(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079142
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】視機能検査装置、視機能検査システム、及び視機能検査方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/113 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
A61B3/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190139
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】517208953
【氏名又は名称】株式会社MITAS Medical
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】特許業務法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 直史
(72)【発明者】
【氏名】有田 与希
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA21
4C316AB16
4C316FA01
4C316FC14
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】乳幼児の視機能検査を、簡易かつ高精度で実施可能とする。
【解決手段】本発明は、VR表示装置3と、サーバ装置1とからなる視機能検査システムであって、VR表示装置3は、表示部と、表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、被検者の視線を検出する視線検出部と、を備え、サーバ装置1は、VR表示装置3から送信された視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析する視線解析部と、視線解析部の解析結果に基づいて被検者の視機能の判定する判定部と、を備える視機能検査システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、
被検者の視線を検出する視線検出部と、
前記視線検出部の出力に基づいて視線データを生成する視線データ処理部と、
前記視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析する視線解析部と、
前記視線解析部の解析結果に基づいて被検者の視機能を判定する判定部と、を備える
視機能検査装置。
【請求項2】
VR表示装置と、サーバ装置とからなる視機能検査システムであって、
前記VR表示装置は、
表示部と、
前記表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、
被検者の視線を検出する視線検出部と、を備え、
前記サーバ装置は、
前記VR表示装置から送信された視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析する視線解析部と、
前記視線解析部の解析結果に基づいて被検者の視機能を判定する判定部と、を備える
視機能検査システム。
【請求項3】
検者の端末装置を更に備え、
前記サーバ装置は、前記視線解析部による解析結果を前記端末装置に送信し、
前記検者の端末装置は、前記解析結果を受信し、表示し、検者による診断結果の入力を受け付け、前記診断結果を前記サーバ装置に送信する
請求項2に記載の視機能検査システム。
【請求項4】
VR表示装置と、サーバ装置と、検者の端末装置とからなる視機能検査システムであって、
前記VR表示装置は、
第1表示部と、
前記表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、
前記表示中に被検者の眼を撮像する撮像部と、
前記撮像された画像データを送信する第1送信部と、
を備え、
前記サーバ装置は、
前記VR表示装置から送信された画像データを受信する第1受信部と、
前記画像データを前記検者の端末装置に送信する第2送信部と、
を備え、
前記検者の端末装置は、
前記画像データを受信する第2受信部と、
前記画像データに基づく画像を表示する第2表示部と、
検者により入力された診断結果を前記サーバ装置に送信する第3送信部と、
を備える
視機能検査システム。
【請求項5】
VR表示装置と、サーバ装置と、検者の端末装置とからなる視機能検査システムであって、
前記VR表示装置は、
第1表示部と、
前記表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、
