(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079215
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】無機物質粉末充填樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20220519BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220519BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220519BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C08L23/02
C08K3/26
C08K3/013
C08L23/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190265
(22)【出願日】2020-11-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 愛璃奈
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB022
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB111
4J002BB112
4J002BB121
4J002BB131
4J002BB141
4J002BB151
4J002BB161
4J002BB162
4J002BB171
4J002BB172
4J002BB182
4J002BB212
4J002BG052
4J002BK002
4J002BL012
4J002BL022
4J002DA036
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE186
4J002DE236
4J002DG046
4J002DG056
4J002DH046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002FD016
4J002FD022
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】無機物質粉末が高充填されていながら柔軟性に富み、成形加工が容易で、表面外観の良好な成形品を製造し得る熱可塑性樹脂組成物、及びこれを用いた成形品を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する無機物質粉末充填樹脂組成物において、熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂とプロピレン-α-オレフィン共重合体とを含み、プロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量がポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以上25質量部以下であることを特徴とする無機物質粉末充填樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する無機物質粉末充填樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂とプロピレン-α-オレフィン共重合体とを含み、前記プロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以上25質量部以下であることを特徴とする無機物質粉末充填樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂が、プロピレンホモポリマーである請求項1の無機物質粉末充填樹脂組成物。
【請求項3】
前記プロピレン-α-オレフィン共重合体が、エチレン-プロピレンブロックコポリマーであり、プロピレン由来の構成単位が80質量%以上、エチレン由来の構成単位が20質量%以下である請求項1又は2に記載の無機物質粉末充填樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムである請求項1~3の何れかに記載の無機物質粉末充填樹脂組成物。
【請求項5】
前記重質炭酸カルシウムが、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の重質炭酸カルシウム粒子である請求項4に記載の無機物質粉末充填樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の無機物質粉末充填樹脂組成物を用いて成形された成形品。
【請求項7】
前記成形品が射出成形品である請求項6に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物質粉末充填樹脂組成物及び成形品に関する。詳しく述べると、本発明は、熱可塑性樹脂中に無機物質粉末が高充填されているにも拘らず、柔軟性に富み、成形加工が容易で、表面外観の良好な成形品を与える樹脂組成物、およびこれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂は、工業用及び家庭用の各種成形品、食品包装や一般用品の成形包装等の材料として、森林資源を源とする紙資材と共に広く用いられてきたが、環境保護が国際的な問題となって来た現在、これらを無毒で、リサイクル可能とする、焼却できるといった観点と並行して、熱可塑性樹脂ならびに紙資材の消費量を低減することも大いに検討されている。このような点から、炭酸カルシウムを始めとする無機物質粉末を熱可塑性樹脂中に高充填してなる、無機物質粉末配合熱可塑性樹脂組成物が提唱され、実用化されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
しかしながら、一般に無機物質粉末を高充填した樹脂組成物は、無機物質粉末未充填の熱可塑性樹脂に比べて柔軟性が著しく乏しく、成形品も硬く脆くなるきらいがある。例えばブラシや筐体等の射出成形品を無機物質粉末充填樹脂組成物から作製した場合、柔軟性が低いために使用中に、あるいは組み立て工程において折れや割れが生じることがある。これら成形品はまた、硬いために触感が悪い上、引張り等の応力が与えられると破断し易い問題もあり、折り曲げ疲労耐性(ヒンジ)も低い傾向にある。成形加工も困難で、上記のような組み立て時の割れ以外にも、例えば射出成形における成形効率等が低く、延伸加工等の条件設定において裕度が小さい難点がある。表面外観の不良等も来し易く、最終製品として調節可能な見かけ比重、白色度、不透明度等の物性の範囲も限られていた。
【0004】
樹脂組成物に柔軟性を付与する手段として、オレフィン系共重合体を配合する技術が知られている。一部のオレフィン系共重合体はエラストマーとして機能し、その配合によって樹脂組成物の柔軟性や伸縮性を改善できる場合がある。例えば特許文献2では、α-オレフィン系エラストマーを含むオレフィン系樹脂、充填剤、及び消臭剤を含有する伸縮性フィルムが、おむつやマスクなどの衛生用品用のフィルムとして開示されている。同文献では、オレフィン系樹脂中のエラストマーの含有割合を50~100重量%に、オレフィン系樹脂100重量部に対する充填剤の含有量を50~400重量部に設定した、消臭性、伸縮性、耐ブロッキング性、通気性に優れる伸縮性フィルム等が記載されている。特許文献3には、エチレン-プロピレン共重合体等のポリプロピレン系エラストマー60~80重量%、低密度ポリエチレン10~30重量%、及び無機充填剤5~15重量%を含有する樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-10931号公報
