(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079206
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】凝集粉体解砕用フィルタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B02C 19/20 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
B02C19/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190248
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】502325720
【氏名又は名称】株式会社フジトク
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】長田 倫明
【テーマコード(参考)】
4D067
【Fターム(参考)】
4D067CF19
4D067CF23
4D067GA20
(57)【要約】
【課題】高い解砕能力を長期にわたって維持することができる凝集粉体解砕用フィルタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】凝集粉体解砕用フィルタ1は、板状のベース部12と、複数の孔部10と、複数の凸部11とを備える。複数の孔部10は、それぞれがベース部12の板厚方向を貫通するように形成されている。複数の凸部11は、それぞれがベース部12の内面1aにおける隣接する孔部10の内側開口10aにおける開口縁の一部から立設されている。複数の凸部11は、ベース部12と一体形成されているとともに、それぞれの頂面11aがベース部12の内面1aと平行な平面で形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集粉体の解砕に用いられる凝集粉体解砕用フィルタであって、
板状のベース部と、
それぞれが前記ベース部の板厚方向を貫通するように形成された複数の孔部と、
それぞれが前記ベース部の一方の主面である第1主面における前記複数の前記孔部の開口縁の一部から立設された複数の凸部と、
を備え、
前記複数の凸部は、前記ベース部と一体形成されているとともに、それぞれの頂面が前記第1主面と平行な平面で形成されている、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の凝集粉体解砕用フィルタにおいて、
前記複数の凸部のそれぞれは、隣接する前記孔部の孔径方向において、根本側から前記頂面の側へと行くのに従って厚肉となるように形成されている、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の凝集粉体解砕用フィルタにおいて、
前記複数の凸部のそれぞれは、隣接する前記孔部の開口縁の側に側壁面を有するとともに、前記頂面と前記側壁面とが鋭角をなすように形成されている、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載の凝集粉体解砕用フィルタにおいて、
前記頂面と前記側壁面とが突き合わされる角部は、前記隣接する孔部に対して覆いかぶさるように配置されている、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の凝集粉体解砕用フィルタにおいて、
前記複数の凸部のそれぞれは、当該凸部の側壁面が前記隣接する孔部の周壁面に連続するように設けられている、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載の凝集粉体解砕用フィルタにおいて、
前記複数の孔部のそれぞれは、前記凸部の側壁面に連続する前記周壁面が、前記ベース部の厚み方向における前記第1主面とは反対側の前記第2主面に対して鈍角をなすように形成されている、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載の凝集粉体解砕用フィルタにおいて、
前記複数の孔部のぞれぞれは、前記第1主面側からの平面視で、当該第1主面側の開口が円形であり、前記第2主面側からの平面視で、当該第2主面側の開口が楕円形または長円形である、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載の凝集粉体解砕用フィルタにおいて、
前記ベース部の板厚は、前記複数の孔部のそれぞれにおける前記第1主面側の開口径と略同じである、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の凝集粉体解砕用フィルタにおいて、
