IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コマツ産機株式会社の特許一覧

特開2022-78895モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法
<>
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図1
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図2
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図3
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図4
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図5
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図6
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図7
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図8
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図9
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図10
  • 特開-モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078895
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 13/00 20060101AFI20220518BHJP
   B30B 15/14 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B30B13/00 C
B30B15/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189873
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】394019082
【氏名又は名称】コマツ産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸浩
【テーマコード(参考)】
4E089
4E090
【Fターム(参考)】
4E089ED02
4E089FC03
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA02
4E090EC04
4E090FA02
4E090GA02
4E090HA01
(57)【要約】
【課題】プレスラインの速度を容易に変更可能なモーション生成装置を提供すること。
【解決手段】モーション生成装置3は、上金型7aが取り付けられるスライド11と、下金型7bが載置されるボルスタ12と、スライド11を上下方向に往復動作させるサーボモータ15と、を備えるプレス装置5のスライド11のモーションを生成するモーション生成装置であって、モーション生成部32を備える。モーション生成部32は、サイクルタイムTStdにおけるスライド11の標準モーションMiのうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む第1領域Mim(1)が同じになり、上死点におけるスライド11の速度が標準モーションMiと同じ速度になるように、サイクルタイムTStdと異なるサイクルタイムTmにおけるスライド11の派生モーションMimを生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型が取り付けられるスライドと、下金型が載置されるボルスタと、前記スライドを上下方向に往復動作させるサーボモータと、を備えるプレス装置の前記スライドのモーションを生成するモーション生成装置であって、
第1のサイクルタイムにおける前記スライドの第1モーションのうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む所定部分が同じになり、前記上死点における前記スライドの速度が前記第1モーションと同じ速度になるように、前記第1のサイクルタイムと異なる第2のサイクルタイムにおける前記スライドの第2モーションを生成するモーション生成部を備えた、モーション生成装置。
【請求項2】
前記第2のサイクルタイムは、前記第1のサイクルタイムよりも長く、
前記モーション生成部は、前記所定部分以外の部分において前記スライドの速度を前記第1モーションよりも減速することによって前記第2モーションを生成する、
請求項1に記載のモーション生成装置。
【請求項3】
前記第2のサイクルタイムは、前記第1のサイクルタイムよりも長く、
前記モーション生成部は、前記所定部分以外の部分において、前記第1モーションにおける前記スライドの速度よりも減速し、前記上死点に達するまでに前記第1モーションと同じ速度に戻すことによって前記第2モーションを生成する、
請求項1に記載のモーション生成装置。
【請求項4】
前記所定部分は、前記上死点から、前記プレス装置にワークを搬送または搬出するフィーダ装置と干渉しない前記スライドの高さの範囲に達するまでを含み、
前記モーション生成部は、前記干渉しない前記スライドの高さの範囲内において、前記スライドの速度を前記第1モーションよりも減速するように、前記第2モーションを生成する、請求項2または3に記載のモーション生成装置。
【請求項5】
上金型および下金型を用いてワークをプレス加工するプレス装置であって、
前記上金型が取り付けられるスライドと、
前記下金型が載置されるボルスタと、
前記スライドを上下方向に往復動作させるサーボモータと、
第1のサイクルタイムにおける前記スライドの第1モーションのうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む所定部分が同じであり、前記上死点における前記スライドの速度が前記第1モーションと同じ速度になるような、前記第1のサイクルタイムと異なる第2モーションを記憶する記憶部と、
前記スライドが前記第2モーションの動きとなるように前記サーボモータを駆動する制御部と、を備えた、
プレス装置。
【請求項6】
前記第1モーションのうち少なくとも前記所定部分が同じになるように、前記第2モーションを生成するモーション生成部を更に備えた、
請求項5に記載のプレス装置。
【請求項7】
上金型が取り付けられるスライドと、下金型が載置されるボルスタと、前記スライドを上下方向に往復動作させるサーボモータと、を備えるプレス装置の前記スライドのモーションを生成するモーション生成方法であって、
第1のサイクルタイムにおける前記スライドの第1モーションのうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む所定部分が同じになり、前記上死点における前記スライドの速度が前記第1モーションと同じ速度になるように、前記第1のサイクルタイムと異なる第2のサイクルタイムにおける前記スライドの第2モーションを生成するモーション生成ステップを備えた、
モーション生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーション生成装置、プレス装置、およびモーション生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工を行う際に、タンデムプレスラインやトランスファプレスラインが用いられている。
【0003】
タンデムプレスラインでは、複数のプレス装置が並べて設置され、それぞれのプレス装置の間にワークを搬送するためのフィーダ装置(搬送装置)が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
タンデムプレスラインでは、複数のプレス装置とフィーダ装置の動きに位相差を設けて干渉を避けつつ最大の速度で動作させている。また、トランスファプレスラインでは、プレス装置とトランスファ装置の動きに位相差を設けている。
【0005】
また、プレスラインでは、起動時にフィーダ装置に過剰衝撃を与えないように、プレスラインの運転速度を抑え、徐々に定常運転状態になるように速度を上げていく制御が行われる場合がある。このような場合でも、プレス装置における成型精度を維持するために、成型領域におけるスライドのモーションを保ちつつサイクルタイムを変化させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-94617号公報
【特許文献2】特許第6510873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、プレス製品の生産量調整等の理由から、プレスラインの速度を落として運転したい場合がある。
【0008】
この場合、成型精度を維持するために特許文献2に示すように成型領域のモーションを保ちつつサイクルタイムを伸ばしてプレスラインの速度を低下させることが考えられるが、単にサイクルタイムを伸ばしてプレス装置の運転速度を下げただけではプレス装置とフィーダ装置の間で干渉が発生するおそれがある。
【0009】
この干渉を解消するためには、プレス装置だけでなくフィーダ装置を含めたプレスシステム全体を制御するプログラムの大掛かりな修正が必要となる。
