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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078968
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20220518BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20220518BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220518BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20220518BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20220518BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L9/00
C08K3/013
C08L45/00
C08L65/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021183854
(22)【出願日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/113,538
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/475,488
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】エリク・インゲルディンゲル
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ・ポンペイ
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131AA04
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA12
3D131BA18
3D131BA20
3D131BC02
3D131BC19
3D131BC31
3D131BC33
4J002AC023
4J002AC034
4J002AC111
4J002AC112
4J002AE055
4J002BK002
4J002CE002
4J002CE004
4J002DJ016
4J002EV147
4J002EV167
4J002FD016
4J002FD022
4J002FD025
4J002FD157
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】望ましい転がり抵抗および/またはヒステリシス特性を有するゴム組成物を提供する。
【解決手段】繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分飽和エラストマー10phr~100phr、ここで前記エラストマーのすべての繰り返し単位の最大で10%が二重結合を含む、少なくとも1つのジエン系エラストマー0phr~90phr、少なくとも1つの充填剤40phr~200phr、および少なくとも1つの水素化可塑剤5phr~70phrを含む、硫黄加硫性ゴム組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分飽和エラストマー10phr~100phr、前記エラストマーのすべての繰り返し単位のうち最大で15%が二重結合を含む;
少なくとも1つのジエン系エラストマー0phr~90phr;
少なくとも1つの充填剤40phr~200phr;
少なくとも1つの水素化可塑剤5phr~70phrを含む、硫黄加硫性ゴム組成物。
【請求項2】
前記水素化可塑剤が、水素化液体可塑剤および水素化炭化水素樹脂のうちの1つまたは複数から選択される、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記水素化可塑剤が、完全または部分的に水素化されたC5樹脂、完全または部分的に水素化されたシクロペンタジエン樹脂、完全または部分的に水素化されたジシクロペンタジエン樹脂およびそれらの組み合わせからなる群から選択される水素化炭化水素樹脂である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
水素化炭化水素樹脂が、
40℃~80℃の範囲内のガラス転移温度;
少なくとも95℃の軟化点;
1~2の範囲内の多分散指数;および
150g/mol~1500g/molの範囲内の重量平均分子量(M
のうちの1つまたは複数を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記水素化可塑剤が水素化液体ジエン系ポリマーである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
すべての繰り返し単位の最大で8%が二重結合を有し;および/または
前記繰り返し単位の少なくとも4%が二重結合を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記充填剤が、シリカ40phr~190phrを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記水素化可塑剤が複数のモノマー残基を含み、前記モノマー残基の大部分が脂肪族残基であり、前記脂肪族残基は二重結合を含まなくてもよい、請求項1から7のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記部分飽和エラストマーが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンおよびスチレンから選択されるモノマーの残基により形成される繰り返し単位を含む、または前記部分飽和エラストマーが、水素化エラストマー、好ましくは水素化スチレン-ブタジエンゴムである、請求項1から8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
ポリオクテナマー3phr~20phrをさらに含み、
前記ポリオクテナマーが任意に、
-50℃~-80℃の範囲内のガラス転移温度;
GPCによって求める、80,000~100,000g/molの範囲内の重量平均分子量M