【特許文献2】国際公開第2018/066334号パンフレット
【特許文献3】特開2008-169304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂組成物へのエラストマー成分の配合によって、上記のように柔軟性が改善されることもあるが、エラストマー成分の種類や配合量が不適切だと、目的とする十分な柔軟性が得られない場合がある。後記する実施例でも示すように、例えばポリオレフィン系の樹脂組成物にスチレン系のエラストマーを配合しても、柔軟性は十分には改善されず、成形品はしばしば脆性に劣る。エラストマー成分としてオレフィン共重合体を配合した場合にも、配合量が少ないと満足な柔軟性が得られない。逆に含有率が高められた、例えば特許文献2や3記載のようにエラストマー成分が主ポリマーとなるような組成物では、強度低下を招く場合がある。
【0007】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、柔軟性に富み、成形加工が容易で、表面外観の良好な成形品を製造し得る熱可塑性樹脂組成物、及びこれを用いた成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する上で鋭意検討を行った結果、特定の熱可塑性樹脂に特定のオレフィン共重合体を特定量配合することにより、上記課題が解決されて、樹脂組成物の強度を損なうことなく十分な柔軟性が付与され、成形加工が容易で、表面外観の良好な成形品を与える熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有する無機物質粉末充填樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂とプロピレン-α-オレフィン共重合体とを含み、前記プロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以上25質量部以下であることを特徴とする無機物質粉末充填樹脂組成物である。
【0010】
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物の一態様においては、ポリオレフィン樹脂が、プロピレンホモポリマーである無機物質粉末充填樹脂組成物が示される。
【0011】
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物の一態様においては、プロピレン-α-オレフィン共重合体が、エチレン-プロピレンブロックコポリマーであり、プロピレン由来の構成単位が80質量%以上、エチレン由来の構成単位が20質量%以下である無機物質粉末充填樹脂組成物が示される。
【0012】
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物の一態様においては、無機物質粉末が重質炭酸カルシウムである無機物質粉末充填樹脂組成物が示される。
【0013】
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物の一態様においては、重質炭酸カルシウムが、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の重質炭酸カルシウム粒子である無機物質粉末充填樹脂組成物が示される。
【0014】
上記課題を解決する本発明はまた、上記の無機物質粉末充填樹脂組成物を用いて成形された成形品である。
【0015】
本発明に係る成形品の一態様においては、成形品が射出成形品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無機物質粉末が高充填されているにも拘らず、柔軟性に富み、成形加工が容易で、例えば射出成形における成形効率等が高く、表面外観の良好な成形品を与える樹脂組成物が提供される。本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、例えばブラシや筐体等に射出成形した場合にも、良好な柔軟性と強度を備え、使用中や組み立て中に折れや割れを生じることのない成形品を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
【0018】
≪無機物質粉末充填樹脂組成物≫
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と無機物質粉末とを質量比50:50~10:90の割合で含有するものであり、熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂とプロピレン-α-オレフィン共重合体とを含み、該プロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量はポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以上25質量部以下の熱可塑性樹脂組成物である。以下、本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物(以下で「樹脂組成物」と略す場合がある。)を構成する各成分につき、それぞれ詳細に説明する。
【0019】
≪ポリオレフィン樹脂≫
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物において用いられ得るポリオレフィン樹脂としては、特に限定されるものではなく、当該組成物のその用途、機能等に応じて、各種のものが用いられ得る。ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン成分単位を主成分とするポリオレフィン樹脂であり、具体的にはポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂、その他、ポリメチル-1-ペンテン、環状オレフィンポリマー、エチレン-環状オレフィン共重合体など、さらにそれらの2種以上の混合物などが挙げられる。なお、上記「主成分とする」とは、オレフィン成分単位がポリオレフィン樹脂中に50質量%以上含まれることを意味し、その含有量は好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。特に、ポリオレフィンの単独重合体(ホモポリマー)が好ましい。なお、本発明に使用されるポリオレフィン樹脂の製造方法は特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒、酸素、過酸化物等のラジカル開始剤等を用いる方法等の何れによって得られたものであっても良い。
