(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078966
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】秤または計量セルのための力伝達部材
(51)【国際特許分類】
G01G 23/00 20060101AFI20220518BHJP
G01G 23/02 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
G01G23/00 Z
G01G23/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021183420
(22)【出願日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】10 2020 130 068.9
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506186673
【氏名又は名称】ヴィポテック ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】ADAM-HOFFMANN STRASSE 26, 67657 KAISERSLAUTERN,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ゴットフリードセン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-デービッド クリンゲルヘーファ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小さい自重、高い剛性、低い熱伝導、電気的な放電能力を満たし、簡易かつ低コストに製造することができる力伝達部材を提供する。
【解決手段】秤または計量セルのための力伝達部材に関し、力伝達部材1は荷重によって及ぼされる荷重力を伝達するために、計量されるべき荷重を受け入れる荷重受容ユニットと、計量セルの荷重導入個所との間に配置されるために構成され、力伝達部材は少なくとも部分的に中空ロッド2からなる、特に丸棒からなる、ロッド機構として製作され、少なくとも部分的に3D印刷技術で製造されることを特徴とする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
秤または計量セルのための力伝達部材(1)であって、
前記力伝達部材(1)は、荷重によって及ぼされる荷重力を伝達するために、計量されるべき荷重を受け入れる荷重受容ユニットと、計量セルの荷重導入個所との間に配置されるために構成される、力伝達部材において、
前記力伝達部材(1)は少なくとも部分的に中空ロッド(2)からなる、特に丸棒からなる、ロッド機構として製作され、前記力伝達部材(1)は、特に前記中空ロッドは、少なくとも部分的に3D印刷技術で製造されることを特徴とする、力伝達部材。
【請求項2】
前記力伝達部材(1)は、特に3D印刷技術によって製造される部分は、少なくとも部分的にステンレス鋼で製造されることを特徴とする、請求項1に記載の力伝達部材(1)。
【請求項3】
前記力伝達部材(1)は前記計量セルの過負荷安全装置を含み、および/または前記力伝達部材(1)は過負荷安全装置(10)に間接的または直接的にリンクされるために構成されることを特徴とする、先行請求項1または2のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項4】
前記力伝達部材(1)は、前記荷重受容ユニットおよび/または前記荷重導入個所および/または前記過負荷安全装置(10)に間接的または直接的に組み付けられるために構成された少なくとも3つの、好ましくは4つの端部領域(3)を有することを特徴とする、先行請求項1から3のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項5】
前記力伝達部材(1)は少なくとも1つのV型構造(4)を有することを特徴とする、先行請求項1から4のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項6】
