IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社やまびこの特許一覧

<>
  • 特開-2ストロークエンジン 図1
  • 特開-2ストロークエンジン 図2
  • 特開-2ストロークエンジン 図3
  • 特開-2ストロークエンジン 図4
  • 特開-2ストロークエンジン 図5
  • 特開-2ストロークエンジン 図6
  • 特開-2ストロークエンジン 図7
  • 特開-2ストロークエンジン 図8
  • 特開-2ストロークエンジン 図9
  • 特開-2ストロークエンジン 図10
  • 特開-2ストロークエンジン 図11
  • 特開-2ストロークエンジン 図12
  • 特開-2ストロークエンジン 図13
  • 特開-2ストロークエンジン 図14
  • 特開-2ストロークエンジン 図15
  • 特開-2ストロークエンジン 図16
  • 特開-2ストロークエンジン 図17
  • 特開-2ストロークエンジン 図18
  • 特開-2ストロークエンジン 図19
  • 特開-2ストロークエンジン 図20
  • 特開-2ストロークエンジン 図21
  • 特開-2ストロークエンジン 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079299
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】2ストロークエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 25/14 20060101AFI20220519BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
F02B25/14
F02F7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190410
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 寿人
(72)【発明者】
【氏名】白井 健
(72)【発明者】
【氏名】小倉 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 鉄也
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024DA13
(57)【要約】
【課題】2ストロークエンジンにおいて気筒内の掃気効率を向上させる。
【解決手段】気筒に含まれる複数の掃気通路14のうち、少なくとも一つの掃気ポート16に連なる掃気通路が可変掃気通路14(ch)を構成する。可変掃気通路14(ch)の上端部は、これに連なる可変掃気ポート16(ch)から吐出される掃気ガスの水平面上での吐出方向を規定するガイド面50を有する。ガイド面50は、掃気ガスの第1の吐出方向を規定する第1のガイド部50(H)と、掃気ガスの第2の吐出方向を規定する第2のガイド部50(L)とを少なくとも備えている。掃気行程において、第1、第2のガイド部50(H)、50(L)によって、掃気ガスの吐出方向が水平面上において第1の吐出方向から第2の吐出方向に変化する、
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に配置されて上死点と下死点との間を往復動し且つ燃焼室を画成するピストンと、
前記シリンダに開口し且つ前記ピストンによって開閉される、前記燃焼室内の既燃ガスを排出するための排気ポートと、
新気を受け入れて、該新気を前記ピストンの下降動作によって予圧縮するクランク室と、
掃気行程において前記燃焼室と前記クランク室とに連通し且つ前記クランク室で予圧縮した新気を掃気ガスとして前記燃焼室に吐出するための掃気ポートを備え、該掃気ポートが前記ピストンによって開閉される複数の掃気通路とを含み、
前記複数の掃気通路のうち、少なくとも一つの前記掃気ポートに連なる前記掃気通路が可変掃気通路を構成し、
該可変掃気通路の上端部は、これに連なる可変掃気ポートから吐出される前記掃気ガスの水平面上での吐出方向を規定するガイド面を有し、
該ガイド面が、前記掃気ガスの第1の吐出方向を規定する第1のガイド部と、前記掃気ガスの第2の吐出方向を規定する第2のガイド部とを少なくとも備え、
掃気行程において、前記第1、第2のガイド部によって、前記掃気ガスの吐出方向が水平面上において第1の吐出方向から第2の吐出方向に変化する、2ストロークエンジン。
【請求項2】
前記ガイド面が、上方ガイド部と下方ガイド部を有し、
上方ガイド部と下方ガイド部との間に段部を有し、
前記第1吐出方向が前記上方ガイド部で規定され、
前記第2吐出方向が前記下方ガイド部で規定され、
前記上方ガイド部と前記下方ガイド部との境界を構成する前記段部が前記可変掃気ポートの上下方向中間部分に位置している、請求項1に記載の2ストロークエンジン。
【請求項3】
前記ガイド面が前記上方ガイド部と前記下方ガイド部との間に、前記掃気ガスの第3の吐出方向を規定する中間ガイド部を有する、請求項1に記載の2ストロークエンジン。
【請求項4】
前記ガイド面が上下方向に多段のガイド部で構成されている、請求項1に記載の2ストロークエンジン。