本開示は、成型精度を維持しながらプレスラインの速度を容易に変更可能なモーション生成装置、プレス装置およびモーション生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の開示にかかるモーション生成装置は、上金型が取り付けられるスライドと、下金型が載置されるボルスタと、スライドを上下方向に往復動作させるサーボモータと、を備えるプレス装置のスライドのモーションを生成するモーション生成装置であって、モーション生成部を備える。モーション生成部は、第1のサイクルタイムにおけるスライドの第1モーションのうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む所定部分が同じになり、上死点におけるスライドの速度が第1モーションと同じ速度になるように、第1のサイクルタイムと異なる第2のサイクルタイムにおけるスライドの第2モーションを生成する。
【0011】
第2の開示にかかるプレス装置は、上金型および下金型を用いてワークをプレス加工するプレス装置であって、スライドと、ボルスタと、サーボモータと、記憶部と、制御部と、を備える。スライドは、上金型が取り付けられる。ボルスタは、下金型が載置される。サーボモータは、スライドを上下方向に往復動作させる。記憶部は、第1のサイクルタイムにおけるスライドの第1モーションのうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む所定部分が同じになり、上死点におけるスライドの速度が第1モーションと同じ速度になるように、第1のサイクルタイムと異なる第2モーションを記憶する。制御部は、スライドが第2モーションの動きとなるようにサーボモータを駆動する。
【0012】
第3の開示にかかるモーション生成方法は、上金型が取り付けられるスライドと、下金型が載置されるボルスタと、スライドを上下方向に往復動作させるサーボモータと、を備えるプレス装置のスライドのモーションを生成するモーション生成方法であってモーション生成ステップを備える。モーション生成ステップは、第1のサイクルタイムにおけるスライドの第1モーションのうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む所定部分が同じになり、上死点におけるスライドの速度が第1モーションと同じ速度になるように、第1のサイクルタイムと異なる第2のサイクルタイムにおけるスライドの第2モーションを生成する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、成型精度を維持しながらプレスラインの速度を容易に変更可能なモーション生成装置、プレス装置およびモーション生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示にかかる実施の形態におけるプレスシステムの構成を示す図。
図2】本開示にかかる実施の形態におけるプレスシステムのプレス装置の構成を示す図。
図3】本開示にかかる実施の形態におけるプレスシステムのフィーダ装置本体の構成を示す斜視図。
図4】本開示にかかる実施の形態におけるプレスシステムのフィーダ装置の構成を示すブロック図。
図5】本開示にかかる実施の形態におけるプレスシステムのライン制御装置およびモーション生成装置の構成を示すブロック図。
図6】本開示に係る実施の形態における標準モーションおよび派生モーションを示す図。
図7】本開示にかかる実施の形態におけるプレスシステムのモーション生成装置の動作を示すフロー図。
図8】(a)本開示にかかる実施の形態におけるプレスシステムのプレス装置の動作とフィーダ装置の動作の関係を示す図、(b)フィーダ装置の動作を説明するための側面模式図。
図9】(a)標準モーションにおけるプレス装置とフィーダ装置の動作の関係を示す図、(b)派生モーションにおけるプレス装置とフィーダ装置の動作の関係を示す図
図10】上死点に到達する際の速度を標準モーションの速度に合わせず減速したままの派生モーションを示す図。
図11】本開示にかかる実施の形態の変形例におけるプレス装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示にかかる実施の形態のタンデムプレスラインについて図面を参照しながら説明する。
【0016】
<構成>
(タンデムプレスラインの概要)
図1は、本開示にかかる実施の形態のプレスシステム1の全体構成を示す図である。
【0017】
本実施の形態のプレスシステム1は、プレスライン2と、モーション生成装置3と、を備える。
【0018】
プレスライン2は、各工程でプレス加工を行うとともに各工程間でワークWを搬送する。モーション生成装置3は、プレスライン2のプレス装置5a、5b、5c、5dのスライドのモーションを生成する。図1では、ワークWの搬送方向がXとして示されている。
【0019】
プレスライン2は、タンデムプレスラインであって、ライン制御装置4と、複数のプレス装置5a、5b、5c、5d(プレス装置を区別せず示すときには、プレス装置5と記載する)と、複数のフィーダ装置6a、6b、6c、6d、6e(フィーダ装置を区別せず示すときには、フィーダ装置6と記載する)と、を備える。
【0020】
フィーダ装置6aによってプレス装置5aに搬入されたワークWがプレス装置5aでプレス加工されて、フィーダ装置6bによってプレス装置5aからプレス装置5bに搬送される。そして、プレス装置5bでプレス加工されたワークWは、フィーダ装置6cによってプレス装置5bからプレス装置5cに搬送され、プレス装置5cでプレス加工される。プレス装置5cでプレス加工されたワークWは、フィーダ装置6dによってプレス装置5cから搬出されて、プレス装置5dに搬送される。プレス装置5dでプレス加工されたワークWは、フィーダ装置6eによってプレス装置5dから搬出される。
【0021】
(プレス装置5)
図2は、プレス装置5の構成を示す図である。
【0022】
各々のプレス装置5a、5b、5c、5dは、図1および図2に示すように、プレス装置本体10と、プレス制御装置20と、を有する。プレス制御装置20は、プレス装置本体10の動作を制御する。
【0023】
(プレス装置本体10)
プレス装置本体10は、スライド11と、ボルスタ12(図1参照)と、スライド駆動部13と、を有する。
【0024】
スライド11の下面には、図1に示すように、上金型7aが取り付けられる。ボルスタ12の上面には、下金型7bが載置される。スライド駆動部13は、スライド11を上下方向に駆動する。
【0025】
スライド駆動部13は、図2に示すように、サーボアンプ14と、サーボモータ15と、メインギア16と、位置検出エンコーダ17と、プランジャ18と、連結部材19と、を有する。
【0026】
サーボモータ15の駆動により、スライド11がボルスタ12に対して昇降動作することにより、上金型7aおよび下金型7bの間でプレス加工が行われる。
【0027】
サーボアンプ14は、プレス制御装置20からの指令に従って、サーボモータ15を駆動する。
【0028】
メインギア16は、ベルトや歯車等の連結部材9によってサーボモータ15の軸と連結されており、サーボモータ15の回転駆動によって回転する。位置検出エンコーダ17は、例えばメインギア16の回転軸に設けられており、メインギア16の回転位置(スライド11の位置ともいえる)を検出し、プレス制御装置20にフィードバックする。
【0029】
プランジャ18は、下端がスライド11に固定されてスライド11を上下方向に移動させる。連結部材19は、メインギア16とプランジャ18を連結する。連結部材19は、メインギア16の回転運動をプランジャ18の上下運動に変換する。
【0030】
(プレス制御装置20)
プレス制御装置20は、プレス制御部21と、プログラム記憶メモリ22と、表示モニタ23と、入力キーボード24と、受信部25と、を有する。
【0031】
プレス制御部21は、プロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、メモリに記憶されているプログラムに従ってプレス装置本体10の制御のための処理を実行する。メモリは、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。メモリは、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。メモリは、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。
【0032】
本実施の形態では、プログラム記憶メモリ22は、プレス制御部21と別構成として記載しているが、プレス制御部21のメモリに含まれていてもよい。
【0033】
プログラム記憶メモリ22は、複数の金型セットに対応する複数のスライド11の標準モーションを実行する標準プログラムおよび派生モーションを実行する派生プログラムを記憶している。標準モーションおよび派生モーションについては後述する。
【0034】
プレス制御部21は、プログラム記憶メモリ22に記憶されているプログラムで実行されるモーションに沿ってスライド11が動作するように、位置検出エンコーダ17からスライドの位置情報を取得しながら、サーボアンプ14に指令信号を送信してサーボモータ15を駆動する。図2からも明らかなように、サーボモータ15の速度を変化させることにより、スライド11の速度、すなわちプレス速度が変化する。
【0035】
表示モニタ23は、プレス装置5の設定、運転状態等の表示を行う。例えば、表示モニタ23に、複数のスライドのモーションが表示され、オペレータがモーションの選択を行う。
【0036】
入力キーボード24は、オペレータが各種設定の入力を行う。例えば、表示モニタ23に表示された複数のモーションのうち1つのモーションの選択を行う。
【0037】
