(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078875
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】手摺装置
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
E04F11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189838
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛川 哲生
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 浩一
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301GG00
2E301HH09
2E301JJ21
2E301KK01
2E301KK04
(57)【要約】
【課題】ブラケットに対して取り外し可能な手摺の固定が容易であり、かつ固定時のぐらつきを抑制可能な手摺装置を提供する。
【解決手段】係合部を有する複数のブラケットに対して固定及び取り外しを可能とする手摺と、ブラケット毎に手摺の内部に設けられ、当該手摺の延在方向に沿ってスライド移動可能、且つ手摺の内部において当該手摺の延在方向に沿ってスライド移動可能に設けられ、対応するブラケット毎の係合部に係合可能なロック部材と、複数のロック部材を連結する連結部材と、を備え、連結部材は、1つのロック部材がスライド移動された場合に、当該ロック部材に連結する他のロック部材を同方向にスライド移動させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合部を有する複数のブラケットに対して固定及び取り外しを可能とする手摺と、
前記ブラケット毎に前記手摺の内部に設けられ、当該手摺の延在方向に沿ってスライド移動可能、且つ対応する前記ブラケットの係合部に係合可能なロック部材と、
複数の前記ロック部材を連結する連結部材と、を備え、
前記連結部材は、1つの前記ロック部材がスライド移動された場合に、当該ロック部材に連結する他の前記ロック部材を同方向にスライド移動させる手摺装置。
【請求項2】
前記連結部材で連結する複数の前記ロック部材は、対応する前記ブラケットに対し前記延在方向における同方向に設けられる請求項1に記載の手摺装置。
【請求項3】
前記ロック部材は、対応する前記ブラケットに対し前記延在方向の一方側に設けられる第1ロック部材と、他方側に設けられる第2ロック部材とを含む請求項1又は2に記載の手摺装置。
【請求項4】
前記連結部材は、複数の前記第1ロック部材を連結する第1連結部材と、複数の前記第2ロック部材を連結する第2連結部材とを含む請求項3に記載の手摺装置。
【請求項5】
前記ロック部材を前記ブラケットに向けて付勢する付勢部材を備える請求項1~4のいずれか1項に記載の手摺装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記第1連結部材と前記第2連結部材とを連結するものである請求項4に従属する請求項5に記載の手摺装置。
【請求項7】
前記ロック部材の角部には、前記手摺の内部に前記ブラケットが挿入される場合に当該ブラケットの先端部が接触する傾斜面が、前記ロック部材の移動方向に対して傾斜するように形成され、
前記ロック部材は、前記手摺の内部に前記ブラケットが挿入される場合に当該ブラケットの先端部が前記傾斜面に接触することにより、前記付勢部材の付勢力に抗して当該ブラケット側とは反対方向に移動される請求項5又は6に記載の手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床から立設する支柱に設けられた取り付け金具に対して、手摺に簡単に取り付けることができる手摺装置が開示されている。当該手摺装置では、手摺内部のガイドレールに対して固定片が摺動可能に設けられており、螺子体を螺入させて固定片をガイドレールに固定すると共に、固定片を取り付け金具の係合受け部に圧入することにより、手摺が取り付け金具に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の手摺装置は、取り付けに際し螺子体を操作するための工具が必要であり、取り付け及び取り外しに手間と時間が掛かる。また、当該手摺装置の固定は、固定片の係合受け部への当接に頼るため手摺がぐらつく場合がある。
【0005】