被検者の視線を検出する視線検出部と、
前記視線検出部の出力に基づいて視線データを生成する視線データ処理部と、
前記視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析する視線解析部と、
前記視線解析部の解析結果を送信する第1送信部と、
を備え、
前記サーバ装置は、
前記VR表示装置から送信された解析結果を受信する第1受信部と、
前記解析結果を前記検者の端末装置に送信する第2送信部と、
を備え、
前記検者の端末装置は、
前記解析結果を受信する第2受信部と、
前記解析結果に基づく画像を表示する第2表示部と、
検者により入力された診断結果を前記サーバ装置に送信する第3送信部と、
を備える
視機能検査システム。
【請求項6】
VR表示装置では、
表示制御部が、表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御し、
視線検出部が、被検者の視線を検出し、
サーバ装置では、
視線解析部が、前記VR表示装置から送信された視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析し、
判定部が、前記視線解析部の解析結果に基づいて被検者の視機能を判定する
視機能検査方法。
【請求項7】
前記サーバ装置は、前記視線解析部による解析結果を検者の端末装置に送信し、
前記検者の端末装置は、前記解析結果を受信し、表示し、検者による診断結果の入力を受け付け、前記診断結果を前記サーバ装置に送信する
請求項6に記載の視機能検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、乳幼児等に対する視機能(視力、立体視)の評価法としてのPL(Preferential Looking)法等による視機能検査を、VR(Virtual Reality)表示装置を用いて実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳幼児については、視機能をできるだけ早期に把握し、正常でない場合には、できるだけ早期治療を行うことが臨床の現場では重要視されている。このような乳幼児を対象として視機能の評価法としては、PL法がある。PL法は、乳幼児に均一な画面と縞模様画面を見せたときに、乳幼児が縞模様の方を見る傾向にあることに着目して行われる検査であり、例えば、スクリーンに2つの円形窓を設け、投影機で縞模様画面と均一な画面とを投影し、検者が乳幼児の見方から視機能を判定するものである。
【0003】
そして、このようなPL法等による視機能検査を行う技術として、例えば特許文献1では、レ-ル状の横長ガイド部材の中央部に固定して設けた、発光ダイオ-ド又は液晶ビデオモニタ-等により乳幼児の関心をひくための固視用表示装置と、ガイド部材の左右にスライド,固定可能に装着した、複数のパタ-ン用画像を適宜選択して表示する液晶ビデオモニタ-等から成る検眼用表示装置と、固視用表示装置のオン,オフ、検眼用表示装置の左右の切換え及び表示,無表示,パタ-ンの切換え等を制御する制御装置とで構成した乳幼児視力検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、視線検出機能により、被検者である乳幼児の検査過程での視線の動きを検出し、遠隔の医師による視機能の判定を実現すること、あるいは視機能の自動判定を実現することは、開示も示唆もされていない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乳幼児の視機能検査を、簡易かつ高精度で実施可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る視機能検査システムは、表示部と、前記表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、被検者の視線を検出する視線検出部と、前記視線検出部の出力に基づいて視線データを生成する視線データ処理部と、前記視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析する視線解析部と、前記視線解析部の解析結果に基づいて被検者の視機能を判定する判定部と、を備える。
【0008】
本発明の第2の態様に係る視機能検査システムは、VR表示装置と、サーバ装置とからなる視機能検査システムであって、前記VR表示装置は、表示部と、前記表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、被検者の視線を検出する視線検出部と、を備え、前記サーバ装置は、前記VR表示装置から送信された視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析する視線解析部と、前記視線解析部の解析結果に基づいて被検者の視機能の判定する判定部と、を備える。