受信部25は、ライン制御装置4から送信される同期信号を受信する。同期信号は、複数のプレス装置5a~5dと、フィーダ装置6a~6eの起動タイミングを調整する信号である。プレス制御部21は、同期信号に基づいてプレス装置本体10を駆動する。
【0038】
また、受信部25は、モーション生成装置3によって生成された派生モーションを実行する派生プログラムを受信する。受信部25で受信された派生プログラムは、プレス制御部21の動作によってプログラム記憶メモリ22に記憶される。
【0039】
(フィーダ装置6)
フィーダ装置6a、6b、6c、6d、6eは同様の構造である。
【0040】
図3は、フィーダ装置6を示す斜視図である。図3では、搬送方向Xに対して垂直な幅方向Yが示されており、搬送方向Xを向いて左方向がYL、右方向YRで示されている。図4は、フィーダ制御装置50の構成を示すブロック図である。
【0041】
フィーダ装置6は、図4に示すように、フィーダ装置本体60と、フィーダ制御装置50と、を有する。フィーダ制御装置50は、フィーダ装置本体60の動作を制御する。
【0042】
(フィーダ装置本体60)
フィーダ装置本体60は、スライド機構61と、アーム支持部62と、回動部63と、第1アーム64と、伸縮部65と、第2アーム66と、回動部67と、搬送バー68と、回動部69と、を有する。
【0043】
スライド機構61は、プレス装置5aとプレス装置5bの間に配置されている。スライド機構61は、ボールネジ611と、ガイド612と、サーボモータ70aと、を有する。ボールネジ611は、搬送方向Xに沿って、プレス装置5aからプレス装置5bに向かって延びている。ガイド612は、円柱状であって、ボールネジ611の下方においてボールネジ611と平行に配置されている。サーボモータ70aは、ボールネジ611の一端に減速装置等を介して接続されており、ボールネジ611を回転させる。
【0044】
アーム支持部62は、箱状の部材であって、第1アーム64を回転可能に支持する。アーム支持部62の左方向YL側の側面には、上下一対のブロック621が設けられている。上側のブロック621には、搬送方向Xに沿って貫通孔が形成されており、その内側面には、ネジ形状が形成されている。ボールネジ611は、上側のブロック621の貫通孔を挿通し、貫通孔の内側面のネジ形状と螺合している。また、下側のブロック621には、搬送方向Xに沿って貫通孔が形成されており、ガイド612が挿通されている。サーボモータ70aの回転によってボールネジ611が回転すると、ガイド612にガイドされてアーム支持部62は搬送方向Xの上流側または下流側に移動することができる(矢印A1参照)。
【0045】
回動部63は、アーム支持部62に設けられており、第1アーム64を回動する。回動部63は、サーボモータ70bと図示しない減速部とを有する。サーボモータ70bは、アーム支持部62の内側に固定されている。サーボモータ70bは、駆動軸が右方向YR側に伸びるように配置されている。
【0046】
第1アーム64は、その上端部においてサーボモータ70bの駆動軸に減速部を介して固定されている。第1アーム64は、幅方向Yに沿った中心軸C1を中心に回動する(矢印A2参照)。
【0047】
第1アーム64は、伸縮可能に構成されており、中空の第1部分641と、中空の第2部分642とを有する。第1部分641の上端部は、サーボモータ70bの駆動軸に減速部を介して固定されている。第1部分641の下端部は、第2部分642の上端部の内側に入り込んでいる。
【0048】
伸縮部65は、第1アーム64に設けられており、第1アーム64を伸縮する。伸縮部65は、ボールネジ651と、サーボモータ70cと、嵌合ナット652と、を有する。ボールネジ651は、第1アーム64の内側に第1アーム64の長手方向に沿って配置されている。ボールネジ651は、第1部分641と第2部分642に亘って配置されている。サーボモータ70cは、第1部分641の内側に固定されている。サーボモータ70cの駆動軸が減速部を介してボールネジ651に連結されている。嵌合ナット652は、貫通孔が第1アーム64の長手方向に沿うように第2部分642の内側に固定されている。嵌合ナット652の貫通孔にボールネジ651が挿通され、ボールネジ651は、貫通孔の内側面に形成されているネジ形状に嵌合している。
【0049】
これによってサーボモータ70cの駆動によりボールネジ651が回転すると、嵌合ナット652とともに第2部分642が第1部分641に対して移動するため、第1アーム64を伸縮することができる(矢印A3参照)。
【0050】
第2アーム66は、第1アーム64の下端に第1アーム64の長手方向に沿って配置されている。第2アーム66の長手方向は、第1アーム64の長手方向と一致している。
【0051】
回動部67は、第1アーム64の第2部分642に設けられており、第2アーム66を回動する。回動部67は、サーボモータ70dと図示しない減速部とを有する。サーボモータ70dは、第2部分642の内側に固定されている。サーボモータ70dは、第1アーム64の長手方向に駆動軸が沿うように配置されており、駆動軸は下方に伸びている。
【0052】
第2アーム66は、その上端がサーボモータ70dの駆動軸に減速部を介して固定されている。第2アーム66は、その長手方向を中心軸C2として回動することができる(矢印A4参照)。
【0053】
搬送バー68は、第2アーム66の下端に幅方向Yに沿って配置されている。搬送バー68には、ワークWを保持する保持具80が着脱可能に取り付けられる。搬送バー68は、連結部681と、左バー682と、右バー683と、バー回動部684と、を有する。連結部681は、第2アーム66の下端と連結している。左バー682は、連結部681の左方向YL側に回動可能に取り付けられている。右バー683は、連結部681の右方向YR側に回動可能に取り付けられている。左バー682と右バー683は、連結軸685で連結されている。左バー682と右バー683と連結軸685は、その長手方向を中心軸C3として回動する。
【0054】
バー回動部684は、連結部681の内側に配置されており、サーボモータ70eと減速部を有する。サーボモータ70eの駆動軸が減速部を介して連結軸685の周囲のネジ形状と噛み合っている。サーボモータ70eの回転によって連結軸685が回転し、連結軸685と繋がっている左バー682と右バー683も回動する(矢印A5参照)。
【0055】
回動部69は、第2アーム66に設けられている。搬送バー68の連結部681は、第2アーム66の下端部に、搬送方向Xに沿った方向を中心軸C4として回動可能に連結されている。回動部69は、サーボモータ70fと減速部を有する。サーボモータ70fの駆動軸が減速部を介して連結部681の上端部に固定されている。サーボモータ70fの駆動により搬送バー68は、搬送方向Xを中心軸C4として回動する(矢印A6参照)。
【0056】
また、図4のブロック図に示すように、フィーダ装置本体60は、サーボモータ70(詳細にはサーボモータ70a~70f、総括する際にはサーボモータ70と記載する)と、サーボアンプ71と、位置検出エンコーダ72と、を有する。サーボアンプ71は、フィーダ制御装置50からの指令に従って、サーボモータ70を駆動する。位置検出エンコーダ72は、サーボモータ70の位置を検出し、フィーダ制御装置50にフィードバックする。なお、詳細には、サーボモータ70a~70fごとにサーボアンプおよび位置検出エンコーダが設けられている。
【0057】
(フィーダ制御装置50)
フィーダ制御装置50は、フィーダ装置本体60を制御する。
【0058】
フィーダ制御装置50は、フィーダ制御部51と、プログラム記憶メモリ52と、受信部53と、を備える。なお、本実施の形態のフィーダ制御装置50には、表示モニタと入力キーボードが設けられていないが、設けられていてもよい。
【0059】
フィーダ制御部51は、プロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、メモリに記憶されているプログラムに従ってフィーダ装置本体60の制御のための処理を実行する。メモリは、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。メモリは、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。メモリは、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。メモリは、フィーダ装置本体60を制御するためのプログラムおよびデータを記憶しており、複数のモーションを記憶している。
【0060】
本実施の形態では、プログラム記憶メモリ52は、フィーダ制御部51と別構成として記載しているが、フィーダ制御部51のメモリに含まれていてもよい。
【0061】
フィーダ制御部51は、プログラム記憶メモリ52に記憶されているモーションに沿ってフィーダ装置本体60が駆動するように、サーボアンプ71に指令を送信することによりサーボモータ70を駆動させてプレス装置5に対してワークWの搬送を行う。
【0062】
受信部53は、ライン制御装置4から送信される同期信号を受信する。フィーダ制御部51は、同期信号に基づいてフィーダ装置本体60を駆動する。
【0063】
(ライン制御装置4)
図5は、ライン制御装置4およびモーション生成装置3の構成を示すブロック図である。
【0064】
ライン制御装置4は、ライン制御部41と、プログラム記憶メモリ42と、表示モニタ43と、入力キーボード44と、受信部45と、送信部46と、を備える。
【0065】
