IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大塚化学株式会社の特許一覧 ▶ 東山フイルム株式会社の特許一覧

特開2022-79135フレキシブルディスプレイ用粘着組成物、粘着材および粘着シート
<>
  • 特開-フレキシブルディスプレイ用粘着組成物、粘着材および粘着シート 図1
  • 特開-フレキシブルディスプレイ用粘着組成物、粘着材および粘着シート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079135
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】フレキシブルディスプレイ用粘着組成物、粘着材および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20220519BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220519BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220519BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220519BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220519BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220519BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220519BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220519BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J175/04
C09J7/38
B32B27/30 A
G09F9/30 308Z
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/04
H05B33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190128
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399020212
【氏名又は名称】東山フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】石原 正規
【テーマコード(参考)】
3K107
4F100
4J004
4J040
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC25
3K107CC43
3K107DD17
3K107EE42
3K107EE55
3K107FF14
3K107FF18
4F100AK25A
4F100AK51A
4F100AL01A
4F100AL02A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA02A
4F100CB00A
4F100EC18
4F100EJ08
4F100GB41
4F100JA07A
4F100JK06
4F100JK17B
4F100JK17C
4F100JM10A
4F100YY00A
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CD08
4J004DB02
4J004FA05
4J004FA08
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF061
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA06
4J040NA17
4J040NA19
5C094AA60
5C094DA06
5C094EB10
5C094FB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた復元性を有するフレキシブルディスプレイ用粘着組成物を提供する。
【解決手段】フレキシブルディスプレイ用粘着組成物は、第1フレキシブルシート14と第2フレキシブルシート16とを貼合する、粘着層12の形成において、第1反応性基を有する(メタ)アクリル系共重合体と、前記第1反応性基と反応する第2反応基を有する架橋剤とを含有し、前記(メタ)アクリル系共重合体が有する第1反応性基量が0.002mmоl/g~0.4mmоl/gであり、前記架橋剤が有する第2反応性基と前記共重合体が有する第1反応性基とのモル比(第1反応性基のモル量/第2反応性基のモル量)が1以上であり、前記架橋剤の配合量に対する前記共重合体が有する第1反応性基のモル比(第1反応性基のモル量/架橋剤のモル量)が12.0未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルディスプレイを構成する一のフレキシブル部材と他のフレキシブル部材とを貼合するためのフレキシブルディスプレイ用粘着組成物であって、
前記粘着組成物が、第1反応性基を有する(メタ)アクリル系共重合体と、前記第1反応性基と反応する第2反応性基を有する架橋剤とを含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体が有する第1反応性基量が、0.002mmоl/g~0.4mmоl/gであり、
前記架橋剤が有する第2反応性基と前記共重合体が有する第1反応性基とのモル比(第1反応性基のモル量/第2反応性基のモル量)が1以上であり、
前記架橋剤の配合量に対する前記共重合体が有する第1反応性基のモル比(第1反応性基のモル量/架橋剤のモル量)が12.0未満であることを特徴とする、フレキシブルディスプレイ用粘着組成物。
【請求項2】
前記架橋剤が、一分子中に第2反応性基を2個有する2官能の架橋剤、または、一分子中に第2反応性基を3個有する3官能の架橋剤を含有する請求項1に記載のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物。
【請求項3】
前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤である請求項1または2に記載のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート系架橋剤が、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物と脂肪族ジオール化合物との付加物、脂肪族ジイソシアネート化合物のアダクト体、脂肪族ジイソシアネート化合物のビューレット体、および、脂肪族ジイソシアネート化合物のイシシアヌレート体よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物。
【請求項5】
前記共重合体の重量平均分子量が、30万~250万である請求項1~4のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物。
【請求項6】
前記第1反応性基が、ヒドロキシ基である請求項1~5のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物。
【請求項7】
前記共重合体が、リビングラジカル重合により得られたものであり、その分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満である請求項1~6のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物。
【請求項8】
フレキシブルディスプレイを構成する一のフレキシブル部材と他のフレキシブル部材とを貼合するためのフレキシブルディスプレイ用粘着材であって、
前記粘着材が、請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着組成物の硬化物であることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用粘着材。
【請求項9】
フレキシブルディスプレイを構成する一のフレキシブル部材と他のフレキシブル部材を貼合するために用いられる粘着層と、前記粘着層の少なくとも一方の面に貼着されたフレキシブルシート部材とを有するフレキシブルディスプレイ用粘着シートであって、
前記粘着層が、請求項8に記載の粘着材から形成されていることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用粘着シート。
【請求項10】
前記粘着シートが、前記粘着層の一方の面に貼着された第1フレキシブルシート部材と、前記粘着層の他方の面に貼着された第2フレキシブルシート部材とを有し、
前記第1フレキシブルシート部材が第1剥離シート、前記第2フレキシブルシート部材が第2剥離シートであり、
前記第1剥離シートおよび第2剥離シートは、それぞれの剥離面が粘着層と接するように貼着されている請求項9に記載のフレキシブルディスプレイ用粘着シート。
【請求項11】
第1フレキシブル部材と、第2フレキシブル部材と、前記第1フレキシブル部材と前記第2フレキシブル部材とを互いに貼合する粘着層とを備えたフレキシブル積層部材であって、
前記粘着層が、請求項8に記載の粘着材からなることを特徴とするフレキシブル積層部材。
【請求項12】
前記第1フレキシブル部材および前記第2フレキシブル部材の少なくとも一方が、表示素子である請求項11に記載のフレキシブル積層部材。
【請求項13】
請求項11または12に記載のフレキシブル積層部材を備えたことを特徴とするフレキシブルディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルディスプレイに使用される粘着組成物に関し、具体的には一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するために使用される粘着材を形成する粘着組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、携帯電話、スマートフォン等の各種ディスプレイやタッチパネルにおいて、これらを構成する部材同士の接合には、一般的に粘着材が用いられる。粘着材は、例えば、支持基材上に粘着層を有する基材付き粘着シートや、支持基材のない基材レス粘着シートの形態で提供され、部材同士が貼り合わされる。
【0003】