前記力伝達部材(1)は、好ましくは前記V型構造(4a,4a’,4b,4b’)の尖端側(5a,5b)を介して間接的または直接的に、好ましくは共通のベース部材(6)を介して互いに結合される少なくとも2つのV型構造(4a,4a’,4b,4b’)を有することを特徴とする、先行請求項1から5のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項7】
前記V型構造(4a,4a’,4b,4b’)の分枝(7a,7b)の端部は長手方向Xと横方向Yを通って広がる平面(E)に位置し、すなわち前記分枝の端部は(仮想的な)長方形の、特に正方形または台形の、頂点を形成することを特徴とする、先行請求項1から6のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項8】
前記V型構造(4a,4a’,4b,4b’)の尖端側(5a,5b)は同じく長手方向Xと横方向Yを通って広がる平面(E)に位置し、または、前記V型構造(4a,4a’,4b,4b’)の尖端側(5a,5b)は長手方向Xと横方向Yを通って広がる平面(E)から高さ方向Zの方向へ突き出すことを特徴とする、先行請求項1から7のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項9】
前記力伝達部材(1)は前記計量セルの前記荷重導入個所へのリンクのための少なくとも1つのリンク個所(8a)を有し、前記リンク個所(8a)は好ましくは両方の前記V型構造(4a,4a’,4b,4b’)の間に配置されることを特徴とする、先行請求項1から8のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項10】
前記力伝達部材(1)は少なくとも2つのリンク個所(8a,8b)を有し、前記リンク個所のうちの1つ(8a)は第1の組付手段を介して高さ方向Zでの取付を可能にし、前記リンク個所(8b)のうち別の1つは第2の組付個所を介して長手方向Xでの取付を可能にすることを特徴とする、先行請求項1から9のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項11】
前記ベース部材(6)は少なくとも1つのリンク個所(8a)を有することを特徴とする、請求項6を引用している限りにおける請求項9または10のいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項12】
前記ベース部材(6)は少なくとも部分的にプレートおよび/または面として製作されることを特徴とする、請求項6から11のいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【請求項13】
前記力伝達部材(1)は長手方向Xと横方向Yを通って広がる平面(E)で高さ方向Zの方向への広がりよりも大きい広がりを有し、特にZ方向の方向への広がりは、長手方向Xと横方向Yを通って広がる平面(E)での広がりの好ましくは最大で半分、より好ましくは最大で5分の1、きわめて好ましくは最大で10分の1であることを特徴とする、先行請求項1から12のうちいずれか1項に記載の力伝達部材(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重によって及ぼされる荷重力を伝達するために、計量されるべき荷重を受け入れる荷重受容ユニットと、計量セルの荷重導入個所との間に配置される、秤または計量セルのための力伝達部材に関し、力伝達部材は少なくとも部分的に中空ロッドからなるロッド機構として少なくとも部分的に3D印刷技術で製造されることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
秤は、たとえば食品、医薬品などの製品の自動化された工業生産において重要な役割を果たす。秤は、たとえば完成品の包装に小分けされた公称充填量の品質管理を管理し、充填装置を再調整し、あるいは包装や梱包の完全性をチェックし、たとえば錠剤箱の同封文書の存在をチェックするからである。
【0003】
そのために適用される精密計量技術は-所望の高い生産処理量に基づき-、可能な限り短い測定時間内で、可能な限り正確な計量結果を決定するのがよい。
【0004】
秤の、またはその荷重測定センサすなわち計量セルの、荷重導入部に組み付けられる質量部分は、その質量慣性に基づき、秤メカニズムの(可能な限り安定した)最終値への迅速な機械的整定を遅らせる。このことは、ひずみゲージを備える機械式のベンディングビームに当てはまるだけでなく、電磁力平衡の原理に基づいて作動し、たとえばモノブロックレバーメカニズムと支持コイルを備える磁気システムとを利用する計量セルにも当てはまる。