前記複数の凸部は、当該複数の凸部のそれぞれに隣接する前記孔部に対して、前記第1主面に沿う方向の内の一方向側に配置されている、
凝集粉体解砕用フィルタ。
【請求項10】
凝集粉体の解砕に用いられる凝集粉体解砕用フィルタの製造方法であって、
金属板材の第1主面に対してそれぞれが島状をした複数の第1レジスト膜を形成するとともに、前記金属板材の板厚方向における前記第1主面とは反対側の第2主面にも前記孔部を開けようとする部分を除く領域に第2レジスト膜を形成するレジスト膜形成ステップと、
前記金属板材の前記第1主面および前記第2主面に対してエッチングを行うエッチングステップと、
を備え、
前記エッチングステップでは、
前記第1主面における前記複数の第1レジスト膜が形成されていない領域を所定の深さまで掘り込むとともに、前記複数のレジスト膜が形成された領域に複数の凸部を形成し、
前記複数の凸部のそれぞれに隣接する前記領域に、板厚方向に貫通する複数の孔部を形成し、
前記複数の凸部は、それぞれの頂面が前記堀込底面と平行な平面となるように形成される、
凝集粉体解砕用フィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の凝集粉体解砕用フィルタの製造方法において、
前記エッチングステップでは、前記金属板材の前記第2主面側からのエッチングに係るエッチング速度を、前記第1主面側からのエッチングに係るエッチング速度よりも高くし、当該エッチング速度の差異をもって、前記孔部の周壁面の一部が記第2主面に対して鈍角をなすように形成される、
凝集粉体解砕用フィルタの製造方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の凝集粉体解砕用フィルタの製造方法において、
前記エッチングステップでの前記エッチングは、ウェットエッチングである、
凝集粉体解砕用フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集粉体解砕用フィルタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体は、粒子間に働らくファンデルワールス力や静電気力などにより凝集することがある。凝集した粉体をそのまま製造工程で用いることはできないため、凝集した粉体は、解砕機で解砕されてから用いられる(特許文献1)。
【0003】
従来技術に係る解砕機の構成について、
図8を用いて説明する。
【0004】
図8に示すように、従来技術に係る解砕機は、凝集粉体解砕用フィルタ901と、インペラ902と、駆動部903とを備える。インペラ902は、駆動部903に接続されており、駆動部903から伝達される回転駆動力により回転軸Ax902周りに回転する(矢印E)。インペラ902は、凝集粉体解砕用フィルタ901の側壁内面に隣接するように配される複数の羽根902aを有する。
【0005】
図8の拡大部分に示すように、凝集粉体解砕用フィルタ901の内面901aには、複数のパンチ孔9010と複数の突起部9011が設けられている。
【0006】
なお、
図8の拡大部分において、矢印Fで示すのがインペラ902における羽根902aの移動方向である。そして、突起部9011は、それぞれのパンチ孔9010の開口縁における矢印Fの下流側となる部分に設けられている。
【0007】
凝集粉体解砕用フィルタ901の製造方法について、
図9を用いて説明する。先ず、金属板材900をダイ950上に載置し、矢印Gのようにパンチ951で打ち抜くことで、
図9(a)に示すように孔部900aが形成される。なお、ダイ950には、パンチ951に対応する穴部950aが開けられている。
【0008】
次に、孔部900aが開けられた中間材901に対して、当該中間材901の裏面(外面)901bから孔部900aの開口縁の一部に対して突起部形成用パンチ952で押圧する。これにより、
図9(b)に示すように、孔部900aの開口縁の一部が中間材901のオモテ面(内面)901a側に突出する。なお、突起部9011の内側の面は、緩やかな曲面で構成される。
【0009】
以上のようにして、パンチ孔9010と、その開口縁の一部に設けられた突起部9011とを有する凝集粉体解砕用フィルタ901が形成される。
【0010】
図8に示す解砕機では、漏斗状をした凝集粉体解砕用フィルタ901の内側に粉体が投入されて、インペラ902が回転される。これにより、インペラ902の羽根902aと凝集粉体解砕用フィルタ901の内面901aとの間で生じるせん断力や、インペラ902の羽根902aの回転により生じる遠心力などにより、凝集粉体が解砕される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタでは、製造に手間がかかるので高コストで製造に時間を要するとともに、消耗が激しいという問題がある。従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタの消耗が激しい原因としては、
