(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078943
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】風力タービン雷撃診断装置及び雷撃診断方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20220518BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20220518BHJP
F03D 80/30 20160101ALI20220518BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/34 Z
F03D80/30
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135355
(22)【出願日】2021-08-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】20207662.6
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21186764.3
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518399243
【氏名又は名称】オルステッド・ウィンド・パワー・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Orsted Wind Power A/S
【住所又は居所原語表記】Kraftvaerksvej 53,7000 Fredericia,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】フレミング モラー ラーセン
【テーマコード(参考)】
2G036
2G116
3H178
【Fターム(参考)】
2G036AA13
2G036AA28
2G036BA02
2G036BA46
2G036CA06
2G036CA08
2G036CA10
2G036CA12
2G116BA01
2G116BB02
2G116BB09
2G116BD07
2G116BD09
2G116BD11
2G116BD13
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB43
3H178CC02
3H178DD52X
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】導電性ブレードを有する風力タービンに設けられ、バイパス雷撃を特定するために使用される診断データを提供可能な風力タービン雷撃診断装置を提供する。
【解決手段】導電性ブレードを有する風力タービン用の風力タービン雷撃診断装置が提供される。雷保護システム入力部(9)は、雷撃の後に雷保護システム(5,6)によって伝導される電流に関連する測定電流データを受信するために設けられている。空気圧センサ(1)は、導電性の風力タービンブレードアセンブリ(3)の内部空洞(4)内に、マウント(1)を用いて取り付けられている。センサーモニタ(7)は、測定電流データおよび空気圧センサ(1)の出力をモニタリングし、測定電流の増加が、内部空洞(4)内において雷によって発生した衝撃波の空気圧センサ(1)による検出と同時発生した場合に、バイパス雷撃を特定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ブレードを有する風力タービン用の風力タービン雷撃診断装置であって、
雷撃の後に雷撃保護システムによって伝導される電流に関連する測定電流データを受信するための雷保護システム入力部と、
空気圧の増加を検出するための空気圧センサと、
導電性の風力タービンブレードアセンブリの内部空洞内に前記空気圧センサを取り付けるためのマウントと、
前記測定電流データおよび前記空気圧センサからの出力をモニタリングし、測定電流の増加が、前記内部空洞内において雷によって発生した衝撃波の前記空気圧センサによる検出と同時発生したときに、バイパス雷撃を特定するためのセンサーモニタと、を備えることを特徴とする風力タービン雷撃診断装置。
【請求項2】
前記センサーモニタは、超音速圧力波に関連する空気圧の増加を特定するために設定されたサンプリング周波数で、前記空気圧センサからの前記出力をサンプリングする請求項1に記載の風力タービン雷撃診断装置。
【請求項3】
前記センサーモニタは、800Hz~1.2MHzのサンプリング周波数で、前記空気圧センサからの前記出力をサンプリングする請求項1または2に記載の風力タービン雷撃診断装置。
【請求項4】
前記センサーモニタは、前記雷によって発生した衝撃波を特定するために、空気圧を経時的に示すデータ出力を生成する請求項1ないし3のいずれかに記載の風力タービン雷撃診断装置。
【請求項5】
前記センサーモニタは、前記測定電流データおよび前記空気圧センサからの前記出力を解析し、前記測定電流の増加と同時発生した空気圧の一時的増加を、前記雷によって発生した衝撃波として特定するためのプロセッサを備える請求項1ないし4のいずれかに記載の風力タービン雷撃診断装置。
【請求項6】
前記センサーモニタは、圧力センサ出力データをロギングするためのバッファと、しきい値を超える感知圧力を特定するためのトリガーモジュールと、を備え、
前記センサーモニタは、前記感知圧力が前記しきい値を超える前の時間から、前記感知圧力が前記しきい値を超えた後の時間までの期間中にロギングされた圧力センサ出力データを含むデータ出力ファイルを生成する請求項1ないし5のいずれかに記載の風力タービン雷撃診断装置。
