(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078963
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】下部筐体部分および上部筐体部分を有する封止された筐体を備える電気デバイス
(51)【国際特許分類】
H01H 9/02 20060101AFI20220518BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20220518BHJP
H01H 50/02 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H01H9/02 C
H05K5/06 A
H01H50/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021182939
(22)【出願日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】20207564.4
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501218751
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハウツンク
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】マルクス グートマン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ダイムリンク
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ヴェズリー
【テーマコード(参考)】
4E360
5G052
【Fターム(参考)】
4E360AB12
4E360AB31
4E360BA01
4E360BD03
4E360EA11
4E360EA25
4E360ED07
4E360GA12
4E360GA29
4E360GA53
4E360GB99
4E360GC06
4E360GC08
5G052AA01
5G052HA01
5G052HA14
5G052HB09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造が容易で、耐久性のある封止された筐体を有する電気デバイスを提供する。
【解決手段】筐体は、電気コンポーネントの少なくとも1つが支持される下部筐体部分6と、上部筐体部分8とを有し、下部筐体部分と上部筐体部分との間に溶着部10が形成されている。下部筐体部分および上部筐体部分は、電気コンポーネントが封止収容される筐体空洞12を取り囲む。下部筐体部分および上部筐体部分の一方が、突起14を備え、突起は、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に溶着され、下部筐体部分と上部筐体部分との間に間隙16が設けられ、間隙は、突起から径方向に筐体の外部に延び、溶着部の固化した溶融材料が、少なくとも部分的に間隙内に受けとられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレー(3)などの電気デバイス(1)であって、
- 電気コンポーネント(2)と、
- 封止された筐体(4)であって、
- 前記電気コンポーネント(2)の少なくとも1つが支持される下部筐体部分(6)、および
- 上部筐体部分(8)、
を有し、前記上部筐体部分(8)と前記下部筐体部分(6)との間に溶着部(10)が形成されている、封止された筐体(4)と、を備え
前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)は、前記電気コンポーネント(2)が封止収容される筐体空洞(12)を取り囲み、
前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の一方が、突起(14)を備え、前記突起(14)は、前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の他方に溶着され、前記下部筐体部分(6)と前記上部筐体部分(8)との間に間隙(16)が設けられ、前記間隙(16)は、前記突起(14)から径方向に前記筐体(4)の外部(17)に延び、前記溶着部(10)からの固化した溶融材料(18)が、少なくとも部分的に前記間隙(16)内に受けとられる、電気デバイス(1)。
【請求項2】
前記突起(14)は、前記下部筐体部分(6)または前記上部筐体部分(8)いずれかの前面(24)全体に沿って連続的に延び、閉じられた周囲を有する、請求項1に記載の電気デバイス(1)。
【請求項3】
