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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079033
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/41 20060101AFI20220519BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20220519BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220519BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
H01L29/44 Y
H01L29/80 H
H01L29/80 F
H01L21/28 301R
H01L21/28 301B
H01L21/28 E
H01L21/28 B
H01L21/285 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189965
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 幸則
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB02
4M104BB09
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB17
4M104BB18
4M104BB36
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD34
4M104DD68
4M104DD86
4M104DD89
4M104EE06
4M104EE16
4M104EE17
4M104FF10
4M104FF13
4M104GG12
5F102GB01
5F102GC01
5F102GJ02
5F102GK04
5F102GK05
5F102GK06
5F102GL04
5F102GL05
5F102GM04
5F102GM05
5F102GM06
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR12
5F102GS01
5F102GT01
5F102GT03
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC19
(57)【要約】
【課題】フィールドプレートへの異物の付着および変形を抑制することが可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体層と、前記半導体層の上面に設けられたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体層の上面に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の上に設けられ、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートと、を具備し、前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、前記第1金属層は金を含み、前記第2金属層はタンタル、タングステン、モリブデン、ニオブおよびチタンのうち少なくとも1つを含む半導体装置。
【選択図】 図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層の上面に設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記半導体層の上面に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極の上に設けられた第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の上に設けられ、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートと、を具備し、
前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、
前記第1金属層は金を含み、
前記第2金属層はタンタル、タングステン、モリブデン、ニオブおよびチタンのうち少なくとも1つを含む半導体装置。
【請求項2】
半導体層と、
前記半導体層の上面に設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記半導体層の上面に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極の上に設けられた第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の上に設けられ、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートと、を具備し、
前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、
前記第2金属層のモース硬度は前記第1金属層のモース硬度よりも高い、半導体装置。
【請求項3】
