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特開2022-79143撥水性組成物及び該組成物を用いた物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079143
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】撥水性組成物及び該組成物を用いた物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20220519BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20220519BHJP
   C08L 43/00 20060101ALI20220519BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20220519BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C08L101/10
C09K3/18 102
C09K3/18 104
C08L43/00
C08K5/54
C08F230/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190143
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】596024921
【氏名又は名称】株式会社ハーベス
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】梅津 清和
(72)【発明者】
【氏名】江森 俊貴
【テーマコード(参考)】
4H020
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4H020BA12
4H020BA13
4H020BA32
4J002AA03W
4J002AA03X
4J002BG05W
4J002BG06W
4J002BG07W
4J002BG08W
4J002CH05X
4J002EX036
4J002FD146
4J002FD14X
4J002GH01
4J002GH02
4J002HA05
4J100AJ01Q
4J100AJ02Q
4J100AJ08Q
4J100AJ09Q
4J100AK31Q
4J100AK32Q
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL36Q
4J100AL44Q
4J100AL91Q
4J100AM15Q
4J100AM17Q
4J100AM37Q
4J100AM43Q
4J100AQ08Q
4J100AQ12Q
4J100AQ26Q
4J100BA03Q
4J100BA04Q
4J100BA05Q
4J100BA12Q
4J100BA15Q
4J100BA16Q
4J100BA31Q
4J100BA77P
4J100BB18Q
4J100BC04Q
4J100BC07Q
4J100BC09Q
4J100BC12Q
4J100BC23Q
4J100BC26Q
4J100BC43Q
4J100BC54Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100JA01
4J100JA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬度と撥水性が共に優れ、且つ、塗膜割れがない外観性が良好な膜を形成可能な組成物を提供する。
【解決手段】共重合体と、含フッ素シラン化合物とを含み、前記共重合体は、第1単量体単位と、第2単量体単位を有し、第1単量体単位は、ケイ素原子を有しない(メタ)アクリル系単量体単位であり、第2単量体単位は、下記式(1)で表されるケイ素原子を有する単量体に由来する単位であり、CH=C(R)-COO-X-Y(1)上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数2~10の2価の有機基であり、Yは、ケイ素原子を含む加水分解性基である、組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体と、含フッ素シラン化合物と、を含み、
前記共重合体は、第1単量体単位と、第2単量体単位を有し、
前記第1単量体単位は、ケイ素原子を有しない(メタ)アクリル系単量体単位であり、
前記第2単量体単位は、下記式(1)で表されるケイ素原子を有する単量体に由来する単位であり、
CH=C(R)-COO-X-Y (1)
上記式(1)中、
は、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、
は、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数2~10の2価の有機基であり、
は、ケイ素原子を含む加水分解性基である、組成物。
【請求項2】
前記含フッ素シラン化合物は、下記式(2)及び下記式(3)で表される化合物群から選択される少なくとも1種であり、
A-Rf-B (2)
Rf-B (3)
上記式(2)及び式(3)中、
Aは、フッ素原子、水素原子、又は炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、又はBであり、
Bは、下記式(4)で表される基であり、
-X-Y (4)
上記式(4)中、
は、フッ素置換されていてもよく、またエーテル結合を含んでいてもよい炭素数2~6の2価の有機基であり、
は、ケイ素原子を含む加水分解性基であり、
Rfは、下記式(7)で表されるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であり、
-(CFCFO)(CF(CF)CFO)(CFO)(CFCFCFO)- (7)
上記式(7)中、
b、c、d及びeは、それぞれ独立して、0または1以上の整数であり、かつ、b+c+d+eは2~100であり、(CFCFO)、(CF(CF)CFO)、(CFO)、(CFCFCFO)の各繰り返し単位の結合順序は限定されず、互いにランダムに結合していてもよくブロックで結合していてもよく、