【0020】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分単位が50質量%以上の樹脂が挙げられ、例えば、プロピレン単独重合体、又はプロピレンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。プロピレン単独重合体としては、アイソタクティック、シンジオタクティック、アタクチック、ヘミアイソタクチック及び種々の立体規則性を示す直鎖又は分枝状ポリプロピレン等の何れもが包含される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても良く、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であっても良い。共重合成分(他のモノマー)としては、テトラフロロエチレンや酢酸ビニル等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明においては、好ましくは単独重合体、あるいは他のモノマーが少量、例えば5質量%未満共重合した樹脂を使用する。なお、プロピレンの単独重合体においても、重合の結果として例えばヘキセン等のα-オレフィンが共重合したかのような構造が一部に含まれる場合があるが、本発明においてはそうした重合体をも、広くプロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)として包含する。これら重合体では、上記のような構造が概して5質量%未満、典型的には3質量%以下、特に1質量%以下程度と少量なので、エラストマーとしての特性よりも樹脂的な特性が発現する。そのため、後記するプロピレン-α-オレフィン共重合体とは明確に区別できる。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
また、前記ポリエチレン系樹脂としては、エチレン成分単位が50質量%以上の樹脂が挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン1共重合体、エチレン-ブテン1共重合体、エチレン-ヘキセン1共重合体、エチレン-4メチルペンテン1共重合体、エチレン-オクテン1共重合体等、さらにそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0022】
前記したポリオレフィン樹脂の中でも、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂、特に、機械的強度と耐熱性とのバランスに特に優れることからポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。中でも、プロピレンホモポリマーが好ましい。上記のようにプロピレンホモポリマーとしては、種々の立体構造の直鎖又は分枝状ポリプロピレン等の何れであっても良く、その分子量にも特に制限はない。立体構造や分子量の異なる、複数のプロピレンホモポリマーを併用することも可能である。
【0023】
≪プロピレン-α-オレフィン共重合体≫
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物において用いられ得るプロピレン-α-オレフィン共重合体(以下で「共重合体」と略す場合がある。)としては、特に限定されるものではなく、樹脂組成物の用途、機能等に応じて、各種のものを用いることができる。2種以上の共重合体を併用することも可能である。プロピレンとの共重合モノマーにも特に制限はなく、例えばエチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンから選択される1種又は2種以上のモノマー成分であってもよい。例としてエチレンや、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、エチレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、及び/又は1-オクテン、特にエチレンとの共重合体が好ましい。共重合の形態にも制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、さらにはグラフト共重合体等、種々の形態の共重合体を使用することができる。共重合比や分子量についても特に制限はないが、共重合モノマーであるα-オレフィン由来の構成単位が好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、特に好ましくは8質量%以上の共重合体、また、同構成単位が好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは18質量%以下等の共重合体を使用する。これらプロピレン-α-オレフィン共重合体は柔軟性に富み、ポリオレフィン樹脂との相溶性も優れているので、本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物に配合された際に、特に優れた柔軟性、加工性を発現する。
【0024】
本発明で使用し得るプロピレン-α-オレフィン共重合体はまた、ジエンやカルボン酸(エステル)変性オレフィン等の第三成分由来の構成単位を含んでいてもよい。ジエン成分としては、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、ノルボルナジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等が;カルボン酸(エステル)変性オレフィンとしては、カルボキシル基含有オレフィン、カルボン酸エステル基含有オレフィンの類、例えば無水マレイン酸変性オレフィン、(メタ)アクリル酸メチル等が、それぞれ挙げられるが、これらに限定されない。これら第三成分由来の構成単位を、例えば0.1~10質量%、特に0.5~8質量%、中でも1~5質量%含む共重合体は、第三成分不含のプロピレン-α-オレフィン共重合体とは異なった溶融挙動や相溶性を示すことがあり、その配合によって本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物の物性や加工性を制御することも可能である。ジエン由来の構成単位は架橋サイトにもなり得るので、過酸化物等の架橋剤と共に他の成分と混合することによって、プロピレン-α-オレフィン共重合体を部分的に架橋させ、加工性を改変することもできる。また、カルボン酸基等の官能基を有するプロピレン-α-オレフィン共重合体の使用により、無機物質粉末との混和性が高められ、物性や成形性が改善される場合もある。
【0025】
上記のようなプロピレン-α-オレフィン共重合体は、概して柔軟で、例えばJIS K6253に基づくショアA硬さが10~90、典型的には20~80となる。本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、これら共重合体が配合されているため、柔軟性に優れたものとなる。プロピレン-α-オレフィン共重合体の特性は多岐に亘り、例えば質量平均分子量が20,000~5,000,000、典型的には50,000~1,000,000、特に70,000~400,000程度の範囲に;密度が0.84~0.92g/cm3、典型的には0.85~0.91g/cm3程度の範囲に;結晶化度が0.5~40%、典型的には5~25%程度の範囲に;メルトフローレート(ASTM D1238に従う2.16kg、230℃でのMFR)が0.1~90g/10分、典型的には0.5~30g/10分程度の範囲に;融解温度が40~180℃、典型的には80~160℃、特に100~140℃程度の範囲に、それぞれ亘り得るが、これらに限定されず、本発明ではどのような特性のプロピレン-α-オレフィン共重合体をも使用することができる。本発明で使用し得るプロピレン-α-オレフィン共重合体はまた、3つのプロピレン単位のトリアド(triad)タクチシティを有していてもよい。トリアドタクチシティは、例えば13C-核磁気共鳴(NMR)によって測定することができ、典型的には50~99%、特に75~99%程度の値となり得る。
【0026】