DSCによって第2の加熱で測定する、45℃~55℃の範囲内の融点;および
65%から85%の間のtrans二重結合
のうちの1つまたは複数を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記部分飽和エラストマー80phr~100phr、好ましくは80phr~95phr、および/または
ポリブタジエン0phr~20phr、好ましくは5phr~20phr、前記ポリブタジエンは任意に-90℃~-115℃の範囲内のガラス転移温度を有する、
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記部分飽和エラストマーが、
-20℃~-60℃の範囲内のガラス転移温度;および
200,000g/mol~500,000g/molの範囲内の重量平均分子量M
のうちの1つまたは複数を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記部分飽和エラストマーが、
i)前記水素化スチレン-ブタジエンゴムのビニル基の合計数を基準にして、5%未満の非水素化ビニル基;
ii)cis-1,4およびtrans-1,4ブタジエン繰り返し単位の合計数を基準にして、20%未満の、cis-1,4およびtrans-1,4ブタジエン繰り返し単位中の非水素化二重結合;
iii)80%~99%の水素化二重結合;
iv)5重量%~40重量%の範囲にある結合スチレン含有率および50重量%~95重量%の範囲にあるブタジエン含有率;ならびに
v)200,000g/mol~500,000g/molの範囲内の重量平均分子量M
のうちの1つまたは複数を有する溶液重合スチレン-ブタジエンゴムである、請求項1から12のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記ゴム組成物が、
オイル0phr~25phr;
4:1~1:2の範囲内の樹脂とオイルの比;
ジチオカルバメート促進剤およびチウラム促進剤のうちの1つまたは複数から選択される加硫促進剤0.3phr~3phr
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタイヤまたはそのゴム成分の1つのための、ゴム組成物に関する。さらに本発明はそのようなゴム組成物を含むタイヤ、またはタイヤのゴム成分を対象とする。
【背景技術】
【0002】
タイヤ性能の改善に対する絶え間ない需要の観点から、新素材の組み合わせは、タイヤメーカーによって絶えず評価および試験されている。特に、多くのタイヤトレッドゴム組成物において、ヒステリシス/引裂のトレードオフを崩すことは難しい。幾つかの手法において、良好な引張および/または引裂特性を得ること、ならびに転がり抵抗の指標を高いレベルに維持することが可能であり得るが、許容可能なウェット性能を同時に得ることは困難であることが多い。したがって、良好なウェット、引裂および転がり抵抗特性をもたらす、新規のタイヤ用ゴム組成物を提供する必要がある。好ましくは、摩耗も適正なレベルに保持されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018201065号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018251576号
【特許文献3】米国特許出願公開第20190062539号
【特許文献4】米国特許第5,698,643号
【特許文献5】米国特許第5,451,646号
【特許文献6】米国特許第6,242,534号
【特許文献7】米国特許第6,207,757号
【特許文献8】米国特許第6,133,364号
【特許文献9】米国特許第6,372,857号
【特許文献10】米国特許第5,395,891号
【特許文献11】米国特許第6,127,488号
【特許文献12】米国特許第5,672,639号
【特許文献13】米国特許第6,608,125号
【特許文献14】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)
【非特許文献3】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、望ましい転がり抵抗および/またはヒステリシス特性を有するゴム組成物を提供することを第1の目的とすることができる。
本発明は、良好な引張特性ならびに/または先進的な耐久性および耐摩耗性を有するゴム組成物を提供することを別の目的とすることができる。
【0006】
本発明は、望ましいウェット性能の指標を伴うゴム組成物を提供することを別の目的とすることができる。
本発明は、ヒステリシス特性、引張特性およびウェット性能を良好に両立するゴム組成物を提供することをさらに別の目的とすることができる。
【0007】
本発明はクレーム1によって定義される。さらに、好ましい実施形態は添付の従属クレームおよび以下の発明の概要に規定される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このように、本発明の第1の態様において、本発明は、複数の繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分飽和(または言いかえれば、不飽和)エラストマーであって、エラストマーのすべての繰り返し単位の最大で15%が二重結合を含む、エラストマー10phr~100phr(好ましくは、50phr~100phr)、少なくとも1つのジエン系エラストマー0phr~90phr(好ましくは、0phr~50phr)、少なくとも1つの充填剤40phr~200phr、および少なくとも1つの水素化可塑剤5phr~70phrを含む硫黄加硫性ゴム組成物を対象とする。
【0009】
本発明者らによって、部分飽和エラストマーと水素化可塑剤との組み合わせが、一方で良好な転がり抵抗およびヒステリシス特性を、他方で良好なウェット性能をもたらし得ることが発見された。高いレベルの摩耗および引裂強度ももたらされる。
【0010】
