(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079236
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】パテ塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 167/06 20060101AFI20220519BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20220519BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220519BHJP
【FI】
C09D167/06
C09D7/43
C09D7/61
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190310
(22)【出願日】2020-11-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】300075348
【氏名又は名称】日本ペイント・インダストリアルコ-ティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】丸山 航汰
(72)【発明者】
【氏名】中村 勲
(72)【発明者】
【氏名】大西 克明
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DD181
4J038HA266
4J038HA526
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA15
4J038NA01
4J038NA11
4J038NA23
4J038PB02
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】 エアレススプレーにより塗装することができ、塗装作業性が良好である、パテ塗料組成物を提供すること。更に、耐研磨性の良好なパテ塗膜を形成できるパテ塗料組成物を提供すること。
【解決手段】 主剤(I)及び硬化剤(II)を含む、パテ塗料組成物であって、上記主剤(I)は不飽和ポリエステル樹脂(A)、不飽和モノマー(B)、充填剤(C)、粘性調整剤(D)及び研磨性改質剤(E)を含み、上記硬化剤(II)は有機過酸化物(F)及び可塑剤(G)を含み、上記主剤(I)の23℃における粘度は、0.5~130Pa・sの範囲内であり、上記硬化剤(II)の23℃における粘度は、5~20mPa・sの範囲内であり、上記粘性調整剤(D)は、無機系層状化合物を含む、パテ塗料組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(I)及び硬化剤(II)を含む、パテ塗料組成物であって、
前記主剤(I)は、不飽和ポリエステル樹脂(A)、不飽和モノマー(B)、充填剤(C)、粘性調整剤(D)及び研磨性改質剤(E)を含み、
前記硬化剤(II)は、有機過酸化物(F)及び可塑剤(G)を含み、
前記主剤(I)の23℃における粘度は、0.5~130Pa・sの範囲内であり、
前記硬化剤(II)の23℃における粘度は、5~20mPa・sの範囲内であり、
前記粘性調整剤(D)は、無機系層状化合物を含む、
パテ塗料組成物。
【請求項2】
前記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する有機過酸化物(F)の質量比率は、[(A)+(B)]:(F)=100:2~100:35の範囲内である、請求項1に記載のパテ塗料組成物。
【請求項3】
前記パテ塗料組成物は、スタティック混合方式によるエアレススプレー塗装用塗料組成物である、請求項1又は2に記載のパテ塗料組成物。
【請求項4】
前記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の質量比は、(A):(B)=100:3~100:260の範囲内である、請求項1から3のいずれか1項に記載のパテ塗料組成物。
【請求項5】
前記パテ塗料組成物における主剤(I)及び硬化剤(II)の体積比率は、主剤(I):硬化剤(II)=100:2~100:25の範囲内である、請求項1から4のいずれか1項に記載のパテ塗料組成物。
【請求項6】
前記無機系層状化合物は、有機ベントナイト及びヘクトライトからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1から5のいずれか1項に記載のパテ塗料組成物。
【請求項7】
前記研磨性改質剤(E)は、1又はそれ以上の二価の金属元素の炭酸塩である、請求項1から6のいずれか1項に記載のパテ塗料組成物。
【請求項8】
前記主剤(I)及び前記硬化剤(II)の混合物におけるTi値は、3~6の範囲内である、請求項1から7のいずれか1項に記載のパテ塗料組成物。
【請求項9】
主剤(I)及び硬化剤(II)を含むパテ塗料組成物を用いた、パテ塗膜の形成方法であって、下記工程
前記主剤(I)及び硬化剤(II)を、スタティックミキサー部で混合し、エアレススプレーにより塗装する、塗装工程、
を包含し、
前記主剤(I)は、不飽和ポリエステル樹脂(A)、不飽和モノマー(B)、充填剤(C)、粘性調整剤(D)及び研磨性改質剤(E)を含み、
前記硬化剤(II)は、有機過酸化物(F)及び可塑剤(G)を含み、
前記主剤(I)の23℃における粘度は、0.5~130Pa・sの範囲内であり、
前記硬化剤(II)の23℃における粘度は、5~20mPa・sの範囲内であり、及び
前記粘性調整剤(D)は、無機系層状化合物を含む、
形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パテ塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両外板表面は、美観を持たせると共に腐食等を防止するために、通常は、先ず、プライマー塗装し、次いで、表面を平滑化させるために、パテ塗装(パテ付け)し、更に、サーフェーサー塗装し、上塗塗装して、仕上げられている。ところで、通常、プライマー塗装、サーフェーサー塗装及び上塗塗装においては、スプレー塗装法が用いられているが、パテ塗装については、1~10mm程度の膜厚にする必要があるので、金属製ヘラが、パテ付けに用いられている。
【0003】
鉄道車両外板の塗装におけるパテ塗装は、車両外板の大面積を、ヘラを用いて人力で行われることが多く、多大な作業時間及び熟練を必要とするものである。このような鉄道車両は、道路車両に比較して、外板表面積が非常に広い。更に、鉄道車両においては、車両外板のひずみ(うねり)を修正して、平滑化させるために、通常、3~6回程度、人力によるパテ付け作業が必要となる。しかしながら、上述のようなヘラによるパテ付け方法では、多くの作業時間を要するだけでなく、作業者に相当の熟練が必要となり、パテ塗膜形成が難しく効率が悪いという問題点があった。
【0004】
この問題を解決するために、パテをスプレー塗装する方法の開発が行われている。特開平7-328523号公報(特許文献1)には、30~50℃に予熱された主剤成分と、硬化剤成分と圧縮空気とを混合したものを、スプレーガンの先端で合流混合させる方法が開示されている。この方法では、スプレーガンの先端において空気による混合を行うため、主剤と硬化剤との混合が十分でないおそれがあること、そして臭気が発生すること等の技術的課題がある。また、スプレーガンにホースが3本とりつけられているためにガンの質量が重くなり、作業者への負荷が多くなるおそれがある。更に、主剤を予熱する装置が必要という技術的課題もある。
