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特開2022-79246メタホウ酸の製造方法および当該メタホウ酸を用いた第2級アルコールの製造方法
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  • 特開-メタホウ酸の製造方法および当該メタホウ酸を用いた第2級アルコールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079246
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】メタホウ酸の製造方法および当該メタホウ酸を用いた第2級アルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 35/10 20060101AFI20220519BHJP
   C07C 27/02 20060101ALI20220519BHJP
   C07C 31/125 20060101ALI20220519BHJP
   C07C 27/28 20060101ALI20220519BHJP
   C07C 29/52 20060101ALN20220519BHJP
【FI】
C01B35/10 A
C07C27/02
C07C31/125
C07C27/28
C07C29/52
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190325
(22)【出願日】2020-11-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 明正
(72)【発明者】
【氏名】山内 晶子
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC41
4H006AD11
4H006BE10
4H006FE11
(57)【要約】
【課題】メタホウ酸を安定して製造できる手段を提供する。
【解決手段】i)飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸を脱水器で脱水し、メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および水を含む混合物を得;ii)前記飽和脂肪族炭化水素および水を前記混合物から留去した後、飽和脂肪族炭化水素と水とを分離し;iii)前記ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素を前記i)に戻す、ことを有し、前記i)において、前記飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が、2質量%未満である、メタホウ酸の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸を脱水器で脱水し、メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および水を含む混合物を得、
ii)前記飽和脂肪族炭化水素および水を前記混合物から留去した後、飽和脂肪族炭化水素と水とを分離し、
iii)前記ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素を前記i)に戻す、
ことを有し、
前記i)において、前記飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が、2質量%未満である、メタホウ酸の製造方法。
【請求項2】
前記脱水器の少なくとも気相部はニッケル合金で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱水器の頂上部から、脱水器の全高さに対して、60%までの範囲がニッケル合金で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
a)メタホウ酸の存在下で、飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガスで液相酸化およびエステル化してボレート化合物を含有する反応液を得、
b)前記ボレート化合物を含有する反応液を蒸留して未反応の飽和脂肪族炭化水素および蒸留残留物に分離し、
c)前記蒸留残留物を加水分解してオルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離し、
d)アルカリを用いて前記有機層をケン化処理して、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層とに分離し、
e)前記粗製アルコール層を精製して第2級アルコールを得ることを有する、第2級アルコールの製造方法であって、
前記工程a)において、前記メタホウ酸は、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を用いて製造される、方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を用いて、前記c)で分離したオルトホウ酸からメタホウ酸を製造して、前記a)に循環することをさらに有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a-1)メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および分子状酸素含有ガスを反応器に供給して、メタホウ酸の存在下で、飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガスで液相酸化し、酸化物を含有する反応液を得、
a-2)前記酸化物をエステル化してボレート化合物を含有する反応液を得、
b)前記ボレート化合物を含有する反応液を蒸留して未反応の飽和脂肪族炭化水素および蒸留残留物に分離し、
c)前記蒸留残留物を加水分解してオルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離し、
d)アルカリを用いて前記有機層をケン化処理して、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層とに分離し、
e)前記粗製アルコール層を精製して第2級アルコールを得ることを有する、第2級アルコールの製造方法であって、
前記工程a-1)において、前記メタホウ酸は、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を用いて製造され、
前記反応器は、バッチ式および連続式に切り替え可能な2以上の反応器からなり、
前記2以上の反応器の各反応器に飽和脂肪族炭化水素を添加することを有し、
前記2以上の反応器の最も上流側の反応器にメタホウ酸を添加することを有し、
前記最も上流側の反応器で前記酸化物をバッチ式で得ることを開始し、当該最も上流側の反応器の入口および出口における酸素濃度差のモニタリングを行って当該酸素濃度差が0.5体積%以上になったら、連続式に切り替えることを有する、第2級アルコールの製造方法。
【請求項7】
メタホウ酸製造用の反応器であって、前記反応器の頂上部から前記反応器の全高さに対して60%までの範囲がニッケル合金で形成される、反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタホウ酸の製造方法および当該メタホウ酸を用いた第2級アルコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級第2級アルコールエトキシレートは、流動点が低く、取り扱いが容易なので非イオン界面活性剤として広範に使われている。この第2級アルコールエトキシレートは、第2級アルコールを出発原料としアルキレンオキシドを付加することによって製造される。第2級アルコールは、原料飽和脂肪族炭化水素をメタホウ酸の存在下で酸化し、酸化反応生成物中の遊離アルコールをオルトホウ酸エステル化し、未反応の飽和脂肪族炭化水素を蒸留により回収し、蒸留残留物を加水分解し、得られた有機層をアルカリでけん化した後、粗アルコール層を精製するホウ酸酸化法によって得られる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-131531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ホウ酸酸化法で原料として使用されるメタホウ酸を安定して製造できる技術が求められている。
【0005】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、メタホウ酸を安定して製造できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸を脱水する際、飽和脂肪族炭化水素に含まれるアルコール成分量を制御することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、上記目的は、i)飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸を脱水器で脱水し、メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および水を含む混合物を得;ii)前記飽和脂肪族炭化水素および水を前記混合物から留去した後、飽和脂肪族炭化水素と水とを分離し;iii)前記ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素を前記i)に戻す、ことを有し、前記i)において、前記飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が、2質量%未満である、メタホウ酸の製造方法によって、達成できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メタホウ酸を安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1で使用される反応器の概略図である。
図2図2は、第2級アルコール製造プロセスを説明する概略図である。
