(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078990
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】成形品、電気製品及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20220518BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220518BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
H05K1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006658
(22)【出願日】2022-01-19
(62)【分割の表示】P 2020018729の分割
【原出願日】2020-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 忠壮
(72)【発明者】
【氏名】面 了明
(72)【発明者】
【氏名】川島 永嗣
(72)【発明者】
【氏名】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 潤
(72)【発明者】
【氏名】坂田 喜博
(57)【要約】
【課題】成形体と一体成形される回路フィルムの電気回路から接続端子までの配線の取回しの容易な成形品または電気製品を提供する。
【解決手段】成形品10は、回路フィルム20と成形品30を備える。回路フィルム20は、絶縁フィルム21と電気回路22とを有する。成形体30は、回路フィルム20と一体成形されている。回路フィルム20は、フレキシブル配線部25を有する。成形体30は、一方主面31から他方主面32まで貫通する貫通穴35を有する。フレキシブル配線部25は、貫通穴35を通過して他方主面32を超えたところに接続端子26を配置している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性の絶縁フィルムと前記絶縁フィルムに形成されている電気回路とを有する回路フィルムと、
一方主面及び前記一方主面に対向する他方主面を有し、前記一方主面に位置する前記回路フィルムと一体成形されている成形体と、
を備え、
前記回路フィルムは、前記絶縁フィルムとの繋がりを保ちつつ前記電気回路に接続されている配線の周囲を切り離してなるフレキシブル配線部を有し、
前記成形体は、前記一方主面から前記他方主面まで貫通する貫通穴を有し、
前記フレキシブル配線部は、前記貫通穴の中に、または前記貫通穴を通過して前記他方主面を超えたところに接続端子を配置している、成形品。
【請求項2】
熱可塑性の絶縁フィルムと前記絶縁フィルムに形成されている電気回路とを有する回路フィルムと、
前記回路フィルムとは別体であって、前記電気回路に接続されているフレキシブルプリント基板からなる熱可塑性のフレキシブル配線部と、
一方主面及び前記一方主面に対向する他方主面を有し、前記一方主面に位置する前記回路フィルム及び前記フレキシブル配線部の両方と一体成形されている成形体と、
を備え、
前記成形体は、前記一方主面から前記他方主面まで貫通する貫通穴を有し、
前記フレキシブル配線部は、前記貫通穴の中に、または前記貫通穴を通過して前記他方主面を超えたところに接続端子を配置している、成形品。
【請求項3】
前記貫通穴の中に配置されている、前記成形体とは別体の立体部品を備える、
請求項1または請求項2に記載の成形品。
【請求項4】
前記貫通穴を覆う、前記成形体とは別体の立体部品を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項5】
前記貫通穴を覆うとともに前記回路フィルムの少なくとも一部を覆い、前記成形体と一体成形されている意匠フィルムを備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項6】
前記フレキシブル配線部は、前記貫通穴の壁面に固着している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の成形品を含む筐体と、
前記筐体の中に配置され、前記フレキシブル配線部の前記接続端子に接続されている電気デバイスと、
を備え、
前記成形品は、前記筐体の外部に前記一方主面を向け、前記筐体の内部に前記他方主面を向けて取り付けられている、電気製品。
【請求項8】
熱可塑性の絶縁フィルムと前記絶縁フィルムに形成されている電気回路とを有する回路フィルムのプレフォーミングを行うステップと、
第1型に前記回路フィルムをセットするステップと、
前記第1型と第2型の型締めを行うステップと、
前記第1型と前記第2型のキャビティに溶融材料を射出して、前記回路フィルムと一体成形された成形体の形成を行うステップと
を備え、
前記プレフォーミングでは、前記絶縁フィルムとの繋がりを保ちつつ前記電気回路に接続されている配線の周囲を切り離してなる熱可塑性のフレキシブル配線部を、前記回路フィルムの面内方向と交差する方向に立たせ、
前記回路フィルムをセットするステップでは、前記第1型の凸部の側面に前記フレキシブル配線部の少なくとも一部を配置し、
前記型締めでは、前記第1型の前記凸部を前記第2型の凹部に嵌めて、前記フレキシブル配線部の接続端子が前記凹部の中で前記第1型と前記第2型に挟み込み、
前記成形体の形成を行うステップでは、前記凸部によって前記成形体に貫通穴を設け、且つ前記フレキシブル配線部を前記貫通穴に配置するように、前記接続端子に溶融材料を接触させずに、前記回路フィルムと前記成形体の一体成形をする、成形品の製造方法。
【請求項9】
熱可塑性の絶縁フィルムと前記絶縁フィルムに形成されている電気回路とを有する回路フィルムのプレフォーミングを行うステップと、
第1型に前記回路フィルムをセットするステップと、
前記第1型と第2型の型締めを行うステップと、
前記第1型と前記第2型のキャビティに溶融材料を射出して、前記回路フィルムと一体成形された成形体の形成を行うステップと
を備え、
前記プレフォーミングでは、前記電気回路に接続されているフレキシブルプリント基板からなる前記回路フィルムとは別体の熱可塑性のフレキシブル配線部を、前記回路フィルムの面内方向と交差する方向に立たせ、
前記回路フィルムをセットするステップでは、前記第1型の凸部の側面に前記フレキシブル配線部の少なくとも一部を配置し、
前記型締めでは、前記第1型の前記凸部を前記第2型の凹部に嵌めて、前記フレキシブル配線部の接続端子が前記凹部の中で前記第1型と前記第2型に挟み込み、