【0005】
特開平10-80666号公報(特許文献2)には、スプレー塗装に適した圧力で圧送された主剤成分、圧縮空気により圧送された硬化剤成分及び別途圧縮空気を、それぞれ、別個にスプレーガンに導入し、圧縮空気により圧送された硬化剤成分と別途圧縮空気の一部とを、スプレーガンの内部後方に設けたノズルにより予備混合させ、予備混合物と別途圧縮空気の残部とを、スプレーガンの内部前方にて合流させると共に衝撃材に衝突させ、その衝撃波効果により、均質混合された硬化剤成分と別途圧縮空気の混合物を、スプレーガン先端部で、主剤成分と合流混合させながら吐出させて、スプレー塗装することを特徴とする、鉄道車両外板へのパテ塗膜の形成方法が記載されている。これにより、スタティックミキサーを使用しなくても、簡単な操作で、必要な厚さのパテ塗膜を形成することができると記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-328523号公報
【特許文献2】特開平10-80666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に記載されるように、パテ塗膜をスプレー塗装により形成される手法はこれまでにも検討が行われている。これに対して本発明は、より容易に塗装し得るエアレススプレーにより塗装することができ、塗装作業性等も良好である、パテ塗料組成物を提供することを課題とする。更に、パテ塗膜には耐研磨性が求められることがある。本発明では、耐研磨性の良好なパテ塗膜を形成できるパテ塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
主剤(I)及び硬化剤(II)を含む、パテ塗料組成物であって、
前記主剤(I)は、不飽和ポリエステル樹脂(A)、不飽和モノマー(B)、充填剤(C)、粘性調整剤(D)及び研磨性改質剤(E)を含み、
前記硬化剤(II)は、有機過酸化物(F)及び可塑剤(G)を含み、
前記主剤(I)の23℃における粘度は、0.5~130Pa・sの範囲内であり、
前記硬化剤(II)の23℃における粘度は、5~20mPa・sの範囲内であり、
前記粘性調整剤(D)は、無機系層状化合物を含む、
パテ塗料組成物。
[2]
前記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する有機過酸化物(F)の質量比率は、[(A)+(B)]:(F)=100:2~100:35の範囲内である、[1]に記載のパテ塗料組成物。
[3]
前記パテ塗料組成物は、スタティック混合方式によるエアレススプレー塗装用塗料組成物である、[1]又は[2]に記載のパテ塗料組成物。
[4]
前記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の質量比は、(A):(B)=100:3~100:260の範囲内である、[1]から[3]のいずれか1つに記載のパテ塗料組成物。
[5]
前記パテ塗料組成物における主剤(I)及び硬化剤(II)の体積比率は、主剤(I):硬化剤(II)=100:2~100:25の範囲内である、[1]から[4]のいずれか1つに記載のパテ塗料組成物。
[6]
前記無機系層状化合物は、有機ベントナイト及びヘクトライトからなる群より選ばれる少なくとも1つである、[1]から[5]のいずれか1つに記載のパテ塗料組成物。
[7]
前記研磨性改質剤(E)は、1又はそれ以上の二価の金属元素の炭酸塩である、[1]から[6]のいずれか1つに記載のパテ塗料組成物。
[8]
前記主剤(I)及び前記硬化剤(II)の混合物におけるTi値は、3~6の範囲内である、[1]から[7]のいずれか1つに記載のパテ塗料組成物。
[9]
主剤(I)及び硬化剤(II)を含むパテ塗料組成物を用いた、パテ塗膜の形成方法であって、下記工程
前記主剤(I)及び硬化剤(II)を、スタティックミキサー部で混合し、エアレススプレーにより塗装する、塗装工程、
を包含し、
前記主剤(I)は、不飽和ポリエステル樹脂(A)、不飽和モノマー(B)、充填剤(C)、粘性調整剤(D)及び研磨性改質剤(E)を含み、
前記硬化剤(II)は、有機過酸化物(F)及び可塑剤(G)を含み、
前記主剤(I)の23℃における粘度は、0.5~130Pa・sの範囲内であり、
前記硬化剤(II)の23℃における粘度は、5~20mPa・sの範囲内であり、及び
前記粘性調整剤(D)は、無機系層状化合物を含む、
形成方法。
【発明の効果】
【0009】
上記パテ塗料組成物は、エアレススプレーによって好適に塗装することができ、塗装作業性も良好である。更に、上記パテ塗料組成物を用いることによって、耐研磨性の良好なパテ塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記パテ塗料組成物は、主剤(I)及び硬化剤(II)を含む。そして上記主剤(I)は、不飽和ポリエステル樹脂(A)、不飽和モノマー(B)、充填剤(C)、粘性調整剤(D)及び研磨性改質剤(E)を含み、上記硬化剤(II)は、有機過酸化物(F)及び可塑剤(G)を含む。以下、各成分について記載する。
【0011】
不飽和ポリエステル樹脂(A)
上記主剤(I)に含まれる不飽和ポリエステル樹脂(A)は、パテ塗料組成物において一般的に用いられているものを使用することができる。このような不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、不飽和多塩基酸と多価アルコールとの縮合反応によって得ることができる。不飽和ポリエステル樹脂の合成反応は、空乾性を有する成分の共存下で縮合を行うことが好ましい。
【0012】
上記不飽和多塩基酸の具体例としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また、上記多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの誘導体等が挙げられる。上記空乾性を有する成分は、ヨウ素価が40以上であるものが好ましい。このような成分として、アリルグリシジルエーテル、アリルグリコール、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル等のアリル化合物、そして、大豆油、アマニ湯、脱水ヒマシ油、キリ油、魚油あるいはこれらのエステル交換油、脂肪酸類等の動植物油を挙げることができる。不飽和ポリエステル樹脂(A)の合成において、空乾性を有する成分を用いることによって、得られる塗膜の研磨性を向上させることができる利点がある。
【0013】
上記不飽和ポリエステル樹脂(A)の合成は、一般に知られた方法によって行うことができる。具体的な合成方法としては、例えば、不飽和多塩基酸、多価アルコール及び空乾性を有する成分を150~250℃で縮合させる方法、又は、不飽和多塩基酸の全部又は一部と多価アルコールとを150~220℃で反応させた後、残りの不飽和多塩基酸と空乾性を有する成分を加え、120~220℃で反応させる方法等が挙げられる。上記不飽和ポリエステル樹脂(A)の合成において、不飽和多塩基酸、多価アルコール及び空乾性を有する成分のそれぞれの量は、全体の合計質量を100質量部としたときに、不飽和多塩基酸が30~60質量部、多価アルコールが10~40質量部及び空乾性を有する成分が3~30質量部であることが好ましい。
【0014】