Rfは、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2単量体単位は、下記式(1-1)で表されるケイ素原子を有する単量体に由来する単位であり、
CH=C(R)-COO-(CH-SiR (3-n)(OR (1-1)
式(1-1)中、
は、水素原子、フッ素原子、又はメチル基であり、
及びRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~4の1価の炭化水素基であり、
mは、2~4の整数であり、
nは、1~3の整数である、
請求項1又は請求項2に記載の組成物
【請求項4】
前記共重合体100質量部に対し、前記含フッ素シラン化合物を0.1~20質量部含む、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記共重合体は、前記第2単量体単位を30~90質量%有する、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
フッ素系溶剤と、フッ素原子を含まない非フッ素系溶剤をさらに含み、
前記非フッ素系溶剤は、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、及びグライム系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記共重合体100質量部に対し、硬化触媒を0.1~10質量部含む、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1項に記載の組成物の硬化体である撥水性硬化膜を備える物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性組成物及び該組成物を用いた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の表面のコーティングのため、撥水性等を有する膜を形成可能な表面処理剤が求められている。特許文献1においては、アクリレート系共重合体を含む撥水撥油防汚処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-187280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、種々の用途において、硬度と撥水性が共に優れた膜を形成可能な表面処理剤が求められている。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、硬度と撥水性が共に優れ、且つ、塗膜割れがない外観性が良好な膜を形成可能な組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、共重合体と、含フッ素シラン化合物と、を含み、前記共重合体は、第1単量体単位と、第2単量体単位を有し、前記第1単量体単位は、ケイ素原子を有しない(メタ)アクリル系単量体単位であり、 前記第2単量体単位は、下記式(1)で表されるケイ素原子を有する単量体に由来する単位であり、
CH=C(R)-COO-X-Y (1)
上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数2~10の2価の有機基であり、Yは、ケイ素原子を含む加水分解性基である、組成物が提供される。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、特定の組成を有する共重合体と、含フッ素シラン化合物とを含有する組成物を用いた場合に、硬化により硬度と撥水性が共に優れ、且つ、外観性が良好な膜を形成可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記含フッ素シラン化合物は、下記式(2)及び下記式(3)で表される化合物群から選択される少なくとも1種であり、
A-Rf-B (2)
Rf-B (3)
上記式(2)及び式(3)中、
Aは、フッ素原子、水素原子、又は炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、又はBであり、
Bは、下記式(4)で表される基であり、
-X-Y (4)
上記式(4)中、
は、フッ素置換されていてもよく、またエーテル結合を含んでいてもよい炭素数2~6の2価の有機基であり、
は、ケイ素原子を含む加水分解性基であり、
Rfは、下記式(7)で表されるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であり、
-(CFCFO)(CF(CF)CFO)(CFO)(CFCFCFO)- (7)
上記式(7)中、
b、c、d及びeは、それぞれ独立して、0または1以上の整数であり、かつ、b+c+d+eは2~100であり、(CFCFO)、(CF(CF)CFO)、(CFO)、(CFCFCFO)の各繰り返し単位の結合順序は限定されず、互いにランダムに結合していてもよくブロックで結合していてもよく、
Rfは、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基である、組成物である。
好ましくは、前記第2単量体単位は、下記式(1-1)で表されるケイ素原子を有する単量体に由来する単位であり、
CH=C(R)-COO-(CH-SiR (3-n)(OR (1-1)
式(1-1)中、
は、水素原子、フッ素原子、又はメチル基であり、
及びRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~4の1価の炭化水素基であり、
mは、2~4の整数であり、
nは、1~3の整数である、組成物である。
好ましくは、前記共重合体100質量部に対し、前記含フッ素シラン化合物を0.1~20質量部含む、組成物である。
好ましくは、前記共重合体は、前記第2単量体単位を30~90質量%有する、組成物である。
好ましくは、フッ素系溶剤と、フッ素原子を含まない非フッ素系溶剤をさらに含み、前記非フッ素系溶剤は、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、及びグライム系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である、組成物である。