【請求項7】
前記マウントは、前記風力タービンブレードアセンブリのブレードおよびハブの一方の内部に、前記空気圧センサを取り付けるためのものである請求項1ないし6のいずれかに記載の風力タービン雷撃診断装置。
【請求項8】
前記風力タービン雷撃診断装置は、複数の空気圧センサと、前記風力タービンブレードアセンブリ内に前記複数の空気圧センサをそれぞれ取り付けるための複数のマウントと、を備え、
前記センサーモニタは、前記複数の空気圧センサの1つ以上からの出力に基づいて、前記雷によって発生した衝撃波を特定する請求項1ないし7のいずれかに記載の風力タービン雷撃診断装置。
【請求項9】
前記複数のマウントの少なくとも2つは、前記複数の空気圧センサを、前記風力タービンブレードアセンブリの複数の異なる内部空洞内にそれぞれ取り付けるためのものである請求項8に記載の風力タービン雷撃診断装置。
【請求項10】
雷撃診断方法であって、
マウントを使用して、導電性の風力タービンブレードアセンブリの内部空洞内に、前記内部空洞内の空気圧の増加を検出するための空気圧センサを取り付ける工程と、
センサーモニタを使用して、前記空気圧センサからの出力をモニタリングする工程と、
雷撃の後に雷保護システムによって伝導される電流に関連する測定電流データを受信する工程と、
前記内部空洞内において雷によって発生した衝撃波の前記空気圧センサによる検出と同時発生する測定電流の増加を特定することによって、バイパス雷撃を特定する工程と、を含むことを特徴とする雷撃診断方法
【請求項11】
前記空気圧センサからの前記出力をモニタリングする前記工程は、超音速圧力波に関連する空気圧の増加を特定するために設定されたサンプリング周波数で、前記出力をサンプリングする工程を含む請求項10に記載の雷撃診断方法。
【請求項12】
前記空気圧センサからの前記出力をモニタリングする前記工程は、800Hz~1.2MHzのサンプリング周波数で、前記出力をサンプリングする工程を含む請求項10または11に記載の雷撃診断方法。
【請求項13】
前記雷によって発生した衝撃波を特定するために、前記空気圧を経時的に示すデータ出力を生成する工程をさらに含む請求項10ないし12のいずれかに記載の雷撃診断方法。
【請求項14】
前記空気圧センサを取り付ける前記工程は、複数のマウントを用いて、複数の空気圧センサを取り付ける工程を含み、
前記出力をモニタリングする前記工程は、前記複数の空気圧センサからの複数の出力をモニタリングする工程を含む請求項10ないし13のいずれかに記載の雷撃診断方法。
【請求項15】
前記複数の空気圧センサを取り付ける前記工程は、前記風力タービンブレードアセンブリの複数の異なる内部空洞内に、少なくとも2つの空気圧センサを取り付ける工程を含む請求項14に記載の雷撃診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン雷撃診断装置(wind turbine lighting stroke diagnostic apparatus)に関し、特に、導電性ブレードを有する風力タービンに設けられ、バイパス雷撃(by-pass lightning stroke)を特定するために使用される診断データを提供可能な風力タービン雷撃診断装置に関する。また、本発明は、導電性ブレードを有する風力タービン用の雷撃診断方法に関し、特に、導電性ブレードに対するバイパス雷撃を特定するために、風力タービン雷撃診断装置を使用する雷撃診断方法に関する。バイパス雷撃は、雷保護システム(LPS:Lightning Protection System)のレセプタによって有効に捕捉されない雷撃である。
【背景技術】
【0002】
いくつかの最新型の風力タービンは、雷撃(落雷)による損傷を防止または最小化するために、雷保護システム(LPS)を備えている。このようなシステムは、複数の風力タービンブレードの表面上に設けられた複数の導電性レセプタ(conductive receptors)を含む。導電性レセプタは、回転子ハブ(rotor hub)、ナセル(nacelle:収納室)を通過し、塔の基部、または、可能な場合には、地面にまで下方延伸する引下げ導体(down-conductor)によってグラウンド(接地)されている。雷撃を受けた際、雷雲のリーダ(leader)が風力タービンに近づくにつれて、上向きストリーマ(upward streamer)が、LPSレセプタに形成され、雷雲のリーダに取り付き、電流経路を確立する。次に、この電流経路は、雷復帰ストローク(lightning return stroke)を発生させる。雷復帰ストロークにおいて、雷閃光(lightning flash)として現れる、巨大な電流サージが伝達される。この状況において、電流サージがLPSを通過してグラウンドに伝導されるため、複数の風力タービンブレードの構造の損傷が、防止、または、大幅に軽減される。
【0003】