図3図3は、酸化反応工程(a-1)の好ましい形態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一形態に係る実施の形態を説明する。本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0011】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0012】
<メタホウ酸の製造方法>
本発明の一形態は、i)飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸を脱水器で脱水し、メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および水を含む混合物を得(工程(i));ii)前記飽和脂肪族炭化水素の一部および水を前記混合物から留去した後、飽和脂肪族炭化水素と水とを分離し(工程(ii));iii)前記ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素を前記i)に戻す(工程(iii))、ことを有し、前記i)において、前記飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が、2質量%未満である、メタホウ酸の製造方法(第一の側面)である。
【0013】
第2級アルコールを製造する方法として、a)メタホウ酸の存在下で、飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガスで液相酸化し、酸化物を含有する反応液を得(工程(a-1))、前記酸化物をエステル化してボレート化合物を含有する反応液を得(工程(a-2))(上記工程(a-1)および(a-2)を一括して「工程(a)」とも称する)、b)前記ボレート化合物を含有する反応液を蒸留して未反応の飽和脂肪族炭化水素および蒸留残留物に分離し(工程(b))、c)前記蒸留残留物を加水分解してオルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離し(工程(c))、d)前記有機層をアルカリでケン化処理して、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層に分離し(工程(d))、e)前記粗製アルコール層を精製する(工程(e))ことが行われている。上記方法において、未反応の飽和炭化水素がいくつかの工程(例えば、上記b)の工程)から回収でき、この未反応飽和炭化水素を反応系内で再利用することはプロセス上有用である(例えば、特開昭56-131531号公報)。このため、飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸を脱水器で脱水してメタホウ酸を製造する際に、上記したような第2級アルコールの製造過程で回収される未反応の飽和脂肪族炭化水素(回収飽和脂肪族炭化水素)を再利用することを試みたが、回収された未反応の飽和脂肪族炭化水素のみをそのまま反応に用いると、内壁や配管に付着物が生成し、生産効率の低下や機器トラブルが発生し、メタホウ酸を安定して製造することができなかった。本発明者らは、様々な方法にて安定したメタホウ酸製造プロセスにつき、鋭意検討を行った。その結果、第2級アルコール製造過程で(例えば、酸化反応後に)回収された未反応の飽和脂肪族炭化水素(回収飽和脂肪族炭化水素)に含まれるアルコールが付着物の原因となるボレート化合物を生成するためであると推測した。このため、メタホウ酸の製造に使用される飽和脂肪族炭化水素中のアルコール含有量につき、鋭意検討を行った結果、オルトホウ酸の脱水反応に使用する飽和脂肪族炭化水素中のアルコール含有量を2質量%未満に制御することにより、付着物の原因となるボレート化合物の形成を抑制・防止できることを見出した。上記方法によれば、脱水反応中反応器や配管の内壁に付着物がつかないので、攪拌動力の増加や配管の閉塞を有効に防止できる。ゆえに、上記方法によれば、メタホウ酸を安定して製造できる。これに対して、上記特許文献1に記載の方法で回収された未反応炭化水素を上記脱水反応に循環する場合には、反応器や配管の内壁に付着物がつき、攪拌動力の増加や配管の閉塞を引き起こす可能性がある。これは、回収された未反応の飽和脂肪族炭化水素は飽和脂肪族炭化水素の少なくとも1個の水素原子が水酸基に置換されたアルコールを2質量%以上の割合で含むため、このアルコールが脱水工程でオルトホウ酸と反応してボレート化合物が生成し、これが付着物の原因となると推定される。なお、本発明の構成による上記作用効果の発揮のメカニズムは推定であり、本発明は上記推定に限定されるものではない。
【0014】
以下、第一の側面の各工程について説明する。
【0015】
(工程(i))
本工程では、脱水器に、飽和脂肪族炭化水素(本明細書では、飽和脂肪族炭化水素を、単に「炭化水素」とも称する)およびオルトホウ酸を仕込んで、スラリーを調製し、飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸を脱水する。これにより、メタホウ酸が製造され、メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および水ならびに場合によっては未反応のオルトホウ酸を含む混合物(スラリー)が得られる。
【0016】
本工程では、仕込まれる飽和脂肪族炭化水素(原料飽和脂肪族炭化水素)中のアルコール成分の含有量は、2質量%未満である。原料飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が2質量%以上であると、オルトホウ酸の脱水反応中にボレート化合物が生成し、反応器内壁や配管の内壁への付着物の形成を誘発し、メタホウ酸を安定して製造できない。より安定したメタホウ酸の製造の観点から、飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量は、好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%未満(下限:0質量%または検出限界以下)である。すなわち、本発明の好ましい形態では、前記i)において、飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が、1.5質量%以下である。本発明のより好ましい形態では、前記i)において、飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が、1質量%未満である。本明細書において、飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定された値を採用する。なお、上記「アルコール成分」とは、炭素数6~30の飽和脂肪族炭化水素の水素原子が水酸基で置換されたアルコール(混合物)をいう。また、上記「アルコール成分」は、好ましくは炭素数8~20の飽和脂肪族炭化水素の水素原子が水酸基で置換されたアルコールを主成分として含む混合物、より好ましくは炭素数10~15の飽和脂肪族炭化水素の水素原子が水酸基で置換されたアルコールを主成分として含む混合物、特に好ましくは炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の水素原子が水酸基で置換されたアルコールを主成分として含む混合物を意図する。
【0017】
ここで、飽和脂肪族炭化水素は、炭素数8~30の飽和脂肪族炭化水素(ノルマルパラフィン)の混合物である。好ましくは、飽和脂肪族炭化水素は、炭素数10~15の飽和脂肪族炭化水素(n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン及びn-ペンタデカン)を主成分として含む混合物であり、より好ましくは炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素(n-ドデカン、n-トリデカン及びn-テトラデカン)を主成分として含む混合物である。ここで、「飽和脂肪族炭化水素を主成分として含む」とは、所定の炭素数の飽和脂肪族炭化水素を全飽和脂肪族炭化水素に対して90質量%超(好ましくは95質量%超)(上限:100質量%)の割合で含むことを意味する。また、飽和脂肪族炭化水素の平均分子量は、114以上422以下であり、好ましくは142以上212以下、より好ましくは170以上198以下である。飽和脂肪族炭化水素は、合成してもまたは市販品であってもよい。同様にして、オルトホウ酸も、合成してもまたは市販品であってもよい。
【0018】
本開示において、飽和脂肪族炭化水素とオルトホウ酸との混合比は、特に制限されず、従来と同様の混合比が適用できる。具体的には、飽和脂肪族炭化水素とオルトホウ酸との混合比(飽和脂肪族炭化水素:オルトホウ酸の混合質量比)は、0.5~5:1であり、好ましくは1:1を超え3:1未満である。また、オルトホウ酸の添加量は、混合物(スラリー)中、15~90質量%、好ましくは25質量%を超え45質量%未満等であるが、これに制限されない。
【0019】
本開示において、飽和脂肪族炭化水素存在下でのオルトホウ酸の脱水条件は、特に制限されず、従来と同様の条件が同様にして適用できる。例えば、脱水温度は、100℃以上200℃未満であり、好ましくは130℃以上180℃以下である。脱水時間は、実質的にすべてのオルトホウ酸がメタホウ酸に変換される時間であり、他の条件(例えば、オルトホウ酸の仕込み量、飽和脂肪族炭化水素とオルトホウ酸との混合比、脱水温度など)に応じて適宜選択できる。脱水時間は、例えば、3~7時間であり、好ましくは4~6時間である。脱水時間が上記範囲であれば、脱水を適度に進行させて、メタホウ酸を効率よく製造できる。または、反応器内に生成するメタホウ酸量を定期的に測定して、実質的にすべてのオルトホウ酸がメタホウ酸に変換したかを判定して、所望量のメタホウ酸が生成した時点で脱水反応を終了させてもよい。ここで、「実質的にすべてのオルトホウ酸がメタホウ酸に変換する」とは、オルトホウ酸の仕込み量 1モルに対して、0.9モル超(好ましくは0.95モル超)(上限:1モル)のメタホウ酸が変換することを意味する。混合物中のメタホウ酸の量は、公知の方法によって測定できる。本明細書では、メタホウ酸の量は、X線結晶構造解析によって測定された値を採用する。
【0020】