【0009】
この態様において、検者の端末装置を更に備え、前記サーバ装置は、前記視線解析部による解析結果を前記端末装置に送信し、前記検者の端末装置は、前記解析結果を受信し、表示し、検者による診断結果の入力を受け付け、前記診断結果を前記サーバ装置に送信するようにしてもよい。
【0010】
本発明の第3の態様に係る視機能検査システムは、VR表示装置と、サーバ装置と、検者の端末装置とからなる視機能検査システムであって、前記VR表示装置は、第1表示部と、前記第1表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、前記表示中に被検者の眼を撮像する撮像部と、前記撮像された画像データを送信する第1送信部と、を備え、前記サーバ装置は、前記VR表示装置から送信された画像データを受信する第1受信部と、前記画像データを前記検者の端末装置に送信する第2送信部と、を備え、前記検者の端末装置は、前記画像データを受信する第2受信部と、前記画像データに基づく画像を表示する第2表示部と、検者により入力された診断結果を前記サーバ装置に送信する第3送信部と、を備える。
【0011】
本発明の第4の態様に係る視機能検査システムは、VR表示装置と、サーバ装置と、検者の端末装置とからなる視機能検査システムであって、前記VR表示装置は、第1表示部と、前記表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御する表示制御部と、被検者の視線を検出する視線検出部と、前記視線検出部の出力に基づいて視線データを生成する視線データ処理部と、前記視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析する視線解析部と、前記視線解析部の解析結果を送信する第1送信部と、を備え、前記サーバ装置は、前記VR表示装置から送信された解析結果を受信する第1受信部と、前記解析結果を前記検者の端末装置に送信する第2送信部と、を備え、前記検者の端末装置は、前記解析結果を受信する第2受信部と、前記解析結果に基づく画像を表示する第2表示部と、検者により入力された診断結果を前記サーバ装置に送信する第3送信部と、を備える。
【0012】
本発明の第5の態様に係る視機能検査方法は、VR表示装置では、表示制御部が、表示部に検査指標を切り替えながら表示するよう制御し、視線検出部が、被検者の視線を検出し、サーバ装置では、視線解析部が、前記VR表示装置から送信された視線データと検査指標の切り替えタイミングに係るデータとに基づいて、被検者の視線を解析し、判定部が、前記視線解析部の解析結果に基づいて被検者の視機能を判定する。
【0013】
この態様において、前記サーバ装置は、前記視線解析部による解析結果を前記端末装置に送信し、検者の端末装置は、前記解析結果を受信し、表示し、検者による診断結果の入力を受け付け、前記診断結果を前記サーバ装置に送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乳幼児の視機能検査を、簡易かつ高精度で実施可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る視機能検査システムの構成図である。
【
図5】VR表示装置における虚像表示部の構成図である。
【
図8】同システムによる検査の流れを示すフローチャートである。
【
図9】同システムによる他の検査の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るVR表示装置の構成図である。
【
図11】同VR表示装置による検査の流れを示すフローチャートである。
【
図12】同システムによる他の検査の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
【0018】
図1には、本発明の第1実施形態に係る視機能検査システムの構成を示し説明する。
【0019】
同図に示されるように、本発明の第1実施形態に係る視機能検査システムは、サーバ装置1と、VR表示装置3とを備える。これに、医師等の端末装置2を加えて、視機能検査システムとすることもできる。サーバ装置1、端末装置2、及びVR表示装置3は、インターネット等の通信網4を介して無線又は有線で通信自在に接続されている。
【0020】