前記突起(14)は、前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の他方の切り欠き(52)に少なくとも部分的に受けとられ、前記溶着部(10)が、少なくとも部分的に前記突起(14)と前記切り欠き(52)との間に配置されている、請求項1または2に記載の電気デバイス(1)。
【請求項4】
前記下部筐体部分(6)と前記上部筐体部分(8)との間に超音波溶着部(10)が形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気デバイス(1)。
【請求項5】
前記間隙(16)は、前記溶着部(10)を越えて径方向(R)に延びている、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気デバイス(1)。
【請求項6】
内側間隙(62)が設けられ、前記内側間隙(62)は、前記突起(14)に対して前記間隙(16)の反対側に配置され、前記突起(14)から前記筐体空洞(12)へ径方向に延びている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気デバイス(1)。
【請求項7】
前記内側間隙(62)は、前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の一方の外側側壁(26)と、前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の他方の内側壁(44)との間に形成された溝状のポケット(46)内に径方向に開口し、前記内側壁(44)は、前記筐体空洞(12)内に配置され、前記側壁(26)に対して実質的に平行に延びている、請求項6に記載の電気デバイス(1)。
【請求項8】
前記切り欠き(52)は、前記間隙(16)および/または前記内側間隙(62)内に開口している、請求項6または7に記載の電気デバイス(1)。
【請求項9】
前記間隙(16)は、前記筐体(4)の高さの4分の1から4分の3の間に配置されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気デバイス(1)。
【請求項10】
前記間隙(16)は、前記筐体(4)の中間の高さに設けられている、請求項1から9のいずれか一項に記載の電気デバイス(1)。
【請求項11】
前記上部筐体部分(8)の外側表面(32)は、前記下部筐体部分(6)の外側表面(34)と揃えられている、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気デバイス(1)。
【請求項12】
前記下部筐体部分(6)と前記上部筐体部分(8)との間の前記間隙(16)の高さが、前記径方向(R)における前記間隙(16)の長さよりも小さい、請求項1から11のいずれか一項に記載の電気デバイス(1)。
【請求項13】
前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の前記一方の前記突起だけが、前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の前記他方に直接当接する、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気デバイス(1)。
【請求項14】
電気デバイス(1)の封止された筐体(4)を製造するための方法であって、前記筐体(4)は、少なくとも1つの電気コンポーネント(2)を支持するように適合された下部筐体部分(6)と、上部筐体部分(8)とを有し、前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の一方が、突起(14)を備え、前記方法は、前記突起(14)から径方向(R)に前記筐体(4)の外部(17)に延びる間隙(16)を前記下部筐体部分(6)と前記上部筐体部分(8)との間に形成した状態で、前記突起(14)を、前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の他方に溶着するステップを含む、方法。
【請求項15】
前記突起(14)の先端(58)のうち所定の体積(60)が溶融され、前記所定の体積(60)は、前記下部筐体部分(6)および前記上部筐体部分(8)の前面(24,50)間の容積よりも小さい、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーなどの電気デバイスに関する。この電気デバイスは、電気コンポーネントと、電気コンポーネントを収容する下部筐体部分および上部筐体部分を有する、封止された筐体と、を備える。本発明はさらに、そのような電気デバイスの筐体を組み立てるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような電気デバイスは、高い周囲温度および/または動作温度に起因して発生し得る高い内部圧を受けることが多い。