LPSは、通常、レセプタへの直接的な雷撃の際に、風力タービンを保護する。一方、定期的な修理およびメンテナンス作業が必要となるタイミングを判別するための診断情報を記録するために、雷の強さに関する情報を記録するためのモニタリングシステムが、通常、設けられている。例えば、LPSサプライヤは、特定量の雷電流負荷または雷撃回数に達するまで、機器の性能を評価することができ、さらに、特定量の雷電流負荷または雷撃回数に到達した後に、機器のコンポーネントの点検または交換を行う必要がある。歴史的には、雷電流負荷または雷撃回数のモニタリングは、引下げ導体に隣接した磁気感応型の雷記録カードシステムを設けることによって、達成されてきた。雷撃が発生した場合、引下げ導体を通過して伝導される電流は、伝導される電流に比例する磁場を誘起することになる。この磁場は、記録カードによって記録され、kA単位の雷電流の記録を提供する。しかしながら、このような記録カードシステムは、多くの欠点を有している。第1に、記録カードシステムは、電流値を読み出すために、物理的に取り外される記録カードに依存する。そのため、記録カードを確認するために、設置場所への定期的な訪問が必要となり、大規模な雷撃が発生した場合でも、遠隔警告を作動させることはできない。このような事情は、洋上風力タービンのブレードでは、さらに高コストで困難なものとなる。第2に、記録カードは、比較的未処理で粗い(crude)診断データを提供するにすぎない。これは、記録カードが、スロットに挿入されている期間中に発生した最大電流を、記録するにすぎないためである。したがって、風力タービンが複数回雷撃を受けた場合であっても、記録カードは、最大の1つの雷撃の記録しか提供できない。そのため、風力タービンが受けた雷撃の量についての誤解を与えるグラフ(misleading picture)を提供してしまう可能性がある。
【0004】
これらの欠点に対処するために、いくつかの最新型の雷保護システムには、雷撃によって発生し、伝導される降下電流(down-current)に関するより詳細な情報を記録する、より高度な電子雷モニタリング装置が設けられている。また、これらのタイプの電子雷モニタリングシステムは、風力タービンのSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition: モニタリング制御およびデータ収集)システムに、インターフェース接続され、遠隔モニタリングを提供してもよい。
【0005】
従来の電子雷モニタリングシステムは、雷撃回数、雷撃の持続時間、および雷撃が伝達する特定のエネルギーのような情報を記録することにより、雷撃を評価するための改善されたデータを提供する。しかしながら、磁気記録カードシステムと同様に、記録されるデータは、引下げ導体において測定される電流に関連するパラメータに限定される。その結果、雷がLPSレセプタによって直接捕捉されない場合には、記録されたデータは、依然として誤解を招く可能性がある。
【0006】
これに関連して、いわゆるバイパス雷撃(by-pass lightning stroke)が発生することがある。バイパス雷撃では、雷撃は、LPSレセプタではなく、風力タービンブレードアセンブリの本体材料に繋がる。つまり、上向きストリーマ(upward streamer)は、通常、LPSレセプタにおいて形成されるが、これは必ずしもそうとは限らず、LPSレセプタが、バイパス(迂回)される可能性がある。バイパス雷撃の問題は、導電性の風力タービンブレードの登場と共に、特に問題となってきている。すなわち、最近の風力タービンが大型化するにつれて、カーボンファイバーのような導電性材料を用いてブレードを形成することが、一般的になってきた。ブレード材料の母材に導電性要素が存在すると、比較的少なくはあるが、ブレードに導電性が付与される。これは、導電性LPSレセプタが用いられるような、ガラス繊維のような絶縁材料から形成された古いタイプの風力タービンブレードとは明らかに異なることである。バイパス雷撃が発生した場合、導電性ブレードが衝撃損傷を受け得るだけでなく、電流がLPS引下げ導体に到達するまでに、電流が、制御されていない態様で、ブレード材料を通過して伝導することになる。これは、ブレードアセンブリを損傷させるだけでなく、重要なことに、LPSモニタリングシステムによって記録される電流が、ブレード材料を通過するエネルギーの散逸のために、比較的低く表れてしまうことを引き起こす。したがって、従来のLPSモニタリングは、非常に重大で有害な雷撃であっても、容易に特定することができない。バイパス雷撃によって生じるブレード損傷の問題は、ブレード材料中の繊維の配向に起因して、導電性ブレードにおいて特に悪化する。例えば、カーボンブレードの場合、カーボンファイバーは、ブレードの機械的特性を向上させるために、向きが揃えられた状態で、エポキシの母材中に埋め込まれ得る。しかしながら、この配向のため、ブレードは、典型的には、ファイバーの配向方向に対して横断する方向において、より高い抵抗を有し得る。これは、ブレード材料を通過する不安定で不均一な伝導をもたらし、非常に集中した領域における損傷につながる。このように、バイパス雷撃が疑われる場合であっても、バイパス雷撃によって、ブレードがどの程度損傷され得るかを判別することは、非常に困難である。
【0007】
雷撃がLPSシステムによって正確に捕捉された場合であっても、LPS引下げ導体ケーブルにおける電圧降下が、LPS引下げ導体と導電性ブレードの外側シェルとの間の絶縁体の絶縁能力を超える場合には、さらなるバイパス雷撃現象が発生し得る。このような状況では、LPSケーブル絶縁体の電気的破壊があり、ケーブルと導電性ブレード表面との間の空気層を横断するアーク放電が起こり得る。これは、発生個所(origin)がLPS導体自体であるにもかかわらず、通常のバイパス雷撃に関連するエネルギーの散逸と同様の、ブレード材料におけるエネルギーの散逸を引き起こす可能性がある。このことは、導電性ブレード、特にブレードの長さ全体に渡る等電位接続を欠くブレードにおける、さらなる特別な問題である。このような等電位接続は、コストを節約するために、いくつかのブレードから省略されることがある。
【0008】