なお、得られる塗膜の耐クラック性向上の点から、不飽和多塩基酸の10~70モル%は、飽和多塩基酸に置き換わっていることが好ましい。上記数値は20~60モル%であることが更に好ましい。飽和多塩基酸の具体例として、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水フタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラハイドロフタル酸等が挙げられる。これらの飽和多塩基酸のうち、脂肪族飽和多塩基酸がより好ましい。
【0015】
また、上記の不飽和多塩基酸、多価アルコール及び空乾性を有する成分以外にも、アルキルグリシジルエステル、ジシクロペンタジエン等を加えて、上記不飽和ポリエステル樹脂を製造することもできる。これらの成分を用いて合成することによって、より良好な耐久性、付着性を付与することができる。
【0016】
上記不飽和ポリエステル樹脂(A)は、ポットライフが5~30分の範囲内であるのが好ましい。ポットライフが上記範囲内にあることで、良好な作業性を得ることができる利点がある。
なお、本開示において不飽和ポリエステル樹脂(A)のポットライフとは、不飽和ポリエステル樹脂を、有機過酸化物を用いて硬化する場合において、有機過酸化物を配合してから不飽和ポリエステル樹脂がゲル化するまでの時間をいう。前記ポットライフは、後述する実施例に記載された方法によって測定された値である。
【0017】
上記不飽和ポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量が1,000~4,000の範囲内であるのが好ましい。また上記不飽和ポリエステル樹脂(A)の酸価は70mgKOH/g以下であるのが好ましい。数平均分子量及び酸価が上記範囲を満たすことによって、良好な作業性を得ることができる利点がある。
なお、本開示中において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、ポリスチレン換算により求めた値である。また、本開示において、樹脂の酸価は、固形分酸価を表し、JIS K 0070に記載された方法によって測定された値である。
【0018】
不飽和モノマー(B)
上記主剤(I)に含まれる不飽和モノマー(B)は、上記パテ塗料組成物において、反応性希釈剤として機能する成分である。不飽和モノマー(B)は、エチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることができる。不飽和モノマー(B)の具体例として、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン等の、芳香族基及びエチレン性不飽和基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸テトラメチロールメタン、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール等の、1価又は多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等の水酸基及びエチレン性不飽和基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基及びエチレン性不飽和基含有モノマー;酢酸ビニル、アクリロニトリル、ジアリルフタレート等、その他の不飽和モノマー;等を挙げることができる。
【0019】
なお本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0020】
不飽和モノマー(B)として、例えば、スチレン等の芳香族基及びエチレン性不飽和基含有モノマー等が挙げられ、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ジアリルフタレート等を用いるのが好ましく、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレンを用いるのがより好ましい。このような不飽和モノマーを用いることによって、パテ塗料組成物における反応性に優れ、かつ、得られるパテ塗膜の塗膜物性を良好な状態に維持することができる利点がある。
【0021】
上記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の質量比は、(A):(B)=100:3~100:260の範囲内であるのが好ましく、100:5~100:150の範囲内であるのがより好ましく、100:20~100:80の範囲内であるのが更に好ましい。なお、上記質量比は、固形分質量比(成分質量比)を意味する。上記不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の質量比が上記範囲内であることによって、主剤(I)の粘度を好適な範囲に設計し、かつ、パテ塗料組成物における反応性及び得られるパテ塗膜の塗膜物性を良好な状態に維持することができる利点がある。
【0022】
充填剤(C)
上記主剤(I)に含まれる充填剤(C)は、パテ塗料組成物の分野において通常用いられる充填剤を、特に制限されることなく用いることができる。充填剤(C)の具体例として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、カオリン、マイカ、シリカ等の体質顔料、酸化チタン、ベンガラ、カーボンブラック、酸化鉄、シアニンブルー等の着色顔料、その他、グラスファイバー、ガラスバルーン、プラスチックバルーン等を挙げることができる。なお本明細書において、以下に記載する研磨性改質剤(E)は、充填剤(C)には含まれない。
【0023】
上記充填剤(C)として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、カオリン、マイカ、シリカ、酸化チタンが、例えば、スタティック混合方式によるエアレススプレー塗装等において、より好適に用いることができる。このような充填剤を用いることによって、形成されるパテ塗膜としての良好な性能を確保することができる利点がある。
【0024】
上記主剤(I)に含まれる充填剤(C)の量は、主剤中に含まれる不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総固形分量100質量部に対して、25~400質量部の範囲内であるのが好ましく、50~400質量部の範囲内であるのがより好ましく、70~250質量部の範囲内であるのが更に好ましい。充填剤(C)の量が上記範囲内であることによって、形成されるパテ塗膜としての良好な性能を確保することができる利点がある。
【0025】
粘性調整剤(D)
上記主剤(I)は、上記成分に加えて粘性調整剤(D)を含む。そして上記パテ塗料組成物においては、粘性調整剤(D)として無機系層状化合物が含まれる。無機系層状化合物は、組成物がせん断力を受けた場合に、無機系層状化合物の層状構造が分離等を起こし、レオロジー挙動が発現する性質を有する。
【0026】
無機系層状化合物として、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物;テトラシリシックフッ素雲母、フッ素テニオライト等の膨潤性雲母属粘土鉱物;等が挙げられる。
【0027】
好ましい無機系層状化合物として、有機ベントナイトが挙げられる。有機ベントナイトは、結晶層を有するベントナイトの層間に、有機アンモニウム塩等の有機陽イオンをインターカレートした構造を有する成分である。ここでベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とし、更に、ケイ酸、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硫化物等の少なくとも1種を副成分として含む、層状構造を有する無機成分である。有機ベントナイトは一般に、水性溶媒中では膨潤し難い一方で、有機溶媒中では膨潤し増粘性を示すという性質を有する。
