(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079188
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】胸部プロテクターおよび胸部プロテクター付き衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/05 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
A41D13/05 118
A41D13/05 156
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190218
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】595042427
【氏名又は名称】株式会社コミネ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】阿知波 直哉
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AB11
3B011AB16
3B011AC04
3B011AC18
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】着用者の胸部を安定して保護でき、かつ着脱時の操作性に優れる胸部プロテクターおよび胸部プロテクター付き衣服を提供する。
【解決手段】着用者の左胸を覆う板状であり、板面が前後方向を向く左胸プロテクター2と、着用者の右胸を覆う板状であり、板面が前後方向を向く右胸プロテクター3と、を備え、左胸プロテクター2は、左胸カバー板21と、左胸カバー板21の右端部に繋がり、上下方向に延びる第1中央カバー板22と、を有し、右胸プロテクター3は、右胸カバー板31と、右胸カバー板31の左端部に繋がり、上下方向に延びる第2中央カバー板32と、を有し、第1中央カバー板22と第2中央カバー板32とは、互いに前後方向に重なって配置され、かつ前後方向と垂直な面方向にスライド移動自在である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の左胸を覆う板状であり、板面が前後方向を向く左胸プロテクターと、
着用者の右胸を覆う板状であり、板面が前後方向を向く右胸プロテクターと、を備え、
前記左胸プロテクターは、
左胸カバー板と、
前記左胸カバー板の右端部に繋がり、上下方向に延びる第1中央カバー板と、を有し、
前記右胸プロテクターは、
右胸カバー板と、
前記右胸カバー板の左端部に繋がり、上下方向に延びる第2中央カバー板と、を有し、
前記第1中央カバー板と前記第2中央カバー板とは、互いに前後方向に重なって配置され、かつ前後方向と垂直な面方向にスライド移動自在である、
胸部プロテクター。
【請求項2】
前記左胸プロテクターは、前記左胸プロテクターを前後方向に貫通する複数の左胸通気孔を有し、
前記右胸プロテクターは、前記右胸プロテクターを前後方向に貫通する複数の右胸通気孔を有する、
請求項1に記載の胸部プロテクター。
【請求項3】
前記左胸カバー板は、
左右方向と垂直な縦断面視において、前側に向けて凸状に湾曲する左上湾曲部と、
前記左上湾曲部の下側に配置され、前記縦断面視において、前記左上湾曲部とは異なる湾曲形状で前側に向けて凸状に湾曲する左下湾曲部と、を有し、
前記右胸カバー板は、
前記縦断面視において、前側に向けて凸状に湾曲する右上湾曲部と、
前記右上湾曲部の下側に配置され、前記縦断面視において、前記右上湾曲部とは異なる湾曲形状で前側に向けて凸状に湾曲する右下湾曲部と、を有する、
請求項1または2に記載の胸部プロテクター。
【請求項4】
前記左上湾曲部は、上下方向と垂直な横断面視において、前側に向けて凸状に湾曲し、
前記右上湾曲部は、前記横断面視において、前側に向けて凸状に湾曲する、
請求項3に記載の胸部プロテクター。
【請求項5】
前記左胸プロテクターは、弾性変形可能な単一の部材により一体に形成され、
前記右胸プロテクターは、弾性変形可能な単一の部材により一体に形成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の胸部プロテクター。
【請求項6】
左前身頃と、
右前身頃と、
前記左前身頃と前記右前身頃の互いに対向する端部同士を着脱可能に連結する連結部と、
請求項1から5のいずれか1項に記載の胸部プロテクターと、を備え、