【請求項5】
前記複数の掃気ポートのうち、一つの掃気ポートに連なる前記掃気通路が可変掃気通路である、請求項1~4のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン。
【請求項6】
前記エンジンが4つの掃気ポートを有し、
該4つの掃気ポートのうち、少なくとも1つの掃気ポートに連なる前記掃気通路が前記可変掃気通路である、請求項1~5のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン。
【請求項7】
前記複数の掃気ポートのうち、少なくとも一つの掃気ポートを除く掃気ポートに連なる前記掃気通路が前記可変掃気通路である、請求項1~5のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン。
【請求項8】
前記複数の可変掃気ポートのうち、互いに対向する可変掃気ポートから吐出される掃気ガスが衝突しないように、該互いに対向する可変掃気ポートから吐出される掃気ガスの指向方向が設定されている、請求項6又は7に記載の2ストロークエンジン。
【請求項9】
前記エンジンに含まれる全ての掃気ポートが同じタイミングで開放される、請求項1~8のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン。
【請求項10】
前記エンジンに含まれる前記複数の掃気通路のうち少なくとも前記可変掃気通路の前記ガイド面が、シリンダブロックに後付けされる掃気通路形成キャップによって形成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン。
【請求項11】
前記2ストロークエンジンが反転掃気式エンジンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン。
【請求項12】
前記2ストロークエンジンが層状掃気式エンジンである、請求項1~11のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2ストロークエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な2ストロークエンジンは、掃気行程において、クランク室で予圧縮された混合気を使って気筒内の掃気が行われる。2ストロークエンジンは、クランク室と燃焼室とに連通する掃気通路を備えている。掃気通路の上端開口つまり掃気ポートは、上死点と下死点との間を往復動するピストンによって開閉される。また、このピストンの動作によって排気ポートが開閉される。
【0003】
燃焼行程でピストンが下降すると、ピストンの下死点近傍で排気ポートと掃気ポートが開口され、掃気ポートが開くと同時に気筒内の掃気が開始される。掃気ポートは掃気通路を介してクランク室に連通しており、掃気ポートが開くと同時に、予圧縮された混合気が掃気ガスとして掃気ポートから気筒内に吐出される。
【0004】
クランク室で混合気を予圧縮する従来より周知の2ストロークエンジンでは、掃気行程で発生する「混合気の吹き抜け」の問題を有している。「混合気の吹き抜け」は、掃気ポートから吐出された混合気つまり掃気ガスが掃気に貢献することなく直接的に排気ポートから排出される現象である。この吹き抜け現象は、未燃焼の混合気が排出されてしまうため環境を汚染させてしまうだけでなく給気効率(ηtr)が低下して燃料消費率が悪化する。
【0005】
混合気の吹き抜け問題に対処するために、掃気の方法として「反転掃気」が提案され、現在の2ストロークエンジンの主流となっている。「反転掃気」は、掃気ポートから吐出される混合気、つまり掃気ガスを、排気ポートとは反対側である吸気側のシリンダ壁面に指向させることによって行われる。反転掃気式2ストロークエンジンは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1から分かるように、掃気ポートから吐出された掃気ガスは、吸気側のシリンダ壁面に差し向けられる。そして、その後、掃気ガスは気筒内で反転して排気ポートに向かって進む。
【0006】
ここに、特許文献1は、掃気通路の上端部の断面形状を、掃気ポートを一辺とする略三角形にすることで、掃気ポートから吐出される掃気ガスを吸気側のシリンダ壁面に差し向けることを提案している。
【0007】
環境問題が叫ばれる中、排気ガス規制が厳しくなっている。これに応えるために、混合気の吹き抜けを防止するため様々な提案が行われている。掃気ポートはピストンの下降動作に伴って開き、そして有効開口面積が大きくなる。特許文献2、3は、この過程で、掃気ポートから吐出される混合気つまり掃気ガスの方向を変化させる発明を開示している。
【0008】
説明を分かり易くするために、ピストンの上下動作に沿って広がる面を「垂直面」と呼び、これと直交する横方向に広がる面を「水平面」と呼ぶ。
【0009】
特許文献2は、掃気通路の上端部分つまり掃気ポート近傍の部分の天井壁面が三次元形状を有し、三次元形状の天井壁面によって、掃気ガスの吐出方向を垂直面上で変化させる発明を開示している。この発明によれば、掃気ポートが開き始めたときには掃気ガスが上方に差し向けられる。更にピストンが下降して掃気ポートの有効開口面積が拡大するに従って掃気ガスが徐々に下方に差し向けられる。