さらに、速い温度変化が筐体内部の湿度と組み合わさって内部圧を増大させることもあり得る。内部圧は、筐体を変形させる、および/または損傷し得る。一部の用途は、筐体内の電気コンポーネントを保護し、短絡および/または接触不良を防止するために、高レベルの封止を必要とする。従来技術は、電気コンポーネントを筐体部分に挿入し、筐体部分を平坦なカバーで閉じ、温度硬化またはUV硬化エポキシで筐体を封止することを教示している。しかし、エポキシの塗布は、エポキシの硬化工程が製品に高い熱応力を与え得るため、不都合である。さらに、エポキシを正確に塗布することは煩瑣であり、筐体部分にある様々な設計要素によってエポキシの流れを制御されなければならず、それによって筐体の耐久性が低減し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、製造が容易で、耐久性のある封止された筐体を有する電気デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、リレーなどの電気デバイスを提供することによって上述の問題を解決し、電気デバイスは、電気コンポーネントと筐体とを有する。筐体は、電気コンポーネントの少なくとも1つが支持される下部筐体部分と、上部筐体部分とを有し、下部筐体部分と上部筐体部分との間に溶着部が形成されている。下部筐体部分および上部筐体部分は、電気コンポーネントが封止収容される筐体空洞(housing volume)を取り囲む。下部筐体部分および上部筐体部分の一方が突起を備え、突起は、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に溶着され、下部筐体部分と上部筐体部分との間に間隙が設けられ、間隙は、突起から径方向に筐体の外部(外側、outside)に延び、溶着部の固化した溶融材料が、少なくとも部分的に間隙内に受けとられる。
【0005】
上述の目的は、電気デバイスの筐体を組み立てるための方法によってさらに達成され、筐体は、少なくとも1つの電気コンポーネントを支持するための下部筐体部分と、上部筐体部分とを有し、下部筐体部分および上部筐体部分の一方が、突起を備え、突起は、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に押し付けられて溶着され、突起から径方向に筐体の外部に延びる間隙が下部筐体部分と上部筐体部分との間に形成され、溶着工程からの溶融材料が少なくとも部分的にこの間隙に受けとられる。
【0006】
本発明の電気デバイスおよび電気デバイスの筐体を組み立てるための方法は、優れた封止性能をもつ堅牢な筐体を提供する。突起ならびに固化した溶融材料は、上部筐体部分と下部筐体部分との間の界面で流体が筐体に進入するのを防ぐバリアの役目を果たし、それにより、筐体部分によって収容された筐体空洞を気密封止する。その結果、封止のための煩瑣なエポキシの塗布が回避される。したがって、筐体部分の耐久性を低減させ得る、エポキシを誘導するための筐体部分上の設計要素を設ける必要がない。
【0007】
突起から筐体の外部に径方向に延びる間隙は、溶着中に形成される余剰材料を集めるための収集室を形成する。さらに、間隙は、さらなる溶着領域が形成されるのを防ぐ。何故ならば、突起と、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方との界面によって画定される所定の溶着領域の外側で、上部筐体部分が下部筐体部分に当接することが防止されるためである。しかし、間隙内に受けとられた突起の溶融材料が、固化するときに下部筐体部分と上部筐体部分を互いに接合し、それにより溶着接合部の表面積および強度を増大させる。
【0008】
プラストグラフやX線試験などの一般的な構造分析によって本発明の電気デバイスを明確に鑑定することが可能である。固化した溶融材料は、その微細構造が異なっているために識別できる。例えば、粒子の配向および固化した溶融材料の密度が、突起および関連する筐体部分のものと異なり得る。その結果、固化した溶融材料は、突起および関連する筐体部分から区別することができ、よって、突起が下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に溶着されていること、ならびに下部筐体部分と上部筐体部分との間の間隙に固化した溶融材料が存在することを確認することが可能である。
【0009】
さらに、本願の文脈における用語「径方向に」は、円形の構造に限定されず、「横方向に」と同義で使用される、または筐体の周方向に対して垂直を意味するために使用され得ることに留意すべきである。
【0010】
本発明は、以下の特徴によってさらに改良することができ、それらの特徴は、各自の技術的効果に関して互いから独立しており、任意で組み合わせることができる。
【0011】
