(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079056
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】モータ軸構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20220519BHJP
H02K 15/14 20060101ALI20220519BHJP
H02K 1/27 20220101ALI20220519BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K15/14 A
H02K1/27 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190004
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 優佑
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE13
5H601EE18
5H601GA23
5H601GA24
5H601GC12
5H601JJ05
5H601JJ10
5H601KK03
5H601KK13
5H601KK14
5H601KK30
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615PP24
5H615PP25
5H615SS09
5H615SS10
5H615SS19
5H622CA10
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】本発明は、モータ軸を削り出す時の軸材を小径とし、削り出した削りゴミの量を減らすことである。
【解決手段】本発明によるモータ軸構造は、モータ軸(1)のロータコア受部(2)に設けられた輪状積層ロータコア(6)と、前記輪状積層ロータコア(6)内に設けられたマグネット(5)と、前記モータ軸(1)に同軸状に挿入して設けられ、前記ロータコア受部(2)の段差部(21)に突き当てられた突き当て部(7C)を有する端板(7)と、を備え、前記端板(7)の一端面(7B)は、前記マグネット(5)の前記輪状積層ロータコア(6)からの抜け止めの機能を有するようにした構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸(1)のロータコア受部(2)に設けられた輪状積層ロータコア(6)と、前記輪状積層ロータコア(6)内に設けられたマグネット(5)と、前記モータ軸(1)に同軸状に挿入して設けられ、前記ロータコア受部(2)の段差部(21)に突き当てられた突き当て部(7C)を有する端板(7)と、を備え、
前記端板(7)の一端面(7B)は、前記マグネット(5)の前記輪状積層ロータコア(6)からの抜け止めの機能を有するように構成されていることを特徴とするモータ軸構造。
【請求項2】
前記モータ軸(1)の前記ロータコア受部(2)の両側位置に配設された第1ベアリング(10)及び第2ベアリング(11)と、前記端板(7)の他端面(7A)に設けられた筒部(20)と、を備え、
前記筒部(20)は、前記第1ベアリング(10)の内輪(10a)のみに当接し、かつ、前記第1ベアリング(10)の軸方向の位置決めの機能を有するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のモータ軸構造。
【請求項3】
前記端板(7)の前記段差部(21)に対する前記突き当て部(7C)の角部(10A)に隅取り部(10B)を有することにより、前記モータ軸(11)の前記第1軸受部(8)及びロータコア受部(2)の逃げR部の形成が不要である構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載のモータ軸構造。
【請求項4】
前記モータ軸(1)は、無垢の軸材(RA)からの削り出しにより形成され、前記端板(7)は前記軸材(RA)からの削り出しとは関係のない別の部材からの1個の部品として形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のモータ軸構造。
【請求項5】
前記軸材(RA)の外径は、前記ロータコア受部(2)の外径と同一であることを特徴とする請求項4記載のモータ軸構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ軸構造に関し、特に、従来のモータ軸と一体構造の鍔部に代って、独立した端板を用いることにより、輪状積層ロータコアの突き当て又はマグネットの抜け止め、さらには、第1ベアリングの軸方向の位置決めを行うことができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のモータ軸構造としては、特許文献1の
図6に示されるように、ロータコアの周縁に複数の孔部を設け、この孔部を介して一対の端板を、ロータコアを締結するために設ける構成であった。