【0005】
秤または計量セルの荷重導入部/力伝達部材(特に電気力学的な力平衡EMK、英語EMFR-Electromagnetic Force Restorationに基づくもの)に組み付けられる、もしくは作用する荷重(たとえば荷重ロッド/荷重導入ボルト、荷重プレート、荷重搬送システム(たとえばシャーシ、搬送ベルト、歯付きベルト、ローラ/シャフト、モータなどで構成されるコンベヤベルト/ベルトコンベヤなど)など)は、次のような要求事項(a)から(d)を同時に満たすのがよい:
【0006】
(a)小さい自重(高い予荷重に基づいて整定時間が長くなるため);
(b)高い剛性(それにより、高い機械的な固有周波数と高速の整定が生じるため);
(c)低い熱伝導(それにより、荷重導入部を介して外部から来る、内部の測定システムへの、特にモノブロックへの、熱による影響が低減されるため)
(d)電気的な放電能力(たとえば製品から来る静電荷を放電または接地するため、および、そのようにして測定に影響を与える静力場の形成を回避または低減するため)。
【0007】
現在知られている荷重導入部/力伝達部材は、通常、どちらかといえば大容積であり重量がある。通常、堅牢な構成部品の使用によって所望の剛性が実現されるからである。所望の低い熱伝導率は、たとえばプラスチックからなる断熱性の中間体によって惹起される。その際には種々のネジ止めが必要であり、紛失しやすい小部品や高い組立コストを伴う。
【0008】
従来技術の秤または計量セルのための力伝達部材では、金属とプラスチックからなる組合せが材料としてしばしば利用される。しかし、プラスチックは10,000N/mm2よりも低い弾性率を有するので、そのために力伝達部材の剛性が低下し、低い機械的な固有振周波数と遅い整定とがそこから帰結される。したがって、迅速であると同時に正確な測定が困難になる。
【0009】
剛性を高めるために、プラスチックに代えて、たとえば鋼材を使用することができる。しかしながら鋼材は、大きい自重と高い熱伝導率とに基づいて欠点がある。別案としてステンレス鋼を使用することもでき、その熱伝導率は鋼材と比べておよそ1/5にすぎない。しかしステンレス鋼は脆く、切削方法によって加工するのが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の課題は、上に掲げた要求事項(a)から(d)のすべてを満たし、簡易かつ低コストに製造することができる力伝達部材を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために本発明は、請求項1に記載の力伝達部材を提供する。好ましい実施形態は従属請求項2~13に記載されている。
【0012】
本発明が依拠する知見は、3D印刷技術としても知られるジェネレーティブ製造の原理に基づいて、特別に重量の少ない力伝達部材を製造できるということにある。その場合、薄い材料層が1つの方向で順次積層されて互いに結合され、そのようにして立体的な物体を次第に形成していき、すなわち、力伝達部材がそのコンポーネントも含めて材料の付加により段階的に構成されていく。
【0013】
力伝達部材のための特別な用途で3D印刷技術を適用することは、複数の有意な利点をもたらす:
-周知の力伝達部材は、通常、プラスチック成分と金属成分の複合材で構成され、したがって通常は必要以上に重い。さらに、比較的厚みのある材料領域は、周囲温度が変化したときに薄い材料領域よりもゆっくりと加熱され、またはゆっくりと冷却されるため、定常的な動作条件に達するまでに不必要に時間が経過する。本発明に従って製造される力伝達部材は、機能的に必要である場所にのみ材料を有しており、それによって総重量が最低限に抑制される。さらに、可能な限り小さい材料断面を有する中空ロッドからなるロッド機構としての、本発明による力伝達部材の個々のコンポーネントの構成は、温度変化に対する感度を低減させる。
【0014】
-従来、多くの異なる個々のコンポーネントから力伝達部材を組み立てる必要があった。こうした高いコストのかかる製造が、本発明に基づいて大幅に簡易化される。
【0015】
-高い製造精度に基づき、本発明による力伝達部材を3D印刷技術によって非常に省スペースに構成することができ、それにより中間スペースがいっそう広くなり、秤の他のコンポーネントをそこに格納することができる。
【0016】