例えば、上部筐体部分と下部筐体部分が、いかなる溶着接着剤も用いずに互いと溶着されてよく、これは、溶着シームを形成するための溶着工程中に補助的な溶着材料が追加されないことを意味する。上部筐体部分および下部筐体部分が、プラスチックおよび金属または熱可塑性プラスチックおよび熱可塑性エラストマなどそれぞれ異なる材料から形成される場合、溶着部は、好ましくはレーザ溶着によって形成される。
【0012】
しかし、好ましい実施形態によれば、上部筐体部分と下部筐体部分との間に超音波溶着部が形成される。溶着工程中に、ソノトロードなどの溶着具が、約20~25kHzまたはさらには最大50kHzの高周波振動を生成し、それが圧力と組み合わさって、接合対象の部分に伝達され、これは接合領域における相対振動に至る。超音波溶着は、互いと直接当接するコンポーネントだけが振動バリアを形成して、振動エネルギーを吸収させ、熱に変換させるため、特に有利である。これにより、突起の先端が溶融し、それが固化するときに溶着部を形成する。熱は、突起の先端でのみ生成され、そのため、筐体の残りの部分は熱応力を受けない。集中的なエネルギー入力により、極めて短い溶着時間が実現され得る。
【0013】
周方向に沿った一定の溶着を保証し、いかなる弱点も防止するために、突起は、周方向に沿って連続的に、好ましくは、下部筐体部分または上部筐体部分いずれかの全周に沿って、延びてよい。
【0014】
突起は好ましくは、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方の切り欠きに少なくとも部分的に受けとられ、固化した溶融材料は、切り欠きと突起との間の空間に少なくとも部分的に受けとられる。その結果、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に突起を溶着するための、大きな表面積が提供される。
【0015】
切り欠きの幅は、好ましくは、径方向における突起の幅よりも大きくてよく、その結果、突起の前面だけが切り欠きの底部表面に当接する。したがって、切り欠きと突起との間の界面が、突起の前面に限定されて、溶着領域のさらなる制御を可能にする。突起および切り欠きは、特にさねはぎ(tongue and groove)の組立体を形成することができ、それが特に高剛性の溶着部を可能にする。毛細管効果により、溶融材料が確実に突起と切り欠きとの間の空間に流れ込む。
【0016】
好ましくは、溶融材料が筐体の外部に流れるのを防止するために、間隙は、固化した溶融材料、特に間隙内に受けとられた固化した溶融材料、を越えて径方向に延びてよい。間隙の寸法は、溶着時間および/または突起の先端が下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に押し付けられる深さを定めることによって事前に決定することができる溶融材料の体積が、2つの筐体部分間の容積より小さくなるような寸法とされてよい。2つの筐体部分間の容積は、突起と切り欠きとの間の空間と、間隙の容積と、溶着中に溶融材料が流れ込み得るさらなる間隙の容積との和として定められてよい。
【0017】
溶融材料が筐体の外に流れ出ることを防止することにより、滑らかな外側表面を提供するためのクリーニングステップなどのさらなる処理ステップが回避され得る。
【0018】
上部筐体部分および/または下部筐体部分は、プラスチック材料、特にガラス繊維で強化された材料から構成することができ、それが筐体部分の剛性をさらに増大させ得る。
【0019】
筐体空洞と突起との間に配置された溶融材料の収集室をさらに設けることにより、筐体部分間にもう一つの内側間隙が設けられてよく、これは突起から筐体空洞へ径方向に延びる。その結果、固化した溶融材料が少なくとも部分的にこの内側間隙にも受けとられ、余剰の溶融材料を生成することなく、溶着部の表面積をさらに増大させる。
【0020】
内側間隙は、好ましくは、溶融材料が、筐体空洞の中にまたは筐体の外にこぼれることなく、突起の両側で収集できるように、突起に対して間隙の反対側に配置されてよい。
【0021】
間隙と内側間隙とは好ましくは、径方向に対して実質的に平行な同じ平面に配置されるように、揃えられてよい。好ましくは、径方向および周方向に対して実質的に垂直である、間隙の幅と内側間隙の幅とは、実質的に均質な溶着領域を保証するために、概ね同じであってよい。
【0022】
その結果、溶着領域から径方向内側と径方向外側との両方に収集室が設けられる。したがって、溶融材料は、内側間隙および間隙内に確実に閉じ込められるため、筐体空洞の内部および筐体の外部に移動することが防止され得る。
【0023】