本発明は、ブラケットに対して取り外し可能な手摺の固定及び取り外しが容易であり、かつ固定時のぐらつきを抑制可能な手摺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る手摺装置は、係合部を有する複数のブラケットに対して固定及び取り外しを可能とする手摺と、前記ブラケット毎に前記手摺の内部に設けられ、当該手摺の延在方向に沿ってスライド移動可能、且つ対応する前記ブラケットの係合部に係合可能なロック部材と、複数の前記ロック部材を連結する連結部材と、を備え、前記連結部材は、1つの前記ロック部材がスライド移動された場合に、当該ロック部材に連結する他の前記ロック部材を同方向にスライド移動させる。
【0007】
本発明によれば、ブラケットに対して取り外し可能な手摺の固定及び取り外しが容易であり、かつ固定時のぐらつきを抑制可能な手摺装置を提供することができる。また、手摺の内部にロック部材を設けることで、手摺から露出する部品を少なくすることができ、手摺装置の美観を損ねないようにすることができる。また、手摺をブラケットに固定する際や取り外す際に、作業者が、工具を使用してロック部材をスライド移動させることなく係合させることが可能な手摺装置を提供することができる。
【0008】
本発明に係る手摺装置は、さらに、前記連結部材で連結する複数の前記ロック部材は、対応する前記ブラケットに対し前記延在方向における同方向に設けられる。
【0009】
本発明によれば、一方向からロック部材をブラケットの係合部に係合させることで、ロック部材を当該一方向にスライド移動させるという容易な方法で固定を解除することが可能な手摺装置を提供することができる。
【0010】
本発明に係る手摺装置は、さらに、前記ロック部材は、対応する前記ブラケットに対し前記延在方向の一方側に設けられる第1ロック部材と、他方側に設けられる第2ロック部材とを含む。
また、前記連結部材は、複数の前記第1ロック部材を連結する第1連結部材と、複数の前記第2ロック部材を連結する第2連結部材とを含む。
【0011】
本発明によれば、両方向からロック部材をブラケットの係合部に係合させることで、より固定時のぐらつきを抑制可能な手摺装置を提供することができる。また、ブラケットの両方向にあるロック部材をそれぞれスライド移動させなければ、手摺を取り外せないことから、意図せず手摺が取り外されてしまうことを防止することが可能となる。
【0012】
本発明に係る手摺装置は、さらに、前記ロック部材を前記ブラケットに向けて付勢する付勢部材を備える。
【0013】
本発明によれば、手摺をブラケットに固定する際に、作業者が、ロック部材をブラケットの係合部に係合させる操作をすることなく係合させることが可能な手摺装置を提供することができる。また、意図せずロック部材をスライド移動した場合であっても、ロック部材をブラケットの係合部に係合させる操作をすることなく、ロック部材がブラケットの係合部に係合した状態に戻すことが可能な手摺装置を提供することができる。
【0014】
本発明に係る手摺装置は、さらに、前記付勢部材は、前記第1連結部材と前記第2連結部材とを連結するものである。
【0015】
本発明によれば、ブラケットの延在方向の一方側に設けられる第1ロック部材と、他方側に設けられる第2ロック部材との対応する係合部への係合を、1つの付勢部材で実行させることが可能となる。このため、ロック部材と連結部材との組み付け作業が容易になることや、部品が少なくなることによるコストの低減が可能となる。また、第1ロック部材と第2ロック部材との両方を同時にスライド移動させなければ、手摺が取り外せないことから、意図せず手摺が取り外されてしまうことを防止することが可能となる。
【0016】
本発明に係る手摺装置は、さらに、前記ロック部材の角部には、前記手摺の内部に前記ブラケットが挿入される場合に当該ブラケットの先端部が接触する傾斜面が、前記ロック部材の移動方向に対して傾斜するように形成され、前記ロック部材は、前記手摺の内部に前記ブラケットが挿入される場合に当該ブラケットの先端部が前記傾斜面に接触することにより、前記付勢部材の付勢力に抗して当該ブラケット側とは反対方向に移動される。
【0017】
本発明によれば、手摺の内部にブラケットを挿入するだけで、ロック部材がブラケットを係合可能な位置まで移動させることが可能となり、手摺装置の固定作業を容易にすることが可能な手摺装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る手摺装置の斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る手摺装置の断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る手摺装置の固定状態を示す側方断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る手摺装置の固定状態を示す側方拡大断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る手摺装置の固定状態を示す下方断面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る手摺装置の側方断面図であって、ブラケットを手摺に挿入する前の状態を説明するための説明図である。