前記左前身頃は、前記左胸カバー板を保持する左側保持部を有し、
前記右前身頃は、前記右胸カバー板を保持する右側保持部を有し、
前記連結部により前記左前身頃と前記右前身頃とが連結されるときに、前記第1中央カバー板と前記第2中央カバー板とが、前後方向と垂直な面方向に互いにスライド移動しつつ、前後方向に重なって所定位置に配置される、
胸部プロテクター付き衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸部プロテクターおよび胸部プロテクター付き衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイクライダー等の着用者の胸部を保護する胸部プロテクターとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の胸部プロテクターは、左側被覆体と、右側被覆体と、を備える。各被覆体は、表部材と裏部材とを含む積層体である。各被覆体は、断面コ字状の差込凹部と、差込凹部に差し込まれて係合される差込部と、をそれぞれ備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の胸部プロテクターは、着用者が着脱するときに、差込凹部と差込部とを係合させたり係合を解除したりする作業が生じるため、着脱作業が面倒であり、操作性を高める点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、着用者の胸部を安定して保護でき、かつ着脱時の操作性に優れる胸部プロテクターおよび胸部プロテクター付き衣服を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の胸部プロテクターの一つの態様は、着用者の左胸を覆う板状であり、板面が前後方向を向く左胸プロテクターと、着用者の右胸を覆う板状であり、板面が前後方向を向く右胸プロテクターと、を備え、前記左胸プロテクターは、左胸カバー板と、前記左胸カバー板の右端部に繋がり、上下方向に延びる第1中央カバー板と、を有し、前記右胸プロテクターは、右胸カバー板と、前記右胸カバー板の左端部に繋がり、上下方向に延びる第2中央カバー板と、を有し、前記第1中央カバー板と前記第2中央カバー板とは、互いに前後方向に重なって配置され、かつ前後方向と垂直な面方向にスライド移動自在である。
また、本発明の胸部プロテクター付き衣服の一つの態様は、左前身頃と、右前身頃と、前記左前身頃と前記右前身頃の互いに対向する端部同士を着脱可能に連結する連結部と、前述の胸部プロテクターと、を備え、前記左前身頃は、前記左胸カバー板を保持する左側保持部を有し、前記右前身頃は、前記右胸カバー板を保持する右側保持部を有し、前記連結部により前記左前身頃と前記右前身頃とが連結されるときに、前記第1中央カバー板と前記第2中央カバー板とが、前後方向と垂直な面方向に互いにスライド移動しつつ、前後方向に重なって所定位置に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様の胸部プロテクターおよび胸部プロテクター付き衣服によれば、着用者の胸部を安定して保護でき、かつ着脱時の操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の胸部プロテクターを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の胸部プロテクターを示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、右胸プロテクターを示す正面図であり、
図3(b)は、左胸プロテクターを示す正面図である。
【
図4】
図4は、胸部プロテクターを示す正面図であり、第1中央カバー板と第2中央カバー板とを前後方向に重ねて配置した状態を表す。
【
図5】
図5は、
図4のV-V断面を示す横断面図であり、左胸通気孔および右胸通気孔の図示は省略している。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI断面を示す縦断面図であり、左胸通気孔および右胸通気孔の図示は省略している。
【
図7】
図7は、本実施形態の胸部プロテクター付き衣服を示す正面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の胸部プロテクター付き衣服を示す正面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の胸部プロテクターの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態の胸部プロテクター1および胸部プロテクター付き衣服10について、図面を参照して説明する。