一実施形態において、水素化可塑剤は、水素化液体可塑剤および水素化炭化水素樹脂うちの1つまたは複数から選択される。特に、水素化液体可塑剤は、水素化オイルおよび/または水素化液体ポリマー、好ましくは水素化液体ジエン系ポリマーを含むことができる。そのような水素化液体およびジエン系ポリマーは、好ましくは50,000g/mol未満の重量平均分子量Mを有し、ここで、Mは、ASTM 5296-11または同等物に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でポリスチレン校正標準を使用して求められる。液体ジエン系ポリマーは、液体スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴムおよびスチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、またはそれらの組み合わせを含むことができる。他のポリマーまたはエラストマーのMも、ASTM 5296-11または同等物に従ってGPCでポリスチレン校正標準を使用して求められる。液体とは、本明細書において他の方法で示されなければ、材料が23℃で液体状態であることを意味するものとする。
【0011】
実施形態において、水素化炭化水素樹脂は、完全もしくは部分的に水素化されたC9樹脂、完全もしくは部分的に水素化されたC5樹脂、完全もしくは部分的に水素化されたアルファメチルスチレン樹脂、完全もしくは部分的に水素化されたテルペン樹脂、完全もしくは部分的に水素化されたロジン樹脂、またはそれらの混合物から選択される。樹脂を1つまたは複数の脂肪族または芳香族基によって修飾することも可能である。
【0012】
別の実施形態において、水素化炭化水素樹脂は、完全または部分的に水素化された(特に脂肪族)C5樹脂、完全または部分的に水素化されたシクロペンタジエン樹脂、完全または部分的に水素化されたジシクロペンタジエン樹脂およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。樹脂を1つまたは複数の脂肪族または芳香族基によって修飾することも可能である。しかし、樹脂のモノマー残基の大部分は、好ましくは完全または部分的に水素化されたシクロペンタジエン、完全または部分的に水素化されたジシクロペンタジエンおよびそれらの組み合わせである。
【0013】
別の実施形態において、水素化炭化水素樹脂は、完全もしくは部分的に水素化されたシクロペンタジエン樹脂、完全もしくは部分的に水素化されたジシクロペンタジエンまたはそれらの組み合わせである。
【0014】
別の実施形態において、樹脂のガラス転移温度は、30℃~80℃、好ましくは40℃~80℃の範囲内、またはさらにより好ましくは40℃~70℃の範囲内である。本明細書における樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)によってASTM D6604または同等物に従って毎分10℃の温度上昇率でピーク中央値として求められる。
【0015】
別の実施形態において、樹脂が有する、リングアンドボール軟化点とも称されてもよいASTM E28または同等物に従って求められる軟化点は、少なくとも95℃である。好ましくは、軟化点は最大で140℃であり、またはより好ましくは最大で120℃であり、またはさらにより好ましくは最大で110℃である。
【0016】
なお別の実施形態において、樹脂は、1~5、好ましくは1~2、またはさらにより好ましくは1.5~1.8の範囲内の多分散指数を有する。
また別の実施形態において、樹脂は、150g/mol~1500g/mol、好ましくは400g/mol~1000g/mol、またはより好ましくは500g/mol~900g/mol、またはさらにより好ましくは600g/mol~700g/mol未満の範囲内の重量平均分子量Mを有する。Mは、ASTM 5296-11または同等物に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でポリスチレン校正標準を使用して求められる。
【0017】
別の実施形態において、すべての繰り返し単位の最大で15%、好ましくは最大で10%、またはさらにより好ましくは最大で8%が二重結合を有する。代替として、または追加で、繰り返し単位の少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%が二重結合を有する。特に、エラストマーが完全に二重結合を有さないまたは完全に水素化されることはあまり望ましくない可能性がある。特に、一部の二重結合(典型的には、モノマー単位の二重結合に由来する)は、架橋目的で適当な位置に残存するものとする。本出願において二重結合を計算する際、芳香族構造または芳香族基、例えばスチレン繰り返し単位中の結合は、二重結合と計算されない。しかし、スチレン単位は、ポリマーまたはエラストマー中の繰り返し単位の総数を判定するための繰り返し単位としてなお計算される。
【0018】
別の実施形態において、ゴム組成物は、少なくとも1つの部分飽和エラストマー90phr~100phr、およびジエン系エラストマー0phr~10phrを含む。代替として、ゴム組成物は、少なくとも1つの部分飽和エラストマー95phr~100phr、およびジエン系エラストマー0phr~5phrを含む。
【0019】
また別の実施形態において、前記充填剤は、シリカ40phr~190phr、および/または主にシリカを含む。
また別の実施形態において、前記充填剤は、シリカ105phr~190phrを含む。
【0020】
なお別の実施形態において、前記充填剤は、シリカ40phr~90phrを含む。
なお別の実施形態において、前記充填剤は、シリカ70phr~120phrを含む。
なお別の実施形態において、水素化炭化水素樹脂は、二重結合を含まない。そのような高度に水素化された炭化水素樹脂は、本発明に係るゴム基質との親和性がさらにより良好である。
【0021】
実施形態において、水素化炭化水素樹脂は、複数の、好ましくは異なるモノマー残基を含み、ここで、前記モノマー残基の大部分は脂肪族残基であり、前記脂肪族残基は二重結合を含まない。実施形態において、残るモノマー残基は芳香族であるかまたは芳香族基を含むことができる。特に、そのような基は、樹脂が芳香族基で修飾される場合に存在することができる。好ましくは、脂肪族モノマーは、C5モノマー、シクロペンタジエンモノマー、ジシクロペンタジエンモノマーを含むことができる。水素化は、そのような脂肪族モノマーのモノマー残基が二重結合を含まないようにすることができる。芳香族モノマーは、例えばC9モノマーを含むことができる。
【0022】