前記成形体の形成を行うステップでは、前記凸部によって前記成形体に貫通穴を設け、且つ前記フレキシブル配線部を前記貫通穴に配置するように、前記接続端子に溶融材料を接触させずに、前記回路フィルムと前記成形体の一体成形をする、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路フィルムが成形体と一体成形されている成形品、当該成形品を備える電気製品、及び当該成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第5484529号公報)に記載されている部品モジュールは、例えば、回路フィルムであるタッチセンサと、成形体である樹脂部とが一体成形されている成形品である。部品モジュールの外部に在る電気デバイスとタッチセンサとの電気的接続を行うために、特許文献1の部品モジュールは、フレキシブルプリント基板を備えている。フレキシブルプリント基板の外部接続端子が電気デバイスに接続されることで、フレキシブルプリント基板を介して、タッチセンサと電気デバイスが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の部品モジュールでは、金型を用いた射出成形で樹脂部が成形されるため、フレキシブルプリント基板は、樹脂部の端部から樹脂部の外に引き出されている。
特許文献1に記載されている部品モジュールのように、樹脂部の端部からフレキシブルプリント基板が引き出されると、フレキシブルプリント基板の取回しに困る場合がある。例えば、部品モジュールが、電気製品の筐体の一部の部品に用いられるとともに、タッチセンサと接続される電気デバイスが、電気製品の筐体の内部空間に収納される場合がある。
このような場合に、フレキシブルプリント基板の外部接続端子を電気製品の内部空間に導くために、例えば、フレキシブルプリント基板を通す空隙を、部品モジュールの端部とその周囲に在る筐体の他の部分との間に設けることが必要になる。このような空隙を通過させて、フレキシブルプリント基板を筐体外部から筐体内部に回り込ませると、例えば、フレキシブルプリント基板と筐体とが干渉したり、フレキシブルプリント基板が折れることで配線が折れたりする。フレキシブルプリント基板と筐体との干渉、配線の折れに起因して、フレキシブル配線基板が破損するといった問題が発生する。
【0005】
本発明の課題は、成形体と一体成形される回路フィルムの電気回路から接続端子までの配線の取回しの容易な成形品または電気製品を提供することにある。また、本発明の課題は、そのような成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る成形品は、回路フィルムと成形体とを備える。回路フィルムは、熱可塑性の絶縁フィルムと絶縁フィルムに形成されている電気回路とを有する。成形体は、一方主面及び一方主面に対向する他方主面を有し、一方主面に位置する回路フィルムと一体成形されている回路フィルムは、絶縁フィルムとの繋がりを保ちつつ電気回路に接続されている配線の周囲を切り離してなるフレキシブル配線部を有する。成形体は、一方主面から他方主面まで貫通する貫通穴を有する。フレキシブル配線部は、貫通穴の中に、または貫通穴を通過して他方主面を超えたところに接続端子を配置している。
このような構成を備える成形品は、成形体の一方主面に回路フィルムがあり、成形体の一方主面から他方主面に向かって貫通穴を通るフレキシブル配線部がある。フレキシブル配線部の接続端子に例えば電気デバイスを接続すれば、成形体の一方主面の側にある回路フィルムと他方主面の側にある電気デバイスとを、貫通穴を通してフレキシブル配線部により接続することができる。
【0007】
本発明の他の見地に係る成形品は、回路フィルムと、フレキシブル配線部と、成形体とを備える。回路フィルムは、絶縁フィルムと絶縁フィルムに形成されている電気回路とを有する。フレキシブル配線部は、熱可塑性であり且つ回路フィルムとは別体であって、電気回路に接続されているフレキシブルプリント基板からなる。成形体は、一方主面及び一方主面に対向する他方主面を有し、一方主面に位置する回路フィルム及びフレキシブル配線部の両方と一体成形されている。成形体は、一方主面から他方主面まで貫通する貫通穴を有する。フレキシブル配線部は、貫通穴の中に、または貫通穴を通過して他方主面を超えたところに接続端子を配置している。
このような構成を備える成形品は、成形体の一方主面に回路フィルムがあり、成形体の一方主面から他方主面に向かって貫通穴を通るフレキシブル配線部がある。フレキシブル配線部の接続端子に例えば電気デバイスを接続すれば、成形体の一方主面の側にある回路フィルムと他方主面の側にある電気デバイスとを、貫通穴を通してフレキシブル配線部により接続することができる。
上述の成形品は、貫通穴の中に配置されている、成形体とは別体の立体部品を備える、ように構成されてもよい。このように構成された成形品は、貫通穴を立体部品とフレキシブル配線部で共用しており、立体部品のために専用の穴を別に設ける場合に比べて、成形品の強度低下が抑制される。
【0008】
上述の成形品は、貫通穴を覆う、成形体とは別体の立体部品を備える、ように構成されてもよい。このように構成された成形品は、立体部品で貫通穴が隠されて外観の意匠性が向上する。また、立体部品で貫通穴が塞がれて、貫通穴を通して例えば埃、水分などの異物が成形体の他方主面の側に侵入するのを防ぐことができる。
上述の成形品は、フレキシブル配線部が貫通穴の壁面に固着している、ように構成されてもよい。このように構成された成形品は、フレキシブル配線部が貫通穴の壁面に固着していない場合に比べて、フレキシブル配線部の位置の変化が抑制され、フレキシブル配線部の接続端子への接続が容易になる。
本発明の一見地に係る電気製品は、上述の成形品を含む筐体と、電気デバイスとを備える。電気デバイスは、筐体の中に配置され、フレキシブル配線部の接続端子に接続されている。成形品は、筐体の外部に一方主面を向け、筐体の内部に他方主面を向けて取り付けられている。
このように構成された電気製品は、筐体の外部に向いた成形品の一方主面から、成形品の貫通穴を通して筐体の内部の電気デバイスと電気回路とをフレキシブル配線部により接続することができる。そのため、フレキシブル配線部の取り回しによってフレキシブル配線部が筐体と干渉したり、フレキシブル配線部が折れ曲がったりする不具合を防止することができる。
【0009】
本発明の一見地に係る成形品の製造方法は、熱可塑性の絶縁フィルムと絶縁フィルムに形成されている電気回路とを有する回路フィルムのプレフォーミングを行うステップと、第1型に回路フィルムをセットするステップと、第1型と第2型の型締めを行うステップと、第1型と第2型のキャビティに溶融材料を射出して、回路フィルムと一体成形された成形体の形成を行うステップとを備える。プレフォーミングでは、絶縁フィルムとの繋がりを保ちつつ電気回路に接続されている配線の周囲を切り離してなる熱可塑性のフレキシブル配線部を、回路フィルムの面内方向と交差する方向に立たせる。回路フィルムをセットするステップでは、第1型の凸部の側面にフレキシブル配線部の少なくとも一部を配置する。型締めでは、第1型の凸部を第2型の凹部に嵌めて、フレキシブル配線部の接続端子が凹部の中で第1型と第2型に挟み込む。成形体の形成を行うステップでは、凸部によって成形体に貫通穴を設け、且つフレキシブル配線部を貫通穴に配置するように、接続端子に溶融材料を接触させずに、回路フィルムと成形体の一体成形をする。