タービンの動作を維持するために、正確な雷撃情報を持つ必要性に加えて、上記の問題もまた、商業的に重要な意味を持つ。例えば、ブレードサプライヤにとって、自身の製品に固有の構造上の欠陥ではなく、バイパス雷撃によって故障が発生したことを実証できることは、有益であろう。同様に、LPSサプライヤは、特に、サポートクレーム管理において、システムの雷捕捉効率および伝導効率をモニタリングすることができることから、恩恵を受けるであろう。逆に、風力タービン発電機のオペレータは、例えば、バイパス雷撃が故障問題の原因ではないことを証明するための正確な診断データを持つことによって、恩恵を受けるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、上記の複数の課題に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、導電性ブレードを有する風力タービン用の風力タービン雷撃診断装置であって、
雷撃の後に雷撃保護システムによって伝導される電流に関連する測定電流データを受信するための雷保護システム入力部と、
空気圧の増加を検出するための空気圧センサと、
導電性の風力タービンブレードアセンブリの内部空洞内に前記空気圧センサを取り付けるためのマウントと、
前記測定電流データおよび前記空気圧センサからの出力をモニタリングし、測定電流の増加が、前記内部空洞内において雷によって発生した衝撃波の前記空気圧センサによる検出と同時発生したときに、バイパス雷撃を特定するためのセンサーモニタと、を備えることを特徴とする風力タービン雷撃診断装置が提供される。
【0011】
このようにして、空気圧センサ、および、バイパス雷撃による導電性ブレードアセンブリの内部空洞内において発生した超音速圧力波の検出を行うよう構成されたセンサーモニタに基づいて、バイパス雷撃を、捕捉された雷撃と区別して特定することができる。すなわち、バイパス雷撃が発生した場合、伝達される電流サージは、制御されていない様態で、導電性ブレード材料を通過して伝導される。これは、導電性ブレード材料の表面上、または、導電性ブレードシェルにおける雷入射点(lightning entrance point)とLPS引下げ導体との間における、アーク形成(arc formation)をもたらす。雷の温度は、最大20,000~30,000Kに達する。重要なことに、雷撃はマイクロ秒(μs)単位の現象であることから、加熱が極めて急速に発生する。アーク放電に起因する急激な加熱の結果として、空気が急膨張し、圧力衝撃波が生じる。導電性ブレードの外側面上では、これらの衝撃波は、迅速に消散し得る。しかしながら、中空ブレードの内部空洞内では、爆発的な加熱効果によって発生する圧力波が、ブレードの構造的完全性(structural integrity)を損なう可能性がある。特許請求される構成では、圧力センサは、この圧力波を検出するよう、構成されている。さらに、センサーモニタは、圧力測定値と、LPSシステムを通過して伝導される電流とを、相互に関連付ける。これにより、バイパス雷撃が発生したことを示すことができる。逆に、雷撃がLPSレセプタによって捕捉された状況では、電流は、アーク放電および関連する衝撃波を発生させることなく、制御された様態で、引下げ導体を通過する。同様に、システムは、例えば、ブレードに対する鳥の衝突によって音響外乱が生じた場合など、LPSシステムを通過する測定電流と同時発生しない圧力変化を、計算に入れない(discount)ことができる。従って、本発明の実施形態は、バイパス雷撃を、センサーモニタによって捕捉される雷撃と区別して特定することができる。これにより、比較的低い確率ではあるが、非常に重大な結果を引き起こし得るバイパス雷撃発生のモニタリングのための安価な装置を提供することができる。次に、このデータは、ブレードの検査を計画し、ブレードの適切なタイミングでの修理を保証することに有用に使用することができ、特に、損傷したブレードを用いた動作の継続を許可してしまうことを防止することができる。また、データは、パフォーマンス情報を提供するために、ブレードサプライヤおよびLPSサプライヤなどのステークホルダによって使用されてもよい。
【0012】
上述した複数の利点は、雷撃が発生した疑いがある場合に風力タービンを停止させ、さらに、風力タービンを再稼働する前に損傷を検査することを義務付けている、日本のようないくつかの領域・地域があるため、特に重要である。測定電流データおよび圧力データの両方の同時記録によって提供される追加的な診断情報は、LPSによって安全に捕捉された雷撃を、構造的損傷に引き起こし得るバイパス雷撃と区別して特定することを可能にする。さらに、雷撃の性質を特徴付ける情報は、記録された電流データおよび圧力データの相対値(relative value)から導出されてもよい。この結果、相対値は、損傷が発生していないであろう場合における検査オペレーションの回避、または、最小化を可能とし得る。
【0013】
また、通常のバイパス雷撃を特定することに加えて、本発明の実施形態は、LPSケーブル絶縁体の電気的破壊が生じた場合のバイパス現象に起因するアーク放電によって引き起こされる圧力衝撃波を検出可能であることは、理解されるであろう。この破壊は、効果的に電気的に結合されていない導電性要素間のような、ブレード構造内部のアークフラッシュオーバ(arc flashover)によって生じる検出可能な圧力信号を引き起こす。これらの導電性要素に電圧が印加されると、これらの導電性要素と、他の部分との間の電圧レベルが、フラッシュオーバを引き起こすのに十分なほど、高くなることがある。このような導電性要素は、金属製の引下げ導体、配線、または、複合ブレード材料を含み、さらには、設計、若しくは、生理食塩水または汚れによる汚染などの他の理由によって、導電性または半導電性となった構造的要素を含み得る。