好ましくは、前記共重合体100質量部に対し、硬化触媒を0.1~10質量部含む、組成物である。
本発明の別の観点によれば、上記組成物の硬化体である撥水性硬化膜を備える物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.組成物
本発明の一実施形態に係る組成物は、共重合体と、含フッ素シラン化合物と、を含む。
【0011】
<共重合体(A)>
共重合体(A)は、第1単量体単位と、第2単量体単位を有する。第1単量体単位は及び第2単量体単位は、それぞれ第1単量体及び第2単量体に由来する共重合体(A)を構成する単位である。第1単量体及び第2単量体の共重合により当該共重合体(A)が合成される。第1単量体単位と、第2単量体単位とは異なる単量体単位である。また、共重合体(A)は、第1単量体及び第2単量体と共重合可能なその他の単量体由来の単量体単位を有していてもよい。
【0012】
共重合体(A)は、共重合体(A)を構成する単量体単位100質量%に対して第1単量体単位を、好ましくは10~99質量%有し、より好ましくは10~70質量%有し、さらに好ましくは15~60質量%有し、特に好ましくは20~55質量%有する。共重合体(A)中の第1単量体単位の含有量は、具体的には例えば、10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0013】
共重合体(A)は、共重合体(A)を構成する単量体単位100質量%に対して第2単量体単位を、好ましくは1~90質量%有し、より好ましくは30~90質量%有し、さらに好ましくは40~85質量%有し、特に好ましくは45~80質量%有する。共重合体(A)が第2単量体単位を90質量%以下の割合で含有することにより、塗膜の硬化時のひび割れを抑制することができ硬化膜の外観性に優れる。共重合体(A)が第2単量体単位を10質量%以上の割合で含有することにより、硬化膜の硬度が優れる。共重合体(A)中の第2単量体単位の含有量は、具体的には例えば、30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
<第1単量体単位>
第1単量体単位は、ケイ素原子を有しない(メタ)アクリル系単量体単位である。ケイ素原子を有しない(メタ)アクリル系単量体単位は、好ましくはケイ素-炭素結合及びケイ素-酸素結合の何れも有さず、より具体的にはアルコキシシリル基及びシラノール基等のオキシシリル基を有しない。このような第1単量体単位を第2単量体単位とともに用いることで、硬化膜の硬度が優れるとともに、硬化時のひび割れを抑制でき硬化膜の外観性に優れる。
【0015】
第1単量体単位は、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル単量体単位であり、より好ましくはメタクリル酸エステル単量体単位である。また、第1単量体単位は、一態様においては、好ましくはアクリロイルオキシ基を1つ有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の単量体単位である。
【0016】
第1単量体単位が由来する第1単量体としては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチルアダマンチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、親水基や有機官能基等を有するヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー、等が挙げられる。また、パーフルオロアルキル基を有する、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、第1単量体としては、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはメチル(メタ)アクリレートである。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
第1単量体単位は、好ましくは炭素数が10以下の構造単位であり、より好ましくは炭素数が6以下の構造単位である。また、第1単量体単位は、好ましくは分子量が200以下の単量体に由来する単量体単位であり、より好ましくは分子量が150以下の単量体に由来する単量体単位であり、さらに好ましくは分子量が110以下の単量体に由来する単量体単位である。
【0018】
<第2単量体単位>
第2単量体単位は、下記式(1)で表される単量体(第2単量体)に由来する単量体単位である。このような第2単量体単位を第1単量体単位とともに用いることで、硬化膜の硬度が優れるとともに、硬化時のひび割れを抑制でき硬化膜の外観性に優れる。
CH=C(R)-COO-X-Y (1)
【0019】
上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。Xは、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数2~10の2価の有機基である。Yは、ケイ素原子を含む加水分解性基である。
【0020】
は、好ましくは炭素数2~4の2価の炭化水素基である。また、Yは、ケイ素原子及びアルコキシ基を含む加水分解性基である。このような好ましい構造の第2単量体は、例えば、下記式(1-1)で表される単量体である。
CH=C(R)-COO-(CH-SiR (3-n)(OR (1-1)
【0021】
上記式(1-1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、又はメチル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。R及びRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~4の1価の炭化水素基であり、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。mは、2~4の整数であり、好ましくは3である。nは、1~3の整数であり、好ましくは2~3であり、より好ましくは3である。
【0022】
第2単量体単位は、一態様においては、好ましくは環状構造を有しない単量体単位である。また、第2単量体単位は、一態様においては、好ましくはフッ素原子を有しない単量体単位である。
