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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079232
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】術前計画再現システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/90 20060101AFI20220519BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A61B17/90
A61B17/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190299
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】510183475
【氏名又は名称】アルスロデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 縁
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL28
(57)【要約】
【課題】装置の規模を大型化することなく、患部骨へ手術器具を正確に設置すること。
【解決手段】外科手術で患部骨に施工する手術器具を装着可能で、少なくとも3方に延在した磁気センサ31A~31Cを支持し、各磁気センサでの検出信号を出力する出力系(43~45,47,48)を有したターゲットデバイス30と、患者の患部骨近傍に設置する球状の磁石(MGB)と、患者の3次元画像情報とデバイスの3次元画像情報とを用い、手術器具の設置に適したデバイスの配設位置の入力を受付け、デバイスの配設位置に対する磁石の配設位置の入力を受付け、磁石の配設位置とデバイスの配設位置から各磁気センサでの検出結果をシミュレーションし、手術中にデバイスの各磁気センサでの検出結果を取得し、得た各磁気センサでの検出結果とシミュレーションで得た検出結果との近似度を算出し、算出結果に応じた報知出力を行なうPC(10)とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術で患部骨に施工する手術器具を装着可能で、少なくとも3方に延在した磁気センサを支持し、上記各磁気センサでの検出信号を出力する出力手段を有したターゲットデバイスと、
上記手術時に患者の患部骨近傍に設置する球状の磁石と、
患者の患部骨部分を含む3次元画像情報を記憶した患者画像記憶手段、上記ターゲットデバイスの3次元画像情報を記憶したデバイス画像記憶手段、上記患者画像記憶手段で記憶する患者の3次元画像情報と上記デバイス画像記憶手段で記憶するターゲットデバイスの3次元画像情報とを用い、上記手術器具の設置に適した上記ターゲットデバイスの配設位置の入力を受付けるデバイス位置入力手段、上記デバイス位置入力手段で受付けた上記ターゲットデバイスの配設位置に対する上記磁石の配設位置の入力を受付ける磁石位置入力手段、上記受付けた磁石の配設位置と上記受付けたターゲットデバイスの配設位置から上記各磁気センサでの検出結果をシミュレーションする磁気シミュレーション手段、手術中に上記ターゲットデバイスの上記各磁気センサでの検出結果を取得する磁気取得手段、上記磁気取得手段で得た上記各磁気センサでの検出結果と上記磁気シミュレーション手段で得た検出結果との近似度を算出する近似度算出手段、及び上記近似度算出手段で算出した結果に応じた報知出力を行なう出力手段を有したデータ処理装置と
を備えたことを特徴とする術前計画再現システム。
【請求項2】
上記データ処理装置の近似度算出手段は、上記磁気取得手段で得た上記各磁気センサでの検出結果のバランスと上記磁気シミュレーション手段で得た検出結果のバランスとから近似度を算出することを特徴とする請求項1記載の術前計画再現システム。
【請求項3】
上記出力手段は、近似度に応じて音程、及びパルス間隔の少なくとも一方を可変した音声を出力することを特徴とする請求項1記載の術前計画再現システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術において、患部骨へ手術器具を正確に設置するための術前計画再現システムに関する。