【0028】
ベントナイトの層間にインターカレートされる有機アンモニウム塩として、例えば、炭素数1~30のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数1~20のアルキル基を有する第4級アンモニウムが挙げられる。
このような有機ベントナイトの具体例として、例えば、ベントンシリーズ等(Elementis社製)、ベンゲルシリーズ、エスベンシリーズ、オルガナイトシリーズ等(ホージュン社製)、オルベンシリーズ(白石工業社製)、Claytoneシリーズ、Tixogelシリーズ等(BYK社製)等が挙げられる。
【0029】
無機系層状化合物の他の例として、例えば、ラポナイトXLG(合成ヘクトライト類似物質、BYK社製)、ラポナイトRD(合成ヘクトライト類似物質、BYK社製)、ラポナイトEP(合成ヘクトライト類似物質、BYK社製)、ラポナイトRDS(合成ヘクトライト類似物質、BYK社製)、サーマビス(合成ヘクトライト類似物質、ヘンケル社製)、スメクトンSA-1(サポナイト類似物質、クニミネ工業社製)、クニピアF(天然モンモリロナイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(天然ヘクトライト、バンダービルト社製)、ダイモナイト(合成膨潤性雲母、トピー工業社製)、ソマシフ(合成膨潤性雲母、コープケミカル社製)、SWN(合成スメクタイト、コープケミカル社製)、SWF(合成スメクタイト、コープケミカル社製)等が挙げられる。
【0030】
上記パテ塗料組成物における主剤(I)が、無機系層状化合物を含む粘性調整剤(D)を含むことによって、上記不飽和ポリエステル樹脂(A)、不飽和モノマー(B)、充填剤(C)等を含む、主剤(I)及び硬化剤(II)より構成される上記パテ塗料組成物に対して、エアレススプレー塗装において好適な構造粘性がもたらされると考えられる。これにより、上記パテ塗料組成物の塗装において、良好な塗装作業性が得られ、塗装後のパテ塗膜において良好な研磨作業性等が得られる利点がある。
上記無機系層状化合物を含む粘性調整剤(D)を用いたパテ塗料組成物は特に、スタティック混合方式によるエアレススプレー塗装等において、より好適に用いることができる。
【0031】
なお、本発明における無機系層状化合物は、無機結晶層が多数積み重なった積層構造を有する層状物であることが好ましい。このような層状構造を有する無機系層状化合物は、塗料組成物中で膨潤し、塗料組成物中においてカードハウス構造を形成するので、塗料組成物に適度な粘度をもたらし、優れた塗膜強度をもたらす。
【0032】
上記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する粘性調整剤(D)の量は、(A)+(B)の総量100質量部に対して0.1~25質量部の範囲内であるのが好ましく、0.3~10質量部の範囲内であるのがより好ましく、0.3~1.5質量部の範囲内であることが更に好ましい。上記範囲内であることで、上記パテ塗料組成物の塗装において、塗装作業性が良好になる利点がある。なお、上記量は、固形分質量部又は成分質量部を意味する。
【0033】
研磨性改質剤(E)
上記主剤(I)は、研磨性改質剤(E)を含む。研磨性改質剤(E)は、1又はそれ以上の二価の金属元素の炭酸塩であるのが好ましい。二価の金属元素として、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra等の第2族金属元素、及び2価のイオン構造をとることができる遷移元素(例えば、Fe、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd等)等が挙げられる。上記二価の金属元素の炭酸塩は単塩であっても複塩であってもよく、二価の金属元素を2種又はそれ以上含んでもよい。
上記炭酸塩の具体例として、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸鉄(II)、ドロマイト(CaMg(CO3)2)等が挙げられる。
【0034】
上記パテ塗料組成物が上記研磨性改質剤(E)を含むことによって、パテ塗料組成物を塗装して形成されるパテ塗膜において、良好な研磨性が得られる。これにより、パテ塗装後の研磨作業性が向上し、塗膜の耐研磨性が良好になる利点がある。
【0035】
上記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する研磨性改質剤(E)の量は、(A)+(B)の総量100質量部に対して5~100質量部の範囲内であるのが好ましく、10~50質量部の範囲内であるのがより好ましく、20~50質量部の範囲内であるのが更に好ましい。なお、上記量は、固形分質量部又は成分質量部を意味する。
【0036】
主剤中の他の成分
上記主剤(I)は、必要に応じて、硬化促進剤として芳香族基含有第3級アミン化合物を更に含んでもよい。芳香族基含有第3級アミン化合物として、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、p-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4-(N-メチル-N-ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、m-トルイジン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N-置換アニリン;N,N-アルキル置換-p-トルイジン等のN,N-置換-p-トルイジン;4-(N,N-アルキル置換アミノ)ベンズアルデヒド等の4-(N,N-置換アミノ)ベンズアルデヒド;4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、3-ジメチルアミノ安息香酸、3-ジメチルアミノ安息香酸エチル、3-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、3-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2-ジメチルアミノ安息香酸、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、2-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、2-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のジメチルアミノ基含有安息香酸及びそのエステル;等が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0037】
主剤(I)が芳香族基含有第3級アミン化合物を含む場合は、この芳香族基含有第3級アミン化合物は、硬化促進剤として機能する。上記パテ塗料組成物において芳香族基含有第3級アミン化合物を用いることによって、パテ塗料組成物の硬化反応を促進する等の利点がある。
【0038】
上記パテ塗料組成物が芳香族基含有第3級アミン化合物を含む場合における、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する芳香族基含有第3級アミン化合物の量は、(A)+(B)の総量100質量部に対して0.1~10質量部の範囲内であるのが好ましく、0.2~3質量部の範囲内であるのがより好ましい。上記パテ塗料組成物において芳香族基含有第3級アミン化合物を用いることによって、パテ塗料組成物の硬化反応を促進する等の利点がある。なお、上記量は、固形分質量部又は成分質量部を意味する。