一方で近年、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置等の画像表示装置において、繰り返し屈曲して使用されるフレキシブルディスプレイが注目されている。フレキシブルディスプレイには、折り畳み可能なフォルダブルディスプレイ、筒状等に丸めることのできるローラブルディスプレイ等があり、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末、収納できる据え置き型ディスプレイ等の用途が期待されている。
【0004】
このようなフレキシブルディスプレイにおいて、繰り返し屈曲、伸展される部材を構成する屈曲性部材と他の屈曲性部材を貼合する粘着材として、例えば特許文献1には、粘着層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合と、ゲル分率を所定の範囲に制御した繰り返し屈曲デバイス用粘着材が開示されている(特許文献1(請求項1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-108498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の粘着層を有するフレキシブルディスプレイでは、繰り返し屈曲された場合に、粘着層が屈曲された状態から元の状態へと十分に回復しなかった。そのため、フレキシブルディスプレイの屈曲を繰り返すと、屈曲箇所における粘着層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれの発生や、屈曲箇所が波打って見えたりする等の外観不良が生ずるおそれがあった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた復元性を有する粘着材(粘着層)を形成できる粘着組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することができた本発明のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物は、フレキシブルディスプレイを構成する一のフレキシブル部材と他のフレキシブル部材とを貼合するためのフレキシブルディスプレイ用粘着組成物であって、前記粘着組成物が、第1反応性基を有する(メタ)アクリル系共重合体と、前記第1反応性基と反応する第2反応性基を有する架橋剤とを含有し、前記(メタ)アクリル系共重合体が有する第1反応性基量が0.002mmоl/g~0.4mmоl/gであり、前記架橋剤が有する第2反応性基と前記共重合体が有する第1反応性基とのモル比(第1反応性基のモル量/第2反応性基のモル量)が1以上であり、前記架橋剤の配合量に対する前記共重合体が有する第1反応性基のモル比(第1反応性基のモル量/架橋剤のモル量)が12.0未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物を用いれば、復元性に優れた粘着材(粘着層)が形成できる。よって、本発明のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物を使用することで、繰り返し屈曲させても、屈曲箇所における粘着層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれの発生することなく、クラックや波打ち等の外観不良の発生を抑制できるフレキシブルディスプレイが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の粘着シートの一例の断面模式図である。
図2】本発明の屈曲性積層部材の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。ただし、下記の実施形態は単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0012】
本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよびメタクリロイルの少なくとも一方」をいう。「ビニルモノマー」とは分子中にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーのことをいう。「ビニルモノマーに由来する構造単位」とは、ビニルモノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。「(メタ)アクリレートに由来する構造単位」とは、(メタ)アクリレートのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。「(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位」とは、(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。
【0013】
[フレキシブルディスプレイ用粘着組成物]
本発明のフレキシブルディスプレイ用粘着組成物(以下、単に「粘着組成物」と称する場合がある。)は、フレキシブルディスプレイを構成する一のフレキシブル部材と他のフレキシブル部材とを貼合するためのフレキシブルディスプレイ用粘着組成物である。前記粘着組成物は、(A)第1反応性基を有する(メタ)アクリル系共重合体と、(B)前記第1反応性基と反応する第2反応性基を有する架橋剤とを含有する。
【0014】
((A)(メタ)アクリル系共重合体)
前記(メタ)アクリル系共重合体とは、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を主成分(50質量%以上)とする共重合体であればよく、(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーに由来する構造単位を含有することができる。前記(A)共重合体中の(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位の含有率は、共重合体全体100質量%中において、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。なお、前記共重合体(A)は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位のみから構成されていてもよい。
【0015】
前記(A)共重合体は、(メタ)アクリレート系共重合体が好ましい。(メタ)アクリレート系共重合体とは、(メタ)アクリレートに由来する構造単位を主成分(50質量%以上)とする共重合体であればよく、(メタ)アクリレート以外のビニルモノマーに由来する構造単位を含有することができる。前記(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸とヒドロキシ基を有する化合物とから生成するエステル化合物である。前記(A)共重合体中の(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、共重合体全体100質量%中において、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0016】
前記(A)共重合体は、第1反応性基を有する。前記第1反応性基とは、後述する(B)架橋剤が有する第2反応性基と高い反応性を有する官能基である。前記第1反応性基となり得る官能基としては、反応性を有する官能基が挙げられる。前記第1反応性基としては、好ましくはヒドロキシ基および/またはカルボキシ基である。
【0017】
前記(A)共重合体が有する第1反応性基と(B)架橋剤が有する第2反応性基との組み合わせとしては、例えば、下記の組み合わせが挙げられる。
前記(B)架橋剤の第2反応性基がイソシアネート基である場合、第1反応性基としては、ヒドロキシ基が挙げられる。
前記(B)架橋剤の第2反応性基がエポキシ基である場合、第1反応性基としては、カルボキシ基が挙げられる。
【0018】
前記(A)共重合体が有する第1反応性基と(B)架橋剤が有する第2反応性基との組み合わせとしては、(1)第1反応性基がヒドロキシ基であって、第2反応性基がイソシアネート基である組み合わせ;(2)第1反応性基がカルボキシ基であって、第2反応性基がエポキシ基である組み合わせである組み合わせが好ましい。
【0019】
前記(A)共重合体の第1反応性基量は、0.002mmol/g以上が好ましく、より好ましくは0.006mmol/g以上、さらに好ましくは0.01mmol/g以上であり、0.4mmol/g以下が好ましく、より好ましくは0.2mmol/g以下、さらに好ましくは0.1mmol/g以下である。第1反応性基量が、0.002mmol/g以上であれば形成される粘着材が適切に架橋され好適な復元率を発現し、0.4mmol/g以下であれば形成される粘着材の架橋点間距離が十分長く柔軟性に優れる。
【0020】
前記(A)共重合体は、ヒドロキシ基が第1反応性基である場合、さらに第1反応性基以外の官能基としてカルボキシ基を有することが好ましい。この場合、前記(A)共重合体のカルボキシ基量は、0.08mmol/g以上が好ましく、より好ましくは0.16mmol/g以上、さらに好ましくは0.32mmol/g以上であり、1.3mmol/g以下が好ましく、より好ましくは0.8mmol/g以下、さらに好ましくは0.6mmol/g以下である。
【0021】
前記(A)共重合体は、カルボキシ基が第1反応性基である場合、さらに第1反応性基以外の官能基として基を有することが好ましい。この場合、前記(A)共重合体のカルボキシ基量は、0.08mmol/g以上が好ましく、1.3mmol/g以下が好ましい。
【0022】
前記(A)共重合体が、カルボキシ基とヒドロキシ基との両方を有する場合、(A)共重合体の単位質量あたりのカルボキシ基とヒドロキシ基とのモル比(カルボキシ基/ヒドロキシ基)は、4以上が好ましく、より好ましくは8以上、さらに好ましくは16以上であり、60以下が好ましく、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。モル比(カルボキシ基/ヒドロキシ基)が上記範囲内であれば高い復元性を有し粘着力と柔軟性のバランスが好適な粘着層となる。
【0023】
前記共重合体(A)は、第1反応性基を有する。すなわち、前記共重合体(A)は、その構造中に、第1反応性基を有する構造単位(a-1)を含有する。前記第1反応性基を有する構造単位(a-1)は、1種のみであってもよいし、2種以上を有していてもよい。前記第1反応性基は、(メタ)アクリルモノマー(好ましくは(メタ)アクリレートモノマーおよび/または(メタ)アクリル酸)に由来する構造単位、(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーに由来する構造単位のいずれに有していてもよい。すなわち、前記第1反応性基を有する構造単位(a-1)は、第1反応性基を有する(メタ)アクリルモノマー(好ましくは(メタ)アクリレートモノマーおよび/または(メタ)アクリル酸)に由来する構造単位、または、第1反応性基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーに由来する構造単位が挙げられる。