【
図7】第1の実施形態に係る手摺装置のロック部材と連結部材と付勢部材とを下方から見た状態を用いて説明するための説明図である。
【
図8A】第1の実施形態に係るロック部材の底面図である。
【
図8B】第1の実施形態に係るロック部材の側面図である。
【
図9】第1の実施形態に係る手摺装置の固定解除状態を示す側方断面図である。
【
図10】第1の実施形態に係る手摺装置の固定解除状態を示す側方拡大断面図である。
【
図11】第1の実施形態に係る手摺装置の固定解除状態を示す下方断面図である。
【
図12A】第2の実施形態に係る手摺装置の斜視図であって、ロック部材とブラケットとの固定解除状態を示す図である。
【
図12B】第2の実施形態に係る手摺装置の斜視図であって、ロック部材とブラケットとの固定状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、壁面12に面した場合の右側を右方、左側を左方とし、上側を上方、下側を下方とし、奥側を前方とし、手前側を後方とする。また、幅と表記した場合は、特に断りのない限り、手摺30を断面視した場合の幅、すなわち、前後方向の幅を指す。
【0020】
また、
図1に示すように、通路の壁面12には公知の連続手摺である固定手摺130が固定され、この固定手摺130は扉14の前では途切れており、この途切れている部分、つまり固定手摺130同士の間に本発明の手摺装置10が設けられている。
【0021】
(構成)
図1、
図2及び
図3に示されるように、本実施形態の手摺装置10は、壁面12に対して固定された複数のブラケット20と、ブラケット20に固定され、壁面12に沿って左右に延びる手摺30と、を含んで構成されている。
【0022】
(ブラケット)
本実施形態のブラケット20は、後述する手摺30を固定する左ブラケット20Lと、右ブラケット20Rと、を含む。左ブラケット20Lは扉14の左方に設けられて、右ブラケット20Rは扉14の右方に設けられている。
図2に示すように、ブラケット20は、壁面12から立設し、かつブラケット20の下端部を挿通したアンカーボルト27が、ナット28により締結されることで壁面12に固定されている。なお、ブラケット20の壁面12に対する固定部分では、アンカーボルト27及びナット28が隠れるようにカバー29で覆われている。また、ブラケット20は、側面視が略Z字状であって、壁面12から後方に延在した後、上方に向きを変えて上方に延びている。
【0023】
図3に示されるように、ブラケット20は、その上端部分に手摺30の後述するレール34に収容される固定部22を備えている。また、
図3及び
図6に示すように、左ブラケット20L及び右ブラケット20Rの固定部22には、それぞれ、レール34の延在方向(すなわち、左右方向)に沿って形成された溝である係合部24が設けられている。この係合部24は、前後方向に貫通し、かつ左方と右方とに開いた凹部である。
【0024】
また、
図3及び
図6に示すように、ブラケット20の固定部22は、上面部分に、後述するレール34の第1丸孔34Aに挿入される突部25を備えている。本実施の形態では、ねじを固定部22の上面に挿入することで突部25を形成している。
【0025】
(手摺)
図1に示されるように、本実施形態の手摺30は、ブラケット20に対して取り付け及び取り外しを可能とする可動手摺として構成されている。手摺30は、固定手摺130の間であって、壁面12に設けられた扉14と対応する部分に設けられている。本実施形態では、手摺30をブラケット20から取り外すことにより、扉14における人の出入りに支障が無くなる。
【0026】
図2及び
図3に示されるように、手摺30は、樹脂製のエンドキャップ31と、樹脂製の笠木32と、笠木32の内部に収容されたアルミニウムの押出材により形成されたレール34と、を含む。エンドキャップ31は、レール34の左右両端に固定されている。断面視において、笠木32は、下方が開放されたC字状であり、レール34は、下方が開放された開断面を有している。この笠木32の下部において、ブラケット20に対応する部分は、C字状の断面における開放部分を切り欠くことで拡幅させた幅広口32Aとして形成されている。この幅広口32Aは、ブラケット20が手摺30の内部に挿入される場合に干渉しないように形成されている。