秤または計量セルのための本発明による力伝達部材は、荷重によって及ぼされる荷重力を伝達するために、計量されるべき荷重を受け入れる荷重受容ユニットと、計量セルの荷重導入個所との間に配置されるために構成される。本発明による力伝達部材は、少なくとも部分的に中空ロッドからなる、特に中空の丸棒からなるロッド機構として製作され、力伝達部材は、特に中空ロッドは、少なくとも部分的に3D印刷技術で製造されることを特徴とする。
【0017】
中空ロッドからなるロッド機構の採用は、軽量でありながら安定した力伝達部材をもたらす。さらに、材料断面およびこれに伴って熱伝導率が小さく保たれる。これに加えて中空ロッドは、特に中空の丸棒は、障害となる空気流/隙間風に対して少ない表面積/空気抵抗/作用面しか提供せず、それにより、層流によって負荷を受ける医薬品生産での利用にも適している。それにより、計量セルの内部にあるエレクトロニクスや支持コイルによって生成される、上昇していく暖められた空気が測定値に少ない影響しか及ぼし得ない。したがって、中空ロッドからなるロッド機構の利用は、計量セルハウジング/秤ハウジングの内部でも外部でも利点を有する。さらに、丸棒には特別にわずかな汚れしか堆積せず、特別に良好に清掃することができる。中空ロッドからなるロッド機構の利用は、本発明による力伝達部材の省スペースで繊細な構成を可能にする。このとき、他のコンポーネントやモジュールの配置のために利用することができる空いた内部領域が残る。
【0018】
計量セルは、たとえば力センサとしてひずみゲージ(DMS)を利用する純粋に機械式のベンディングビーム構造体を備える力センサ、または電磁力平衡(EMK)の原理に基づいて作動する力センサであってよい。しかしながら、従来技術で知られる計量セルのためのこれ以外の種類の力センサも考えられる。本発明による力伝達部材は、EMKの原理に基づいて作動する計量セルで適用されるのが特別に好ましい。
【0019】
荷重受容ユニットは、荷重プレート、荷重シェル、または荷重搬送ユニットであってよい。荷重導入個所は、荷重が導入される計量セルの個所である。荷重受容ユニットと荷重導入個所が本発明による力伝達部材にリンクされるのが好ましい。力伝達部材は、荷重受容ユニットと荷重導入個所との間にモジュールとして配置されるのが好ましい。荷重受容ユニットは、たとえば測定されるべき荷重を荷重搬送ユニットから受け入れることができる。荷重搬送ユニットは、たとえばコンベヤベルトまたは星形リールスタンドであってよい。
【0020】
本発明による力伝達部材は、長手方向X、これと直交する横方向Y、およびこれら両方の方向とさらに直交する高さ方向Zに延びる。
【0021】
1つの実施形態では、本発明による力伝達部材は全面的に3D印刷技術で製造されるのが好ましい。それにより、本発明による力伝達部材を特別に軽量でありながら安定的に構成することができる。
【0022】
別の実施形態では、本発明による力伝達部材の部分の材料として、特に3D印刷技術により製造される力伝達部材の部分の材料として、少なくとも部分的にステンレス鋼を使用することができる。ステンレス鋼は、鋼材に比べて大幅に低い熱伝導率を有するという利点がある。しかも3D印刷技術が適用されれば、切削方法が適用された場合にステンレス鋼の脆い材料挙動に基づいて生じる欠点が、さほど大きな役割を果たさない。
【0023】
本発明による力伝達部材は秤または計量セルのハウジングの内部または外部に配置されていてよく、あるいは力伝達部材がハウジングを貫通することができ、すなわち壁部を通過することができる。換言すると本発明は、力伝達部材が秤または計量セルのハウジングの内部または外部に配置されている、または、力伝達部材がハウジングを貫通している、秤または計量セルも対象とする。本発明ではハウジングの内部への配置が好ましい。
【0024】
別の実施形態では、本発明による力伝達部材は計量セルのための過負荷安全装置を含み(統合された構成要素として、または自由空間に突入するように)、および/または力伝達部材が過負荷安全装置に間接的または直接的にリンクされるのが好ましい。過負荷安全装置は、過負荷が生じたとき計量セルまたは秤のコンポーネントに損傷が発生する前に力を低減するために、撓み可能であるように構成されるのが好ましい。
【0025】
