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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078977
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】磁石コイルシステム
(51)【国際特許分類】
   G01G 7/02 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
G01G7/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021184513
(22)【出願日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】10 2020 130 092.1
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506186673
【氏名又は名称】ヴィポテック ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】ADAM-HOFFMANN STRASSE 26, 67657 KAISERSLAUTERN,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ゴットフリードセン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス シュテルヴァーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-デービッド クリンゲルヘーファ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電磁式の力生成のさまざまな用途のために、低コストで、外部影響に対して良好に防護され、汎用的で平坦な、幅の細い電気コイルの提供。
【解決手段】磁石コイルシステムKにおいて、a)第1の平面方向X、これに対して直交する第2の平面方向Y、平面方向X,Yに対して直交して延びる横方向Zに延びる基体Aを有するコイルシステムを含み、b)基体Aは、横方向Zに対して直交するコイル平面E1,E2にそれぞれ位置する少なくとも2つのコイルS1,S2・・・を含み、c)コイルS1,S2・・・のうち少なくとも2つはコイル中心Dの周りを螺旋状に延びる1つまたは複数の巻回をそれぞれ含み、d)磁石コイルシステムKは、コイルS1,S2が電流によって貫流されたときに、コイルS1,S2のうちの少なくとも1つと自身の磁場との磁気的な相互作用によって力を基体Aに対して及ぼすために構成された少なくとも1つの永久磁石Pを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石コイルシステム(K)、特に電磁力を生成するための力平衡計量システムのための支持コイルシステムにおいて、
a)第1の平面方向(X)、これに対して直交する第2の平面方向(Y)、および前記両方の平面方向(X,Y)に対して直交して延びる横方向(Z)に延びる基体(A)を有するコイルシステムを含み、
b)前記基体(A)は、好ましくは独自の付属の支持層(T1,T2・・・)の上の導体トラックとしてそれぞれ塗布された、前記横方向(Z)に対して直交するコイル平面(E1,E2)にそれぞれ位置する少なくとも2つのコイル(S1,S2・・・)を含み、
c)前記コイル(S1,S2・・・)のうち少なくとも2つはコイル中心(D)の周りを螺旋状に延びる1つまたは複数の巻回をそれぞれ含み、
d)前記磁石コイルシステム(K)は、前記コイル(S1,S2)が電流によって貫流されたときに、前記コイル(S1,S2)のうちの少なくとも1つと自身の磁場との磁気的な相互作用によって力を前記基体(A)に対して及ぼすために構成されて位置決めされた少なくとも1つの永久磁石(P)を有する、磁石コイルシステム(K)。
【請求項2】
前記基体(A)の前記コイル(S1,S2・・・)のうち少なくとも2つは前記横方向(Z)で電気的な絶縁部によって、好ましくは絶縁性の支持層(T1,T2・・・)によって、互いに分離されることを特徴とする、請求項1に記載の磁石コイルシステム(K)。
【請求項3】
前記コイル(S1,S2・・・)のうち少なくとも2つは、