突起が切り欠きの中に受けとられる場合、切り欠きは好ましくは、間隙内に開口し、および、該当する場合は内側間隙内に開口する。したがって、間隙および内側間隙への溶融材料の直接の流れが可能となる。切り欠きと間隙および/または内側間隙との組み合わせは、溶着時に溶着領域で放出されて切り欠きから流れ出す粒子、例えばガラス繊維粒子、が次いでそれぞれ間隙および内側間隙を介しておよそ90°だけさらに方向転換されるため、特に有利である。この方向転換は粒子流の速度を下げ、そのため、粒子流が溶融材料によってそれぞれ間隙および内側間隙に捕らえられ、よって、固化した溶融材料内に分散され得る。
【0024】
外部に流れる粒子は、周囲の人々に対して刺激を生じることがあり、および/または周囲のコンポーネントを損傷し得る。しかし、粒子が間隙内に捕らえられるため、粒子が外部に流れることが防止され、追加的な安全機器の必要性を回避する。
【0025】
溶着中に何らかのさらなる溶着領域が発生するのをさらに防止するために、突起だけが、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に当接してよい。言い換えると、突起によって提供される接触表面および突起によって当接される表面を除いて、下部筐体部分と上部筐体部分との間にさらなる直接の接触表面は存在しない。したがって、突起の溶着領域および当接表面以外の様々なエリアで材料が溶融することが回避される。望ましくない追加的なエリアの溶融材料は、例えば、溶融材料の流出および/またはガラス繊維などの溶融材料中の粒子の過剰な放出を引き起こし得る。それが製品品質に負の影響を与え、筐体空洞内に受け入れられた電気コンポーネントの接触不良に至ることすらある。
【0026】
したがって、この有利な実施形態では、上部筐体部分および/または下部筐体部分は、溶着工程中に筐体部分同士が互いに対して、すなわち、制限表面が下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に当接するまで、押される距離を定めるための制限表面を備えない。距離は、代わりに、溶着工程によって、例えば溶着時間および押す力を介して、直接決定されてよい。制限表面を省くことは、間隙が制限表面によって閉じられて、溶着中に間隙内に配置された溶融材料の通り抜けを妨げることがないというさらなる利点を有する。
【0027】
さらなる有利な実施形態によれば、下部筐体部分および/または上部筐体部分は、径方向に対して実質的に垂直な平面に対して実質的に平行に延びる側壁を有する、実質的に桶の形状であってよい。突起は、下部筐体部分の側壁または上部筐体部分の側壁いずれかの前面に形成されてよく、前面は、下部筐体部分の側壁および上部筐体部分の側壁いずれかの他方の前面に面している。
【0028】
その結果、間隙および/または内側間隙は、互いの方を向き、突起から径方向に延びるそれぞれの側壁の前面同士の間に形成されてよい。
【0029】
筐体の耐久性をさらに高めるべき場合は、下部筐体部分の側壁の外側表面が、好ましくは、上部筐体部分の側壁の外側表面と揃えられてよい。外側表面同士は、径方向に対して実質的に垂直である共通の平面に配置されてよい。その結果、上部筐体部分と下部筐体部分との間に径方向外側に突出する段差が形成されず、そのような段差は欠けやすい可能性がある。
【0030】
さらなる有利な実施形態によれば、下部筐体部分および上部筐体部分の一方が、筐体空洞内に配置された内側壁を備え、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方に向かって突出していてよい。内側壁は、好ましくは、下部筐体部分および上部筐体部分いずれかの他方の側壁に対して実質的に平行に延びて、それらの間に溝状のポケットを形成してよい。
【0031】
内側間隙は、好ましくは、溝状のポケット内に開口していてよく、それにより、内側壁が、溶融材料の任意の粒子が筐体空洞に流れ込んで電気コンポーネントと接触するのを防止するバリアの役目を果たしてよい。そのような粒子は、特に溶融材料がガラス繊維または他の強化粒子を含む場合に、電気コンポーネントを損傷する可能性があり、さらに接触不良を引き起こすこともある。したがって、粒子が溶着領域から筐体空洞内に取り付けられた電気コンポーネントに流れるための迷路のような経路が作り出される。まず、粒子は、第1の方向に溶着領域から内側間隙内に流れ、そこで第2の方向に方向転換され、第2の方向は実質的に第1の方向に対して垂直である。これにより粒子流の速度が下がり、そのため、溶融材料が間隙内で固化する時に粒子を取り込み、捕らえることができる。
【0032】
しかし、内側間隙から出ることができた粒子が筐体空洞内の電気コンポーネントに直接導かれることはないという点で、さらなる安全機構が提供される。代わりに、それらは溝状のポケットに受けとられる。粒子が溝状のポケットの外に流れ出て内側壁を越えて電気コンポーネントに至るには、第2の方向に対して実質的に垂直であり、第1の方向に対して実質的に平行である第3の方向への第2の転換が必要となる。
【0033】