【背景技術】
【0002】
楔開き骨切り術で、骨内を通る切り込み面と当該切り込み面に沿って形成される切り込みを終端させるための境界線とを特定するための特定装置を含む、楔状開口を形成するための装置及び方法が提供されている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-529607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献は、楔開き骨切り術に特化された技術であるため、その他の患部骨に対する各種外科手術、例えば骨折に対する固定術、人工関節置換術などに適用することは難かしい。
【0005】
例えば人工関節置換術などの施術においては、関節部の骨切りを行なう場合の位置と角度とが非常に重要となるが、それらを特定するためには、例えば外科用ナビゲーション装置等を導入する必要があり、装置が大規模な高価なものとなるという不具合がある。
【0006】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、装置の規模を大型化することなく、患部骨に手術器具を正確に設置することが可能な術前計画再現システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、外科手術で患部骨に施工する手術器具を装着可能で、少なくとも3方に延在した磁気センサを支持し、上記各磁気センサでの検出信号を出力する出力手段を有したターゲットデバイスと、上記手術時に患者の患部骨近傍に設置する球状の磁石と、患者の患部骨部分を含む3次元画像情報を記憶した患者画像記憶手段、上記ターゲットデバイスの3次元画像情報を記憶したデバイス画像記憶手段、上記患者画像記憶手段で記憶する患者の3次元画像情報と上記デバイス画像記憶手段で記憶するターゲットデバイスの3次元画像情報とを用い、上記手術器具の設置に適した上記ターゲットデバイスの配設位置の入力を受付けるデバイス位置入力手段、上記デバイス位置入力手段で受付けた上記ターゲットデバイスの配設位置に対する上記磁石の配設位置の入力を受付ける磁石位置入力手段、上記受付けた磁石の配設位置と上記受付けたターゲットデバイスの配設位置から上記各磁気センサでの検出結果をシミュレーションする磁気シミュレーション手段、手術中に上記ターゲットデバイスの上記各磁気センサでの検出結果を取得する磁気取得手段、上記磁気取得手段で得た上記各磁気センサでの検出結果と上記磁気シミュレーション手段で得た検出結果との近似度を算出する近似度算出手段、及び上記近似度算出手段で算出した結果に応じた報知出力を行なう出力手段を有したデータ処理装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の規模を大型化することなく、患部骨へ手術器具を正確に設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る術前計画再現システムで用いられるプログラムをインストールしたパーソナルコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図。
図2】同実施形態に係るターゲットデバイスの外観構成を示す図。
図3】同実施形態に係るターゲットデバイスの電子回路の機能構成を示すブロック図。
図4】同実施形態に係る術前計画での処理内容を示すフローチャート。
図5】同実施形態に係る術中での処理内容を示すフローチャート。
図6】同実施形態に係る膝関節の関節鏡視下手術の一工程を示す図。
図7】同実施形態に係る膝関節の人工関節置換術の一工程を示す図。
図8】同実施形態に係る股関節の人工関節置換術の一工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る術前計画再現システムで用いるプログラムをインストールしたパーソナルコンピュータ(以下「PC」)10のハードウェア構成を示す。各種処理制御を司るCPU11とフロントサイドバスFSBを介してチップセットのノースブリッジ12が接続される。
【0011】
