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  • 特開-乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物 図1
  • 特開-乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078948
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20220518BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220518BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220518BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K45/00
A61P17/02
A61K9/12
A61K47/46
A61K47/42
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146802
(22)【出願日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】109139743
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519298765
【氏名又は名称】葡萄王生技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】郭 星君
(72)【発明者】
【氏名】陳 勁初
(72)【発明者】
【氏名】陳 炎▲錬▼
(72)【発明者】
【氏名】林 詩偉
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲彦▼博
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲啓▼憲
(72)【発明者】
【氏名】侯 ▲毓▼欣
(72)【発明者】
【氏名】石 仰慈
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲静▼▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 雅君
(72)【発明者】
【氏名】江 佳琳
(72)【発明者】
【氏名】蔡 侑珊
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 姿和
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC19
4C076EE41A
4C076EE58A
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC752
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BC56
4C087CA10
4C087MA05
4C087MA13
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
【課題】乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物に関する。
【解決手段】乳酸菌発酵産物を有効成分とし、乳酸菌発酵産物が植物乳杆菌(Lactobacillus plantarum)により発酵されるが菌体を含まない濃縮濾液であってよく、また薬学的に受容可能な吸収性担体又はキャリアによって有効成分を搭載する。上記外傷外用組成物は、皮膚外傷に直接接触すると、皮膚創傷に対して抗炎症及び治癒促進という効果を持つ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌によって発酵基質に対して発酵工程、固液分離工程及び濃縮工程を行って得られ且つ菌体を含まない濃縮濾液であり、且つ前記乳酸菌は植物乳杆菌(Lactobacillus plantarum)GKM3(台湾新竹食品路331号である中華民国財団法人食品工業発展研究所生物資源保存及び研究中心に寄託され、寄託日は2017年7月14日であり、寄託番号はBCRC910787である)である、有効成分としての乳酸菌発酵産物と、
前記有効成分を搭載する薬学的に受容可能な吸収性担体又はキャリアと、
を含む乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物。
【請求項2】