図9(b)の拡大部分に示すように、突起部9011の先端9011aが鋭利に尖った形状で形成されており、解砕中の粉体などとの接触により摩滅してしまうためである。即ち、従来技術に係る解砕機では、突起部9011の先端9011aが鋭利に尖った凝集粉体解砕用フィルタを用いることで高いせん断力を凝集粉体に付与できるが、突起部9011の先端9011aが摩滅により丸くなってしまうと解砕能力が低下する。よって、従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタを用いる解砕機では、解砕能力を高く維持しようとするために高価な凝集粉体解砕用フィルタを高い頻度で交換する必要がある。
【0013】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、高い解砕能力を長期にわたって維持することができる凝集粉体解砕用フィルタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係る凝集粉体解砕用フィルタは、凝集粉体の解砕に用いられる凝集粉体解砕用フィルタであって、板状のベース部と、それぞれが前記ベース部の板厚方向を貫通するように形成された複数の孔部と、それぞれが前記ベース部の一方の主面である第1主面における前記複数の前記孔部の開口縁の一部から立設された複数の凸部と、を備え、前記複数の凸部は、前記ベース部と一体形成されているとともに、それぞれの頂面が前記第1主面と平行な平面で形成されている。
【0015】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタでは、複数の凸部のそれぞれにおける頂面を平面としているので、上記従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタよりも高い解砕能力を長期にわたって維持することができる。即ち、凝集粉体の解砕時において、凸部の頂部には高いせん断力などが付加されるが、頂部を平面で形成することでダメージを受け難く、上記従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタの突起部のような解砕能力の低下を抑制することができる。これより、上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタは、交換頻度を低く抑えることもできる。
【0016】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタにおいて、前記複数の凸部のそれぞれは、隣接する前記孔部の孔径方向において、根本側から前記頂面の側へと行くのに従って厚肉となるように形成されていてもよい。
【0017】
上記のように、複数の凸部のそれぞれを、根本側から頂面側へと行くのに従って厚肉となるようにする場合には、解砕時に高い圧力が付加される頂面を広くとることができ、よりダメージを受け難くすることができる。よって、上記態様を採用する場合には、高い解砕能力を長期にわたって維持するのにさらに効果的である。
【0018】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタにおいて、前記複数の凸部のそれぞれは、隣接する前記孔部の開口縁の側に側壁面を有するとともに、前記頂面と前記側壁面とが鋭角をなすように形成されていてもよい。
【0019】
上記のように、複数の凸部のそれぞれにおいて頂面と側壁面とが鋭角をなすように形成されている場合には、凝集粉体が頂面と側壁面との突き合わせ部分(角部)で解砕されやすくなる。即ち、頂面と側壁面とが鋭角で突き合わされてなる形状とすることで、凝集粉体に対して鋭角な角部が侵入する(突き刺さる)ことで効果的に解砕がなされる。
【0020】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタにおいて、前記頂面と前記側壁面とが突き合わされる角部は、前記隣接する孔部に対して覆いかぶさるように配置されていてもよい。
【0021】
上記のように、角部が穴部に覆いかぶさるように配置するようにすることで、当該角部およびその周辺で解砕された粉体が斜めに延びる側壁面により孔部に案内される。よって、高効率に凝集粉体の解砕を行うのに有効である。
【0022】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタにおいて、前記複数の凸部のそれぞれは、当該凸部の側壁面が前記隣接する孔部の周壁面に連続するように設けられていてもよい。
