、酸化後に環が断片化あるいは分裂する傾向が小さい環状アリル構造を有することから、匂い又は味に悪影響を与える酸化副生物の発生を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-268310号公報
【特許文献2】特開2014-136421号公報
【特許文献3】特表2003-521552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
酸素吸収性を有する物質については、今後も様々なニーズに対応する必要があり、更なる種類の樹脂等が要請されている。
【0012】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、引用文献1~3には記載されていない構造を有する、接着性及び酸素吸収性を有する酸素吸収用樹脂、当該樹脂を含む酸素吸収用組成物、酸素吸収用接着剤、酸素吸収用組成物を用いた酸素吸収用積層体、及び酸素吸収用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、酸素吸収性を有する物質について鋭意研究し、酸素吸収性能を発現するエチレン性不飽和結合の中でも、アクリロイル基が導入されたポリエステル樹脂は、接着性と酸素吸収性の両者を良好に示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0014】
《態様1》
アクリロイル基を有する高分子である、酸素吸収用樹脂。
《態様2》
前記高分子は、ポリエステル樹脂である、態様1に記載の酸素吸収用樹脂。
《態様3》
ウレタン結合を有する、態様1又は2に記載の酸素吸収用樹脂。
《態様4》
態様1~3のいずれか一態様に記載の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム。
《態様5》
態様1~3のいずれか一態様に記載の酸素吸収用樹脂を含む、酸素吸収用組成物。
《態様6》
硬化剤を含む、態様5に記載の酸素吸収用組成物。
《態様7》
触媒を含む、態様5又は6に記載の酸素吸収用組成物。
《態様8》
飽和ポリエステルを含む、態様5~7のいずれか一態様に記載の酸素吸収用組成物。
《態様9》
態様5~8のいずれか一態様に記載の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム。
《態様10》
態様5~8のいずれか一態様に記載の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用接着剤。
《態様11》
態様10に記載の酸素吸収用接着剤を含む酸素吸収用接着剤フィルム。
《態様12》
態様5~8のいずれか一態様に記載の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層を備える、酸素吸収用積層体。
《態様13》
態様10に記載の酸素吸収用接着剤からなる酸素吸収用接着剤層を備える、酸素吸収用積層体。
《態様14》
酸素バリア層と、前記酸素吸収用組成物層と、ヒートシール層とが、この順で積層された、態様12に記載の酸素吸収用積層体。
《態様15》
酸素バリア層と、前記酸素吸収用接着剤層と、ヒートシール層とが、この順で積層された、態様13に記載の酸素吸収用積層体。
《態様16》
態様4又は9に記載の酸素吸収用フィルム、態様11に記載の酸素吸収用接着剤フィルム、及び態様12~15に記載の酸素吸収用積層体からなる群より選ばれるいずれかを備える包装材。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸素吸収用樹脂は、酸素吸収性能を発現するエチレン性不飽和結合の中でも、アクリロイル基を有することで、より高度な酸素吸収性能を実現することができる。
【0016】
本発明の酸素吸収用樹脂は、接着性を有することから、接着層として機能することができる。このため、本発明の酸素吸収用樹脂を用いて酸素吸収性能を有する積層体を形成する際に、隣接する層と接着するための工程が必要なくなり、当該工程に起因する酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《酸素吸収用樹脂》
本発明の酸素吸収用樹脂は、アクリロイル基を有する高分子である。
【0018】
エチレン性不飽和結合である炭素-炭素不飽和結合を有する物質は、不飽和結合と酸素とが反応することで、酸素吸収性能を発現することが知られている。本発明の酸素吸収用樹脂は、酸素吸収性能を発現するエチレン性の炭素-炭素不飽和結合の中でも、アクリロイル基を有するため、酸素吸収性能を有する。
【0019】
また、アクリロイル基は、酸素吸収性以外に、接着性の機能を発現する。したがって、本発明の酸素吸収用樹脂は、接着性を有し、接着層として機能することができる。このため、本発明の酸素吸収用樹脂を用いて酸素吸収性能を有する積層体を形成する際には、隣接する層と接着するための工程が必要なくなり、当該工程に起因する酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【0020】
<アクリロイル基>
本発明の酸素吸収用樹脂が有するアクリロイル基は、下記式(1)の構造を持つ官能基である。
【0021】
【化1】
【0022】
上記式(1)中、Xは、水素原子又はメチル基を示す。したがって、本発明でいう「アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタアクリロイル基の総称である。
【0023】