内側壁および突起は、好ましくは、それぞれ異なる筐体部分に形成されてよい。例えば、内側壁は、下部筐体部分に形成され、よって電気コンポーネントを取り付けるための安定化構造の役目も果たしてよい。上部筐体部分は、上部筐体部分の側壁の前面から延びる突起を備えてよい。
【0034】
溶着部の剛性をさらに高めるために、下部筐体部分の側壁の前面は、径方向に突出する肩部として内側壁から筐体の外部に延びてよい。その結果、下部筐体部分の側壁は、径方向に大きい材料厚さを備え、内側壁によってさらに強化される。これは、下部筐体部分の前面が、突起が受けとられる切り欠きを備える場合に特に有利であり得る。溶着、特に超音波溶着中に、下部筐体部分の側壁にかかる振動ひずみが、大きい材料厚さに起因する増大した剛性によって補償され、筐体部分のいかなる損傷も防止し、よって製造欠陥のリスクをさらに低減し得る。
【0035】
さらなる有利な実施形態によれば、間隙は、筐体の高さの4分の1から4分の3の間に配置されてよい。したがって、上部筐体部分および下部筐体部分の両方が各自の側壁によって安定化され得、溶着に起因する歪みが防止され得る。
【0036】
特に、特に筐体部分が長手方向の本体を有する、すなわち筐体部分の長さが筐体の幅および/または高さよりも大きい場合、高い内部圧に起因する筐体部分の膨張が回避され得る。間隙が筐体の中間の高さに配置される場合、筐体の耐久性および溶着された封止部の信頼性がさらに増大され得る。本願の文脈では、径方向に対して実質的に平行に配置された筐体の中心平面から8分の1の逸脱も、筐体の中間の高さとみなされることに留意すべきである。
【0037】
以下、本発明による筐体組立体について、例示的実施形態が示される添付図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0038】
図面中、機能および/または構造において互いに対応する要素には、同じ参照符号が使用される。
【0039】
様々な態様および実施形態の説明に従って、図面に示される要素は、それら要素の技術的効果が特定の用途に必要とされない場合には省くことができ、その逆も同様である。すなわち、図示されない、または図を参照して説明されないが、上記で説明された要素は、それら特定の要素の技術的効果が特定の用途で有利である場合には、追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の電気デバイスの例示的実施形態の模式的断面図である。
【
図2】溶着前の
図1に示される例示的実施形態の突起の模式的強調図である。
【
図3】溶着中の電気デバイスの筐体の模式的斜視図である。
【
図4】溶着後の
図1に示される例示的実施形態の突起の模式的強調図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
最初に、本発明の電気デバイス1の例示的実施形態について、電気デバイス1を模式的な斜視図で示す
図1を参照しながら詳細にさらに説明する。
【0042】
電気デバイス1は、電気コンポーネント2および筐体4を備える。筐体4は、電気コンポーネント2の少なくとも1つが支持される下部筐体部分6と、上部筐体部分8とを有し、下部筐体部分6と上部筐体部分8との間に溶着部10が形成されている。下部筐体部分6および上部筐体部分8は、電気コンポーネント2が封止収容される筐体空洞12を取り囲む。下部筐体部分6および上部筐体部分8の一方は突起14を備え、突起14は、下部筐体部分6および上部筐体部分8いずれかの他方に溶着され、下部筐体部分6と上部筐体部分8との間に間隙16が設けられ、間隙16は、突起14から径方向に筐体4の外部17に延び、溶着部10の固化した溶融材料18が、少なくとも部分的に間隙16内に受けとられる。
【0043】
図1で、電気コンポーネント2は模式的にのみ示されている。電気デバイス1は、特にリレー3であってよく、したがって、電気コンポーネント2は、例えば、コンタクトばね、コイル等を含むことができる。
【0044】
突起14ならびに固化した溶融材料18は、上部筐体部分8と下部筐体部分6との間の界面で流体が筐体4に進入するのを防ぐバリアの役目を果たし、したがって、筐体部分6、8によって収容された筐体空洞12を気密封止する。その結果、封止のための煩瑣なエポキシの塗布が回避される。したがって、筐体部分の耐久性を低減させ得る、エポキシを誘導するための筐体部分の設計要素の必要がない。特に、筐体4は、エポキシで封止されなくてよい。
【0045】
突起14から筐体4の外部に径方向に延びる間隙16は、溶着中に形成される余剰材料を集めるための収集室20の役目を果たし、それと同時に、突起14と、下部筐体部分6および上部筐体部分8いずれかの他方との界面によって画定される所定の溶着領域22の外側で、上部筐体部分が下部筐体部分に当接することによってさらなる溶着領域が形成されるのを防ぐ。しかし、間隙16内に受けとられた突起14の溶融材料が、固化するときに下部筐体部分6と上部筐体部分8を互いに接合し、それにより溶着の表面積および強度を増大させる。