a)同一構造であり、または、
b)巻回の数、および/またはそれぞれのコイル平面(E1,E2・・・)における最大および/または最小の広がり、および/またはそれぞれの巻回の配列方向、および/またはそれぞれの接続接点の位置に関して相違することを特徴とする、請求項2に記載の磁石コイルシステム(K)。
【請求項4】
a)複数または全部の前記コイル(S1,S2・・・)について独自の接続接点(C1,C2・・・)が前記基体(A)の少なくとも1つの外面に通じており、相応の接続接点の選択的な外部配線によって少なくとも1つのコイル群(S12,S34・・・)を形成し、好ましくは該コイル群は直列および/または並列につながれた2つまたはそれ以上の前記コイル(S1,S2);(S3,S4)・・・からなり、または、
b)少なくとも2つの前記コイル(S1,S2)が前記基体(A)の内部でコイル群(S12,S34・・・)をなすようにつなぎ合わされ、前記コイル群(S12,S34・・・)の接続接点だけが前記基体(A)の外面へと通じることを特徴とする、先行請求項1から3のうちいずれか1項に記載の磁石コイルシステム(K)。
【請求項5】
少なくとも2つの、好ましくはすべての前記コイル(S1,S2・・・)を、コイルごとに生成される力が加算されるように電流で貫流することができることを特徴とする、先行請求項1から4のうちいずれか1項に記載の磁石コイルシステム(K)。
【請求項6】
前記基体(A)は水分や気体の侵入に対してほぼ気密に、好ましくは外側表面全体の少なくとも80%で、好ましくは銅からなる被覆(U)によって包囲されることを特徴とする、先行請求項1から5のうちいずれか1項に記載の磁石コイルシステム(K)。
【請求項7】
a)内部で発生する熱を外部へと排出するために少なくとも1つの熱排出面が、特に好ましくは金属の支持層(T1,T2・・・)として設けられ、または、前記基体の内部から前記基体の少なくとも1つの外面へと通じる導体トラック層として少なくとも部分的に設けられ、および/または
b)前記コイル(S1,S2)の導体トラックの断面が長方形または三角形または台形に製作され、および/または
c)横方向(Z)における前記基体(A)の全体厚みは12mmよりも小さく、好ましくは4mmよりも短いことを特徴とする、先行請求項1から6のうちいずれか1項に記載の磁石コイルシステム(K)。
【請求項8】
a)少なくとも1つの前記永久磁石(P)と前記基体(A)との間の領域に、および/または
b)少なくとも1つの前記永久磁石(P)と前記基体(A)の前記コイルとの間の領域に、
磁場を案内する極板(A)が配置されないことを特徴とする、先行請求項1から7のうちいずれか1項に記載の磁石コイルシステム(K)。
【請求項9】
前記基体(A)は切欠き(L)によって横方向(Z)に貫通され、それにより光学式の位置検出器の光線またはレーザビームを前記切欠き(L)を通るように向けることができることを特徴とする、先行請求項1から8のうちいずれか1項に記載の磁石コイルシステム(K)。
【請求項10】
先行請求項1から9のうちいずれか1項に記載の磁石コイルシステム(K)を含む、電磁力平衡の原理に基づいて作動する秤。
【請求項11】
秤に対して加えられる荷重によって横方向(Z)に対して垂直に前記基体(A)へ力を印加可能であり、少なくとも1つの前記永久磁石(P)はその磁場によって前記基体(A)の電流が流れるコイル(S1,S2・・・)と相互作用し、それによって横方向(Z)に対して垂直に力平衡を前記基体(A)に対して生成するために意図される、先行請求項10に記載の秤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電磁力平衡の原理に基づいて作動する秤で使用するための磁石コイルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような秤では、(コイル枠に)円筒状に巻き付けられたコイルを、(通常は定置の)永久磁石の磁場の中で可動に配置して、平衡電流を印加し、それにより、通常は垂直方向を向くコイル軸に対して平行に、コイルとリンクされたレバーを電流依存的な力で付勢することが知られている。永久磁石の磁場を的確に案内するために、コイル直径部もしくはコイル枠の内部にしばしば極板が配置される。しかしコイルの円筒状の設計方式が、その外径およびこれに付属する永久磁石とともに、計量セルの最小幅を規定する。したがって、このような方式の複数の計量セルが横に並んで配置されるマルチコイル型の計量システムは、比較的幅が広いという欠点がある。