【0024】
前記(A)共重合体中の第1反応性基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(第1反応性基を有する構造単位(a-1))の含有率は、共重合体全体100質量%中において、0.03質量%以上が好ましく、より好ましくは0.09質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上であり、6質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。前記構造単位(a-1)の含有率が上記範囲内であれば、被着体に対する密着性と耐久性のバランスに優れた粘着材を形成することができる。なお、第1反応性基を有するビニルモノマーには、第1反応性基を有する(メタ)アクリルモノマー、第1反応性基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーが含まれる。
【0025】
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、(b1)第1反応性基となり得る官能基を有さない(メタ)アクリルモノマー、(b2)第1反応性基となり得る官能基を有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。これらの単量体は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記(b1)(メタ)アクリルモノマーとしては、(b1-1)第1反応性基となり得る官能基を有さない(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。前記(b2)(メタ)アクリルモノマーとしては、(b2-1)第1反応性基となり得る官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0026】
前記(b1)第1反応性基となり得る官能基を有さない(メタ)アクリルモノマーとしては、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、三級アミノ基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。これらの中で直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド類からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0027】
前記直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、直鎖状アルキル基の炭素数が1~20である直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、直鎖状アルキル基の炭素数が1~10である直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。前記直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸直鎖アルキルエステルが挙げられる。
【0028】
前記分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、分岐鎖状アルキル基の炭素数が3~20である分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、分岐鎖状アルキル基の炭素数が3~10である分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。前記分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸分岐鎖アルキルエステルが挙げられる。
【0029】
前記アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが挙げられる。
【0030】
前記ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)フェニルエーテル(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)フェニルエーテル(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
前記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、多環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。前記環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、環状アルキル基の炭素数が6~12の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。環状アルキル基としては、単環構造を有する環状アルキル基(例えば、シクロアルキル基)が挙げられ、また鎖状部分を有していてもよい。単環構造の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルを挙げることができる。
【0032】
前記多環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、多環式構造の炭素数が6~12の多環式構造を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。多環式構造としては、橋かけ環構造を有する環状アルキル基(例えば、アダマンチル基、ノルボニル基、イソボルニル基)が挙げられ、また鎖状部分を有していてもよい。多環式構造を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0033】
前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、芳香族基の炭素数が6~12の芳香族基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。芳香族基としては、アリール基等をあげることができ、またアルキルアリール基、アラリル基、アリールオキシアルキル基等のように鎖状部分を有していてもよい。前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基にアリール基が直接結合した化合物、(メタ)アクリロイルオキシ基にアラルキル基が直接結合した化合物、(メタ)アクリロイルオキシ基にアルキルアリール基が直接結合した化合物が挙げられる。前記アリール基の炭素数は6~12が好ましい。前記アラルキル基の炭素数は、6~12が好ましい。前記アルキルアリール基の炭素数は6~12が好ましい。芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
前記三級アミノ基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
前記(メタ)アクリルアミド類としては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリアミド、4-(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。前記(メタ)アクリルアミド類は、(メタ)アクリルモノマーであるが、(メタ)アクリレートモノマーには含まれない。
【0036】
前記(b2)第1反応性基となり得る官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(好ましくは(メタ)アクリレートモノマー)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(好ましくは(メタ)アクリル酸)、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(好ましくは(メタ)アクリレートモノマー)等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーおよび/またはカルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
【0037】
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物等が挙げられる。これらの中でもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1~5のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0038】
前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレアート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0039】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
前記(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーとしては、(b3)第1反応性基となり得る官能基を有さない(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマー、(b4)第1反応性基となり得る官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーが挙げられる。これらの単量体は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記(b3)第1反応性基となり得る官能基を有さない(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーとしては、芳香族ビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、カルボン酸ビニル、三級アミノ基を含有するビニルモノマー、四級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマー、ビニルアミド類、α-オレフィン、ジエン類、ハロゲン化ビニルモノマー等が挙げられる。