上記脱水反応は、大気圧下、加圧下または減圧下で行ってもよいが、通常、大気圧下で行う。また、上記脱水反応は、攪拌しながら行ってもよい(反応器が撹拌機を備えていてもよい)。ここで、脱水反応を攪拌しながら行う場合の攪拌速度は、特に制限されないが、例えば、20~100rpm、好ましくは30~60rpmである。このような攪拌速度であれば、原料(飽和脂肪族炭化水素とオルトホウ酸)が均一に混合できる(脱水反応を均質に行うことができる)。
【0021】
脱水器(脱水反応を行うための反応器)は、いずれの材質で形成されてもよい。具体的には、鉄、銅、ステンレス(SUS)、ニッケル合金(例えば、ハステロイ)、インコネル、チタン、チタニアなどが挙げられる。これらのうち、ステンレス(SUS)、ニッケル合金(例えば、ハステロイ)、チタニアが好ましく、ステンレス(SUS)、ニッケル合金(例えば、ハステロイ)がより好ましい。以下に詳述するが、第2級アルコールの製造における加水分解工程後に分離されるオルトホウ酸を本工程で再使用することができる。この場合には、オルトホウ酸は有機物(脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム等の有機酸、有機酸塩、有機酸エステルなど)を含むが、この有機物が脱水反応中蒸発して、脱水器の腐食を招くことがある。このため、反応器の少なくとも気相部は、ニッケル合金、特に耐熱性、耐圧性および耐食性に優れるハステロイで形成されることが好ましい。すなわち、本開示の好ましい形態では、脱水器の少なくとも気相部はニッケル合金で形成される。本開示のより好ましい形態では、脱水器の少なくとも気相部は、ハステロイで形成される。また、本開示の好ましい形態では、脱水器全体が、ニッケル合金(より好ましくは、ハステロイ)で形成される。ここで、ハステロイとしては、ハステロイ C-22(組成:Ni 57.0質量%、Cr 20.5質量%、Mo 14.2質量%、Fe 2.3質量%、W:3.2質量%、V 0.25質量%、C 0.01質量%)、ハステロイ C-276(組成:Ni 57.0質量%、Cr 15.5質量%、Mo 16.0質量%、Fe 6.0質量%、W:4.0質量%、V 0.3質量%、C 0.01質量%)などが挙げられる。また、「脱水器の気相部」は、飽和脂肪族炭化水素、オルトホウ酸、水およびメタホウ酸の少なくとも一種の蒸気が接する脱水器の部分を意図する。具体的には、脱水器の気相部は、脱水器の頂上部から、脱水器の全高さに対して、好ましくは60%までの範囲(より好ましくは30%以上60%以下の範囲、特に好ましくは40%以上50%以下の範囲)までの部分である。すなわち、本発明の好ましい形態では、脱水器の頂上部から、脱水器の全高さに対して、60%までの範囲(より好ましくは30%以上60%以下の範囲、特に好ましくは40%以上50%以下の範囲)がニッケル合金で形成される。また、本発明は、メタホウ酸製造用の反応器であって、前記反応器の頂上部から前記反応器の全高さに対して60%までの範囲(好ましくは30%以上60%以下の範囲、より好ましくは40%以上50%以下の範囲)がニッケル合金で形成される、反応器をも提供する。さらに、「脱水器が材料Aで形成される」とは、脱水器が材料Aで形成される形態に加え、材料Bで形成された脱水器の内面が材料Aで被覆される形態を包含する。すなわち、例えば、「脱水器の少なくとも気相部はニッケル合金で形成される」は、脱水器全体がニッケル合金で形成される形態;他の材料(例えば、ステンレス)で形成された脱水器の気相部の内壁がニッケル合金で溶射またはライニング等により被覆される形態;他の材料(例えば、ステンレス)で形成された脱水器の全内壁がニッケル合金で溶射またはライニング等により被覆される形態を包含する。
【0022】
本工程では、下記反応により、飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸が分子内脱水して、メタホウ酸に変換される。メタホウ酸は、その結晶構造により、α型およびβ型があるが、熱安定性(クロッキング防止効果)などの観点から、β型メタホウ酸であることが好ましい。このようなβ型のメタホウ酸は、特公昭48-37242号公報に記載の方法や上記したような好ましい脱水条件によって製造できる。
【0023】
【化1】
【0024】
(工程(ii))
本工程では、上記工程(i)で得られた脱水反応物から、飽和脂肪族炭化水素および水を留去した後、飽和脂肪族炭化水素と水とを分離する。
【0025】
上記工程(i)の脱水工程中、飽和脂肪族炭化水素および水が蒸発する(飽和脂肪族炭化水素の蒸気および水蒸気の混合蒸気が発生する)。これらの混合蒸気を脱水反応器から抜き出して、分離する。ここで、混合蒸気を飽和脂肪族炭化水素と水とを分離する方法は、特に制限されない。例えば、これらの蒸気を脱水器の上部から系外に抜き出し、系外に抜き出された蒸気を液体に凝縮して、凝縮物をセトラー(分離槽)で水層(水)及び有機層(飽和脂肪族炭化水素)に分離する方法がある。このように分離された水層(水)及び有機層(飽和脂肪族炭化水素)のうち、水は系外に抜き出す。
【0026】
(工程(iii))
本工程では、上記工程(ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素を前記工程(i)に戻す。
【0027】
本工程で分離された飽和脂肪族炭化水素は、付着物の原因となるボレート化合物を生成するアルコール成分(飽和脂肪族炭化水素の少なくとも1個の水素原子が水酸基に置換されたアルコール成分)をほとんど含まないまたは全く含まない。このため、オルトホウ酸の脱水反応中に蒸発した飽和脂肪族炭化水素をオルトホウ酸の脱水反応に使用しても、アルコール成分がオルトホウ酸と反応してボレート化合物を形成することがほとんどまたは全くない。ゆえに、反応器や配管の内壁への付着物の形成、ゆえに攪拌動力の増加や配管の閉塞を有効に防止できる。したがって、本開示の方法によれば、メタホウ酸を安定して製造できる。また、新鮮な炭化水素を別途添加する必要がないため、生産コストなどの観点からも好ましい。ここで、上記工程(ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量は、上記工程(ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素中、好ましくは2質量%未満であり、より好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%未満(下限:0質量%または検出限界以下)である。
【0028】
<第2級アルコールの製造方法>
上述したように、本開示の方法により、メタホウ酸を安定してかつ生産コストを抑えて好適に製造できる。したがって、本開示により製造されるメタホウ酸は、第2級アルコールの製造に好適に使用できる。すなわち、本発明は、a)メタホウ酸の存在下で、飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガスで液相酸化およびエステル化してボレート化合物を含有する反応液を得;b)前記ボレート化合物を含有する反応液を蒸留して未反応の飽和脂肪族炭化水素および蒸留残留物に分離し;c)前記蒸留残留物を加水分解してオルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離し;d)アルカリを用いて前記有機層をケン化処理して、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層とに分離し;e)前記粗製アルコール層を精製して第2級アルコールを得ることを有する、第2級アルコールの製造方法であって、前記工程a)において、前記メタホウ酸は、本開示の方法を用いて製造される、方法(第二の側面)をも提供する。
【0029】
以下、第二の側面の各工程について説明する。なお、第二の側面では、c)加水分解工程で分離したオルトホウ酸を第一の側面の脱水工程で使用してメタホウ酸を製造し、このメタホウ酸を第二の側面のa)工程に循環することに特徴があり、それ以外の工程は、従来公知の工程と同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。
【0030】
(工程(a))
本工程では、メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および分子状酸素含有ガス(分子状酸素を含有する反応ガス;以下同様)を反応器に供給して、メタホウ酸の存在下で、飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガスで液相酸化し、酸化物を含有する反応液を得る(酸化反応工程(a-1))。次に、上記で得られた酸化物をエステル化してボレート化合物を含有する反応液を得る(エステル化工程(a-2))。すなわち、本工程により、下記反応が起こる。
【0031】
【化2】
【0032】
上記工程(a-1)に使用されるメタホウ酸は、本開示の方法を用いて製造される。
【0033】
上記工程(a-1)において、分子状酸素含有ガスは、分子状酸素(酸素)に加えて、窒素ガスなどを含む。好ましくは、分子状酸素含有ガスは、分子状酸素(酸素)及び窒素ガスから構成される。また、分子状酸素含有ガス中の分子状酸素(酸素)の濃度は、1体積%(vol%)以上10体積%(vol%)以下、好ましくは3体積%(vol%)以上5体積%(vol%)以下等であるが、これに制限されない。分子状酸素含有ガスの供給量は、飽和脂肪族炭化水素1000g当り、100~1000リットル/時間、好ましくは350~600リットル/時間等であるが、これに制限されない。
【0034】
上記工程(a-1)において、メタホウ酸と飽和脂肪族炭化水素との反応混合比は特に制限されないが、メタホウ酸が、飽和脂肪族炭化水素に対して、好ましくは1質量%以上5質量%以下、より好ましくは2質量%以上4質量%以下、等であるが、これに制限されない。
【0035】
液相酸化反応条件は、特に制限されず、従来と同様の条件が同様にして適用できる。例えば、液相酸化反応温度は、100~250℃、好ましくは140~200℃等であるが、これに制限されない。また、液相酸化反応時間は、例えば、0.5~5時間であり、好ましくは1~3時間等であるが、これに制限されない。このような条件であれば、飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガスで適切な範囲(例えば、飽和脂肪族炭化水素の転化率=5~30%)で液相酸化できる。上記液相酸化反応は、大気圧(常圧)下、加圧下または減圧下で行ってもよいが、通常、大気圧(常圧)~30kg/cmG下で行う。また、上記液相酸化反応は、攪拌しながら行ってもよい(反応器が撹拌機を備えていてもよい)。