【0003】
さらに、幅の細い計量セルを設計するために、平坦に巻き付けられた上記の設計方式のコイルを使用することが知られているが、そのコイル軸は水平方向に延びている。コイルに隣接して位置決めされる永久磁石が、通電されるコイルと電磁的に相互作用して、コイルとリンクされたレバーを上方または下方に向かって偏向させる。
【0004】
このようなコイルも、その物理的特性もしくはパラメータに関して変更不能に規定されており、これを用いて生成可能な電磁力は、コイルを流れる電流を通じて可変であるにすぎない。したがって、異なる計量セル形態や計量範囲についてそれぞれ異なるコイルを設けることになり、このことは、部品数および計量セル構造の数も不都合に増加させる。
【0005】
これに加えて、巻き付けられたコイルは多くの場合にいくつか少数の幾何学形状(円形または方形に巻き付けられる)に制限され、絶縁された(たとえば複数回エナメル塗装された)線材を使用して、絶縁(エナメル塗装)を損傷することなく高いコストをかけて支持体に巻き付けなればならない。
【発明の概要】
【0006】
したがって本発明の課題は、好ましくは電磁式の力生成のさまざまに異なる用途のために、特に力平衡のために構成可能であり、低コストに製造可能であり、好ましくはたとえば水分などの外部からの影響に対して良好に防護される、汎用的に利用可能で平坦な、もしくは幅の細い電気コイルを提供することにあった。
【0007】
本発明が依拠する知見は、少なくとも2つのコイルを有する基体を含むコイルシステムを用いて、さまざまに異なる用途のために容易に構成可能なコイルを創出できるというものである。コイルは導体トラックとして構成され、それぞれ付属のコイル平面に延び、その際にコイル中心の周りに螺旋状に配置される。基体と各々のコイル平面は、実質的に、第1の平面方向Xおよびこれと直交する第2の平面方向Yに延び、個々のコイル平面は互いに平行に延びる。前述した種類の秤では、基体は力低減部のレバー面に配置されて、このレバーの旋回平面がコイル平面に対して平行に延びるようになっているのが好ましい。平面方向XおよびYに対して垂直に、およびそれに伴って基体の幅の方向に、横方向Zが延びている。
【0008】
本件出願の意味における「螺旋状に」とは、導体トラックがコイル中心の周りを完全に周回するたびにその内部で一定の度合いだけ当該コイル中心に近づき、またはこれから離れることを意味し、この度合いは少なくともコイル導体トラックそのものの(好ましくは一定の)幅よりも大きい。このときコイルは-コイル平面を見る視線で-、実質的に丸い形状を有することができる。あるいはこれ以外の幾何学的な二次元の形状、たとえば実質的に楕円形または長方形も考えられ、かつ好ましく、それによりこのコイルの1つの巻回の内部で、第1の平面方向における導体トラックの長さが、これに対して作成した垂直の第2の平面方向の長さよりも大きくなる。そうすれば基体をそのコイルとともに、たとえば長く平坦に構成することができる。
【0009】
本発明によると少なくとも2つのコイルは、巻き付けられて絶縁された(エナメル塗装された)線材から形成されるのではなく、それぞれ平坦な支持層に塗布される平坦な導体トラックとして形成される。したがって支持層は、本発明に基づいて導体トラックが螺旋状のコイルとして塗布されるプリント基板またはプリント配線板として理解することもできる。ここで「導体トラック」、「プリント基板」、または「プリント基板型式」という用語はアディティブ製造の技術も対象とするが、それは、このような技術(簡略化して3D印刷とも呼ばれる)によって導体トラックを支持体に塗布する(「印刷する」)ことができる限りにおいてである。支持層が、あるいはさらに基体全体が、そのような方式で製作されるのが好ましく、支持層、絶縁部、およびコイルの印刷のために、必要に応じてそれぞれ異なる材料を利用することができる。さらにアディティブ製造は、複数のコイルを備える特別に幅の細い基体を構成するために、互いに密な間隔をおく平面に、複数の支持層ないしコイルを互いに近接して製作することも可能にする。
【0010】