前記発酵基質は、MRS寒天、PCA寒天、M17寒天、Rogosa寒天、TOS-MUP寒天及びそれらの如何なる組み合わせからなる群から選ばれる請求項1に記載の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物。
【請求項3】
前記濃縮濾液は、前記発酵基質の初期体積の5%~20%まで濃縮される請求項1又は2に記載の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物。
【請求項4】
前記吸収性担体は、ファイバー担体、通気フィルム担体、ヒドロコロイド担体、ゲル担体、フォーム担体、アルゲコロイド担体、タンパク質担体及びそれらの如何なる組み合わせからなる群から選ばれる請求項1~3の何れか1項に記載の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物。
【請求項5】
前記キャリアはエアロゾル化剤を含み、且つ前記外傷外用組成物はエアゾールである請求項1~3の何れか1項に記載の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物。
【請求項6】
前記乳酸菌発酵産物は、皮膚外傷に対して抗炎症及び治癒促進という効果を持つ請求項1~5の何れか1項に記載の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物。
【請求項7】
前記有効成分は、薬学的成分を更に含む請求項1~6の何れか1項に記載の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌発酵産物に関し、特に、炎症の阻害や創傷治癒の促進という効果を持つ乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの表面積の最も大きい器官は、皮膚であり、ヒトの最初の免疫学的バリアとしても、ヒトの健康を保護している。皮膚は、損傷すると、一連の創傷治癒修復の過程が始まる。一般的に、皮膚創傷治癒の過程中に、炎症段階(inflammation)、細胞増殖段階(new tissue formation)及び組織再構築段階(remodelling)という3つの段階がある(Schilling, 1976)。創傷は、治癒時間に応じて急性創傷と慢性創傷に分けられ、普通の創傷が全て1カ月の期間内に回復することができ、4~6週間以上を越えて回復すれば、慢性創傷と言われる。
【0003】
一般的に、皮膚創傷の治療に、創傷被覆材がよく用いられ、創傷治癒を促進し、感染等の問題を回避することができる。皮膚創傷被覆材は、従来のファイバー被覆材、合成被覆材及び生体被覆材という3つの種類に分けられる(Shu & Weng, 2011)。
【0004】
研究によると、乳酸菌は、ヒトに対いて、例えば、コレステロールの低下、免疫力の増強及び感染という問題の予防や治療等の多種類の健康効果を有する(Salminen et al., 2010; Settanni and Moschetti, 2010)。研究によると、例えば細胞外多糖のような乳酸菌により生成される代謝物も、免疫力の改善、抗腫瘍活性等の様々な効果を持っている(Arul et al., 2007; Shivanada et al., 2010)。Rodrigues等(2004)が乳酸菌及びその多糖のラット皮膚創傷治癒への適用について評価した結果によると、乳酸菌の共生混合物[例えばケフィア(kefir)]及びその多糖[例えばケフィラン(kefiran)抽出物]の投与は、抗菌作用及び創傷治癒の促進の効果を持つ。Zahedi等(2011)は、高収量エキソポリサッカライド(exopolysaccharide;EPS)含有の植物乳酸菌(寄託番号:GQ423760)菌体で製造された軟膏を、ラットの皮膚創傷に施用すると、炎症反応を低下させ且つ創傷治癒を加速することができることが発見された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特許公開第I634207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、上記適用の何れも、菌体自体又は菌体成分(例えば多糖)を含有し、乳酸菌により発酵された代謝物の皮膚創傷治癒の外用製剤への適用に対する研究については、比較的少なく、乳酸菌発酵代謝物の他の効果及び適用の開発が実に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明の一態様は、乳酸菌発酵産物と、薬学的に受容可能な吸収性担体又はキャリアと、を含み、乳酸菌発酵産物を有効成分として、吸収性担体又はキャリアによって前記有効成分を搭載する乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、皮膚創傷の炎症及び創傷治癒の促進を効果的に阻害することができる、乳酸菌発酵産物の外傷外用組成物の製造に用いられる用途を提供する。