別の実施形態では、本発明による力伝達部材は少なくとも3つ、好ましくは4つの端部領域を有することができる。これらの端部領域は、荷重受容ユニットおよび/または荷重導入個所および/または過負荷安全装置に直接的または間接的に組み付けられるために構成されるのが好ましい。端部領域は、過負荷安全装置に直接取り付けられるために構成されるのがきわめて好ましい。
【0026】
本発明による力伝達部材の別の実施形態では、力伝達部材が少なくとも1つのV型構造を有するのが好ましい。V型構造とは、本発明では特に、2つの中空ロッドが相互に「V」を模倣するように互いに結合された構造を意味する。2つの中空ロッドをここでは「V型構造の分枝」と呼ぶ。V型構造の2つの分枝が互いに結合される点を、ここではV型構造の「尖端側」と呼ぶ。これと向かい合う側には「V型構造の分枝の端部」がある。V型構造の利用は、作用する力をそらせて集中させることができるので、比較的高い機械的な安定性という利点を有する。
【0027】
別の実施形態では、本発明による力伝達部材は少なくとも2つのV型構造を有することができる。少なくとも2つのV型構造は、V型構造の尖端側を介して間接的または直接的に、好ましくは共通のベース部材を介して、互いに結合されるのが好ましい。このとき、少なくとも2つのV型構造が互いに直接的に結合されていてよい。このとき2つの選択肢があり、これらが尖端側の端部のところで直接互いに結合され、それによって平面図で見て「X」の構造が生じるようにするか、または、少なくとも2つのV型構造がそれぞれV型構造の分枝を介して2つの結合部を有するように、それぞれの尖端側の方向で互いに押し嵌められる。さらに、少なくとも2つのV型構造が互いに間接的に結合されていてもよい。このケースでは、これらが共通のベース部材を介して互いに結合されるのが好ましい。ベース部材の利用は、たとえば計量セルの荷重導入ボルトもしくは荷重導入ロッドなどの他の秤コンポーネントのための取付手段またはリンク個所が、そこに設けられていてよいという利点を有する。V型構造の利用は、本発明による力伝達部材を(高さ方向Zで)特別に平坦に製作することができるという利点を有する。
【0028】
本発明による力伝達部材のさらに別の実施形態では、V型構造の分枝の端部は長手方向Xと横方向Yとに沿って広がる平面に位置し、すなわち分枝の端部は、(仮想的な)長方形の、特に正方形または台形の、頂点を形成する。本発明による力伝達部材をZ方向(XY投影)の視点で見たとき、ちょうど2つのV型構造が、すなわちいわゆる二重V型構造を見ることができるのが好ましい。このような二重V型構造の利用は、たとえばH型構造(XY投影)と比べたとき、構造に負荷がかかったときに偏心力をより良く吸収できるという利点を有する。
【0029】
荷重受容ユニットおよび/または荷重導入個所および/または過負荷安全装置に直接的または間接的に組み付けられるために構成される上に挙げた端部領域は、V型構造の分枝の端部にあるのが好ましい。
【0030】
本発明による力伝達部材のさらに別の実施形態では、V型構造の尖端側も同様に長手方向Xと横方向Yに沿って広がる平面に位置するのが好ましい。あるいは同様に、V型構造の尖端側が、長手方向Xと横方向Yに沿って広がる平面から高さ方向Zの方向に突き出すこともできる。XY投影で見ることが可能なV型構造の各々が、XY投影で上下して位置するV型構造を有するのが特別に好ましい。上下して位置するこれらのV型構造は、それぞれ分枝の両方の端部を介して直接的に、および尖端側を介して、好ましくはウェブを介して間接的に、互いに結合されるのが好ましい。
【0031】
本発明による力伝達部材のさらに別の実施形態では、力伝達部材は計量セルの荷重導入個所へのリンクのための少なくとも1つのリンク個所を有し、リンク個所は両方のV型構造の間に配置されるのが好ましい。力伝達部材は少なくとも2つのリンク個所を有するのが好ましく、これらのリンク個所のうち1つは第1の組付手段を介して長手方向Xでの取付を可能にし、別のリンク個所は第2の組付手段を介して高さ方向Zでの取付を可能にする。ベース部材がリンク個所のうちの少なくとも1つを有するのが好ましい。ベース部材は、少なくとも部分的にプレートおよび/または面として製作されるのが好ましい。ベース部材は、計量セルの荷重導入ボルトが組み付けられる、穴の形態のリンク個所を有するのが好ましい。別のリンク個所は、1つまたは複数のV型構造の尖端側に設けられるのが好ましい。
【0032】