本発明によるコイルシステムの少なくとも2つの、好ましくはすべてのコイルは実質的に二次元であり、すなわち、それぞれのコイル平面に沿って構成される。コイルを形成する導体トラックの厚みだけがコイル平面に対して垂直な広がりを規定し、コイルのすべての巻回が(コイル平面を見る視線で)前後に並んで位置するのでなく、互いの内側または横に並んで位置するのが好ましい。
【0011】
本発明に基づいて基体に設けられる少なくとも2つのコイルは、コイルが単独で利用されることによって、または、たとえば並列もしく直列に互いに結合/配線されて利用されることによって、さまざまに異なるコイル形態の構成を可能にする。たとえば選択されたコイルの配線のみによって、さまざまに異なる用途や計量セル型式のために基体を構成することができる。
【0012】
支持層およびその上に配置されるコイルを横方向で非常に平坦に、もしくは細い幅で構成できるのが好都合であり、それにより、多数のコイルが(横方向で見て)それぞれわずかな間隔をおいて互いに横に並ぶように基体に形成されていてよい。したがって、横方向で測定される基体全体の幅を非常に小さく抑えることができるという利点があり、それにより、本発明による基体を利用する計量セルの小さい全幅も可能となる。
【0013】
基体は、水分や気体の侵入に対して被覆により可能な限り気密に、少なくともほぼ包囲されるのが好ましく、それにより、少なくとも2つのコイルが環境要因に対して、たとえば作動時の爆発性のガスの侵入に対して、良好に防護される。基体のコンパクトな、好ましくは実質的に直方体の設計形態に基づき、従来技術から知られる巻き付けられたコイルよりも容易にその被覆を製造可能である。アディティブ製造という手段により、特別に簡易に被覆を基体に設けることができる。ただし、これ以外の方式で被覆を具体化することもできる。
【0014】
被覆は銅からなるのが好ましい。永久磁石の静磁場が、電流を通すコイルの銅巻回と同じように銅被覆を貫通し、それにより、これら両方のコンポーネントを力の生成のために容易に相互作用させることができるからである。
【0015】
本発明によると、磁石コイルシステムは少なくとも1つの永久磁石を含む。永久磁石と基体は相互に可動に配置される。基体は、たとえば計量セルのレバーと結合されて、空間の中で可動に配置されるのが好ましい。それに対して永久磁石は定置に位置決めされるのが好ましい。その一方で、永久磁石がたとえば秤の可動のコンポーネントとリンクされ、それに対して基体は定置に位置決めされる逆のケースも考えられる。
【0016】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも2つのコイルが横方向Zで互いに横に並んで位置し、その際に電気絶縁部によってそれぞれ互いに分離される。電気絶縁部は支持層によって直接形成されるのが好ましい。支持層が両側にコイルを装備していてもよく、それにより、2つのコイルがそれぞれ独自の支持層を利用するのではなく、これらの間に位置する共通の絶縁性の支持層を利用する。しかしながら、支持層がそれ自体では導電性および/または熱伝導性であってもよく、その場合には、コイルと支持層との間に別の絶縁層を設けることになる。
【0017】
本発明の別の有利な実施形態では、基体は、基体の内部から外部に熱を運び出すために、冷却体として作用する少なくとも1つの熱排出面を含む。これは、支持層もしくはコイルに追加して設けられる、基体の内部の部材または層であり得る。このような部材または層が基体の外面まで達するのが好ましく、そこで熱を周囲へ放出する。さらに、コイルを担持する支持層を同時に冷却体として利用することも考えられる。コイルで占有されていない支持層や、コイル巻線で占有されていないコイル平面の面(「部分的に導体トラック層」)も、冷却体としての役目を果たすことができる。
【0018】
さらに、コイルのそれぞれの巻回の間でこれに沿って延びる螺旋状の熱排出面(冷却スパイラル)も考えられる。その場合、コイルの導体トラックすなわちその巻回が冷却スパイラルの巻回によって両側で囲まれるので、コイル導体トラックの熱を冷却スパイラルへと両側で良好に運び出すことができる。冷却スパイラルそのものは、たとえば熱伝導性のスルーホールめっきによって、付属する支持層の向かい合う側にある熱排出面と結合されていてよく、この(好ましくは前面に構成される)熱排出面により基体の外側表面へと運ばれて、そこで熱を周囲に放出することができる。
【0019】