【0036】
上記工程(a-1)において、液相酸化反応は、1基の反応器にて行われてもまたは2基以上の複数の反応器にて連続して行われてもよい。また、反応器は、例えば、撹拌槽式または気泡塔式であってもよい。
【0037】
上記工程(a-1)において、液相酸化反応はいずれの形態で行われてもよいが、液相酸化反応器が、バッチ式および連続式に切り替え可能な2以上の反応器からなり、前記2以上の反応器の各反応器に飽和脂肪族炭化水素を添加することを有し、前記2以上の反応器の最も上流側の反応器にメタホウ酸を添加することを有し、前記最も上流側の反応器で前記酸化物をバッチ式で得ることを開始し、当該最も上流側の反応器の入口および出口における酸素濃度差のモニタリングを行って当該酸素濃度差が0.5体積%以上になったら、連続式に切り替えることが好ましい。上記方法によると、反応性が良好な、つまり、生産効率が良い連続式への立ち上げ方法を提供するができ、ひいては、生産効率が良い第2級アルコールの製造方法を提供することができる。すなわち、本発明の好ましい実施形態では、a-1)メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および分子状酸素含有ガス(分子状酸素を含有する反応ガス)を反応器に供給して、メタホウ酸の存在下で、飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガス(分子状酸素を含有する反応ガス)で液相酸化し、酸化物を含有する反応液を得、a-2)前記酸化物をエステル化してボレート化合物を含有する反応液を得、b)前記ボレート化合物を含有する反応液を蒸留して未反応の飽和脂肪族炭化水素および蒸留残留物に分離し、c)前記蒸留残留物を加水分解してオルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離し、d)アルカリを用いて前記有機層をケン化処理して、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層とに分離し、e)前記粗製アルコール層を精製して第2級アルコールを得ることを有する、第2級アルコールの製造方法であって、前記メタホウ酸は本発明の方法を用いて製造され、前記反応器は、バッチ式および連続式に切り替え可能な2以上の反応器からなり、前記2以上の反応器の各反応器に飽和脂肪族炭化水素を添加することを有し、前記2以上の反応器の最も上流側の反応器にメタホウ酸を添加することを有し、前記最も上流側の反応器で前記酸化物をバッチ式で得ることを開始し、当該最も上流側の反応器の入口および出口における酸素濃度差のモニタリングを行って当該酸素濃度差が0.5体積%以上になったら、連続式に切り替えることを有する、第2級アルコールの製造方法である。
【0038】
以下、上記好ましい形態を説明する。なお、以下では、メタホウ酸については上記したのと同様によって製造されたものであるため、ここでは説明を省略する。また、本発明は、下記好ましい形態に限定されない。
【0039】
上記工程(a-1)において、前記反応器は、バッチ式および連続式に切り替え可能な2以上の反応器からなり、前記2以上の反応器の各反応器に飽和脂肪族炭化水素を添加することを有し、前記2以上の反応器の最も上流側の反応器にメタホウ酸を添加することを有し、前記最も上流側の反応器で前記酸化物をバッチ式で得ることを開始し、当該最も上流側の反応器の入口および出口における酸素濃度差のモニタリングを行って当該酸素濃度差が0.5体積%以上になったら、連続式に切り替えることを有する。
【0040】
図3は、酸素濃度を測定することが可能な反応器を示す概略図である。図3に示されるように、(複数の)反応器30は、2つの反応器(41,42)から構成されている。最も上流側の反応器(図3では反応器41)および必要に応じ1つ以上の反応器(図3では反応器42)の容積は、目的物の製造量に応じて適宜決定すればよい。かかる2つの反応器(41,42)は、配管32で連結されることによってバッチ式および連続式に切り替え可能となっている。各反応器(41,42)は、飽和脂肪族炭化水素およびメタホウ酸が添加される入口33と、分子状酸素含有ガス(分子状酸素を含有する反応ガス)が導入される入口34と、分子状酸素含有ガス(分子状酸素を含有する反応ガス)が排出される出口35とを備えている。
【0041】
本発明の一実施形態では、反応ガスは、分子状酸素を含む。その他に、アンモニア等を含みうる。反応ガスは、循環ガスとともに、入口34を経由して、各反応器(41,42)に導入されうる。循環ガスとしては不活性ガスが挙げられ、例えば、窒素ガス等が好適である。本発明の一実施形態では、反応ガス中のアンモニアの濃度は、10体積ppm~1000体積ppmでありうる。
【0042】
本好ましい実施形態では、各反応器(41,42)における、入口34および出口35にはそれぞれ酸素濃度を測定できる測定器が備えられている(図示せず)。入口34および出口35は、それぞれ、ガス配管からなる。本好ましい実施形態では、反応器41の入口34(ガス配管)および出口35(ガス配管)にそれぞれ1つ酸素濃度を測定できる測定器が備えられ、反応器42の入口34(ガス配管)および出口35(ガス配管)にそれぞれ1つ酸素濃度を測定できる測定器が備えられ、それぞれ1つ酸素濃度を測定できる測定器が備えられている。
【0043】
かような測定器が備えられることによって入口34および出口35における酸素濃度差のモニタリングを行うことが可能となっている。平たく言えば入口34から入った酸素の濃度が出口35で少なくなっていることは酸化反応が進んでいることを意味する。本好ましい実施形態では、最も上流側の反応器(図3では反応器41)および必要に応じその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)での入口および出口における酸素濃度差のモニタリングを行って当該酸素濃度差が0.5体積%以上になったら、連続式に切り替える。本好ましい実施形態では、前記2以上の反応器の各反応器の入口および出口における酸素濃度差のモニタリングを行い、当該酸素濃度差が0.5体積%以上になったら、連続式に切り替える。ここで当該酸素濃度差が0.5体積%未満であると、連続式での酸化反応の反応性が悪化し、生産効率が良い第2級アルコールの製造方法を提供することができない。なお、本明細書において酸素濃度差は、(入口における酸素濃度(体積%))-(出口における酸素濃度(体積%))で算出できる。
【0044】
本好ましい実施形態において、最も上流側の反応器(図3では反応器41)およびその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)での入口および出口における酸素濃度差は、それぞれ独立して、0.5体積%以上(好ましくは1.0体積%以上)である。本発明の一実施形態において最も上流側の反応器(図3では反応器41)およびその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)での入口および出口における酸素濃度差は、それぞれ独立して、10体積%以下(好ましくは5.0体積%以下)である。かような実施形態であることによって酸化反応を安定的に行わせることができる。
【0045】
本好ましい実施形態では、各反応器(図3では反応器41,42)に入口33を経由して飽和脂肪族炭化水素を添加する。
【0046】
本好ましい実施形態では、反応器の最も上流側の反応器(図3では反応器41)にメタホウ酸を添加することを有する。本発明の一実施形態において、反応器の最も上流側の反応器(図3では反応器41)に含まれる飽和脂肪族炭化水素に対し、メタホウ酸を10質量%未満、7質量%以下、5質量%以下、あるいは3質量%以下の濃度で添加する。メタホウ酸を10質量%以上の濃度で当該反応器に添加すると、少なくとも最も上流側の反応器の入口および出口における酸素濃度差を0.5体積%以上とすることができない虞がある。本好ましい実施形態において、反応器の最も上流側の反応器(図3では反応器41)に含まれる飽和脂肪族炭化水素に対して、メタホウ酸を、例えば、0.1質量%以上の濃度で添加するがこれに制限されない。
【0047】
本好ましい実施形態において、最も上流側の反応器(図3では反応器41)のみならずより好ましくはその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)にメタホウ酸を添加することを有する。このようにメタホウ酸を各反応器(図3では反応器41,42)に分割して添加することによってメタホウ酸による飛沫同伴量を抑制し配管閉塞を有意に抑制しひいては生産効率を向上させる技術的効果を有する。
【0048】
本好ましい実施形態において、その他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)に含まれる各飽和脂肪族炭化水素に対してメタホウ酸をそれぞれ独立して10質量%未満、7質量%以下、5質量%以下、あるいは3質量%以下の濃度で添加する。かかる実施形態によれば、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。本発明の一実施形態において、その他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)に含まれる各飽和脂肪族炭化水素に対してメタホウ酸をそれぞれ独立して、例えば、0.1質量%以上の濃度で添加するがこれに制限されない。
【0049】
本好ましい実施形態において、最も上流側の反応器(図3では反応器41)およびその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)の内温を、それぞれ独立して、140℃超200℃以下、150~190℃、あるいは、160~180℃に設定する。140℃以下であると、少なくとも当該最も上流側の反応器の入口および出口における酸素濃度差を0.5体積%以上とすることができない虞がある。また140℃超200℃以下にすることで安定的に酸化反応を行わせることができる。ここで「内温」は、反応器中に含まれる内容物に接触するように設置された温度計で計測される値を意味する。
【0050】