【0039】
上記パテ塗料組成物は、必要に応じて、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸カルシウム、オクテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸カルシウム等の、硬化促進機能を有する有機酸金属塩を更に含んでもよい。
【0040】
上記主剤(I)は、必要に応じて、硬化抑制剤を更に含んでもよい。上記主剤(I)が硬化抑制剤を含むことによって、パテ塗料組成物の塗装後における硬化反応速度を好適に制御することができ、塗装作業性を向上させることができる利点がある。硬化抑制剤として、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、トルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジ-t-ブチル-p-キノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、モノ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジーt-ブチル-p-クレゾール、t-ブチルカテコール等のフェノール系化合物が挙げられる。
【0041】
上記パテ塗料組成物が硬化抑制剤を含む場合における、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する硬化抑制剤の量は、(A)+(B)の総量100質量部に対して0.01~0.5質量部の範囲内であるのが好ましく、0.03~0.2質量部の範囲内であるのがより好ましい。上記範囲内にあることで、パテ塗料組成物の塗装中及び塗装後における硬化反応速度を好適に制御することができ、ポットライフや耐タレ性等の塗装作業性を向上させることができる利点がある。なお、上記量は、固形分質量部又は成分質量部を意味する。
【0042】
上記パテ塗料組成物において、上記芳香族基含有第3級アミン化合物及び上記硬化抑制剤の両方を含んでいてもよい。この場合、パテ塗料組成物のエアレススプレー時における塗装作業性や可使時間の制御、塗装によって形成されたパテ塗膜の研磨等作業性、更にパテ塗膜の可とう性等を良好にすることができる利点がある。
【0043】
有機過酸化物(F)
上記パテ塗料組成物において、有機過酸化物(F)は硬化剤(II)に含まれる。有機過酸化物(F)は、熱又は紫外線等によりラジカルを発生する化合物であり、上記不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)のラジカル重合反応の重合開始剤として機能する成分である。
【0044】
有機過酸化物(F)として、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジtert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-ヘキシルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール化合物;クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル化合物;等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。
【0045】
上記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する有機過酸化物(F)の量は、(A)+(B)の総量100質量部に対して2~35質量部の範囲内であるのが好ましく、2~30質量部の範囲内であるのがより好ましく、2~20質量部の範囲内であるのが更に好ましい。上記範囲内にあることで、パテ塗料組成物の塗装中及び塗装後における硬化反応速度を好適に制御することができ、ポットライフや耐タレ性等の塗装作業性を向上させることができる利点がある。なお、上記量は、固形分質量部又は成分質量部を意味する。
【0046】
可塑剤(G)
上記パテ塗料組成物における硬化剤(II)は、上記有機過酸化物(F)に加えて更に可塑剤(G)を含む。硬化剤(II)に含まれる可塑剤(G)として、例えば、ジカルボン酸のジエステル(例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸ジアルキルエステル、セバシン酸ジブチル等のセバシン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジアルキル等のアジピン酸ジアルキルエステル等)及び、ジエチレングリコールジベンゾエート等の、ジオールのジエステル等、を挙げることができる。上記可塑剤(G)は、必要に応じて、上記パテ塗料組成物における主剤(I)にも含まれてもよい。
【0047】
上記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する可塑剤(G)の量は、(A)+(B)の総量100質量部に対して0.5~18質量部の範囲内であるのが好ましく、1~18質量部の範囲内であるのがより好ましく、2~10質量部の範囲内であるのが更に好ましい。上記範囲内にあることで、得られるパテ塗膜に良好な可とう性を付与し得るという利点がある。なお、上記量は、固形分質量部又は成分質量部を意味する。
【0048】
上記主剤(I)及び硬化剤(II)は、必要に応じて、上記成分以外の添加剤等を含んでもよい。添加剤等として、例えば、各種有機溶媒、シリコーンオイル等の表面調整剤、界面活性剤、各種ワックス、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、低収縮剤、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、顔料分散剤、改質用樹脂、チキソ剤、チキソ助剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0049】
パテ塗料組成物及びパテ塗膜
上記パテ塗料組成物における主剤(I)は、上記不飽和ポリエステル樹脂(A)、不飽和モノマー(B)、充填剤(C)、粘性調整剤(D)、研磨性改質剤(E)、そして必要に応じた他の成分を、当業者における通常用いられる手法により混合することによって調製することができる。
【0050】
上記主剤(I)の23℃における粘度は、0.5~130Pa・sの範囲内であり、1~100Pa・sの範囲内であるのがより好ましい。上記範囲内にあることで、得られるパテ塗料組成物の塗装時に主剤と硬化剤の混合性及び塗装作業性等をより良好にすることができる利点がある。主剤(I)の23℃における粘度は、円筒型回転粘度計、例えば、ビスコテスタVT-04F(リオン社製)を用いて測定することができる。
【0051】
上記パテ塗料組成物における硬化剤(II)は、上記有機過酸化物(F)、可塑剤(G)、及び必要に応じた他の成分を、当業者における通常用いられる手法により混合することによって調製することができる。
【0052】
上記硬化剤(II)の23℃における粘度は、5~20mPa・sの範囲内であり、8~15mPa・sの範囲内であるのが好ましい。上記範囲内にあることで、得られるパテ塗料組成物の塗装時に主剤と硬化剤の混合性及び塗装作業性等をより良好にすることができる利点がある。上記硬化剤(II)の粘度は、B形粘度計、例えば、VISCOMETER TVB-10(東機産業社製)を用いて測定することができる。