プリント配線板の導体トラックは、プリント配線板の上に当初は全面的に設けられる薄い銅層から作成することができ、そのうち導体トラックに属さない領域がエッチング除去される。したがって銅の良好な熱伝導特性に基づき、たとえば全面に銅コーティングを有するエッチングされていないプリント配線板を、冷却体もしくは支持層として基体に設けることができるであろう。両面で銅コーティングされた未加工プリント配線板の上に、片面だけ本発明によるコイルを構成し、すなわちエッチング除去で作成し、それに対して、これと向かい合う面は一貫して銅層として維持されることも考えられる。このケースでは、支持層は冷却体およびコイル支持体として二重機能を担う。
【0020】
基体の個々のコイルは同一構造であってよく、すなわち、その幾何学的な寸法、巻回の数と巻回方向に関して一致することができる。たとえば、コイルが上に塗布された支持層を標準部材として利用することができ、基体は、横方向で前後に位置するこのような同一の複数の支持層を含むことができる。このことは製造と保管のコストを削減し、コイル群を構成するために同種類のコイルの組合わせを可能にする(下記参照)。隣接するコイルの巻回方向は、同じでも反対向きでもよい。
【0021】
あるいは基体のいくつかのコイルまたはすべてのコイルが、たとえばその巻回の数や、それぞれのコイル平面における最大もしくは最小の広がりに関して、互いに相違することもできる。たとえば基体は、第1の数の巻回を有する複数のコイルを含み、追加的に、第2の数の巻回を有する別のコイルを含むことができるであろう。その代替または追加として、いくつかのコイルの巻回がたとえば近似的に円形あるいはその他のジオメトリー(楕円形または長方形またはその他の多角形の形状)に延びて、その際に、同一または相違する外側または内側の寸法を有することができる。2つまたはそれ以上のコイルを1つの平面に配置することも考えられ、それは、たとえばもっとも内側のコイルが、それぞれ径方向でさらに外側に位置する1つまたは複数のコイルで囲まれることによる。さらに、2つのコイルをその他の構成要件に関して、たとえば導体トラックの断面の寸法、導体トラックの材料構造、電気的特性、巻回方向、接続接点の位置などに関して、区別することもできる。
【0022】
これらの各々のコイルについて、独自の接続接点が基体の外面へと通じているのが好ましい。それにより、個々のコイルを的確に選択して電気接触させることが可能であり、それに対して他のコイルは未使用のままにしておくことができる。さらに、選択的にいくつかのコイルまたはすべてのコイルを自由に選択可能に配線して、1つまたは複数の組み合わされたコイル(以下において「コイル群」とも呼ぶ)にすることが可能である。的確に選択された物理的特性(インダクタンス、寸法、ライン抵抗など)を有するコイル群を創出するために、これらのコイルを相互に任意に並列または直列に、必要に応じて別の電子デバイスとも接続して配線することができる。そして本発明による基体を汎用的な標準体として製造し、さまざまに異なる計量セルで利用することができ、計量セルの型式に応じたコイルの個別的な配線によって、そのためにそのつど必要となるコイル形態を選択可能である。
【0023】
その代替として、少なくとも2つのコイルをすでに基体の内部でコイル群をなすように並列または直列につなぎ合わせておくことが考えられ、それぞれ個々のコイルの接続接点を基体の外面へも通じさせる必要がない。このことは、第1のコイルの接続接点が適切な電気回線を介して基体の内部で第2のコイルの接続接点と直接的に接続されて、たとえばこれら両方のコイルの直列の配線を具体化することによって行うことができる。そして、こうして形成されたコイル群の残りの接続接点を、接触のために外部へ通じさせるだけでよい。このようなケースが有意義であり得るのは、コイル群の所望の物理的特性が(たとえば幾何学的な制約に基づいて)単一のコイルによっては与えられないが、コイルの外部での相互配線は簡略化のために省略したいという場合である。
【0024】