【0023】
第2単量体単位が由来する第2単量体としては、具体的には例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル系単量体に由来する単量体単位が挙げられる。なかでも、第2単量体としては、好ましくは3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランに由来する単量体単位であり、特に好ましくは3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
第2単量体単位は、好ましくは炭素数が7以上の構造単位であり、より好ましくは炭素数が10以上の構造単位である。第2単量体単位は、好ましくは炭素数が20以下の構造単位、より好ましくは15以下の構造単位である。また、第2単量体単位は、好ましくは分子量が200以上の単量体に由来する単量体単位であり、より好ましくは分子量が220以上の単量体に由来する単量体単位である。また、第2単量体単位は、好ましくは分子量がさらに好ましくは分子量が400以下の単量体に由来する単量体単位であり、より好ましくは分子量が300以下の単量体に由来する単量体単位である。
【0025】
<その他の単量体単位>
第1単量体及び第2単量体と共重合可能なその他の単量体としては、例えば、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニル系単量体が挙げられる。
【0026】
<含フッ素シラン化合物(B)>
含フッ素シラン化合物(B)は、フッ素原子を含むシラン化合物である。なお、含フッ素シラン化合物(B)は、一部が加水分解されたものを含んでいてもよい。
【0027】
含フッ素シラン化合物は、例えば、下記式下記式(2)及び下記式(3)で表される化合物群から選択される少なくとも1種であり。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
A-Rf-B (2)
Rf-B (3)
【0028】
上記式(2)及び式(3)中、Aは、フッ素原子、水素原子、又は炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、又はBである。Bは、下記式(4)で表される基である。
-X-Y (4)
【0029】
上記式(4)中、Xは、フッ素置換されていてもよく、またエーテル結合を含んでいてもよい炭素数2~6の2価の有機基である。Xは好ましくは、例えば、下記式(5-1)~(5-3)で表される連結基である。
-CFCHOCHCHCH- (5-1)
-CFCHCHCH- (5-2)
-CF(CF)CHOCHCHCH- (5-3)
【0030】
上記式(4)中、Yは、ケイ素原子を含む加水分解性基である。Yは好ましくは、例えば、下記式(6)で表される構造を有する基である。
-SiR (3-r)(OR (6)
【0031】
及びRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~4の1価の炭化水素基であり、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。rは、1~3の整数であり、好ましくは2~3であり、より好ましくは3である。
【0032】
Rfは、(CFCFO)の繰り返し単位(以下、繰り返し単位(CFCFO)ともいう。)、(CF(CF)CFO)の繰り返し単位(以下、繰り返し単位(CF(CF)CFO)ともいう。)、(CFO)の繰り返し単位(以下、繰り返し単位(CFO)ともいう。)、および(CFCFCFO)の繰り返し単位(以下、繰り返し単位(CFCFCFO)ともいう。)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる。Rfは、例えば、下記式(5)で表されるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖の連結基である。
-(CFCFO)(CF(CF)CFO)(CFO)(CFCFCFO)- (7)
【0033】
上記式(7)中、b、c、d及びeは、それぞれ独立して、0または1以上の整数であり、かつ、b+c+d+eは2~100である。b+c+d+eは、2~80がより好ましく、2~50が特に好ましい。b+c+d+eが上記範囲であると撥水性と非フッ素系溶剤への溶解性が良好になる。なお、組成物におけるb、c、dおよびeの値は、それぞれ平均値である。
【0034】
Rfにおいて、繰り返し単位(CFCFO)、繰り返し単位(CF(CF)CFO)、繰り返し単位(CFO)、および繰り返し単位(CFCFCFO)の結合順序は限定されず、互いにランダムに結合しても、ブロックで結合してもよい。
【0035】
Rfとしては、例えば、以下の式(7-1)~(7-5)で表される連結基(以下、連結基(7-1)~連結基(7-5)ともいう。)が挙げられる。
-(CFCFO)b1- (7-1)
ただし、b1は5~80の整数である。
-(CF(CF)CFO)c1- (7-2)
ただし、c1は5~55の整数である。
-(CFCFCFO)e1- (7-3)
ただし、e1は5~55の整数である。
-(CFCFO)b2-(CFO)d1- (7-4)
ただし、b2は1~50の整数、d1は1~50の整数である。
-(CF(CF)CFO)c2-(CFO)d2- (7-5)
ただし、c2は1~40の整数、d2は1~40の整数である。
【0036】
なかでも、連結基(7-1)、連結基(7-3)または連結基(7-4)が好ましい。なお、連結基(7-1)においては、b1は6~60がより好ましく、10~40であるが特に好ましい。連結基(7-3)においては、e1は5~50がより好ましく、8~30が特に好ましい。連結基(7-4)においては、b2は1~30、d1は1~30が好ましい。
【0037】
Rfは、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基である。
【0038】