本実施形態の胸部プロテクター1および胸部プロテクター付き衣服10は、図示しない着用者が着用することで、着用者の胸部を保護する。着用者とは、例えば、自動二輪車等のオートバイや自転車などに乗るバイクライダー等である。本実施形態では、胸部プロテクター1が、例えば、成人男性の胸部形状に合わせた形状を有する。
【0010】
本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成を説明する。
各図において、X軸方向は、着用者の前面(正面)および後面(背面)が向く方向であり、つまり前後方向に相当する。前後方向のうち前側は+X側であり、後側は-X側である。
Y軸方向は、着用者の左側面および右側面が向く方向であり、つまり左右方向に相当する。左右方向のうち左側は+Y側であり、右側は-Y側である。
Z軸方向は、着用者の上面および下面が向く方向であり、つまり上下方向に相当する。上下方向のうち上側は+Z側であり、下側は-Z側である。
なお本実施形態において、前側、後側、左側、右側、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1~
図4に示すように、胸部プロテクター1は、左胸プロテクター2と、右胸プロテクター3と、を備える。左胸プロテクター2と右胸プロテクター3とは、着用者の前面に位置し、左右方向に並んで配置される。左胸プロテクター2は、着用者の左胸を覆う板状であり、板面が前後方向を向く。右胸プロテクター3は、着用者の右胸を覆う板状であり、板面が前後方向を向く。
【0012】
左胸プロテクター2と右胸プロテクター3とは、互いに別体に形成される。左胸プロテクター2は、弾性変形可能な単一の部材により一体に形成される。右胸プロテクター3は、弾性変形可能な単一の部材により一体に形成される。左胸プロテクター2および右胸プロテクター3はそれぞれ、例えば合成ゴム製であり、衝撃吸収フォームを金型で一体成型することにより形成される。
【0013】
左胸プロテクター2は、左胸カバー板21と、左胸カバー板21の右端部(つまり-Y側の端部)に繋がり、上下方向に延びる第1中央カバー板22と、左胸プロテクター2を前後方向に貫通する複数の左胸通気孔23と、左胸カバー板21に配置される左側取付部24と、を有する。
【0014】
図3(b)に示すように、左胸カバー板21は、略5角形または略6角形の多角形板状である。左胸カバー板21は、その上側部分における左右方向の寸法に比べて、その下側部分における左右方向の寸法が大きい。左胸カバー板21は、その右側部分(-Y側部分)における上下方向の寸法に比べて、その左側部分(+Y側部分)における上下方向の寸法が小さい。
図5および
図6に示すように、左胸カバー板21は、全体として前側(+X側)に凸となる湾曲板状である。
【0015】
左胸カバー板21は、
図6に示すように左右方向(Y軸方向)と垂直な縦断面視において、前側に向けて凸状に湾曲する左上湾曲部21aと、左上湾曲部21aの下側に配置され、この縦断面視において、左上湾曲部21aとは異なる湾曲形状で前側に向けて凸状に湾曲する左下湾曲部21bと、左上湾曲部21aと左下湾曲部21bとの接続部に位置する左変曲部21cと、を有する。
【0016】
左上湾曲部21aの上下方向の寸法は、左下湾曲部21bの上下方向の寸法よりも大きい。左上湾曲部21aの前後方向の寸法は、左下湾曲部21bの前後方向の寸法よりも大きい。言い換えると、左上湾曲部21aの湾曲深さ寸法は、左下湾曲部21bの湾曲深さ寸法よりも大きい。
【0017】
左上湾曲部21aは、
図5に示すように上下方向(Z軸方向)と垂直な横断面視において、前側(+X側)に向けて凸状に湾曲する。左上湾曲部21aの左端部(+Y側の端部)は、左上湾曲部21aの右端部(-Y側の端部)よりも後側(-X側)に位置する。特に図示しないが、左下湾曲部21bは、上下方向と垂直な横断面視において、左上湾曲部21aとは異なる湾曲形状で前側に向けて凸状に湾曲する。左下湾曲部21bの左端部は、左下湾曲部21bの右端部よりも後側に位置する。
左上湾曲部21aの左右方向の寸法(最大寸法)は、左下湾曲部21bの左右方向の寸法よりも大きい。
【0018】