なお別の実施形態において、部分飽和エラストマーは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレンおよびスチレンから選択されるモノマーの残基で形成(または構成)される繰り返し単位を含む。これらのモノマーは、部分飽和エラストマーを製造する、または得るのに好ましく使用される。1つまたは複数の残基は水素化されてもよい。言いかえれば、1つまたは複数の残基の二重結合は水素化されてもよい。
【0023】
また別の実施形態において、部分飽和エラストマーは、水素化スチレン-ブタジエンゴム、好ましくは、水素化溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)である。水素化SSBRおよびその製造は、それ自体は当業者に知られており、例えば米国特許出願公開第2018201065号、同2018251576号および同20190062539号に記述されている。
【0024】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、ポリオクテナマー3phr~20phr(好ましくは5phr~15phr)をさらに含む。ポリオクテナマーを加えることにより、引張特性がさらに改善し、他のジエン系エラストマー化合物との共硬化性も改善する。さらに、ポリオクテナマーが存在することにより、部分飽和エラストマー、例えば水素化SSBRと共同し、転がり抵抗の指標が改善する。
【0025】
別の好ましい実施形態において、ポリオクテナマーは、ASTM D3418の下で以下に述べるように求める、-50℃~-80℃の範囲内のガラス転移温度;ASTM 5296-11または同等物に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン校正標準を使用して求める、80,000g/mol~100,000g/molの範囲内の重量平均分子量M;およびASTM D3418または同等物に従ってDSCによって第2の加熱で測定する、45℃~55℃の範囲内の融点のうちの1つまたは複数を有する。
【0026】
また別の好ましい実施形態において、ポリオクテナマーは、ポリオクテナマーのすべての二重結合のうち65%から85%の間のtrans二重結合を有する。
また別の実施形態において、ゴム組成物は、部分飽和エラストマー80phr~100phr、ポリブタジエン0phr~20phrを含み、そして任意に水素化炭化水素樹脂5phr~45phrを含んでよい。特に、部分飽和エラストマーは、本明細書で述べられる水素化スチレン-ブタジエンゴムであってもよい。
【0027】
なお別の実施形態において、前記ポリブタジエンは、-90℃~-115℃の範囲内のガラス転移温度を有し、および/または少なくとも95%のcis形微細構造含有率を有する(高)cis-ポリブタジエンゴムである。好ましくは、ゴム組成物は、部分飽和ポリマー80phr~95phr、およびポリブタジエン5phr~20phrを含む。
【0028】
なお別の実施形態において、部分飽和エラストマーは、-20℃~-60℃の範囲、好ましくは-20℃~-45℃の範囲、またはさらにより好ましくは-25℃~-40℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0029】
なお別の実施形態において、部分飽和エラストマーは、上述のように求める、200,000g/mol~500,000g/molの範囲内の重量平均分子量Mを有する。
なお別の実施形態において、部分飽和エラストマーは、
i)水素化スチレン-ブタジエンゴムのビニル基の合計数を基準にして、5%未満の非水素化ビニル基;
ii)cis-1,4およびtrans-1,4ブタジエン繰り返し単位の合計数を基準にして、20%未満、好ましくは10%未満、または好ましくは5%未満の、cis-1,4およびtrans-1,4ブタジエン繰り返し単位中の非水素化二重結合;
iii)80%から、好ましくは85%から、または90%から99%までの水素化二重結合;
iv)5重量%~40重量%、好ましくは20重量%~35重量%の範囲にある結合スチレン含有率および50重量%~95重量%または50重量%~80重量%の範囲にあるブタジエン含有率;
v)-20℃~-60℃の範囲内のガラス転移温度;ならびに
vi)200,000g/mol~500,000g/molの範囲内の重量平均分子量M
のうちの1つまたは複数を有するスチレン-ブタジエンゴム、例えば部分飽和溶液重合スチレン-ブタジエンゴムである。
【0030】
別の好ましい実施形態において、水素化スチレン-ブタジエンゴムは、90%~98%の水素化二重結合を有する。言いかえれば、水素化されていない二重結合がなお残存している。当業者に知られているように、二重結合の数は、NMRによって求めることができる。これは、スチレン-ブタジエンゴムでない部分飽和エラストマーにも適用される。
【0031】
また別の実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムの結合スチレン含有率は10%~40%の範囲内にあり、その結合ブタジエン含有率は、NMRによって求めて60重量%~90重量%の範囲内にあるであろう。スチレン-ブタジエンゴムは、典型的には、20%~35%の範囲内である結合スチレン含有率、および65%~80%の範囲内である結合ブタジエン含有率を有するであろう。
【0032】
また別の実施形態において、ゴム組成物は、オイル0phr~30phr、もしくはオイル0phr~25phr、もしくはオイル5phr~30phr、または好ましくはオイル10phr~25phrを含む。
【0033】
なお別の実施形態において、オイルは-45℃~-85℃の範囲内のガラス転移温度を有する。オイルのガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)によってASTM E1356または同等物に従って毎分10℃の温度上昇率でピーク中央値として求められる。
【0034】
なお別の実施形態において、オイルは、パラフィンオイル、芳香族オイルおよびナフテンオイルの1つまたは複数から選択される。
また別の実施形態において、ゴム組成物は4:1から1:2の範囲内、好ましくは3:1から1:1.5の範囲内、またはさらにより好ましくは2:1から1:1.5の範囲内の樹脂とオイルの比を有する。
【0035】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、好ましくは元素の硫黄を含む加硫剤少なくとも0.2phrをさらに含む。例えば、組成物は、これらに限定されないが元素の硫黄または硫黄含有シランを含んでもよい加硫剤0.4phr~15phrを含んでもよい。