【0027】
レール34は、手摺30の延在方向に沿って当該手摺30に対して設けられ、各ブラケット20の固定部22を内部に収容可能なものである。また、レール34には、樹脂製のロック部材40と、金属製の連結部材50と、金属製の付勢部材60とが収容されている。
【0028】
また、
図3及び
図4に示すように、レール34の上方側の壁面には、当該壁面を貫通する第1丸孔34Aと、当該第1丸孔34Aの左右方向両側に第2丸孔34Bが形成されている。第1丸孔34Aは、上述したようにブラケット20の突部25が挿入されるものである。これにより、ブラケット20がレール34の内部で前後左右に移動することを規制すると共に、手摺装置10の施工現場において、ブラケット20と第1丸孔34Aとの位置を合わせるようにすることで、手摺30とブラケット20との位置調整を容易にしている。また、第2丸孔34Bは、第1丸孔34Aの左右方向に隣接して設けられており、当該第2丸孔34Bからレール34内部に挿入されるピン34Cを、後述するロック部材40の長孔部43に挿入させるものである。
【0029】
(ロック部材40)
ロック部材40は、
図3~
図5に示すように、対応するブラケット20毎に設けられるとともに、レール34において延在方向にスライド移動可能に設けられ、ブラケット20の固定部22に設けられた係合部24に係合可能なものである。また、本実施形態では、ロック部材40は、概形が扁平方形状に形成されている。
【0030】
ブラケット20毎に設けられるロック部材40は、
図3~
図5に示すように、対応するブラケット20に対し、手摺30の延在方向の一方側に設けられる第1ロック部材40Aと、他方側に設けられる第2ロック部材40Bとを含む。また、本実施形態では、第1ロック部材40Aはブラケット20の左側、第2ロック部材40Bはブラケット20の右側に設けられる。すなわち、後述する連結部材50で連結するロック部材40は対応するブラケット20に対し、手摺30の延在方向における同方向に設けられる。
【0031】
また、
図3に示すように、第1ロック部材40Aは、左ブラケット20Lの係合部24に係合可能な左側第1ロック部材40ALと、右ブラケット20Rの係合部24に係合可能な右側第1ロック部材40ARとを含む。また、第2ロック部材40Bは、左ブラケット20Lの係合部24に係合可能な左側第2ロック部材40BLと、右ブラケット20Rの係合部24に係合可能な右側第2ロック部材40BRとを含む。
【0032】
ここで、各ロック部材40は、本実施形態では、同じ形状を有するものであり、第1ロック部材40Aと第2ロック部材40Bとは、互いに向きを反転させた状態で設置されている。
また、各ロック部材40は、手摺30の設置に際し、作業者により、後述する連結部材50と共に、エンドキャップ31を固定する前のレール34の両端から挿入されるものである。
【0033】
各ロック部材40には、
図8A及び
図8Bに示すように、嵌合突起41と、傾斜面42と、長孔部43と、溝部44と、側孔部45と、ねじ穴部46を備える。
【0034】
嵌合突起41は、各ロック部材40の先端側に設けられ、対応するブラケット20の係合部24に挿入される部位である。
【0035】
傾斜面42は、ロック部材40の角部に備えられる。また、傾斜面42は、手摺30の内部にブラケット20が挿入される場合に当該ブラケットの先端部が接触し、ロック部材40の移動方向に対して傾斜するように形成されている。そして、ロック部材40は、手摺30の内部にブラケット20が挿入される場合に当該ブラケット20の先端部が傾斜面42に接触することにより、付勢部材60の付勢力に抗して当該ブラケット20側とは反対方向に移動されることとなる。
【0036】
長孔部43は、ロック部材40の上面から下面に貫通すると共に、レール34の延在方向と同じ左右方向に沿って延びる長孔状に形成される。そして、レール34の第2丸孔34Bと長孔部43とを一致させ、第2丸孔34Bからレール34内部にピン34Cが挿通されることで、当該ピン34Cを移動軸としてロック部材40を長孔部43の長さの範囲でレール34に対してスライド移動可能としている。
【0037】
溝部44は、各ロック部材40の側面の一方側と他方側とに設けられ、各ロック部材40の先端側から後端側にわたって当該側部の内側に凹んで形成される。
【0038】
ここで、
図3、
図7、
図8A及び
図8Bを用いて、各ロック部材40における溝部44について説明する。