このような構成において、VR表示装置3は虚像光学系を有し、3次元の座標空間の中に検査指標等を表示する。VR表示装置3は、さらに視線検出部を備えており、検査指標の表示を切り替える過程での、被検者の視線方向を検出する。VR表示装置3は、検出した視線データを、通信網4を介して、サーバ装置1に送信する。サーバ装置1は、視線データを解析し、その解析結果に基づいて、被検者の視機能を判定する。あるいは、サーバ装置1は、視線データを解析した後、解析結果を医師の端末装置2に送信する。医師の端末装置2では、解析結果を表示し、医師が当該表示内容に基づいて、被検者の視機能を診断し、診断結果をサーバ装置1に送信する。サーバ装置1は、自動判定の結果、あるいは医師による診断の結果を、VR表示装置3に送信する。VR表示装置3では、自動判定の結果、あるいは医師による診断の結果を表示する。
【0021】
このように、この視機能検査システムによれば、医師等が存在していない環境においても、乳幼児の保護者等が操作することで、視機能について自動判定、あるいは遠隔の医師による診断を受けることが可能となる。VR表示装置3は、前述の通り、3次元の座標空間の中に、例えばPL法等で使用する各種指標等を表示することができるので、視機能の中でも、視力だけでなく、立体視についても、適正な検査が可能となる。
【0022】
また、VR表示装置を用いることで、省スペース化が図れると共に、表示を遠方にする立体表示が可能であることから、装置と被検者との距離を確保する必要もなくなる。さらには、片目ずつ検査を実施することが可能となる。
【0023】
図2には、視機能検査システムのサーバ装置の構成を示し説明する。
【0024】
同図に示されるように、サーバ装置1は、制御部11と、通信部12と、記憶部13とを有する。制御部11と、通信部12と、記憶部13とは、バスラインを介して通信可能に接続されている。これら構成のほか、キーボードやマウス等の入力部や、各種表示を行う液晶ディスプレイ等の表示部を有してもよい。
【0025】
通信部12は、例えば、ネットワークインタフェースカード(NIC;Network Interface Card)等により実現されるもので、インターネット等の通信網4と有線又は無線で接続され、医師等の端末装置2、及びVR表示装置3との間で通信を行う通信インタフェースである。一方、記憶部13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(HDD;Hard Disc Drive)、又は光ディスク装置等で実現される。記憶部13は、制御部11で実行されるプログラム、被検者情報、検者情報、及び検査結果等を記憶している。
【0026】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等で実現され、記憶部13に記憶されているプログラムを実行することで、例えば、主制御部11a、受信部11b、送信部11c、視線解析部11d、判定部11e、生成部11fとして機能する。なお、制御部11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Array)等の集積回路で構成されてよい。
【0027】
このような構成において、主制御部11aは、サーバ装置1の全体の制御を司るものであり、視線解析結果の検者の端末装置2への送信等を制御する。受信部11bは、VR表示装置3からの視線データ等を受信し、検者の端末装置2からの診断結果を受信する。送信部11cは、検者の端末装置2に視線解析結果を送信し、VR表示装置3に自動判定の結果、あるいは検者による診断結果を送信する。
【0028】
視線解析部11dは、受信部11bが受信した視線データを解析する。例えば、受信した視線データが画像データである場合には画像処理を行い、時系列的な画像の変化を解析する。判定部11eは、視線解析部11dの解析結果に基づいて、視機能の正常/異常を判定する。例えば、判定部11eは、均一画面から縞模様画面への切り替わりのタイミングと視線方向の変化との関係から、あるいは縞模様画面への視線の滞留時間等から所定のルールに従って判定を行う。生成部11fは、判定結果や診断結果に係る画面データをHTML形式等で生成する。
【0029】
図3には、視機能検査システムの端末装置の構成を示し説明する。
【0030】
同図に示されるように、検者の端末装置2は、制御部21と、通信部22と、操作部23と、表示部24と、記憶部25とを有する。各部21~25はバスラインを介して通信自在に接続されている。通信部22は、例えばNIC等により実現されるもので、通信網4と有線又は無線で接続されて、サーバ装置1等との間で通信を行う通信インタフェースである。操作部23は、マウスやキーボード等で実現され、ユーザによる各種操作入力を受け付ける。表示部24は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。操作部23と表示部24をタッチパネルとして一体に構成してもよい。記憶部25は、例えば、RAMやフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、HDD、又は光ディスク装置等で実現され、制御部21で実行されるプログラムを記憶している。