【0023】
上記のように、凸部の側壁面と孔部の周壁面(の一部)とが連続するように設けられている場合には、解砕された粉体が孔部の開口で滞ることなくスムーズに排出される。
【0024】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタにおいて、前記複数の孔部のそれぞれは、前記凸部の側壁面に連続する前記周壁面が、前記ベース部の厚み方向における前記第1主面とは反対側の前記第2主面に対して鈍角をなすように形成されていてもよい。
【0025】
上記のように、第2主面と孔部の周壁面とが鈍角をなすようにすることで、当該孔部の周壁面も凸部の上記側壁面に連続して斜面を構成することとできる。よって、解砕された粉体を当該凝集粉体解砕用フィルタの外部(第2主面の外部)に排出し易くできる。
【0026】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタにおいて、前記複数の孔部のぞれぞれは、前記第1主面側からの平面視で、当該第1主面側の開口が円形であり、前記第2主面側からの平面視で、当該第2主面側の開口が楕円形または長円形であってもよい。
【0027】
上記のように、凸部の側壁面に続く孔部の周壁面を斜面で構成することにより、第2主面側の開口が楕円形または長円形となる。これによっても、解砕された粉体を当該凝集粉体解砕用フィルタの外部(第2主面の外部)に排出し易くできる。
【0028】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタにおいて、前記ベース部の板厚は、前記複数の孔部のそれぞれにおける前記第1主面側の開口径と略同じであってもよい。
【0029】
上記のように、ベース部の板厚と孔部の開口径とを略同じとすることにより、エッチングにより孔部を形成する場合にも容易に製造することが可能となる。即ち、エッチングで孔部を開けようとする場合には、基本的に板厚と孔径とを同一とすることが望ましいことに基づく。
【0030】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタにおいて、前記複数の凸部は、当該複数の凸部のそれぞれに隣接する前記孔部に対して、前記第1主面に沿う方向の内の一方向側に配置されていてもよい。
【0031】
上記のように、複数の凸部のそれぞれを隣接する孔部に対して上記一方向側に配置されるようにすれば、
図7に示した解砕機のようにインペラが一方向(矢印Eで示す方向)に回転する場合に、当該回転の方向における下流側となる箇所に凸部を揃えて配置することが可能となる。このように凸部を配置することで、凝集粉体に対して高いせん断力を付加することができ、効果的な解砕が可能となる。
【0032】
本発明の一態様に係る凝集粉体解砕用フィルタの製造方法は、凝集粉体の解砕に用いられる凝集粉体解砕用フィルタの製造方法であって、金属板材の第1主面に対してそれぞれが島状をした複数の第1レジスト膜を形成するとともに、前記金属板材の板厚方向における前記第1主面とは反対側の第2主面にも前記孔部を開けようとする部分を除く領域に第2レジスト膜を形成するレジスト膜形成ステップと、前記金属板材の前記第1主面および前記第2主面に対してエッチングを行うエッチングステップと、を備える。前記エッチングステップでは、前記第1主面における前記複数の第1レジスト膜が形成されていない領域を所定の深さまで掘り込むとともに、前記複数のレジスト膜が形成された領域に複数の凸部を形成し、前記複数の凸部のそれぞれに隣接する前記領域に、板厚方向に貫通する複数の孔部を形成する。本態様に係る製造方法では、前記複数の凸部におけるそれぞれの頂面が前記堀込底面と平行な平面となるように形成される。
【0033】
上記態様に係る製造方法では、それぞれ頂面が平面である複数の凸部を形成することができるので、上記従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタよりも高い解砕能力を長期にわたって維持することができる凝集粉体解砕用フィルタを製造することができる。即ち、上述のように、凝集粉体の解砕時において凸部の頂部には高いせん断力などが付加されるが、頂部を平面で形成することでダメージを受け難く、上記従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタの突起部のような解砕能力の低下を抑制することができる。これより、高い解砕能力を長期にわたって維持することができ、交換頻度が低い凝集粉体解砕用フィルタを製造することができる。
【0034】