本発明においては、プロピレン-α-オレフィン共重合体として、エチレン-プロピレンブロックコポリマーを使用するのが好ましい。より好ましくは、プロピレン由来の構成単位が80質量%以上、エチレン由来の構成単位が20質量%以下のブロックコポリマー;特にプロピレン由来の構成単位が82~92質量%、エチレン由来の構成単位が8~18質量%のブロックコポリマー;中でも、プロピレン由来の構成単位が84~90質量%、エチレン由来の構成単位が10~16質量%のブロックコポリマーを使用する。複数種のエチレン-プロピレンブロックコポリマーを、プロピレン単位とエチレン単位との質量比が上記範囲内となるように併用してもよい。こうした共重合比のエチレン-プロピレンブロックコポリマーは、柔軟性やポリオレフィン樹脂との相溶性が特に優れるため、本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物の柔軟性や加工性を、さらに優れたものとすることができる。
【0027】
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物においては、上記プロピレン-α-オレフィン共重合体は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以上、好ましくは12質量部以上、より好ましくは15質量部以上、特に好ましくは17質量部以上の量にて配合される。ポリオレフィン樹脂100質量部に対するプロピレン-α-オレフィン共重合体の量が10質量部以上であれば、樹脂組成物の柔軟性は十分なものとなる。共重合体の配合量はまた、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して25質量部以下、好ましくは24質量部以下、より好ましくは23質量部以下、特に好ましくは22質量部以下である。この範囲内であれば、無機物質粉末充填樹脂組成物の強度低下を殆ど伴わずに、柔軟性を改善することができる。
【0028】
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物において、熱可塑性樹脂は上記のようなポリオレフィン樹脂とプロピレン-α-オレフィン共重合体とを含むが、さらにこれら以外の樹脂成分を含んでもよい。例としてポリ(メタ)アクリル酸(エステル)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、石油炭化水素樹脂、クマロンインデン樹脂等の熱可塑性樹脂;さらにはスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン-エチレン共重合体、スチレン-イソプレン-エチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、フッ素系エラストマー等のエラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。これら樹脂成分の配合により、無機物質粉末充填樹脂組成物中で各成分がより均一に分散し、物性や加工性が改善する場合がある。しかしながら各種樹脂成分の相溶性等を考慮すると、本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物における熱可塑性樹脂は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは97質量%以上、特に好ましくは実質的に全量が、上記のポリオレフィン樹脂及びプロピレン-α-オレフィン共重合体から成る。ポリオレフィン樹脂及びプロピレン-α-オレフィン共重合体以外の樹脂成分を実質的に不含の無機物質粉末充填樹脂組成物であれば、原材料や組成、加工条件の選定が特に容易となる。
【0029】
≪無機物質粉末≫
無機物質粉末としては、特に限定されず、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、若しくはこれらの水和物の粉末状のものが挙げられ、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛等が挙げられる。これらは合成のものであっても天然鉱物由来のものであっても良く、また、これらは単独又は2種類以上併用して含有されても良い。
【0030】
さらに、無機物質粉末の形状としても、特に限定されるわけではなく、粒子状、フレーク状、顆粒状、繊維状等の何れであっても良い。また、粒子状としても、一般的に合成法により得られるような球形のものであっても、あるいは、採集した天然鉱物を粉砕にかけることにより得られるような不定形状のものであっても良い。
【0031】
これらの無機物質粉末として、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等であり、特に炭酸カルシウムを含むものが好ましい。さらに炭酸カルシウムとしては、合成法により調製されたもの、いわゆる軽質炭酸カルシウムと、石灰石等CaCO3を主成分とする天然原料を機械的に粉砕分級して得られる、いわゆる重質炭酸カルシウムの何れであっても良く、これらを組合わせたものであっても良い。
【0032】
しかしながら本発明においては、重質炭酸カルシウムを含む無機物質粉末を使用するのが好ましい。ここで、重質炭酸カルシウムとは、天然の石灰石等を機械的に粉砕・加工して得られるものであって、化学的沈殿反応等によって製造される合成炭酸カルシウムとは明確に区別される。なお、粉砕方法には乾式法と湿式法とがあるが、乾式法によるものが好ましい。
【0033】
重質炭酸カルシウム粒子は、例えば、合成法による軽質炭酸カルシウムとは異なり、粒子形成が粉砕処理によって行われたことに起因する、表面の不定形性、比表面積の大きさに特徴を有する。重質炭酸カルシウム粒子がこの様に不定形性、比表面積の大きさを有するため、熱可塑性樹脂中に配合した場合に重質炭酸カルシウム粒子は、熱可塑性樹脂に対してより多くの接触界面を有し、均一分散に効果がある。
【0034】
特に限定されるわけではないが、重質炭酸カルシウム粒子の比表面積としては、その平均粒子径によっても左右されるが、3,000cm2/g以上35,000cm2/g以下程度であることが望まれる。ここでいう比表面積は空気透過法によるものである。比表面積がこの範囲内にあると、得られる成形品の加工性低下が抑制される傾向がある。
【0035】
また、重質炭酸カルシウム粒子の不定形性は、粒子形状の球形化の度合いが低いことで表わすことが出来、特に限定されるわけではないが、具体的には、真円度が0.50以上0.95以下、より好ましくは0.55以上0.93以下、さらに好ましくは0.60以上0.90以下である。重質炭酸カルシウム粒子の真円度がこの範囲内にあると、成形品の強度や成形加工性も適度なものとなる。なお、ここで、真円度とは、(粒子の投影面積)/(粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積)で表せるものである。真円度の測定方法は特に限定されず、例えば顕微鏡写真から粒子の投影面積と粒子の投影周囲長とを測定しても良く、一般に商用されている画像解析ソフトを用いても良い。
【0036】
また、無機物質粉末の分散性又は反応性を高めるために、表面が常法に従い表面改質されていても良い。表面改質法としては、プラズマ処理等の物理的な方法や、カップリング剤や界面活性剤で表面を化学的に表面処理するもの等が例示できる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の何れのものであっても良く、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩等が挙げられる。これらとは逆に、表面処理のされていない無機物質粉末が含有されていても構わない。
【0037】