【0031】
制御部21は、CPUやMPU等で実現される。制御部21は、記憶部25に記憶されているプログラムを実行することで、例えば、主制御部21a、受信部21b、送信部21c、及び閲覧部21dとして機能する。制御部21は、ASICやFPGA等の集積回路で構成されてよい。
【0032】
このような構成において、主制御部21aは、端末装置2全体の制御を司る。受信部21bは、サーバ装置1から送られてきたHTML形式等の画面データを受信する。閲覧部21cは、ブラウザ機能を実現するものであり、受信部21bが受信した画面データに基づいて、表示部24に表示を行い、閲覧可能とする。そして、送信部21cは、診断結果などをサーバ装置1に対して送信する。
【0033】
図4には、視機能検査システムのVR表示装置の構成を示し説明する。
【0034】
同図に示されるように、VR表示装置3は、制御部31と、通信部32と、操作部33と、虚像表示部34と、記憶部35と、視線検出部36とを有する。各部31~36はバスラインを介して通信自在に接続されている。通信部32は、例えばNIC等により実現されるもので、通信網4と有線又は無線で接続されて、サーバ装置1等との間で通信を行う通信インタフェースである。操作部33は、操作ボタン等で実現され、ユーザによる各種操作入力を受け付ける。虚像表示部34は、虚像光学系を有し、例えばPL法等に係る各種指標を表示する。記憶部35は、例えば、RAMやフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、HDD、又は光ディスク装置等で実現され、制御部31で実行されるプログラムを記憶している。尚、VR表示装置3としては、ヘッドマウンテッドディスプレイ型のものやヘッドアップディスプレイを含むデスクトップ型のものなど、各種のものを採用することができる。
【0035】
制御部31は、CPUやMPU等で実現される。制御部31は、記憶部35に記憶されているプログラムを実行することで、例えば、主制御部31a、表示制御部31b、送信部31c、受信部31d、視線データ処理部31eとして機能する。制御部31は、ASICやFPGA等の集積回路で構成されてよい。
【0036】
このような構成において、主制御部31aは、VR表示装置全体の制御を司る。表示制御部31bは、例えば、PL法等による各種検査指標を虚像表示部34に表示するよう制御する。送信部31cは、検査指標の切り替えタイミングに係るデータと、視線データ処理部31dで処理された視線データを、通信部32を介してサーバ装置1に送信する。受信部31dは、サーバ装置1から送られてきた自動判定の結果や検者による診断結果を、通信部32を介して受信する。そして、視線データ処理部31dは、視線検出部26で得られた信号を処理し視線データを生成する。
【0037】
視線検出部36による被検者の検査過程での視線検出の手法については、例えば、赤外光の発光部と受光部を備え、発光部より出射された赤外光の被検者の角膜での反射光を受光部で受光し、エリアセンサ等の受光部での受光位置及び受光強度を出力するものや、撮像素子を備え、被検者の瞳全体を撮像し、撮像信号を出力するものなど、各種のものを採用することができる。前者の場合には、視線データ処理部31dは、受光位置及び受光強度を関連付けた視線データを生成し、後者の場合には、撮像信号を画像処理して画像データを生成することになる。
【0038】
ここで、
図5には、VR表示装置における虚像表示部の構成を示し説明する。
【0039】
同図に示されるように、虚像表示部34では、虚像光学系として、覗き穴に近い側から順に、第1レンズ群52と、第2レンズ群53とを備えている。第1レンズ群52は、覗き穴に近い側から順に、第1アクロマティックレンズ121と第2アクロマティックレンズ122を備えている。また、第2レンズ群53は、覗き穴に近い側から順に、平凸レンズ131とアクロマティックレンズ132を備えている。なお、この平凸レンズは一例にすぎず、両凸レンズ、両凹レンズ、あるいは凹凸レンズを適宜に組み合わせて用いてもよい。また、レンズだけでなく凹凸ミラーを組合せても良い。アクロマティックレンズ132と液晶ディスプレイ51の間には絞り54が設けられている。アクロマティックレンズ121,122,131、132は、互いに屈折率が異なる部材から構成された負レンズと正レンズを組み合わせたものであり、色収差を除去する機能を有し、それによって結像性能を高めている。なお,液晶ディスプレイ51は一例にすぎず、OLED等の別の表示方式のディスプレイを用いても良い。
【0040】