【0009】
本発明の上記態様によると、乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物を提出する。一実施例において、上記外傷外用組成物は、乳酸菌発酵産物と、薬学的に受容可能な吸収性担体又はキャリアと、を含んでよい。上記実施例において、乳酸菌発酵産物は、有効成分として、乳酸菌によって発酵基質に対して発酵工程、固液分離工程及び濃縮工程を行って得られ且つ菌体を含まない濃縮濾液であってよく、且つ前記乳酸菌は例えば植物乳杆菌(Lactobacillus plantarum)GKM3(台湾新竹食品路331号である中華民国財団法人食品工業発展研究所生物資源保存及び研究中心に寄託され、寄託日は2017年7月14日であり、寄託番号はBCRC910787である)である。上記実施例において、吸収性担体又はキャリアは、前記有効成分を搭載することに用いられてよい。
【0010】
本発明の一実施例によると、前記発酵基質は、MRS寒天、PCA寒天、M17寒天、Rogosa寒天、TOS-MUP寒天及びそれらの如何なる組み合わせから選ばれる。この実施例において、上記濃縮濾液は、例えば、発酵基質の初期体積の5%~20%まで濃縮されてよい。吸収性担体は、ファイバー担体、通気フィルム担体、ヒドロコロイド担体、ゲル担体、フォーム担体、アルゲコロイド担体、タンパク質担体及びそれらの如何なる組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。他の例において、上記キャリアはエアロゾル化剤を含んでよいが、外傷外用組成物は例えばエアゾールであってよい。
【0011】
本発明の一実施例によると、上記乳酸菌発酵産物は、皮膚創傷炎症の阻害及び創傷治癒の促進効果を持っている。
【0012】
本発明の別の態様によると、乳酸菌発酵産物の外傷外用組成物の製造に用いられる用途を提出し、乳酸菌発酵産物は、有効成分とされ、乳酸菌によって発酵基質に対して発酵工程、固液分離工程及び濃縮工程を行って得られ且つ菌体を含まない濃縮濾液であってよく、前記乳酸菌は植物乳杆菌(L.plantarum)GKM3(寄託番号はBCRC910787である)である。前記外傷外用組成物は、乳酸菌発酵産物と、薬学的に受容可能な吸収性担体又はキャリアと、を含んでよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物を適用すれば、特定の菌株の植物乳杆菌で発酵したが菌体を含まない濃縮濾液を有効成分として得られた外傷外用組成物は、皮膚創傷に投予されると、皮膚創傷炎症の阻害及び創傷治癒の促進効果を持つことができる。
【0014】
下記添付図面の詳細な説明は、本発明の上記及び他の目的、特徴、メリット及び実施例をより分かりやすくするためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例によるマウス皮膚創傷に益生菌GKM3発酵濃縮濾液(GKM3群)又は生理食塩水(制御群)を投与した異なる時点での外観変化を示す。
図2】本発明の一実施例によるマウス皮膚創傷に益生菌GKM3発酵濃縮濾液(GKM3群)又は生理食塩水(制御群)を投与した異なる時点での創傷治癒曲線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述の通り、本発明は、乳酸菌発酵産物を有効成分とし、乳酸菌発酵産物が植物乳杆菌(Lactobacillus plantarum)により発酵されるが菌体を含まない濃縮濾液であってよく、また薬学的に受容可能な吸収性担体又はキャリアによって有効成分を搭載する乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物を提供する。
【0017】
具体的には、ここで言われる「乳酸菌発酵産物」とは、乳酸菌によって発酵基質に対して発酵工程、固液分離工程及び濃縮工程を行って得られ且つ菌体を含まない濃縮濾液である。つまり、本願の乳酸菌発酵産物は、実質的に菌体及び菌体成分を含まない。次に、上記の発酵工程、固液分離工程及び濃縮工程は、従来の製造工程条件を使用してよいので、ここで繰り返して説明しない。
【0018】