【0042】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、2-ヒドロキシメチルスチレン、1-ビニルナフタレン等が挙げられる。
前記ヘテロ環を含有するビニルモノマーとしては、2-ビニルチオフェン、N-メチル-2-ビニルピロール、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が挙げられる。
前記カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
前記三級アミノ基を含有するビニルモノマーとしては、N,N-ジメチルアリルアミン等が挙げられる。
前記四級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマーとしては、N-メタクリロイルアミノエチル-N,N,N-ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
前記ビニルアミド類としては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、1-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプトラクタム等が挙げられる。
前記α-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。
前記ジエン類としては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等が挙げられる。
前記ハロゲン化ビニルモノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、1-クロロ-1-フルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン等が挙げられる。
【0043】
前記(b4)第1反応性基となり得る官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のビニルモノマーとしては、ヒドロキシ基を有するビニルモノマー、カルボキシ基を有するビニルモノマー、エポキシ基を含有するビニルモノマー等が挙げられる。
【0044】
前記ヒドロキシ基を有するビニルモノマーとしては、p-ヒドロキシスチレン、アリルアルコール等が挙げられる。
前記カルボキシ基を有するビニルモノマーとしては、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸等が挙げられる。
前記エポキシ基を含有するビニルモノマーとしては、2-アリルオキシラン、グリシジルビニルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0045】
前記共重合体(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体の何れでもよく、好ましくはランダム共重合体である。
【0046】
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、30万以上が好ましく、より好ましくは60万以上であり、さらに好ましくは90万以上、250万以下が好ましく、より好ましくは200万以下、さらに好ましくは180万以下である。前記共重合体(A)のMwが30万以上であれば、凝集力が高まり形成される粘着材の耐熱性が向上し、250万以下であれば粘着組成物の塗工作業性がより良好となる。重量平均分子量(Mw)の測定方法は後述する。
【0047】
前記(A)共重合体の分子量分布(PDI)は3.0未満であり、好ましくは2.5未満であり、より好ましくは2.2未満であり、さらに好ましくは1.8未満である。PDIが小さいほど分子量分布の幅が狭い、分子量のそろった共重合体となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。PDIが3.0未満であれば、設計した共重合体の分子量に比べて、分子量の小さいものや、分子量の大きいものの含有量が低く、耐屈曲性に優れた粘着材が得られる。なお、本発明において、分子量分布(PDI)とは、(重量平均分子量(Mw))/(数平均分子量(Mn))によって算出される値であり、MwおよびMnの測定方法は後述する。
【0048】
前記(A)共重合体のガラス転移温度(Tg)は、-70℃以上が好ましく、より好ましくは-60℃以上であり、0℃以下が好ましく、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-20℃以下である。Tgが-70℃以上であれば粘着材に十分な凝集力を与え、形成される粘着材の耐久性が向上し、0℃以下であれば形成される粘着材の被着体に対する密着性が高くなり、低温下剥がれ等が抑制され、耐久性が向上する。
【0049】
前記(A)共重合体のTgとは、下記FOX式(数式(1))により算出された値である。数式(1)中、Tgは共重合体のガラス転移温度(℃)を示す。Tgiはビニルモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(℃)を示す。Wiは共重合体を形成する全ビニルモノマーにおけるビニルモノマーiの質量比率を示し、ΣWi=1である。iは1~nの自然数である。
【0050】
【数1】
【0051】
代表的なホモポリマーのガラス転移温度を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
前記(A)共重合体は、ビニルモノマーをリビングラジカル重合法によりラジカル重合することで製造される。リビングラジカル重合法は、従来のラジカル重合法の簡便性と汎用性を保ちながら、停止反応や、連鎖移動が起こりにくく、成長末端を失活させる副反応で妨げられることなく成長するため、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーの製造が容易である。そのため、リビングラジカル重合法で製造された共重合体は、反応性官能基が各分子鎖に均一に分布する。よって、リビングラジカル重合法で製造された共重合体を用いれば、粘着材中の架橋点密度が全体的に均一となる。
【0054】
リビングラジカル重合法においては、前記(A)共重合体を構成する各単量体(ビニルモノマー)の混合物を使用することにより、ランダム共重合体とすることができる。また、共重合体を構成するビニルモノマーを順次反応させることでブロック共重合体とすることもできる。
【0055】
リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法);硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT法);有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)等の方法がある。これらの方法のなかでも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御、均一な組成、あるいは着色の観点から、TERP法を用いることが好ましい。
【0056】
TERP法とは、有機テルル化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル重合性化合物(ビニルモノマー)を重合させる方法であり、例えば、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された方法である。
【0057】
TERP法の具体的な重合法としては、下記(a)~(d)が挙げられる。
(a)ビニルモノマーを、式(1)で表される有機テルル化合物を用いて重合する方法。
(b)ビニルモノマーを、式(1)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との混合物を用いて重合する方法。
(c)ビニルモノマーを、式(1)で表される有機テルル化合物と式(2)で表される有機ジテルリド化合物との混合物を用いて重合する方法。
(d)ビニルモノマーを、式(1)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と式(2)で表される有機ジテルリド化合物との混合物を用いて重合する方法。
【0058】
【化1】
[式(1)において、R1は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基である。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~8のアルキル基である。R4は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基である。
式(2)において、R1は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基である。]
【0059】
式(1)で表される有機テルル化合物は、具体的にはエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、エチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-メチルテラニル-プロピオネート等、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された有機テルル化合物が挙げられる。式(2)で表される有機ジテルリド化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジブチルジテルリド等が挙げられる。アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができ、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)等が挙げられる。
【0060】
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと式(1)の有機テルル化合物と、ビニルモノマーの種類に応じて反応促進、分子量および分子量分布の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤および/または式(2)の有機ジテルリド化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。前記(a)、(b)、(c)および(d)におけるビニルモノマーの使用量は、目的とする共重合体の物性により適宜調節すればよい。