【0046】
径方向Rは、球形の筐体に限定されないことに留意されるべきである。筐体4は立方形状を備えてもよく、その場合、径方向Rは、電気デバイス1の周方向Pに対して実質的に垂直と理解されるべきである。
【0047】
図1で分かるように、突起14は、好ましくは、上部筐体部分8の側壁26の前面24に形成され得る。上部筐体部分8は、好ましくは、上部壁30と、上部壁30から下部筐体部分6に向かって実質的に垂直に延びる側壁26とを有する桶状のカバー28であってよい。特に有利な実施形態では、側壁26は、上部壁30と一体的に形成され、閉じられた周囲に沿って延びてよい。その結果、側壁と上部壁30との間のさらなる封止が必要でなくなる。
【0048】
好ましくは、突起14は、周方向Pに連続的に延び、よって、これも閉じた周囲を有する。したがって、溶着部によって提供される封止は、周方向Pに沿った各位置で同じであり、流体が侵入するいかなる弱点も防止する。
【0049】
側壁26は、外部17を向いた外側表面32を備えてよく、これは好ましくは、径方向Rに対して実質的に垂直な平面内で、下部筐体部分の側壁36の外側表面34と揃えられてよい。言い換えると、外側表面32、34は、径方向Rに対して実質的に垂直に延びる共通の平面に配置されてよい。
【0050】
下部筐体部分6は区画38を備えてよく、この中に電気コンポーネント2が取り付けられてよい。区画38は、リブ40または隔壁42を介して互いから隔てられてよく、これは
図1に仮想線で示されている。
【0051】
区画38を径方向外側向きの方向に制限するために、内側壁44が設けられてよく、内側壁44は、上部筐体部分8の側壁26に対して実質的に平行に延び、上部筐体部分8によって囲まれた空洞内に突出し、その結果、内側壁44と側壁26との間に溝状のポケット46が形成される。
【0052】
内側壁44から突出する、径方向に突出する肩部48が、下部筐体部分6の外側向きの側壁36を形成してよい。したがって、下部筐体部分6の側壁36は、径方向Rの材料厚さが大きいため、増大した剛性を有する。径方向に突出する肩部48には、上部筐体部分8に面する前面50が設けられて、間隙16は、上部筐体部分8の前面24と下部筐体部分6の前面50との間に形成されてよい。
【0053】
溶着部10をさらに強化するために、下部筐体部分6の前面50に切り欠き52が形成されてよく、切り欠き52は、突起14を少なくとも部分的に受け入れる。したがって、切り欠き52と突起14との間にさねはぎ溶着部が形成され得る。切り欠き52は、径方向Rにおける幅が径方向における突起14の幅よりも大きくてよく、その結果、切り欠き52と突起14との間に空間53が形成され、この空間53に固化した溶融材料18が充填されて、強く、耐久性のある溶着部10が形成される(
図4参照)。
【0054】
図1で分かるように、間隙16は、好ましくは、筐体4の中間の高さ程度に配置されてよく、これは、下部筐体部分6と上部筐体部分8の両方が各自の側壁によって安定化されるため、特に有利である。特に長手方向の本体を有する筐体4の場合、高い内部圧に起因する膨張ならびに溶着工程に起因する歪みを回避することができるため、そのような実施形態が特に有利であると判明し得る。
【0055】
次いで、
図2~
図4を参照して溶着工程ならびに溶着部についてさらに説明する。
【0056】
図2には、溶着前の筐体部分の強調部位が示される。図示されているように、突起14の前面が切り欠き52の底部表面に押し当てられるとき、突起14だけが下部筐体部分6に当接する。その結果、溶着領域が界面に限定され、溶着工程中に追加的な望ましくない溶融材料が発生するのを防止することができる。突起14の溶着領域22および当接表面以外の様々なエリアで材料が溶融することが回避される。望ましくない追加的なエリアの溶融材料は、例えば、溶融材料の流出および/またはガラス繊維などの強化粒子の過剰な放出を引き起こし得る。これが製品品質に負の影響を与え、筐体空洞内に受け入れられた電気コンポーネントの接触不良に至ることすらある。これは、追加的な溶着領域に電気コンポーネント2または筐体4の外側17へ溶融材料および/または強化粒子が直接流れるのを防ぐための機構がないためである。
【0057】
突起14は、切り欠き52の深さよりも大きい長さを有してよく、その結果、前面24、50同士の間に間隔が空く。好ましくは、突起14は、前面24の一部が径方向内側または径方向外側に突起14を越えて延びるように、前面24の径方向Rの実質的に中央の位置に配置されてよい。
【0058】
補助的な溶着材料の追加を回避すべき場合、筐体部分6、8は好ましくは、超音波溶着によって互いと溶着されてもよい。そのような処理が