【0014】
実施形態において、装置は、雷保護システムを含んでいてもよい。
【0015】
実施形態において、センサーモニタは、データロガーを含む。実施形態において、センサーモニタは、超音速圧力波に関連する空気圧の増加を特定するために設定されたサンプリング周波数で、空気圧センサからの出力をサンプリングする。このようにして、超音速で伝搬する衝撃波を検出可能とするよう、十分に高いサンプルレートが使用される。このように、センサーモニタは、衝撃波に関連する圧力の一時的増加(transient increase)が記録可能となるように、十分に速い間隔で、圧力センサからの圧力測定値をロギングすることができ、これにより、衝撃波が記録される。
【0016】
実施形態において、センサーモニタは、800Hz以上、より好ましくは、1kHz以上のサンプリング周波数で、空気圧センサからの出力をサンプリングする。好ましい実施形態において、センサーモニタは、10kHz~10MHzのサンプリング周波数で、空気圧センサからの出力をサンプリングし、より好ましくは、100kHz~1.2MHz、または、800kHz~1.2MHzのサンプリング周波数で、サンプリングする。このようにして、高サンプリング周波数は、衝撃波を特定するために、圧力変化のより高い解像度の記録を提供する。実施形態において、圧力センサは、1kHz以上の測定レートを有する。好ましい実施形態において、圧力センサは、10kHz以上、より好ましくは、10kHz~10MHzの測定レートを有する。これにより、迅速なセンサフィードバックが提供される。
【0017】
実施形態において、センサーモニタは、雷によって発生した衝撃波(lightning generated shockwave)を特定するために、空気圧を経時的に示すデータ出力を生成する。このようにして、圧力の一時的増加が特定され、さらに、LPSモニタリングシステムからの測定電流データと相互に関連付けが可能となるように、センサーモニタは、圧力変化を経時的にプロットすることを可能にする出力を提供することができる。例えば、アーク放電によって発生した衝撃波を示す圧力スパイク(グラフ中のスパイク・ピーク)が、バイパス雷撃を示すためにLPSモニタによって記録された電流サージとマッチング・照合されてもよい。このようなデータの組み合わせにより、バイパス雷撃を特定することができ、さらに、発生した可能性のある損傷のレベルに関する診断情報を提供することができる。例えば、しきい値を下回る低い測定電流と同時発生し、しきい値を上回る大きな振幅を有する圧力衝撃波は、重要なバイパス雷撃を特定するために使用することができる。このような状況では、高レベルのエネルギーが、LPSを介して伝導されるのではなく、熱および爆発力として、放散される。逆に、しきい値を下回る振幅の圧力衝撃波と同時発生し、しきい値を上回る測定電流は、軽微なバイパス雷撃を示すために使用することができる。
【0018】
実施形態において、センサーモニタは、圧力センサ出力データをロギングするためのバッファと、しきい値を超える感知圧力(sensed pressure)を特定するためのトリガーモジュールと、を備えている。センサーモニタは、感知圧力がしきい値を超える前の時間から、感知圧力がしきい値を超えた後の時間までの期間中にロギングされた圧力センサ出力データを含むデータ出力ファイルを生成する。したがって、トリガーされるデータ記憶機能が提供され、それによって、可能性のあるバイパス雷撃現象が、しきい値を超える圧力によって特定され、さらに、バッファは、バイパス雷撃現象の直前から直後までの期間におけるデータを含むデータファイルを生成するために使用される。これにより、後の解析のためのより完全なデータセットが提供される。実施形態において、バッファは、感知圧力がしきい値を超える前の最大1分間から、感知圧力がしきい値を超えた後の最大1分間までの期間における、圧力センサ出力データをロギングすることができる。より好ましくは、バッファは、感知圧力がしきい値を超える前の最大10秒から、感知圧力がしきい値を超えた後の最大10秒までの期間における、圧力センサ出力データをロギングすることができる。
【0019】
実施形態において、センサーモニタは、測定電流データおよび空気圧センサからの出力を解析し、測定電流の増加と同時発生した空気圧の一時的増加を、雷によって発生した衝撃波として特定するプロセッサを備える。このように、装置は、感知圧力から検出された衝撃波およびLPSによって捕捉された雷撃に基づいて、バイパス雷撃を自動的に特定することができる。このようにして、プロセッサは、アクティブなモニタリングを実行し、メンテナンス調査を必要とする可能性のあるイベントにフラグを立てることができる。
【0020】
実施形態において、センサーモニタは、モニタリング制御およびデータ収集(SCADA)システムにデータ出力を出力する。このようにして、装置は、ステータスモニタリングのためのフィードバックを提供することができる。これは、陸上での遠隔モニタリングを可能にし、これにより、その他のデータフィードバックシステムと併せて、電流データおよび圧力データの解析を可能にし得る。他の実施形態において、センサーモニタは、SCADAシステムから独立していてもよく、これにより、既存の風力タービンアセンブリへの後付けが、より容易になる。
【0021】
実施形態において、マウントは、風力タービンブレードアセンブリのブレードおよびハブの一方の内部に、空気圧センサを取り付けるためのものである。これにより、センサーモニタをブレードアセンブリの各ブレード内に取り付けることができる。実施形態において、センサは、ブレードの根元に取り付けられてもよい。ブレードの内部が中空ハブと流体連通している構成では、ハブ内に設けられた単一の圧力センサが、複数のブレードのいずれかにおいて発生した衝撃波の検出を可能にすることができる。