前記フィールドプレートの端部は前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置する請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2金属層は酸化物を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2金属層は少なくとも表面に酸化膜を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2金属層の厚さは5nm以上、30nm以下である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1絶縁膜および前記フィールドプレートの上に設けられ、前記フィールドプレートに重なる位置に第1開口部を有し、前記ソース電極に重なる位置に第2開口部を有する第2絶縁膜と、
前記第1開口部に設けられ、前記フィールドプレートの第1金属層に接触する第1ビア配線と、
前記第2開口部に設けられ、前記ソース電極に電気的に接続される第2ビア配線と、
前記第1ビア配線および前記第2ビア配線に電気的に接続される配線と、を具備する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
ゲート電極がソース電極とドレイン電極との間に位置するように、半導体層の上面に前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する工程と、
前記ゲート電極の上に第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜の上に、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートを形成する工程と、を有し、
前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、
前記第1金属層は金を含み、
前記第2金属層はタンタル、タングステン、モリブデン、ニオブおよびチタンのうち少なくとも1つを含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記フィールドプレートを形成する工程は、前記第1絶縁膜のうち前記ゲート電極の上に重なる部分が露出するように、レジストマスクを前記第1絶縁膜の上に形成する工程と、前記レジストマスクの上面と前記露出する前記第1絶縁膜の上面とに前記第1金属層および前記第2金属層を形成する工程と、前記レジストマスクと前記レジストマスクの上面に設けられた前記第1金属層および前記第2金属層とをリフトオフによって除去する工程と、を含む請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記フィールドプレートを形成する工程は、真空蒸着法により前記第1金属層および前記第2金属層を連続して形成する工程を含む請求項8または請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1絶縁膜および前記フィールドプレートの上に第2絶縁膜を形成する工程と、
エッチングにより、前記第2絶縁膜のうち前記フィールドプレートに重なる位置に第1開口部を形成し、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜のうち前記ソース電極に重なる位置に第2開口部を形成する工程と、
エッチングにより、前記第2金属層のうち前記第1開口部から露出する部分を除去する工程と、
前記第1開口部に前記フィールドプレートの第1金属層に接触する第1ビア配線を形成する工程と、
前記第2開口部に前記ソース電極に電気的に接続される第2ビア配線を形成する工程と、
前記第1ビア配線および前記第2ビア配線に電気的に接続される配線を形成する工程と、を有する請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)では、ゲート電極の上方にフィールドプレートを設けることがある(例えば特許文献1)。フィールドプレートにより電界集中を緩和して耐圧を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-199241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィールドプレートは金(Au)で形成することがある。Auは他の金属に比べて柔らかいため、フィールドプレートに例えば金属などの異物が付着し、また変形などが発生する恐れがある。そこで、フィールドプレートへの異物の付着および変形を抑制することが可能な半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上面に設けられたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体層の上面に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の上に設けられ、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートと、を具備し、前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、前記第1金属層は金を含み、前記第2金属層はタンタル、タングステン、モリブデン、ニオブおよびチタンのうち少なくとも1つを含む。
【0006】