なお、負レンズ(凹レンズ)とは、周縁部よりも中央部の方が薄いレンズを指す。負レンズでは、光軸に平行な光はレンズによって屈折し、広がる。このとき拡散した光は、光軸上の1点から発せられているように広がる。また、正レンズ(凸レンズ)とは、周縁部よりも中央部の方が厚いレンズを指す。正レンズでは、光軸(レンズ曲面の中心をレンズに垂直に通る線)に平行な光はレンズによって屈折し、光軸上の1点に集まる。
【0041】
また、同図では、液晶ディスプレイ51の中央から発せられる光の光路を実線で、上端から発せられる光の光路を破線で、下端から発せられる光の光路を一点鎖線で、それぞれ示している。これらの光路で示すように、液晶ディスプレイ51から発せられる光のうち絞り54を通過する光のみが第2レンズ群53のアクロマティックレンズ132、平凸レンズ131を順に通過し、これにより液晶ディスプレイ51に表示される視標の像が結像位置Pで結像する。即ち、第2レンズ群53は結像光学系を構成している。液晶ディスプレイ51から発せられた光束は、光軸Cを中心軸とする方向に進行して被験者の眼に入射する。第1レンズ群52の第1アクロマティックレンズ121と第2アクロマティックレンズ122は、それらの焦点が視機能検査時に被験者の眼の位置よりも遠く位置するように配置されている。そのため、被験者の眼には、結像位置Pで結像した指標の像の虚像が被験者の眼から所定距離(例えば視力検査の場合、5m)離れた位置に映る。即ち、第1レンズ群52は、虚像形成光学系を構成している。
【0042】
【0043】
同図に示される表示態様は、VR表示装置3が、ヘッドマウンテッドディスプレイ型である場合のものである。はじめに
図6(a)に示されるように、検査対象の目にだけ検査指標が表示されるようにし、その際、中心付近に興味をもたせるように、画面の中央付近に指標を配置する。そして、
図6(b)に示されるように、画面の中央付近にあった通常の指標を縞模様に切り替え表示する。
【0044】
図7には、PL法による他の表示態様を示し説明する。
【0045】
同図に示される表示態様は、VR表示装置3が、ヘッドマウンテッドディスプレイ型又はデスクトップ型である場合のものである。はじめに、
図7(a)に示されるように、両目に検査指標が表示されるようにし、その際、中心付近に興味をもたせるように、画面の中央付近に指標を配置する。そして、
図7(b)に示されるように、検査対処の目に対応する方だけ、画面の中央付近にあった通所の指標を縞模様に切り替えて表示する。
【0046】
以下、
図8のフローチャートを参照して、視機能検査システムによる検査の流れを詳細に説明する。同流れは、サーバ装置1による自動判定を実施する場合のものである。
【0047】
処理を開始すると、VR表示装置3では、表示制御部31bの制御の下、虚像表示部34に検査指標を表示する(S1)。この表示態様については、先に
図6、
図7で説明した通りである。この検査の過程で、視線検出部36は、被検者の視線を検出する(S2)。視線検出部36による被検者の検査過程での視線検出の手法については、前述した通り、赤外光の発光部と受光部を備え、発光部より出射された赤外光の被検者の角膜での反射光を受光部で受光し、エリアセンサ等の受光部での受光位置及び受光強度を出力するものや、撮像素子を備え、被検者の瞳全体を撮像し、撮像信号を出力するものなど、各種のものを採用することができる。視線データ処理部31dは、前者の場合には、受光位置及び受光強度を関連付けた視線データを生成し、後者の場合には、撮像信号を画像処理して画像データを生成する。送信部31cは、この視線データと指標の切り替えタイミングに係るデータを、通信部32を介して、サーバ装置1に送信する(S3)。
【0048】
サーバ装置1では、受信部11bが、視線データと指標の切り替えタイミングに係るデータを受信し(S4)、視線解析部11dが、これらデータに基づいて視線を解析する(S5)。例えば、受信した視線データが画像データである場合には画像処理を行い、時系列的な画像の変化を解析する。判定部11eが、視線解析部11dの解析結果に基づいて、視機能の正常/異常を判定する(S6)。例えば、判定部11eは、均一画面から縞模様画面への切り替わりのタイミングと視線方向の変化との関係から、あるいは縞模様画面への視線の滞留時間等から所定のルールに従って判定を行う。そして、生成部11fが判定結果に係る画面データをHTML形式等で生成し、送信部11cが、判定結果に係る画面データをVR表示装置3に送信する(S7)。
【0049】
VR表示装置3では、受信部31dが判定結果に係る画面データを受信し(S8)、表示制御部31bの制御の下、虚像表示部24に判定結果が表示される(S9)。こうして検査に関わる一連の処理を終了する。
【0050】
次に、
図9のフローチャートを参照して、視機能検査システムによる他の検査の流れを詳細に説明する。同流れは、検者による診断を行う場合のものである。