【0061】
重合反応は、無溶媒でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される非プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒を使用し、前記混合物を撹拌して行なってもよい。使用できる非プロトン性溶媒は、例えば、アニソール、ベンゼン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また、プロトン性溶媒としては、例えば、水、メタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等が挙げられる。溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、ビニルモノマー1gに対して、0.01ml~50mlが好ましい。反応温度、反応時間は、得られる共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0℃~150℃で、1分~100時間撹拌する。重合反応の終了後、得られた反応混合物から、通常の分離精製手段により、使用溶媒、残存ビニルモノマーの除去等を行い、目的とする共重合体を分離することができる。
【0062】
重合反応により得られる共重合体の成長末端は、テルル化合物由来の-TeR1(式中、R1は上記と同じである)の形態であり、重合反応終了後の空気中の操作により失活していくが、テルル原子が残存する場合がある。テルル原子が末端に残存した共重合体は着色したり、熱安定性が劣ったりするため、テルル原子を除去することが好ましい。テルル原子を除去する方法としては、ラジカル還元方法;活性炭等で吸着する方法;イオン交換樹脂等で金属を吸着する方法等が挙げられ、また、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。なお、重合反応により得られる共重合体の他方端(成長末端と反対側の末端)は、テルル化合物由来の-CR234(式中、R2、R3およびR4は、式(1)中のR2、R3およびR4と同じである。)の形態である。
【0063】
((B)架橋剤)
前記粘着組成物は、(B)架橋剤を含有する。前記(B)架橋剤は、上述の(A)共重合体が有する第1反応性基と反応する第2反応性基を1分子中に2つ以上有する化合物である。前記(B)架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート型架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましい。特に、形成される粘着材の復元率が向上することから、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0064】
前記(B)架橋剤が1分子中に有する第2反応性基の個数は、2以上であり、6以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。つまり、前記(B)架橋剤は、一分子中に第2反応性基を2個有する2官能の架橋剤、または、一分子中に第2反応性基を3個有する3官能の架橋剤がより好ましい。(B)架橋剤が2官能または3官能であれば粘着材内で架橋点が万遍なく分布し、平均架橋点間距離が長くなる。よって、得られる粘着材は、初期応力が低くなり、かつ、高い復元率を示す。前記(B)架橋剤の分子量は、200以上が好ましく、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上であり、1500以下が好ましく、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは700以下である。
【0065】
架橋剤(B)の第2反応性基の含有量は、1.5mmol/g以上が好ましく、より好ましくは3mmol/g以上、さらに好ましくは3.7mmol/g以上であり、8mmol/g以下が好ましく、より好ましくは6mmol/g以下である。架橋剤(B)の第2反応性基の含有量がこの範囲であれば架橋剤(B)の価数が低くなり粘着材内で架橋点が万遍なく分布し、平均架橋点間距離が長くなる。よって、得られる粘着材は、初期応力が低くなり、かつ、高い復元率を示す。
【0066】
(イソシアネート系架橋剤)
イソシアネート系架橋剤は、第2反応性基としてイソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物である。前記イソシアネート系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
イソシアネート系架橋剤としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、ならびに、これらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート等が挙げられる。これらの中でもイソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ有する化合物(2官能イソシアネート系架橋剤)、または、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に3つ有する化合物(3官能イソシアネート系架橋剤)が好ましい。(B)架橋剤が、2官能イソシアネート系架橋剤または3官能イソシアネート系架橋剤であれば、粘着材内で架橋点が万遍なく分布し、平均架橋点間距離が長くなる。よって、得られる粘着材は、初期応力が低くなり、かつ、高い復元率を示す。
【0068】
2官能のイソシアネート系架橋剤としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物等のジイソシアネート化合物があげられ、これらジイソシアネート化合物とジオール化合物との付加物も使用でききる。ジイソシアネート化合物とは、一般式「O=C=N-X-N=C=O」(Xは、2価の脂肪族基、2価の脂環族基、2価の芳香族基等である。)で表される化合物である。ジオール化合物とは一般式「HO-Y-OH」(Yは、2価の脂肪族基、2価の脂環族基、2価の芳香族基等である。)で表される化合物である。
【0069】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、この中でも炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネート化合物が好ましく、炭素数4~10の脂肪族ジイソシアネート化合物がより好ましい。
【0070】
脂環族ジイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられ、この中でも炭素数7~30の脂環族ジイソシアネート化合物が好ましい。
【0071】
芳香族ジイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等が挙げられ、炭素数8~30の芳香族ジイソシアネート化合物が好ましい。
【0072】
前記ジオール化合物としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール化合物が挙げられ、これらの中でも炭素数3~10の脂肪族ジオール化合物が好ましい。
【0073】
前記3官能のイソシアネート系架橋剤としては、前記ジイソシアネート化合物のアダクト体、ジイソシアネート化合物のビューレット体、ジイソシアネート化合物のイシシアヌレート体(ジイソシアネート化合物類の環状3量体)が挙げられる。
【0074】
前記イソシアネート系架橋剤は、芳香環を有さないことが好ましい。特に、前記イソシアネート系架橋剤としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、および、脂肪族ジイソシアネート化合物と脂肪族ジオール化合物との付加物よりなる群から選択される2官能イソシアネート系架橋剤、脂肪族ジイソシアネート化合物類のアダクト体、脂肪族ジイソシアネート化合物のビューレット体、および、脂肪族ジイソシアネート化合物のイシシアヌレート体よりなる群から選択される3官能イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0075】
(エポキシ系架橋剤)
エポキシ系架橋剤は、第2反応性基としてエポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。前記エポキシ系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0077】
前記エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を1分子中に2つ有する化合物(2官能エポキシ系架橋剤)、または、エポキシ基を1分子中に3つ有する化合物(3官能エポキシ系架橋剤)が好ましい。(B)架橋剤が、2官能エポキシ系架橋剤または3官能エポキシ系架橋剤であれば、粘着材内で架橋点が万遍なく分布し、平均架橋点間距離が長くなる。よって、得られる粘着材は、初期応力が低くなり、かつ、高い復元率を示す。
【0078】
粘着組成物は、(B)架橋剤としてイソシアネート系架橋剤のみを含有することが好ましく、特に(B)架橋剤として、一分子中にイソシアネート基を2個有する2官能イソシアネート系架橋剤、または、一分子中にイソシアネート基を3個有する3官能イソシアネート系架橋剤のみを含有することが好ましい。
【0079】
粘着組成物における架橋剤(B)の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、0.2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.15質量部以下である。架橋剤(B)の含有量が上記範囲内であれば、粘着力と復元率が好適な範囲となる。
【0080】
前記(B)架橋剤が有する第2反応性基と前記(A)共重合体が有する第1反応性基とのモル比(第1反応性基のモル量/第2反応性基のモル量)は、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、15以下が好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。前記モル比が1以上であれば架橋剤が過不足なく反応し、第2反応性基に余剰が出ず、高い復元率を発現し、15以下であれば十分反応が進行し、高い復元率を発現する。
【0081】