ライン制御部41は、プロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、メモリに記憶されているプログラムに従ってプレス装置5およびフィーダ装置6の制御のための処理を実行する。メモリは、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。メモリは、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。メモリは、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。メモリは、プレス装置5およびフィーダ装置6を制御するためのプログラムおよびデータを記憶している。本実施の形態では、プログラム記憶メモリ42は、ライン制御部41と別構成として記載しているが、ライン制御部41のメモリに含まれていてもよい。
【0066】
プログラム記憶メモリ42は、使用する金型(上金型7aおよび下金型7b)のセットに対するプレスライン2のモーションを記憶している。使用する金型のセットとは、ワークWから所定の製品を完成させるために複数のプレス装置5a、5b、5c、5dで使用される複数の金型のことである。プレスライン2のモーションは、プレス装置5a~5dとフィーダ装置6a~6eのモーションを含んでいる。詳しくは後述するが、プログラム記憶メモリ42には、予め設定されているプレス装置5の標準モーションを実行する標準プログラムと、標準モーションを用いてモーション生成装置3で作成された派生モーションを実行する派生プログラムが記憶されている。
【0067】
表示モニタ43は、使用する金型セットを選択するための表示、モーションを選択するための表示、プレスライン2の条件を設定するための表示、または運転状態の表示等が行われる。
【0068】
入力キーボード44は、オペレータが各種設定の入力を行う。例えば、使用する金型セットの選択や、表示モニタ23に表示された複数のモーションのうち1つのモーションの選択を行う。
【0069】
受信部45は、後述するモーション生成装置3で作成された派生モーションを受信し、プログラム記憶メモリ42に記憶する。送信部46は、受信した派生モーションをプレス装置5a~5dに送信する。
【0070】
(モーション生成装置3)
モーション生成装置3は、標準モーションからサイクルタイムの異なる派生モーションを生成する。
【0071】
モーション生成装置3は、図5に示すように、受信部31と、モーション生成部32と、表示モニタ33と、入力キーボード34と、プログラム記憶メモリ35と、送信部36と、を有する。
【0072】
受信部31は、プレス制御装置20のプログラム記憶メモリ22に記憶されているスライド11の標準モーションを実行する標準プログラムを受信する。なお、標準プログラムがライン制御装置4にも記憶されている場合には、受信部31はライン制御装置4から標準プログラムを受信してもよい。
【0073】
プレス制御装置20には、登録されている金型セットの数分の標準プログラムが設けられている。例えば、n個の金型セットをプレス装置5a~5dに装着可能な場合には、n個の標準プログラムP1~Pnが予め設けられている。すなわち、金型セット(1)に対応する標準プログラムP1が予め設定されており、金型セット(2)に対応する標準プログラムP2が予め設定されており、金型セット(n)に対応する標準プログラムPnが予め設定されている。
【0074】
標準プログラムP1~Pnを用いてプレス装置5で実行されるモーションを標準モーションM1~Mnとする。標準モーションM1~Mnの各々は、対応する金型セットを用いた場合にプレス装置5とフィーダ装置6の干渉が生じないように予め設定されている。
【0075】
なお、標準プログラムをPi(i=1~n)として示し、標準モーションをMi(i=1~n)と示す。なお、nは1であってもよい。また、i=1~nの記載は適宜省略する。
【0076】
モーション生成部32は、標準プログラムP1~Pnのいずれかの標準プログラムPiの標準モーションMiからサイクルタイムの異なるm個の派生モーションMij(j=1~m)を実行する派生プログラムPij(j=1~m)を作成する。標準プログラムPiの派生プログラムをPij(j=1~m)として表し、標準モーションMiの派生モーションをMij(j=1~m)として示す。なお、mは1であってもよい。また、j=1~mの記載は適宜省略する。
【0077】
サイクルタイムが異なるとは、SPM(Shot Per minute)が異なることである。SPMはプレス装置による1分間当たりのショットの数であり、SPMが大きいほどサイクルタイムは短く(または小さく)なり、SPMが小さいほどサイクルタイムは長く(または大きく)なる。標準モーションMiが、プレスライン2の最高速度として例えば20SPMに設定されている場合、20SPMよりも小さい19SPMや18SPM等の派生モーションMijが作成される。例えば、プレスライン2の仕様上の最低速度のSPMまで、1SPM刻み若しくは0.5SPM刻みで派生モーションMijを作成してもよい。また、派生モーションの数mは、ユーザの要望によって設定してもよい。
【0078】
モーション生成部32は、プロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、メモリに記憶されているプログラムに従って派生モーションMijを作成するための処理を実行する。メモリは、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。メモリは、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。メモリは、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。メモリは、派生モーションMijを作成するためのプログラムを記憶している。本実施の形態では、プログラム記憶メモリ35は、モーション生成部32と別構成として記載しているが、モーション生成部32のメモリに含まれていてもよい。
【0079】
プログラム記憶メモリ35は、受信部31で受信した標準プログラムPiを記憶する。また、プログラム記憶メモリ35は、標準プログラムPiから作成した派生プログラムPijも記憶する。
【0080】
(標準モーションMi)
次に、プレス装置5に記憶されている標準モーションMiについて説明する。
【0081】
図6は、標準プログラムPiによって実行される標準モーションMiおよび後述する派生プログラムPijによって実行される派生モーションMijを示す図である。
【0082】
図6では、標準プログラムPiによって実行される標準モーションMiは、最も左側に記載されている。
【0083】
図6の左端の上段には、スライド11が上死点から下死点を通過し、再度上死点に到達するまでの1サイクルのプレス動作(標準モーションMi)が示されている。
【0084】
標準プログラムPiで実行される標準モーションMiにおけるサイクルタイムTStdの開始時刻(t0)では、スライド11は上死点に位置している。プレス制御部21によってサーボモータ15が駆動されてスライド11が下方に移動される。スライド11は、時刻t1において成型領域に到達し、ワークWに対してプレス加工が行われる。スライド11が時刻t2で下死点に達した後、スライド11は上方に移動し、時刻t3でスライド11は成型領域から離間し、ワークWに対するプレス加工が終了する。
【0085】
なお、成型領域とは、下金型7bに載置されたワークWに上金型7aが接触し、ワークWにプレス圧が加えられている領域のことである。
【0086】
時刻t1~t3の間、ワークWに対して上金型7aがタッチし成型が行われる。そして、時刻t4でスライド11は上死点に戻る。このようにして1回のサイクルが行われる。
【0087】
また、スライド11の標準モーションMiにおいて、上死点から成型領域の終了位置までの領域を第1領域Mi(1)とし、成型領域の終了位置から次の上死点までの領域を第2領域Mi(2)とする。第1領域Mi(1)は、時刻t0(上死点)から時刻t2(下死点)を超えて時刻t3までの領域であり、第2領域Mi(2)は、時刻t3~時刻t4(上死点)までの領域である。なお、図6において、標準モーションMiにおける上死点から下死点までの時間が、tBtStdとして示されている。
【0088】
本実施の形態の標準モーションMiでは、SPMが最大値になるように設定されており、この時のサイクルタイムがTStdと示されている。なお、標準モーションMiでは、1サイクルに要する時間(サイクルタイム)が、最小値に設定されているともいえる。
【0089】
図6の左端の中段には、スライド11のモーションに対応するサーボモータ15のモータ速度Vi(スライドの速度の一例)が示されている。モータ速度Viは、最大のSPMとなる標準モーションMiを実行する速度に設定されている。図6に示すように、標準モーションMiを実行する際に、モータ速度Viは加減速されている。例えば、図6の左端の中段に示すように、上死点においてサーボモータ15の速度が最も小さくなり、上死点から下死点に向かう部分においてサーボモータ15の速度が大きくなり、下死点においてサーボモータ15の速度が小さくなる。そして、サーボモータ15の速度は、下死点から上死点に向かう部分において大きくなり、上死点において小さくなる。
【0090】
図6の下段には、標準モーションMiを実行するモータの速度に対して、各々の上段に記載のモーションを実行するモータの速度割合Vpi(%)が示されている。
【0091】
下段の左端以外のグラフは、標準モーションMiを実行するモータの速度に対する、派生モーションMij(後述する)を実行するモータの速度の割合を示す。図6の左端の下段は、標準モーションMiを実行するモータの速度Viに対する、標準モーションMiを実行するモータの速度Viの割合が示されているため、速度割合Vpiが100(%)となる。この100%の速度割合が、最大速度割合として示されている。このように左端下段の最大速度割合とは、標準モーションMiを実行するためのモータの速度Viを示している。換言すると、標準モーションMiにおいて速度割合Vpiが100%であるということは、サーボモータ15が最大速度で回転し続けることを意味するものではない。