本好ましい実施形態において、最も上流側の反応器(図3では反応器41)およびその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)に導入する反応ガスの温度をそれぞれ独立して、140℃超200℃以下、150~190℃、あるいは、160~180℃に設定する。かかる実施形態によって、酸素濃度差を効率的に0.5体積%以上とすることができる。また140℃超200℃以下にすることで安定的に酸化反応を行わせることができる。ここで反応ガスの温度は、反応ガスに接触するように設置された温度計で計測される値を意味する。また、反応ガスの風量は、それぞれ独立して、飽和脂肪族炭化水素1000g当り、100~1000リットル/時間、好ましくは350~600リットル/時間等である。
【0051】
本好ましい実施形態において、最も上流側の反応器(図3では反応器41)およびその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)に、循環ガスを導入することを有する。なお、循環ガスの好ましい温度範囲は、反応ガスの好ましい温度範囲と同じである。
【0052】
本好ましい実施形態において、最も上流側の反応器(図3では反応器41)および必要に応じその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)に反応ガスの導入および導入停止を繰り返す断続的供給を実施する。この際、前記断続的供給はモニタリングを行いながら実施する。つまり前記モニタリングは、前記反応ガスの導入および導入停止を繰り返す断続的供給で実施することを有する。具体的な操作方法を説明すると、例えば、最も上流側の反応器(図3では反応器41)およびその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)に前記反応ガスを任意の時間導入する。その後、前記反応ガスの導入を任意の時間、停止する。この1回の反応ガスの導入および1回の導入停止を1回行うことを1サイクルとして複数サイクルで前記反応ガスの供給を行っていく。このサイクルの回数にも特に制限はなく、前記モニタリングを行って酸素濃度差が0.5体積%以上となるまで行えばよいが、目安としては例えば、1~10回程度、2~7回程度、あるいは3~6回程度であるがこれに制限されない。
【0053】
本好ましい実施形態において、前記導入する際、最も上流側の反応器(図3では反応器41)およびその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)に導入される反応ガスにおける酸素濃度は、それぞれ独立して、0.5体積%(vol%)以上10体積%(vol%)以下、好ましくは0.5体積%(vol%)以上2.5体積%(vol%)以下等)程度である。
【0054】
本好ましい実施形態において、前記導入する際、前記反応ガス中の分子状酸素の濃度を単調増加させる。また、本発明の一実施形態において、前記導入する際、前記反応ガス中の分子状酸素の濃度の変化における最小二乗法で計算した傾きが正である。このように断続的供給するにあたって時間の経過とともに反応ガス中の分子状酸素の濃度を(単調)増加させる(つまり減少させない、または、増加させる)、あるいは、濃度の変化における最小二乗法で計算した傾きが正となる(つまり、経時的な変化の中で濃度が減少する場合があってもよいが平均すると濃度は増加されている)ことによって反応性を良好としたまま連続式とすることができ生産量増加できる。
【0055】
本好ましい実施形態において、前記断続的供給における1回の導入時間を0.5~10分、0.5~5分、あるいは0.5~3分に設定する。かような実施形態であることによって効率的に所定酸素濃度差にせしめることができる。
【0056】
本好ましい実施形態において、前記断続的供給における1回の導入停止時間を0.5~10分、1~10分に設定する。
【0057】
本好ましい実施形態において、所定酸素濃度差となった後、反応ガスの断続的供給を連続的供給に切り替える。本発明の一実施形態において、図3中、反応器41,42の少なくとも一方の入口34から反応ガスの連続的供給をする。
【0058】
本好ましい実施形態において、前記連続式に切り替え後、飽和脂肪族炭化水素をさらに供給することを有する。本発明の一実施形態において、前記連続式に切り替え後、飽和脂肪族炭化水素を順次供給する。本発明の一実施形態において、反応ガスの断続的供給を連続的供給に切り替えた後、飽和脂肪族炭化水素を順次反応器41の入口33から供給する。
【0059】
本好ましい実施形態において、最も上流側の反応器(図3では反応器41)およびその他の1つ以上の反応器(図3では反応器42)を連通させる。このようにしてバッチ式から連続式(連続流通式)を立ち上げて、酸化物を含有する反応液(酸化反応生成物)を得る。ここで、連続式に切り替え後に供給される飽和脂肪族炭化水素は、上記にて反応器(41,42)に添加される飽和脂肪族炭化水素と同じであってもまたは異なるものであってもよいが、同じであることが好ましい。
【0060】
本好ましい実施形態において、酸化反応工程は、大気圧(常圧)下、加圧下または減圧下で行ってもよいが、通常、大気圧(常圧)~30kg/cmG下で行う。また、上記液相酸化反応は、攪拌しながら行ってもよい(反応器が撹拌機を備えていてもよい)。
【0061】
本好ましい実施形態において、反応器の1以上は、例えば、撹拌槽式または気泡塔式であってもよい。
【0062】
上記工程(a-1)により、ボレート化合物が生成するが、それ以外にも未反応の脂肪族炭化水素、遊離のアルコール及びメタホウ酸が存在する。遊離のアルコールは、飽和脂肪族炭化水素と沸点が近いため、両者の分離が困難である。このため、エステル化工程(a-2)にて、このアルコールをオルトホウ酸エステル化してボレート化合物に変換する。
【0063】
すなわち、上記工程(a-2)では、上記工程(a-1)で得られた酸化物に含まれる遊離のアルコールをエステル化(オルトホウ酸エステル化)してボレート化合物を含有する反応液を得る。当該工程では、工程(a-1)で得られる酸化物中に存在する遊離アルコールをメタホウ酸と反応させてボレート化合物に変換するが、通常、酸化物中に余剰のメタホウ酸が存在するので、ここで新たにメタホウ酸を加える必要はないが、新しくメタホウ酸を加える場合もある。
【0064】
上記工程(a-2)では、酸化物を含有する反応液を減圧脱水することにより、酸化反応生成物に含まれる遊離のアルコールがオルトホウ酸エステル化されてボレート化合物に変換できる。この際、オルトホウ酸エステル化処理条件は、特に制限されない。例えば、処理温度は、100~220℃、好ましくは160~180℃等であるが、これに制限されない。なお、本明細書中、エステル化工程における温度は、反応器における液の中に挿入された温度計で測定される温度の値を意味する。本明細書中、全て同様の定義が適用される。処理時間は、5~80分、好ましくは20~60分等であるが、これに制限されない。本明細書中、反応における処理時間は、反応器中の滞留時間を意味する。ここで、滞留時間とは、一般的には、ある有限の空間に流入する物質がその空間内にとどまっている時間を意味する。空間の容積をV(m)、流入物質の体積流量をθ(m/hr)とすると、滞留時間(τ)(時間)は、式:τ(hr)=V/θで表される。処理圧力は、50~200hPa、好ましくは90~170hPa等であるが、これに制限されない。なお、本明細書中、エステル化工程における圧力は、気相部の圧力を測定するために反応器の上部に設置された圧力計で測定される圧力の値を意味する。本明細書中、全て同様の定義が適用される。なお、オルトホウ酸エステル化処理は、窒素気流中で行ってもよい。このような処理条件であれば、酸化反応生成物に含まれるアルコールがより効率よくオルトホウ酸エステル化できる(より高い収率でボレート化合物を生成できる)。
【0065】
(工程(b))
本工程では、上記工程(a)で得られたボレート化合物を含有する反応液を蒸留して未反応の飽和脂肪族炭化水素(留出液)および蒸留残留物(塔底残留液)に分離して、未反応の飽和脂肪族炭化水素を回収する(未反応飽和脂肪族炭化水素回収工程)。留出液と塔底残留液とは沸点差が大きいため、蒸留により、容易に分離できる。
【0066】
本工程において、ボレート化合物を蒸留方法としては、単蒸留(例えば、フラッシュ蒸留)、分子蒸留などの公知の方法が使用できるが、これに特に制限されない。この際、蒸留条件は特に制限されない。蒸留圧力は、例えば、1~50hPa、好ましくは3~25hPaの減圧下で行われるが、これに制限されない。蒸留温度(特に塔底温度)は、130~250℃、好ましくは150~205℃等であるが、これに制限されない。蒸留時間は、1~205分、好ましくは25~120分等であるが、これに制限されない。このような条件であれば、比較的沸点の高い蒸留残留物(所望のボレート化合物を含む)と、比較的沸点の低い成分(主成分としての未反応の飽和脂肪族炭化水素、さらに若干のカルボニル化合物、有機酸エステル、有機酸、オレフイン類等を含む)と、をより効率よく分離できる。
【0067】
本工程で回収された未反応飽和脂肪族炭化水素は、上記酸化反応工程(a-1)に再利用(循環)してもよい。この場合には、例えば、留出液の飽和脂肪族炭化水素を除去した後そのまま上記酸化反応工程(a-1)に再利用しても;本工程で回収した飽和脂肪族炭化水素に含まれるカルボニル化合物及びオレフイン類を水素添加した後、酸化反応工程(a-1)に再利用してもよいが、上記に制限されない。
【0068】
上記に加えてまたは上記に代えて、本工程で回収された未反応飽和脂肪族炭化水素を、上記第一の側面の工程(i)に再利用(循環)してもよい。なお、上記回収工程にて回収された飽和脂肪族炭化水素には、通常、アルコール成分が2質量%以上(例えば、2~5質量%程度)含まれる。このため、本形態の場合には、工程(i)における飽和脂肪族炭化水素のアルコール成分の含有量が2質量%未満(好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%未満)となるように、本回収工程で回収された未反応飽和脂肪族炭化水素を、未使用のまたは上記第一の側面の工程(ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素と混合した後、上記工程(i)に再利用することができる。
【0069】
(工程(c))