本開示に係る半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の上面に設けられたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体層の上面に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の上に設けられ、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートと、を具備し、前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、前記第2金属層のモース硬度は前記第1金属層のモース硬度よりも高い。
【0007】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、ゲート電極がソース電極とドレイン電極との間に位置するように、半導体層の上面に前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する工程と、前記ゲート電極の上に第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜の上に、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートを形成する工程と、を有し、前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、前記第1金属層は金を含み、前記第2金属層はタンタル、タングステン、モリブデン、ニオブおよびチタンのうち少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によればフィールドプレートへの異物の付着および変形を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは実施形態に係る半導体装置を例示する上面図である。
図1B図1B図1Aの線A-Aに沿った断面図である。
図2A図2Aは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図2B図2Bは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図2C図2Cは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3A図3Aは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3B図3Bは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3C図3Cは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図4A図4Aは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図4B図4Bは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図4C図4Cは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図5A図5Aは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図5B図5Bは半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図6図6は変形例1に係る半導体装置を例示する断面図である。
図7図7は変形例2に係る半導体装置を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
本開示の一形態は、(1)半導体層と、前記半導体層の上面に設けられたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体層の上面に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の上に設けられ、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートと、を具備し、前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、前記第1金属層は金を含み、前記第2金属層はタンタル、タングステン、モリブデン、ニオブおよびチタンのうち少なくとも1つを含む半導体装置である。第2金属層は第1金属層よりも硬いため、フィールドプレートへの異物の付着および変形を抑制することができる。
(2)半導体層と、前記半導体層の上面に設けられたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体層の上面に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の上に設けられ、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートと、を具備し、前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、前記第2金属層のモース硬度は前記第1金属層のモース硬度よりも高い、半導体装置である。第2金属層は第1金属層よりも硬いため、フィールドプレートへの異物の付着および変形を抑制することができる。
(3)前記フィールドプレートの端部は前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置してもよい。高電圧が印加されるドレイン電極の近くにフィールドプレートを設けることで、効果的に電界集中を緩和することができる。