このように構成された成形品の製造方法は、フレキシブル配線部の接続端子に例えば電気デバイスを接続する場合を考えると、成形品の貫通穴の一方にある回路フィルムと他方にある電気デバイスとを接続するフレキシブル配線を貫通穴に配置することができる。また、回路フィルムと成形体の一体成形のときに、フレキシブル配線部の接続端子に溶融材料が接触しないことから、接続端子での接続不良を原因とする回路フィルムと電気デバイスとの接続不良を抑制することができる。
【0010】
本発明の他の見地に係る成形品の製造方法は、熱可塑性の絶縁フィルムと絶縁フィルムに形成されている電気回路とを有する回路フィルムのプレフォーミングを行うステップと、第1型に回路フィルムをセットするステップと、第1型と第2型の型締めを行うステップと、第1型と第2型のキャビティに溶融材料を射出して、回路フィルムと一体成形された成形体の形成を行うステップとを備える。プレフォーミングでは、電気回路に接続されているフレキシブルプリント基板からなる回路フィルムとは別体の熱可塑性のフレキシブル配線部を、回路フィルムの面内方向と交差する方向に立たせる。回路フィルムをセットするステップでは、第1型の凸部の側面にフレキシブル配線部の少なくとも一部を配置する。型締めでは、第1型の凸部を第2型の凹部に嵌めて、フレキシブル配線部の接続端子が凹部の中で第1型と第2型に挟み込む。成形体の形成を行うステップでは、凸部によって成形体に貫通穴を設け、フレキシブル配線部を貫通穴に配置するように、接続端子に溶融材料を接触させずに、回路フィルムと成形体の一体成形をする。
このように構成された成形品の製造方法は、フレキシブル配線部の接続端子に例えば電気デバイスを接続する場合を考えると、成形品の貫通穴の一方にある回路フィルムと他方にある電気デバイスとを接続するフレキシブル配線を貫通穴に配置することができる。また、回路フィルムと成形体の一体成形のときに、フレキシブル配線部の接続端子に溶融材料が接触しないことから、接続端子での接続不良を原因とする回路フィルムと電気デバイスとの接続不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成形品または成形品を備える電気製品によれば、成形体と一体成形される回路フィルムの電気回路から接続端子までの配線の取回しが容易になる。また、本発明の成形品の製造方法によれば、成形体と一体成形される回路フィルムの電気回路から接続端子までの配線の取回しの容易な成形品を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】成形品が適用される眼鏡の外観を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態の成形品の貫通穴及びその周辺を拡大した部分拡大斜視図。
【
図4】回路フィルム20の構成を説明するための部分拡大平面図。
【
図5】第1実施形態の電気製品の構成を示すブロック図。
【
図6】フレキシブル配線部の形成方法を説明するための部分拡大斜視図。
【
図7】回路フィルム20の構成を説明するための模式的な断面図。
【
図8】プレフォーミングされた回路フィルムの部分拡大斜視図。
【
図10】回路フィルムがセットされた第1型の凸部の部分拡大斜視図。
【
図11】回路フィルムがセットされた第1型及び第2型の部分拡大断面図。
【
図12】第2実施形態の成形品の貫通穴及びその周辺を拡大した部分拡大斜視図。
【
図13】第2実施形態の電気製品の構成を示すブロック図。
【
図14】回路フィルムに接続されたフレキシブル配線部を示す部分拡大斜視図。
【
図15】回路フィルムに接続されたフレキシブル配線部を示す部分拡大断面図。
【
図16】回路フィルムとフレキシブル配線部がセットされた第1型及び第2型の部分拡大断面図。
【
図17】第3実施形態に係る成形品を説明するための部分拡大断面図。
【
図18】第3実施形態に係る他の成形品を説明するための部分拡大断面図。
【
図19A】回路フィルムがセットされた他の凸部の部分拡大斜視図。
【
図19B】回路フィルムがセットされた他の第1型及び第2型の部分拡大断面図。
【
図20A】回路フィルムがセットされた他の凸部の部分拡大斜視図。
【
図20B】回路フィルムがセットされた他の第1型及び第2型の部分拡大断面図。
【
図21】第2実施形態の成形品の貫通穴及びその周辺を拡大した部分拡大斜視図。
【
図22A】接続端子の配置とスルーホールの関係を説明するための部分拡大断面図。
【
図22B】貫通穴の中に配置されている接続端子の他の例を示す部分拡大断面図。
【
図23A】回路フィルムがセットされた変形例の第1型の凸部の部分拡大斜視図。
【
図23B】回路フィルムがセットされた変形例の第1型及び第2型の部分拡大断面図。
【
図24】変形例の成形品の貫通穴及びその周辺を拡大した部分拡大斜視図。
【
図25】1つの貫通穴に配置されている複数のフレキシブル配線部を示す部分拡大斜視図。
【
図26】変形例に係る立体部品と貫通穴を示す部分拡大斜視図。
【
図27】変形例に係る立体部品と貫通穴を示す部分拡大断面図。
【
図28】変形例に係るフレキシブル配線部を示す部分拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1には、本発明の第1実施形態に係る成形品が適用されている眼鏡が示されている。
図1に示された眼鏡1においては、耳に掛かるモダン3とツル2とヒンジ4の部分が成形品10である。成形品10の内部には、電気デバイス90を収納する空間が設けられている。
成形品10は、
図2に示されている回路フィルム20と、成形体30とを備える。回路フィルム20は、成形体30と一体成形されている。
図2には、成形体30の一部が拡大して示されている。
図2に示されている箇所は、眼鏡1のツル2の一部分であり、「N」の文字が彫り込まれている嵌め込み部33の配置されている箇所である。この嵌め込み部33の中に、貫通穴35が通じている。嵌め込み部33には、「N」の文字の形をした立体部品80が嵌め込まれる。貫通穴35は、立体部品80で覆われる。そのため、貫通穴35が、立体部品80によって外部から隠される。従って、この立体部品80により、成形品10の意匠性が向上するだけでなく、成形品10の中への貫通穴35を通じた塵埃の侵入が防止される。
【0014】
図2のI-I線に沿って切断した断面が、
図3に示されている。