重質炭酸カルシウム粒子等の無機物質粉末としては、特に限定される訳ではないが、その平均粒子径が、0.5μm以上9.0μm以下が好ましく、0.7μm以上6.0μm以下がより好ましく、さらに好ましくは、1.0μm以上4.0μm以下である。なお、本明細書において述べる無機物質粉末の平均粒子径は、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値をいう。測定機器としては、例えば、島津製作所製の比表面積測定装置SS-100型を好ましく用いることができる。平均粒子径が9.0μmよりも大きくなると、例えばシート状の成形品を形成した場合に、その成形品の層厚にもよるが、成形品表面より無機物質粉末が突出して、当該粉末が脱落したり、表面性状や機械強度等を損なうおそれがある。特に、その粒径分布において、粒子径45μm以上の粒子を含有しないことが好ましい。他方、粒子が細かくなり過ぎると、前述した樹脂と混練した際に粘度が著しく上昇し、成形品の製造が困難になる虞れがある。そうした問題は、無機物質粉末の平均粒子径を0.5μm以上、特に0.7μm以上6.0μm以下とすることによって、防ぐことが可能となる。
【0038】
上記のように、本発明においては無機物質粉末として炭酸カルシウムを使用することが好ましい。より好ましくは、該炭酸カルシウムが、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径が0.5μm以上2.0μm未満、特に0.7μm以上2.0μm未満である第1の炭酸カルシウムと、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径が2.0μm以上9.0μm未満、特に2.0μm以上6.0μm未満である第2の炭酸カルシウムとを含有する。このことによって、成形品の表面性状や、印刷性、ブロッキング性等の物性を改善することができる。また、炭酸カルシウムの偏在が抑制され、外観及び、破断伸び等の機械的特性が良好な成形品を得ることができ、樹脂組成物成形品からの炭酸カルシウムの脱落を低減することも可能となる。特に限定されるわけではないが、第1の炭酸カルシウムの平均粒子径をaとし、第2の炭酸カルシウムの平均粒子径をbとした場合に、a/b比率が0.85以下、より好ましくは0.10~0.70、さらに好ましくは0.10~0.50程度となるように大別できるものであることが望ましい。このようなある程度明確な平均粒子径の差をもったものを併用することで、特に優れた効果が期待できるためである。また、第1の炭酸カルシウムと第2の炭酸カルシウムのそれぞれは、その粒子径(μm)の分布の変動係数(Cv)が0.01~0.10程度であることが望ましく、特に0.03~0.08程度であることが望ましい。変動係数(Cv)で規定される粒子径のばらつきがこの程度であれば、各粉末群がより相補的に効果を与え得ると考えられる。第1の炭酸カルシウムと第2の炭酸カルシウムとの質量比は、90:10~98:2、特に92:8~95:5程度とすることが好ましい。平均粒子径分布が異なる炭酸カルシウム群として、3つ以上のものを使用してもよい。また、前記第1の炭酸カルシウム及び前記第2の炭酸カルシウムが、何れも表面処理された重質炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0039】
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物においては、上記した熱可塑性樹脂と無機物質粉末とが、50:50~10:90の質量比で含有される。無機物質粉末の含有量が少ないと、樹脂組成物の質感や強度等の物性が得難く、多すぎると混練や成形加工が困難となり、柔軟性も不十分となるためである。熱可塑性樹脂と無機物質粉末との合計質量に占める無機物質粉末の比率は、好ましくは52質量%以上、より好ましくは55質量%以上である。同比率の上限値に関しては、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下とする。無機物質粉末充填樹脂組成物の柔軟性が、プロピレン-α-オレフィン共重合体量に大きく影響され得ることを考慮すると、上記の質量比と共に共重合体と無機物質粉末との質量比を規定してもよい。プロピレン-α-オレフィン共重合体と無機物質粉末との質量比を、例えば3:97~20:80、さらには5:95~18:82、中でも10:90~15:85の範囲内とすることにより、柔軟性と強度のバランスに特に優れた樹脂組成物とすることができる。
【0040】
≪その他の添加剤≫
本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物には、必要に応じて、補助剤としてその他の添加剤を配合することも可能である。その他の添加剤としては、例えば、色剤、滑剤、カップリング剤、流動性改良材(流動性調整剤)、架橋剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤等を配合しても良い。これらの添加剤は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらは、後述の混練工程において配合しても良く、混練工程の前にあらかじめ原料成分中に配合していても良い。本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物において、これらのその他の添加剤の添加量は、所望の物性及び加工性を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、無機物質粉末充填樹脂組成物全体の質量を100%とした場合に、これらその他の添加剤はそれぞれ0~10質量%程度、特に0.04~5質量%程度の割合で、かつ当該その他の添加剤全体で10質量%以下となる割合で配合されることが望まれる。
【0041】
以下に、これらのうち、重要と考えられるものについて例を挙げて説明するが、これらに限られるものではない。
【0042】
可塑剤としては、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル・トリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、酒石酸ジブチル、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ジアセチン、エポキシ化大豆油、さらには乳酸、重量平均分子量3,000以下の乳酸オリゴマー、分岐状ポリ乳酸(例えば、国際公開WO2010/082639号明細書等を参照。)等が挙げられる。これら可塑剤は通常、熱可塑性樹脂に対して数質量%程度配合されるが、その量はこれら範囲に限定されず、成形品の目的によってはエポキシ化大豆油等を20~50質量部程度配合することも可能である。しかしながら本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物においては、乳酸、重量平均分子量3,000以下の乳酸オリゴマー、又は分岐状ポリ乳酸を可塑剤として配合するのが好ましく、その配合量は熱可塑性樹脂100質量部に対し0.5~10質量部、特に1~5質量部程度とするのが好ましい。
【0043】
色剤としては、公知の有機顔料又は無機顔料あるいは染料の何れをも用いることができる。具体的には、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオオサジン系、ペリノン系、キノフタロン系、ペリレン系顔料などの有機顔料や群青、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラックなどの無機顔料が挙げられる。
【0044】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪族アルコール系滑剤;ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、複合型アミド等の脂肪族アマイド系滑剤;ステアリン酸-n-ブチル、ヒドロキシステアリン酸メチル、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス等の脂肪族エステル系滑剤;脂肪酸金属石鹸系滑剤、例えばジンクステアレート等を挙げることができる。