図6に示す縦断面視において、左変曲部21cは、凸曲線状に延びる左上湾曲部21aと凸曲線状に延びる左下湾曲部21bとが接続される変曲点に位置する。左変曲部21cは、この縦断面視において、後側に向けて凸状に湾曲する。
【0019】
図3(b)に示すように、第1中央カバー板22は、略4角形の多角形板状であり、具体的には、上下方向に延びる長方形板状である。第1中央カバー板22は、左右方向の寸法つまり幅が上下方向に沿って略一定である。第1中央カバー板22の左右方向の寸法は、左胸カバー板21の左右方向の寸法よりも小さい。第1中央カバー板22の上下方向の寸法は、左胸カバー板21の上下方向の寸法よりも小さい。本実施形態では、第1中央カバー板22の上端部が、左胸カバー板21の上端部よりも僅かに下側に位置する。第1中央カバー板22の下端部は、左胸カバー板21の下端部よりも上側に位置する。
【0020】
図5に示すように、第1中央カバー板22の板厚寸法は、左胸カバー板21の板厚寸法よりも小さい。第1中央カバー板22の板厚寸法は、左胸カバー板21の板厚寸法の略半分である。第1中央カバー板22は、前後方向(X軸方向)において、左胸カバー板21の前端部と後端部との間に位置する。
【0021】
第1中央カバー板22は、
図5に示す上下方向と垂直な横断面視で、左右方向に沿って直線状に延びる。
特に図示しないが、第1中央カバー板22の上側部分は、左右方向(Y軸方向)と垂直な縦断面視において、前側に向けて凸状に湾曲する。また第1中央カバー板22の下側部分は、この縦断面視において、上下方向に直線状に延びる。すなわち、第1中央カバー板22の上側部分は、前側に凸となる湾曲板状であり、第1中央カバー板22の下側部分は、前後方向と略垂直な方向(面方向)に拡がる平板状である(
図1および
図2を参照)。
【0022】
図4に示すように、第1中央カバー板22は、表示部22aを有する。表示部22aには、胸部プロテクター1に関する各種情報等が表示される。本実施形態では表示部22aが、第1中央カバー板22の前面のうち上端部以外の部分に配置される。
【0023】
図1および
図2に示すように、左胸通気孔23は、多角形孔状であり、本実施形態では菱形孔状である。複数の左胸通気孔23は、例えば、上下方向および左右方向に規則的に配列されており、全体として網目状に配置される。
複数の左胸通気孔23は、左胸カバー板21および第1中央カバー板22にわたって配置される。すなわち、複数の左胸通気孔23は、左胸カバー板21および第1中央カバー板22をそれぞれ、前後方向(板厚方向)に貫通する。
左胸プロテクター2の前面または後面の表面積全体に占める複数の左胸通気孔23の開口面積の総和の割合(つまり開口率)は、例えば、25%以上50%以下である。
【0024】
図3(b)に示すように、左胸カバー板21に設けられる複数の左胸通気孔23は、左胸カバー板21の外周縁から内側に離れて配置されており、つまり左胸カバー板21の外周縁以外の部分に配置される。第1中央カバー板22に設けられる複数の左胸通気孔23は、第1中央カバー板22の外周縁から内側に離れて配置されており、つまり第1中央カバー板22の外周縁以外の部分に配置される。第1中央カバー板22に設けられる複数の左胸通気孔23は、第1中央カバー板22のうち、前後方向から見て表示部22aと重ならない位置(本実施形態では上端部)に配置される。
【0025】
左側取付部24は、左胸カバー板21を前後方向(板厚方向)に貫通する貫通孔である。左側取付部24は、左右方向に延びるスリット孔状である。本実施形態では左側取付部24が、上下方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対の左側取付部24は、左胸カバー板21の上端部および下端部に配置される。一対の左側取付部24は、左胸カバー板21の右端部(-Y側の端部)に配置される。
【0026】
右胸プロテクター3は、右胸カバー板31と、右胸カバー板31の左端部(つまり+Y側の端部)に繋がり、上下方向に延びる第2中央カバー板32と、右胸プロテクター3を前後方向に貫通する複数の右胸通気孔33と、右胸カバー板31に配置される右側取付部34と、を有する。
【0027】
図3(a)に示すように、右胸カバー板31は、略5角形または略6角形の多角形板状である。右胸カバー板31は、その上側部分における左右方向の寸法に比べて、その下側部分における左右方向の寸法が大きい。右胸カバー板31は、その左側部分(+Y側部分)における上下方向の寸法に比べて、その右側部分(-Y側部分)における上下方向の寸法が小さい。
図5および