(4)前記第2金属層は酸化物を含んでもよい。フィールドプレートへの金属片などの圧着を効果的に抑制することができる。
(5)前記第2金属層は少なくとも表面に酸化膜を有してもよい。フィールドプレートへの金属片などの圧着を効果的に抑制することができる。
(6)前記第2金属層の厚さは5nm以上、30nm以下でもよい。厚さが5nm以上であることにより、第2金属層に欠陥が生じにくくなる。厚さが30nm以下であることにより、製造工程における温度上昇が抑制される。
(7)前記第1絶縁膜および前記フィールドプレートの上に設けられ、前記フィールドプレートに重なる位置に第1開口部を有し、前記ソース電極に重なる位置に第2開口部を有する第2絶縁膜と、前記第1開口部に設けられ、前記フィールドプレートの第1金属層に接触する第1ビア配線と、前記第2開口部に設けられ、前記ソース電極に電気的に接続される第2ビア配線と、前記第1ビア配線および前記第2ビア配線に電気的に接続される配線と、を具備してもよい。第1ビア配線が第1金属層に接触するため、第1ビア配線とフィールドプレートとの接続の信頼性が向上する。配線、第1ビア配線および第2ビア配線によりソース電極とフィールドプレートとが接続され、同電位になる。ソース電極と同電位のフィールドプレートにより、効果的に電界の緩和が可能である。
(8)ゲート電極がソース電極とドレイン電極との間に位置するように、半導体層の上面に前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する工程と、前記ゲート電極の上に第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜の上に、少なくとも一部が前記ゲート電極の上に重なるフィールドプレートを形成する工程と、を有し、前記フィールドプレートは第1金属層と、前記第1金属層の上面に設けられた第2金属層とを有し、前記第1金属層は金を含み、前記第2金属層はタンタル、タングステン、モリブデン、ニオブおよびチタンのうち少なくとも1つを含む半導体装置の製造方法である。第2金属層は第1金属層よりも硬いため、フィールドプレートへの異物の付着および変形を抑制することができる。
(9)前記フィールドプレートを形成する工程は、前記第1絶縁膜のうち前記ゲート電極の上に重なる部分が露出するように、レジストマスクを前記第1絶縁膜の上に形成する工程と、前記レジストマスクの上面と前記露出する前記第1絶縁膜の上面とに前記第1金属層および前記第2金属層を形成する工程と、前記レジストマスクと前記レジストマスクの上面に設けられた前記第1金属層および前記第2金属層とをリフトオフによって除去する工程と、を含んでもよい。リフトオフにおいて金属片が飛散することがある。第2金属層によりフィールドプレートへの金属片の圧着を抑制し、金属片が衝突することによる変形も抑制することができる。
(10)前記フィールドプレートを形成する工程は、真空蒸着法により前記第1金属層および前記第2金属層を連続して形成する工程を含んでもよい。真空蒸着法で形成した第2金属層を大気に暴露すると、酸化される。第2金属層に酸化膜が形成されることで、金属片などの圧着が効果的に抑制される。
(11)前記第1絶縁膜および前記フィールドプレートの上に第2絶縁膜を形成する工程と、エッチングにより、前記第2絶縁膜のうち前記フィールドプレートに重なる位置に第1開口部を形成し、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜のうち前記ソース電極に重なる位置に第2開口部を形成する工程と、エッチングにより、前記第2金属層のうち前記第1開口部から露出する部分を除去する工程と、前記第1開口部に前記フィールドプレートの第1金属層に接触する第1ビア配線を形成する工程と、前記第2開口部に前記ソース電極に電気的に接続される第2ビア配線を形成する工程と、前記第1ビア配線および前記第2ビア配線に電気的に接続される配線を形成する工程と、を有してもよい。第1ビア配線が第1金属層に接触するため、第1ビア配線とフィールドプレートとの接続の信頼性が向上する。配線、第1ビア配線および第2ビア配線によりソース電極とフィールドプレートとが接続され、同電位になる。ソース電極と同電位のフィールドプレートにより、効果的に電界の緩和が可能である。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
(半導体装置)
図1Aは実施形態に係る半導体装置100を例示する上面図である。図1B図1Aの線A-Aに沿った断面図である。図1Aおよび図1Bに示す半導体装置100はHEMTである。
【0014】
図1Bに示すように、半導体装置100は、基板10、バリア層12、チャネル層14、電子供給層16、キャップ層18、ソース電極20、ドレイン電極22、ゲート電極24、およびフィールドプレート30を備える。
【0015】
基板10の上にバリア層12、チャネル層14、電子供給層16、およびキャップ層18が順に積層されている。基板10は例えば炭化シリコン(SiC)で形成されている。バリア層12は例えば窒化アルミニウム(AlN)で形成されている。チャネル層14およびキャップ層18は例えば窒化ガリウム(GaN)で形成されている。電子供給層16は例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)で形成されており、チャネル層14よりも大きなバンドギャップを有する。これらの半導体層はGaN系半導体以外に、ガリウム砒素(GaAs)系の半導体で形成されてもよい。