また、上記態様に係る製造方法は、エッチングステップではエッチングにより複数の凸部を形成するとともに、複数の孔部を形成することとしているので、
図9を用いて説明した従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタの製造方法に対して煩雑な作業工程を経ることなく凝集粉体解砕用フィルタを製造することができる。よって、上記態様に係る製造方法では、製造コストの低減と製造期間の短縮を図ることが可能である。
【0035】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタの製造方法において、前記エッチングステップでは、前記金属板材の前記第2主面側からのエッチングに係るエッチング速度を、前記第1主面側からのエッチングに係るエッチング速度よりも高くしてもよく、当該エッチング速度の差異をもって、前記孔部の周壁面の一部が記第2主面に対して鈍角をなすように形成されてもよい。
【0036】
上記のように、第2主面と孔部の周壁面の一部とが鈍角をなすように孔部を形成することで、当該孔部の周壁面も凸部の上記側壁面に連続して斜面を構成することとできる。よって、解砕された粉体を当該凝集粉体解砕用フィルタの外部(第2主面の外部)に排出し易くできる。
【0037】
また、上記のように、エッチングステップで第2主面側からのエッチング速度を第1主面側からのエッチング速度よりも高くすることにより、上記のような形状を有する周壁面を容易に形成することができる。
【0038】
上記態様に係る凝集粉体解砕用フィルタの製造方法において、前記エッチングステップでの前記エッチングは、ウェットエッチングであってもよい。
【0039】
上記のように、ウェットエッチングで凸部および孔部を形成することすれば、ドライエッチングを用いる場合に比べて簡易な装置構成で凝集粉体解砕用フィルタを製造することができる。よって、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
上記の各態様では、高い解砕能力を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施形態に係る凝集粉体解砕用フィルタの内面の構造を示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線断面の構成を示す模式断面図である。
【
図3】凝集粉体解砕用フィルタの外面の構造を示す平面図である。
【
図4】凝集粉体解砕用フィルタの製造ステップを示す断面図であって、(a)は金属板材を準備する準備ステップ、(b)はレジスト膜を形成するレジスト膜形成ステップ、(c)は金属板材にエッチングを施すエッチングステップを示す。
【
図5】凝集粉体解砕用フィルタの製造ステップを示す断面図であって、(a)はエッチングにより孔部が形成する孔部形成ステップ、(b)はレンジスト膜を除去する除去ステップを示す。
【
図6】(a)は金属板材の内面に形成されるレジスト膜の形状を表す平面図であり、(b)は、金属板材の外面に形成されるレジスト膜の形状を表す平面図である。
【
図7】(a)は変形例1に係る凝集粉体解砕用フィルタの孔部および凸部を示す平面図、(b)は変形例2に係る凝集粉体解砕用フィルタの孔部および凸部を示す平面図、(c)は変形例3に係る凝集粉体解砕用フィルタの孔部および凸部を示す平面図、(d)は変形例4に係る凝集粉体解砕用フィルタの孔部および凸部を示す平面図である。
【
図8】従来技術に係る凝集粉体解砕装置の構成、および当該凝集粉体解砕装置が備える凝集粉体解砕用フィルタの構成を示す模式図である。
【
図9】従来技術に係る凝集粉体解砕用フィルタの製造ステップを示す断面図であって、(a)は金属板材に孔部を開ける穿孔ステップ、(b)は孔部の周辺の一部にパンチング加工により凸部を形成する凸部形成ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0043】
[実施形態]
1.凝集粉体解砕用フィルタ1の構造
凝集粉体解砕用フィルタ(以下では、単に「フィルタ」と記載する。)1の構造について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0044】
先ず、
図1に示すように、フィルタ1には、複数の孔部10が開けられている。
図2に示すように、複数の孔部10のそれぞれは、板形状のベース部12における第1主面(内面)1aと第2主面(外面)1bとの間を板厚方向に貫通するように形成されている。なお、本明細書において、内面1aはインペラが配され、凝集粉体が投入される側の主面(第1主面)であり、外面1bはフィルタ1の板厚方向における内面1aとは反対側の主面(第2主面)である。
【0045】