【0036】
別の実施形態において、ゴム組成物は、ジチオカルバメート促進剤および/またはチウラム促進剤から選択される少なくとも1つの加硫促進剤0.3phr~3phrを含む。そのような促進剤は、速効性促進剤であることが知られており、エラストマーおよび/または水素化樹脂中の限られた量の二重結合を利用する観点から、本明細書において特に有益であると考えられる。
【0037】
なお別の実施形態において、前記加硫促進剤は、本タイプのエラストマーおよび樹脂と組み合わせるのに好ましい選択肢であると判明したテトラベンジルチウラムジスルフィドである。
【0038】
実施形態において、ゴム組成物は少なくとも1種および/または追加の1種のジエン系ゴムを含んでもよい。代表的な合成高分子は、ブタジエンならびにその同族体および誘導体、例えば、メチルブタジエン、ジメチルブタジエンおよびペンタジエンの単独重合生成物、ならびにブタジエンまたはその同族体もしくは誘導体から形成されたものなどの、他の不飽和モノマーとのコポリマーであってもよい。後者の中には、アセチレン、例えば、ビニルアセチレン;オレフィン、例えばイソプレンと共重合してブチルゴムを形成するイソブチレン;ビニル化合物、例えば、アクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸およびスチレン(後者は、ブタジエンと重合してSBRを形成する。)、ならびにビニルエステルおよび様々な不飽和アルデヒド、ケトンおよびエーテル、例えばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトンおよびビニルエチルエーテルであってもよい。合成ゴムの特定の例としては、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(cis1,4-ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(cis1,4-ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴムまたはブロモブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートなどのモノマーとの、1,3-ブタジエンまたはイソプレンのコポリマー、ならびに、またエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても知られるエチレン/プロピレンターポリマー、および特に、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーが含まれる。使用されてもよいゴムの追加の例としては、アルコキシシリル末端官能化溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBRおよびSIBR)、シリコンカップリング化、およびスズカップリング化星形分枝高分子が含まれる。好ましいゴムまたはエラストマーは、一般に、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびSSBRを含むSBRであってもよい。
【0039】
別の実施形態において、組成物は、少なくとも2つのジエン系ゴムを含む。例えば、cis1,4-ポリイソプレンゴム(天然または合成、しかし天然が好ましい)、3,4-ポリイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、乳化および溶液重合由来のスチレン/ブタジエンゴム、cis1,4-ポリブタジエンゴム、ならびに乳化重合で調製したブタジエン/アクリロニトリルコポリマーなどの2種以上のゴムの組み合わせが好ましい。幾つかの実施形態において、部分飽和エラストマーは、ジエン系ポリマーであってもよい。
【0040】
別の実施形態において、20~35パーセントの結合スチレンのスチレン含有率を有する乳化重合由来のスチレン/ブタジエン(ESBR)、または幾つかの用途に対して、中程度から比較的高い結合スチレン含有率、すなわち、30~45パーセントの結合スチレン含有率を有するESBRが使用されてもよい。乳化重合で調製されたESBRとは、スチレンおよび1,3-ブタジエンが水性乳剤として共重合されることを意味することができる。そのようなことは、当業者に周知されている。結合スチレン含有率は、例えば5~50パーセントと多様であってもよい。一態様において、ESBRは、また、例えば、ターポリマー中に結合アクリロニトリルを2~30重量パーセントの量、ESBRとしてターポリマーゴムを形成するアクリロニトリルを含有してもよい。コポリマー中に結合アクリロニトリルを2~40重量パーセント含有する、乳化重合で調製したスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムは、またジエン系ゴムとして企図されてもよい。
【0041】
別の実施形態において、溶液重合で調製したSBR(SSBR)が使用されてもよい。そのようなSSBRは、例えば5~50パーセント、好ましくは9~36パーセントの範囲の結合スチレン含有率を有してもよい。SSBRは、好都合には例えば不活性有機溶媒中でアニオン重合によって調製することができる。とりわけ、SSBRは、開始剤として有機リチウム化合物を使用して炭化水素溶媒中で、スチレンおよび1,3-ブタジエンモノマーの共重合によって合成することができる。
【0042】
一実施形態において、合成または天然イソプレンゴムが使用されてもよい。合成cis1,4-ポリイソプレンおよびcis1,4-ポリイソプレン天然ゴムは、それ自体はゴム技術の当業者に周知されている。特に、cis1,4-含有率は、少なくとも90%であり、任意に少なくとも95%であってもよい。
【0043】