本発明の酸素吸収用樹脂は、1つの分子に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を含んでいればよく、複数の(メタ)アクリロイル基を有していてもよい。酸素吸収性能及び接着性能の兼ね合いから、好ましい数のアクリロイル基を適宜選択することができる。
【0024】
また、本発明の酸素吸収用樹脂が、複数の(メタ)アクリロイル基を有する場合には、アクリロイル基とメタアクリロイル基とが、混在していてもよい。
【0025】
なお、本発明においては、酸素吸収用樹脂が有するアクリロイル基数が大きいほうが、酸素吸収性能及び接着性性能のいずれも高い樹脂となる。
【0026】
本発明の酸素吸収用樹脂において、(メタ)アクリロイル基の位置は、主鎖であっても、側鎖であっても、あるいは両者であってもよい。主鎖に存在する場合には、酸素吸収用樹脂となる高分子の末端に存在していることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリロイル基が、酸素吸収用樹脂となる高分子の末端に存在していれば、酸素と反応する(メタ)アクリロイル基と、酸素との接触機会を増加させることができるため、より高いレベルの酸素吸収性能を発現することができる。
【0028】
酸素吸収用樹脂となる高分子は、特に限定されるものではないが、耐熱性や接着強度が高く高性能な樹脂が得られることから、ポリエステル樹脂が骨格となっていることが好ましい。すなわち、本発明の酸素吸収用樹脂は、ポリエステル樹脂を骨格として有し、その側鎖又は主鎖に、エチレン性不飽和結合である(メタ)アクリロイル基を有する構造であることが好ましい。
【0029】
更には、酸素との反応性が高くなることから、本発明の酸素吸収用樹脂は、(メタ)アクリロイル基が主鎖の末端に存在している構造のポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0030】
高分子に(メタ)アクリロイル基を導入する方法は、特に限定されるものではない。例えば、ヒドロキシ基を有する高分子と、多官能イソシアネートと、ヒドロキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物とを、反応させる方法が挙げられる。
【0031】
具体的には、高分子が有するヒドロキシ基と、多官能イソシアネートが有するイソシアネート基とを反応させて、1つ目のウレタン結合を形成し、多官能イソシアネートが有するまた別のイソシアネート基と、ヒドロキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物のヒドロキシ基とを反応させて、2つ目のウレタン結合を形成することで、(メタ)アクリロイル基が導入された高分子を得る。
【0032】
上記の方法によって高分子に(メタ)アクリロイル基を導入する場合には、(メタ)アクリロイル基が末端に存在している、ヒドロキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を用いれば、分子の主鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する高分子を得ることができる。
【0033】
例えば、ポリエステル樹脂の末端に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、ポリエステルと、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを用いる。そして、ポリエステルのヒドロキシ基と、ジイソシアネートが有するイソシアネート基とを反応させて、1つ目のウレタン結合を形成し、ジイソシアネートが有する残りのイソシアネート基と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシ基とを反応させて、2つ目のウレタン結合を形成することで、(メタ)アクリレートに由来する(メタ)アクリロイル基をポリエステル樹脂の末端に導入することができる。
【0034】
(ジイソシアネート)
上記で用いるジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0035】
なお、ジイソシアネートは、1種単独でも、2種以上を同時に用いてもよい。
【0036】
(ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート)
上記で用いるヒドロキシ基含有のモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
ポリエステルに、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基含有のモノ(メタ)アクリレートとを反応させた場合には、1個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル樹脂である酸素吸収用樹脂となる。
【0038】
ヒドロキシ基含有のジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0039】
ポリエステルに、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基含有のジ(メタ)アクリレートとを反応させた場合には2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル樹脂である酸素吸収用樹脂となる。
【0040】
ヒドロキシ基と3個以上のアクリレートを有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