図6に示すように、右胸カバー板31は、全体として前側(+X側)に凸となる湾曲板状である。
【0028】
右胸カバー板31は、
図6に示すように左右方向(Y軸方向)と垂直な縦断面視において、前側に向けて凸状に湾曲する右上湾曲部31aと、右上湾曲部31aの下側に配置され、この縦断面視において、右上湾曲部31aとは異なる湾曲形状で前側に向けて凸状に湾曲する右下湾曲部31bと、右上湾曲部31aと右下湾曲部31bとの接続部に位置する右変曲部31cと、を有する。
【0029】
右上湾曲部31aの上下方向の寸法は、右下湾曲部31bの上下方向の寸法よりも大きい。右上湾曲部31aの前後方向の寸法は、右下湾曲部31bの前後方向の寸法よりも大きい。言い換えると、右上湾曲部31aの湾曲深さ寸法は、右下湾曲部31bの湾曲深さ寸法よりも大きい。
【0030】
右上湾曲部31aは、
図5に示すように上下方向(Z軸方向)と垂直な横断面視において、前側(+X側)に向けて凸状に湾曲する。右上湾曲部31aの右端部(-Y側の端部)は、右上湾曲部31aの左端部(+Y側の端部)よりも後側(-X側)に位置する。特に図示しないが、右下湾曲部31bは、上下方向と垂直な横断面視において、右上湾曲部31aとは異なる湾曲形状で前側に向けて凸状に湾曲する。右下湾曲部31bの右端部は、右下湾曲部31bの左端部よりも後側に位置する。
右上湾曲部31aの左右方向の寸法(最大寸法)は、右下湾曲部31bの左右方向の寸法よりも大きい。
【0031】
図6に示す縦断面視において、右変曲部31cは、凸曲線状に延びる右上湾曲部31aと凸曲線状に延びる右下湾曲部31bとが接続される変曲点に位置する。右変曲部31cは、この縦断面視において、後側に向けて凸状に湾曲する。
【0032】
図3(a)に示すように、第2中央カバー板32は、略4角形の多角形板状であり、具体的には、上下方向に延びる長方形板状である。第2中央カバー板32は、左右方向の寸法つまり幅が上下方向に沿って略一定である。第2中央カバー板32の左右方向の寸法は、右胸カバー板31の左右方向の寸法よりも小さい。第2中央カバー板32の上下方向の寸法は、右胸カバー板31の上下方向の寸法よりも小さい。本実施形態では、第2中央カバー板32の上端部が、右胸カバー板31の上端部よりも僅かに下側に位置する。第2中央カバー板32の下端部は、右胸カバー板31の下端部よりも上側に位置する。
【0033】
図5に示すように、第2中央カバー板32の板厚寸法は、右胸カバー板31の板厚寸法よりも小さい。第2中央カバー板32の板厚寸法は、右胸カバー板31の板厚寸法の略半分である。第2中央カバー板32は、前後方向(X軸方向)において、右胸カバー板31の前端部と後端部との間に位置する。
【0034】
第2中央カバー板32は、
図5に示す上下方向と垂直な横断面視で、左右方向に沿って直線状に延びる。
特に図示しないが、第2中央カバー板32の上側部分は、左右方向(Y軸方向)と垂直な縦断面視において、前側に向けて凸状に湾曲する。また第2中央カバー板32の下側部分は、この縦断面視において、上下方向に直線状に延びる。すなわち、第2中央カバー板32の上側部分は、前側に凸となる湾曲板状であり、第2中央カバー板32の下側部分は、前後方向と略垂直な方向(面方向)に拡がる平板状である(
図1および
図2を参照)。
【0035】
図4および
図5に示すように、第1中央カバー板22と第2中央カバー板32とは、互いに前後方向に重なって配置され、かつ前後方向と垂直な面方向にスライド移動自在である。すなわち、第1中央カバー板22と第2中央カバー板32とは、互いに前後方向に重なり合った状態で、上下方向、左右方向およびこれらの複合方向にスライド移動自在である。
【0036】
本実施形態では、第1中央カバー板22および第2中央カバー板32のうち、第1中央カバー板22が前側に配置され、第2中央カバー板32が後側に配置される。すなわち、第1中央カバー板22の後面と第2中央カバー板32の前面とが、互いに摺動自在に接触する。なお、第1中央カバー板22の後面と第2中央カバー板32の前面との間には、隙間が設けられてもよい。第1中央カバー板22の板厚寸法と第2中央カバー板32の板厚寸法との和は、左胸カバー板21の板厚寸法と略同等であり、右胸カバー板31の板厚寸法と略同等である。
なお、上述した表示部22aは、第1中央カバー板22および第2中央カバー板32のうち、前側に配置されるカバー板(本実施形態では第1中央カバー板22)にのみ設けられる。
【0037】
図1および