図3に示されているように、成形体30は、一方主面31と、一方主面31に対向する他方主面32を有している。嵌め込み部33は、成形体30の一方主面31に形成されている。成形体30は、回路フィルム20と一体成形されている。成形体30に一体成形された回路フィルム20は、一方主面31の一方主面31に位置する。なお、
図3には、一方主面31及び他方主面32が平面である場合が示されている。しかし、一方主面31及び他方主面32の形状は、平面に限られるものでなく、曲面であってもよく、凹凸の在る形状であってもよい。
回路フィルム20は、
図4に示されているように、絶縁フィルム21と、絶縁フィルム21に形成されている電気回路22とを有している。この第1実施形態では、回路フィルム20に形成されている電気回路22は、アンテナである。
図5には、眼鏡1に設けられている電気製品5の構成の概要が示されている。電気回路22は、フレキシブル配線部25によって、電気デバイス90と接続されている。フレキシブル配線部25には、電気回路22と電気デバイス90とを接続するための接続端子26と配線27とを備えている(
図4参照)。配線27は、電気回路22に電気的に接続されるとともに接続端子26に電気的に接続されている。第1実施形態の電気デバイス90は、アンテナを使って送受信する機能を有している。電気デバイス90は、例えば、受信した無線信号を音声信号及び/または映像信号に変換する受信機、制御信号を無線信号に変換して送信する送信機である。
成形体30は、一方主面31から他方主面32まで貫通する貫通穴35を有している(
図3参照)。貫通穴35の一端35bは嵌め込み部33にあり、貫通穴35の他端35aは他方主面32にある。フレキシブル配線部25は、貫通穴35を通過して、成形体30の他方主面32を超えたところに接続端子26を配置している。フレキシブル配線部25には、接続端子26の配置される箇所の反対側の面に、補強フィルム28が設けられている。
フレキシブル配線部25の貫通穴35を通過する部分は、貫通穴35の壁面35wに固着している。そのため、フレキシブル配線部25が壁面35wと接触する箇所に、例えば、接着層が配置される。
【0015】
図6には、回路フィルム20の一部が拡大して示されている。また、
図7には、回路フィルム20の断面構造が模式的に示されている。この第1実施形態では、絶縁フィルム21の外側の面に図柄層71が形成されている。さらに、絶縁フィルム21の内側の面に図柄層72と電気回路22と保護層73が形成されている。
回路フィルム20が有するフレキシブル配線部25は、絶縁フィルム21との繋がりを保ちつつ電気回路22に接続されている配線27の周囲を切り離したものである。
図6に示されている箇所は、N字形の嵌め込み部33に対応するように、回路フィルム20がN字形に打ち抜かれた開口部29及びその周辺である。フレキシブル配線部25は、開口部29に対して突出している。
【0016】
(2)詳細構成
(2-1)回路フィルム20
図7に示されているように、回路フィルム20は、熱可塑性の絶縁フィルム21と、電気回路と、図柄層71,72と、保護層73とを備えている。
熱可塑性の絶縁フィルムには、例えば、熱可塑性樹脂製のフィルム、熱可塑性エラストマー製のフィルムまたはそれらの積層フィルムを用いることができる。熱可塑性樹脂製のフィルムの材料は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、スチレン樹脂若しくはABS樹脂からなる樹脂フィルム、アクリル樹脂とABS樹脂の多層フィルム、又はアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂の多層フィルムである。樹脂製のフィルムの厚さは、例えば、30μm~500μmの範囲から選択される。
電気回路22は、例えば、導電材料を絶縁フィルム21及び/または図柄層72の表面に形成した後にパターニングして形成される。あるいは、電気回路22は、例えば、絶縁フィルム21及び/または図柄層72の表面に、導電性インキを厚膜印刷で印刷して形成される。電気回路22を構成する導電性材料には、例えば、金属材料、及び半導体材料がある。金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、炭素、ニッケル、金、銀、または錫を用いることができる。半導体の材料には、例えば、金属酸化物、及び導電性ポリマーがある。例えば、電気回路22として眼鏡1のレンズ部分にタッチセンサを設ける場合には、透明電極を用いてもよい。透明電極は、例えば、金属酸化物、透明導電性ポリマー又は透明導電インキで形成される。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)及び酸化インジウム亜鉛(IZO)が挙げられる。透明導電性ポリマーとしては、例えば、PEDOT/PSS(poly-3,4-エチレンジオキシチオフェン/ポリスルフォン酸)が挙げられる。また、透明導電インキとしては、例えば、カーボンナノチューブ又は銀ナノファイバーをバインダー中に含むものが挙げられる。
【0017】
図柄層71,72は、図柄などの意匠を表現するための層である。図柄層71,72は、絶縁フィルム21に例えばグラビア印刷法又はスクリーン印刷法によって形成される。図柄層71,72を構成する材料は、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂と、樹脂に添加される顔料又は染料を含むものである。また、図柄層71,72は、例えば絶縁処理されたアルミペースト又はミラーインキを使用して金属調意匠が施されたものであってもよい。また、図柄層71に凹凸を形成してもよい。
保護層73は、例えば、回路フィルム20の電気回路22に対する酸化、硫化及びキズ付きを防止するための層である。保護層73は、電気回路22及び配線27の絶縁性の向上も目的としている。保護層73は、一体成形のときに成形体30と接着できる材料で構成される。保護層73には、例えば、UV(紫外線)硬化樹脂、熱硬化樹脂が用いられる。保護層73が成形体30の側に配置される場合に、保護層73を省いてもよい。
【0018】
(2-2)成形体30
成形体30は、着色されていても着色されていなくてもよく、透明、半透明あるいは不透明の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーを用いて成形される。成形体30の材料としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂若しくはAS樹脂などの汎用の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。それ以外に、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エンジニアリング樹脂(ポリスルホンフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート系樹脂など)、ポリアミド系樹脂、又はウレタン系、ポリエステル系若しくはスチレン系の熱可塑性エラストマーを成形体30の材料として使用することができる。成形体30には、例えば、ガラス繊維、無機フィラーなどの補強材を添加することもできる。