ポリエステルに、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基と3個以上のアクリレートを有する化合物とを反応させた場合には、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル樹脂である酸素吸収用樹脂となる。
【0042】
なお、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上を同時に用いてもよい。
【0043】
また、ポリエステルに、ジイソシアネートとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させる場合には、その条件等は特に限定されるものではなく、用いるポリエステル、ジイソシアネート、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの種類に応じて、適宜選択することができる。
【0044】
(ポリエステル)
本発明の酸素吸収用樹脂が、ポリエステル樹脂である場合には、その種類は特に限定されるものではない。多価カルボン酸と多価アルコールとが脱水縮合し、エステル結合が形成された重縮合体であればよい。
【0045】
また、ポリエステル樹脂は、飽和であっても不飽和であってもよいが、エチレン性不飽和結合である炭素-炭素不飽和結合を有する不飽和ポリエステルの場合には、(メタ)アクリロイル基に加えて、当該結合による酸素吸収性能を有することになるため、より高いレベルで酸素吸収性を発現させることができる。
【0046】
なお、本発明の酸素吸収用樹脂がポリエステル樹脂である場合には、その構成単位となるポリエステルは、1種単独であっても、2種以上が併用されていてもよい。
【0047】
ポリエステル樹脂の材料となる多価カルボン酸としては、特に限定されるものではなく、例えば、不飽和結合を有さない脂肪族ジカルボン酸、又は芳香族ジカルボン酸であってよい。不飽和結合を有さない脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリデカンニ酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、テトラメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和結合を有さない芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
【0048】
また、2個のカルボキシル基は、脱水縮合して酸無水物を形成していてもよい。
【0049】
ポリエステル樹脂の材料となる多価アルコールとしては、特に限定されるものではなく、従来、ポリエステルを製造する際に用いられている公知の多価アルコールであってよい。例えば、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。
【0050】
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0051】
脂環式ジオールとしては、例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、5-ノルボルネン-2,3-ジメチロール等が挙げられる。
【0052】
芳香族ジオールとしては、例えば、レゾルシノール、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等が挙げられる。芳香族ジオールは、更にアルキレンオキシドが付加された、エチレンオキシド付加物又はプロピレンオキシド付加物等となっていてもよい。
【0053】
また、ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコール以外の共重合成分を含んでいてもよく、共重合可能な成分としては、多価カルボン酸と多価アルコールと共重合可能な原料モノマーであればよい。
【0054】
例えば、グリコール酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-β-ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及び、ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t-ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能成分等が挙げられる。
【0055】
中でも、本発明の酸素吸収用樹脂の構成単位となるポリエステルが、脂環式ジオールを原料として用いたものであれば、より高度な酸素吸収性能を実現することができる。
【0056】
脂環式ジオールに由来する脂環式構造は、本発明の酸素吸収用樹脂において、エチレン性不飽和結合である炭素-炭素不飽和結合による酸素吸収性能を補助する。脂環式構造による立体障害により分子間に空間ができ、当該空間を通して樹脂の内部まで酸素が入り込み易くなり、その結果、酸素と炭素-炭素不飽和結合との接触機会を向上させると考えられる。
【0057】
脂環式ジオールは、少なくとも1個の芳香族性を有しない炭素環を有する脂環式構造を有していればよく、脂環式構造は、飽和炭化水素であっても、炭素-炭素二重結合を環内に1個含む不飽和環状炭化水素であってもよい。環内に炭素-炭素二重結合を有する場合には、当該二重結合は、酸素と反応して酸素吸収性能を発揮することが可能となる。
【0058】
また、脂環式ジオールは、単環であっても縮合環であってもよい。縮合環の場合には、少なくとも1個の芳香族性を有しない炭素環を備えていればよく、芳香族性を有する環が縮合していてもよい。
【0059】