【0051】
処理を開始すると、VR表示装置3では、表示制御部31bの制御の下、虚像表示部34に検査指標を表示する(S11)。この表示態様については、先に
図6、
図7で説明した通りである。検査の過程で、視線検出部36は、被検者の視線を検出する(S12)。視線検出部36による被検者の検査過程での視線検出の手法については、前述した通り、赤外光の発光部と受光部を備え、発光部より出射された赤外光の被検者の角膜での反射光を受光部で受光し、エリアセンサ等の受光部での受光位置及び受光強度を出力するものや、撮像素子を備え、被検者の瞳全体を撮像し、撮像信号を出力するものなど、各種のものを採用することができる。視線データ処理部31dは、前者の場合には、受光位置及び受光強度を関連付けた視線データを生成し、後者の場合には、撮像信号を画像処理して画像データを生成する。送信部31cは、この視線データと指標の切り替えタイミングに係るデータを、通信部32を介して、サーバ装置1に送信する(S13)。
【0052】
サーバ装置1では、受信部11bが、視線データと指標の切り替えタイミングに係るデータを受信し(S14)、視線解析部11dが、これらデータに基づいて視線を解析する(S15)。例えば、受信した視線データが画像データである場合には画像処理を行い、時系列的な画像の変化を解析する。そして、生成部11fが、解析結果に関わる画面データをHTML形式などで生成し、送信部11cが、通信部12を介して、画面データを検者の端末装置2に送信する(S16)。
【0053】
検者の端末装置2では、受信部21bが、通信部22を介して、画面データを受信し(S17)、閲覧部21dの制御の下、表示部24に解析結果を画面表示する。この画面は、検査指標の切り替えタイミングと、視線の変化を時系列的な流れの中で対比しながら確認できる各種のものを採用することができる。検者は、この画面を閲覧しながら操作部23を操作して、診断結果を入力する(S18)。送信部21cは、通信部22を介して、この診断結果をサーバ装置1に送信する(S19)。
【0054】
サーバ装置1では、受信部11bが、診断結果を受信し(S20)、生成部11fが診断結果に係る画面データをHTML形式等で生成し、主制御部11aの制御の下、送信部11cが診断結果に係る画面データをVR表示装置3に送信する(S21)。
【0055】
VR表示装置3では、受信部31dが診断結果に係る画面データを受信し(S22)、表示制御部31bの制御の下、虚像表示部24に診断結果が表示される(S23)。こうして検査に関わる一連の処理を終了する。
【0056】
<第2実施形態>
【0057】
本発明の第2実施形態に係る視機能検査システムは、VR表示装置自体が、視機能検査装置として、視線解析機能及び判定機能を備える点で、前述した第1実施形態と異なる。
【0058】
図10には、本発明の第2実施形態に係る視機能検査システムにおけるAR表示装置の構成を示し説明する。ここでは、第1実施形態と同じ構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0059】
同図に示されるように、視機能検査装置としてのVR表示装置3では、制御部31が、記憶部35のプログラムを読み出し、実行することで、視線解析部31f、判定部31gとしても機能することを特徴とする。
【0060】
視線データ処理部31eは、視線検出部26で得られた信号を処理し視線データを生成する。視線解析部31fは、視線データを解析する。例えば、視線データが画像データである場合には画像処理を行い、時系列的な画像の変化を解析する。判定部31gは、視線解析部31fの解析結果に基づいて、視機能の正常/異常を判定する。例えば、判定31gは、均一画面から縞模様画面への切り替わりのタイミングと視線方向の変化との関係から、あるいは縞模様画面への視線の滞留時間等から所定のルールに従って判定を行う。そして、表示制御部31bの制御の下、判定結果が虚像表示部24に表示される。
【0061】
以下、
図11のフローチャートを参照して、VR表示装置3による、視線検出から判定に至るまでの処理手順について詳細に説明する。
【0062】
処理を開始すると、VR表示装置3では、表示制御部31bの制御の下、虚像表示部34に検査指標を表示する(S31)。この表示態様については、先に
図6、
図7で説明した通りである。この検査の過程で、視線検出部36は、被検者の視線を検出する(S32)。視線検出部36による被検者の検査過程での視線検出の手法については、前述したが、赤外光の発光部と受光部を備え、発光部より出射された赤外光の被検者の角膜での反射光を受光部で受光し、エリアセンサ等の受光部での受光位置及び受光強度を出力するもの、あるいは、撮像素子を備え、被検者の瞳全体を撮像し、撮像信号を出力するものなど、各種のものを採用することができる。視線データ処理部31dは、前者の場合には、受光位置及び受光強度を関連付けた視線データを生成し、後者の場合には、撮像信号を画像処理して画像データを生成する(S33)。