【0045】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトール系酸化防止剤が使用できる。リン系、より具体的には亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系酸化防止安定剤が好ましく用いられる。亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0046】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。これらリン系酸化防止剤は単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0047】
フェノール系の酸化防止剤としては、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネイト、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネイトジエチルエステル、及びテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等が例示され、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0048】
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン系難燃剤や、あるいはリン系難燃剤や金属水和物などの非リン系ハロゲン系難燃剤を用いることができる。ハロゲン系難燃剤としては、具体的には例えば、ハロゲン化ビスフェニルアルカン、ハロゲン化ビスフェニルエーテル、ハロゲン化ビスフェニルチオエーテル、ハロゲン化ビスフェニルスルフォンなどのハロゲン化ビスフェノール系化合物、臭素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールS、塩素化ビスフェノールA、塩素化ビスフェノールSなどのビスフェノール-ビス(アルキルエーテル)系化合物等が、またリン系難燃剤としては、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリアリールイソプロピル化物、クレジルジ2、6-キシレニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル等が、金属水和物としては、例えば、アルミニウム三水和物、二水酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせ等がそれぞれ例示でき、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。難燃助剤として働き、より効果的に難燃効果を向上させることが可能となる。さらに、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等を難燃助剤として併用することも可能である。
【0049】
発泡剤は、溶融混練機内で溶融状態にされている原料である無機物質粉末充填樹脂組成物に混合、又は圧入し、固体から気体、液体から気体に相変化するもの、又は気体そのものであり、主として発泡シートの発泡倍率(発泡密度)を制御するために使用される。発泡剤は、常温で液体のものは樹脂温度によって気体に相変化して溶融樹脂に溶解し、常温で気体のものは相変化せずそのまま溶融樹脂に溶解する。溶融樹脂に分散溶解した発泡剤は、溶融樹脂を押出ダイからシート状に押出した際に、圧力が開放されるのでシート内部で膨張し、シート内に多数の微細な独立気泡を形成して発泡シートが得られる。発泡剤は、副次的に原料樹脂組成物の溶融粘度を下げる可塑剤として作用し、原料樹脂組成物を可塑化状態にするための温度を低くする。
【0050】
発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフロオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス;水などが挙げられる。
【0051】
発泡剤としては、さらに、例えば、キャリアレジンに発泡剤の有効成分が含まれるものを好ましく用いる事ができる。キャリアレジンとしては、結晶性オレフィン樹脂等が挙げられる。これらのうち、結晶性ポリプロピレン樹脂が好ましい。また、有効成分としては、炭酸水素塩等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素塩が好ましい。結晶性ポリプロピレン樹脂をキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む発泡剤コンセントレートであることが好ましい。
【0052】
成形工程において発泡剤に含まれる発泡剤の含有量はポリオレフィン樹脂、プロピレン-α-オレフィン共重合体、及び無機物質粉末の量等に応じて、適宜設定することができ、無機物質粉末充填樹脂組成物の全質量に対して0.04~5.00質量%の範囲とすることが好ましい。
【0053】
流動性調整剤としても、種々の慣用のものを使用することができる。例としてジアルキルパーオキサイド等の過酸化物、例えば1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されない。使用する熱可塑性樹脂の種類によっては、これら過酸化物は架橋剤としても作用する。特に上記プロピレン-α-オレフィン共重合体がジエン由来の構成単位を有する場合、上記過酸化物の作用で共重合体の一部が架橋し、樹脂組成物の物性や加工性を制御する上での一助となり得る。過酸化物の添加量に特に制限はないが、無機物質粉末充填樹脂組成物の全質量に対して0.04~2.00質量%、特に0.05~0.50質量%程度の範囲とすることが好ましい。
【0054】
<無機物質粉末充填樹脂組成物の製造方法>
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物の製造方法としては、通常の方法を使用することができ、成形方法(押出成形、射出成形、真空成形等)に応じて適宜設定して良く、例えば、成形機にホッパーから投入する前にポリオレフィン樹脂、プロピレン-α-オレフィン共重合体と無機物質粉末とを混練溶融しても良く、成形機と一体で成形と同時にポリオレフィン樹脂、プロピレン-α-オレフィン共重合体と無機物質粉末とを混練溶融しても良い。溶融混練は、各成分を均一に分散させる傍ら、高い剪断応力を作用させて混練することが好ましい。混合装置としても、一般的な押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等種々のものを用いることができるが、例えば二軸混練機で混練することが好ましい。
【0055】