一実施形態において、cis1,4-ポリブタジエンゴム(BRまたはPBD)が使用される。適切なブタジエンゴムは、例えば1,3-ブタジエンの有機溶液重合によって調製することができる。BRは、好都合には、例えば少なくとも90パーセントのcis1,4-含有率(「高cis」含有率)、および-95℃~-110℃の範囲のガラス転移温度Tgを有することを特徴とすることができる。The Goodyear Tire & Rubber CompanyからBudene(登録商標)1207、Budene(登録商標)1208、Budene(登録商標)1223またはBudene(登録商標)1280などの適切なポリブタジエンゴムが市販されている。これらの高cis-1,4-ポリブタジエンゴムは、例えば、米国特許第5,698,643号および米国特許第5,451,646号に記載のように(1)有機ニッケル化合物、(2)有機アルミニウム化合物、および(3)フッ素含有化合物の混合物を含むニッケル触媒系を使用して合成することができる。
【0044】
エラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度、すなわちTgは、本明細書において言及される場合、その未硬化状態、または恐らくエラストマー組成物の事例の硬化状態でそれぞれのエラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度を表わす。Tgは示差走査熱量計(DSC)によってASTM D3418に従って毎分10℃の温度上昇率でピーク中央値として求められる。
【0045】
本明細書において、および慣行的実務に従って使用される用語「phr」は、「ゴムまたはエラストマー100重量部当たりの各材料の重量部」を指す。一般に、この慣例を使用して、ゴム組成物は100重量部のゴム/エラストマーで構成される。クレームの組成は、クレームのゴム/エラストマーのphr値がクレームのphr範囲と一致し、かつ組成のすべてのゴム/エラストマーの量が合計100部のゴムに帰着する限り、クレームに明示的に挙げられる以外のゴム/エラストマーを含んでもよい。例として、組成物はさらに、SBR、SSBR、ESBR、PBD/BR、NR、および/または合成ポリイソプレンなどの、1種または複数の追加のジエン系ゴムを、1phr~10phr含み、任意に1phr~5phr含んでもよい。別の例において、組成は、追加のジエン系ゴムを5phr未満、好ましくは3phr未満含んでもよく、または、またそのような追加のジエン系ゴムを本質的に含まなくてもよい。用語「コンパウンド」および「組成物」は、本明細書において他の方法で示されなければ、交換して使用することができる。
【0046】
実施形態において、ゴム組成物はまたオイル、特にプロセスオイルを含んでもよい。エラストマーを増量するために典型的に使用される増量油として、プロセスオイルがゴム組成物に含まれていてもよい。プロセスオイルはまた、ゴム配合時のオイルの直接添加によってゴム組成物に含まれてもよい。使用されるプロセスオイルは、エラストマー中に存在する増量油、および配合時に添加されるプロセス油の両方に含まれていてもよい。適切なプロセス油は、芳香族、パラフィン、ナフテン、植物油、ならびにMES、TDAE、SRAEおよび重質ナフテン油などの低PCA油を含む、当業界で公知である様々なオイルを含んでいてもよい。適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有率を有するものを含んでいてもよい。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版に見出すことができる。
【0047】
実施形態において、ゴム組成物はシリカを含んでもよい。ゴムコンパウンドに使用されてもよい一般に使用される珪質顔料は、例えば、従来の火成および沈降珪質顔料(シリカ)を含む。一実施形態において、沈降シリカが使用される。従来の珪質顔料は、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られるものなどの沈降シリカであってもよい。そのような従来のシリカは、例えば窒素ガスを使用して測定するBET表面積を有することを特徴とすることができる。一実施形態において、BET表面積は、1グラム当たり40~600平方メートルの範囲にあってもよい。別の実施形態において、BET表面積は、1グラム当たり80~300平方メートルの範囲であってもよい。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。また従来のシリカは、100~400、代替として150~300の範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することを特徴としてもよい。従来のシリカは、例えば電子顕微鏡によって求めて0.01~0.05ミクロンの範囲の平均究極粒径を有すると予想することができるが、シリカ粒子は、寸法がさらに小さくてよく、またはことによるとより大きくてもよい。様々な市販のシリカ、例えば本明細書において例示のみでありこれらに限定されないが、PPG Industriesから名称210、315G、EZ160Gなどを有するHi-Sil商標の下で市販されているシリカ;Solvayからの、例えばZ1165MPおよびPremium200MPなどの名称を有する入手可能なシリカ、ならびにEvonik AGから入手可能な、例えば名称VN2およびUltrasil 6000GR、9100GRなどを有するシリカなどが使用されてもよい。
【0048】
実施形態において、ゴム組成物はまたカーボンブラックを充填剤材料として含んでもよい。本出願における好ましい量は、1phr~60phr、好ましくは1phr~10phr、または1phr~5phrの範囲にある。そのようなカーボンブラックの代表的な例としは、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991等級が含まれる。これらのカーボンブラックは、9g/kg~145g/kgの範囲のヨウ素吸収、および34cm/100g~150cm/100gの範囲のDBP数を有する。
【0049】
別の実施形態において、他の充填剤は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む微粒子充填剤、米国特許第6,242,534号;米国特許第6,207,757号;米国特許第6,133,364号;米国特許第6,372,857号;米国特許第5,395,891号または米国特許第6,127,488号に開示されているものを含むがこれらに限定されない架橋した微粒子ポリマーゲル、および米国特許第5,672,639号に開示されているものを含むがこれらに限定されない可塑化デンプン複合充填剤を含むがこれらに限定されないゴム組成物に使用されてもよい。他のそのような充填剤は、1phr~10phrの範囲の量が使用されてもよい。