このノースブリッジ12は、さらにメモリバスMBを介してメインメモリ13と、またPCI-Expressバスを介してグラフィックコントローラ14及びグラフィックメモリ15と接続される他、チップセットであるサウスブリッジ16とも接続され、主としてこれらの間での入出力制御を実行する。
【0012】
サウスブリッジ16は、キーボード/マウス18、ビデオエンコーダ19、ハードディスク装置(HDD)20、近距離無線通信インタフェース(I/F)21、マルチディスクドライブ22、及びサウンドボード23と接続され、主としてこれら周辺回路とノースブリッジ12との間の入出力制御を行なう。
【0013】
上記ハードディスク装置20内に、OS(オペレーティングシステム)と各種のアプリケーションプログラム、各種のデータファイル等に加えて、手術で使用する術前計画再現プログラム、同手術で使用するターゲットデバイスや手術用器具、磁石小球等の各3次元形状画像データ等が予めインストールされているものとする。
【0014】
なお、上記ビデオエンコーダ19は、与えられたデジタル値の画像信号からアナログ値の画像信号であるRGBビデオ信号を生成して出力し、ここでは図示しないディスプレイ部に送ることで、画像が表示される。
【0015】
上記近距離無線通信インタフェース21は、例えばBluetooth(登録商標)の規格に基づいて後述する磁気センサユニットと無線接続し、磁気センサユニットでの検出情報を受信する。
【0016】
また、上記マルチディスクドライブ22は、例えばCD(Compact Disc)規格、DVD(Digital Versatile Disc)規格、及びBD(Blue-ray Disc:ブルーレイ・ディクス)規格に則った各種光ディスク媒体の再生と記録が可能であり、X線CT装置やMRI装置等で取得した断層写真等を記録した光ディスク媒体を再生して読出すことで、患者の患部骨周辺の断層3次元形状データ(以下「患部骨画像データ」と称する)を取込んで上記ハードディスク装置20に記録可能とする。
【0017】
なお、これらPC10を構成する個々の要素は、きわめて一般的な周知の技術であるのでその説明は省略するものとする。
【0018】
次に図2により、上記PC10と組み合わせて使用するターゲットデバイス30の外観構成について説明する。同図で、3つの磁気センサ31A~31Cがセンサ支持部32により支持される。このセンサ支持部32は、放射状に配置された磁気センサ31A~31Cを支持すると共に、センタリングアジャスタ33A~33Cを介して略円柱状のピンホルダ34に装着される。
【0019】
すなわち上記磁気センサ31A~31Cは、ピンホルダ34の中心軸と直交する平面に沿って、ピンホルダ34の中心軸から放射状に3方に展開して配置されるもので、センサ支持部32のセンタリングアジャスタ33A~33Cによる軸支位置の調整によりピンホ
ルダ34に対する支持位置を微調整することが可能となる。
【0020】
ピンホルダ34はその中心軸に沿って手術用の器具であるガイドピン35を保持する。さらにピンホルダ34の後部側(画面の右方)にグリップ部36を一体に形成し、術者が手で把持することが可能としており、把持した際に術者の人差し指がある位置に配置されたトリガ37を操作することで、内部の駆動機構によりガイドピン35を患部骨に打ち込むものとしている。
【0021】
図3は、上記ターゲットデバイス30が有する電子回路の機能構成を示す。磁気センサユニット30内では、すべての制御動作を統括する制御部41に対し、バス42を介して第1磁気センサ部43、第2磁気センサ部44、第3磁気センサ部45、キースイッチ部46、近距離無線通信部47、及びピンドライブ機構48が接続される。
【0022】
制御部41は、CPUとメインメモリ及びプログラムメモリを1チップ化して構成するもので、主として上記第1磁気センサ部43、第2磁気センサ部44、及び第3磁気センサ部45での磁気検出及び検出した結果の送信出力に関する制御処理を実行する。
【0023】
第1磁気センサ部43は、上記磁気センサ31Aとその検出出力をデジタル化する回路とで構成される。同様に、第2磁気センサ部44は、上記磁気センサ31Bとその検出出力をデジタル化する回路とで構成される。第3磁気センサ部45は、上記磁気センサ31Cとその検出出力をデジタル化する回路とで構成される。
【0024】