図2に示すように、右胸通気孔33は、多角形孔状であり、本実施形態では菱形孔状である。複数の右胸通気孔33は、例えば、上下方向および左右方向に規則的に配列されており、全体として網目状に配置される。
複数の右胸通気孔33は、右胸カバー板31および第2中央カバー板32にわたって配置される。すなわち、複数の右胸通気孔33は、右胸カバー板31および第2中央カバー板32をそれぞれ、前後方向(板厚方向)に貫通する。
右胸プロテクター3の前面または後面の表面積全体に占める複数の右胸通気孔33の開口面積の総和の割合(つまり開口率)は、例えば、25%以上50%以下である。
【0038】
図3(a)に示すように、右胸カバー板31に設けられる複数の右胸通気孔33は、右胸カバー板31の外周縁から内側に離れて配置されており、つまり右胸カバー板31の外周縁以外の部分に配置される。第2中央カバー板32に設けられる複数の右胸通気孔33は、第2中央カバー板32の外周縁から内側に離れて配置されており、つまり第2中央カバー板32の外周縁以外の部分に配置される。
【0039】
右側取付部34は、右胸カバー板31を前後方向(板厚方向)に貫通する貫通孔である。右側取付部34は、左右方向に延びるスリット孔状である。本実施形態では右側取付部34が、上下方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対の右側取付部34は、右胸カバー板31の上端部および下端部に配置される。一対の右側取付部34は、右胸カバー板31の左端部(+Y側の端部)に配置される。
【0040】
次に、胸部プロテクター付き衣服10について説明する。
図7に示すように、胸部プロテクター付き衣服10は、着用者の胴部(図示省略)の後面を覆う後見頃41と、着用者の胴部の前面を覆う左前身頃42および右前身頃43と、左前身頃42と右前身頃43の互いに対向する端部同士を着脱可能に連結する連結部44と、一対の袖部45と、上述の胸部プロテクター1と、を備える。
【0041】
左前身頃42は、左胸プロテクター2の左胸カバー板21を保持する左側保持部42aを有する。左側保持部42aは、左前身頃42の上側部分に配置される。本実施形態では左側保持部42aが、左前身頃42の裏地に設けられるポケットである。左胸カバー板21が左側保持部42a内に収納されることにより、左胸プロテクター2は、左前身頃42に着脱可能に装着される。左側保持部42aに左胸カバー板21が保持された状態で、左胸プロテクター2の第1中央カバー板22は、少なくとも一部が左前身頃42の右端部から右側へ突出する。
【0042】
右前身頃43は、右胸プロテクター3の右胸カバー板31を保持する右側保持部43aを有する。右側保持部43aは、右前身頃43の上側部分に配置される。本実施形態では右側保持部43aが、右前身頃43の裏地に設けられるポケットである。右胸カバー板31が右側保持部43a内に収納されることにより、右胸プロテクター3は、右前身頃43に着脱可能に装着される。右側保持部43aに右胸カバー板31が保持された状態で、右胸プロテクター3の第2中央カバー板32は、少なくとも一部が右前身頃43の左端部から左側へ突出する。
【0043】
連結部44は、左前身頃42の右端部と右前身頃43の左端部とを、上下方向の略全域にわたって着脱可能に連結する。本実施形態では連結部44が、いわゆるジッパー、チャック等の線ファスナー(ファスナー)である。
図7および
図8に示すように、連結部44により左前身頃42と右前身頃43とが連結されるときに、第1中央カバー板22と第2中央カバー板32とが、前後方向と垂直な面方向に互いにスライド移動しつつ、前後方向に重なって所定位置に配置される。
【0044】
以上説明した本実施形態の胸部プロテクター1では、左胸カバー板21で着用者の左胸を保護でき、右胸カバー板31で着用者の右胸を保護でき、前後方向に積層される第1中央カバー板22および第2中央カバー板32により、着用者の心臓に近い胸の中央部を保護できる。第1中央カバー板22と第2中央カバー板32は、前後方向に重なり合うことで衝撃吸収性が高められる。
【0045】
左胸プロテクター2の第1中央カバー板22と、右胸プロテクター3の第2中央カバー板32とは、前後方向に重なった状態でスライド移動自在である。このため、前開きのファスナー(連結部)44を操作して、左前身頃42と右前身頃43とを連結していくときに、第1中央カバー板22と第2中央カバー板32とが自然に(自動的に)スライドしつつ重なり合い、ファスナー44を締め切ったときに、所望のレイアウト(所定位置)で積層された状態となる。そしてファスナー44を閉じている間は、第1中央カバー板22と第2中央カバー板32との上記所定位置での積層状態は良好に維持される。