基体の内部での2つのコイルの電気接続は、たとえば支持層の両方の側に配置された2つのコイルを横方向で互いに接続するために、支持層の一方の側から他方の側への電気接続が創出されるスルーホールめっきによって行うことができる。外部へと通じていない、すなわち外側からは見ることができない、複数の支持層にわたって通すこともできるこのような接触は、「埋め込まれた」接続とも呼ばれる。しかしながらその代替または追加として、いくつかのコイルまたはすべてのコイルについて、基体の外側までスルーホールめっきを通すことも可能である。その場合には付属のスルーホールめっきは、それぞれのコイル平面またはコイルを担持する支持層を起点として、(通常はコイル平面に対して垂直に、およびそれに伴って横方向に)基体の外面まで延びる。当然ながら、スルーホールめっきは基体の内部で短絡を回避するために、他のコイルの巻回または接点から離して通さなければならない。特定の深さもしくはコイル平面で終わって外部にまで通じるスルーホールめっき」は、「目に見える」接続とも呼ばれる。互いに直接的に向かい合う2つのコイル(これらの間に位置する支持層なし)も、内部で同様に電気接続することができる。
【0025】
コイル群をなすように接続可能な本発明による基体のコイルは、コイル群に導入された電流がコイル群のすべてのコイルを同一方向に貫流するように接触可能であるのが好都合であり、それにより、電流の流れから生じる各々のコイルの力が加算される。
【0026】
コイルを形成する導体トラックは、長方形または三角形または台形の断面を有するのが好ましい。
【0027】
本発明による秤は、上述した種類の基体を装備している。基体は力低減装置のレバーに取り付けられるのが好ましく、このような利用は、レバーを使わないいわゆる直接支持システムにも(重量が節減されるので)好ましく適している。このケースでは、基体は計量セルの荷重受容部と直接的にリンクされる。
【0028】
荷重受容部またはこれとリンクされて基体を担持するレバーは、基体のコイル平面に対して平行に延びる旋回平面で可動であるのが好ましい。旋回平面は通常は垂直であり、そのため、基体の横方向は水平方向に延びることになる。横方向で見て基体の横に並んで、本発明によると少なくとも1つの永久磁石が配置される。基体の電流が流れるコイルにより生成される磁場と、永久磁石により生成される磁場との強力な相互作用を保証するために、磁石と基体との間の間隔は非常に短いのが好ましい(たとえば2ミリメートル未満)。
【0029】
所定のゼロ位置からの基体の偏向を位置検出器を用いて検出し、信号としてコントローラへ転送することができる。偏向の量に依存してコントローラが基体のコイルまたはコイル群で平衡電流を生成し、それは、その際に発生する磁場によって、永久磁石の磁場との相互作用のもとで、基体に対して作用する復帰力を横方向に対して垂直に生成するためである。
【0030】
電磁力平衡の原理に基づいて作動する従来の秤は、永久磁石がオフセットされて配置された円筒形のコイルを利用する。その際には、磁束を方向転換させるために極板がしばしば設けられる。それに対して本発明の磁石コイルシステムは、そのような(磁場を弱める空間的距離を常に生成する)極板の省略を可能にし、それにより、磁石コイルシステム全体の特別に幅の細い設計形態が可能となる。永久磁石と基体(またはそのコイル)を、これらの間に位置する極板なしに、非常に短い相互距離で配置することができる。
【0031】
本発明による秤の好ましい実施形態では、基体は、たとえば差動フォトダイオードなどの位置検出器のコンポーネントを担持する。定置の光源からフォトダイオードに向けられる光線が、ゼロ位置からの基体の偏向に応じて、高い強度または低い強度でフォトダイオードを照明する。照明強度に依存するフォトダイオードの信号を、復帰力の生成のために前述のコントローラに供給することができる。従来技術とは異なり、フォトダイオードは、たとえば外部に位置する基体の支持層もしくはプリント配線板層の上に電子部品として設けられることによって、基体の一体的な構成要素とすることができる。その場合、従来技術から知られているような、フォトダイオードの別個の準備と定置の配置を省略できるという利点がある。それによって計量セルの幅も縮小される。というのも、レバーもしくは基体の一方の側に光源を設け、他方の側にフォトダイオード(またはその他の適切なセンサ)を設けることが必要なくなるからである。
【0032】
次に、本発明による磁石コイルシステムの実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】コイルが上に配置された支持層を示す模式的な平面図である。
図2】複数のコイルと支持層を有する本発明による基体である。