【0092】
(派生モーションMij)
次に、モーション生成部32によって、標準モーションMiから作成される派生モーションMijについて説明する。
【0093】
図6の標準モーションMiの右側には、標準モーションMiから作成される派生モーションMij(j=1~m)が示されている。図6では、mが大きくなるに従ってSPMが小さく(サイクルタイムが長く)なるようにモーションが設定されている。
【0094】
図6の標準モーションMiの右側には、サイクルタイムがT1(T1>TStd)の派生モーションMi1が示されている。派生モーションMi1における上死点から成型領域の終了位置までの領域を第1領域Mi1(1)とし、成型領域の終了位置から次の上死点までの領域を第2領域Mi1(2)とする。第1領域Mi1(1)は、時刻t0(上死点)から時刻t2(下死点)を超えて時刻t3までの領域であり、第2領域Mi1(2)は、時刻t3~時刻t5(上死点)までの領域である。
【0095】
派生モーションMi1は、第1領域Mi1(1)が標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同じモーション形状を保ったまま、標準モーションMiよりもSPMが小さく設定されている。派生モーションMi1を示すグラフにおいて、標準モーションMiの第2領域Mi(2)が点線で示されており、時刻t4も示されている。
【0096】
派生モーションMi1の第1領域Mi1(1)は、標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同じモーションとなるように作成されている。このため、派生モーションMi1における上死点から下死点までの時間tBt1は、標準モーションMiにおける上死点から下死点までの時間tBtStdと同じ時間に設定される。
【0097】
派生モーションMi1の第2領域Mi1(2)は、標準モーションMiの第2領域Mi(2)と比べて時間が長く設定されている。
より具体的には、図6の左端から2列目の下段の速度割合Vp1および中段のモータ速度V1に示すように、第2領域Mi1(2)の範囲内でモータ速度を標準モーションMiにおけるモータ速度Viからある程度まで低下させ、その後に再び標準モーションMiにおけるモータ速度Viまで戻している。これにより、結果的に図6の上側に示すように標準モーションMiの第2領域Mi(2)の時間が長くなったようなモーションとしている。このように、モータ速度を標準モーションMiにおけるモータ速度Viより一旦減速させることにより、サイクルタイムがT1(>TStd)となるようにしている。したがって、派生モーションMi1における上死点に達する時刻t5は、時刻t4よりも遅くなっている。なお、プレス速度の減速度、加速度については、プレス装置5の能力によって決めることができる。また、プレス速度をどの程度まで低下させるかについては、サイクルタイムの長さと、プレス速度の減速度、加速度によって決めることができる。第2領域Mi1(2)の範囲内においてプレス速度が標準モーションMiの速度よりも減速し始める時点は、スライドがフィーダ装置と干渉の虞がない高さまで上昇した時点以降(後述する搬送領域R1)とするのが望ましい。
【0098】
上述した通り、派生モーションMi1において第2領域Mi1(2)を標準モーションMiの第2領域Mi(2)よりも時間を長くするために、サーボモータ15の速度V1を標準モーションMiにおける速度Viよりも減速させ、上死点に達する時刻t5までに加速して標準モーションMiにおける速度Viに戻している。これによって、次のサイクルの際に標準モーションMiと同様の速度で上死点からスライド11を駆動することが可能となるため、派生モーションMi1の第1領域Mi1(1)を標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同じモーションにすることができる。したがって、派生モーションMi1を、標準モーションと同じ成型精度を保ったまま標準モーションよりも長いサイクルタイムをもつモーションとすることができる。
【0099】
図6の派生モーションMi1の右側には、派生モーションMi2が示されている。派生モーションMi2における上死点から成型領域の終了位置までの領域を第1領域Mi2(1)とし、成型領域の終了位置から次の上死点までの領域を第2領域Mi2(2)とする。第1領域Mi2(1)は、時刻t0(上死点)から時刻t2(下死点)を超えて時刻t3までの領域であり、第2領域Mi2(2)は、時刻t3~時刻t6(上死点)までの領域である。
【0100】
派生モーションMi2は、第1領域Mi2(1)が標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同じモーション形状を保ったまま、派生モーションMi1よりもSPMが小さく設定されている。派生モーションMi2を示すグラフにおいて、標準モーションMiの第2領域Mi(2)が点線で示されており、時刻t4も示されている。
【0101】
派生モーションMi2は、その第1領域Mi2(1)が標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同じモーションとなるように作成されている。このため、派生モーションMi2における上死点から下死点までの時間tBt2は、標準モーションMiにおける上死点から下死点までの時間tBtStdと同じ時間に設定される。
【0102】
派生モーションMi2の第2領域Mi2(2)は、標準モーションMiの第2領域Mi(2)および派生モーションMi1の第2領域Mi1(2)と比べて時間が長く設定されている。このため、派生モーションMi1における上死点に達する時刻t6は、時刻t4、t5よりも遅くなっている。なお、派生モーションMi2の第2領域Mi2(2)の時間を長くすることの詳細については、上述した派生モーションMi1の第2領域Mi1(2)の時間を長くすることと同様であるので、説明を省略する。
【0103】
上述した通り、派生モーションMi2において第2領域Mi2(2)を派生モーションMi1の第2領域Mi1(2)および標準モーションMiの第2領域Mi(2)よりも時間を長くするために、図6の左端から3列目の下段の速度割合Vp2および中段のモータ速度V2に示すように、サーボモータ15の速度V2を標準モーションMiにおける速度Viおよび派生モーションM1の速度V1よりも減速させ、上死点に達する時刻t5までに加速して標準モーションMiにおける速度Viに戻している。
【0104】
このように、SPMが順に小さくなるように設定された派生モーションMij(j=1~m)が作成される。本実施の形態では、プレスライン2の最低SPMにおける派生モーションMimまで作成されている。標準モーションMiにおけるSPMが20であり、最低SPMが16であり、派生モーションMijの作成間隔が1SPMに設定されている場合、mは4となる。この場合、SPMが19の派生モーションMi1と、SPMが18の派生モーションMi2と、SPMが17の派生モーションMi3と、SPMが16の派生モーションMi4が生成される。
【0105】
上述した派生モーションMi1、Mi2と同様に、派生モーションMimにおける上死点から成型領域の終了位置までの領域を第1領域Mim(1)とし、成型領域の終了位置から次の上死点までの領域を第2領域Mim(2)とする。第1領域Mim(1)は、時刻t0(上死点)から時刻t2(下死点)を超えて時刻t3までの領域であり、第2領域Mim(2)は、時刻t3~時刻t(4+m)(上死点)までの領域である。なお、時刻t(4+m)は、派生モーションMimの上死点への到達時刻を示しており、mが1の場合は、派生モーションMi1に示す時刻t5となり、mが2の場合は派生モーションMi2に示す時刻t6となる。また、mが4の場合には、他の派生モーションMi1、Mi2、Mi3における上死点への到達時刻がt5、t6、t7と表すことができるため、時刻t(4+m)はt8となる。
【0106】
派生モーションMimは、第1領域Mim(1)が標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同じモーション形状を保ったまま、SPMが最も小さく設定されている。なお、派生モーションMimを示すグラフにおいて、標準モーションMiの第2領域Mi(2)が点線で示されており、時刻t4も示されている。
【0107】
派生モーションMimは、その第1領域Mim(1)が標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同じモーションとなるように作成されている。このため、派生モーションMimにおける上死点から下死点までの時間tBtmは、標準モーションMiにおける上死点から下死点までの時間tBtStdと同じ時間に設定される。
【0108】
派生モーションMimの第2領域Mim(2)は、標準モーションMiの第2領域Mi(2)および他の派生モーションMij(j=1~m-1)と比べて時間が長く設定されている。このため、派生モーションMimにおける上死点に達する時刻t(4+m)は、他の派生モーションの上死点に達する時刻よりも遅くなっている。なお、派生モーションMimの第2領域Mim(2)の時間を長くすることの詳細については、上述した派生モーションMi1の第2領域Mi1(2)の時間を長くすることと同様であるので、説明を省略する。
【0109】