したがって、本実施形態の胸部プロテクター1および胸部プロテクター付き衣服10によれば、着用者の胸部を安定して保護でき、かつ操作性に優れている。また、簡素な構造によって上述の作用効果が得られ、製造コストを削減できる。
【0046】
また本実施形態では、左胸プロテクター2に設けられる複数の左胸通気孔23および右胸プロテクター3に設けられる複数の右胸通気孔33によって、胸部プロテクター1の通気性が高められ、着用者の発汗によるべたつきや不快な蒸れ等を抑制できる。また、胸部プロテクター1の軽量化を図ることができる。
【0047】
また本実施形態では、左胸カバー板21が、左上湾曲部21aおよび左下湾曲部21bを有し、右胸カバー板31が、右上湾曲部31aおよび右下湾曲部31bを有する。
この場合、例えば、着用者の胸部のうち大胸筋などを左上湾曲部21aおよび右上湾曲部31aで覆い、大胸筋の下側に位置する肋骨部分や他の筋肉などを左下湾曲部21bおよび右下湾曲部31bで覆うことができる。すなわち、本実施形態の胸部プロテクター1は、着用者の胸部の身体曲面にフィットしやすい形状であるため、着用時のフィット感を高めることができ、かつ衣服10の上からはプロテクター形状が認識されにくく、着用時の外観デザイン性つまり美観が向上する。
【0048】
また本実施形態では、左胸プロテクター2および右胸プロテクター3がそれぞれ、例えば合成ゴム等の弾性変形可能な単一の部材により一体に形成される。
この場合、胸部プロテクター1の衝撃吸収性を高めて着用者の胸部を安定して保護しつつ、材料費用や製造工程を減らして製造コストを削減できる。
【0049】
また本実施形態では、第1中央カバー板22の板厚寸法と第2中央カバー板32の板厚寸法との和が、左胸カバー板21および右胸カバー板31の各板厚寸法と略同等である。
この場合、第1中央カバー板22と第2中央カバー板32とを積層させて胸の中央部を安定して保護しつつ、胸部プロテクター1が着用者の胸部の中央部付近で前後方向に嵩張る(出っ張る)ことが抑えられる。すなわち、着用者の胸部の中央部付近において、着用感や外観上の美観が損なわれることを抑制できる。
【0050】
また本実施形態では、左胸プロテクター2の前面または後面の表面積全体に占める複数の左胸通気孔23の開口面積の総和の割合が、25%以上50%以下である。また、右胸プロテクター3の前面または後面の表面積全体に占める複数の右胸通気孔33の開口面積の総和の割合が、25%以上50%以下である。
上記各割合が25%以上であることにより、胸部プロテクター1の通気性が安定して高められ、着用時の快適性が良好に維持される。
上記各割合が50%以下であることにより、胸部プロテクター1の剛性が低下し過ぎることを抑制でき、つまり剛性が安定して確保され、着用者の胸部を保護する機能が良好に維持される。
【0051】
また本実施形態では、左胸通気孔23および右胸通気孔33がそれぞれ、多角形孔状である。
この場合、胸部プロテクター1のデザイン性を高めつつ、各通気孔23,33による上述の機能が得られる。
【0052】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0053】
図9は、前述の実施形態で説明した胸部プロテクター1の変形例を示す。
この変形例では、左胸プロテクター2の左側取付部24が、左胸カバー板21を前後方向(板厚方向)に貫通する一対の貫通孔24aと、一対の貫通孔24aに挿入されて左胸カバー板21に取り付けられるベルト24bと、ベルト24bの前面部分に配置される複数の左側スナップボタン24cと、を有する。
一対の貫通孔24aは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。一対の貫通孔24aは、左胸カバー板21の上端部および下端部に配置される。一対の貫通孔24aは、左胸カバー板21の右端部(-Y側の端部)に配置される。各貫通孔24aは、左右方向に延びるスリット孔状である。複数(この変形例では3つ)の左側スナップボタン24cは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0054】
また、右胸プロテクター3の右側取付部34は、右胸カバー板31を前後方向(板厚方向)に貫通する一対の貫通孔34aと、一対の貫通孔34aに挿入されて右胸カバー板31に取り付けられるベルト34bと、ベルト34bの前面部分に配置される複数の右側スナップボタン34cと、を有する。