【0050】
一実施形態において、ゴム組成物は、従来の硫黄含有有機ケイ素化合物またはシランを含んでいてもよい。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式:
【0051】
【化1】
【0052】
である[式中、Zは、
【0053】
【化2】
【0054】
からなる群から選択され、式中、Rは、1~4個の炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;Rは、1~8個の炭素原子のアルコキシ、または5~8個の炭素原子のシクロアルコキシであり;Alkは、1~18個の炭素原子の二価炭化水素であり、nは整数2~8である。]。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、および/または3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって、式Iについて、Zは、
【0055】
【化3】
【0056】
であり得る[式中、Rは、2~4個の炭素原子、代替として2個の炭素原子のアルコキシであり;Alkは、2~4個の炭素原子、代替として3個の炭素原子の二価炭化水素であり;nは、整数2~5、代替として2または4である。]。別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許第6,608,125号に開示されている化合物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)-S-CHCHCHSi(OCHCHを含み、Momentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されている。別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものを含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussaからのSi-363である。ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤のレベルに依存して様々であってもよい。概して言えば、化合物の量は0.5phr~20phrの範囲であってよい。一実施形態において、量は1phr~10phrの範囲であろう。
【0057】
ゴム組成物が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤、ならびにオイルなどの加工添加剤、粘着性樹脂および可塑剤を含む樹脂、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な構成要素の硫黄加硫性ゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合することができることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫性材料および硫黄加硫材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。一実施形態において、硫黄加硫剤は元素の硫黄である。硫黄加硫剤は、例えば、0.5phr~8phrの範囲、代替として1.5phr~6phrの範囲内の量で使用されてもよい。典型的な量の粘着性付与樹脂は、使用される場合、例えば0.5phr~10phr、通常1phr~5phrを含む。典型的な量の加工助剤は、使用される場合、例えば1phr~50phr(これは特にオイルを含んでもよい)を含む。典型的な量の抗酸化剤は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁に開示されているものなどであってもよい。オゾン劣化防止剤の典型的な量は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる脂肪酸の典型的な量は、例えば0.5phr~3phrを含んでもよい。ワックスの典型的な量は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。多くの場合、微晶質ワックスが使用される。釈解剤の典型的な量は、使用される場合、例えば0.1phr~1phrを含んでいてもよい。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0058】
促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために使用することが好ましいが、必要ではないこともある。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤(複数可)は、0.5phr~4phr、代替として0.8phr~1.5phrの範囲の合計量において使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の特性を改善するために0.05phr~3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な特性に相乗効果を生み出すと予想することができ、どちらかの促進剤の単独使用によって製造されたものより多少良好である。さらに、正常な加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤も使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、例えばアミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。一実施形態において、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、例えばグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物であり得る。適切なグアニジンとしては、ジフェニルグアニジンなどが含まれる。適切なチウラムとしては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドおよびテトラベンジルチウラムジスルフィドが含まれる。