また、派生モーションMimにおいて第2領域Mim(2)を標準モーションMiの第2領域Mi(2)よりも時間を長くするために、図6の右端の下段の速度割合Vpmおよび中段のモータ速度Vmに示すように、サーボモータ15の速度Vmを標準モーションMiおよび他の派生モーションMij(j=1~m-1)における速度よりも減速させ、上死点に達する時刻t(4+m)までに加速して標準モーションMiにおける速度に戻している。
【0110】
なお、以上の説明において、派生モーションMijにおける第1領域をMij(1)と示し、第2領域をMij(2)と示している。
【0111】
図5に戻り、表示モニタ33は、作成する派生モーションのSPMの間隔を設定するための表示が行われる。また、プレスライン2の仕様上の最低SPMまで派生モーションを作成してもよいが、表示モニタ33に、派生モーションを作成するSPMの値を入力するための表示が行われてもよい。また、表示モニタ33に、mの値を入力するための表示が行われてもよい。
【0112】
入力キーボード34は、オペレータが各種設定の入力を行う。例えば、派生モーションを作成するSPMの間隔や、上述したSPMの値の入力、またはmの値の入力等が行われる。
【0113】
送信部36は、モーション生成部32で作成された派生モーションMijを実行するための派生プログラムijをライン制御装置4に送信する。ライン制御装置4は、受信した派生プログラムijをプログラム記憶メモリ42に記憶するとともに、プレス制御装置20のプレス制御部21に送信する。プレス制御部21は、受信した派生プログラムijをプログラム記憶メモリ22に記憶する。
【0114】
(モーション生成方法)
次に、モーション生成部32が、標準モーションMiから派生モーションMijを作成する方法について説明する。
【0115】
図7は、モーション生成装置3の動作を示すフロー図である。
【0116】
はじめに、ステップS10において、プレス装置5に記憶されている複数の標準モーションMi(i=1~n)のうちいずれかの標準モーションMiが、オペレータによって表示モニタ33および入力キーボード34を用いて選択される。なお、上述したように、標準モーションMiは金型セット(i)と対応付けられている。
【0117】
次に、ステップS20において、受信部31が、プレス装置5のプレス制御装置20から選択された標準モーションMiを実行する標準プログラムPiを受信する。なお、モーション生成装置3は、プレス制御装置20から標準プログラムPiを無線または有線によって取得しなくてもよく、SDカード等の記憶媒体に標準プログラムPiを記憶し、記憶媒体から標準プログラムPiを取得してもよい。また、標準プログラムPiは、プレス装置5に限らず、標準プログラムPiを記憶している他の装置から取得してもよい。受信部31は、標準モーションMiを取得する取得部の一例である。
次に、ステップS30において、派生モーションMij(j=1~m)の作成条件がオペレータによって表示モニタ33および入力キーボード34を用いて設定される。作成条件は、例えば、派生モーションMij(j=1~m)を作成するSPMの間隔や、mの値等が設定される。
【0118】
次に、ステップS40において、モーション生成部32が、作成条件に基づいて、標準モーションMiから派生モーションMijを作成する。例えば、標準モーションMiのSPMを20とし、最低SPMを17とし、SPMの間隔を1と設定した場合、SPMが19、18、17の3つの派生モーションMij(j=1~3)が作成される。あるいは、SPMの間隔を設定するのではなく、mの値を3と設定した場合も、同様にSPMが19、18、17の3つの派生モーションMij(j=1~3)が作成される。
【0119】
モーション生成部32は、派生モーションMijを作成する際には、標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同様になるように第1領域Mij(1)を形成する。また、所望のSPMになるように、標準モーションMiの第2領域Mi(2)について、プレス速度を最大速度からある程度まで低下させ、その後に再び最大速度まで戻すことで第2領域Mij(2)を作成する。プレス速度の減速度、加速度については、プレス装置5の能力によって決めることができる。また、プレス速度をどの程度まで低下させるかについては、サイクルタイムの長さと、プレス速度の減速度、加速度によって決めることができる。第2領域Mi1(2)の範囲内においてプレス速度が減速し始める時点は、スライドがフィーダ装置と干渉の虞がない高さまで上昇した時点以降(搬送領域R1)とするのが望ましい。
【0120】
また、第2領域Mij(2)では、図6に示すように、スライド11の位置がなだらかに上死点に近づいているが、プレス速度を変化させているため、なだらかな形状に限るものではない。
【0121】
このように、派生モーションMijおよびスライドの速度変化を実行する派生プログラムPijが、設定された作成条件の数、作成される。
【0122】
次に、ステップS50において、送信部36は、派生モーションMij(j=1~m)を金型セット(i)と対応付けてライン制御装置4に送信する。
【0123】
送信された派生モーションMijは、ライン制御装置4において、プログラム記憶メモリ42に派生プログラムPijとして記憶されるとともに、送信部46からプレス制御装置20に送信され、プログラム記憶メモリ22に記憶される。
【0124】
(プレスラインの動作)
ライン制御装置4は、複数のプレス装置5a、5b、5c、5dと、複数のフィーダ装置6a、6b、6c、6d、6eに同期信号を送信し、同期をとる。
【0125】
図8(a)は、プレス装置5a、5b、5c、5dの動作とフィーダ装置6b、6c、6dの動作の関係を示す図である。図8(b)は、フィーダ装置6の動作を説明するための側面模式図である。
【0126】
図8(b)に示すように、搬送方向Xの上流側の位置と下流側の位置の中間の位置を原位置とする。原位置から搬送バー68を上流側の位置に移動させる動作をRT2(リターン2)動作とし、上流側の位置から下流側の位置にワークWを搬送する動作をADV(アドバンス)動作とし、下流側の位置から搬送バー68を原位置に移動させる動作をRT1(リターン1)動作とする。
【0127】
上流側の位置とは、フィーダ装置6aの場合は、例えばベルトコンベアによって搬送されてきたワークWの搬入位置であり、フィーダ装置6b、6c、6d、6eの場合は上流側のプレス装置5の金型の位置である。また、下流側の位置とは、フィーダ装置6eの場合は、例えばベルトコンベアによって搬出するための製品の搬出位置であり、フィーダ装置6a、6b、6c、6dの場合は、下流側のプレス装置5の金型の位置である。
【0128】
このように、フィーダ装置6は、RT2動作、ADV動作、およびRT1動作を繰り返す。
【0129】
プレス装置5a、5b、5c、5dとフィーダ装置6b、6c、6d、6eは、最も上流側のフィーダ装置6aの起動タイミングから所定の時間差で起動することによって同期がとられている。例えば、フィーダ装置6aが原位置から動きだすタイミングから所定間隔で、順にプレス装置5a、5b、5c、5dのスライド11が上死点から下死点に向かって動き出す。また、フィーダ装置6aが原位置から動きだすタイミングから所定間隔で、順にフィーダ装置6b、6c、6d、6eが動き出す。
【0130】
このため、プレス装置5a、5b、5c、5dおよびフィーダ装置6b、6c、6d、6eの各々の装置は、所定の時間差を設けて駆動している。
【0131】
図8(a)は、例えば16spmのモーションにおけるプレス装置5a、5b、5c、5dとフィーダ装置6b、6c、6dの動作の関係を示す図である。16spmでは、プレス装置5のサイクルタイムtiは3.75secとなる。
【0132】
プレス装置5a、5b、5c、5dの各標準モーションMiが図示されている。プレス装置5a、5b、5c、5dの上死点から下死点に向かう駆動のタイミングは所定の間隔tsに設定されている。
【0133】
また、図8(a)には、搬送領域R1が示されている。搬送領域R1は、スライド11の上死点近傍の領域を示す。プレス装置5間においてワークWを搬送する場合、プレス装置5のスライド11が上死点近傍に配置されている場合に、ワークWの取り出しおよび配置が行われる。
【0134】
例えば、プレス装置5aからプレス装置5bにワークWを搬送するフィーダ装置6bは、プレス装置5aが下死点を通過して搬送領域R1に達する付近で、プレス装置5aからワークWを取り出し、プレス装置5bが上死点から下死点に向かって移動して搬送領域R1より下がる前にプレス装置5bにワークWを配置している。
【0135】
スライド11が搬送領域R1に達する位置がP2として示されている。搬送領域R1は、プレス装置5とフィーダ装置6の干渉のおそれがないスライド11の高さの範囲に設定されている。
【0136】
プレス装置5aとプレス装置5bの間にフィーダ装置6bが配置されているため、3つの装置の動作の関係について説明すると、図8(a)に示すように、プレス装置5aのスライド11が上死点から下死点に至る途中の所定の位置P1に達したとき、プレス装置5bのスライド11が上死点から下死点に向かって動き出し、フィーダ装置6bがADV動作を終了してRT1動作を開始する。このとき、プレス装置5bのスライド11の位置は搬送領域R1内(上死点近傍)であるため、フィーダ装置6bがワークWを下流側のプレス装置5bに配置しても干渉が発生しない。
【0137】
次に、プレス装置5aのスライド11が下死点に達したとき、プレス装置5bのスライド11が位置P1に達し、フィーダ装置6bはRT1動作を行っている。
【0138】
次に、プレス装置5bのスライド11が下死点に達したとき、プレス装置5aのスライド11は下死点から上死点に向かっており、フィーダ装置6bはRT1動作を終了してRT2動作を開始する。