図1に戻って、複数の孔部10のそれぞれにおける周縁部の一部に沿うように複数の凸部11が形成されている。
図2に示すように、複数の凸部11のそれぞれは、複数の孔部10のそれぞれにおける内面1a側の開口(内側開口)10aの周縁部の一部の領域に根元部分を有し、ベース部12の内面1a側から内側(内面1aから離れる側)に向けて立設されている。
【0046】
図1において、解砕機におけるインペラの羽根が回転する方向を矢印Aで示す場合に、複数の凸部11のそれぞれは、孔部10に対して下流側に揃えた状態で配置されている。そして、本実施形態に係るフィルタ1では、
図1に示すようにフィルタ1を内面1a側から平面視する場合に、複数の凸部11のそれぞれが半円環形状を有する。
【0047】
2.凸部11の形状
複数の凸部11のそれぞれの形状について、
図2を用いて説明する。
【0048】
図2の拡大部分に示すように、凸部11の内側端面(頂面)11aは、フィルタ1の内面1aおよび外面1bに平行な平面で形成されている。また、凸部11における内側端面11aと孔側側壁面11bとが突き合わされてなる内側角部11cが鋭角θ11をなすように形成されている。
【0049】
複数の凸部11のそれぞれにおいては、フィルタ1を内面1a側から平面視する場合に、内側角部11cと孔側側壁面11bの一部とが孔部10の内側開口10aに対して覆いかぶさるようになっている。換言すると、凸部11は、孔部10側がアンダーカットされた断面形状を有する。
【0050】
また、
図2に示すように、複数の凸部11のそれぞれは、孔部10の孔径方向において、根元部分10dの厚みW11dよりも頂面11aの厚みW11aの方が厚肉となるように形成されている。
【0051】
3.孔部10の形状
複数の孔部10のそれぞれの形状について、
図1から
図3を用いて説明する。なお、
図3は、フィルタ1を
図2の矢印Bで示す側から平面視した平面図である。
【0052】
図2に示すように、孔部10の孔周壁面の内の凸部11の孔側側壁面11bに続く孔周壁面10cが斜面で形成されている。具体的に、孔周壁面10cは、外面1bとなす角度θ10が鈍角となるように形成されている。これにより、内側開口10aの開口径L1は、外側開口10bの開口長さL2よりも小さくなっている。
【0053】
本実施形態に係るフィルタ1では、
図1に示すように内側開口10aは円形状を有する。これに対して、外側開口10bは、
図3に示すように楕円形状または長円形状を有する。なお、
図3の拡大部分に示すように、外側開口10bにおける長軸Ax1での開口長さL2は、短軸Ax2での開口幅W2よりも大きい。ここで、長軸Ax1は、
図1の矢印Aの方向に沿うように設定されている。
【0054】
本実施形態に係るフィルタ1では、孔部10の孔周壁面10cを凸部11の孔側側壁面11bに続くように斜面で構成することにより(
図2を参照)、解砕された粉体が孔側側壁面11bから孔周壁面10cに連続して沿って案内され、外側開口10bから排出される。なお、
図2に示すように、孔部10の孔周壁面10cと凸部11の孔側側壁面11bとを、互いが滑らかに連続するように形成する場合には、当該孔部10の孔周壁面10cと凸部11の孔側側壁面11bとの境界部分で粉体が残留するのを抑制することができる。
【0055】
4.フィルタ1の製造方法
フィルタ1の製造方法について、
図4から
図6を用いて説明する。
【0056】
先ず、
図4(a)に示すように、金属板材100を準備する。本実施形態において、金属板材100は、一例としてステンレス鋼からなる金属板材である。
【0057】
次に、
図4(b)に示すように、金属板材100の第1主面100aの所定箇所にレジスト膜200,201を形成する。なお、レジスト膜200は、金属板材100の第1主面100aにおける外縁部分に形成される。レジスト膜201は、凸部11の内側端面11aに相当する部分に形成される。また、金属板材100の第2主面100bに対して、所定箇所に開口部202aを有するレジスト膜202を形成する。
【0058】
なお、本実施形態では、レジスト膜202の形成における焼付工程の時間を、レジスト膜200,201の形成における焼付工程の時間よりも長くしている。これにより、レジスト膜202は、レジスト膜200,201よりも強固なレジスト膜として形成されることになる。
【0059】
ここで、
図6(a)に示すように、第1主面aに形成されるレジスト膜201は、
図1に示した凸部11の内側端面11aと略同じ形状を有する。即ち、レジスト膜201は、孔部10の内側開口10aに相当する領域201aの外周の一部を囲むように半円環形状で形成される。
【0060】
また、
図6(b)に示すように、第2主面100bに形成されるレジスト膜202は、