本実施形態では、溝部44には、左側第1ロック部材40ALの側面の後方側に設けられる溝部44Aと前方側に設けられる溝部44B、右側第1ロック部材40ARの側面の後方側に設けられる溝部44Cと前方側に設けられる溝部44D、左側第2ロック部材40BLの側面の後方側に設けられる溝部44Eと前方側に設けられる溝部44F、右側第2ロック部材40BRの側面の後方側に設けられる溝部44Gと前方側に設けられる溝部44Hとを含む。
【0039】
ここで、左側第1ロック部材40ALの側面の後方側に設けられる溝部44Aには、当該左側第1ロック部材40ALの側孔部45に向かう第1連結部材50Aが案内される。また、右側第1ロック部材40ARの側面の後方側に設けられる溝部44Cには、当該右側第1ロック部材40ARの側孔部45に向かう第1連結部材50Aが案内される。また、右側第1ロック部材40ARの側面の前方側に設けられる溝部44Dには、当該右側第1ロック部材40ARの右方に設けられる右側第2ロック部材40BRに向かう第2連結部材50Bが案内される。このように構成することで、右側第2ロック部材40BRに向かう第2連結部材50Bが右側第1ロック部材40ARにより邪魔されず右側第2ロック部材40BRに向けて通過させるようにしている。そして、右側第1ロック部材40ARがレール34でスライド移動されることに伴い、溝部44Dにおいても第2連結部材50Bが摺動される。なお、溝部44Dを備えることで、第2連結部材50Bを右側第1ロック部材40ARにより邪魔されず右側第2ロック部材40BRに向けて通過させる場合に限定されず、右側第1ロック部材40ARの側部ではなく、当該右側第1ロック部材40ARの先端側と後端側とをつなぐ孔を開け、第2連結部材50Bを通過させるようにしてもよい。
【0040】
また、左側第2ロック部材40BLの側面の後方側に設けられる溝部44Eは、上述した右側第1ロック部材40ARの前方に設けられる溝部44Dと同様であって、当該左側第2ロック部材40BLの左方に設けられる左側第1ロック部材40ALに向かう第1連結部材50Aが案内される。また、左側第2ロック部材40BLの側面の前方側に設けられる溝部44Fは、上述した右側第1ロック部材40ARの前方側に設けられる44Cと同様であって、左側第2ロック部材40BLの側孔部45に向かう第2連結部材50Bが案内される。また、右側第2ロック部材40BRの側面の前方側に設けられる溝部44Hは、上述した右側第1ロック部材40ARの前方側に設けられる44Aと同様であって、右側第2ロック部材40BRの側孔部45に向かう第2連結部材50Bが案内される。
【0041】
すなわち、左側第1ロック部材40ALと右側第1ロック部材40ARとの間に、左側第2ロック部材40BLが配置され、又、左側第2ロック部材40BLと右側第2ロック部材40BRとの間に、右側第1ロック部材40ARが配置され、各第1ロック部材40Aは第1連結部材50Aで連結され、各第2ロック部材40Bは第2連結部材50Bで連結され、当該連結部材50を通過させるために、各ロック部材40の側面に溝部44を備えている。
【0042】
側孔部45は、各ロック部材40の溝部44の底部に設けられ、各ロック部材40の側面から内側に向けて開けられる孔である。なお、本実施形態では貫通しているが、貫通しないように形成してもよい。
側孔部45には後述する連結部材50の折り曲げ部51が挿入されることで、連結部材50をロック部材40と接続している。
【0043】
ねじ穴部46は、各ロック部材40の後端側に設けられ、上方から下方に貫通するねじ穴である。かかるねじ穴部46の下方側から止めねじ47が挿入される。ここで、本実施形態では、
図3に示すように、左側第1ロック部材40ALと右側第2ロック部材40BRとに、止めねじ47が挿入されている。かかる止めねじ47は、開放された笠木32の下方から手摺30の下方側に突出している(
図2参照)。止めねじ47は、ロック部材40がブラケット20に係合した後に、下方側から回し入れられ、レール34の上面内側に当該止めねじ47の先端を当接することで、ロック部材40のスライド移動を防止し、ロック部材40を手摺30に固定する固定部材として機能する。また、止めねじ47は、ロック部材40を移動させる際に指をかける操作部材としても機能する。
【0044】
本実施形態では、
図3に示すように、左側第1ロック部材40ALと右側第2ロック部材40BRとにのみ、止めねじ47を挿入しているが、これに限定されず、左側第2ロック部材40BLや右側第1ロック部材40ARに止めねじ47を挿入してもよいし、又、止めねじ47を挿入するロック部材40の組合せを様々なものとしてもよい。また、止めねじ47は、先端がレール34の上面内側に当接せず、固定部材ではなく、操作部材としてのみ機能するようにしてもよい。
【0045】
また、上述したように、第1ロック部材40Aも第2ロック部材40Bも同じ形状を備えているため、全てのロック部材40が、両側の側面に同様の側孔部45と溝部44とを備えている。