【0139】
次に、プレス装置5aのスライド11が位置P2に達したとき、プレス装置5bのスライド11は下死点から上死点に向かっており、フィーダ装置6bはRT2動作を終了してADV動作を開始する。このとき、プレス装置5aのスライド11の位置は搬送領域R1内(上死点近傍)であるため、フィーダ装置6bがプレス装置5aからプレス加工が終了したワークWを取り出しても干渉が発生しない。
【0140】
次に、プレス装置5aのスライド11が上死点に達すると、上述したサイクルが繰り返される。
【0141】
このように、フィーダ装置6bの動作の開始タイミングは、上流側のプレス装置5aと下流側のプレス装置5bのモーションと整合がとられている。具体的には、フィーダ装置6bのADV動作を終了してRT1動作を開始するタイミングは、プレス装置5aのスライド11の位置P1に達したタイミングと同じである。フィーダ装置6bがRT1動作を終了してRT2動作を開始するタイミングは、プレス装置5bのスライド11が下死点に達したタイミングと同じである。フィーダ装置6bがRT2動作を終了してADV動作を開始するタイミングは、プレス装置5aのスライド11が位置P2に達したタイミングと同じである。
【0142】
上述したプレス装置5a、フィーダ装置6bおよびプレス装置5bの動作の関係は、プレス装置5b、フィーダ装置6cおよびプレス装置5dの動作の関係と、プレス装置5c、フィーダ装置6dおよびプレス装置5cの動作の関係と同じである。
【0143】
このように、フィーダ装置6の動作は、上流側と下流側のプレス装置5のモーションに基づいて動作する。
【0144】
図9(a)は、図8(a)と同じ16SPMの標準モーションMiにおけるプレス装置5a、5b、5c、5dとフィーダ装置6b、6c、6dの動作の関係を示す図である。図9(b)は、12SPMの派生モーションMijにおけるプレス装置5a、5b、5c、5dとフィーダ装置6b、6c、6dの動作の関係を示す図である。12SPMでは、プレス装置5のサイクルタイムtijは5.00secとなる。
【0145】
図9(b)には、派生モーションMijが示されている。図6で示したように、派生モーションMijは、その第1領域が標準モーションMiの第1領域と同じになるように作成される。図9(b)における派生モーションMijは、搬送領域R1である上死点近傍にスライド11が位置する時間が標準モーションMiよりも長く設定されている。図9(b)に示す派生モーションMijは、第2領域Mij(2)の範囲内においてスライド11がフィーダ装置6と干渉の虞がない高さまで上昇した時点以降にプレス速度を減速し始めている例である。
【0146】
プレスライン2のSPMの値を小さくするために、プレス装置5a、5b、5c、5dのモーションを派生モーションMijに変更した場合でも、上死点から位置P2(搬送領域R1に達する位置)までのスライド11のモーションが標準モーションMiと同じである。
【0147】
上述したように、フィーダ装置6b、6c、6dの各動作のタイミングは、その上流側と下流側のプレス装置5の上死点から位置P2(搬送領域R1に達する位置)までのスライド11のモーションと整合がとられている。
【0148】
そのため、プレス装置5のモーションを標準モーションMiから派生モーションMijに変更した場合でも、フィーダ装置6のADV動作の速度を遅くするだけで、プレス装置5との干渉を避けることができるため、大掛かりなプログラムの変更なしにプレスライン2のSPMを小さくすることができる。
【0149】
なお、図9(b)では、派生モーションMijは、上死点から下死点を超えて位置P2までのモーションを標準モーションMiと同じに設定しているが、これに限らず、上死点から成型領域の終了位置までのモーションだけを同じにしてもよい。
【0150】
この場合、プレス装置5a、フィーダ装置6bおよびプレス装置5bの動作の関係で説明すると、プレス装置5aのスライド11が上死点から位置P2に達する時間が変化するため、プレスライン2によってはフィーダ装置6bがRT2動作を終了してADV動作を開始するタイミングの変更が必要な場合がある。
【0151】
この場合、フィーダ装置6のRT2動作を終了してADV動作を開始するタイミングのプログラムを変更する必要はあるが、ADV動作を終了してRT1動作を開始するタイミングと、RT1動作を終了してRT2動作を開始するタイミングは、標準モーションMiのときと同じである。
【0152】
そのため、上死点から成型領域の終了位置までのモーションを標準モーションMiと同じにする場合は、図9(b)のように上死点から位置P2までのモーションを標準モーションMiと同じにする場合に比べて、ADV動作の開始タイミングを変更するためプログラムの変更は多くなる。しかしながら、上死点から成型領域の終了位置までのモーションを標準モーションMiと同じにする場合は、上死点から成型領域の終了位置までのモーションを変更する場合と比べるとRT1動作の開始タイミングとRT2動作の開始タイミングを変更する必要がないため、プログラムの変更は少なくて済む。すなわち、上死点から成型領域の終了位置までのモーションだけを標準モーションMiと同じにする場合であっても、少しのプログラム変更だけでプレスライン2の速度を変更することができる。
【0153】
<特徴等>
(1)
本実施の形態のモーション生成装置3は、上金型7aが取り付けられるスライド11と、下金型7bが載置されるボルスタ12と、スライド11を上下方向に往復動作させるサーボモータ15と、を備えるプレス装置5のスライド11のモーションを生成するモーション生成装置であって、モーション生成部32を備える。モーション生成部32は、サイクルタイムTStd(第1のサイクルタイムの一例)におけるスライド11の標準モーションMi(第1モーションの一例)のうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む第1領域Mim(1)(所定部分の一例)が同じになり、上死点におけるスライド11の速度が標準モーションMiと同じ速度になるように、サイクルタイムTStdと異なるサイクルタイムTm(第2のサイクルタイムの一例)におけるスライド11の派生モーションMim(第2モーションの一例)を生成する。
【0154】
プレス装置5とフィーダ装置6の動作が干渉しないように予め設定されている標準モーションMiからサイクルタイムが異なる派生モーションMimを生成するときに、上死点から下死点までを標準モーションMiと同じモーションに設定する。
【0155】
これによって、派生モーションMimでプレス装置5を動かす場合において、小さいプログラム変更が必要な場合があるもののプレス装置5とフィーダ装置6の間の時間差を標準モーションMiと同様に保つことでプレス装置5とフィーダ装置6の干渉を避けることができる。
【0156】
このため、プレスライン2全体の大掛かりなプログラム変更等が必要なく、プレスライン2の速度を容易に変更することができる。
【0157】
また、派生モーションMimの成型領域のモーションは、標準モーションMiの成型領域のモーションと同じであるため、サイクルタイムを変更するためにモーションを変更した場合であっても、標準モーションMiと同じ成型精度を保つことができる。
【0158】
以上より、成型精度を維持しながらプレスラインの速度を容易に変更することができる。
【0159】
また、上死点におけるスライド11の速度を標準モーションMiと同じ速度になるように派生モーションMimを作成することにより、上死点から下死点までの間において、標準モーションMiの速度に合わせるように速度を上げる必要がないため、標準モーションMiの上死点から下死点までのモーションを派生モーションMimにおいても実現できる。
【0160】
なお、派生モーションMimにおいて上死点に到達する際の速度を標準モーションMiの速度に合わせずに減速したままの場合、上死点から下死点に向かって動く際に加速する必要が生じるため、上死点から下死点までのモーションが標準モーションMiと比べて変化することになる。
【0161】
図10は、上死点に到達する際の速度を標準モーションMiの速度に合わせずに減速したままの派生モーションMi2´を示す図である。モータ速度V2´および速度割合Vp2´に示すように、派生モーションMi2´では、モータ速度V2´が、図6で説明した派生モーションMi2と異なり、第2領域Mi2(2)´において減速したままとなっており、上死点(時刻t6´)においても減速した状態となっている。
【0162】
そのため、上死点(時刻t0)から下死点に向かって動き出す際に、モータ速度を標準モーションMiの速度に合わせるように加速する必要が生じ、下死点に到達する時刻t2´が、t2よりも遅くなり、上死点から下死点までの時間tBt2´も時間tBt2よりも遅くなる。同様に、成型領域の時刻t1´~t3´も時刻t1~t3と比較して遅くなる。
【0163】
このように、プレスライン2の速度を変えるために派生モーションを作成するが、その派生モーションの上死点から成型領域の終了位置までを含む部分のモーションが標準モーションと比較して変化すると、フィーダ装置6のアドバンス時間を長くするだけでは対応できず、プレスライン2全体のプログラム変更が必要となる場合がある。
【0164】
対して、本実施の形態のモーション生成装置3によって生成された派生モーションMimは、上死点から成型領域の終了位置までを含む部分のモーションが標準モーションMiと同じであるため、上述のように小さいプログラム変更が必要な場合があるもののプレス装置5とフィーダ装置6の間の時間差を標準モーションと同様に保つことでプレスライン2の速度を変化させることができる。