一対の貫通孔34aは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。一対の貫通孔34aは、右胸カバー板31の上端部および下端部に配置される。一対の貫通孔34aは、右胸カバー板31の左端部(+Y側の端部)に配置される。各貫通孔34aは、左右方向に延びるスリット孔状である。複数(この変形例では3つ)の右側スナップボタン34cは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0055】
また特に図示しないが、左前身頃42は、左胸プロテクター2の左胸カバー板21を保持する左側保持部を有し、この左側保持部は、左前身頃42の裏地に設けられる複数の左前身頃スナップボタンを有する。複数(この変形例では3つ)の左前身頃スナップボタンは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。
左前身頃スナップボタンと左側スナップボタン24cとは、前後方向に対向配置される。左前身頃スナップボタンおよび左側スナップボタン24cのうち、一方は凹部を有し、他方はこの凹部と着脱可能に嵌合する凸部を有する。各左前身頃スナップボタンと各左側スナップボタン24cとが嵌合することにより、左胸プロテクター2は、左前身頃42に着脱可能に装着される。
【0056】
また、右前身頃43は、右胸プロテクター3の右胸カバー板31を保持する右側保持部を有し、この右側保持部は、右前身頃43の裏地に設けられる複数の右前身頃スナップボタンを有する。複数(この変形例では3つ)の右前身頃スナップボタンは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。
右前身頃スナップボタンと右側スナップボタン34cとは、前後方向に対向配置される。右前身頃スナップボタンおよび右側スナップボタン34cのうち、一方は凹部を有し、他方はこの凹部と着脱可能に嵌合する凸部を有する。各右前身頃スナップボタンと各右側スナップボタン34cとが嵌合することにより、右胸プロテクター3は、右前身頃43に着脱可能に装着される。
この変形例においても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
また、前述の実施形態では、第1中央カバー板22および第2中央カバー板32のうち、第1中央カバー板22が前側に配置され、第2中央カバー板32が後側に配置される例を挙げたが、これに限らない。すなわち、第1中央カバー板22および第2中央カバー板32のうち、第2中央カバー板32が前側に配置され、第1中央カバー板22が後側に配置されてもよい。
【0058】
前述の実施形態では、胸部プロテクター1が、例えば成人男性の胸部形状に合わせた形状を有すると説明したが、これに限らない。胸部プロテクター1は、成人男性以外の例えば成人女性や子供等の各胸部形状にも適合可能である。
【0059】
前述の実施形態では、胸部プロテクター付き衣服10が、連結部44としてファスナーを備える例を挙げたが、これに限らない。連結部44は、左前身頃42と右前身頃43の互いに対向する端部同士を着脱可能に連結する構成を備えていればよく、例えば、互いに嵌合する凹凸スナップボタンの組を複数備えていたり、ボタンおよびボタンホールの組を複数備えていたりしてもよい。
【0060】
前述の実施形態では、胸部プロテクター付き衣服10が、一対の袖部45を有する長袖である例を挙げたが、これに限らず、例えば半袖や七分袖等であってもよい。また胸部プロテクター付き衣服10は、一対の袖部45を有していなくてもよい。
【0061】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の胸部プロテクターおよび胸部プロテクター付き衣服によれば、着用者の胸部を安定して保護でき、かつ着脱時の操作性に優れる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0063】
1…胸部プロテクター、2…左胸プロテクター、3…右胸プロテクター、10…胸部プロテクター付き衣服、21…左胸カバー板、21a…左上湾曲部、21b…左下湾曲部、22…第1中央カバー板、23…左胸通気孔、31…右胸カバー板、31a…右上湾曲部、31b…右下湾曲部、32…第2中央カバー板、33…右胸通気孔、42…左前身頃、42a…左側保持部、43…右前身頃、43a…右側保持部、44…連結部