【0046】
(連結部材50)
連結部材50は、
図3、
図5及び
図7に示すように、複数、本実施形態では2個のロック部材40を連結するものである。そして、連結部材50は、2個の第1ロック部材40Aを連結する第1連結部材50Aと、2個の第2ロック部材40Bを連結する第2連結部材50Bとを含む。すなわち、連結部材50で連結するロック部材40は対応するブラケット20に対し、レール34の延在方向における同方向、第1ロック部材40Aはブラケット20の左方、第2ロック部材40Bはブラケット20の右方に設けられることとなっている。
【0047】
また、連結部材50は、
図3及び
図9に示すように、1つのロック部材40がスライド移動された場合に、当該ロック部材40に連結する他のロック部材40を同方向にスライド移動させる。すなわち、1つのロック部材40、例えば、左側第1ロック部材40ALが左方にスライド移動された場合は、当該連結部材50で連結された他のロック部材40、例えば、右側第1ロック部材40ARも同方向である左方にスライド移動される。
【0048】
ここで、連結部材50は、1本の金属製の棒状体からなる。手摺装置10の施工現場などにおいて、作業者が、当該棒状体を、略中央部分に付勢部材60の一例である引張コイルばねのフック部61が引っかかる輪状のリング部52を作り、両側を、輪を作った方向に折り曲げて、ロック部材40の側孔部45に挿入される折り曲げ部51を形成することで連結部材50となる。また、折り曲げ部51の根元間の距離は、レール34の第1丸孔34A間の距離と略等しい距離となっており、連結部材50を前もって用意していない手摺装置10の施工現場においても、折り曲げ部51を作成する際の加工を容易にすることが可能となっている。すなわち、手摺装置10の施工現場では、ブラケット20間の距離を、設置する壁面12の状態によって調整したいという要望がある。手摺装置10の施工現場で、壁面12に固定されたブラケット20に合わせてドリルなどで第1丸孔34Aを形成し、連結部材50も施工現場で作成すれば、様々なブラケット20間の距離に合わせて手摺装置10を設置することが可能となる。なお、連結部材50を施工現場で作成する場合に限定されず、前もって作成しておくようにしてもよい。
【0049】
(付勢部材60)
付勢部材60は、
図7に示すように、ロック部材40をブラケット20に向けて付勢するものであり、本実施形態では引張コイルばねにより構成されている。すなわち、左側第1ロック部材40ALと右側第1ロック部材40ARとは右方に、左側第2ロック部材40BLと右側第2ロック部材40BRとは左方に、それぞれ付勢されている。
付勢部材60は、
図7に示すように、両端にフック部61を備えている。そして、左側のフック部61Lは、第1連結部材50Aのリング部52に引っかけられ、右側のフック部61Rは、第2連結部材50Bのリング部52に引っかけられる。これにより、付勢部材60は、第1連結部材50Aと第2連結部材50Bとを連結している。
【0050】
(手摺の着脱方法)
以下、ブラケット20に対する手摺30の着脱方法について説明する。ここで、ブラケット20に対して手摺30が固定される前の状態を固定解除状態、ブラケット20に対して手摺30が固定された状態を固定状態、として説明する。固定解除状態は、ブラケット20に設置された手摺30がブラケット20に対して固定されていない状態に限らず、手摺30がブラケット20から取り外された状態も含む。
【0051】
(1)固定方法
はじめに、手摺30をブラケット20に固定する方法について説明する。
【0052】
図6に示すように、ブラケット20の突部25が、第1丸孔34Aの真下に来るように位置決めを行う。
【0053】
つぎに、手摺30の内部にブラケット20を挿入する。本実施形態では、レール34に、ブラケット20の固定部22が収容されるように、手摺30を上方からブラケット20に乗せる。
【0054】
そのまま手摺30を下方に押すことで、ブラケット20の固定部22がロック部材40の傾斜面42に接触して、ロック部材40を付勢部材60の付勢力に抗して左右方向に移動させる。そして、ブラケット20が収容された後に、付勢部材60の付勢力によりロック部材40が係合部24に入る。
【0055】
その後、
図3及び
図4に示すように、止めねじ47を絞めると当該止めねじ47の先端がレール34の上面内側に当接することでロック部材40が手摺30に固定される。これにより、手摺30はブラケット20に固定された固定状態となる。なお、固定状態が弱くはなるが、止めねじ47を備えないようにすることを排除するものではない。
【0056】