また、特許文献等を開示していないが、本出願人が製作販売していた
図4で示される構成を挙げることができる。
すなわち、
図4において、符号1で示されるものは、ロータコア受部2の両側において互いに異なる方向に延設された第1、第2軸部3、4を有するモータ軸であり、前記ロータコア受部2の外周2Aには、マグネット5を有する輪状積層ロータコア6が、嵌合式に設けられている。
【0003】
前記モータ軸1上の前記輪状積層ロータコア6の隣には、円盤状をなす鍔部7が設けられ、この鍔部7は前記モータ軸1を切削する時に、無垢の軸材RAと一体に削り出しによって形成されている。
【0004】
前記ロータコア受部2の両側位置には、第1、第2軸受部8、9がモータ軸1と一体に形成され、前記各軸受部8、9には、第1、第2ベアリング10、11が設けられている。
図5は、
図4の要部の拡大断面図であり、前記ロータコア受部2の端部には第2逃げR部2Bが形成され、前記第1軸受部8の端部にも第1逃げR部8Bが形成されている。
【0005】
図6は、
図4の従来の前記モータ軸1を無垢の軸材RAから削り出す状態を示しており、この円柱状の軸材RAの外径と前記鍔部7の外径とは一致し、
図6でハッチング領域が削り代R1で、第1、第2軸部3、4、第1、第2軸受部8、9及びロータコア受部2の各外径まで削り込むことにより、全切削によるモータ軸1が出来上がるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のモータ軸構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1の
図6の構成の場合、一対の端板と複数の接続用のロッドを必要とするため、構造が複雑化していた。
また、
図4から
図6で示される従来構成の場合、ロータコア受部2と鍔部すなわち端板7とが一体の切削による削り出しであるため、無垢の軸材RAの外径と鍔部7の外径とが一致している関係上、鍔部7以外の各軸部3、4、ロータコア受部2及び各軸受部8、9に対しては、削り代R1が大きく、切削による廃材の量が、量産と共に増大し、多大の損失となっていた。
また、第1ベアリング10の設置による第1逃げR部8B及び輪状積層ロータコア6の設置による第2逃げR部2Bも形成しなくてはならず、コストアップの要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるモータ構造は、モータ軸のロータコア受部に設けられた輪状積層ロータコアと、前記輪状積層ロータコア内に設けられたマグネットと、前記モータ軸に同軸状に挿入して設けられ、前記ロータコア受部の段差部に突き当てられた突き当て部を有する端板と、を備え、前記端板の一端面は、前記マグネットの前記輪状積層ロータコアからの抜け止めの機能を有するようにした構成であり、また、前記モータ軸の前記ロータコア受部の両側位置に配設された第1軸受及び第2軸受と、前記端板の他端面に設けられた筒部と、を備え、前記筒部は、前記第1ベアリングの内輪のみに接触し、かつ、前記第1ベアリングの軸方向の位置決めの機能を有するようにした構成であり、また、前記端板の前記段差部に対する前記突き当て部の角部に隅取り部を有することにより、前記モータ軸の前記第1軸受部及びロータコア受部の逃げR部の形成が不要である構成であり、また、前記モータ軸は、無垢の軸材からの削り出しにより形成され、前記端板は前記軸材からの削り出しとは関係のない別の部材からの1個の部品として形成されている構成であり、また、前記軸材の外径は、前記ロータコア受部の外径と同一である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるモータ軸構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、モータ軸のロータコア受部に設けられた輪状積層ロータコアと、前記輪状積層ロータコア内に設けられたマグネットと、前記モータ軸に同軸状に挿入して設けられ、前記ロータコア受部の段差部に突き当てられた突き当て部を有する端板と、を備え、前記端板の一端面は、前記マグネットの前記輪状積層ロータコアからの抜け止めの機能を有するように構成されていることにより、モータ軸に積層ロータコアの位置決めをするための鍔を別に設けたり、ベアリングの位置決めをするための段差を設けたりする必要がなく、モータ軸の加工・寸法管理が容易となる。
また、組立設備での軸方向の位置決め管理が不要となり、組立の歩留まりも向上する。
また、前記モータ軸の前記ロータコア受部の両側位置に配設された第1軸受及び第2軸受と、前記端板の他端面に設けられた筒部と、を備え、前記筒部は、前記第1ベアリングの内輪のみに接触し、かつ、前記第1ベアリングの軸方向の位置決めの機能を有するように構成されていることにより、ベアリングのガタをなくし、何らの後作業をすることなく、モータ軸を軸心位置に位置決めすることができる。