【0016】
キャップ層18の上面にソース電極20、ドレイン電極22およびゲート電極24が設けられている。ゲート電極24はソース電極20とドレイン電極22との間に設けられている。これら3つの電極は互いに離間する。ソース電極20およびドレイン電極22は、例えば下から順にチタン/アルミニウムの積層体(Ti/Al)、またはタンタル/アルミニウムの積層体(Ta/Al)などの金属で形成されたオーミック電極である。ゲート電極24は、例えば下から順にTi/金の積層体(Ti/Au)などの金属で形成されている。
【0017】
絶縁膜40(第1絶縁膜)は、キャップ層18の上面に設けられ、ソース電極20、ドレイン電極22およびゲート電極24それぞれの側面および上面を覆う。絶縁膜42(第2絶縁膜)は絶縁膜40の上面に設けられ、ソース電極20、ドレイン電極22およびゲート電極24を覆う。絶縁膜40は例えば窒化シリコン(SiN)で形成された層間絶縁膜である。絶縁膜42は例えば酸化シリコン(SiO)で形成された層間絶縁膜である。絶縁膜40はSiO膜でもよいし、絶縁膜42はSiN膜でもよい。絶縁膜40および42それぞれの厚さは例えば100nm以上、500nm以下である。
【0018】
フィールドプレート30は、絶縁膜40の上面に設けられ、絶縁膜40と絶縁膜42との間に位置する。フィールドプレート30は、ソース電極20、ドレイン電極22およびゲート電極24から離間し、ゲート電極24の直上からゲート電極24の外側まで延伸する。フィールドプレート30の一端はゲート電極24とドレイン電極22との間に位置し、他端はゲート電極24の上に位置する。
【0019】
フィールドプレート30は、絶縁膜40側から順に積層された金属層32(第1金属層)および金属層34(第2金属層)を有する。金属層32は例えば絶縁膜40側から順に積層されたTi層とAu層とを有する。Ti層の厚さは例えば2nm~10nmであり、密着層として機能する。Au層の厚さは例えば100nm~500nmである。金属層32の主成分はAuである。主成分とは原子パーセント濃度で50%以上であることを意味する。
【0020】
金属層34は例えばタンタル(Ta)で形成され、金属層32のAu層の上面に接触し、金属層32よりも高いモース硬度を有する。例えば、Auのモース硬度は、2.5であり、Taのモース硬度は、6.5である。金属層34は表面に酸化膜36を有する。酸化膜36は、金属層34を形成する金属の酸化物であり、例えば酸化タンタルなどの膜である。酸化膜36を含めた金属層34の厚さは金属層32の厚さより小さく、例えば5nm~30nmである。金属層34はTa以外にタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)で形成されてもよく、これらの金属のうち少なくとも1つを含む。金属層34の主成分はTa、W、Mo、NbおよびTiのうち少なくとも1つである。例えば、Moのモース硬度は、5.5、Nbのモース硬度は、6.0、Tiのモース硬度は、6.0である、また、酸化膜36は金属層34が酸化されることで形成される層であり、上記の金属の酸化物、すなわち酸化タンタル(TaO)などで形成される。
【0021】
絶縁膜40および42に2つの開口部44および45が設けられている。絶縁膜42には開口部46(第1開口部)が設けられている。開口部44(第2開口部)はソース電極20の上に位置する。開口部45はドレイン電極22の上に位置する。開口部46はフィールドプレート30の上に位置する。3つの開口部はそれぞれ層の積層方向に延伸する。
【0022】
ビア配線50は開口部44に設けられ、ソース電極20に電気的に接続されている。配線55は絶縁膜42の上面に設けられ、ビア配線50を通じてソース電極20に接続され、ソース配線として機能する。
【0023】
ビア配線52は開口部45に設けられ、ドレイン電極22に電気的に接続されている。配線54は絶縁膜42の上面に設けられ、ビア配線52を通じてドレイン電極22に接続され、ドレイン配線として機能する。
【0024】
ビア配線53は開口部46に設けられ、フィールドプレート30の金属層32の上面に接触し、フィールドプレート30に電気的に接続されている。配線56は絶縁膜42の上面に設けられ、開口部44と開口部46との間に延伸し、配線55およびビア配線53に電気的に接続されている。ビア配線50および53、配線55および56によってソース電極20とフィールドプレート30とは電気的に接続される。3つのビア配線、配線54~56は例えばAuなどの金属で形成され、かつ不図示のシードメタル層を含む。
【0025】
(製造方法)
半導体装置100の製造方法について説明する。図2Aから図5Bは半導体装置100の製造方法を例示する断面図である。図2Aに示すように、例えば有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって、基板10の上にバリア層12、チャネル層14、電子供給層16、およびキャップ層18を順にエピタキシャル成長する。
【0026】
図2Bに示すように、例えば真空蒸着法などにより、キャップ層18の上面にソース電極20およびドレイン電極22を設け、熱処理によって電極と半導体層との間にオーミック接触を形成する。さらに真空蒸着法を行い、ゲート電極24を設ける。
【0027】