なお、付勢部材60の付勢力によりロック部材40が係合部24に入るだけではなく、作業者が止めねじ47に指をかけ、ロック部材40の係合部24への移動を補助してもよい。このようにした場合は、ロック部材40とブラケット20との係合がより強固なものとなり、固定時のぐらつきがより抑制される。
【0057】
(2)取り外し方法
次に、固定状態の手摺30をブラケット20から取り外す方法について説明する。
まず、
図3及び
図4に示す固定状態において、第1ロック部材40A(左側第1ロック部材40AL)と第2ロック部材40B(右側第2ロック部材40BR)との、両方の止めねじ47を緩める。
【0058】
その後、止めねじ47に指をかけ、
図9~
図11に示すように、左側第1ロック部材40ALを左方に、右側第2ロック部材40BRを右方に、それぞれ付勢部材60の付勢力に抗して移動させる。かかる左側第1ロック部材40ALを左方に移動させることで、第1連結部材50Aで連結された右側第1ロック部材40ARも左方に移動され、右側第2ロック部材40BRを右方に移動させることで、第2連結部材50B左側第2ロック部材40BLも右方に移動される。これにより、各ロック部材40は、各ブラケット20の係合部24との係合が解除される。
【0059】
そして、作業者が、左側第1ロック部材40ALと右側第2ロック部材40BRとを移動させた状態を維持したまま(
図10参照)、手摺30を上方に持ち上げることにより、ブラケット20から手摺30が取り外される。
【0060】
(実施形態のまとめ)
本実施形態の手摺装置10は、ブラケット20に対して手摺30を固定したり取り外したりすることが可能に形成されている。手摺装置10では、手摺30に対してロック部材40が手摺30の延在方向に沿ってスライド移動可能に設けられている。そして、作業者がブラケット20の上方から手摺30を乗せて、下方に押すことで、ブラケット20の固定部22がロック部材40の傾斜面42に接触して、ロック部材40を付勢部材60の付勢力に抗して左右方向に移動させる。そして、ブラケット20が収容された後に、付勢部材60の付勢力によりロック部材40が係合部24に入ることで固定状態となる。また、作業者がロック部材40をスライド移動させることで、固定解除状態となり、手摺30はブラケット20から取り外すことができる。
【0061】
以上、本実施形態によれば、ブラケット20に対して取り外し可能な手摺30の固定及び取り外しが容易であり、かつ固定時のぐらつきを抑制可能な手摺装置10を提供することができる。また、手摺30の内部にロック部材40を設けることで、手摺30から露出する部品を少なくすることができ、手摺装置10の美観を損ねないようにすることができる。また、手摺をブラケットに固定する際や取り外す際に、作業者が、工具を使用してロック部材をスライド移動させることなく係合させることが可能な手摺装置を提供することができる。
【0062】
また、本実施形態では、一方向からロック部材40をブラケット20の係合部24に係合させることで、ロック部材40を当該一方向にスライド移動させるという容易な方法で固定を解除することが可能な手摺装置10を提供することができる。
【0063】
また、本実施形態では、両方向からロック部材40をブラケット20の係合部24に係合させることで、より固定時のぐらつきを抑制可能な手摺装置10を提供することができる。また、ブラケット20の両方向にあるロック部材40をそれぞれスライド移動させなければ、手摺30を取り外せないことから、意図せず手摺30が取り外されてしまうことを防止することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、手摺30をブラケット20に固定する際に、作業者が、ロック部材40をブラケット20の係合部24に係合させる操作をすることなく係合させることが可能な手摺装置10を提供することができる。また、意図せずロック部材40をスライド移動した場合であっても、ロック部材40をブラケット20の係合部24に係合させる操作をすることなく、ロック部材40がブラケット20の係合部24に係合した状態に戻すことが可能な手摺装置10を提供することができる。
【0065】
また、本実施形態では、ブラケット20の延在方向の一方側に設けられる第1ロック部材40Aと、他方側に設けられる第2ロック部材40Bとの対応する係合部24への係合を、1つの付勢部材60で実行させることが可能となる。このため、ロック部材40と連結部材50との組み付け作業が容易になることや、部品が少なくなることによるコストの低減が可能となる。また、第1ロック部材40Aと第2ロック部材40Bとの両方を同時にスライド移動させなければ、手摺30が取り外せないことから、意図せず手摺30が取り外されてしまうことを防止することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態では、手摺30の内部にブラケット20を挿入するだけで、ロック部材40がブラケット20を係合可能な位置まで移動させることが可能となり、手摺装置10の固定作業を容易にすることが可能な手摺装置を提供することができる。