ここで言われる「乳酸菌」とは、植物乳杆菌(Lactobacillus plantarum)GKM3(寄託番号はBCRC910787である)である。菌株GKM3の微生物学的性質に関しては、台湾特許公開第I634207号を参照してよく、ここで合わせて参照文献として例示する。乳酸菌の菌株に様々な種類があり、異なる菌株同士の性質も大いに異なるので、GKM3以外の菌株の植物乳杆菌によって発酵基質に対して発酵工程、固液分離工程及び濃縮工程を行って得られ且つ菌体を含まない濃縮濾液が実験的には証明されていないが、皮膚外傷に対して抗炎症及び治癒促進という効果を持つことは予期されない。
【0019】
ここで言われる「発酵基質」とは、菌株GKM3の培養に適したものであるが、特に制限されない。ある例において、発酵基質は、例えばMRS寒天、PCA寒天、M17寒天、Rogosa寒天、TOS-MUP寒天及びそれらの如何なる組み合わせを含む市販の培養基であってよいが、それらに限定されない。上記MRS寒天には、3%のNaCl又は0.05%のブロモクレゾールグリーン(bromocresol green)が選択的に添加されてもよい。上記菌株GKM3の発酵基質に接種する菌体密度は特に制限されないが、ある実施例において、前記菌株GKM3の接種量は、例えば、1ml当たり1×1010コロニー形成単位(colony forming unit;cfu)~1×1011cfu/mLであってよいが、本発明はこれに限定されない。また、菌株GKM3の前記発酵基質に対する発酵工程の発酵時間は特に制限されないが、一般的に、例えば12時間~24時間であってよいが、16時間~20時間であることが好ましい。
【0020】
ここで言われる「濃縮濾液」(発酵濃縮濾液とも呼ばれる)とは、乳酸菌によって発酵基質に対して発酵工程、固液分離工程及び濃縮工程を行った濾液であり、更に発酵基質の初期体積よりも小さくなるまで濃縮されるため、濃縮倍数は特に制限されない。ある例において、前記濃縮濾液としては、例えば濾液を発酵基質の初期体積の5%~50%まで濃縮することに相当する2倍~20倍濃縮してよいが、発酵基質の初期体積の5%~20%まで濃縮することが好ましい。
【0021】
ここで言われる「吸収性担体」又は「キャリア」は、上記有効成分を搭載するためのものであり、その材質は特に制限されないが、有効成分の効果を干渉しないことが好ましい。次に、上記吸収性担体又はキャリアの搭載する乳酸菌発酵産物の含有量は、特に制限されないが、製品の要求及び選用される担体又はキャリアの搭載量によって異なっている。
【0022】
ある例において、好適な吸収性担体としては、ファイバー担体、通気フィルム担体、ヒドロコロイド担体、ゲル担体、フォーム担体、アルゲコロイド担体、タンパク質担体及びそれらの如何なる組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。
【0023】
別の例において、好適なキャリアとしては、例えば、エアロゾル化剤であってよいが、これにより、エアロゾル剤形の外傷外用組成物を提供する。
【0024】
菌体自体又は菌体成分(例えば多糖)含有の成分を創傷に投与する従来のことに比べると、本発明は、菌体を含まない濃縮濾液を利用し、菌体関連成分の創傷に対する予期せぬ刺激を効果的に低下させることができる。一実施例において、動物実験で、上記乳酸菌発酵産物が動物の皮膚外傷に直接接触した後で、創傷に対して確かに抗炎症及び治癒促進という効果を持つことが証明されるので、外傷外用組成物の有効成分とされることができる。他の実施例において、上記有効成分は、薬学的成分を選択的に更に含んでよく、この薬学的成分としては従来の化合物及び/又は薬剤が選用されてよいので、繰り返して説明しない。なお、本発明は、従来の発酵工程、固液分離工程及び濃縮工程によって乳酸菌発酵産物を調製し、既設の製造工程や設備を変更する必要はなく、製造工程が容易であり、コストを低下させ且つ量産しやすい。
【0025】
以下、複数の実施例によって本発明の適用を説明するが、それらは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神や範囲から逸脱せずに、様々な変更と修正を加えてよい。
【実施例0026】
実施例1:動物モデル作成
1.実験動物
まず、国家動物実験中心由来の、12匹の8~10週齢のC57BL/6J雄性マウスを、嘉義長庚病院動物中心で飼育し、動物飼育室の温度を22±2℃に維持し、相対湿度を62±5%にし、光周期を12時間明/12時間暗に調整し、毎日に飼育者により温湿度をモニターして記録した。飼料及び滅菌逆浸透水の両方がマウスによって自由に摂取されるようにした。飼育1週間後に、実験を開始した。
【0027】
2.実験設計