本工程では、上記工程(b)で分離された蒸留残留物を加水分解して、オルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離する(加水分解工程)。
【0070】
具体的には、蒸留残留物に熱水を添加して加水分解して、オルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離する。ここで、熱水の温度(液温)は、70~150℃、好ましくは90~100℃等であるが、これに制限されない。また、熱水の添加量は、蒸留残留物に対して、1~20質量倍、好ましくは2~10質量倍等であるが、これに制限されない。加水分解時間は、5~60分間、好ましくは20~30分間等であるが、これに制限されない。このような条件であれば、蒸留残留物を十分加水分解して、オルトホウ酸を含む水層と有機層とをより効率よく分離できる。
【0071】
本工程で分離されたオルトホウ酸を含む水層は、第一の側面に係る方法における脱水工程(i)に再利用してもよい。すなわち、本発明の一実施形態では、本開示の方法は、第一の側面に係る方法を用いて、前記c)で分離したオルトホウ酸からメタホウ酸を製造して、前記a)に循環することをさらに有する。この場合には、上記水層を晶析した後、分離(例えば、遠心分離)することによって、水層からオルトホウ酸を分離し、当該オルトホウ酸を第一の側面に係る方法における脱水工程(i)に再利用(循環)できる。ここで分離したオルトホウ酸を第一の側面に係る方法における脱水工程(i)に再利用する際には、オルトホウ酸中の有機物(脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム等の有機酸、有機酸塩、有機酸エステルなど)の含有量が1質量%未満、より好ましくは0.6質量%以下(下限:0質量%または検出限界以下)であることが好ましい。これにより、脱水反応中の反応器(脱水基)の腐食をより有効に抑制できる。本明細書において、オルトホウ酸中の有機物の含有量は、全有機体炭素計(TOC)を用いて測定された値を採用する。なお、上記方法は一例であり、本発明は上記方法に制限されない。
【0072】
(工程(d))
本工程では、上記工程(c)で分離された有機層をアルカリでケン化処理して、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層とに分離する(ケン化工程)。これにより、有機酸や有機酸エステル中の酸が分離除去できる。
【0073】
ここで、アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが使用できるが、これに制限されない。また、上記アルカリによるケン化処理後に必要であれば、水洗してもよい。ケン化条件は、特に制限されず、従来と同様の条件が同様にして適用できる。例えば、ケン化温度は、120~160℃であり、好ましくは135~145℃等であるが、これに制限されない。ケン化時間は、30~120分間、好ましくは50~90分間等であるが、これに制限されない。このような条件であれば、ケン化処理がより効率よく進行できる。
【0074】
(工程(e))
本工程では、上記工程(d)で分離された粗製アルコール層を精製する。これにより、目的とする第2級アルコールが得られる(精製工程)。
【0075】
ここで、精製方法としては、特に制限されず、公知の方法を同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。例えば、粗製アルコール層を蒸留または分留することによって、精製できる。この際の精製圧力は、1~45hPa、好ましくは4~12hPa等であるが、これに制限されない。このような条件であれば、沸点範囲によって適切に(例えば、沸点範囲95~120℃の留分および沸点範囲120~150℃の留分に)分離できる。上記場合において、沸点範囲95~120℃の留分は、通常、少量の飽和脂肪族炭化水素、カルボニル化合物および1価第一級アルコール(モノアルコール)を含む。また、沸点範囲120~150℃の留分は、微量のカルボニル化合物および第2級アルコール(モノアルコール)を含み、この際、上記第2級アルコールの大部分は所望の1価第2級アルコールである。
【0076】
なお、上記工程(d)と本工程(e)との間に、従来公知の方法に従って、重質分離工程、アルカリ処理工程(特に水酸化カリウム処理工程)および軽質分離工程から選択される少なくとも一工程を行ってもよい。
【実施例0077】
本発明の効果を、以下の例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の例に限定して解釈されるものではなく、各例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる例も本発明の範囲に含まれる。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0078】
実施例1:メタホウ酸の製造
図1に示される容量5Lの撹拌機2付き反応器1に、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物(平均分子量:184、図1中では「NP」と示す)1700gおよびオルトホウ酸 1000gを仕込んで、オルトホウ酸混合物Mを調製した。なお、原料である飽和脂肪族炭化水素の混合物は、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素(n-ドデカン、n-トリデカン及びn-テトラデカン)を炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物の全質量に対して95質量%を超える割合で含む。また、飽和脂肪族炭化水素の混合物中のアルコール成分の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、検出限界以下であった(アルコール成分を実質的に含んでいなかった)。反応器1として、全体がステンレス(SUS316)で形成され、反応器上部3(図1中の斜線部分;ハステロイ被覆部分の高さ/反応器の全高さ=45%)内壁がハステロイ C-22(組成:Ni 57.0質量%、Cr 20.5質量%、Mo 14.2質量%、Fe 2.3質量%、W:3.2質量%、V 0.25質量%、C 0.01質量%)で0.5mmの厚みでライニングされたものを使用した(脱水器の頂上部から脱水器の全高さに対して45%までの反応器上部がハステロイで被覆される)。
【0079】
得られたオルトホウ酸混合物Mを、撹拌機2で45rpmの速度で撹拌しながら、蒸気により160℃まで加熱して、5時間、飽和脂肪族炭化水素の混合物の存在下でオルトホウ酸を分子内脱水させて、β型メタホウ酸に変換した。これにより、β型メタホウ酸630gおよび飽和脂肪族炭化水素1700gを含む混合物2330gを得た(β型メタホウ酸の収率:オルトホウ酸1モルに対して、1モル)(工程(i))。なお、β型メタホウ酸であることはX線結晶構造解析によって確認した。また、上記脱水反応中には水蒸気および飽和脂肪族炭化水素の蒸気(図1中の「水+NP」)が発生するが、これらの蒸気を反応器上部から配管4を通じて系外に抜出し、凝縮器5に導入して、蒸気を凝縮し、凝縮器で凝縮された水および飽和脂肪族炭化水素を分離槽(セトラー)6に導入し、水と飽和脂肪族炭化水素(NP)とを分離し(工程(ii))、水は系外へ抜出し、飽和脂肪族炭化水素(NP)は配管7を通じて反応器1に戻しながら上記脱水反応を行った。なお、分離槽(セトラー)6で分離した後の飽和脂肪族炭化水素(NP)中のアルコール成分の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、検出限界以下であった(アルコール成分を実質的に含んでいなかった)。
【0080】
上記反応終了後、反応器内壁や配管内部を目視にて観察した。その結果、反応器内壁や配管内部には付着物はほとんど確認されなかった。また、反応器内壁(特に反応器上部内壁)には腐食は全く認められなかった。
【0081】
実施例2:第2級アルコールの製造
上記実施例1と同様にして、反応を行い、β型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物を得た。
【0082】
得られた混合物92.5gに炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物(平均分子量:184、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素を炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物の全質量に対して95質量%を超える割合で含む)932.5gを加え、β型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物 1025g(組成:β型メタホウ酸 25gおよび飽和脂肪族炭化水素 1000g)を得た。なお、上記飽和脂肪族炭化水素は、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物は、平均分子量が184であり、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素を炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物の全質量に対して95質量%を超える割合で含む。この混合物を容量3Lの円筒形反応器に入れ、酸素濃度3.5vol%、窒素濃度96.5vol%の混合ガスを1時間当たり430Lの割合で吹き込み、常圧下170℃で2時間、液相酸化反応を行い、酸化物を含有する反応液(酸化反応混合液)を得た(酸化反応工程)。
【0083】