本発明の製造方法において、ポリオレフィン樹脂、プロピレン-α-オレフィン共重合体、及び無機物質粉末の混練順序に特に制限はない。例えばこれら3者を同時に混練することもでき、ポリオレフィン樹脂とプロピレン-α-オレフィン共重合体とを一旦混練した後、その熱可塑性樹脂混合物と無機物質粉末とを混練することも可能である。ポリオレフィン樹脂とプロピレン-α-オレフィン共重合体のそれぞれに無機物質粉末を混練し、2種の熱可塑性樹脂の溶融粘度を揃えてから両者を混練してもよい。ポリオレフィン樹脂と無機物質粉末とを一旦混練し、その後、プロピレン-α-オレフィン共重合体を混練することも可能である。プロピレン-α-オレフィン共重合体は、概して柔軟で溶融粘度も低い傾向にあるので、後者の方法のように最後に混練する方法は、無機物質粉末充填樹脂組成物中の各成分をより均質に分散させる上で有利である。この方法はまた、工場内端材の有効利用に活用することができる。無機物質粉末を熱可塑性樹脂中に高充填してなる組成物は、上記のように既に実用化されており、それらの端材が、製造工場においてロット毎に組成が管理された状態で保管されている場合がある。これら端材に規定量のプロピレン-α-オレフィン共重合体を混練することによっても、本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物を製造することができる。
【0056】
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物の製造方法において、無機物質粉末充填樹脂組成物はペレットの形態であっても良く、ペレットの形態でなくても良いが、ペレットの形態である場合、ペレットの形状は特に限定されず、例えば、円柱、球形、楕円球状等のペレットを成形しても良い。
【0057】
ペレットのサイズは、形状に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、球形ペレットの場合、直径1~10mmであって良い。楕円球状のペレットの場合、縦横比0.1~1.0の楕円状とし、縦横1~10mmであって良い。円柱ペレットの場合は、直径1~10mmの範囲内、長さ1~10mmの範囲内であって良い。これらの形状は、後述する混練工程後のペレットに対して成形させて良い。ペレットの形状は、常法に従って成形させて良い。
【0058】
≪成形品≫
本発明に係る成形品は、上記した無機物質粉末充填樹脂組成物を用いて成形された成形品である。
【0059】
本発明に係る成形品の形状等においては特に限定されるものではなく、各種の形態のものであっても良いが、例えば、シート、ブラシや靴ベラ等の日用品、リモコンや電話等における筐体、並びに食品容器及びその他の容器体等の各種成形品等として成形され得る。本発明の成形品は柔軟性に優れるので、組み立て時や使用時に力が加わる筐体やシート、日用品等として好適である。
【0060】
本発明に係る成形品の肉厚としては特に限定されるものではなく、その成形品の形態に応じて、薄肉のものから厚肉のものまで種々のものであり得るが、例えば、肉厚40μm~40mm、より好ましくは肉厚50μm~30mmの成形品が示される。この範囲内の肉厚であれば、成形性、加工性の問題なく、偏肉を生じることなく均質で欠陥のない成形品を形成することが可能である。
【0061】
特に、成形品の形態が、シートである場合には、より好ましくは、肉厚50μm~1,000μm、さらに好ましくは肉厚50μm~400μmであることが望ましい。このような範囲内の肉厚を有するシートであれば、一般的な印刷・情報用、及び包装用の用途の紙あるいは合成紙に代えて、好適に使用できるものである。
【0062】
≪成形品の製造方法≫
本発明の成形品の製造方法としては、所望の形状に成形できるものであれば特に限定されず、従来公知の押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、カレンダー成形等の何れの方法によっても成形加工可能である。さらにまた、本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物が発泡剤を含有し、発泡体である態様の成形品を得る場合においても、所望の形状に成形できるものであれば発泡体の成形方法として従来公知の、例えば、射出発泡,押出発泡,発泡ブロー等の液相発泡法、あるいは、例えば、ビーズ発泡,バッチ発泡,プレス発泡,常圧二次発泡等の固相発泡法の何れを用いることも可能である。前記した、結晶性ポリプロピレンをキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む熱可塑性組成物の一態様においては、射出発泡法及び押出発泡法が望ましく用いられ得る。
【0063】
<射出成形品の製造方法>
本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物は、上記のように成形性にも優れるので、射出成形によって様々な形状の物品に成形することができる。本発明の無機物質粉末充填樹脂組成物はまた、柔軟性に優れ、力が加わっても割れや欠けを生じ難いので、勘合する凹凸を備えた複数の部品に成形した後、それら部品を嵌め合わせる工程を含む成形加工に好適である。例えばブラシや安全剃刀の持ち手とその他の部分(本体部分)、あるいはリモコンや電話等の筐体の部品を、それぞれ別々に射出成形した後、外力を加えて両者を嵌め合わせることにより、所望の製品を作製することができる。
【0064】
なお、射出成形、押出成形等における成形温度としては、その成形方法や使用する熱可塑性樹脂の種類等によってもある程度異なるため、一概には規定できるものではないが、例えば、180~260℃、より好ましくは190~230℃の温度であれば、本発明に係る無機物質粉末充填樹脂組成物が、良好なドローダウン特性、延展性を持って、かつ組成物が局部的にも変性を生じることなく所定形状に成形できる。
【0065】
<シートの製造方法>
本発明に係る成形品がシートである態様において、その製造方法としても、シート状にする方法であれば特に限定されず、上記したような従来の公知の成形方法を用いることができるが、特に、シート表面の平滑性を考慮すると、押出機で押出成形してシートを作る方式を採用することが好ましい。
【0066】
成形は、混練する工程と、シート状に成形する工程とを連続的に行う直接法を用いても良く、例えば、Tダイ方式の二軸押出し成形機を使用する方法を用いても良い。
さらに、シート状に成形する場合においては、その成形時あるいはその成形後に一軸方向又は二軸方向に、ないしは、多軸方向(チューブラー法による延伸等)に延伸することが可能である。二軸延伸の場合には、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸であっても良い。
【0067】
成形後のシートに対し、延伸(例えば、縦及び/又は横延伸)を行うと、シート内に微小な空隙が生じる。シート内に微小な空隙が生じることにより、シートの白色度が良好なものとなる。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本明細書に開示され、また添付の請求の範囲に記載された、本発明の概念及び範囲の理解を、より容易なものとする上で、特定の態様及び実施形態の例示の目的のためにのみ記載するのであって、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
下記の原材料を用いて無機物質粉末充填樹脂組成物のペレットを作製し、該ペレットからシートを成形して、引張試験等の物性試験に付した。また、前記のペレットからブラシの本体部と柄部とを別々に射出成形した後、両者を嵌め合わせ、組み立ての容易さや勘合部の割れの有無から各樹脂組成物の柔軟性を評価した。
・PP/CC複合材:下記のプロピレンホモポリマー(PP1)40質量部と、重質炭酸カルシウム(CC1)60質量部との混練品(株式会社TBM製「LIMEX」(登録商標))の端材
PP1:日本ポリプロ株式会社製のプロピレンホモポリマー(MFR:0.5g/10min)
CC1:備北粉化工業株式会社製の重質炭酸カルシウム(表面処理有、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径2.20μm)