【0053】
本開示のパテ塗料組成物は、2液硬化形の塗料組成物であり、使用直前に主剤(I)及び硬化剤(II)を混合して使用するものである。パテ塗料組成物を構成する上記主剤(I)及び硬化剤(II)は、それぞれ上記成分を含み、そして上記特定の粘度範囲を有する。これにより、例えば以下に記載する、スタティックミキサー部を備えたスプレー塗装機による塗装において好適に用いることができる。
【0054】
上記パテ塗料組成物の塗装は、スタティックミキサー部を備えたスプレー塗装機を用いて塗装するのが好ましい。スタティックミキサーは、液体等の流体をかくはん・混合する部位であって、流路中に混合手段を介装させることにより、流路中に乱れ(渦流等の乱流)を発生させることにより、流体を効果的にかくはん・混合させる事ができる利点がある。上記パテ塗料組成物の塗装においては、例えば、主剤(I)及び硬化剤(II)を、それぞれ異なる導入管を介して、予めスタティックミキサーに圧送し、スタティックミキサー部で混合した後、スプレーガン等のスプレー塗装機に導き、塗装することができる。このような、スタティックミキサー部を備えたスプレー塗装機を用いることによって、パテ塗料組成物のポットライフの制限を強く受けることなく塗装することができるため、塗装作業性に優れる利点がある。
【0055】
上記パテ塗料組成物の塗装において、スプレー塗装機としてエアレススプレー塗装機を用いるのが好ましい。エアレススプレー塗装機は、圧縮エアを伴わないため、スプレー塗装機の重さが軽減され、塗装作業性に優れるという利点がある。スタティックミキサー部を備えたエアレススプレー塗装機による上記主剤(I)の塗料圧は、例えば10~45MPaの範囲内であるのが好ましく、15~30MPaの範囲内であるのがより好ましい。また、上記硬化剤(II)の塗料圧は、例えば10~45MPaの範囲内であるのが好ましく、15~30MPaの範囲内であるのがより好ましい。
【0056】
スタティックミキサー部を備えたエアレススプレー塗装機として、市販される塗装機を用いてもよい。市販品として、例えば、旭サナック社製APWシリーズ等が挙げられる。
【0057】
上記パテ塗料組成物における、主剤(I)及び硬化剤(II)の体積比率は、主剤(I):硬化剤(II)=100:2~100:25の範囲であるのが好ましく、100:2~100:20の範囲内であるのがより好ましく、100:4~100:20の範囲内であるのが更に好ましく、100:5~100:10の範囲内であるのが更に好ましい。上記範囲内にあることで、上記パテ塗料組成物の塗装時に、主剤と硬化剤の混合性をより良好にすることができる利点がある。
【0058】
一の態様において、上記パテ塗料組成物における、主剤(I)及び硬化剤(II)の質量比率は、主剤(I):硬化剤(II)=100:2~100:30の範囲であるのが好ましく、100:2~100:20の範囲内であるのがより好ましく、100:2~100:15の範囲内であるのが更に好ましく、100:2~100:10の範囲内であるのが更に好ましい。上記範囲内にあることで、上記パテ塗料組成物の塗装時に、主剤と硬化剤との混合性をより良好にすることができる利点がある。
【0059】
なお主剤(I)及び硬化剤(II)の混合は、上記スタティックミキサーに代えて、例えばライン輸送中においてかくはん・混合を行うこともでき、また、スプレー塗装の直前に一般的な混合手法により混合することもできる。
【0060】
主剤(I)及び硬化剤(II)の混合物におけるTi値(「チキソトロピックインデックス」とも言う。)は、3~6の範囲内であるのが好ましく、3~5の範囲内であるのがより好ましい。Ti値が上記範囲内にあることで、得られるパテ塗料組成物の耐タレ性等の塗装作業性等をより良好にすることができる利点がある。ここでTi値とは、塗料組成物の構造粘性、すなわち、温度一定下でかくはんするとゾル状になり、これを放置すると再びゲル状に戻る性質を示すパラメータである。このTi値が大きいほどタレ発生抑制に有効であることを意味する。
本開示においてTi値は、25℃において、回転粘度計、例えば、B形粘度計(VISCOMETER TVB-10(東機産業社製))等を用いて、6rpmのときの粘度(Pa・s)と60rpmのときの粘度(Pa・s)とをそれぞれ測定し、下記式によって算出した値を意味する。なお、6rpmのときの粘度及び60rpmのときの粘度は、主剤(I)及び硬化剤(II)を混合し、混合後、5分以内に測定した値を用いる。
Ti値=6rpmのときの粘度/60rpmのときの粘度
【0061】
上記パテ塗料組成物を塗装する被塗物を構成する基材は、特段限定されるものではなく、例えば、木、金属、ガラス、布、プラスチック、発泡スチロール、コンクリート、窯業系材料等が挙げられる。被塗物を構成する基材として、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛及びこれらの金属を含む合金等の金属基材が挙げられる。これらの基材に対して、必要に応じた化成処理(例えば、ジルコニウム化成処理、リン酸亜鉛化成処理等)を施した後、基材に本発明のパテ塗料組成物を塗装し、塗膜を形成してもよい。
【0062】
好ましい被塗物として、例えば一般工業用の被塗物、例えば、弱電・重電機器、建設機械、農業機械、鋼製家具、工作機械、大型車両、船体、アルミ建材、窯業系建材、建築、橋梁等が挙げられる。更に具体的な被塗物として、例えば、鉄道車両等の大型車両及び船体等が挙げられる。
【0063】
上記パテ塗料組成物を被塗物に塗装してパテ塗膜を形成した後、必要に応じて、形成されたパテ塗膜を研磨してもよい。パテ塗膜の研磨において、例えば、ペーパー、サンダー、ディスクグラインダー等を用いて研磨を行うことができる。
【0064】
上記パテ塗料組成物を用いることによって、エアレススプレーによりパテ塗膜を形成することができる。上記パテ塗料組成物は特に、スタティックミキサー部を備えたエアレススプレー塗装機を用いた塗装において好適に用いることができる。これは、上記パテ塗料組成物を構成する主剤(I)及び硬化剤(II)が上記各成分を含むこと、そしてこれらにより、主剤(I)及び硬化剤(II)の粘度が、スタティックミキサーによる混合において好適な範囲となること、に基づく。上記パテ塗料組成物を用いることによって、パテ塗装工程に要する時間を短縮することができ、作業者の労力を低減することができる利点がある。特に、エアレススプレーによりパテ塗膜を形成する場合、例えば、ヘラを用いて塗装する場合よりも容易に塗装し得る。更に、膜厚の厚いパテ塗膜を容易に形成でき、形成されるパテ塗膜は膜厚の厚い場合であってもタレの発生を抑制し得る。
【実施例0065】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」及び「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0066】
実施例1 パテ塗料組成物(1)の調製
<主剤>
不飽和ポリエステル樹脂(A1)としてサンドーマCN-351 310質量部、不飽和モノマー(B1)としてスチレン 110質量部、充填剤(C1)としてスーパーSS 225質量部及び粘性調整剤(D1)としてベントン27 3質量部及び研磨性改質剤(E1)としてマイクロドール1 140質量部をディスパーで混合し、主剤1を得た。
【0067】
<硬化剤>
有機過酸化物(F1)としてメチルエチルケトンパーオキサイド 27質量部及び可塑剤(G1)としてフタル酸ジメチル 13質量部をディスパーで混合し、硬化剤1を得た。
【0068】
<試験板の製造例>