酸化反応後、酸化物を含有する反応液を減圧することで遊離のアルコールを、過剰に添加されていたホウ酸でエステル化してボレート化合物を得た。このエステル化は、105hPa、165℃、60分で行った(エステル化工程)。次に、このボレート化合物(ホウ酸エステル混合物)を200℃、7hPaで60分間、フラッシュ蒸留を行うことで、未反応飽和脂肪族炭化水素を回収した(未反応飽和脂肪族炭化水素回収工程)。次いで、残留液を多量(残留液に対して2質量倍量)の95℃の熱水で20分間加水分解し、オルトホウ酸を含む水層および有機層とに分離した(加水分解工程)。得られた有機層を水酸化ナトリウムを用いて140℃で70分間ケン化処理および水洗を行い、有機酸および有機酸エステルを除去した(ケン化工程)。この有機層を7hPaで分留し、第一留分として沸点範囲95~120℃留分および第二留分として沸点範囲120~150℃留分を得た(精製工程)。ここで、第一留分(沸点範囲95℃以上120℃未満の留分)は、少量の飽和脂肪族炭化水素、カルボニル化合物および1価第1級アルコール(モノアルコール)の混合物であった。第二留分(沸点範囲120~150℃の留分)は、微量のカルボニル化合物および第2級アルコール(モノアルコール)の混合物であり、この際、第2級アルコールの大部分は1価第2級アルコールであった。
【0084】
実施例3:第2級アルコールの製造
上記実施例2と同様にして、操作を行い、オルトホウ酸を含む水層および有機層とに分離した(加水分解工程)。次に、上記にて得られた水層を晶析し、遠心して、オルトホウ酸を分離した。上記にて得られたオルトホウ酸中のアルコール成分の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、検出限界以下であった(アルコール成分を実質的に含んでいなかった)。また、上記にて得られたオルトホウ酸中の有機物(有機酸等)の量を全有機体炭素計(TOC)を用いて測定したところ、0.6質量%であった。
【0085】
上記実施例1において、上記で得られたオルトホウ酸を代わりに使用する以外は、実施例1と同様の操作を行い、β型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物を得た。ここで、分離槽(セトラー)6で分離した後の飽和脂肪族炭化水素(NP)中のアルコール成分の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、検出限界以下であった(アルコール成分を実質的に含んでいなかった)。また、脱水反応終了後、反応器内壁や配管内部を目視にて観察した。その結果、反応器内壁や配管内部には付着物はほとんど確認されなかった。また、反応器内壁(特に反応器上部内壁)には腐食はほとんど認められなかった。上記結果から、第2級アルコール製造工程中で回収したオルトホウ酸(回収オルトホウ酸)は脱水器の腐食を招く可能性のある有機酸等の有機物を含むが、気相部を耐食性に優れるハステロイでライニングされた反応器を使用することで、このような回収オルトホウ酸をメタホウ酸の製造に使用できると考察される。
【0086】
以上の結果から、本発明の方法によれば、実質的に完全にメタホウ酸に変換するまで連続して反応を行っても、反応器内壁や配管内部に付着物が形成しないことが確認された。また、上記結果から、本発明の方法によれば、飽和脂肪族炭化水素(NP)をスムーズに循環させながら、攪拌動力の増加を伴うことなく、脱水反応を安定して行うことができると考察される。
【0087】
次に、上記実施例2において、上記で得られたβ型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物を代わりに使用する以外は、実施例2と同様の操作を行い、第2級アルコールを製造した。
【0088】
比較例1
炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物(平均分子量:184)1000gおよびメタホウ酸25gを、容量3Lの円筒形反応器に入れ、酸素濃度3.5vol%、窒素濃度96.5vol%の混合ガスを1時間当たり430Lの割合で吹き込み、常圧下170℃で2時間酸化反応を行い、酸化反応混合液を得た(酸化反応工程)。なお、原料である飽和脂肪族炭化水素の混合物は、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素(n-ドデカン、n-トリデカン及びn-テトラデカン)を混合物の全質量に対して95質量%を超える割合で含む。
【0089】
この酸化反応混合液を、105hPa、165℃にて、60分間処理して、それに含まれるアルコールをオルトホウ酸エステル化して、ボレート化合物(ホウ酸エステル混合物)を得た(エステル化工程)。次に、このボレート化合物(ホウ酸エステル混合物)を200℃(塔底温度)で7hPaで60分間、フラッシュ蒸留し、未反応飽和脂肪族炭化水素を回収した(未反応飽和脂肪族炭化水素回収工程)。ここで回収された未反応飽和脂肪族炭化水素(回収NP)中のアルコール成分の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3.5質量%であった。また、この回収NPの水酸基価をJIS K1557-1(2007)記載の方法に準じて測定したところ、9.0mgKOH/gであった。
【0090】
図1に示される容量5Lの撹拌機2付き反応器1に、上記で得られた回収NP(図1中の「NP」)1700gおよびオルトホウ酸 1000gを仕込んで、オルトホウ酸混合物Mを調製した。なお、反応器1として、全体がステンレス(SUS316)で形成されたものを使用した。
【0091】
得られたオルトホウ酸混合物Mを、撹拌機2で45rpmの速度で撹拌しながら、蒸気により160℃まで加熱して、5時間、飽和脂肪族炭化水素の混合物の存在下でオルトホウ酸を分子内脱水させて、β型メタホウ酸に変換した。これにより、β型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物を得た。なお、上記脱水反応中には水蒸気および飽和脂肪族炭化水素の蒸気(図1中の「水+NP」)が発生するが、これらの蒸気を反応器上部から配管4を通じて系外に抜出し、凝縮器5に導入して、蒸気を凝縮し、凝縮器で凝縮された水および飽和脂肪族炭化水素を分離槽(セトラー)6に導入し、水と飽和脂肪族炭化水素(NP)とを分離し、水は系外へ抜出し、飽和脂肪族炭化水素(NP)は配管7を通じて反応器1に戻しながら上記脱水反応を行った。
【0092】
上記反応終了後、反応器内壁や配管内部を目視にて観察した。その結果、反応器内壁や配管内部にかなり付着物が堆積していることが確認された。また、反応器上部内壁に腐食が認められた。
【0093】
酸化反応後に回収された飽和脂肪族炭化水素(回収NP)を使用した比較例1では、反応器内壁や配管内部に付着物が形成した。このような付着物は攪拌動力の増加や配管の閉塞を招く可能性がある。このため、付着物を除去するため、反応を停止する必要が生じ、特に大量生産の観点からは好ましくない。また、回収された飽和脂肪族炭化水素(回収NP)はアルコール成分をかなり含んでいることから、上記付着物の形成はこのアルコール成分がオルトホウ酸と反応してボレート化合物を生成することによるものであると推察される。
【0094】
実施例4:メタホウ酸の製造
上記比較例1と同様にして、操作を行い、回収NP中のアルコール成分の含有量が3.5質量%である未反応飽和脂肪族炭化水素(回収NP)を回収した(未反応飽和脂肪族炭化水素回収工程)。
【0095】
上記にて得られた回収NPを、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物(平均分子量:184)(新NP)と、アルコール成分の含有量が1.5質量%となるように、回収NPと新NPとの混合比(回収NP:新NPとの混合質量比)が3:4の割合で混合して、飽和脂肪族炭化水素混合物(NP1)を得た。このNP1の水酸基価は4.0mgKOH/gであった。
【0096】
実施例1において、上記で得られたNP1(アルコール成分の含有量=1.5質量%)をNPの代わりに使用する以外は、同様の操作を行った。また、分離槽(セトラー)6で分離した後の飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、1.5質量%であった。
【0097】
上記反応終了後、反応器内壁や配管内部を目視にて観察した。その結果、反応器内壁や配管内部には付着物はほとんど確認されなかった。なお、目視による付着物の量は、実施例1の方が少なかった。また、反応器内壁(特に反応器上部内壁)には腐食はほとんど認められなかった。
【0098】
上記実施例1の結果との比較から、メタホウ酸の製造に使用する飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が付着物の形成の大きな原因の一つであると考察される。また、飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量を2質量%未満(特に1.5質量%以下)に制御することによって、反応器内壁や配管内部への付着物の形成を有効に抑制できると考察される。
【0099】
比較例2:メタホウ酸の製造
上記比較例1と同様にして、操作を行い、回収NP中のアルコール成分の含有量が3.5質量%である未反応飽和脂肪族炭化水素(回収NP)を回収した(未反応飽和脂肪族炭化水素回収工程)。
【0100】
上記にて得られた回収NPを、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物(平均分子量:184)(新NP)と、アルコール成分の含有量が2.5質量%となるように、回収NPと新NPとの混合比(回収NP:新NPとの混合質量比)が5:2の割合で混合して、飽和脂肪族炭化水素混合物(NP2)を得た。このNP2の水酸基価は6.8mgKOH/gであった。
【0101】
図1に示される容量5Lの撹拌機2付き反応器1に、上記で得られたNP2(図1中の「NP」)1700gおよびオルトホウ酸(回収オルトホウ酸) 1000gを仕込んで、オルトホウ酸混合物Mを調製した。なお、反応器1として、全体がステンレス(SUS316)で形成されたものを使用した。
【0102】
得られたオルトホウ酸混合物Mを、撹拌機2で45rpmの速度で撹拌しながら、蒸気により160℃まで加熱して、5時間、飽和脂肪族炭化水素の混合物の存在下でオルトホウ酸を分子内脱水させて、β型メタホウ酸に変換した。これにより、β型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物を得た。なお、上記脱水反応中には水蒸気および飽和脂肪族炭化水素の蒸気(図1中の「水+NP」)が発生するが、これらの蒸気を反応器上部から配管4を通じて系外に抜出し、凝縮器5に導入して、蒸気を凝縮し、凝縮器で凝縮された水および飽和脂肪族炭化水素を分離槽(セトラー)6に導入し、水と飽和脂肪族炭化水素(NP)とを分離し、水は系外へ抜出し、飽和脂肪族炭化水素(NP)は配管7を通じて反応器1に戻しながら上記脱水反応を行った。