図3に示される。そのために、下部筐体部分6が基台54にしっかり取り付けられてよく、上部筐体部分8が下部筐体部分6上に置かれる。ソノトロード56が、上部筐体部分8を下部筐体部分6に向けて押し、同時に約20~25kHzまたはさらには最大50kHzの低振幅音響振動を発する。この振動により、筐体部分の当接部分同士の間に高い摩擦が生じ、当接部分は、この場合、突起の前面および切り欠きの底部表面である。この摩擦は突起の先端58だけを溶融させ、そのため、筐体部分の残りの部分の特性に影響を与えることなく、熱応力が比較的小さい領域に制限される。
図1および
図4では、溶融した先端58は、仮想線で示され、所定の体積60を備え、所定の体積60は、筐体部分が互いに向けて押される深さと溶着工程の継続時間とによって決定することができる。
【0059】
溶融材料は、突起14と切り欠き52との間の空間を満たす。好ましくは、切り欠きは間隙16内に開口し、間隙16は、対向し合う筐体部分6の前面24と筐体部分8の前面50との間に形成することができる。したがって、溶融材料はさらに間隙に流れ込み、固化時に前面24、50同士を溶着する。その結果、突起が切り欠きに溶着されるだけでなく、前面同士も、互いと直接当接することなく溶着される。
【0060】
図2および
図4で分かるように、切り欠き52はさらに、それぞれ突起および切り欠きから径方向内側に延びる前面の部分同士の間に形成された、間隙16の反対側の内側間隙62内に開口してよい。この追加的な内側間隙62により、溶着領域のさらなる形成を防止することができる。好ましくは、突起14だけが下部筐体部分6および上部筐体部分8いずれかの他方に直接当接し、それにより溶着部10は、さらに最適化し、制御することができる。溶着工程後に突起14だけが下部筐体部分6および上部筐体部分8いずれかの他方に当接するときに、追加的な溶着領域の発生が防止され得る。
【0061】
内側間隙62は好ましくは、突起14に対して間隙16のちょうど反対側に配置されてよく、それにより、それらが径方向Rに対して実質的に平行な共通の平面に沿って延びる。溶着中に生じる粒子は、電気コンポーネントと接触するのを防止されなければならず、したがって、内側間隙62は溝状のポケット46内に開口していてよい。それにより、内側壁44はさらなるバリアとして働き、粒子が電気コンポーネントと接触するための迷路のような経路を形成することができる。
【0062】
好ましくは、筐体部分6、8は、プラスチック材料から形成されてよく、それが例えばガラス繊維によって強化されてよい。したがって、接触不良を引き起こすこともある電気コンポーネントとのガラス繊維の接触を防止することができる。
【0063】
粒子が電気コンタクト2に到達するには、溶着領域22から内側間隙62内まで流れる必要があり、そこで径方向内側に方向を変えられる。これにより粒子流の速度が下がり、そのため、溶融材料が内側間隙62内で固化するときに粒子を取り込み、捕らえることができる。それに対応して、筐体4の外に流れ出ようとする粒子は、方向を変えられ、最終的に間隙16内に捕らえられる。
【0064】
粒子はさらに、内側壁44によって電気コンポーネント2に到達することを防止される。内側間隙62から出ることができた粒子は、筐体空洞12内の電気コンポーネント2に直接導かれることはない。代わりに、それらは溝状のポケット46に受けとられる。粒子が溝状のポケット46の外に流れ出て内側壁44を越えて電気コンポーネント2に至るには、粒子の第2の方向転換が必要となる。
【0065】
図4は、組み立てられた筐体4の溶着部10を示す。固化した溶融材料18は、好ましくは、内側間隙62と間隙16の両方に受けとられて、筐体部分6の前面24と筐体部分8の前面50同士を接合する中間層を形成することができる。間隙16および内側間隙62は、好ましくは、固化した溶融材料を越えて径方向に延び、溶融材料が外部にこぼれ、よって固化後に外側表面32、34を滑らかにするためのさらなる処理ステップを必要とすること、または可能性としては電気コンポーネント2を損傷することを防止する。
【0066】
これは、例えば、所定の体積が、突起と切り欠きとの間の空間の容積と、溶着工程後の内側間隙の容積と、溶着工程後の間隙の容積との和より小さい場合に実現され得る。
【符号の説明】
【0067】
1 電気デバイス
2 電気コンポーネント
3 リレー
4 筐体
6 下部筐体部分
8 上部筐体部分
10 溶着部
12 筐体空洞
14 突起
16 間隙
17 外部
18 固化した溶融材料
20 収集室
22 所定の溶着領域
24 前面
26 側壁
28 桶状のカバー
30 上部壁
32 外側表面
34 外側表面
36 側壁
38 区画
40 リブ
42 隔壁
44 内側壁
46 溝状のポケット
48 肩部
50 前面
52 切り欠き
53 空間
54 基台
56 ソノトロード
58 先端
60 所定の体積
62 内側間隙
P 周方向
R 径方向
【外国語明細書】