・共重合体1:vistamaxx(登録商標)6102、エクソンモービルコーポレーション製のエチレン-プロピレンブロックコポリマー(エチレン含有率16%、密度0.862g/cm3)
・添加剤1:滑剤(ジンクステアレート)
・添加剤2:流動性調整剤(1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン)
【0070】
上記のPP/CC複合材100質量部(プロピレンホモポリマー40質量部、重質炭酸カルシウム60質量部)と、4質量部(プロピレンホモポリマー100質量部に対して10質量部)の共重合体1、0.1質量部の添加剤1、及び0.08質量部の添加剤2を、(株)パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混錬押出機HK-25D(φ25mm、L/D=41)に投入し、シリンダー温度190~200℃でストランド押出後、冷却、カットすることでペレット化した。
【0071】
上記のようにして作製したペレットを(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル一軸Tダイ押出成形装置(φ20mm、L/D=25)により、220℃で押出し、厚さ4.0mmのシートに成形した。得られたシートについて、下記の試験方法によって強度及び伸び等の物性を評価した。
(引張強度、伸び)
引張強度、伸びは、上記シートより切り出したダンベル形状の試料を用い、JIS K 7161-2:2014に準じて、23℃、50%RHの条件下で、オートグラフAG-100kNXplus(株式会社島津製作所)を用いて測定した。延伸速度は10mm/分であった。
(曲げ弾性率)
80mm×10mmの試験片を切り出し、ISO178に準拠して測定した。
(シャルピー衝撃強度)
80mm×10mmの試験片を切り出し、ISO179/1eAに従い測定した。
【0072】
上記のペレットから、折り畳みブラシの本体部及び柄部を別々に射出成形した後、両者を勘合させて組み立てた。射出成形温度は、200℃とした。得られた射出成形品の外観は、窪み等の変形やシミ等のない良好なものであった。この折り畳みブラシは、柄部上端の左右に付された円筒状の突起(約5mmφ、3mmt)が、本体部下端に付された側溝(幅約10mm)奥側の嵌め込み穴に勘合する構造となっている。組み立ての際には、作業者が多少力を加えて柄部側の突起を本体側の側溝に押し込み、嵌め込み穴に勘合させる。この勘合の難易度や勘合部のひび割れの有無に基づき、成形品の柔軟性を以下の基準で評価した。
これらの評価結果を、後記する表1に示す。
(柔軟性評価)
◎:容易に勘合できた
〇:多少力を入れないと勘合できなかった
△:力を入れないと勘合できず、その際に成形品にひびや割れが生じた
×:力を加えても勘合できなかった
【0073】
[実施例2~3、比較例1~3]
共重合体1の配合量を変化させ、実施例1と同様にして試料を作製し、評価した。各試料の配合及び評価結果を、表1に示す。
【0074】
【0075】
本発明に従い、ポリオレフィン樹脂100質量部に対してプロピレン-α-オレフィン共重合体を10~25質量部含有する実施例1~3の無機物質粉末充填樹脂組成物は、共重合体不含又はその含有率が低い比較例1及び2の樹脂組成物に比べ、柔軟で伸びが大きく、衝撃強度も大であることが判明した。特に、該共重合体をポリオレフィン樹脂100質量部に対して17.5~25.0質量部配合した実施例2及び3では、射出成形品の組み立てが極めて容易であった。一方、プロピレン-α-オレフィン共重合体量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して30質量部含有する比較例3の樹脂組成物は、柔軟性は良好なものの、強度の点で劣るものとなった。
【0076】
[実施例4~5、比較例4~6]
共重合体1の代わりに下記の共重合体2、HSBR1、又はHSBR2を用いて、実施例1~3と同様の試料調製、評価を行った。各試料の配合及び評価結果を、表2に示す。
・共重合体2:住友化学株式会社製のタフセレン(登録商標)T1712(エチレン-プロピレンランダム共重合体系エラストマー、比重0.86)
・HSBR1:JSR株式会社製のDYNARON(登録商標)2324(水添スチレン系エラストマー、比重0.9)
・HSBR2:JSR株式会社製のDYNARON(登録商標)1321(水添スチレン系エラストマー、比重0.89)
【0077】
【0078】
実施例1~3と同様、ポリオレフィン樹脂100質量部に対してプロピレン-α-オレフィン共重合体を10~25質量部含有する実施例4及び5の無機物質粉末充填樹脂組成物は、柔軟性に優れ、射出成形品の組み立ても極めて容易であった。一方、プロピレン-α-オレフィン共重合体の代わりに水添スチレン系エラストマーを配合した比較例5及び6の樹脂組成物は、本発明に従う実施例2、4、5の樹脂組成物に比べて柔軟性に劣り、折り畳みブラシを組み立てる際にも力を要し、射出成形品にひびや割れが発生した。
なお、共重合体の配合量が同一の実施例2と実施例5の無機物質粉末充填樹脂組成物を比較すると、プロピレン-α-オレフィン共重合体がエチレン-プロピレンブロックコポリマーである共重合体1を含有する実施例2の樹脂組成物の方が、強度・伸び共に良好であった。該共重合体として、エチレン-プロピレンブロックコポリマーを使用することの利点が示された。
【0079】
[実施例6、比較例7]
下記の原材料を、二軸スクリューを装備した押出成形機(東洋精機製作所製Tダイ押出成形装置(φ20mm、L/D=25)に投入し、200℃で混練し、混練した原料を220℃(ダイ温度)でTダイからシートに押出し、東洋精機製フィルム・シート引き取り機で巻き取った。なお、得られたシートの肉厚は200μmであった。このシートについて、実施例1~3と同様に引張特性を評価した。各試料の配合及び評価結果を、表3に示す。
・PP2:株式会社プライムポリマー製のプロピレンホモポリマー(MFR:0.5g/10min)
・CC2:備北粉化工業株式会社製の重質炭酸カルシウム(表面処理なし、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径0.85μm)
・CC3:備北粉化工業株式会社製の重質炭酸カルシウム(表面処理なし、JIS M-8511による空気透過法により測定した平均粒子径5.00μm)
・共重合体3:vistamaxx(登録商標)3000、エクソンモービルコーポレーション製のエチレン-プロピレンブロックコポリマー(エチレン含有率11%、密度0.871g/cm3)
・帯電防止剤:ラウリン酸ジエタノールアミド
・滑剤:アルカンスルホン酸ナトリウム(平均炭素数12)
・酸化防止剤(ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)
なお、PP2+CC2+CC3の合計100質量部に対し、帯電防止剤、滑剤、及び酸化防止剤を合計6質量部配合した。
【0080】
【0081】
プロピレン-α-オレフィン共重合体の配合による本発明の効果は、熱可塑性樹脂や無機物質粉末の種類を変更しても発現することが明らかとなった。また、該共重合体の配合による柔軟化効果は、単に熱可塑性樹脂量の増大によってもたらされたものではないことが、明確に示された。
【0082】
以上より、本発明に従い所定量のプロピレン-α-オレフィン共重合体を配合することにより、無機物質粉末が高充填されているにも拘らず柔軟性に富み、成形加工が容易で外観も良好な熱可塑性樹脂組成物、及び成形品が提供されることが判明した。
前記重質炭酸カルシウムが、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の重質炭酸カルシウム粒子である請求項3に記載の無機物質粉末充填樹脂組成物。