図3】磁石コイルシステムを示す模式的な断面図であり、(a)は拡大詳細図である。
図4】相互に配線された6つのコイルを取り出して示す図である。
図5】スリット絞りと位置検出器(光学ヘッド)とを有する基体である。
図6】被覆に取り囲まれた基体である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、基体の露出した支持層T1を簡略化した平面図で示しており、支持層は第1の平面方向Xと第2の平面方向Yに延びている。これに比べて、両方の方向X,Yに直交する横方向Z(図1の紙面に対して垂直)の広がりは小さい。
【0035】
観察者のほうを向く支持層T1の表面が同時にコイル平面E1を形成し、このコイル平面で第1のコイルS1が、コイル中心Dを起点としてほぼ20の巻回で螺旋状に外方に向かって延びている。ここではコイルS1は導体トラックとして構成されており、コイル中心Dの近傍にある、およびもっとも外側の巻回にある、接続接点C1を介して電気的に接触可能である。2つの組立開口部Mが、基体Aの全体をZ方向に貫通している。
【0036】
図2は、図1に示す支持層の方式に基づく複数の支持層T1~T4を含む基体Aを、簡略化した斜視図で示している。ここでは支持層T1~T4の各々が少なくとも1つのコイル平面を形成しており、第1のコイル平面E1およびこれに対して平行な別のコイル平面E4が、例示のために図2に示唆されている。各々の支持層が付属のコイル平面に、図1に示す範例に基づくコイルを有することができる。基体は、もっとも外側の支持層を見る視線を遮る被覆Uで取り囲まれている(図2では、基体もしくは支持層の縁部領域が被覆なしで示されており、したがって見ることができる)。
【0037】
すべての支持層もしくはそのコイル平面が相互に、かつX-Y平面に対して平行に位置しており、横方向Zで見た幅の細い基体Aの形態を実質的に規定する。
【0038】
支持層の上で基体Aの内部に配置されているコイルS1からS6のいくつかを、基体の内部からその表面まで導出される接続接点C1,C2,C3を介して電気的に接触可能である。それにより、基体Aの内部にある個々のコイルを的確に接触させ、あるいは、他のコイルとたとえば並列または直列に配線することも可能である。
【0039】
簡略化して示す切欠きLが、基体Aを幅方向Zに貫通している。光線に対して横向きの基体の運動すなわち偏向を適切な位置検出器(光学ヘッド)によって検出、評価できるようにするために、切欠きLを通るように光線を向けることができる。切欠きは、特に、細いスリット(スリット絞り)として製作されていてもよい(図2には示さず)。
【0040】
図3は、平面方向Xに沿った視線で基体Aの簡略化した断面図を示しており、コイル中心Dの領域が図3(a)に拡大して明示されている。
【0041】
図3(a)では、コイル中心Dのほうを向いている個々の支持層T1からT6の区域がハッチングで示されている。第1の支持層T1はその(図3(a)では左側の)側面に、導体トラックがほぼ長方形の断面を有する第1の螺旋状のコイルS1を有している。コイルの中心Dの領域にある第1のコイルS1の接続接点C1が、横方向Zで向かい合う基体Aの両方の外面へと配線されている。第1のコイルS1と向かい合う側の第1の支持層T1の側には、別のコイルS2が螺旋形状で配置されている。ここでは第1のコイルS1の第1の支持層T1は、第2のコイルS2のための第2の支持層T2としても同時に機能する。第2のコイルS2についても、接続接点C1に準じて、付属の接続接点C2が基体Aの中心からその外面へと通じている。
【0042】
支持層T1/T2と同様に、2つの螺旋状のコイルS3,S4およびS5,S6がそれぞれ上に配置された2つの別の支持層T3/T4およびT5/T6が、わずかな相互の間隔もしくは支持層T1/T2との間隔をおいて配置されている、これらのコイルの接続接点は、図3(a)では詳細には示されていない。すべてのコイルS1からS6は、詳細には図示しない方式で、基体Aの内部で互いに直列または並列に配線されていてよい。その代替または追加として、コイルS1~S6の接続接点のいくつかが、またはすべてが、基体Aの外面へと通じていてもよい。
【0043】
個々の支持層は、図示しない絶縁性の中間層によって、および/または横方向Zの間隔によって、それぞれ少なくとも電気的に十分に良好に互いに絶縁されており、それにより、2つの支持層の間で互いに直接的に向かい合う2つのコイルの間での短絡を回避する。