厚さ0.8mm、70×150mmサイズのJIS G 3141(SPCC-SD)冷間圧延鋼板を溶剤脱脂した後に、上記より得られた主剤1及び硬化剤1を、下記表に示される配合にてディスパーを用いて混合し、パテ塗料組成物1を調製した。得られたパテ塗料組成物1を、前記鋼板の表面に、乾燥膜厚が1mmとなるようにエアレススプレー塗装機を用いて塗装し、60℃で2時間乾燥させ、パテ塗膜を形成した。
【0069】
実施例2~20及び比較例1~4
主剤及び硬化剤の調製において、下記表に記載の成分及び量に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてパテ塗料組成物の調製を行った。得られた主剤及び硬化剤を、下記表1A~1Eに示される配合にて混合し、実施例1と同様の手順によりパテ塗膜を形成した。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
上記実施例及び比較例で調製したパテ塗料組成物を用いて、下記評価を行った。評価結果を下記表2A~2Eに示す。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
(3)評価項目
(粘度測定)
上記主剤の粘度は、円筒型回転粘度計(ビスコテスタVT-04F、リオン社製;23℃、回転数:62.5rpm)を用いて測定した。
また、上記硬化剤の粘度は、B形粘度計(VISCOMETER TVB-10、東機産業社製:23℃、回転数:60rpm)を用いて測定した。
【0082】
<性能評価>
(混合性)
主剤及び硬化剤を、ツインコントロール(ワグナー社製)にてスタティックミキサーを用いて混合し、5分経過後、混合物をポリカップに採取し、混合状態を目視評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:全体がムラ無く均一に混合している。
○:ごく一部にムラがあるが、ほぼムラなく混合されている。
×:ムラがあり均一に混合していない。
【0083】
(ポットライフ)
パテ塗料組成物のポットライフは下記の方法にて測定し、評価した。
1/12L缶に主剤50質量部を入れ、20℃の恒温水槽に20分以上浸漬した。
次に、硬化剤を所定量添加し、それと同時にスパチュラを用いて主剤と硬化剤との混合物を恒温水槽内にて約1分間かくはんし、均一に混合した。硬化剤を添加した時点を基準(時間:0分)として、1分毎にパテ塗料組成物(主剤と硬化剤との混合物)の表面中心部に、ゼムクリップ(Askul社製:サイズ大)を伸ばしたものの一端の先を2cmほぼ垂直に差し込み、直ちに引き抜いた。引き抜いたときに生じる穴が消失しなくなった時の基準時間からの時間をポットライフとした。20分以上70分以下を合格とし、この中でも30分以上60分以下をより好ましいと判断した。また、120分経過しても引き抜いたときに生じる穴が消失する場合、120<とした。
なお、前記硬化剤の所定量とは、主剤50質量部と硬化剤との質量比が、表2A~2Eに示した主剤と硬化剤との質量比と同じ比率となるように求めた値である。
【0084】
(Ti値)
200mLポリカップに主剤100質量部を入れ、25℃の恒温水槽に20分以上浸漬した。次に、硬化剤を所定量添加し、それと同時にスパチュラを用いて主剤と硬化剤との混合物を恒温水槽内にて約1分間かくはんし、均一に混合した。混合後5分以内に、B形粘度計VISCOMETER TVB-10(東機産業社製)を用いて、上記で得られたパテ塗料組成物(主剤と硬化剤との混合物)の6rpmのときの粘度(Pa・s)と60rpmのときの粘度(Pa・s)とをそれぞれ測定し、下記式によってTi値を算出した。
Ti値=6rpmのときの粘度/60rpmのときの粘度
なお、前記硬化剤の所定量とは、主剤100質量部と硬化剤との質量比が、表2A~2Eに示した主剤と硬化剤との質量比と同じ比率となるように求めた値である。
【0085】
(エアレススプレー塗装作業性)
実施例及び比較例で調製したパテ塗料組成物を用いて、タレ発生限界膜厚を測定した。
パテ塗料組成物を塗装する被塗物として、ブリキ板(600mm×400mm)を用いた。エアレススプレー塗装により、下記条件にて、パテ塗料組成物を塗装し、エアレススプレー作業性を評価した。
<エアレススプレー塗装条件>
装置:ポンプ、ツインコントロール(ワグナー社製);ガン、エアコートガンGM4700AC(ワグナー社製)
ポンプ圧:0.3MPa
エア圧:0.3MPa
被塗物からガンまでの距離:30cm
<塗装方法>
略垂直に保持した状態の被塗物に対して、以下の手順で塗装を行った。
手順1.被塗物に、塗装を行う
手順2.室温で30分乾燥させる
手順3.右端から左端に向けて塗装を行う
手順4.室温で1分間乾燥させる
手順5.左端から数cmずらして塗装を行う
手順6.室温で1分間乾燥させる
手順7.手順5の塗装開始場所から更に右へ数cmずらして塗装を行う
手順8.手順6及び手順7を繰り返し、左端から右端へ膜厚傾斜をつけた塗装板を作成する
手順9.室温で30分乾燥させた後、ジェットオーブン中で、60℃で1時間乾燥させる
手順10.塗料のタレが発生した部位の膜厚を測定し、得られた値をタレ限界膜厚とする。タレ限界膜厚が500μm以上で合格とした。
【0086】
(付着性)
実施例及び比較例で得られた各試験片のパテ塗膜表面に、直径20mmの試験円筒を接着させた(接着剤:アラルダイトラピッド(ハンツマン・ジャパン社製)、乾燥条件:23℃で24時間)。その後、引張試験機(NXT-250P:富山産業社製)にて張力(0.89kg/s)を加え、試験円筒がはく離した張力を測定した。この張力に基づいて付着性を評価した。15kg/cm2以上を合格とした。
【0087】
(耐水性)
実施例及び比較例で得られた試験片(塗装板)を、20℃の水中に168時間浸漬した後、塗膜の外観を目視で観察した。評価基準は以下のとおりである。
5:塗膜異常(フクレ)の発生がない
4:塗膜の一部に直径1mm未満のフクレ有
3:塗膜の一部に直径1mm以上2mm未満のフクレ有
2:塗膜の一部に直径2mm以上のフクレ有
【0088】
(耐湿性)
実施例及び比較例で得られた試験片(塗装板)を、湿潤試験機(CT-3、スガ試験機社製)にセットし、48時間経過後の外観を目視で観察した、評価基準は以下のとおりである。
5:塗膜に異常(フクレ)の発生がない
4:塗膜に直径1mm未満のフクレが発生している
3:塗膜に直径1mm以上2mm未満のフクレが発生している
2:塗膜に直径2mm以上のフクレが生発生している
【0089】
(湿潤冷熱繰り返し性)
実施例及び比較例で得られた各試験片について、JIS K 5600-7-4に準じて、湿潤冷熱繰り返し性を評価した。
試験片を、23±2℃の水中に18時間浸した後、直ちに-20℃±2℃に保った恒温槽で3時間冷却し、次に50±2℃に保った別の恒温槽で3時間加温する。この操作を7回繰り返してから、塗膜表面の状態を目視で観察した。評価基準は以下のとおりである。
○:塗膜に異常(フクレ、白化、割れ)の発生がない。
△:塗膜に異常(フクレのみ。白化、割れはない)が発生している。
×:塗膜に異常(フクレ、白化、割れ)が発生している。
【0090】
(可とう性)(耐カッピング性)
実施例及び比較例で得られた試験片(塗装板)について、JIS K 5600-5-2(耐カッピング性試験)に準じて、可とう性(耐カッピング性)を評価した。
試験片の塗装面の裏側より、自動カッピング試験機HD-4525(上島製作所社製)を用いて、口径20mmのポンチで押し出し加工した。塗膜に割れが生じた押し出し高さを可とう性(耐カッピング性)として評価した。押し出し高さが1mm以上を合格とした。なお、試験は23℃で行った。
【0091】