【0019】
(3)成形品10の製造方法
まず、回路フィルム20にフレキシブル配線部25を形成する。
図4に示されているフレキシブル配線部25を形成する前の回路フィルム20は、例えば、長方形であって、N字形の開口部29が形成されていない。開口部29は、例えば、打ち抜きプレス加工で形成される。このとき、フレキシブル配線部25の部分は打ち抜かれずに残される。その結果、絶縁フィルム21との繋がりを保ちつつ電気回路22に接続されている配線27の周囲を切り離したフレキシブル配線部25が形成される。
図6に示されている回路フィルム20を用いて、回路フィルム20のプレフォーミングが行われる。
図8には、プレフォーミング後の回路フィルム20のフレキシブル配線部25及びその周辺が拡大して示されている。
図9には、第1型110の中のN字形の突出部112及びその周辺が拡大して示されている。
図10には、第1型110の中の凸部113が拡大して示されている。
第1型110の中のN字形の突出部112は、成形体30のN字形の嵌め込み部33を形成するための構造である。この突出部112は、キャビティCv(
図11参照)を形成するための第1型110の内面111において、キャビティCvに向かって突出した部分である。この突出部112から凸部113がさらに突出している。この凸部113は、成形体30の貫通穴35を形成するための構造である。
図10には、凸部113に沿うように配置されたフレキシブル配線部25が示されている。
プレフォーミングでは、平坦な回路フィルム20が、例えば熱プレスで、
図8に示されているように、立体的な形状に加工される。フレキシブル配線部25は、N字形の嵌め込み部33の側面に沿うように曲げられている箇所20aからさらに2回曲げられている。フレキシブル配線部25が2回曲げられているのは、N字形の嵌め込み部33の底面に沿わせた後に、フレキシブル配線部25の一部が貫通穴35の中を通るように配置するためである。
【0020】
プレフォーミングされた回路フィルム20は、第1型110にセットされる。回路フィルム20は、第1型110の凸部113の側面113a(
図11参照)にフレキシブル配線部25の少なくとも一部が配置されている。ここでは、フレキシブル配線部25の先端部25aが、凸部113の側面113aに沿わせて配置されている。成形体30の成形後に凸部113を成形体30から抜くことができるように、第1型110の移動方向に対して0.5度以上傾斜している。この先端部25aは、接続端子26を含む部分である。回路フィルム20が曲げられる箇所P1,P2,P3(
図10参照)は、配線27が破損するのを防ぐために、曲面であることが好ましい。
フレキシブル配線部25の先端部25aの周囲は、凸部113のリブ113bに囲まれている。リブ113bは、側面113aから突出した部分である。リブ113bは、側面113aとフレキシブル配線部25との間に溶融材料が侵入するのを防止する。なお、リブ113bは、設ける必要のない場合がある。溶融材料としては、例えば、溶融樹脂、溶融エラストマーがある。
次に、
図11に示されているように、第1型110と第2型120が型締めされる。この型締めのステップでは、第1型110の凸部113が、第2型120の凹部123に嵌る。凹部123は、キャビティCvを形成するための第2型120の内面121において、キャビティCvの反対側に窪んだ部分である。第1型110の凸部113が第2型120の凹部123に嵌め込まれることで、フレキシブル配線部25の接続端子26が凹部123の中で第1型110と第2型120に挟み込まれる。
型締めの後に、第1型110と第2型120によって形成されているキャビティCvの中に溶融材料が射出される。この溶融材料がキャビティCvの中で固まって成形体30が形成される。溶融材料が固まるときに同時に、成形体30と回路フィルム20が一体化される。成形体30の形成を行うステップでは、凸部113によって成形体30に貫通穴35が設けられる。このとき、フレキシブル配線部25の先端部25aが凸部113の側面113aに沿って配置されているので、フレキシブル配線部25が、貫通穴35に配置される。このように第1型110と第2型120に挟み込まれた接続端子26は、回路フィルム20と成形体30の一体成形のときに、キャビティCvに射出される溶融材料に接触しない。補強フィルム28を収納するための凹部113sから第2型120の内面121までの距離L1は、例えば、2mm以上であることが好ましい。
【0021】
<第2実施形態>
第1実施形態では、フレキシブル配線部25を回路フィルム20の一部として形成している。しかし、フレキシブル配線部には、回路フィルム20と別体のフレキシブル配線板を用いることもできる。
(4)全体構成
第2実施形態に係る成形品も、
図1に示されている成形品10と同様の構成を取ることができる。ここでは、第2実施形態においても、眼鏡1のモダン3とツル2とヒンジ4の部分である成形品10を例に挙げて説明する。
図12に示されているように、成形体30は、一方主面31と、一方主面31に対向する他方主面32を有している。嵌め込み部33は、成形体30の一方主面31に形成されている。成形体30は、回路フィルム20及びフレキシブルプリント配線板であるフレキシブル配線部55と一体成形されている。成形体30に一体成形された回路フィルム20は、一方主面31の一方主面31に位置する。
回路フィルム20は、第1実施形態と同様に、絶縁フィルム21と、絶縁フィルム21に形成されている電気回路22とを有している。第2実施形態では、回路フィルム20に形成されている電気回路22は、アンテナである。第2実施形態の電気製品5においては、フレキシブル配線部55が、回路フィルム20の電気回路22と電気デバイス90とを接続する。
図13に示されている第2実施形態の電気デバイス90にも、
図5に示されている第1実施形態の電気デバイス90と同様のものを用いることができる。
【0022】
図14には、フレキシブル配線部55に接続されている回路フィルム20の一部が拡大して示されている。フレキシブル配線部55に適用されるフレキシブル配線板には、従来からあるフレキシブル配線板を用いることができる。フレキシブル配線板は、例えば、回路フィルム20に用いられているものと同じ材料からなる絶縁フィルムと、配線と、保護層とを用いて構成することができる。第2実施形態の回路フィルム20の断面構造には、例えば、第1実施形態の回路フィルムの断面構造と同じ構成を用いることができる。フレキシブル配線部55に適用されるフレキシブル配線板と回路フィルム20の電気回路22は、例えば、異方性導電フィルム54により接続することができる。電気回路22とフレキシブル配線部55は、ハンダで接続されてもよい。