キースイッチ部46は、この磁気センサユニット30の電源スイッチ、及び上記トリガ37を含む。近距離無線通信部47は、上記PC10と近距離無線通信規格、例えばブルートゥース(登録商標)規格に従い、アンテナ49を介して上記PC10と無線接続し、上記第1~第3磁気センサ部44~46から得た磁気検出情報をPC10に対して送信する。
【0025】
ピンドライブ機構48は、上記トリガ37の操作に応じ、上記ガイドピン35を患部骨に打ち込む。
【0026】
なお、上記ターゲットデバイス30は、ガイドピン35を患部骨に打ち込むための手術器具に磁気センサ31A~31Cを組み合わせて構成したものであり、本発明は手術の種類に応じてその他の各種手術器具を装着する場合を含む。
【0027】
次に上記実施形態の動作について説明する。
図4は、術者である医師が、PC10において術前計画を実行する場合の処理内容を示すものであり、当該アプリケーションプログラムを上記CPU11がハードディスク装置20から読出してメインメモリ13上で展開しながら実行する。
【0028】
その処理当初には、術者である医師のキーボード/マウス18での操作に基づき、X線CT装置やMRI装置で撮影した、手術を行なう患者の患部周辺の2次元断層写画像データをマルチディスクドライブ22等から多数指定して入力し、ハードディスク装置20に取込む(ステップP101)。
【0029】
こうして得た多数の2次元断層画像データに基づき、CPU11は患者の患部周辺の3次元画像を自動的に構築してハードディスク装置20に保存した上で(ステップP102)、この構築した3次元画像をビデオエンコーダ19を介してディスプレイに表示させる(ステップP103)。
【0030】
次に、術者である医師のキーボード/マウス18での操作に基づき、手術用器具である、ガイドピン35を装着した上記ターゲットデバイス30の3次元画像データをハードディスク装置20から選択して読出し、上記患者の幹部周辺の画像に添えて表示させる(ステップP104)。
【0031】
その後、さらに上記ハードディスク装置20から磁石小球の3次元形状画像データを選択して読出し、上記患者の幹部周辺の画像に添えて表示させると共に、患者の患部近傍に対する磁石小球の設置位置を移動させるためのキーボード/マウス18での操作を受付ける(ステップP105)。
【0032】
合わせて、上記ターゲットデバイス30の設置位置を移動させるためのキーボード/マウス18での操作も受付ける(ステップP106)。
【0033】
このPC10を操作する医師は、ディスプレイで表示される患者の患部周の画像に対し、手術中にできうる限り正確に再現することが可能な磁石小球の設置位置、具体的には患者の体表面近くまで骨が存在する位置など、例えば下肢に関する手術であれば上前腸骨棘など、を選択して磁石小球の設置位置とする。
【0034】
合わせてPC10を操作する医師は、術中にガイドピン35を打ち込むのに適した位置となるように上記ターゲットデバイス30の設置位置を選択する。
【0035】
磁石小球の位置、及びターゲットデバイス30の位置を最適化し、決定する旨の操作がキーボード/マウス18でなされるまで(ステップP107)、上記ステップP105~P107の処理を繰返し実行する。
【0036】
そして、磁石小球の位置、及びターゲットデバイス30の位置を最適化したものとして、決定する旨の操作がキーボード/マウス18でなされた場合、CPU11は上記ステップP107でその操作を判断し、3次元空間内における磁石小球の位置と、ターゲットデバイス30の磁気センサ31A~31Cの各位置とに応じて、上記第1~第3磁気センサ部43~45からの出力情報をシミュレーションして自動的に算出する(ステップP108)。
【0037】
CPU11は、算出したシミュレーション結果をディスプレイで表示させると共に、ハードディスク装置20に当該患者の患部近傍の3次元形状画像データと対応付けて記録して保存し(ステップP109)、以上でこの図4の一連の処理を終了する。
【0038】
次に図5により、実際の手術中に実行する、上記PC10及びターゲットデバイス30を用いた処理について説明する。図5は、術者である医師が、PC10において術中に使用する場合の処理内容を示すものであり、当該アプリケーションプログラムを上記CPU11がハードディスク装置20から読出してメインメモリ13上で展開しながら実行する。