さらに別の実施形態では、本発明による力伝達部材は長手方向Xと横方向Yに沿って広がる平面で、垂直方向Zの方向の広がりよりも大きい広がりを有するのが好ましい。このことは、本発明による力伝達部材の安定性が特別に高くなり、それにより、特に荷重受容ユニットまたは過負荷安全装置が端部領域に取り付けられるとともに荷重導入個所が力伝達部材の中央に取り付けられた場合に、荷重受容ユニットと荷重導入個所との間で特別に良好な力伝達を行うことができるという利点を有する。高さ方向Zの方向の広がりは、長手方向Xと横方向Yに沿って広がる平面での広がりの好ましくは最大で半分、より好ましくは最大で5分の1、きわめて好ましくは最大で10分の1である。
【0033】
本発明は、3D印刷技術を適用して本発明による力伝達部材を製造する方法も対象とする。同様に本発明は、3D印刷技術によって製造された本発明による力伝達部材の秤での利用法も対象とし、特に、計量されるべき荷重を受け入れる荷重受容ユニットと計量ユニットの荷重導入個所との間における、力に関して単独でこれらの間にモジュール形式で介在する結合部材としての利用法も対象とする。
【0034】
本発明による方法/利用法では、本発明による力伝達部材の個々のコンポーネントは、薄い材料層が互いに繰り返し塗布されることによって形成される(3D印刷技術)。1つのコンポーネントの製造が他のコンポーネントの製造と「同時に」行われるのが好ましく、「同時に」とは、まず特定の層のすべての材料領域もしくは特定の層高さのすべての材料領域が形成されてから、その次の高さの層が塗布されることを意味する。このように、1つのコンポーネントの材料生成がなくとも1つの別のコンポーネントの材料生成によって中断されるのは、これら両方のコンポーネントが同じ層高さで材料生成を必要とする場合である。ただし理論的には、まず1つのコンポーネントを部分的または完全に形成してから、引き続いて別のコンポーネントを作成することも可能である。
【0035】
次に、以下の図面を用いながら本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1B】
図1Bは、
図1Aに対して90°だけ回転した本発明による力伝達部材を斜視図で示す。
【
図1C】
図1Cは、Z方向(XY投影)の視線で本発明による力伝達部材を示す。
【
図1D】
図1Dは、Y方向(XZ投影)の視線で本発明による力伝達部材を示す。
【
図1E】
図1Eは、X方向(YZ投影)の視線で本発明による力伝達部材を示す。
【
図1F】
図1Fは、
図1Dと向かい合う側からのY方向の視線(XZ投影)で本発明による力伝達部材を示す。
【
図1G】
図1Gは、XY投影面に沿って切断された本発明による力伝達部材をZ方向(XY投影)の視線で示す。
【
図1H】
図1Hは、XZ投影面に沿って切断された本発明による力伝達部材をY方向(XZ投影)の視線で示す。
【
図2】
図2は、過負荷安全装置がリンクされた本発明による力伝達部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ本発明による力伝達部材1を斜視図で示している。力伝達部材1は、好ましくは中空の丸棒である中空ロッドからなるロッド機構2によって実質的に構成されている。力伝達部材1は、2つの第1のV型構造4a,4a’と、2つの別のV型構造4a,4b’とを有するのが好ましく、第1のV型構造4a,4a’と別のV型構造4b,4b’はベース部材6を介して互いに結合される。原則として本発明では、第1のV型構造4a,4a’のうちの1つ、および別のV型構造4b,4b’のうちの1つが省略されることも可能であり、その結果、第1のV型構造はV型構造4aまたはV型構造4a’のみによって形成され、第2のV型構造はV型構造4bまたはV型構造4b’のみによって形成される。
図1Aに示す実施形態では、V型構造4aおよびV型構造4bは長手方向Xと横方向Yを通って広がる平面に位置しており、すなわち、第1のV型構造4aの分枝の端部7aと第2のV型構造4bの分枝の端部7bだけでなく、尖端側5aおよび5bも上記の平面に位置する。これと同様にV型構造4a’および4b’では、第1のV型構造4a’の分枝の端部7aと、第2のV型構造4b’の分枝の端部7bとは上記の平面に位置しているが、尖端側5a’および5b’はZ方向で、長手方向Xと横方向Yを通って広がる平面から突き出している。尖端側5aおよび5a’は、好ましくはZ方向に沿って中空ロッドとして延びるウェブ9を介して互いに結合される。同様に尖端側5bおよび5b’も、同じく好ましくはZ方向に沿って中空ロッドとして延びるウェブ9を介して互いに結合される。