成形体30は、一方主面31から他方主面32まで貫通する貫通穴35を有している。貫通穴35の一端35bは嵌め込み部33にあり、貫通穴35の他端35aは他方主面32にある。フレキシブル配線部55は、貫通穴35を通過して、成形体30の他方主面32を超えたところに接続端子56を配置している。フレキシブル配線部55には、接続端子56の配置される箇所の反対側の面に、補強フィルム58が設けられている。
【0023】
(5)成形品10の製造方法
図14に示されているように、まず、回路フィルム20にフレキシブル配線部55を接続する。回路フィルム20の開口部29は、例えば、打ち抜きプレス加工で形成される。
図14に示されている回路フィルム20及びフレキシブル配線部55を用いて、回路フィルム20及びフレキシブル配線部55のプレフォーミングが行われる。
図15には、プレフォーミング後の回路フィルム20及びフレキシブル配線部55が拡大して示されている。プレフォーミングでは、平坦な回路フィルム20及びフレキシブル配線部55が、例えば熱プレスで
図15に示されているように、立体的な形状に加工される。
【0024】
プレフォーミングされた回路フィルム20及びフレキシブル配線部55は、例えば、
図9及び
図10に示されている第1型110と同様の第1型110(
図16参照)にセットされる。成形体30の貫通穴35を形成するための凸部11に沿うように、フレキシブル配線部55が配置される。
回路フィルム20は、
図16に示されている第1型110の凸部113の側面113aに、フレキシブル配線部55の少なくとも一部が配置されている。ここでは、フレキシブル配線部55の先端部が、凸部113の側面113aに沿わせて配置されている。フレキシブル配線部55の先端部は、接続端子56を含む部分である。
凸部113の側面113aに配置されたフレキシブル配線部55の先端部の周囲は、凸部113のリブ113bに囲まれる。リブ113bは、側面113aから突出した部分である。リブ113bは、側面113aとフレキシブル配線部55との間に溶融材料が侵入するのを防止する。なお、リブ113bは、設ける必要のない場合がある。
【0025】
次に、
図16に示されているように、第1型110と第2型120が型締めされる。この型締めのステップでは、第1型110の凸部113が、第2型120の凹部123に嵌る。第1型110の凸部113が第2型120の凹部123に嵌め込まれることで、フレキシブル配線部55の接続端子56が凹部123の中で第1型110と第2型120に挟み込まれる。
型締めの後に、第1型110と第2型120によって形成されているキャビティCvの中に溶融材料が射出される。この溶融材料がキャビティCvの中で固まって成形体30が形成される。溶融材料が固まるときに同時に、成形体30と回路フィルム20とフレキシブル配線部55が一体化される。成形体30の形成を行うステップでは、凸部113によって成形体30に貫通穴35が設けられる。このとき、フレキシブル配線部55の先端部が凸部113の側面113aに沿って配置されているので、フレキシブル配線部55が、貫通穴35に配置される。このように第1型110と第2型120に挟み込まれた接続端子56は、回路フィルム20と成形体30とフレキシブル配線部55の一体成形のときに、キャビティCvに射出される溶融材料に接触しない。補強フィルム58を収納するための凹部113sから第2型120の内面121までの距離L2は、例えば、2mm以上であることが好ましい。
【0026】
<第3実施形態>
(6)全体構成
第3実施形態に係る成形品は、例えば、
図1に示されている成形品10と同様の構成を取ることができる。ここでは、第3実施形態の成形品10の構成についての説明は省略する。第1実施形態及び第2実施形態では、射出成形の終了時に貫通穴35が開いた状態で、回路フィルム20と成形体30の一体成形または回路フィルム20と成形体30とフレキシブル配線部55の一体成形が行われている。
しかし、射出成型の終了時点で、成形体30の貫通穴35が塞がるように、回路フィルム20と成形体30の一体成形または回路フィルム20と成形体30とフレキシブル配線部55の一体成形が行われてもよい。
(7)成形品10の製造方法
図17には、第3実施形態に係る成形品10の成形体30と回路フィルム20とフレキシブル配線部55と意匠フィルム40が示されている。意匠フィルム40は、貫通穴35を覆うともに回路フィルム20の少なくとも一部を覆っている。意匠フィルム40が貫通穴35を隙間なく覆う成形品10の製造方法には、例えば、
図17に示されている製造ステップが用いられる。
第1型110は、凸部113と溝114とを有している。凸部113の側面113aと溝114の側面114aとは繋がっている。言い換えると、側面113a,114aは、滑らかな一つの面をなす。滑らかな一つの面とは、例えば、平面または連続した曲面で、角張ったところがない面である。型締めの際に、フレキシブル配線部55の先端部が溝114の中に収納される。従って、フレキシブル配線部55の先端部の接続端子56は、射出成形時に溶融材料に接触しない。
【0027】
図17に示されている第2型120には、凸部113に対向する箇所に、台地状の盛上り部125が設けられている。この盛上り部125があると、プレフォーミングされた回路フィルム20と意匠フィルム40とフレキシブル配線部25の位置決めが容易になる。ここでは、盛上り部125が設けられているが、凸部113に対向する部分は、平坦であっても、凹んでいてもよい。ただし、成形品10となった場合に、外部から貫通穴35の在る場所を目立ち難くするためには、凸部113に対向する部分が平坦であることが好ましい。
第2型120に回路フィルム20と意匠フィルム40とフレキシブル配線部55とがセットされて位置決めされることで、型締め時にフレキシブル配線部55が凸部113の側面113a,114aに触れながら溝114の中に導かれる。そのため、側面113aは、第2型120よりも第1型110に近くなるほど側面113aに対向する他の側面から離れるように傾斜していることが好ましい。側面113aは、第1型110の移動方向に対して0.5度以上傾斜している。
図17には、回路フィルム20とフレキシブル配線部55が別体である場合の構成が示されているが、
図18に示されているようなフレキシブル配線部25を有する回路フィルム20を用いて、貫通穴35を塞ぐ成形品10を形成することもできる。
図18に示されている貫通穴35は、成形体30の他方主面32の側で意匠フィルム40によって塞がれている。そのため、貫通穴35によって意匠フィルム40が落ち窪んだ状態になる。
意匠フィルム40が貫通穴35を隙間なく覆う成形品10の製造方法には、例えば、