前記(B)架橋剤の配合量(モル量)に対する前記(A)共重合体が有する第1反応性基のモル比(第1反応性基のモル量/架橋剤のモル量)は、12.0未満、より好ましくは11.0以下、さらに好ましくは8.0以下である。前記モル比が12.0未満であれば復元率が低下する。また、前記モル比(第1反応性基のモル量/架橋剤のモル量)は2以上が好ましく、より好ましくは4以上である。
【0082】
(その他添加剤)
前記粘着組成物には、前記(A)共重合体、(B)架橋剤以外に、その他添加剤を配合して使用することができる。その他の添加剤としては、架橋促進剤、架橋遅延剤、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、シランカップリング剤、染料、顔料、色素、蛍光増白剤、帯電防止剤、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、防黴剤、防腐剤、酸素吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、近赤外線吸収剤、水溶性消光剤、香料、金属不活性剤、造核剤、アルキル化剤、難燃剤、滑剤、加工助剤等が挙げられる。これらは粘着材の用途や使用目的に応じて、適宜選択して配合して使用される。
【0083】
(架橋促進剤)
前記粘着組成物には、必要に応じて、架橋促進剤を配合して使用することができる。架橋促進剤としては、有機スズ化合物、金属キレート化合物等が挙げられる。前記架橋促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記有機スズ化合物としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチオルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチレート等が挙げられる。前記金属キレート化合物とは、2個以上の配位原子を持つ配位子が環を形成して中心金属に結合した錯体である。
【0085】
粘着組成物における架橋促進剤の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.02質量部以上、さらに好ましくは0.04質量部以上であり、0.5質量部以下が好ましく、より好ましくは0.4質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。架橋促進剤の含有量を前記範囲にすることで、優れた架橋促進効果を得ることが可能となる。
【0086】
(架橋遅延剤)
前記粘着組成物には、必要に応じて、架橋遅延剤を配合して使用することができる。前記架橋遅延剤とは、架橋剤を含有する粘着組成物において、架橋剤が有する官能基をブロックすることによって、粘着組成物の過剰な粘度上昇を抑制することができる化合物である。架橋遅延剤の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、アセチルアセトン、ヘキサン-2,4-ジオン、ヘプタン-2,4-ジオン、オクタン-2,4-ジオン等のβ-ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステル類;ベンゾイルアセトン等を使用することができる。前記架橋遅延剤としては、キレート剤として作用し得るものが好ましく、β-ジケトン類、β-ケトエステル類が好ましい。
【0087】
粘着組成物に配合することができる架橋遅延剤の含有量は、(A)共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、4.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。前記架橋遅延剤の含有量を前記範囲に調節することによって、前記(B)架橋剤を粘着組成物に配合した後に、粘着組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着組成物の貯蔵安定性(ポットライフ)を延長させることができる。
【0088】
(粘着付与樹脂)
前記粘着組成物には、必要に応じて、前記共重合体(A)を除く粘着付与樹脂を配合して使用することができる。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂等が挙げられる。
【0089】
ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを重合、不均化、水素添加等により変性した変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水素添加ロジン、部分水素添加ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等)の他、各種のロジン誘導体等が挙げられる。
【0090】
前記ロジン誘導体としては、例えば、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール系樹脂;未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物(未変性ロジンエステル)や、変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物(重合ロジンエステル、安定化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、完全水素添加ロジンエステル、部分水素添加ロジンエステル等)等のロジンエステル系樹脂;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂;ロジンエステル系樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール系樹脂;未変性ロジン、変性ロジン等のロジン系樹脂(特に、ロジンエステル系樹脂)の金属塩等が挙げられる。
【0091】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン系樹脂、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂)が挙げられる。
【0092】
フェノール系粘着付与樹脂としては、例えば、各種フェノール類(例えば、フェノール、m-クレゾール、3,5-キシレノール、p-アルキルフェノール、レゾルシン)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂)、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾール、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラック等が挙げられる。
【0093】
炭化水素系粘着付与樹脂(石油系粘着付与樹脂)としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂[炭素数4~5のオレフィンやジエン(ブテン-1、イソブチレン、ペンテン-1等のオレフィン;ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン等のジエン)等の脂肪族炭化水素の重合体等]、脂肪族系環状炭化水素樹脂[いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体又はその水素添加物、下記の芳香族系炭化水素樹脂や脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂等]、芳香族系炭化水素樹脂[炭素数が8~10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)の重合体等]、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン-オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等が挙げられる。
【0094】
粘着組成物に配合することができる粘着付与樹脂の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、60質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。前記粘着付与樹脂の含有量を前記範囲に調節することによって、十分な被着体との密着性を確保できる。
【0095】
(シランカップリング剤)
前記粘着組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤を配合して使用することができる。前記シランカップリング剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0096】
粘着組成物に配合することができるシランカップリング剤の含有量は、(A)共重合体100質量部に対して1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.01質量部~1質量部、さらに好ましくは0.02質量部~0.6質量部である。前記シランカップリング剤の含有量を前記範囲に調節することによって、粘着材をガラス等の親水性被着体に適用する場合における界面での耐水性を上げることができる。
【0097】
(粘着組成物の製造方法)
前記粘着組成物は、前記(A)共重合体、(B)架橋剤、および必要に応じて用いられるその他添加剤を混合することにより製造することができる。前記粘着組成物は、(A)共重合体の製造に由来した溶剤を含有してもよいし、さらに適当な溶剤が加えられ、粘着層を形成するのに適した粘度となるように希釈された溶液であってもよい。
【0098】
前記溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0099】
溶剤の使用量は、粘着組成物が塗工に適した粘度となるように適宜調節すればよく、特に制限はないが、塗工性の観点から、例えば、1質量%~90質量%が好ましく、より好ましくは10質量%~80質量%、さらに好ましくは20質量%~70質量%である。
【0100】
(粘着組成物の用途)
前記粘着組成物の用途は、繰り返し曲げ伸ばしして使用できるフレキシブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイに用いられる粘着層(粘着材)の形成に好ましく使用される。
【0101】
前記繰り返し曲げ伸ばしして使用できるフレキシブルディスプレイとしては、例えば、折り畳み可能なフォルダブルディスプレイや、筒状に丸めることができるローラブルディスプレイ等が挙げられる。フレキシブルディスプレイは、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末や、収納できる据え置き型ディスプレイ等への利用が期待されている。