図3に示した孔部10の外側開口10bと略同じ形状の開口202aを有する。なお、領域201aにおけるレジスト膜201から最も離間した箇所201bから金属板材100の板厚方向に仮想線LN1を引き(
図6では模式的に図示している)、レジスト膜201における領域201aから最も離間した箇所201cからも金属板材100の板厚方向に仮想線LN2を引く(
図6では模式的に図示している)。このように仮想線LN1,LN2を引くとき、第2主面100bに形成されたレジスト膜202の開口部202aは、長軸方向の一端側の箇所202bが仮想線LN1上に位置し、長軸方向の他端側の箇所202cが仮想線LN2上または少し箇所202b側に位置する。
【0061】
次に、
図4(c)に示すように、金属板材100の第1主面100a側および第2主面100b側の両側からウェットエッチングを施す(矢印C,D)。このとき、本実施形態の製造方法では、第2主面100b側からのエッチング速度(矢印Dで示すエッチングのエッチング速度)を、第1主面100a側からのエッチング速度(矢印Cで示すエッチングのエッチング速度)よりも高くする。
【0062】
上記のようにエッチングを施すことにより、
図5(a)に示すように、第1主面100a側に開口(内側開口)10aを有し、第2主面100b側に開口(外側開口)10bを有する孔部10が形成される。また、第1主面100aは、穴部10が形成された領域、レジスト膜200の下に残った縁部100d、およびレジスト膜201の下方に残った凸部100eを除く部分は、主面(堀込底面)100cまで掘り込まれる。
【0063】
堀込底面100cから第2主面100bまでの厚みは、複数の孔部10における内側開口10aの開口径L1(
図2を参照。)と略同じである。ここで、「略」は製造誤差を含むことを示す。
【0064】
レジスト膜201の下方に残った凸部100eの孔側側壁面11bは、第1主面100a側から外側(内側開口10a側)に向けて広がるテーパー状の斜面となる。また、孔部10の孔周壁面10cも、内側開口10aから外側(外側開口10b側)に向けて広がるテーパー状の斜面となる。
【0065】
なお、凸部100aの孔側側壁面11bおよび孔部10の孔周壁面10cについては、
図5(a)に示す断面で必ずしも直線状である必要はなく、内側に凹みを有する曲線状であってもよい。ただし、解砕された粉体を孔部10を通して外方に排出する際の粉体の残留を少なくするという観点からは、孔側側壁面11bと孔周壁面10cとの接続部分に段差を生じないようにすることが望ましい。
【0066】
次に、レジスト膜200~202を除去するとともに、縁部100dを除去する。これにより、
図5(b)に示す凝集粉体解砕用フィルタ1が完成する。なお、必要に応じて凝集粉体解砕用フィルタ1を筒形状または漏斗形状に塑性加工することも可能である。
【0067】
[変形例1]
変形例1に係る凝集粉体解砕用フィルタ(以下では、単に「フィルタ」と記載する)の構造について、
図7(a)を用いて説明する。なお、
図7(a)は、1つの孔部30と1つの凸部31とを抜き出し、内面側から平面視した平面図である。
【0068】
図7(a)に示すように、本変形例に係るフィルタは、楕円形または長円形の開口形状を有する孔部30を有する。なお、図示を省略しているが、孔部30の外面側の開口形状については、
図7(a)に示す内面側と同一であってもよいし、さらに長軸方向の寸法が長い楕円形または長円形であってもよい。
【0069】
凸部31は、孔部30の開口縁の一部に沿って形成された、平面視で環状を有する。図示を省略しているが、本変形例に係る凸部31についても、内側端面(頂面)が外面に平行な平面で形成されている。
【0070】
また、凸部31は、孔部30の開口縁の内、インペラの羽根の回転方向における下流側(
図1の矢印Aの下流側)の部分に設けられている。
【0071】
[変形例2]
変形例2に係る凝集粉体解砕用フィルタ(以下では、単に「フィルタ」と記載する)の構造について、
図7(b)を用いて説明する。なお、
図7(b)でも、1つの孔部40と1つの凸部41とを抜き出し、内面側から平面視した平面図である。
【0072】
図7(b)に示すように、本変形例に係るフィルタは、四角形の開口形状を有する孔部40を有する。なお、図示を省略しているが、孔部40の外面側の開口形状については、
図7(b)に示す内面側と同一であってもよいし、さらに長さが長い長方形であってもよい。
【0073】
凸部41は、孔部40の開口縁の一部に沿って形成された、平面視でC字状を有する。図示を省略しているが、本変形例に係る凸部41についても、内側端面(頂面)が外面に平行な平面で形成されている。
【0074】
また、凸部41も、孔部40の開口縁の内、インペラの羽根の回転方向における下流側(