図18に示されている製造ステップが用いられる。第1型110が溝114を有し、第2型120が凸部126を有している。型締めの際に、フレキシブル配線部25の先端部が溝114の中に収納される。従って、フレキシブル配線部55の先端部の接続端子26は、射出成形時に溶融材料に接触しない。
第2型120に回路フィルム20と意匠フィルム40とがセットされて位置決めされることで、型締め時にフレキシブル配線部25が溝114の中に導かれる。
【0028】
(8)変形例
(8-1)
第1実施形態で説明した射出成形のために、凸部113に、フレキシブル配線部25を沿わせる方法は、
図10及び
図11に示した方法に限られるものではない。例えば、
図19A及び
図19Bに示されているように、凸部113の上面113cにまでフレキシブル配線部25を配置してもよい。また、
図20A及び
図20Bに示されているように、凸部113の側面113aに沿わせて、凸部113からはみ出すフレキシブル配線部25の先端25bを第2型120の溝部124に収納するようにしてもよい。第2実施形態のフレキシブル配線部55についても、第1実施形態と同様のフレキシブル配線部25の凸部113の沿わせ方と同じ方法を採用することができる。
なお、
図19A及び
図19B並びに
図20A及び
図20Bでは、補強フィルムを有していないフレキシブル配線部25が示されているが、凸部113に補強フィルムを収納する凹部を設けて、フレキシブル配線部25に補強フィルムを設けてもよい。
【0029】
(8-2)
第1実施形態では、フレキシブル配線部25において、貫通穴35を通過して、成形体30の他方主面32を超えたところに接続端子26が配置されている。しかし、
図21に示されているように、フレキシブル配線部25の接続端子26が、貫通穴35の中に配置されるように構成されてもよい。このように構成する場合、成形品10は、内側から外側に向かって、成形体30、電気回路22、絶縁フィルム21の順に配置するときには、電気回路22が成形体30と絶縁フィルム21の間に挟まれる構成になる。この場合には、例えば、
図22Aに示されているように、接続端子26が回路フィルム20の外側の面に形成され、スルーホール27aによって、配線27と接続端子26とが接続される。なお、フレキシブル配線部25が貫通穴35の壁面35wから離れて設けられている場合には、
図22Bに示されているように、スルーホールを設けずに、壁面35wに対向するように接続端子26を設けてもよい。
この場合も、第1実施形態で説明した射出成形のために、凸部113の側面113aに、フレキシブル配線部25を沿わせる。例えば、
図23A及び
図23Bに示されているように、フレキシブル配線部25の先端25bが第2型120の内面121に達しないように凸部113に回路フィルム20のフレキシブル配線部25をセットする。このとき、フレキシブル配線部25の接続端子26は、側面113aに当接される。接続端子26が側面113aに当接することで、回路フィルム20と成形体30の一体成形時に、溶融材料が接続端子26に接触しない。
上述のような貫通穴35の中にフレキシブル配線部25を配置してフレキシブル配線部25が成形体30の他方主面32の側に突出しないように構成できる点は、フレキシブル配線部55についても同様に可能である。フレキシブル配線部55が貫通穴35の中に配置されて固着される場合も、スルーホールを使って接続端子56が壁面35wとは反対側に配置される。フレキシブル配線部55が両面に配線を有する場合も一方の面の配線をスルーホールで他方の側の接続端子56に配線が接続される。
【0030】
(8-3)
第1実施形態及び第2実施形態では、成形品10の表面に回路フィルム20が露出する場合について説明した。しかし、成形品10の表面に回路フィルム20が露出しない構成とすることもできる。
図24に示されているように成形体30の外面側に、意匠フィルム40を設けてもよい。この変形例の場合、意匠フィルム40が成形品10の外側に設けられている。意匠フィルム40は、例えば、絶縁フィルム21と同じ材質のフィルムと、当該フィルムの上に印刷される意匠層とで構成される。この意匠層は、例えば、図柄層と同様の材料を用いて印刷することができる。意匠フィルム40の表面には微細な凹凸が形成されてもよい。意匠フィルム40と回路フィルム20の間には接着層が設けられることが好ましい。
図24に示されている回路フィルム20は、絶縁フィルム21を挟んで、成形体30の在る方とは反対の側に電気回路22が配置されている。なお、第1実施形態のように意匠フィルム40を備えていない成形品10も、絶縁フィルム21を挟んで、成形体30の在る方とは反対の側に電気回路22が配置されるように構成されてもよい。また、絶縁フィルム21の両側に電気回路22が形成されてもよい。
図24に示されている成形品の製造方法では、例えば、第1実施形態のプレフォーミングの際に、回路フィルム20と意匠フィルム40とが重ねて成形されるとともに、回路フィルム20と意匠フィルム40とが接着されてもよい。そして、回路フィルム20と意匠フィルム40が共に第1型110にセットされる。
あるいは、回路フィルム20と意匠フィルム40が個別にプレフォーミングされてもよい。個別にプレフォーミングされた回路フィルム20と意匠フィルム40が重ねてセットされる。そして、回路フィルム20と成形体30の一体成形時に、回路フィルム20と意匠フィルム40が接着される。
【0031】
(8-4)
第1実施形態の成形品10は、貫通穴35にフレキシブル配線部25が1本だけ配置される場合について説明した。しかし、貫通穴35に配置されるフレキシブル配線部25の個数は1本には限られず、複数であってもよい。例えば、
図25に示されているように、2本のフレキシブル配線部25を貫通穴35に配置することができる。この場合、例えば、貫通穴35を形成するための凸部の対向する両側面に1本ずつフレキシブル配線部25が沿うように配置されてもよく、同じ側面に2本のフレキシブル配線部25が沿うように配置されてもよい。
第2実施形態のフレキシブル配線部55も、第1実施形態のフレキシブル配線部25と同様に、貫通穴35に複数配置されてもよい。また、第3実施形態のフレキシブル配線部25,55も、第1実施形態のフレキシブル配線部25と同様に、貫通穴35に複数配置されてもよい。
(8-5)
第1実施形態では、成形体30とは別体のN字形の文字板を、貫通穴35を覆う立体部品80の例として説明した。しかし、立体部品を貫通穴の蓋いとして用いるだけでなく、
図26及び
図27に示されているように、立体部品85を貫通穴35の中に配置してもよい。
図26には、成形品10に形成されている5つの貫通穴35が示されている。これら5つの貫通穴35のうち4つは、例えば、スピーカのための開口部として用いられる。そして、残りの1つは、例えば、スピーカが起動中であることを光で示すための開口部として用いられる。この場合の光を導くために、貫通穴35の中に、導光部材である立体部品85が配置されている。導光部材である立体部品85は、成形体30に囲まれた成形品10の内部空間ISに向かって延びている。電気回路22は、例えば、アンテナに用いられる。電気回路22の接続のためのフレキシブル配線部25が、立体部品85の配置されている貫通穴35を通過して、成形品10の内部空間ISまで延びている。