【0022】
実施形態において、装置は、複数の空気圧センサと、風力タービンブレードアセンブリ内に複数の空気圧センサをそれぞれ取り付けるための複数のマウントと、を含む。センサーモニタは、複数の空気圧センサのうちの1つ以上からの出力に基づいて、雷によって発生した衝撃波を特定する。このようにして、ブレードアセンブリの複数の異なる領域内の衝撃波を検出するために、センサのアレイを設けることができる。
【0023】
実施形態において、複数のマウントの少なくとも2つは、複数の空気圧センサを、風力タービンブレードアセンブリの複数の異なる内部空洞内にそれぞれ取り付けるためのものである。このようにして、異なるブレード内、および/または、同じブレード内の複数の異なる内部空洞内の衝撃波を検出するための複数の異なるセンサを設けることができる。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、雷撃診断方法であって、
マウントを使用して、導電性の風力タービンブレードアセンブリの内部空洞内に、前記内部空洞内の空気圧の増加を検出するための空気圧センサを取り付ける工程と、
センサーモニタを使用して、前記空気圧センサからの出力をモニタリングする工程と、
雷撃の後に雷保護システムによって伝導される電流に関連する測定電流データを受信する工程と、
前記内部空洞内において雷によって発生した衝撃波の前記空気圧センサによる検出と同時発生する測定電流の増加を特定することによって、バイパス雷撃を特定する工程と、を含むことを特徴とする雷撃診断方法が提供される。
このようにして、雷撃を示す測定電流と併せて、ブレードアセンブリの内部空洞内で発生した超音速圧力波の検出に基づいて、バイパス雷撃を特定することができる。
【0025】
実施形態において、空気圧センサからの出力をモニタリングする工程は、超音速圧力波に関連する空気圧の増加を特定するために設定されたサンプリング周波数で、出力をサンプリングする工程を含む。
【0026】
実施形態において、空気圧センサからの出力をモニタリングする工程は、800Hz以上、好ましくは、1kHz以上のサンプリング周波数で、出力をサンプリングする工程を含む。好ましい実施形態において、サンプリング周波数は、10kHz~10MHzの範囲であり、好ましくは、100kHz~1.2MHz、または、800kHz~1.2MHzの範囲である。これより低いサンプリング周波数では、バイパス雷撃に関連する空気圧の鋭いピークの特定が、より困難になる可能性がある。逆に、これより高いサンプリング周波数は、より高度なセンサと、非常に速いデータロギング速度および非常に大きい記憶容量を必要とし、コストを増加させる。したがって、約1MHzのサンプリング周波数が好ましい。
【0027】
実施形態において、雷撃診断方法は、雷によって発生した衝撃波を特定するために、空気圧を経時的に示すデータ出力を生成する工程をさらに含む。
【0028】
実施形態において、空気圧センサを取り付ける工程は、複数のマウントを用いて、複数の空気圧センサを取り付ける工程を含み、出力をモニタリングする工程は、複数の空気圧センサからの複数の出力をモニタリングする工程を含む。
【0029】
実施形態において、複数の空気圧センサを取り付ける工程は、風力タービンブレードアセンブリの複数の異なる内部空洞内に、少なくとも2つの空気圧センサを取り付ける工程を含む。
【0030】
代替的な態様によれば、風力タービン雷撃診断装置であって、
雷閃光を検出するための光センサと、
風力タービンブレードアセンブリの内部空洞内に前記光センサを取り付けるためのマウントと、
前記光センサからの出力に基づいて、前記内部空洞内の雷閃光を特定するために構成されたセンサーモニタと、を備えることを特徴とする風力タービン雷撃診断装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
次に、以下の添付の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を詳述する。
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る雷撃診断装置を組み込んだ風力タービンブレードの切断等角図を示している。
【
図2】
図2は、雷撃がLPSレセプタに当たった場合の
図1に示す風力タービンブレードの概略図を示している。
【
図3】
図3は、バイパス雷撃が発生した場合の
図1に示す風力タービンブレードの概略図を示している。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る雷撃診断装置を組み込んだ風力タービンナセルおよびブレードアセンブリの断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、風力タービンブレード3に取り付けられた第1実施形態に係る雷撃診断装置を示している。風力タービンブレード3は、導電性複合材料で形成された中空体として設けられた導電性ブレードである。風力タービンブレード3は、内部空洞4と、回転子ハブ(rotor hub)に取り付けるための根元(root end)2と、を備えている。ブレード3の先端部は、金属性の先端雷レセプタ5を含んでいる。先端雷レセプタ5は、導電性ストリップ6に接続されている。導電性ストリップ6は、ブレード3を通過し、グラウンドされた引下げ導体(雷保護システム入力部)9に到達するまで下方に延伸し、タービンの雷保護システム(LPS: Lightning Protection System、本実施形態では先端雷レセプタ5と、導電性ストリップ6と、引下げ導体9と、を含む)の一部を形成する。この例では、ブレード3は、単一の先端雷レセプタ5を備えているが、他のLPS構成では、複数の雷レセプタが、ブレード3の長さ方向に沿って、設けられていてもよい。