マウスについて、背側の皮膚を剃毛した後で、ベタジン溶液で皮膚を消毒し、まず、シリカゲルで副木をマウスの両側に固定してから、手術的外傷創傷によって1cm*1cm面積の皮膚を除去し、深さ約4~5mmの創傷にし、外傷の1時間後に、マウスを群分けし、生理食塩水群(n=6)及びGKM3発酵濾液群(n=6)に分け、合計で12匹のマウスであった。被覆材を連続に投与し、それぞれ創傷形成後の0、2、4、6、8、10日目に動物創傷修復度を観察して、創傷の修復面積の算出や換算を行った。安全性指標で実験動物の健康に無害であると判定する場合、被験物を投与した後で、本実験では、手術後の3日に毎日筋肉注射するように1mg/kgの用量で鎮痛剤を投与し、2日毎に被覆材を交換し、創傷治癒状況を撮影して面積を算出し、その結果が図1及び図2に示された。
【0028】
3.実験結果
本実験では、マウス皮膚に同一範囲及び同一程度の創傷を作り、それぞれ生理食塩水(制御群)及び益生菌GKM3発酵濃縮濾液(GKM3群)を投与し、マウスに対して創傷治癒状況を10日観察した。益生菌GKM3発酵濃縮濾液としては、GKM3によってMRS培養液を16時間発酵させた後、遠心工程を行って菌体を除去して、得られた上清液を減圧濃縮して10倍濃縮したものであり、発酵基質の初期体積の10%まで濃縮したものに相当していた。
【0029】
本発明の一実施例によるマウス皮膚創傷に益生菌GKM3発酵濃縮濾液(GKM3群)又は生理食塩水(制御群)を投与した異なる時点での外観変化を示す図1を参照されたい。図1の外観結果から判明されるように、GKM3群のマウスは、皮膚創傷の治癒速度が速く、且つ創傷が化膿しにくく、治癒程度もより顕著であった。観察日数の増加につれて、GKM3群のマウスは、創傷治癒速度が速く、且つ治癒程度が顕著であった。
【0030】
本発明の一実施例によるマウス皮膚創傷に益生菌GKM3発酵濃縮濾液(GKM3群)又は生理食塩水(制御群)を投与した異なる時点での創傷治癒曲線図を示す図2を参照されたい。図2の創傷治癒の百分率結果から判明されるように、GKM3群のマウスは、皮膚創傷治癒領域の百分率が高く、創傷治癒程度が良いことを表していた。実験の2日目に、GKM3群は創傷回復比率が50%に達したが、制御群は単に約15%であった。実験の6日目まで、GKM3群は創傷回復比率が約80%に達したが、制御群は54%まで回復した。実験の10日目まで、GKM3群は創傷回復比率が97%に達したが、制御群は約79%であった。
【0031】
また、益生菌GKM3発酵濾液が投与されたマウス群別は、創傷がわりに化膿しにくく、且つ創傷治癒速度が速い。実験結果によると、植物乳杆菌GKM3発酵濾液をマウス皮膚創傷被覆材に用いると、この組成の被覆材は、創傷化膿の改善能力を持ち、且つ皮膚創傷治癒を促進することができる。
【0032】
まとめて言うと、上記複数の実施例により、本発明の乳酸菌発酵産物は、特定の菌株の植物乳杆菌で発酵したが菌体を含まない濃縮濾液を、有効成分として、皮膚創傷に投予した後で、確かに皮膚創傷炎症の阻害及び創傷治癒の促進効果を持っていることが証明される。
【0033】
注意すべきなのは、本発明は、特定の製造工程、特定の吸収性担体又はキャリア、又は特定の分析方法を例示として、本発明の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物を説明したが、当業者であれば、本発明はこれに限定されなく、本発明の精神や範囲から逸脱せずに、本発明の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物は他の製造工程、他の吸収性担体又はキャリア、又は他の分析方法で行われてもよいことが知られる。
【0034】
上記実施例から分かるように、本発明の乳酸菌発酵産物含有外傷外用組成物は、そのメリットとして、特定の菌株の植物乳杆菌で発酵したが菌体を含まない濃縮濾液有効成分とし、また薬学的に受容可能な吸収性担体又はキャリアで有効成分を搭載して得られる外傷外用組成物は、皮膚創傷に投予されると、皮膚創傷炎症の阻害及び創傷治癒の促進効果を持つことができることにある。
【0035】
本発明は実施例により前述の通りに開示されたが、これらに限定されなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【0036】
[生物材料寄託]
植物乳杆菌(Lactobacillus plantarum)GKM3は、台湾新竹食品路331号である中華民国財団法人食品工業発展研究所生物資源保存及び研究中心に寄託され、寄託日は2017年7月14日であり、寄託番号はBCRC910787であり、2017年7月26日にこの菌株が生存していることが確認された。
図1
図2