また、前記端板の前記段差部に対する前記突き当て部の角部に隅取り部を有することにより、前記モータ軸の第1軸受部及びロータコア受部の逃げR部の形成が不要である構成とすることができる。
また、前記モータ軸は、無垢の軸材からの削り出しにより形成され、前記端板は前記軸材からの削り出しとは関係のない別の部材からの1個の部品として形成されていることにより、軸材の外径を従来の外径よりも大幅に径小化でき、削りかすの量も大幅に少なくすることができる。
また、前記軸材の外径は、前記ロータコア受部の外径と同一であることにより、軸材とロータコア受部の各外周面は面一であり、前項と同様に軸材の外径を径小化でき、コストダウンに大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態によるモータ軸構造の全体構成を示す断面図である。
【
図3】
図1のモータ軸の切削前の軸材の断面図である。
【
図4】従来のモータ軸構造の全体構成を示す断面図である。
【
図6】従来のモータ軸構造の切削前の軸材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるモータ軸構造は、従来のモータ軸と一体構造の鍔部に代って、独立した端板を用いることにより、軸材の外径を従来よりも小径化し、輪状積層ロータコアの突き当て又はマグネットの抜け止め、さらには、第1ベアリングの軸方向の位置決めを行うことができるようにすることである。
【実施例0012】
以下、図面と共に本発明によるモータ軸構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において符号1で示されるものは、ロータコア受部2の両側において互いに異なる方向に延設された第1、第2軸部3、4を有するモータ軸であり、前記ロータコア受部2の外周2Aには、マグネット5を有する輪状積層ロータコア6が嵌合式に設けられている。
【0013】
前記モータ軸1上の前記輪状積層ロータコア6の隣には、円盤状をなす端板7が設けられ、この端板7は、従来のように切削によって無垢の軸材RAから削り出すこととは関係なく、全く別の部材から1個の部品として形成されている。
【0014】
前記モータ軸1のロータコア受部2の両側位置には、第1、第2軸受部8、9がモータ軸1と一体に形成され、前記各軸受部8、9には、第1、第2ベアリング10、11が設けられている。
【0015】
図2は、
図1の要部を示す拡大断面図であり、前記ロータコア受部2の外周2Aには、マグネット5を有する輪状積層ロータコア6が嵌合等にて設けられ、前記第1軸受部8の外周8Aには、前記端板7が嵌合式に設けられている。
前記端板7の一端面7Bからなる突き当て部7Cは、前記マグネット5と輪状積層ロータコア6の端面に当接するため、前記マグネット5は前記輪状積層ロータコア6からの飛び出し及び抜け出ることは防止され、いわゆる抜け止めの機能が得られ、前記輪状積層ロータコア6の飛び出しも前述と同様に防止されている。
【0016】
前記端板7の中心に一体に形成された筒部20は、
図1、
図2で示されるように、前記第1軸受部8の外周8Aに嵌合され、この筒部7の角部10Aには隅取り部10Bが形成されている。
前記筒部20の先端面20Aは、前記第1ベアリング10の内輪10aのみに当接していることにより、前記第1ベアリング10の位置決めが達成されている。
【0017】
前記端板7はモータ軸1に同軸に配置され、形状は円筒、フランジ付など大きさに応じて複数の形状がある。
前記端板7はモータ軸1の段差部21に突き当て挿入されるが、接着、圧入、単なる挿入、固定の有無は問わない。
前記端板7の一端は輪状積層ロータコア6の突き当て、及び、マグネット5の抜け止め用蓋、すなわち、防止用として機能するが、両方もしくはどちらか一方のみでも問わない。
この端板7の突き当て部7Cの隅取り部10Bを大きくとることで、従来の
図4の第1、第2逃げR部8B、2B等の加工が不要となり、加工時間の短縮、コスト削減が可能となる。
前記端板7の材質は非磁性、磁性体問わない。
【0018】
図3は、本発明におけるモータ軸1を無垢の軸材RAから削り代R1分を削り出し、モータ軸1を製作する状態を示している。
図3と
図6の軸材RAの外径の大きさを比較してみると明らかであるが、前述のように、前記端板7をモータ軸1と一体にするか、又は、別体とするかによって軸材RAの外径の大きさが決められ、本実施の形態のモータ軸1の軸材RAの外径が従来よりも小径となる。
尚、
図3において、R1は削り代、R2、R3は軸材RAの各軸部3、4の外径を示し、本実施の形態のモータ軸1の構成の方が、如何に、その外径が小さくて済むかが明確に示されている。
本発明によるモータ軸構造は、軸状積層ロータコアをモータ軸上に保持するための端板をモータ軸と一体に切削で形成するのではなく、別体として加工した端板をモータ軸加工後に取り付けるため、モータ軸用の軸材からの削り量を少なくでき、モータ軸における逃げR部の形成を不要とし、安価なモータ軸を得ることができる。