【0033】
圧力センサ1は、ブレード3の内部空洞4内に設けられ、さらに、1つ以上のマウント構造(mounting formation)10を用いて、ブレード3の内壁に取り付けられている。圧力センサ1は、内部空洞4内における検出された空気圧に比例する出力信号を生成する。この出力信号は、データロガー(datalogger)7の形態を取る遠隔センサーモニタに供給される。データロガー7は、事前設定されたサンプリング周波数で、センサの測定値を、バッファにロギングする。センサ1とデータロガー7との間の接続は、例えば、有線接続または無線接続であってもよい。サンプリング周波数は、衝撃波に関連する圧力の一時的増加が検出できるよう、十分に高く設定されている。本実施形態では、サンプリング周波数は、1MHzに設定されている。これに関連して、風力タービン内の他のモニタリングシステムは、典型的には、約5~20回転/分のタービン回転速度にマッチするような、桁違いに低いサンプリング周波数で、動作することが多い。
【0034】
本実施形態において、データロガー7は、検出された圧力が、可能性のあるバイパス生成衝撃波(potential by-pass generated shockwave)に関連付けられた最小圧力に対応するしきい値を超えると、トリガーデータ記憶プロセス(triggered data storage process)を起動するトリガーモジュールを備えている。トリガーデータ記憶プロセスが開始されると、データロガー7内のプロセッサは、バッファから、以前にロギングされた複数の値を読み取り、その後、所定の期間にわたって、新しい複数の値をロギングし続ける。ロギングされたデータは、その後、CSVファイル等のデータ出力ファイルとして出力され、その結果、トリガーイベントの前から、トリガーイベントの後までの期間をカバーする圧力データが提供される。本実施形態において、データファイルは、トリガーイベントの10秒前から10秒後までの期間をカバーする。データロガー7は、雷撃後に、LPSの引下げ導体9を通過して伝導される電流に基づく電流測定データを受信するために、LPS(例えば、雷保護システム入力部である引下げ導体9)にさらに接続されている。この測定電流データは、データ出力ファイルにもロギングされる。したがって、測定電流データおよび圧力データの両方は、同時発生する電流イベントおよび圧力イベントを特定するために、同じ期間にわたって、相互に関連付けられる。
【0035】
データロガー7によって生成されたデータ出力ファイルは、ファイル転送プロトコルを用いて、解析のために、陸上のサーバーに送信される。他の実施形態において、データ出力ファイルは、ローカルに保存されていてもよく、または、センサデータロガー7は、ロギングされたデータを、洋上解析用の他のデータと、一元照合(centrally collate)するために、風力タービンのSCADAシステムとインターフェース接続されていてもよい。解析の一部として、圧力データは、電流および圧力を経時的に示すグラフにプロットされてもよい。この圧力データは、その後、診断目的のために、他のデータと併せて使用される。
【0036】
図2は、雷撃8が、ブレード3上の先端雷レセプタ5に当たったときの上記構成の概略図を示している。この想定では、雷撃8によって発生した電流が、導電性ストリップ6を通過して、グラウンドされた引き下げ導体9に伝導される。雷撃8によって発生した電流は、LPSによって伝導される電流を測定するための入力としても機能する。したがって、LPSによって大電流が測定される一方、内部空洞4内に衝撃波が発生しない、または、内部空洞4内の衝撃波が圧力センサ1によって検出されない。
【0037】
図3は、バイパス雷撃が発生した場合の上記構成の概略図を示している。この想定では、雷撃8は、先端雷レセプタ5から距離をおいて、ブレード3に当たる。この場合、電流は、導電性ストリップ6に到達するまで、ブレード3の中空構造の内部で、制御されていない態様で、導電性ブレード材料を通過して伝導される。電流は、導電性ストリップ6に到達した時点で、引下げ導体9を介してグラウンドに伝導される。ブレード材料を通過する制御されていない電流の伝導は、ブレード材料の内側面にアーク形成(arc formation)を生じさせる。このアーク形成は、空気を爆発的に加熱し、内部空洞4内において圧力衝撃波を引き起こす。圧力衝撃波は、内部空洞4内を下方に伝搬し、内部空洞4の下方において、圧力センサ1が、圧力衝撃波を検出する。圧力衝撃波は、センサ1を素早く通過した後に消散するが、データロガー7のサンプリングレートは、圧力の一時的増加をロギングできるよう設定されている。その後、このデータは、バイパス雷撃を特定するために、データロガー7によって出力されてもよい。すなわち、出力データは、内部空洞4内において検出された圧力衝撃波と、圧力衝撃波と同時発生する、引下げ導体9を通過して伝導される測定電流の急激な増加の両方を特定することになる。圧力衝撃波の発生と測定電流の急激な増加というこれらの現象は、電気信号および圧力信号の伝送および検出の速度が異なる場合があるが、実質的に同時に発生する。
【0038】