【0063】
続いて、視線解析部31fは、視線データを解析する(S34)。例えば、視線データが画像データである場合には画像処理を行い、時系列的な画像の変化を解析する。判定部31gは、視線解析部31fの解析結果に基づいて、視機能の正常/異常を判定する(S35)。例えば、判定31gは、均一画面から縞模様画面への切り替わりのタイミングと視線方向の変化との関係から、あるいは縞模様画面への視線の滞留時間等から所定のルールに従って判定を行う。そして、表示制御部31bの制御の下、判定結果が虚像表示部24に表示される(S36)。
【0064】
次に、
図12のフローチャートを参照して、視機能検査システムによる他の検査の流れを詳細に説明する。同流れは、検者による診断を行う場合のものである。
【0065】
処理を開始すると、VR表示装置3では、表示制御部31bの制御の下、虚像表示部34に検査指標を表示する(S41)。表示態様については、先に
図6、
図7で説明した通りである。この検査の過程で、視線検出部36は、被検者の視線を検出する(S42)。視線検出部36による被検者の検査過程での視線検出の手法については、前述したとおりである。視線データ処理部31dは、エリアセンサの受光位置及び受光強度を関連付けた視線データを生成し、あるいは、撮像素子からの撮像信号を画像処理して画像データを生成する。視線解析部31fは、視線データを解析する(S43)。例えば、視線データが画像データである場合には画像処理を行い、時系列的な画像の変化を解析する。そして、送信部31cが、解析結果をサーバ装置1に送信する(S44)。
【0066】
サーバ装置1では、受信部11bが、解析結果を受信し(S45)、生成部11fが解析結果に係るHTML形式等の画面データを生成し、送信部11cが、通信部12を介して画面データを検者の端末装置2に送信する(S46)。
【0067】
検者の端末装置2では、受信部21bが、通信部22を介して、画面データを受信し(S47)、閲覧部21dの制御の下、表示部24に解析結果を画面表示する。この画面は、検査指標の切り替えタイミングと、視線の変化を時系列的な流れの中で対比しながら確認できる各種のものを採用することができる。検者は、この画面を閲覧しながら操作部23を操作して、診断結果を入力する(S48)。送信部21cは、通信部22を介して、この診断結果をサーバ装置1に送信する(S49)。
【0068】
サーバ装置1では、受信部11bが、診断結果を受信し(S50)、生成部11fが診断結果に係る画面データをHTML形式等で生成し、主制御部11aの制御の下、送信部11cが診断結果に係る画面データをVR表示装置3に送信する(S51)。
【0069】
VR表示装置3では、受信部31dが診断結果に係る画面データを受信し(S52)、表示制御部31bの制御の下、虚像表示部24に診断結果が表示される(S53)。こうして検査に関わる一連の処理を終了する。
【0070】
以上説明したように、本発明の第1及び第2実施形態によれば、視機能(視力、立体視)を医師等の検者が存在しない遠隔地においても、被検者の関係者等が操作することで、簡易かつ高精度に検査することが可能となる。また、遠隔の医師等に対しても、リアルタイムあるいは事後的に、検査指標の切り替えのタイミングと対応付けて視線データの解析結果が提示可能であるので、リモートの医師等による診断を受けることも可能となる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【0072】
例えば、視線検出の手法については、前述したものに限定されず、多種多様な手法を採用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…サーバ装置、2…端末装置、3…VR表示装置、4…通信網、11…制御部、11a…主制御部、11b…受信部、11c…送信部、11d…視線解析部、11e…判定部、12…通信部、13…記憶部、21…制御部、21a…主制御部、21b…受信部、21c…送信部、21d…閲覧部、22…通信部、23…操作部、24…表示部、25…記憶部、31…制御部、31a…主制御部、31b…表示制御部、31c…送信部、31d…受信部、31e…視線データ処理部、32…通信部、33…操作部、34…虚像表示部、35…記憶部、36…視線検出部、51…液晶ディスプレイ、52…第1レンズ群、53…第2レンズ群、54…絞り、55…カメラ、121…第1アクロマティックレンズ、122…第2アクロマティックレンズ、131…平凸レンズ、132…アクロマティックレンズ。