組成物は、共重合体(A)100質量部に対し含フッ素シラン化合物(B)を、好ましくは0.1~20質量部含み、より好ましくは1~15質量部含み、さらに好ましくは2~13質量部含む。このような範囲とすることで、硬化膜の硬度及び撥水性がともに優れる。含フッ素シラン化合物(B)の含有量は、共重合体(A)100質量部に対し、具体的には例えば、0.1,0.5,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
<フッ素系溶剤(C)>
本発明の一実施形態に係る組成物は、フッ素系溶剤をさらに含んでいてよい。フッ素系溶剤(C)は、例えば、フッ素原子を有する炭化水素等のフッ素系溶剤である。
【0040】
フッ素系溶剤は、例えば、フッ素および炭素を含み、さらに塩素、酸素および水素を含んでもよい。フッ素系溶剤は、具体的には、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。
【0041】
フッ素化アルカンとしては、炭素数4~8の化合物が好ましい。フッ素化アルカンとしては、例えば、CFCHCFH(HFC-245fa)、CFCHCFCH、ペルフルオロヘキサン、1H-ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン、C13H、C13、CCHFCHFCF等が挙げられる。
【0042】
フッ素化芳香族化合物としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4~12の化合物が好ましい。フルオロアルキルエーテルとしては、例えばCFCHOCFCFH、COCH、COC、CCF(OCH)C等が挙げられる。
【0043】
フッ素化アルキルアミンとしては、例えば、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。フルオロアルコールとしては、例えば、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。その他、ジクロロペンタフルオロプロパン、ペルフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)等が挙げられる。これらのフッ素系溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
<非フッ素系溶剤(D)>
本発明の一実施形態に係る組成物は、非フッ素系溶剤(D)をさらに含んでいてよい。非フッ素系溶剤(D)は、フッ素原子を含まない化合物である。非フッ素系溶剤(D)は、一態様においては、好ましくはエーテル構造、水酸基、グリコール由来の構造、及びカルボニル基等から選択される少なくとも1つを有する。非フッ素系溶剤(D)は、一態様においては、好ましくはエーテル構造及び水酸基を有する。このような構造を有する非フッ素系溶剤(D)を添加することで、硬化膜の撥水性が特に優れる。
【0045】
本発明の一実施形態に係る組成物は、非フッ素系溶剤(D)としては、例えば、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤及びグライム系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0046】
炭化水素系溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカン、ノルマルペンタン、及びイソペンタン等が挙げられる。
【0047】
アルコール系溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、変性エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ターシャリーブタノール、セカンダリーブチルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、及び2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0048】
ケトン系溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0049】
エステル系溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、及び乳酸ブチル等が挙げられる。
【0050】
エーテル系溶剤としては、例えばジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、1,4-ジオキサン、及びメチルターシャリーブチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
グリコール系溶剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びプロピレングリコール等が挙げられる。
【0052】
グリコールエステル系溶剤としては、例えばエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0053】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノへキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、及びジプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0054】
グライム系溶剤としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0055】
一態様においては、非フッ素系溶剤(D)は、好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン等である。
【0056】
非フッ素系溶剤(D)の分子量は、好ましくは30g/mоl~200g/mоlであり、好ましくは80g/mоl~180g/mоlである。また、添加剤(D)の沸点は、好ましくは50~270℃であり、好ましくは100~260℃である。このような範囲とすることで、硬化膜の撥水性を向上させることができる。
【0057】