端部領域3には過負荷安全装置のリンクのためのリンク個所が設けられており、これらのリンク個所は好ましくはZ方向に沿って中空円筒として構成され、好ましくは(Z方向で見て)上側にも下側にも直径の大きい領域(鍔)を有していて、それにより、後に作用する構成部品の改善された受容、支持、および位置決めをそこで可能にする。中空円筒として構成された端部領域3は外套面の側方に、中空ロッドの中空領域を製作するのに必要ない材料を流出させる役目を果たす、少なくとも1つの液滴状の開口部をそれぞれ有している。ベース部材6は、長手方向Xと高さ方向Zを通って広がる平面に沿って延びるプレートとして構成されるのが好ましい。ベース部材6は、第1の組付手段を介して荷重導入個所を高さ方向Zに取り付けることを可能にする第1のリンク個所8aを有するのが好ましい。尖端側5a’および5b’にも、第2の組付手段を介して長手方向Xに荷重導入個所を取り付けることを可能にするリンク個所8bが同じく設けられている。
【0038】
図1Cは、本発明による力伝達部材1をZ方向からの視線で示している(XY投影)。このXY投影から、本発明による力伝達部材1がいわゆる二重V型構造を有することが分かる。ここではベース部材6は、第1のV型構造4a,4a’を別のV型構造4b,4b’と結合する。Z方向の視線に基づき、2つの第1のV型構造4a,4a’と、2つの別のV型構造4b,4b’があることはここでは見ることができない。しかしながら、尖端側5a,5a’と尖端側5b,5b’がX方向に沿って互いの方を向くことが明瞭に分かる。安定性を高めるために、第1のV型構造4a,4a’および第2のV型構造4b,4b’の分枝の端部7aおよび7bは、純粋にH型の構造に反してX方向へさらに外方に突き出している。
【0039】
図1Dは、本発明による力伝達部材1をY方向の視線で示している(XZ投影)。ここではY方向の視線で、ベース部材6を通る(穴皿を有する)穴としての第1のリンク個所8aを示すベース部材6のプレートの広い領域を見ることができる。リンク部材8aの上方に、合せピンの配置のために設けられる、ベース部材6のプレートを通る別の穴が設けられている。
【0040】
図1Eは、本発明による力伝達部材1をX方向の視線で示している(YZ投影)。ここでは、第1のV型構造4a,4a’または別のV型構造4b,4b’がウェブ9を介して互いに結合されている様子が見られる。
【0041】
図1Fは、
図1Dと同じ符号を用いて、
図1Dに向かい合う側からのY方向の視線で本発明による力伝達部材1を示している(XZ投影)。
【0042】
図1Gは、XY投影平面に沿って切断された本発明による力伝達部材1をZ方向の視線で示している(XY投影)。
図1Hは、XZ投影面に沿って切断された本発明による力伝達部材をY方向の視線で示している(XZ投影)。両方の図面において、第1のV型構造4a,4a’および第2のV型構造4b,4b’の分枝が中空ロッドとして、好ましくは中空の丸棒として構成されることが明らかとなる。同様に、
図1GではZ方向に沿って延びる中空スペースをベース部材6が有することが明らかとなる。
【0043】
図2は、過負荷安全装置10にリンクされた本発明による力伝達部材1を示している。過負荷安全装置10は、ここでは特にねじを介して、円筒状のリンク個所として構成された力伝達部材1の4つの端部領域3と結合されており、このねじは、過負荷を吸収できることを保証する、好ましくは圧縮ばねとして製作されるばね部材11によって取り囲まれている。ここでは、計量セルの荷重導入個所へのリンクのためのリンク個所8aおよび8bが中央に位置する、力伝達部材1と過負荷安全装置10とからなる複合部材を、本発明による力伝達部材1によって提供できることを明瞭に見ることができる。過負荷安全装置10は、荷重受容ユニットとリンクさせるための部材12を有する。
【符号の説明】
【0044】
1 力伝達部材
2 中空ロッドからなるロッド機構
3 端部領域
4a,4a’ 第1のV型構造
4b,4b’ 別のV型構造
5a,5a’ 第1のV型構造の尖端側
5b,5b’ 別のV型構造の尖端側
6 ベース部材
7a 第1のV型構造の分枝の端部
7b 第2のV型構造の分枝の端部
8a 第1のリンク個所
8b 第2のリンク個所
9 ウェブ
10 過負荷安全装置
11 ばね部材
12 荷重受容部材とのリンクのための部材
X 長手方向
Y 横方向
Z 高さ方向
E 縦方向Xと横方向Yを通って広がる平面
【外国語明細書】