【0103】
上記反応終了後、反応器内壁や配管内部を目視にて観察した。その結果、反応器内壁や配管内部に付着物が堆積していることが確認された。なお、目視による付着物の量は、比較例1の方が多かった。また、反応器上部内壁に腐食が認められた。
【0104】
上記比較例1の結果との比較から、酸化反応後に回収された飽和脂肪族炭化水素(回収NP)は、別途新鮮な飽和脂肪族炭素水素と組み合わせて使用しても、飽和脂肪族炭素中のアルコール含有量が2質量%以上であると、反応器内壁や配管内部に付着物が形成してしまうことがわかる。このような付着物は攪拌動力の増加や配管の閉塞を招く可能性がある。このため、付着物を除去するため、反応を停止する必要が生じ、特に大量生産の観点からは好ましくない。
【0105】
実施例5:第2級アルコールの製造
上記実施例1と同様にして、反応を行い、β型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物を得た。
【0106】
得られた混合物74gに炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物(平均分子量:184、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素を炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物の全質量に対して95質量%を超える割合で含む)1946gを加え、β型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物 2020g(組成:β型メタホウ酸 20gおよび飽和脂肪族炭化水素 2000g)を得た。なお、上記飽和脂肪族炭化水素は、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物は、平均分子量が184であり、炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素を炭素数12~14の飽和脂肪族炭化水素の混合物の全質量に対して95質量%を超える割合で含む。
【0107】
図3に示されるように直列に繋いだ2つの反応器1の各反応器(41,42)に、上記にて得られたβ型メタホウ酸および飽和脂肪族炭化水素を含む混合物 1010g、1010gをそれぞれ張り込んだ。なお、上記混合物は、メタホウ酸を、飽和脂肪族炭化水素に対してそれぞれ1質量%、1質量%で含む。
【0108】
各反応器(41,42)の内温を全て170℃に昇温した。その後、循環ガス(窒素ガス:170℃)を、入口34を経由して各反応器(41,42)に導入した。
【0109】
次いで、各反応器(41,42)に対して反応ガスの導入および導入停止を繰り返す断続的供給を実施した。
【0110】
より具体的には、各反応器(41,42)に導入する反応ガスの温度はいずれも170℃となるように調整した。またこの際の各反応器(41,42)に導入される反応ガスの酸素濃度は、それぞれ0.5~10体積%、0.5~10体積%となるように調整した。この際、各反応器(41,42)への反応ガスの1回の導入時間は1~3分に設定した。また反応ガスの1回の導入停止の時間も1~3分に設定した。なお、前記導入は、前記反応ガス中の分子状酸素の濃度の変化における最小二乗法で計算した傾きが正となるように行った。
【0111】
そして、前記断続的供給は、各反応器(41,42)の入口34および出口35における酸素濃度差のモニタリングを行いながら実施した。各反応器(41,42)に反応ガスを最初に導入してから1時間で所定酸素濃度差が1.0体積%(つまり、0.5体積%以上)となったことを確認した。
【0112】
上記の確認後、反応ガスの断続的供給を連続的供給に切り替え、NPを順次50mL/minで、反応器41の入口33から供給し、各反応器(41,42)を連通し、連続式(連続流通式)で酸化反応工程を行い、酸化物(酸化反応混合液)を得た。
【0113】
酸化反応後、酸化物を含有する反応液を減圧することで遊離のアルコールを、過剰に添加されていたホウ酸でエステル化してボレート化合物を得た。このエステル化は、105hPa、165℃、60分で行った(エステル化工程)。次に、このボレート化合物(ホウ酸エステル混合物)を200℃、7hPaで60分間、フラッシュ蒸留を行うことで、未反応飽和脂肪族炭化水素を回収した(未反応飽和脂肪族炭化水素回収工程)。次いで、残留液を多量(残留液に対して2質量倍量)の95℃の熱水で20分間加水分解し、オルトホウ酸を含む水層および有機層とに分離した(加水分解工程)。得られた有機層を水酸化ナトリウムを用いて140℃で70分間ケン化処理および水洗を行い、有機酸および有機酸エステルを除去した(ケン化工程)。この有機層を7hPaで分留し、第一留分として沸点範囲95℃以上120℃未満の留分および第二留分として沸点範囲120~150℃留分を得た(精製工程)。ここで、第一留分(沸点範囲95℃以上120℃未満の留分)は、少量の飽和脂肪族炭化水素、カルボニル化合物および1価第1級アルコール(モノアルコール)の混合物であった。第二留分(沸点範囲120~150℃の留分)は、微量のカルボニル化合物および第2級アルコール(モノアルコール)の混合物であり、この際、第2級アルコールの大部分は1価第2級アルコールであった。
【0114】
この方法で連続式(連続流通式)で立ち上げたことによって一日における第2級アルコールの生産量は4kgとなったため、酸化工程の反応性が良好と判断した。
【0115】
なお、本実施形態では「直列」で実験を行ったが、「並列」にすることによっても同様の結果を得ることを確認している。
【符号の説明】
【0116】
1…反応器、
2…撹拌機、
3…反応器上部、
4、7…配管、
5…凝縮器、
6…分離槽(セトラー)、
M…混合物、
30…(複数の)反応器、
41…(1つの)反応器、
42…(1つの)反応器、
32…配管、
33…飽和脂肪族炭化水素およびメタホウ酸が入る入口、
34…反応ガス、循環ガスが入る入口、
35…反応ガス、循環ガスが出る出口。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)炭素数10~30の直鎖構造の飽和脂肪族炭化水素の存在下でオルトホウ酸を脱水器で脱水し、メタホウ酸、飽和脂肪族炭化水素および水を含む混合物を得、
ii)前記飽和脂肪族炭化水素および水を前記混合物から留去した後、飽和脂肪族炭化水素と水とを分離し、
iii)前記ii)で分離した飽和脂肪族炭化水素を前記i)に戻す、
ことを有し、
前記i)において、前記飽和脂肪族炭化水素中のアルコール成分の含有量が、2質量%未満である、メタホウ酸の製造方法。
【請求項2】
前記脱水器の少なくとも気相部はハステロイで形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気相部は、前記脱水器の頂上部から、前記反応器の全高さに対して、60%までの範囲の部分である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記i)において、前記飽和脂肪族炭化水素と前記オルトホウ酸との混合比(飽和脂肪族炭化水素:オルトホウ酸の混合質量比)は、0.5~5:1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
a)メタホウ酸の存在下で、炭素数10~30の直鎖構造の飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガスで液相酸化およびエステル化してボレート化合物を含有する反応液を得、
b)前記ボレート化合物を含有する反応液を蒸留して未反応の飽和脂肪族炭化水素および蒸留残留物に分離し、
c)前記蒸留残留物を加水分解してオルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離し、
d)アルカリを用いて前記有機層をケン化処理して、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層とに分離し、
e)前記粗製アルコール層を精製して第2級アルコールを得ることを有する、第2級アルコールの製造方法であって、
前記工程a)において、前記メタホウ酸は、請求項1~のいずれか1項に記載の方法を用いて製造される、方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法を用いて、前記c)で分離したオルトホウ酸からメタホウ酸を製造して、前記a)に循環することをさらに有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
a-1)メタホウ酸、炭素数10~30の直鎖構造の飽和脂肪族炭化水素および分子状酸素含有ガスを反応器に供給して、メタホウ酸の存在下で、飽和脂肪族炭化水素を分子状酸素含有ガスで液相酸化し、酸化物を含有する反応液を得、
a-2)前記酸化物をエステル化してボレート化合物を含有する反応液を得、
b)前記ボレート化合物を含有する反応液を蒸留して未反応の飽和脂肪族炭化水素および蒸留残留物に分離し、
c)前記蒸留残留物を加水分解してオルトホウ酸を含む水層と有機層とに分離し、
d)アルカリを用いて前記有機層をケン化処理して、アルカリ水溶液層と粗製アルコール層とに分離し、
e)前記粗製アルコール層を精製して第2級アルコールを得ることを有する、第2級アルコールの製造方法であって、
前記工程a-1)において、前記メタホウ酸は、請求項1~のいずれか1項に記載の方法を用いて製造され、
前記反応器は、バッチ式および連続式に切り替え可能な2以上の反応器からなり、
前記2以上の反応器の各反応器に飽和脂肪族炭化水素を添加することを有し、
前記2以上の反応器の最も上流側の反応器にメタホウ酸を添加することを有し、
前記最も上流側の反応器で前記酸化物をバッチ式で得ることを開始し、当該最も上流側の反応器の入口および出口における酸素濃度差のモニタリングを行って当該酸素濃度差が0.5体積%以上になったら、連続式に切り替えることを有する、第2級アルコールの製造方法。
【請求項8】
第2級アルコールの製造過程で用いられるメタホウ酸製造用の反応器であって、前記反応器は、前記反応器の頂上部から前記反応器の全高さに対して60%までの範囲の気相部を有し、前記気相部がハステロイで形成される、反応器。