【0102】
[フレキシブルディスプレイ用粘着材]
本発明のフレキシブルディスプレイ用粘着材は、前記粘着組成物の硬化物である。前記粘着材は、フレキシブルディスプレイを構成する一のフレキシブル部材と他のフレキシブル部材とを貼合するためのフレキシブルディスプレイ用粘着材として使用できる。
【0103】
[フレキシブルディスプレイ用粘着シート]
本発明のフレキシブルディスプレイ用粘着シートは、フレキシブルディスプレイを構成する一のフレキシブル部材と他のフレキシブル部材を貼合するために用いられる粘着層と、前記粘着層の少なくとも一方の面に貼着されたフレキシブルシート部材とを有するフレキシブルディスプレイ用粘着シートであって、前記粘着層が、前記粘着材から形成されていることを特徴とする。
【0104】
前記粘着シートの構成としては、粘着層と、この粘着層の一方の面に貼着された第1フレキシブルシート部材とを有する態様;粘着層と、前記粘着層の一方の面に貼着された第1フレキシブルシート部材と、前記粘着層の他方の面に貼着された第2フレキシブルシート部材とを有する態様が挙げられる。
【0105】
図1に本発明の粘着シートの一例を示した。図1の粘着シート10は、粘着層12と、この粘着層12を挟持する第1フレキシブルシート部材14と、第2フレキシブルシート部材16とから構成される。粘着層12は、第1フレキシブルシート部材14および第2フレキシブルシート部材16の離型性を有する面に接している。
【0106】
(粘着層)
粘着層は、前記粘着材から形成される。前記粘着層の膜厚は、被着体との接着性を十分に確保する等の観点から、2μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、粘着層の厚さは、粘着層のはみ出し抑制等の観点から、100μm以下が好ましく、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0107】
(フレキシブルシート部材)
前記フレキシブルシート部材としては、屈曲性を有する基材シート、剥離シート等が挙げられる。前記基材シートは、粘着層を支持するシート部材であり、このシート部材が機能性シート部材であってもよい。前記機能性シート部材としては、カバーフィルム、バリアフィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルム、反射防止フィルム等が挙げられる。前記剥離シートは、粘着層を被着体に貼着するまで粘着層を保護するものであり、粘着層を被着体に貼着する前に粘着層から剥離される。
【0108】
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅の割には小さい平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さおよび幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JIS K6900)。例えば、厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称することがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かではなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとし、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むのとする。
【0109】
前記フレキシブルシート部材としては、高分子材料のシート、ガラスシート等が挙げられる。フレキシブルシート部材の厚さは、特に限定されるものではないが、取り扱い性に優れる等の観点から、2μm~500μmが好ましく、より好ましくは2μm~200μmである。
【0110】
前記高分子材料としては、ポリイミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ(メタ)アクリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0111】
前記フレキシブルシート部材は、前記高分子材料の1種または2種以上を含む層からなる単層で構成されていてもよいし、前記高分子材料の1種または2種以上を含む層と、この層とは異なる高分子材料の1種または2種以上を含む層等、2層以上の層で構成されていてもよい。
【0112】
前記フレキシブルシート部材は、粘着層と接する面に離型処理が施された剥離シートであることが好ましい。離型処理に使用される離型剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アルキッド系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系等の離型剤が挙げられる。
【0113】
前記粘着シートは、前記粘着層の一方の面に貼着された第1フレキシブルシート部材と、前記粘着層の他方の面に貼着された第2フレキシブルシート部材とを有し、前記第1フレキシブルシート部材が第1剥離シート、前記第2フレキシブルシート部材が第2剥離シートであり、前記第1剥離シートおよび第2剥離シートは、それぞれの剥離面が粘着層と接するように貼着されていることが好ましい。なお、粘着層を2枚の剥離シートで挟持する場合、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型の剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型の剥離シートとすることが好ましい。
【0114】
(粘着シートの製造)
粘着シートは、例えば、上述した粘着組成物を、フレキシブルシート部材上に塗工し、必要に応じて乾燥加熱処理により硬化させて、粘着層を形成することにより製造できる。
【0115】
粘着組成物の塗工には、例えば、リバースグラビアコート法,ダイレクトグラビアコート法,ダイコート法,バーコート法,ワイヤーバーコート法,ロールコート法,スピンコート法,ディップコート法,スプレーコート法,ナイフコート法,キスコート法等の各種コーティング法や、インクジェット法、オフセット印刷,スクリーン印刷,フレキソ印刷等の各種印刷法を採用できる。また、粘着組成物を塗工する前に、剥離シートの表面にコロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理等の表面処理を施してもよい。
【0116】
乾燥及び硬化工程は、粘着組成物に用いた溶剤等を除去し、硬化させることができれば特に限定されるものではないが、60℃~150℃の温度で20秒~300秒程度行うことが好ましい。特に、乾燥温度は、100℃~130℃が好ましい。
【0117】
粘着層の一方の面に第1フレキシブルシート部材、他方の面に第2フレキシブルシート部材を配置する場合、第1フレキシブルシート部材に粘着組成物を塗工し、第1フレキシブルシート部材上に粘着層を形成した後、この粘着層に第2フレキシブルシート部材を貼着すればよい。またさらに、粘着層は必要に応じて養生してもよい。前記養生の条件としては、例えば60℃で3日間~7日間程度が挙げられる。
【0118】
[フレキシブル積層部材]
本発明のフレキシブル積層部材は、第1フレキシブル部材と、第2フレキシブル部材と、前記第1フレキシブル部材と前記第2フレキシブル部材とを互いに貼合する粘着層とを備えたフレキシブル積層部材であって、前記粘着層が、前記粘着材からなることを特徴とする。フレキシブル積層部材の粘着層が前記粘着材から形成されているため、フレキシブル積層部材を繰り返し屈曲した場合でも、屈曲箇所が波打って見える等の外観不良が抑制される。
【0119】
図2に本発明のフレキシブル積層部材の一例を示した。図2のフレキシブル積層部材20は、第1フレキシブル部材22と、第2フレキシブル部材24と、前記第1フレキシブル部材22と第2フレキシブル部材24の間にあって、これらのフレキシブル部材同士を貼合する粘着層12とを備えている。
【0120】
前記フレキシブル積層部材の構成としては、例えば、第1フレキシブル部材および第2フレキシブル部材の両方が屈曲性装置の構成部材である構成;第2フレキシブル部材が屈曲性装置であり、第1フレキシブル部材が前記屈曲性装置に貼合された機能性シート部材である構成が挙げられる。前記屈曲性装置としては、例えば、折り畳み可能なフォルダブルディスプレイ、筒状に丸めることができるローラブルディスプレイが挙げられる。前記機能性シート部材としては、カバーフィルム、バリアフィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルム、反射防止フィルム、透明導電性フィルム、金属メッシュフィルム、クッションフィルム等が挙げられる。
【0121】
前記第1フレキシブル部材および第2フレキシブル部材は、繰り返し屈曲、または湾曲させて用いることができる部材である。前記第1フレキシブル部材および第2フレキシブル部材としては、例えば、フレキシブル基板材料、機能性シート部材、表示素子(有機ELモジュール、電子ペーパーモジュール等)等が挙げられる。前記第1フレキシブル部材および前記第2フレキシブル部材の少なくとも一方が、表示素子であることが好ましい。前記フレキシブル積層部材は、フレキシブルディスプレイに使用できる。
【0122】
(フレキシブル積層部材の製造方法)
本発明のフレキシブル積層部材の製造方法としては特に限定されるものではなく、例えば、以下の(1)から(4)の方法が挙げられる。
【0123】
(1)粘着シートの一方の面に貼着された剥離シートを剥離して、露出した粘着層を、第1フレキシブル部材に貼着した後、粘着シートの他方の面に貼着された剥離シートを剥離して、露出した粘着層と第2フレキシブル部材とを貼着し、フレキシブル積層部材を得る方法。
(2)第1フレキシブル部材の一方の面上に粘着組成物を塗工し、必要に応じて乾燥加熱処理により硬化させ粘着層を形成した後、この粘着層に剥離シートの離型性を有する面を貼着する。そして、剥離シートを剥離して露出した粘着層と第2フレキシブル部材とを貼着し、フレキシブル積層部材を得る方法。
(3)第1フレキシブル部材の一方の面上に粘着組成物を塗工し、必要に応じて乾燥加熱処理により硬化させ粘着層を形成した後、この粘着層に第2フレキシブル部材を貼着し、フレキシブル積層部材を得る方法。
(4)剥離シートの離型性を有する面上に粘着組成物を塗工し、必要に応じて乾燥加熱処理により硬化させ粘着層を形成した後、この粘着層に第1フレキシブル部材を貼着する。そして、剥離シートを剥離して露出した粘着層と第2フレキシブル部材とを貼着し、フレキシブル積層部材を得る方法。