組成物は、非フッ素系溶剤(D)を共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは1~300質量部含み、より好ましくは5~200質量部含む。また、組成物は、非フッ素系溶剤(D)を組成物100質量%に対して、好ましくは0.1~20質量%含み、より好ましくは1~16質量%含む。このような範囲とすることにより、硬化膜の撥水性が特に優れ、且つ、非フッ素系溶剤(D)による外観への影響を抑えることができる。非フッ素系溶剤(D)の添加量が多すぎると、均一な塗工が困難になり塗膜にムラが生じやすくなる。非フッ素系溶剤(D)を含む組成物中における添加剤(D)の含有量は、具体的には例えば、0.1,0.5,1,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0058】
<硬化触媒(E)>
本発明の一実施形態に係る組成物は、共重合体(A)及び含フッ素シラン化合物(B)の縮合反応促進の観点から、硬化触媒をさらに含有してもよい。
【0059】
硬化触媒(E)としては、従来公知の種々の加水分解・縮合用触媒を使用することができる。具体的には、以下のものを例示することができる。即ち、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、メタンスルフォン酸等の酸類、NaOH、アンモニア、トリエチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物、及びアミン化合物の塩類、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩等の塩基類、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムのようなフッ化塩、固体酸性触媒あるいは固体塩基性触媒(例えばイオン交換樹脂触媒等)、鉄-2-エチルヘキソエート、チタンナフテート、亜鉛ステアレート、ジブチル錫ジアセテート等の有機カルボン酸の金属塩、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)テトラブトキシチタン、テトラ-i-プロポキシチタン、ジブトキシ-(ビス-2,4-ペンタンジオネート)チタン、ジ-i-プロポキシ(ビス-2,4-ペンタンジオネート)チタン等の有機チタンエステル、テトラブトキシジルコニウム、テトラ-i-プロポキシジルコニウム、ジブトキシ-(ビス-2,4-ペンタンジオネート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ(ビス-2,4-ペンタンジオネート)ジルコニウム等の有機ジルコニウムエステル、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムアセチルアセトナート錯体等のアルミニウムキレート化合物等の有機金属化合物、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルキル置換アルコキシシランが例示され、これらを単独で又は混合して使用してもよい。また、これらの触媒は、緻密で強固な硬化被膜を得る目的で、コーティングする際、本防汚性コーティング剤に配合して使用してもよい。なかでも、フッ素系溶剤への溶解性と硬化性の観点から、アルミニウムやチタンを含む有機金属化合物が好ましい。より具体的には、アルミニウムキレート化合物(例えば、DX9740(信越化学社製))、有機チタン系化合物(例えば、オルガチックスTC-750(マツモトファインケミカル社製))等が好ましい。
【0060】
組成物は、共重合体(A)100質量部に対し硬化触媒(E)を、好ましくは0.01~10質量部含み、より好ましくは0.1~8質量部含む。共重合体(A)100質量部に対する硬化触媒(E)の含有量は、具体的には例えば、0.01,0.05,0.1,0.5,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0061】
<その他の添加剤>
組成物は、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、二酸化チタン等の顔料、無機あるいは有機の充填材、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、レベリング剤、pH調整剤、繊維類、つや消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等を混合することができる。
【0062】
<組成物の調製方法>
組成物は、共重合体(A)及び、含フッ素シラン化合物(B)をフッ素系溶剤(C)に溶解させ、この混合物に必要に応じて非フッ素系溶剤(D)及び硬化触媒(E)等を添加することにより得られる。
【0063】
2.硬化膜及び物品
本発明に係る組成物は、例えば、種々の物品に対して撥水性の膜を形成するための撥水性表面処理剤として用いることができる。また、組成物は、好ましくは熱硬化により硬化体を形成することが好ましい。
【0064】
本発明の一実施形態に係る物品は、基材と、基材上に設けられた撥水性硬化膜を備える撥水性物品である。撥水性硬化膜は、上記組成物の硬化膜である。表面処理剤の硬化膜は、組成物を基材表面に塗布し、硬化させたものである。
【0065】
組成物を基材表面に塗布する塗布方法としては、手塗り法、ノズルフローコート法、ディッピング法、スプレー法、リバースコート法、フローコート法、スピンコート法、ロールコート法が適宜採用され得る。これらの塗布方法の中では、手塗り法が、塗着効率が高く塗布ロスが少ない点、塗布設備の導入費用を削減できる点などから好ましい。なお、本発明で「手塗り法」とは、組成物を塗布用部材に給液した後、該部材を基材に接触させる手段、及び、組成物を基材に給液した後、該部材で該組成物を塗り伸ばす手段から選ばれる少なくとも一つの手段で基材上に塗布液を塗布する技術手段のことを指す。組成物を給液される部材、又は組成物を塗り伸ばす部材としては、布、紙、不織布、ガーゼ、スポンジ、フェルトなどが挙げられる。塗布液を給液された部材を基材に接触させる手段、又は部材で塗布液を引き延ばす手段は、人の手によるもの、ロボットや機械などによるものなどがある。
【0066】