(可とう性)(耐折り曲げ性)
実施例及び比較例で得られた試験片について、ASTM D522に準じて、耐折り曲げ性を評価した。
コニカルマンドレル試験機(TP技研社製)を用いて、直径3/2インチのマンドレルに、パテ塗膜が外側(マンドレルと接触しない側)になるように試験片を接触させ、約1秒かけて一定速度で180度に折り曲げた。試験後のパテ塗膜の状態を目視観察した。
評価基準は以下のとおりである。なお、試験は23℃で行った。
○:塗膜にヒビ及び割れが生じない
△:塗膜に割れは生じないが、ヒビが生じる
×:塗膜に割れが生じる
【0092】
(可とう性)(耐衝撃性)
実施例及び比較例で得られた試験片(塗装板)について、JIS K 5600-5-3(耐おもり落下性試験)に準じて、耐おもり落下性を評価した。
デュポン式衝撃試験器(撃ち型1/2inch;上島製作所社製)を使用し、500gの重りを一定の高さから落下させ、割れの発生した高さを測定し、可とう性(耐重り落下性)を評価した。なお、表中の「50<」は、重りを50cmの高さから落下させても割れが発生しなかった場合を示す。20cm以上を合格とした。なお、試験は23℃で行った。
【0093】
(耐研磨性)
実施例及び比較例で得られた試験片(塗装板)について、ダブルアクションサンダー(コンパクト・ツール社製、荷重:750g、エア圧:0.6Mpa、回転数目盛:1)を用いて、研磨紙(コバックス社製、スーパータック ポマックス P120)で研磨し、耐研磨性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:研磨粉(研磨した際に生じた粉)がサラサラとしており、研磨紙にも付着していない。
○:研磨粉はサラサラしているが、研磨紙に付着している。
×:研磨粉がベタついており、研磨紙にも付着している。
【0094】
表中に記載される成分は下記のとおりである。
主剤(I)
不飽和ポリエステル樹脂(A)
(A1)サンドーマCN-351:DICマテリアル社製、数平均分子量:3,500、固形分酸価:15mgKOH/g、ポットライフ:12±5分、固形分濃度:66.7質量%
(A2)ビニエスターZ3202N:ジャパンコンポジット社製、数平均分子量:2,000、固形分酸価:22mgKOH/g、ポットライフ:10±5分、固形分濃度:66.0質量%
不飽和モノマー(B)
(B1)スチレンモノマー:中央化成品社製、スチレンを100質量%含有
(B2)ライトエステルE:共栄社化学社製、メタクリル酸エチルを100質量%含有
充填剤(C)
(C1)スーパーSS:丸尾カルシウム社製、炭酸カルシウム、固形分濃度:100質量%
(C2)TIPAQUE R-820:石原産業社製、酸化チタン、固形分濃度:100質量%
(C3)CYANINE BLUE G-105R:山陽色素社製、銅フタロシアニン、固形分濃度:100質量%
粘性調整剤(D)
(D1)ベントン 27:エレメンティスジャパン社製、ヘクトライト、固形分濃度:100質量%
(D2)クニピアF:クニミネ工業社製、天然モンモリロナイト、固形分濃度:100質量%
研磨性改質剤(E)
(E1)SSSタルク(珪酸マグネシウム、丸尾カルシウム社製)、固形分濃度:100質量%
(E2)マイクロドール1:NORWEGIAN TALC社製、ドロマイト((Mg・Ca(CO3)2))、固形分濃度:100質量%
【0095】
なお、不飽和ポリエステル樹脂(A)のポットライフは、下記の方法にて測定し、評価した。
1/12L缶に不飽和ポリエステル樹脂(A)を固形分量として20.7質量部を入れ、20℃の恒温水槽に20分以上浸漬した。
次に、硬化促進剤として6%ナフテン酸コバルト(ナフトライフCo6%X、住化エンビロサイエンス社製;有効成分濃度:48質量%)0.6質量部、有機過酸化物としてメチルエチルケトンパーオキサイド(化薬ヌーリオン社製、有効成分濃度:36.3質量%)7.8質量部及び可塑剤としてフタル酸ジメチル(東京化成工業社製、有効成分濃度:99.0質量%)1.3質量部を予め混合しておいたもの(硬化剤混合物)を添加し、それと同時にスパチュラを用いて恒温水槽内にて約1分間かくはんし、均一に混合し混合物を得た。前記硬化剤混合物を添加した時点を基準(時間:0分)として、1分毎に前記混合物の表面中心部に、ゼムクリップ(Askul社製:サイズ大)を伸ばしたものの一端の先を2cmほぼ垂直に差し込み、直ちに引き抜いた。引き抜いたときに生じる穴が消失しなくなった時の基準時間からの時間を不飽和ポリエステル樹脂(A)のポットライフとした。
【0096】
硬化剤(II)
有機過酸化物(F)
(F1)メチルエチルケトンパーオキサイド(化薬ヌーリオン社製、有効成分濃度:36.3質量%)
(F2)ベンゾイルパーオキサイド(東京化成工業社製、有効成分濃度:75.0質量%)
可塑剤(G)
(G1)フタル酸ジメチル(東京化成工業社製、有効成分濃度:99.0質量%)
(G2)フタル酸ジオクチル(東京化成工業社製、有効成分濃度:98.0質量%)
その他の溶剤:キシレン
【0097】
上記実施例のパテ塗料組成物はいずれも、エアレススプレーにより塗装することができ、作業性も良好であった。エアレススプレーにより塗装することにより、ヘラを用いて塗装する場合と比べて、容易に塗装でき、容易にタレ限界膜厚の厚いパテ塗膜を得ることができた。更に、得られたパテ塗膜の耐研磨性も良好であった。
比較例1では、粘性調整剤(D)を加えておらず、主剤(I)と硬化剤(II)との混合性が悪かった。
比較例2では、研磨性改質剤(E)を加えておらず、形成されたパテ塗膜の耐研磨性が良好でなかった。
比較例3では、有機過酸化物(F)を加えておらず、パテ塗料組成物は硬化できず、塗膜としての評価は不可能であった。
比較例4では、主剤(I)の粘度が低く、かつ、パテ塗料組成物のTi値も低いため、組成物のタレ性が著しく悪く、実施例1と同じ方法でパテ塗膜を形成することは不可能であった。
【0098】
実施例21
厚さ0.8mm、70×150mmサイズのJIS G 3141(SPCC-SD)冷間圧延鋼板を溶剤脱脂した。次に、鋼板表面に対して、APW3000(旭サナック社製、スタティックミキサーを備えた二液エアレススプレー塗装機)を用いて、実施例1で製造した主剤1及び硬化剤1を入れ、乾燥膜厚が700μmとなるように上記鋼板への塗装を行った。
なお、塗装条件は、主剤と硬化剤との混合比率(体積比)を14:1、主剤と硬化剤との圧力の比率を1:33、吐出量を3.7L/分、吐出圧力を18MPaとした。
上記より形成されたパテ塗膜は、60℃で2時間乾燥することにより研磨可能な表面を有する状態となった。
上記パテ塗料組成物を用いることによって、パテ塗膜を、エアレススプレーを用いて好適に形成することができる利点がある。上記により、パテ塗膜形成工程の時間を短縮することができ、作業者の労力を低減することができる利点がある。
前記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の総量に対する有機過酸化物(F)の質量比率は、[(A)+(B)]:(F)=100:2~100:35の範囲内である、請求項1に記載のパテ塗料組成物。
前記パテ塗料組成物に含まれる、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び不飽和モノマー(B)の質量比は、(A):(B)=100:3~100:260の範囲内である、請求項1から3のいずれか1項に記載のパテ塗料組成物。
前記パテ塗料組成物における主剤(I)及び硬化剤(II)の体積比率は、主剤(I):硬化剤(II)=100:2~100:25の範囲内である、請求項1から4のいずれか1項に記載のパテ塗料組成物。