【0044】
さらに、水分や(たとえば爆発性の)ガスが基体の内部に侵入するのを回避するために、基体Aの外面が被覆Uによって実質的に覆われている様子を見ることができる。この被覆は特に銅層であってよい。銅は環境要因に対してロバストであり、磁場にさほどの影響を与えないという利点がある。
【0045】
図3に示す磁石コイルシステムKは、基体Aからわずかな間隔をおいて横方向Zに配置された4つの定置の永久磁石Pを含んでいる。二重矢印で示唆するように、基体Aは永久磁石Pに対して相対的にY方向へ可動である。たとえば基体は、電磁力平衡の原理に基づいて作動する(図示しない)秤のレバーに配置されていてよい。(図示しない)レバーは、およびこれに伴って基体Aは、計量されるべき荷重によって、初期位置から出てX方向に運動するように強いられる。この運動に対して反対の作用をさせるために、基体Aの1つまたは複数のコイルS1,S2・・・に電流を印加することができる。それによって生成されるコイル磁場が、定置の永久磁石Pの磁場と相互作用する。適切なコイル形態と電流強さのもとで、レバーおよび基体Aを初期位置へと戻すように動かすために、もしくはこれを最初からそこで保持するために、十分に大きい平衡力が生成される。コイル電流から、計量されるべき荷重の推定を導き出すことができる。
【0046】
横方向Zにおける基体Aと永久磁石Pとの間のわずかな間隔は、特別に正確な力平衡を可能にするとともに、本発明による磁石コイルシステムKを有する計量セルの好ましく幅の細い設計形態を可能にする。
【0047】
図4は、互いに直列に配線された6つのコイルS1~S6を、簡略化した斜視図で示している。それぞれの支持層、および場合によりさらに必要な絶縁部は、この図面では省略されている。個々のコイルは、もっとも単純にはコイル中心の接続接点で識別することができ、したがってそこに付属の符号が付されている。6つの個別のコイルから形成されるコイル群の共通の接触が、ここには図示しない基体の外側表面へと通じる接続接点Cを介して可能である。いかにわずかなスペースで、および特に幅方向Zにおける非常にわずかな寸法(図示した例では数ミリメートル)をもって、複数のコイルのコンパクトな配置が可能であるかを明らかに見ることができる。
【0048】
図5は、本発明による基体Aの特別な実施形態を示している。ここでは、図2ですでに説明した切欠きLが、ほぼ半分に切断して示す基体Aのコイル中心の近傍に位置している。切欠きはスリット絞りBで覆われており、これを通して、詳しくは図示しない光線を幅方向Zで定置の位置検出器(光学ヘッド)Oに向けることができる。スリット絞りはここでは基体のもっとも外側の層にあるスリットによって形成されており、Z方向で見てその背後に位置する基体Aの切欠きLは、光学ヘッドOを配置するために露出している。(たとえば計量セルの旋回可能なレバーに配置され、その場合には示唆している二重矢印の方向に可動である)基体Aの偏向を、定置の光学ヘッドを介して検出可能であり、図示しない制御部を通じて評価可能である。偏向に依存して基体Aの1つまたは複数のコイルもしくはコイル群に適切なコイル電流を導入し、図示しない永久磁石との相互作用のもとで、基体を位置復帰させるための平衡力を生成することができる。基体Aの一部としてのスリット絞りBの構成、および(全面的または少なくとも部分的に)切欠きLの中への光学ヘッドの配置は、いずれも基体Aの特別に幅の細い構成を可能にし、それにより、計量セル全体を幅方向Zに非常に細い幅で構成することができる。
【0049】
図6は、銅で製作された被覆Uでほぼ全面的に被覆された図2の基体Aを示している。被覆Uは基体Aの外側表面をほぼ覆っており、接続接点と組立開口部だけが露出している。図2ではまだ被覆なしで示されている端面側の平坦な縁部領域も、ここでは銅で全面的に取り囲まれている。
【符号の説明】
【0050】
A 基体
B スリット絞り
C、C1、C2・・・ 接続接点
D コイル中心
E1、E2 コイル平面
K 磁石コイルシステム
L 切欠き
M 組立開口部
O 位置検出器(光学ヘッド)
P 永久磁石
S1、S2・・・ コイル
T1、T2・・・ 支持層
U 被覆
X 第1の平面方向
Y 第2の平面方向
Z 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】