【0067】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態とブラケット20及びロック部材40の形状が異なる。以下、上述した第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明し、重複する部分については説明を簡略又は省略する。なお、第1の実施形態と同一の構成については、第1の実施形態と同一の符号を付しており、詳細な説明については省略する。
【0068】
図12A及び
図12Bは、レール34の内部の斜視図である。
図12Aに示されるように、本実施形態のブラケット20において固定部22の前後両側には、左右方向に沿って延びる固定溝26が形成されている。
【0069】
一方、本実施形態のロック部材40における嵌合突起41の先端には、上下方向に貫通し、嵌合突起41の先端側から後端側に向かって延びる係合溝48が形成されている。この係合溝48により、嵌合突起41の先端は前後方向に分離している。
【0070】
図12Bに示されるように、手摺30をブラケット20に固定する場合、作業者がブラケット20をレール34の下方から挿入し、付勢部材60の付勢力により2つに分離している嵌合突起41の先端はそれぞれ固定溝26に挿入される。
【0071】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0072】
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0073】
例えば、上述した各実施形態では、ブラケット20が壁面12に設置していたが、この限りではなく、床から立設する支柱に対してブラケット20を設置してもよい。また、各実施形態は、手摺30が2つのブラケット20で固定される構成であったが、この限りではなく、3つ以上のブラケット20により手摺30を固定してもよい。
【0074】
また、各ロック部材40は、同じ形状を備えている場合に限定されず、異なる形状を備えてもよい。例えば、左側第1ロック部材40ALは前方側の溝部44Bを備えなくてもよいし、右側第2ロック部材40BRは後方側の溝部44Gを備えなくてもよい。また、左側第2ロック部材40BLと右側第1ロック部材40ARとは、ねじ穴部46を備えなくてもよい。
【0075】
また、上述した各実施形態では、ロック部材40として、第1連結部材50Aにより連結された第1ロック部材40A(左側第1ロック部材40ALと右側第1ロック部材40AR)と、第2連結部材50Bにより連結された第2ロック部材40B(左側第2ロック部材40BLと右側第2ロック部材40BR)との両方を備え、ブラケット20の係合部24に左右方向両側から入り込むようにしているが、この場合に限定されず、いずれか一方のみ、すなわち、第1ロック部材40Aのみや第2ロック部材40Bのみを備え、各ブラケット20の係合部24に左右方向の片側のみから入り込むようにしてもよい。このように構成することにより、固定状態の手摺30をブラケット20から取り外す際に、一方のロック部材40のみをスライド移動させるだけで済む。また、この場合には、ブラケット20の係合部24は、ロック部材40を備えている方向のみに備えるようにしてもよいが、上述した実施形態のように左右方向両側に備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
(第1の実施形態)
10 手摺装置 12 壁面
14 扉 20 ブラケット
20L 左ブラケット 20R 右ブラケット
22 固定部 24 係合部
25 突部 27 アンカーボルト
28 ナット 29 ブラケットカバー
30 手摺 31 エンドキャップ
32 笠木 32A 幅広口
34 レール 34A 第1丸孔
34B 第2丸孔 34C ピン
40 ロック部材 40A 第1ロック部材
40AL 左側第1ロック部材 40AR 右側第1ロック部材
40B 第2ロック部材 40BL 左側第2ロック部材
40BR 右側第2ロック部材 41 嵌合突起
42 傾斜面 43 長孔部
44 溝部 45 側孔部
46 ねじ穴部 47 止めねじ
50 連結部材 50A 第1連結部材
50B 第2連結部材 51 折り曲げ部
52 リング部 60 付勢部材
61 フック部 130 固定手摺
(第2の実施形態)
26 固定溝 48 係合溝