【0039】
アプリケーションプログラムの処理当初に医師のキーボード/マウス18での操作に基づき、CPU11は術前計画で保存していた患者の患部近傍の3次元形状画像データをハードディスク装置20から読出してディスプレイで表示させる(ステップS101)。
【0040】
併せて、医師の操作に基づき、CPU11はハードディスク装置20に保存していた患者のシミュレーション結果を選択して読出し、同じくディスプレイ上に表示させる(ステップS102)。
【0041】
この場合、読出したシミュレーション結果に基づき、CPU11は併せてハードディスク装置20から磁石小球及びターゲットデバイスの各3次元形状画像データを読出し、患者の患部近傍の3次元形状データに重ね合わせてディスプレイ上で表示させることで、シミュレーション結果を反映した磁石小球及びターゲットデバイスの各設置位置を提示することが望ましい。
【0042】
その後、上記ターゲットデバイス30の電源投入操作を含む設置の開始を待機する(ステップS103)。
このとき、図示はしないが、医師は非磁性ロッドの先端に装着、固定した磁石小球を術前計画で設定した位置に設置させると共に、ターゲットデバイス30の設置を開始する。
上記ステップS103でターゲットデバイス30の設置が開始されたと判断すると、CPU11はターゲットデバイス30から上記第1~第3磁気センサ部43~45からの出力情報を取得する(ステップS104)。
【0043】
そしてCPU11は、ターゲットデバイス30から取得した出力情報と、上記ステップS02で読出してシミュレーション結果とのバランスの近似度を算出し(ステップS105)、算出した結果に応じて音程とパルス間隔とが可変するビープ音をサウンドボード23で発生させて図示しないスピーカより拡声出力させる(ステップS106)。
【0044】
この場合、例えばシミュレーション結果に対してターゲットデバイス30から取得した出力情報のバランスの近似度が高いほど、ビープ音の音程を高く、且つパルス間隔を短くなるように設定するものとする。
【0045】
そして、シミュレーション結果に対するターゲットデバイス30から取得した出力情報のバランスの近似度が100[%]となった場合に、最も高い音程で、且つパルス間隔が「0(ゼロ)」、すなわちパルス状の途切れがなく連続したビープ音を出力するような設定とする。
【0046】
上記ビープ音の出力後、再度上記ステップS104の処理に戻り、以後、上記ステップS104~S106の処理を繰返し実行する。
【0047】
このステップS104~S106の処理を繰返し実行する過程で、実際にターゲットデバイス30を患者の患部骨に設置いる位置及び角度が変わる毎に、PC10のスピーカから出力されるビープ音の音程及びパルス間隔が変化する。
【0048】
したがって、ターゲットデバイス30を操作する、施術者である医師は、上記ビープ音がなるべく高い音程で、且つパルス間隔が短くなるようにターゲットデバイス30の設置位置と角度とを可変することで、より術前計画時に近くすることができる。
【0049】
この場合、上述した如くビープ音が最も高い音程で、且つパルス状の途切れがなく連続したものとなった場合、術前計画通りのターゲットデバイス30の設置位置及び角度が正確に再現できた状態となるので、医師は手術上の次の段階、例えばターゲットデバイス30でのガイドピン35を対象となる患部骨に打ち込むためのトリガ37操作などに移行できる。
【0050】
以下、本発明を外科手術に用いる場合の具体例を列挙する。
図6は、膝関節の靱帯断裂により大腿骨BN1の関節鏡視下手術を行なう場合の、上記ターゲットデバイス30を用いた手術中の一工程を示す。同図では、膝関節の外側から非磁性ロッドNMRの先端に装着された磁石小球MGBを当接して設置させた状態で、上記図2及び図3で説明したターゲットデバイス30に、上記ガイドピン35に代えて関節鏡51を装着することで、関節内を視認しながら、関節鏡51の先端に設けられるツールを用いて靱帯の再建手術が実行できる。
【0051】