図4は、本発明の第2実施形態を示している。本実施形態は、圧力センサ1がブレードアセンブリのハブ12に組み込まれていることを除き、第1実施形態と実質的に同じように動作する。具体的には、複数のブレード3が、その根元2においてハブ12に接続されている。ハブ12は、複数のブレード3を、風力タービンのナセル14内の発電機13にリンクさせている。ハブ12は、複数のブレード3のそれぞれの内部空洞4と流体連通する中空体として設けられている。圧力センサ1は、ハブ12の内部空洞内に取り付けられている。ハブカバー11は、ハブ12の前面を覆うように設けられている。
【0039】
この構成によれば、複数のブレード3のいずれか1つの内部で発生した衝撃波が、ハブ12との流体連通を介して伝達され、ハブ12内の圧力センサ1によって記録される。圧力センサ1からの配線出力15は、データロガー7に送信され、その後、データロガー7は、関連する圧力の増加をロギングする。このように、相互接続された内部空洞を有するタービンブレードアセンブリにおいて、このような構成は、単一の圧力センサ1が、ブレードアセンブリ全体の診断情報を提供することを可能としている。
【0040】
このように、本発明の複数の実施形態によれば、LPSシステムを介して検出される測定電流の増加、および、ブレードアセンブリの中空内部において、測定電流の増加と同時発生し、圧力センサおよびセンサーモニタによって検出される超音速圧力波に基づいて、バイパス雷撃を特定することができる。すなわち、ブレードシェルの雷入射点とLPS引下げ導体9との間において、制御されていない様態でブレード材料を通過する電流の伝導によって発生する衝撃波が検出され、バイパス雷撃を特定するために用いられる。また、雷撃の性質をより良く特徴付け、捕捉された雷撃とバイパス雷撃とを区別して特定するために、衝撃波は、LPSモニタリングデータと相互に関連付けられ、追加の診断情報を提供する。例えば、LPSモニタリングシステムを通過する比較弱い電流を記録した雷撃現象は、同時発生した大きな圧力衝撃波の検出に基づいて、潜在的により重大な損傷を与え得るバイパス雷撃として特定されてもよい。その後、バイパス雷撃の特定は、メンテナンス作業を促すために使用可能である。
【0041】
なお、ここまで詳述した複数の実施形態は、例示の目的のみのために、本発明の実施を示していることが理解されるであろう。実際には、本発明を多くの異なる構成に適用することができ、また、当業者であれば、本明細書の開示に基づき、詳細な実施形態を容易に実施することができるであろう。
【0042】
例えば、例示的な実施形態では、単一の圧力センサが示されているが、複数のセンサが設けられていてもよいことは、理解されるのであろう。例えば、各風力タービンブレード3用に、センサが設けられていてもよい。同様に、複数の風力タービンブレード3が複数の内部空洞4を有する構成では、各空洞4内にセンサが取り付けられていてもよい。データロガー7は、複数のセンサから複数の入力を受信し、複数の入力をロギングしてもよい。
【0043】
さらに、様々なタイプの圧力センサを使用してもよいことも、理解されるであろう。例えば、バイパス雷撃に関連する空気圧の変化の周波数範囲が広いので、マイクロホンおよび感圧キャパシタベースのセンサを含む、空気圧の高速変化を記録可能な任意の圧力センサを使用することができる。
【0044】
また、LPSによって伝導される電流を感知するために、様々なタイプの電流測定センサを使用してもよいことも理解されよう。例えば、電流は直接測定されてもよいが、間接的に測定されてもよい。例えば、伝導される電流の代わりとして、LPSを通過して伝達される電流によって発生する磁束が測定されてもよい。
【0045】
さらに、図示の実施形態では、データロガー7をデータのロギングを実行するユニットとして説明したが、他の実施形態では、データロガー7は、受信した圧力データを解析するためのより高度な処理を実行してもよい。例えば、複数の実施形態において、データロガー7は、入力される測定電流データおよび圧力センサデータをリアルタイムで処理し、バイパス雷撃が検出されたときに、警告をトリガーしてもよい。この警告の自動トリガーは、続いて、風力タービン発電機の自動スロットルまたは自動停止のような、他の動作をトリガーするものであってもよい。例えば、診断装置は、風力タービン制御装置に接続されてもよく、測定電流の増加とともに、圧力衝撃波が所定のしきい値を超えて検出され、バイパス雷撃が特定された場合、診断装置によって生成された警告が、風力タービン制御装置の動作をトリガーし、風力タービン発電機を停止させてもよい。
【0046】
さらに、上記の図示の実施形態においては、センサーモニタは、高いサンプリング周波数でサンプリングを実行するデータロガー7として実装されているが、他のセンサーモニタ実装が可能であることは理解されるであろう。例えば、センサーモニタは、バイパス雷撃に関連したしきい値を上回る圧力波によってスイッチングされる機械的トリガーを備えていてもよい。機械的トリガーのトリガーは、続いて、バイパス雷撃が発生したことを示すデータエントリを生成してもよく、または、例えば、機械的トリガーのトリガー自体が、圧力波の残存を検出するための圧力測定のサンプリングを開始してもよい。
【0047】
最後に、診断装置が他のセンサを備えてもよいことも理解されるであろう。例えば、光センサまたは他の電磁センサが、バイパス雷撃に関連する電磁現象を検出するために設けられてもよい。例えば、バイパス雷撃に関連したアーク放電を検出するために、内部空洞内に光センサを取り付けることができる。このように、しきい値以上の強度の光の検出は、バイパス雷撃が発生したことを判別するために使用されてもよい。光センサによるしきい値以上の強度の光の検出は、圧力センサの測定と連動して、または、独立して、バイパス雷撃を特定するために使用されてもよい。