なお、脂環式ジオールは、1種のみならず、2種以上を用いてもよい。脂環式ジオールが異性体を有する場合には、シス、トランスのいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0060】
立体障害の大きい構造を有する脂環式ジオールは、より酸素を入り込み易くすることから、例えば、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等の縮合環を有する脂環式ジオールによれば、より高い効果を享受することが可能となる。
【0061】
<酸素吸収用樹脂の製造方法>
本発明の酸素吸収用樹脂の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、上記の通り、ヒドロキシ基を有する高分子と、多官能イソシアネートと、ヒドロキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物とを、反応させる方法が挙げられる。
【0062】
更に具体的には、ポリエステルに、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させて、2つのウレタン結合を形成することで、アクリレートに由来するアクリロイル基が導入された酸素吸収用樹脂を得ることができる。
【0063】
上記の方法による場合には、ポリエステルと、ジイソシアネートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの供給量は、特に限定されるものではなく、それぞれが有する反応基の数等に応じて、適宜設定することができる。
【0064】
《酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム》
本発明の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルムは、上記の本発明の酸素吸収用樹脂を原料として含むフィルムである。酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルムは、本発明の酸素吸収用樹脂に、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等の他の成分が配合されていてもよい。
【0065】
酸素吸収用フィルムにおける本発明の酸素吸収用樹脂の配合量は、酸素吸収用フィルムの構成材料全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0066】
酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルムは、例えば、本発明の酸素吸収用樹脂、及び必要に応じて配合された添加剤等の他の成分を含む組成物を、フィルム状に溶融押出し、冷却ドラムにより急冷することで得られる、未延伸フィルムであってもよい。
【0067】
あるいは、次いで、未延伸フィルムを予熱して、一軸延伸、逐次二軸延伸、又は同時二軸延伸を実施することで得られる、一軸又は二軸延伸フィルムであってもよい。
【0068】
《酸素吸収用組成物》
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂を含む組成物である。
【0069】
本発明の酸素吸収用組成物は、本発明の酸素吸収用樹脂を含むことで、酸素吸収性能とともに接着性を有する。このため、本発明の酸素吸収用組成物からなる層を2層の間に挟み込むことで、酸素吸収性能を有する積層体を形成することができる。
【0070】
したがって、例えば、従来、ヒートシール層を有する積層体を形成するために必要とされていた、ヒートシール剤を塗工したり、ヒートシール性フィルムをラミネートしたりする等の工程、又はヒートシール性フィルムを貼り付けるために接着層を予め形成する工程等が必要なくなり、当該工程に起因する酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【0071】
<酸素吸収用組成物の構成成分>
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂以外に、任意の成分や溶媒等が配合されていてもよい。
【0072】
(硬化剤)
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂以外に、任意の成分として、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤を存在させることで、不飽和ポリエステルを三次元架橋させることができ、不溶不融の硬化物を形成することができる。また、硬化スピードを調整することができ、用途に応じてコントロールすることが可能となる。
【0073】
硬化剤としては、特に限定されるものではなく、ポリエステル系樹脂の分野において用いられている、公知の硬化剤を用いることができる。例えば、イソシアネート系硬化剤や過酸化物等を挙げることができる。
【0074】
イソシアネート系硬化剤としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、3,3'-ジクロロ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、又は、3,3'-ジメチル-4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
なお、イソシアネート系硬化剤は、分子量が増大されたポリイソシアネート化合物であってもよい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、アダクトやイソシアヌレート、ビュレット体等が挙げられる。また、イソシアネート系硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等が挙げられる。