図1の矢印Aの下流側)の部分に設けられている。
【0075】
[変形例3]
変形例3に係る凝集粉体解砕用フィルタ(以下では、単に「フィルタ」と記載する)の構造について、
図7(c)を用いて説明する。なお、
図7(c)でも、1つの孔部50と1つの凸部51とを抜き出し、内面側から平面視した平面図である。
【0076】
図7(c)に示すように、本変形例に係るフィルタは、菱形の開口形状を有する孔部50を有する。なお、図示を省略しているが、孔部50の外面側の開口形状については、
図7(c)に示す内面側と同一であってもよいし、さらに長さが長い菱形であってもよい。
【0077】
凸部51は、孔部50の開口縁の一部(開口縁50aおよび開口縁50b)に沿って形成された、平面視でアングル状を有する。図示を省略しているが、本変形例に係る凸部51についても、内側端面(頂面)が外面に平行な平面で形成されている。
【0078】
また、凸部51も、孔部50の開口縁の内、インペラの羽根の回転方向における下流側(
図1の矢印Aの下流側)の部分に設けられている。
【0079】
[変形例4]
変形例4に係る凝集粉体解砕用フィルタ(以下では、単に「フィルタ」と記載する)の構造について、
図7(d)を用いて説明する。なお、
図7(d)では、1つの孔部60と、当該孔部60に対応して設けられた5つの凸部61~65とを抜き出し、内面側から平面視した平面図である。
【0080】
図7(d)に示すように、本変形例に係るフィルタは、円形の開口形状を有する孔部60を有する。なお、図示を省略しているが、孔部60の外面側の開口形状については、
図7(d)に示す内面側と同一であってもよいし、さらに長軸方向の寸法が長い楕円形または長円形であってもよい。
【0081】
凸部61~65は、孔部60の開口縁の一部に沿って形成され、当該孔部60の開口縁に沿った方向に互いに間隔を空けて設けられている。それぞれの凸部61~65は、平面視で略扇形に形成されている。なお、図示を省略しているが、本変形例に係る凸部61~65のそれぞれについても、内側端面(頂面)が外面に平行な平面で形成されている。
【0082】
また、凸部61~65も、孔部60の開口縁の内、インペラの羽根の回転方向における下流側(
図1の矢印Aの下流側)の部分に設けられている。
【0083】
[その他の変形例]
上記実施形態では、フィルタ1の製造における最終工程で、縁部100dを除去することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、
図4(c)に示すエッチングによって、縁部100dも除去してしまうこともできる。
【0084】
上記実施形態では、
図2に示したように、孔側側壁面11bが逆テーパーの斜面で構成されることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、フィルタ1の内面1aに対して直交する方向に立設された平面とすることもできる。
【0085】
同様に、上記実施形態では、孔部10の孔周壁面10cも逆テーパーの斜面で構成されることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、フィルタ1の内面1aおよび外面1bの双方に直交する方向の周壁面とすることもできる。
【0086】
上記実施形態では、フィルタ1の製造においてウェットエッチングを用いることとしたが、本発明は、ドライエッチングを用いることも可能である。
【0087】
また、上記実施形態および上記変形例1~4では、凸部11,31,41,51,61~65および孔部10,30,40,50,60をエッチングにより形成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、エッチングにより凸部を形成した後に、パンチング加工などにより孔部を形成することも可能である。逆に、プレス加工などにより凸部を形成した後に、エッチングにより孔部を形成することも可能である。
【0088】
また、上記実施形態では、フィルタ1の構成材としてステンレス鋼からなる金属板材100を用いることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、金属板材として銅板を用いたり、金属板材として鋼板を用いたりすることも可能である。なお、金属板材として鋼板を用いる場合には、凸部および孔部を形成した後にニッケルなどのメッキを施してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 凝集粉体解砕用フィルタ
1a 内面
10,30,40,50,60 孔部
11,31,41,51,61~65 凸部
11a 内側端面(頂面)
12 ベース部
100 金属板材
200~202 レジスト膜