撥水性物品は、組成物の塗布後に例えば室温~100℃で硬化処理することにより得ることができる。室温でも硬化させることができ、必ずしも加熱は必要ないが、加熱することにより、シラノール基と、基材表面に存在する水酸基等の結合性基とを、加熱処理を行わなかった場合よりもより強く結合させることができる。この強い結合により、該基材表面に優れた耐久性を有する被膜(撥水層)を形成することができる。加熱は、常圧下、加圧下、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。なお、上記シラノール基は、共重合体或いは含フッ素シラン化合物に含まれる加水分解物及び新たに加水分解されて生じた加水分解物に由来するものである。なお、室温とは、一実施形態においては、例えば10~30℃を意味する。
【0067】
組成物の余剰分が乾固物となって基材上に残留した場合、この余剰分を有機溶剤又は水で湿らした紙タオルや布または乾いた紙タオルや布で払拭することができる。
【0068】
<基材>
硬化処理温度よりも高い耐熱温度を有するものであれば、表面処理剤が塗布される基材は特に限定されるものではない。基材としては、例えば、車両用窓ガラス、建築物用窓ガラスに通常使用されている板ガラスやプラスチック、金属を使用できる。これら板ガラスを用いて形成される鏡等の反射性基材、擦りガラス、模様が刻まれたガラス等を使用することができる。ガラス基材の他にタイル、瓦、衛生陶器、食器等に使用されるセラミックス材料よりなる基材、ガラス窓等の枠体、調理器、流し、自動車のボディの塗装面などが挙げられる。
【0069】
また、基材と撥水性被膜との接着強度を向上させる処理を基材表面に予め行うこともできる。そのような処理としては、各種研磨液による研磨・洗浄・乾燥、酸性溶液または塩基性溶液による表面改質処理、プライマー処理、プラズマ照射、コロナ放電、高圧水銀灯照射等により、基材表面に活性基を発生させることが挙げられる。特に、シリケートを含有する薄膜を形成するプライマー処理は、表面処理剤を塗布する表面のシラノール基(活性基)の数を増やすことができるため好ましい。
【実施例0070】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0071】
<共重合体(A)の合成>
合成例に記す単量体の略称は下記のとおりである。
MMA:メタクリル酸メチル(三菱ケミカル社製)
KBM-503:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製)
C1FMA:2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(東ソー・ファインケム社製)
IBXMA:イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製)
C6FMA:2-パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート(ダイキン社製)
BzMA:ベンジルメタクリレート(共栄社化学社製)
MADMA:2-メチルアダマンチルメタクリレート(大阪有機化学工業社製)
【0072】
(共重合体A-1)
撹拌機、還流冷却器、温度計、乾燥窒素導入管を取り付けた1000mLセパラブルフラスコに、MMAを100g、KBM-503を300g、反応溶媒としてビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを408g、重合開始剤として2 , 2 - アゾビスイソブチロニトリルを8g収め、窒素雰囲気中において80℃で8時間重合した。共重合体の重量平均分子量は、約50,000であった。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0073】
(共重合体A-2)
単量体としてMMAを200g、KBM-503を200g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約43,000であった。
【0074】
(共重合体A-3)
単量体としてC1FMAを100g、IBXMAを100g、KBM-503を200g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約58,000であった。
【0075】
(共重合体A-4:)
単量体としてC6FMAを100g、IBXMAを100g、KBM-503を200g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約57,000であった。
【0076】
(共重合体A-5)
単量体としてIBXMAを200g、KBM-503を200g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約57,000であった。
【0077】
(共重合体A-6)
単量体としてC1FMAを200g、KBM-503を200g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約45,000であった。
【0078】
(共重合体A-7)
単量体としてC1FMAを100g、KBM-503を300g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約51,000であった。
【0079】
(共重合体A-8)
単量体としてBzMAを100g、KBM-503を300g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約55,000であった。
【0080】
(共重合体A-9)
単量体としてMADMAを200g、KBM-503を200g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約100,000であった。
【0081】
(共重合体A-10)
単量体としてKBM-503を400g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約59,000であった。
【0082】
(共重合体A-11)
単量体としてC1FMAを160g、C6FMAを240g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約51,000であった。
【0083】
(共重合体A-12)
単量体としてC1FMAを80g、C6FMAを240g、IBXMAを80g用いた以外は、(A-1)と同様の方法で合成した。共重合体の重量平均分子量は、約49,000であった。
【0084】