第2実施形態及び第3実施形態の成形品10についても、貫通穴35に立体部品を配置することができる。
【0032】
(8-6)
第1実施形態では、フレキシブル配線部25の形成方法として、配線27の周囲の絶縁フィルム21を打ち抜いて、配線27の周囲の絶縁フィルム21を取り除く場合を示している。しかし、例えば、
図28に示されているように、配線27の周囲の切断線20bによって、配線27の周囲の絶縁フィルム21を切り離すことで、フレキシブル配線部25を形成してもよい。
(8-7)
第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態では、電気回路22がアンテナである場合を例に挙げて説明した。しかし、電気回路22は、アンテナに限られるものではない。アンテナ以外の電気回路22には、例えば、タッチセンサなどのセンサ、ヒーター、液晶ディスプレイなどの表示装置、メンブレンスイッチなどの入力装置がある。
また、電気デバイス90は、アンテナを使って送受信する機能を有するものに限られない。例えば、センサに接続される検出装置、ヒーターの駆動装置、表示装置の駆動装置、入力装置から入力される信号の受信装置などがある。
(8-8)
第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態では、貫通穴35の壁面35wに、フレキシブル配線部25,55を固着する場合について説明した。しかし、フレキシブル配線部25,55は、貫通穴35の壁面35wに固着しないように設けられてもよい。言い換えると、フレキシブル配線部25,55は、貫通穴35の壁面35wに固定されず、自由に離れられるように構成されてもよいということである。
フレキシブル配線部25,55を貫通穴35の壁面35wに固定しないように設ける場合には、例えば、フレキシブル配線部25,55のうちの貫通穴35の中にある部分に接着剤を設けずに、フレキシブル配線部25,55と壁面35wが接着されないようにして一体成形をすればよい。例えば、フレキシブル配線部25,55と壁面35wとの間に離型フィルムを配置して一体成形することで、フレキシブル配線部25,55と壁面35wとを分離できるように構成してもよい。
【0033】
(9)特徴
(9-1)
第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の成形品10は、成形体30の一方主面31に回路フィルム20がある。成形体30には、一方主面31から他方主面32に向かって貫通穴35を通るフレキシブル配線部25,55がある。フレキシブル配線部25,55の接続端子26,56に電気デバイス90を接続すれば、成形体30の一方主面31の側にある回路フィルム20と他方主面32の側にある電気デバイス90とを、貫通穴35を通してフレキシブル配線部25,55により接続することができる。貫通穴35を通ってフレキシブル配線部25の取り回しができることで、フレキシブル配線部25,55が成形体30と干渉したり、フレキシブル配線部25,55が折れ曲がるような取り回しになったりして、配線27が破損するのを防止することができる。
(9-2)
第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の成形品10は、貫通穴35の中に配置されている、成形体30とは別体の立体部品85(
図26参照)を備える、ように構成されてもよい。このように構成された成形品10は、貫通穴35を立体部品85とフレキシブル配線部25,55で共用するので、立体部品85のために専用の穴を別に設ける場合に比べて、成形品10の強度低下が抑制される。
【0034】
(9-3)
第1実施形態及び第2実施形態の成形品10は、貫通穴35を覆う、成形体30とは別体の立体部品80を備える、ように構成されている。このように構成された成形品10は、立体部品80で貫通穴35が覆い隠されて外観の意匠性が向上する。また、立体部品80で貫通穴35が塞がれて、貫通穴35を通して例えば埃、水分などの異物が成形体30の他方主面32の側に侵入するのを防ぐことができる。
(9-4)
第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の成形品10は、フレキシブル配線部25,55が貫通穴35の壁面35wに固着している。このように構成された成形品10は、フレキシブル配線部25,55が貫通穴35の壁面35wに固着していない場合に比べて、フレキシブル配線部25,55の位置の変化が抑制される。その結果、例えば電気デバイス90のような外部デバイスは、フレキシブル配線部25,55の接続端子26,56に容易に接続できる。
(9-5)
上述の電気製品5は、筐体の外部に向いた成形品10の一方主面31から、成形品10の貫通穴35を通して筐体の内部の電気デバイス90と電気回路22とをフレキシブル配線部25,55により接続することができる。第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態では、の眼鏡1のツル2とモダン3とヒンジ4からなる成形品10自身が筐体である。このような電気製品5では、フレキシブル配線部25,55の取り回しによってフレキシブル配線部25,55が筐体と干渉したり、フレキシブル配線部25,55が折れ曲がったりする不具合を防止することができる。なお、成形品10は、他の部材と一体になって電気製品を構成してもよい。また、成形品10が筐体の部品であってもよい。
【0035】
(9-6)
第1実施形態及び第2実施形態の成形品10の製造方法については、フレキシブル配線部25,55の接続端子26,56に電気デバイス90を接続する場合を考える。このような場合、成形品10の貫通穴35の一方にある回路フィルム20と貫通穴35の他方にある電気デバイス90とを接続するフレキシブル配線部25,55を貫通穴35に配置することができる。また、回路フィルム20と成形体30の一体成形のときに、フレキシブル配線部25,55の接続端子26,56に溶融材料が接触しないことから、接続端子26,56での接続不良を原因とする回路フィルム20と電気デバイス90との接続不良を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0036】
5 電気製品
10 成形品
20 回路フィルム
21 絶縁フィルム
22 電気回路
25,55 フレキシブル配線部
26,56 接続端子
27 配線
30 成形体
35 貫通穴
35w 壁面
40 意匠フィルム
80,85 立体部品