【0077】
本発明の酸素吸収用組成物が硬化剤を含む場合には、その配合量は、成形サイクルや組成物の用途に応じて、適宜設定することができる。例えば、酸素吸収用組成物の全固形分100質量%に対して0.1~20質量%であってよい。
【0078】
硬化剤の配合量は、酸素吸収用組成物の全固形分100質量%に対して、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は10質量%以上であってよく、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
【0079】
(触媒)
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂以外に、任意の成分として、触媒を含んでいてもよい。触媒を存在させることで、酸素吸収用樹脂の酸素吸収性能を高めることができる。
【0080】
触媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、遷移金属又は第12族元素と、有機酸とからなる金属塩が挙げられる。遷移金属としては、例えば、鉄、コバルト等が挙げられ、第12族元素としては、例えば亜鉛が挙げられる。また、有機酸としては、例えばステアリン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、ラウリン酸、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、2,4-ペンタンジオン等が挙げられる。
【0081】
したがって、本発明の酸素吸収用組成物に配合される触媒としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄等が挙げられ、いずれによっても、本発明の酸素吸収用組成物の酸素吸収性能を高めることができる。
【0082】
本発明の酸素吸収用組成物が触媒を含む場合には、その配合量は、酸素吸収用組成物の全固形分質量に対する遷移金属又は第12族元素の質量換算で、例えば、10~500ppmであってよい。
【0083】
触媒の配合量は、酸素吸収用組成物の全固形分質量に対する遷移金属又は第12族元素の質量換算で、10ppm以上、40ppm以上、60ppm以上、80ppm以上、100ppm以上、150ppm以上、又は200ppm以上であってよく、450ppm以下、400ppm以下、350ppm以下、300ppm以下、250ppm以下、又は200ppm以下であってよい。
【0084】
(飽和ポリエステル)
本発明の酸素吸収用組成物は、上記した本発明の酸素吸収用樹脂以外に、任意の成分として、飽和ポリエステルを含んでいてもよい。飽和ポリエステルを存在させることで、酸素吸収量を制御することができる。
【0085】
飽和ポリエステルとしては、特に限定されるものではなく、不飽和結合を有さないポリエステルから適宜選択して用いることができる。例えば、脂肪族ポリエステルであっても、芳香族ポリエステルであっても、脂環式ポリエステルであってもよく、これらの2種以上を、同時に適用してもよい。
【0086】
本発明の酸素吸収用組成物が飽和ポリエステルを含む場合には、その配合量は、組成物の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、酸素吸収用組成物を構成する不飽和ポリエステルと飽和ポリエステルとの合計100質量%に対して、1~99質量%であってよい。
【0087】
飽和ポリエステルの配合量は、酸素吸収用組成物を構成する不飽和ポリエステルと飽和ポリエステルとの合計100質量%に対して、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、60質量%以上、又は80質量%以上であってよく、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0088】
(溶媒)
本発明の酸素吸収用組成物は、任意の成分として、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、本発明の酸素吸収用樹脂及び任意の成分を溶解して、取り扱い等を向上させることができる。
【0089】
本発明の酸素吸収用組成物に用いられる溶媒は、特に限定されるものではなく、ポリエステル系組成物の溶媒として用いられている公知の溶媒を適用することができる。
【0090】
溶媒の配合量についても特に限定されるものではなく、組成物の用途や成形サイクル等に応じて、適宜選択することができる。
【0091】
<酸素吸収用組成物の製造方法>
本発明の酸素吸収用組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、ポリエステル系組成物の製造方法として公知の方法を適用することができる。
【0092】
《酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム》
本発明の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルムは、上記の本発明の酸素吸収用組成物を原料として含むフィルムである。
【0093】
酸素吸収用フィルムにおける本発明の酸素吸収用組成物の配合量は、酸素吸収用フィルムの構成材料全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0094】
酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルムは、例えば、本発明の酸素吸収用組成物を溶媒に溶解した後に、得られた溶液を離型紙等の対象物の上に塗布し、溶媒を除去して硬化等させて得られる、未延伸フィルムであってもよい。
【0095】
あるいは、本発明の酸素吸収用組成物を溶融し、フィルム形状に押し出して得られる未延伸フィルムであってもよいし、次いで、未延伸フィルムを予熱して、一軸延伸、逐次二軸延伸、又は同時二軸延伸を実施して得られる、一軸又は二軸延伸フィルムであってもよい。
《酸素吸収用接着剤》
本発明の酸素吸収用接着剤は、上記した本発明の酸素吸収用組成物を含む接着剤である。本発明の酸素吸収用接着剤は、本発明の酸素吸収用組成物を含むため、酸素吸収性能を有する。同時に、接着性を有する。
【0096】
このため、本発明の酸素吸収用接着剤を接着層として2層の間に挟み込むことで、酸素吸収性能を有する積層体を形成することができ、例えば従来、ヒートシール層を有する積層体を形成するために必要とされていた、ヒートシール剤を塗工したり、ヒートシール性フィルムをラミネートしたりする等の工程、又はヒートシール性フィルムを貼り付けるために接着層を予め形成する工程等が必要なくなり、当該工程に起因する酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【0097】
<酸素吸収用接着剤の構成成分>
本発明の酸素吸収用接着剤は、上記した本発明の酸素吸収用組成物以外に、機能性を付与するための任意の成分、又は溶媒等を配合することができる。
【0098】
《酸素吸収用接着剤フィルム》
本発明の酸素吸収用接着剤フィルムは、上記の本発明の酸素吸収用接着剤を原料として含むフィルムである。
【0099】
酸素吸収用接着剤フィルムにおける本発明の酸素吸収用接着剤の配合量は、酸素吸収用接着剤フィルムの構成材料全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0100】
酸素吸収用接着剤フィルムは、例えば、本発明の酸素吸収用接着剤を溶媒に溶解した後に、得られた溶液を離型紙等の対象物の上に塗布し、溶媒を除去して硬化等させて得られる、未延伸フィルムであってもよい。
【0101】
《酸素吸収用積層体》
本発明の酸素吸収用積層体は、上記した本発明の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層、又は上記した本発明の酸素吸収用接着剤からなる酸素吸収用接着剤層を備える積層体である。
【0102】
本発明の酸素吸収用積層体は、本発明の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層を備えていれば、その他の層は特に限定されるものではない。その他の層としては、例えば、積層体に機能を付与するための酸素バリア層、ヒートシール層等、あるいは、各層を接着するための接着層等が挙げられる。
【0103】
本発明の酸素吸収用組成物は、2層の間に挟み込むことで、当該2層を接着するとともに、自身は酸素吸収性能を有する層となる。したがって、酸素吸収性能を備える層を形成するために、別に接着層を設ける工程を必要とせずに、酸素吸収用積層体を形成することができる。そして、別に設ける必要のあった工程に起因する、酸素吸収性能の低下を回避することができる。
【0104】
本発明の酸素吸収用積層体は、例えば、酸素バリア層と、本発明の酸素吸収用組成物からなる酸素吸収用組成物層と、ヒートシール層とが、この順で積層された構成であってもよい。
【0105】
本発明の酸素吸収用積層体が、酸素バリア層と、酸素吸収用組成物層又は酸素吸収用接着剤層と、ヒートシール層とが、この順で積層された構成となっている場合には、ヒートシール層を熱溶着させることで各種の包装体を形成することができる。包装体に充填された内容物が接する面は、ヒートシール層となり、包装体の外部である大気等に含まれる酸素が接触する面は、酸素バリア層となる。
【0106】
したがって、酸素吸収用積層体が、酸素バリア層と、酸素吸収用組成物層又は酸素吸収用接着剤層と、ヒートシール層とが、この順で積層された構成となっていれば、外部からの酸素透過を防ぎつつ、包装体内部の酸素を吸収することができる。その結果、より高度なレベルで、包装体内部に存在する酸素を排除することができ、内容物の酸化劣化を回避することができる。
【0107】
<その他の層>
(酸素バリア層)
酸素バリア層は、酸素を遮断する機能を発現し、酸素吸収用積層体に酸素バリア性を付与するための層となる。
【0108】
酸素バリア層としては、特に限定されるものではなく、包装材料の分野にて公知の材料から作製することができる。例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、又はポリアクリロニトリル(PAN)や、シリカ、アルミナ、又はアルミ等が蒸着されたPETフィルムやナイロンフィルム、更には、アルミ箔や、PETとアルミ箔との積層体、ナイロンとアルミ箔との積層体等が挙げられる。
【0109】
本発明の酸素吸収用積層体においては、酸素バリア層の厚み等については特に限定されるものではなく、積層体の用途に応じて、適宜設定することができる。
【0110】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、例えば包装体等の構造体を形成する際に、熱溶着される層となる。このため、ヒートシール層は、積層体の最内層となるように配置される。
【0111】
ヒートシール層を構成する材料としては、熱接着が可能であり、成形された構造体に十分なシール強度を付与できるものであれば、特に限定されるものではない。公知の材料を適用することができ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0112】