図2Cに示すように、キャップ層18の上にSiNの絶縁膜40を形成する。絶縁膜40はソース電極20、ドレイン電極22およびゲート電極24を覆う。絶縁膜40の製膜は、例えばプラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長法)、常圧CVD法、またはALD法(Atomic Layer Deposition、原子層堆積)などで行う。
【0028】
図3Aに示すように、絶縁膜40の上面に例えば厚さ0.5μm~2μmのフォトレジスト60を塗布し、フォトリソグラフィによってパターニングを行う。フォトレジスト60のうちゲート電極24の一部と重なる位置に開口部60aを形成する。開口部60aからは絶縁膜40の上面のうち一部が露出する。
【0029】
図3Bに示すように、例えば真空蒸着法によりAuの金属層32およびTaなどの金属層34を順に形成する。金属層32の形成と金属層34の形成とを連続して行うことで、金属層34は金属層32の表面に設けられる。絶縁膜40の上面にフィールドプレート30が形成され、フォトレジスト60の上面にも金属層32および34が設けられる。基板10を蒸着装置から取り出し大気中に暴露することで、金属層34は酸化される。
【0030】
図3Cに示すように、リフトオフによってフォトレジスト60、およびフォトレジスト60上の金属層32および34を除去する。具体的には、例えばN-メチルピロリドン(NMP:N-methylpyrolidione)など有機溶剤を含む薬液を、ノズル62からフォトレジスト60に向けて噴射し、フォトレジスト60をキャップ層18から取り除く。
【0031】
リフトオフの工程において、フォトレジスト60上の金属層32および34が例えば長さ1μm以下などの金属片64となり、周囲に飛び散る。例えばフィールドプレートが金属層34を有さない場合、金属層32は露出する。金属層32はAuの層であり、柔らかく、かつ表面が酸化しにくい。金属層32に金属片64が圧着することがあり、また金属片64の衝突により金属層32が変形することもある。金属片64の圧着および変形などがフィールドプレート30に発生すると、絶縁膜42に変形およびクラックなどが発生する。フィールドプレート30と他の電極とのショートなどが発生し、耐圧が低下する恐れがある。
【0032】
図3Cに示すように、本実施形態のフィールドプレート30は表面に金属層34を有する。金属層34はTaなどで形成され、Auの金属層32よりも高いモース硬度を有する。また、金属層34は酸化されやすく、表面に酸化膜36を有する。金属層34の硬く、かつ酸化した表面に金属片64は圧着しにくく、金属片64の衝突による変形なども抑制される。
【0033】
図4Aに示すように、リフトオフによってフォトレジスト60は除去され、金属片64が付着していないフィールドプレート30が残る。
【0034】
図4Bに示すように、例えばプラズマCVD法などにより、絶縁膜40の上面に絶縁膜42を形成する。
【0035】
図4Cに示すように、絶縁膜42の上面に厚さ0.5μm~2μmのフォトレジスト65を塗布し、パターニングを行う。パターニングによりフォトレジスト65に3つの開口部を形成する。レジストパターニングの後、例えば六フッ化硫黄(SF)、四フッ化炭素(CF)およびトリフルオロメタン(CHF)などのフッ素系のガス、または塩素(Cl)、四塩化ケイ素(SiCl)および三塩化ホウ素(BCl)など塩素系のガスを用いたドライエッチングを行う。
【0036】
絶縁膜40および42をドライエッチングすることにより、開口部44および45を形成する。開口部44からソース電極20が露出する。開口部45からドレイン電極22が露出する。絶縁膜42をドライエッチングすることにより、開口部46を形成する。開口部46を形成する際に、金属層34のうち開口部46に重なる部分もエッチングする。開口部46においてフィールドプレート30の金属層32が露出する。エッチング後、フォトレジスト65は除去する。
【0037】
図5Aに示すように、絶縁膜42の表面にシードメタル66を形成する。シードメタル66は絶縁膜42の上面、開口部44~46の内壁および底面を覆う。シードメタル66は、順に積層されたTi層とAu層とを含む。Ti層は密着層として機能する。
【0038】
図5Bに示すように、シードメタル66に通電して電界メッキ処理を行い、ビア配線50、52および53、配線54~56を形成する。メッキ処理の後、不要なシードメタル66は削除する。シードメタル66の一部はビア配線50、52および53、配線54および56の下に残る。以上の工程で半導体装置100が製造される。
【0039】
本実施形態によれば、ゲート電極24と重なる位置であって絶縁膜40の上面にフィールドプレート30が設けられている。フィールドプレート30は金属層32および34を有する。金属層34は例えばTaの層であり、Auの金属層32より硬い層である。より詳細には、金属層34のモース硬度は金属層32のモース硬度よりも高い。金属層34を有することで、フィールドプレート30への異物の付着を抑制し、異物の衝突によるフィールドプレート30の変形も抑制することができる。絶縁膜42の変形およびクラックなどが抑制され、フィールドプレート30と他の電極とのショートが起こりにくくなる。この結果、半導体装置100の耐圧が向上する。
【0040】
具体的には、図3Cに示したリフトオフの工程において、フォトレジスト60上の金属層32および34が金属片64となって飛び散る。Auの金属層32が露出していると、金属層32に金属片64が圧着する恐れがある。リフトオフ以外に洗浄の工程、搬送の際などに、金属または金属以外の異物が付着する恐れがある。本実施形態によれば、金属層34が金属層32を覆うため、金属片64など異物の付着を抑制し、金属片64の衝突によるフィールドプレート30の変形なども抑制することができる。