【0059】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、典型的に、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的(ノンプロダクティブ)な段階、続いて生産的(プロダクティブ)混合段階において混合されてもよい。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、典型的に、従来は「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合されてよく、ここで、典型的には、先行する非生産的混合段階(複数可)の混合温度(複数可)より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。「非生産的」および「生産的」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者には周知されている。実施形態において、ゴム組成物は、熱機械的混合ステップにかけられてもよい。熱機械的混合ステップは、一般に、例えば140℃~190℃の範囲内であるゴム温度を生ずるのに適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱機械的作業の好適な継続時間は、運転条件ならびに成分の量および性質の関数として変動する。例えば、熱機械的作業は1~20分であってもよい。
【0060】
ゴム組成物は、タイヤの様々なゴム成分(言いかえればタイヤ成分)に組み入れることができる。例えば、ゴム成分は、トレッド(トレッドキャップおよびトレッドベースを含む)、サイドウォール、アペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコートまたはインナーライナーであってもよい。しかし、トレッドゴム用途が本発明の好ましい用途である。
【0061】
本発明の第2の態様において、タイヤ、特に本発明の第1の態様および/またはその実施形態の1つに係るゴム組成物を含むタイヤが提供される。タイヤは、未硬化タイヤまたは硬化タイヤ、すなわち加硫タイヤであってもよい。
【0062】
好ましい実施形態において、タイヤは、ゴム組成物を含むトレッドキャップを含む。一実施形態において、タイヤは、運転時に道路と接触するよう意図され、ゴム組成物を含む、径方向外側のトレッドキャップ層を有する。
【0063】
別の実施形態において、タイヤは、径方向外側のトレッドキャップ層、および径方向内側のトレッドキャップ層を有し、ここで径方向内側のトレッドキャップ層はゴム組成物を含む。
【0064】
本発明のタイヤは、例えば空気式タイヤまたは非空気式タイヤ、レースタイヤ、乗用車タイヤ、航空機タイヤ、農耕用タイヤ、地ならし機タイヤ、オフロード(OTR)タイヤ、トラックタイヤまたはオートバイタイヤであってもよい。タイヤはまたラジアルまたはバイアスタイヤであってもよい。
【0065】
本発明の空気式タイヤの加硫は、例えば100℃~200℃の範囲内の従来の温度で実行されてもよい。一実施形態において、加硫は110℃~180℃の範囲内の温度で行われる。プレスまたは型中での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫方法のうちのいずれを使用してもよい。そのようなタイヤは、当業者にとって公知で、容易に明白であろう様々な方法によって組み立て、成形、成型および硬化することができる。
【0066】
本明細書において挙げた態様および実施形態の多数の特徴は互いに組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下の表1は、水素化溶液重合スチレン-ブタジエンゴム形態の部分飽和エラストマーを含む異なるゴム組成物を示す。例1~3は比較例であるのに対し、本発明実施例1および2は、本発明の限定されない実施形態に従う。例1は本質的に樹脂を含まないのに対し、残る例は、樹脂15phrを含む。例1は樹脂を含まないため、他の例は、コンパウンドのガラス転移温度を本質的に例1のガラス転移温度に調整してゴムコンパウンド特性の比較可能性を改善させるために異なるオイルを含む。ワックス、ステアリン酸、シリカ、カーボンブラック、シラン、促進剤、加工助剤、硬化剤および劣化防止剤の種類および量は、異なる例で同一であるかまたは類似する。
【0068】
例2および3は、水素化されない脂肪族C5樹脂を含む。対照的に、本発明実施例1および2は、水素化可塑剤として水素化ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂を含む。例1および2ならびに本発明実施例1は、ポリオクテナマー5phrをさらに含む。
【0069】
【表1】
【0070】
例1~3ならびに本発明実施例1および2について物理特性の測定を行った。対応する結果を以下の表2にまとめる。本発明実施例1および2の水素化炭化水素樹脂を使用すると目立って転がり抵抗の指標、30℃におけるタンジェントデルタが著しく改善される。特に、例3と本発明実施例2との比較は5%ほどの改善を示す。同様に、ポリオクテナマーを含む形態、すなわち例2および本発明実施例1の比較は、さらに大きな改善(10%ほど)を示す。例1のタンジェントデルタ値は、本発明実施例2のタンジェントデルタ値よりもさらに低いが、例1(樹脂を含まない)は、0℃における反発弾性測定によって与えられるウェットトラクションの指標に関して著しく悪化し、本発明実施例2に従う値より約50%の悪化であることが認められる。例3および本発明実施例2に関する摩耗値は、類似のレベルである。例2および本発明実施例1に従う、ポリオクテナマーを用いる2つの形態についても同様であり、ここでそれらの摩耗は、例3および本発明実施例2の摩耗よりも著しく低い。引裂強度は、表2のすべての試料について好ましいレベルであり、これは、本発明者らの非拘束的な理論によると、ここでは水素化SSBRとして含まれる部分飽和エラストマーに起因するものである。さらに、本発明実施例1および2は、例2および3の組成物に比べて、より高い剛性をもたらすことが認められる。例1の剛性はさらに高いが、その0℃における反発は、他のすべての実施例の反発よりも好ましくないレベルであり、既に上述したようにウェット性能に劣ることを示す。したがって、例2および3における特性の両立またはバランスは、例1よりも良好である。さらに、本発明実施例1および2における特性のバランスは、例1~3についてよりも良好である。
【0071】
【表2】
【外国語明細書】