なお、ヒートシール層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0113】
<酸素吸収用積層体の製造方法>
本発明の酸素吸収用積層体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0114】
《用途》
本発明の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム、本発明の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム、本発明の酸素吸収用接着剤を含む酸素吸収用接着剤フィルム、及び本発明の酸素吸収用積層体は、包装材として好適に用いることができる。
【0115】
本発明の酸素吸収用樹脂を含む酸素吸収用フィルム、本発明の酸素吸収用組成物を含む酸素吸収用フィルム、本発明の酸素吸収用接着剤を含む酸素吸収用接着剤フィルム、及び本発明の酸素吸収用積層体から成る群より選ばれるいずれかを備える包装材は、酸素吸収性能を発揮することができるため、例えば、内容物と酸素との接触を遮断したい、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、塗料等の包装材として、好適に用いることができる。
【実施例0116】
以下、実施例及び比較例等により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
《製造例1~6》
<不飽和ポリエステル樹脂の製造>
以下に示す市販の飽和ポリエステルと、イソホロンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレートと、を反応させて、ポリエステルのヒドロキシ基と、イソホロンジイソシアネートが有するイソシアネート基とを反応させて、1つ目のウレタン結合を形成し、イソホロンジイソシアネートが有する残りのイソシアネート基と、ペンタエリスリトールトリアクリレートのヒドロキシ基とを反応させて、2つ目のウレタン結合を形成することで、アクリロイル基が導入されたアクリロイル基含有ポリエステル樹脂を得た。
【0118】
(原料とした飽和ポリエステル)
製造例1~3:SK-232(桜宮化学株式会社製)
製造例4:バイロン(登録商標)200(東洋紡株式会社製)
製造例5:バイロン(登録商標)300(東洋紡株式会社製)
製造例6:バイロン(登録商標)GK-150(東洋紡株式会社製)
【0119】
なお、製造例1~3は、同一の飽和ポリエステルを原料として用いて、導入するアクリロイル基の数を異ならせた例である。製造例1~6における、飽和ポリエステル100質量部に対する、ペンタエリスリトールトリアクリレートの添加量は、以下の通りとした。
製造例1:2.0
製造例2:6.6
製造例3:8.5
製造例4:0.6
製造例5:0.7
製造例6:0.7
【0120】
製造例1~6で得られたアクリロイル基含有ポリエステル樹脂をそれぞれ、アクリロイル基含有ポリエステルA~Fとする。
【0121】
《実施例1~18、比較例1》
<組成物の作製>
製造例1~6で得られた、アクリロイル基含有ポリエステルA~Fを用いて、組成物を作製した。
【0122】
(組成物の成分)
組成物に配合した各種成分を以下に示す。
【0123】
1.不飽和ポリエステル
・製造例1で得られたアクリロイル基含有ポリエステルA
・製造例2で得られたアクリロイル基含有ポリエステルB
・製造例3で得られたアクリロイル基含有ポリエステルC
・製造例4で得られたアクリロイル基含有ポリエステルD
・製造例5で得られたアクリロイル基含有ポリエステルE
・製造例6で得られたアクリロイル基含有ポリエステルF
【0124】
2.飽和ポリエステル
・ポリエステル系ポリオール(ロックボンド(登録商標)RU-50、ロックペイント株式会社)
・ポリエステル系ポリオール(タケラック(登録商標)A-525S、三井化学株式会社)
【0125】
3.硬化剤
・イソシアネート化合物(ロックボンド(登録商標)H-4、ロックペイント株式会社)
・イソシアネート化合物(タケネート(登録商標)A-50、三井化学株式会社)
【0126】
4.触媒
・ステアリン酸コバルト(II)
・ステアリン酸亜鉛(II)
・ステアリン酸鉄(III)
【0127】
(操作)
表1に示される、アクリロイル基含有ポリエステル、及び飽和ポリエステルを、表1に示される固形分質量比となるように準備した。続いて、アクリロイル基含有ポリエステルと飽和ポリエステルの合計固形分質量100質量部に対して、7質量部の硬化剤を混合した。
【0128】
更に、表1に示される触媒を、組成物の全固形分質量に対する、コバルト、鉄、又は亜鉛の質量換算で80ppm添加し、続いて、酢酸エチルを添加して、固形分33質量%となる酢酸エチル溶液である組成物を調製した。
【0129】
<酸素吸収量の測定>
(積層体の作製)
実施例1~18、及び比較例1で得られた、酢酸エチル溶液である組成物を、厚み12μmのシリカ蒸着フィルム(テックバリア(登録商標)L、三菱ケミカル株式会社)に、塗布量が5g/mとなるように塗工し、厚み30μmのLLDPEフィルム(SE620N、タマポリ株式会社)と貼り合わせることで、積層体を作製した。
【0130】
(測定)
得られた積層体を10cm×10cm(100cm)にカットし、43mLの密閉容器に空気とともに封入し、23℃で7日間保管した。7日後の容器内の酸素濃度を、非破壊酸素濃度計(Fibox3、PreSens社)を用いて測定し、得られた酸素濃度と大気中の酸素濃度とから、積層体の面積当りの酸素吸収量(mL/m)を算出した。結果を表1示す。
【0131】
【表1】