図7(A)は、膝関節の人工関節置換術で、大腿骨側の骨切り前に髄内ロッド挿入用の穿孔位置を決定する場合の、ターゲットデバイス30を用いた手術中の一工程を示す。ここでは、ターゲットデバイス30の構成に関し、磁気センサ31A~31Cとガイドピン35以外の記載を簡略化している。ガイドピン35の先端側に、膝関節での穿孔位置をガイドするための複合アーチ状のガイド部材52を装着して、膝関節の(患者の)前方と、顆間窩を挟んだ内外側顆に対して位置調整用のボルトを設けて、術前計画通りに穿孔位置を決定可能としている。図中の波線MAは、骨頭と上記顆間窩とを結んだ大腿骨BN2の機能軸MAである。
【0052】
非磁性ロッドNMRの先端に装着した磁石小球MGBを骨盤BN3の右の上前腸骨棘の遠位側に設置するものとして、膝関節側のターゲットデバイス30で磁気センサ31A~31Cそれぞれにより磁気を検出することで、上述したように穿孔位置を再現することが可能となる。
【0053】
図7(B)は、患者の下肢全体の骨を右側面から見た、手術時を想定した屈曲状態を示す。ここでは、膝関節を例えば60°屈曲位としており、磁石小球MGBとターゲットデバイス30の磁気センサ31A~31Cとの関係、及び機能軸MAの関係を例示している。
【0054】
図8(A)は、股関節の人工関節置換術で、骨盤BN4の臼蓋部CPを半球状にドリリング処理した後、カップ状の人工関節コンポーネットを設置する際の打ち込み方向を決定する場合の、ターゲットデバイス30を用いた手術中の一工程を示す。ここでは、ターゲットデバイス30の構成に関し、磁気センサ31A~31C以外の記載を簡略化している。実際の術中には、ターゲットデバイス30のガイドピン35に代えて、カップポジショナと呼称される器具を用いる。
【0055】
非磁性ロッドNMRの先端に装着した磁石小球MGBを、骨盤BN4の上前腸骨棘に設置するものとして、磁気センサ31A~31Cそれぞれにより磁気を検出することで、図8(B)に示すように臼蓋部CPでの上記カップポジショナ53による打ち込み方向を術前計画通り再現することが可能となる。
【0056】
以上詳述した如く本実施形態によれば、装置の規模を大型化することなく、患部骨へ手術器具を正確に設置することが可能となる。
【0057】
また上記実施形態では、各磁気センサでの検出結果のバランスと術前計画のシミュレーションで得た検出結果のバランスとから近似度を算出することにより、例えば磁石小球MGB自体の磁力の絶対値がシミュレーション時点と相違するような場合でも、その影響を排除して術中の高い検出精度を維持できる。
【0058】
さらに上記実施形態では、各磁気センサでの検出結果のバランスと術前計画のシミュレーションで得た検出結果のバランスとから算出する近似度を音声として出力することにより、本システムのユーザとなる医師が、手術中に患部から目を離すことなく、ターゲットデバイス30を設置する位置と角度とを正確に術前計画通りに再現することが可能となる。
【0059】
なお、上記図6乃至図8に示した各手術での応用例は、本発明を限定するものではなく、磁気センサ31A~31Cを有するユニットに装着する手術器具等を適宜変更することで、各種の外科手術に適用することが可能となる。
【0060】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0061】
10…パーソナルコンピュータ(PC)、11…CPU、12…ノースブリッジ、13…メインメモリ、14…グラフィックコントローラ、15…グラフィックメモリ、16…サウスブリッジ、18…キーボード/マウス、19…ビデオエンコーダ、20…ハードディスク装置(HDD)、21…ネットワークインタフェース、22…マルチディスクドライブ、23…サウンドボード、30…ターゲットデバイス、31A~31C…磁気センサ、32…センサ支持部、33A~33C…センタリングアジャスタ、34…ピンホルダ、35…ガイドピン、36…グリップ部、37…トリガ、41…制御部、42…バス、43…第1磁気センサ部、44…第2磁気センサ部、45…第3磁気センサ部、46…キースイッチ部、47…近距離無線通信部、48…ピンドライブ機構、49…アンテナ、51…関節鏡、52…ガイド部材52、53…カップポジショナ、BN1,BN2…大腿骨、BN3,BN4…骨盤、CP…臼蓋部、FSB…フロントサイドバス、MA…(大腿骨)機能軸、MB…メモリバス、MGB…磁石小球、NMR…非磁性ロッド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8