【0041】
金属層34はTa、W、Mo、NbおよびTiのうち少なくとも1つを含む。これらの金属を含む金属層34は、Auの金属層32よりも高いモース硬度を有するため、異物の圧着などを効果的に抑制することができる。図4Cに示すドライエッチングにおいてフッ素系のガスを用いると、金属層34のフッ化物が形成される。上記の金属のフッ化物の沸点は300℃以下であり、気化する。ドライエッチングにおいて塩素系のガスを用いると、金属層34の塩化物は気化する。したがってドライエッチングによって金属層34を容易に除去することができる。
【0042】
図1Bに示すように、フィールドプレート30の一端はゲート電極24とドレイン電極22との間に位置する。高電圧が印加されるドレイン電極22の近くに、金属層34を有し、金属片64の圧着などを抑制したフィールドプレート30を配置する。電界集中を効果的に緩和することができる。
【0043】
金属層34は少なくとも表面に酸化膜36を有することが好ましい。酸化されない表面に比べて、酸化膜36には金属片64などが圧着しにくい。Taなど金属層34の材料は酸化されやすい。真空蒸着法で金属層32および金属層34を連続して形成することで、金属層34が金属層32の表面を覆う。表面に露出する金属層34を大気中に暴露することで、酸化膜36が形成される。
【0044】
図6は変形例1に係る半導体装置110を例示する断面図である。金属層34のうち表面だけでなく全体が酸化されている。すなわち、金属層34は、Taなどの酸化物で形成された酸化膜36である。他の構成は図1Bの例と同じである。図1Bおよび図6に示すように、金属層34のうち少なくとも表面が酸化されていればよい。フィールドプレート30への金属片64などの圧着を効果的に抑制することができる。以上のように、金属層34のうち全体が酸化されてもよいし、一部が酸化されてもよい。金属層34のうち例えば半分以上が酸化物でもよいし、90%以上が酸化物でもよい。図1Aのように、金属層34は少なくとも表面に酸化膜36を有することが好ましい。
【0045】
金属層34が薄いと、金属層34が欠陥のある不連続な層になり、金属層32が露出してしまう恐れがある。一方、金属層34が厚いと、真空蒸着法の工程などにおいてフィールドプレート30の温度が上昇し、フォトレジスト60が変形してしまう恐れがある。金属層32を覆い、かつ温度上昇を抑制するため、金属層34の厚さは5nm以上、30nm以下であることが好ましい。厚さの下限は例えば10nm以上または15nm以上でもよい。厚さの上限は例えば40nm以下または50nm以下でもよい。金属層34の厚さとは酸化膜36も含めた厚さである。
【0046】
図7は変形例2に係る半導体装置120を例示する断面図である。金属層34は酸化膜36を有していない。他の構成は図1Bの例と同じである。図7に示すように、金属層34の表面が酸化されていない。金属層34を形成した後、大気に暴露することなく絶縁膜42を形成する。例えば、金属層34を形成した後、窒素雰囲気で保管することで、酸化を抑制しながら絶縁膜42を設けることができる。または、金属層34を大気に暴露させることなく、金属層34の形成の工程と連続して絶縁膜42を形成してもよい。金属層34の表面に酸化膜36を形成することなく金属層34を形成し、さらに金属層34を絶縁膜42で覆うことができる。絶縁膜42を形成した後は、実施形態と同じ工程を行い、半導体装置120を形成することができる。変形例2によれば、フィールドプレート30への金属片64などの圧着を効果的に抑制することができる。
【0047】
図4Cのエッチングによって、フィールドプレート30の金属層34の一部は取り除かれ、金属層34とともに酸化膜36が除去され、金属層32が露出する。図1Bに示すようにビア配線53が金属層32に接触することで、フィールドプレート30との接続の強度が向上する。フィールドプレート30のエッチングした部分に金属層34が例えば数nm程度残り、金属層34にビア配線53が接続してもよい。ビア配線53との安定した接続のため、エッチングによって少なくとも酸化膜36は除去することが好ましい。ソース電極20とフィールドプレート30とは、ビア配線50および53、配線56を通じて電気的に接続される。フィールドプレート30とソース電極20とを同電位とすることができる。ソース電極20と同電位のフィールドプレート30により、効果的に電界の緩和が可能である。
【0048】
ビア配線50、52および53、配線56は例えばAuのメッキ層である。一回のメッキ処理により3つのビア配線および配線56を形成できるため、工程が簡略化される。ビア配線50および53と配線56とは、同一のAu層であるため、接続の信頼性が高くなる。
【0049】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 基板
12 バリア層
14 チャネル層
16 電子供給層
18 キャップ層
20 ソース電極
22 ドレイン電極
24 ゲート電極
30 フィールドプレート
32、34 金属層
36 酸化膜
40、42 絶縁膜
44、45、46、60a 開口部
50、52、53 ビア配線
54、55、56 配線
60、65 フォトレジスト
62 ノズル
64 金属片
66 シードメタル
100、110、120 半導体装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7