本実施の形態のモーション生成装置3では、サイクルタイムTm(第2のサイクルタイムの一例)は、サイクルタイムTStd(第1のサイクルタイムの一例)よりも長い。モーション生成部32は、標準モーションMi(第1モーションの一例)の第1領域Mi(1)(所定部分の一例)以外の部分においてサーボモータ15の速度を標準モーションMiよりも減速することによって派生モーションMim(第2モーションの一例)を生成する。
【0165】
このように生成された派生モーションMimを用いてプレス装置5を動作させることによって、サイクルタイムを長く、すなわち、SPM(shot per minute)を小さくすることができる。
(3)
本実施の形態のモーション生成装置3では、サイクルタイムTmは、サイクルタイムTStdよりも長い。図6を用いて説明した通り、モーション生成部32は、第1領域Mim(1)(所定部分の一例)以外の部分において、標準モーションMiにおけるスライド11の速度よりも減速した後に上死点に達するまでに標準モーションMiと同じ速度に戻すことによって、派生モーションMimを生成する。
【0166】
これによって、標準モーションMiのうちの上死点から下死点までの部分以外の部分の時間を長くすることができる。このため、標準モーションMiよりもサイクルタイムの長い派生モーションMimを生成することができる。
【0167】
(4)
本実施の形態のモーション生成装置3では、第1領域Mim(1)(所定部分の一例)は、上死点から、プレス装置5にワークWを搬送または搬出するフィーダ装置6と干渉しないスライド11の高さの範囲(搬送領域R1)に達するまでを含む。モーション生成部32は、干渉しないスライド11の高さの範囲内において、スライド11の速度を標準モーションMi(第1モーションの一例)よりも減速するように、派生モーションMim(第2モーションの一例)を生成する。
【0168】
これによって、図9(b)に示すように、フィーダ装置6のADS動作の時間を延ばすだけで容易にプレスライン2のSPMを変更することができる。
【0169】
(5)
本実施の形態のプレス装置5は、上金型7aおよび下金型7bを用いてワークWをプレス加工するプレス装置であって、スライド11と、ボルスタ12と、サーボモータ15と、プログラム記憶メモリ22(記憶部の一例)と、プレス制御部21(制御部の一例)と、を備える。スライド11は、上金型7aが取り付けられる。ボルスタ12は、下金型7bが載置される。サーボモータ15は、スライド11を上下方向に往復動作させる。プログラム記憶メモリ22、サイクルタイムmax(第1のサイクルタイムの一例)におけるスライド11の標準モーションMi(第1モーションの一例)のうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置までを含む第1領域Mi(1)(所定部分の一例)が同じであり、上死点におけるスライド11の速度が標準モーションMiと同じ速度になるような、サイクルタイムTStdと異なる派生モーションMim(第2モーションの一例)を記憶する。プレス制御部21は、スライド11が派生モーションMimの動きとなるようにサーボモータ15を駆動する。
【0170】
プレス装置5とフィーダ装置6の動作が干渉しないように予め設定されている標準モーションMiとサイクルタイムが異なる派生モーションMimを生成するときに、上死点から下死点までを標準モーションMiと同じモーションに設定する。
【0171】
これによって、派生モーションMimでプレス装置5を動かす場合において、小さいプログラム変更が必要な場合があるもののプレス装置5とフィーダ装置6の間の時間差を標準モーションMiと同様に保つことでプレス装置5とフィーダ装置6の干渉を避けることができる。
【0172】
このため、プレスライン2全体の大掛かりなプログラム変更等が必要なく、プレスライン2の速度を容易に変更することができる。
【0173】
(6)
本実施の形態のモーション生成方法は、上金型7aが取り付けられるスライド11と、下金型7bが載置されるボルスタ12と、スライド11を上下方向に往復動作させるサーボモータ15と、を備えるプレス装置5のスライド11のモーションを生成するモーション生成方法であって、ステップS40(モーション生成ステップの一例)を備える。ステップS40は、サイクルタイムTStd(第1のサイクルタイムの一例)におけるスライド11の標準モーションMi(第1モーションの一例)のうち少なくとも上死点から成型領域の終了位置を含む第1領域Mi(1)(所定部分の一例)が同じになり、上死点におけるスライド11の速度が標準モーションMiと同じ速度になるように、サイクルタイムTStdと異なるサイクルタイムTm(第2のサイクルタイムの一例)におけるスライド11の派生モーションMim(第2モーションの一例)を生成する。
【0174】
プレス装置5とフィーダ装置6の動作が干渉しないように予め設定されている標準モーションMiとサイクルタイムが異なる派生モーションMimを生成するときに、上死点から下死点までを標準モーションMiと同じモーションに設定する。
【0175】
これによって、派生モーションMimでプレス装置5を動かす場合において、小さいプログラム変更が必要な場合があるもののプレス装置5とフィーダ装置6の間の時間差を標準モーションMiと同様に保つことでプレス装置5とフィーダ装置6の干渉を避けることができる。
【0176】
このため、プレスライン2全体の大掛かりなプログラム変更等が必要なく、プレスライン2の速度を容易に変更することができる。なお、前述した通り、プレス速度が減速し始める時点は、スライドがフィーダ装置と干渉の虞がない高さまで上昇した時点以降とするのが望ましい。これにより、上死点から当該時点に至るまでの期間において派生モーションMimは標準モーションMiと完全に一致することとなり、プレスライン2全体のプログラム変更等を行うことなく、スライドとフィーダ装置との干渉をより確実に回避することができる。
【0177】
<他の実施の形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0178】
(A)
上記実施の形態では、タンデム型のプレスライン2を用いて説明したが、タンデム型に限らず、トランスファ型のプレスラインであってもよい。トランスファ型のプレスラインでは、1つのプレス装置5に複数の上金型7aおよび下金型7bが配置され、トランスファフィーダによって上流側の金型から下流側の金型にワークWが順次搬送される。
【0179】
トランスファ型のプレス装置においても、上死点から下死点までのモーションを標準モーションと同じになるように派生モーションを生成することによって、プレスラインの速度を容易に変更することができる。
【0180】
(B)
上記実施の形態では、モーション生成装置3がプレス装置5と別に設けられているが、モーション生成装置3がプレス装置5に組み込まれていてもよい。図11は、プレス装置5´のプレス制御装置20´にモーション生成部32が設けられた構成を示す図である。
【0181】
(C)
上記実施の形態では、搬送装置の一例としてフィーダ装置6を示したが、これに限られるものではなく、コンベア等であってもよく、要するにプレス装置を含むラインに配置されている搬送装置であればよい。
【0182】
(D)
上記実施の形態では、派生モーションMij(j=1~m)は、その第1領域Mim(1)が標準モーションMiの第1領域Mi(1)と同じモーションになるように作成されているが、少なくとも上死点から下死点までのモーションが同じになればよい。これにより、プレスラインの速度の変更を容易に行うことができる。
【0183】
(E)
上記実施の形態では、標準モーションMiは、仕様上の最大SPMにおけるスライド11のモーションに設定されているが、これに限らず、最大SPMのモーションでなくてもよい。
【0184】
(F)
上記実施の形態では、モーション生成装置3によって作成される派生モーションMij(j=1~m)は、標準モーションMiよりもSPMが小さいが、これに限らなくてもよい。例えば、標準モーションMiが仕様上の最大SPMのモーションではない場合、標準モーションMiよりもSPMが大きい派生モーションMij(j=1~m)が作成されてもよい。
【0185】
(G)
上記実施の形態では、派生モーションMij(j=1~m)の第2領域Mij(2)(j=1~m)において、モータ速度を標準モーションMiのモータ速度と比較して1回減速してから1回加速して上死点に到達する際に標準モーションMiと同じ速度になるようにしているが、これに限らなくてもよい。例えば、第2領域Mij(2)において、モータ速度の加減速を複数回繰り返してもよいし、加速および減速を段階的に行ってもよい。要するに、派生モーションMijにおいて上死点に到達したときのモータの速度が標準モーションMiにおけるモータの速度と同じであればよい。
【0186】
(H)
上記実施の形態では、派生モーションMij(j=1~m)を実行する派生プログラムPij(j=1~m)は、一旦ライン制御装置4に送信し、ライン制御装置4からプレス装置5に記憶されているが、ライン制御装置4を介さずに直接プレス装置5に送信されてもよい。
【0187】
(I)
上記実施の形態では、スライド駆動部13としてクランク機構が用いられているが、リンク機構であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本開示のモーション生成装置は、プレスラインの速度を簡単に変更することが可な効果を有し、板金加工に用いるタンデムプレス、トランスファプレスなどとして有用である。
【符号の説明】
【0189】
3 :モーション生成装置
5 :プレス装置
7a :上金型
7b :下金型
11 :スライド
12 :ボルスタ
32 :モーション生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11