【表1】
【0085】
<含フッ素シラン化合物(B)>
(B-1)及び(B-2)、(B-3)については、それぞれ特許第6758725の合成例5及び合成例1、合成例8に記載の原料及び方法で合成した。B-4は市販品を用いた。
B-1:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
B-2:CFCFCFCFO(CFCFO)CFCHCHCHSi(OCH
B-3:(CHO)SiCHCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOCHCHCHSi(OCH
p/q=0.8~1.0, p+q≒45
B-4:C13CHCHSi(OCH
【0086】
B-4は、市販品のトリメトキシ(1H、1H、2H、2Hートリデカフルオローn-オクチル)シラン(東京化成工業社製)を使用した。
【0087】
<フッ素系溶剤(C)>
ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(MTF-TFM:セントラル硝子社製)
アサヒクリンAE-3000(AGC社製)
【0088】
<非フッ素系溶剤(D)>
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業社製)[分子量:162.2g/mоl、沸点:230℃]
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業社製)[分子量:164.2g/mоl、沸点:248℃]
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(東京化成工業社製)[分子量:204.3g/mоl、沸点:247℃]
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(東京化成工業社製)[分子量:176.2g/mоl、沸点:218℃]
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業社製)[分子量:132.2g/mоl、沸点:146℃]
エチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業社製)[分子量:118.2g/mоl、沸点:171℃]
エチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業社製)[分子量:76.1g/mоl、沸点:124℃]
酢酸ブチル(東京化成工業社製)[分子量:116.2g/mоl、沸点:126℃]
シクロヘキサノン(東京化成工業社製)[分子量:98.2g/mоl、沸点:157℃]
メチルシクロヘキサン(東京化成工業社製)[分子量:98.2g/mоl、沸点:100℃]
【0089】
<硬化触媒(E)>
E-1:DX9740(信越化学社製)
E-2:TC750(オルガチックスTC-750:マツモトファインケミカル社製)
E-3:U100(ネオスタンU100:日東化成社製)
【0090】
<組成物の調整>
共重合体A-1を16.0g、DX-9740(信越化学製)を0.2g、オルガチックスTC-750(マツモトファインケミカル製)を0.2g、含フッ素シラン化合物B-2を0.24g、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを13.4g、アサヒクリンAE-3000を50.0g、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを3g量り取り均一混合し表面処理剤とした。
【0091】
<撥水性硬化膜の作成>
(基材の準備)
スライドガラス(26x76mm)の表面を精製水で洗浄し、乾燥させた後不織布(ベンコット)で乾拭きし基材を準備した。
【0092】
(撥水性ガラスの作製)
調製した表面処理剤80mLに上記スライドガラスをディップコートし5分間風乾した。その後、表2中の硬化条件にて塗膜を硬化させ撥水性硬化膜を得た。
【0093】
<撥水性硬化膜の評価>
各評価項目について下記の方法により評価を行った。
【0094】
(1)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4に準拠し、鉛筆に三菱鉛筆株式会社製「ユニ」を用いて、塗膜面側の鉛筆硬度を500g荷重条件下で測定した。
【0095】
(2)水接触角
接触角計(NICK社製LSE-B100W)を用いて、2μLの水滴を発生させ、上記撥水性ガラスに対する接触角又を測定した。測定は表面上の異なる5箇所にて行い、その平均値で示した。
【0096】
(3)外観評価
下記の評価基準に従い評価した。
○:目視により塗膜割れ・ひび等の外観不良がない
×:目視により塗膜割れ・ひび等の外観不良がある
【0097】
各成分の組合せ及び各硬化条件について、表2~表6に評価結果を示した。
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
上記の結果から、所定の組合せの単量体単位を有する共重合体(A)と含フッ素シラン化合物(B)を含む組成物を用いた場合に、高硬度且つ高撥水性の硬化膜を得ることができた。また、添加剤(D)をさらに含有する場合に、撥水性が向上した。
一方、比較例1及び比較例2では、撥水性が期待されるフッ素原子を含有する単量体による共重合体を用いたが、硬度が十分ではなかった(「HB」未満であった)。また、比較例3では、ケイ素原子を有しない(メタ)アクリル系単量体を用いず、ケイ素原子を有する単量体のみによる共重合体を用いたところ硬度は比較的高く及び撥水性も発現したが、硬化時に膜にひび割れが生じてしまった。ひび割れ等は表面処理された物品の外観を損なうものであり、使用に適さない。比較例4では、含フッ素シラン化合物を含まないため、撥水性が十分ではない(90°未満である)結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の表面処理剤で処理した撥水性硬化膜を備える物品は、良好な撥水性、鉛筆硬度と外観を兼ね備えており、自動車や船舶、航空機など輸送機の外装や内装の補修剤、又はキッチン、風呂場、外壁、板ガラス、ディスプレイなどの保護フィルム等で撥水性と耐久性を要求される部品に用いることが出来る。