【0124】
なお、上記(1)から(4)のいずれの場合であっても、第1フレキシブル部材と第2フレキシブル部材を用いる順序を入れ替えてもよい。
粘着層の形成は、粘着シートの製造と同様の各種コーティング法や各種印刷法を用いることができ、乾燥及び硬化工程においても同様である。また、必要に応じて養生してもよい。また、フレキシブル積層部材の製造時に使用する剥離シートは、粘着シートに使用される剥離シートと同様のものを用いればよい。
【実施例0125】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、ブロック共重合体の重合率、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(PDI)、粘着層厚さ、粘着材のゲル分率、400%歪ませた時の初期応力および復元率、粘着力は、下記の方法に従って評価した。
【0126】
なお、略語の意味は下記のとおりである。
EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
AA:アクリル酸
HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
BTEE:エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
AcOEt:酢酸エチル
【0127】
(重合率)
核磁気共鳴(NMR)測定装置(ブルカー・バイオスピン社製、型式:AVANCE500(周波数500MHz))を用いて、1H-NMRを測定(溶媒:CDCl3、内部標準:TMS)した。得られたNMRスペクトルについて、モノマー由来のビニル基のプロトンシグナル(3H)とポリマー由来のカルボニル基のα炭素に結合するプロトンシグナル(1H)の積分比を求め、モノマーの重合率を算出した。
【0128】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(PDI))
高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、型式HLC-8320GPC)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。カラムはTSKgel Super Multipore HZ-H(東ソー社製)を2本、移動相にテトラヒドロフラン溶液、検出器に示差屈折計を使用した。測定条件は、カラム温度を40℃、試料濃度を0.5mg/mL、試料注入量を10μm、流速を0.6mL/minとした。標準物質としてポリスチレン(分子量9,840,000、5,480,000、2,890,000、1,090,000、775,000、427,000、190,000、96,400、37,900、10,200、2,630、440)を使用して検量線(校正曲線)を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から分子量分布(PDI=Mw/Mn)を算出した。
【0129】
(粘着層厚さ)
厚さ測定機(テスター産業社製、「TH-104」)を用いて、粘着シート全体の総厚を測定し、この総厚から剥離シートの厚さを除することで、粘着層の厚さを求めた。
【0130】
(ゲル分率)
幅50mm、長さ120mm切り出した金網(400メッシュ)の質量W2を測定した。粘着シートから粘着層(粘着材)80mg~120mgを採取し、質量W1を測定した。粘着材が脱落しないように金網で包んで試験片を作製した。試験片をガラス瓶に入れ、酢酸エチルを40g注いで軽く振った後、常温(25℃)で72時間以上静置した。静置後、試験片をガラス瓶から取り出して室温で12時間以上放置し、さらに100℃の真空オーブンで4時間乾燥させた。乾燥後の試験片を室温まで冷却し質量W3を測定し、以下の式よりゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=(W3-W2)/W1×100
【0131】
(400%歪ませた時の初期応力、および復元率)
粘着シートを構成する粘着層(粘着材)を、ハンドローラーを用いて貼り合わせて積層し、厚さ600μmmの積層体を作製した。この積層体をサンプルとし、粘弾性測定装置(TA instruments社製、ARES G2)を用いて、25℃雰囲気下、直径8mmパラレルプレートで歪み400%、10分間の応力緩和試験、および、応力0kPa、10分間のクリープ試験を連続して行った。初期応力は応力緩和試験のせん断応力印可開始から0.1秒後の値とした。また、10分間のクリープ試験後のひずみから、以下の式に基づいて、復元率(%)を算出した。そして、復元率が75%以上の場合を「〇」、75%未満の場合を「×」と評価した。
復元率(%)={(400-10分間クリープ試験後のひずみ)/400}×100
【0132】
(粘着力)
粘着シートの一方の剥離シートを粘着層より剥離し、粘着層面にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡エステル(登録商標)フィルムE5100:東洋紡製、厚さ50μm)のコロナ処理面を貼り合わせ、幅25mm、長さ100mmの大きさに切り出し基材付き粘着シートを作製した。この基材付き粘着シートについて、被着体として、ポリイミドフィルムまたはガラスに対する粘着力を、JIS Z 0237(2009)の方法に準じて測定した。
具体的には、剥離シートを粘着層より剥離して、粘着層面をポリイミドフィルム(カプトン(登録商標)100V:東レデュポン製、厚さ25μm)、または、白板ガラス(S9112、松浪硝子工業社製、厚さ1.0~1.2mm)に、2kgのローラーを2往復させて圧着した。次に、島津製作所製精密万能試験機「AUTOGRAPH(登録商標) AGS-1kNX、50Nロードセル」を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で、粘着層の粘着力を測定した。
【0133】
<共重合体の製造>
(合成例1:共重合体No.A)
アルゴンガス導入管と撹拌機を備えたフラスコに、EHA(340.2g)、LA(240g)、AA(18g)、HBA(1.8g)、AIBN(26.1mg)、AcOEt(353.4g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(105mg)を加え、60℃で24時間反応させ、重合した。
【0134】
反応終了後、反応溶液にAcOEtを加え、共重合体No.Aを含有する共重合体溶液を得た。得られた共重合体No.AのMwが1,624,000、PDIが1.77、溶液の固形分が26.2質量%であった。表2に、使用した原料モノマー、有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤、溶媒、反応条件、重合率を示した。
【0135】
【表2】
【0136】
<粘着組成物の製造>
(粘着組成物No.1)
合成例1で得た共重合体No.Aの溶液381質量部(共重合体成分100質量部に対して)、架橋剤A(デュラネート(登録商標)D101)を0.148質量部、酢酸ブチル94.9質量部を加え、撹拌して固形分21.0質量%の粘着組成物No.1を得た。粘着組成物No.1は、共重合体が有する第1反応性基がヒドロキシ基であり、架橋剤が有する第2反応性基がイソシアネート基である。
【0137】
(粘着組成物No.2~8)
配合を表3に記載するように変更した以外は、粘着組成物No.1と同様にして、粘着組成物No.2~8を作製した。なお、表3に示す架橋剤の配合量は、固形分換算の配合量である。固形分とは、溶媒以外の成分である。粘着組成物No.2~8は、共重合体が有する第1反応性基がヒドロキシ基であり、架橋剤が有する第2反応性基がイソシアネート基である。
【0138】
<粘着シートの作製>
第1剥離シート(表面に離型処理を施したPETフィルム、クリーンセパ(登録商標)HY-US20:東山フイルム製、厚さ75μm)の離型面に、ベーカー式アプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が50μmとなるように粘着組成物を塗布した後、恒温乾燥器を用いて60℃3分、続けて150℃3分乾燥を行った。次に、第1剥離シート上に形成された粘着層に第2剥離シート(表面に離型処理を施したPETフィルム、クリーンセパ(登録商標)HY-S10:東山フイルム製、厚さ38μm)の離型面を貼り合わせた後、60で3日間エージングを行い、2枚の剥離シートに挟持された粘着層を作製した。書く粘着組成物から形成された粘着層(粘着材)の評価結果を表3に示した。
【0139】
【表3】
【0140】
架橋剤A:デュラネート D101(旭化成社製、イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート-1,6-ヘキサンジオール付加体、官能基数2、固形分濃度100質量%、NCO量19.7質量%))
架橋剤B:デュラネート TPA-100(旭化成社製、イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、官能基数3、固形分濃度100質量%、NCO量23.1質量%))
架橋剤C:デュラネート MHG-80B(旭化成社製、イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、官能基数6、固形分濃度80質量%、NCO量15.1質量%))
【0141】
粘着組成物No.1~3は、共重合体が所定量の第1反応性基を有し、モル比(共重合体の第1反応性基のモル量/架橋剤の第2反応性基のモル量)およびモル比(共重合体の第1反応性基のモル量/架橋剤のモル量)が所定範囲内の場合である。これらの粘着組成物No.1~3から形成された粘着材は、ポリイミドフィルムおよびガラスに対して実用上問題ない粘着力を有し、かつ、400%歪ませた後の復元性が優れていた。
【0142】
粘着組成物No.4~8は、共重合体が所定量の第1反応性基を有し、モル比(共重合体の第1反応性基のモル量/架橋剤の第2反応性基のモル量)が所定範囲内であるが、モル比(共重合体の第1反応性基のモル量/架橋剤のモル量)が11.5以上の場合である。これらの粘着組成物No.4~8から形成された粘着材は、ポリイミドフィルムおよびガラスに対して実用上問題ない粘着力を有するものの、400%歪ませた後の復元性が劣っていた。
【符号の説明】
【0143】
10:粘着シート
12:粘着層
14:第1フレキシブルシート部材
16:第2フレキシブルシート部材
20:フレキシブル積層部材
22:第1フレキシブル部材
24:第2フレキシブル部材
図1
図2