【0010】
特許文献3は、掃気通路の上端部分つまり掃気ポート近傍の部分の天井壁面が、気筒の吸気側の第1の面と、排気側の第2の面とに区分され、吸気側の第1の面は、排気側の第2の面に比べて、掃気ガスを上方に差し向ける相対的に大きな傾斜角度を有する発明を開示している。この掃気通路の形状に関連して掃気ポートの上縁が段付き形状を有し、掃気ポートの上縁において、吸気側の第1ハーフ上縁が、排気側の第2ハーフ上縁に比べて上方に位置している。
【0011】
特許文献3の発明によれば、ピストンが下降して掃気ポートの吸気側の第1ハーフ上縁に達して掃気ポートが開き始めると、掃気ポートから吐出される混合気つまり掃気ガスが相対的に上方に差し向けられる。更にピストンが下降して、掃気ポートの排気側の第2ハーフ上縁に達すると、それ以降は、傾斜角度が相対的に小さい上記第2の面によって、掃気ポートから吐出される掃気ガスが相対的に下方に差し向けられる。すなわち、特許文献3に開示の発明は、特許文献2と同様に、掃気ガスの吐出方向を垂直面上で変化させる発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】JP特許第5553552号公報
【特許文献2】JP特開昭60―145417号公報
【特許文献3】JP特開2001―182541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
排気ガス規制が益々厳しくなるなかで、未燃焼ガスの排出を可及的に防ぎ、かつエンジン出力を向上させるためには、給気効率(ηtr)の更なる向上を目指す必要がある。この観点から特許文献2、3の提案を検討すると、燃焼室を平面視したときに、掃気ポートから吐出される掃気ガスが行き渡らないデッドエリアが発生する可能性があり、更なる改善が期待される。
【0014】
本発明は、2ストロークエンジンにおいて、気筒内の掃気効率の向上を目的とする。本発明は反転掃気式エンジンに好適に適用することができる。
【0015】
尚、2ストロークエンジンにおいて、より精密な燃料コントロールを目的として、気化器に代えて燃料噴射装置を採用したものがある。これらのエンジンにおける燃料噴射装置の配置に関し、(1)燃料噴射装置をエンジンの吸気系に配置する,(2)燃料噴射装置をクランク室に配置する等の他に、(3)燃料噴射装置を気筒に配置することが考えられる。燃料噴射装置を気筒に配置した形式のエンジンは「筒内直噴エンジン」と呼ばれている。筒内直噴2ストロークエンジンにおいて、クランク室にはエアが供給され、このエアはクランク室で予圧縮される。そして、予圧縮されたエアは掃気ガスとして掃気通路、掃気ポートを通じて気筒内に導入されて気筒内の掃気に用いられる。
【0016】
本発明の説明において、掃気通路、掃気ポートを通じて気筒内に掃気ガスとして供給される混合気又はエアを総称して、用語「新気」を使用する。つまり、用語「新気」は混合気とエアのいずれか、またはそれらが順に気筒内に流入するものを含む。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の技術的課題は、本発明にあっては、
シリンダ内に配置されて上死点と下死点との間を往復動し且つ燃焼室を画成するピストンと、
前記シリンダに開口し且つ前記ピストンによって開閉される、前記燃焼室内の既燃ガスを排出するための排気ポートと、
新気を受け入れて、該新気を前記ピストンの下降動作によって予圧縮するクランク室と、
掃気行程において前記燃焼室と前記クランク室とに連通し且つ前記クランク室で予圧縮した新気を掃気ガスとして前記燃焼室に吐出するための掃気ポートを備え、該掃気ポートが前記ピストンによって開閉される複数の掃気通路とを含み、
前記複数の掃気通路のうち、少なくとも一つの前記掃気ポートに連なる前記掃気通路が可変掃気通路を構成し、
該可変掃気通路の上端部は、これに連なる可変掃気ポートから吐出される前記掃気ガスの水平面上での吐出方向を規定するガイド面を有し、
該ガイド面が、前記掃気ガスの第1の吐出方向を規定する第1のガイド部と、前記掃気ガスの第2の吐出方向を規定する第2のガイド部とを少なくとも備え、
掃気行程において、前記第1、第2のガイド部によって、前記掃気ガスの吐出方向が水平面上において第1の吐出方向から第2の吐出方向に変化する、2ストロークエンジンを提供することにより達成される。
【0018】
本発明によれば、特許文献2、3の発明で発生する可能性がある上記のデッドエリアの発生を抑えることができ、これにより掃気行程において、掃気ガスによる気筒内の効果的なガス交換を実現することができる。
【0019】
本発明は、典型的には、反転掃気式エンジンに適用される。本発明の好ましい実施形態では、前記ガイド面が上下に段付きの面で構成される。段付き面は上下2段であってもよいし、3段でもあってもよく、3段よりも多段であってもよい。また、前記ガイド面は湾曲した無段階の面で構成してもよい。
【0020】
本発明の好ましい実施例では、掃気ポートに連なる掃気通路の上端部の前記ガイド面が例えば上下2段の場合、ガイド面の上方部分で形成される第1ガイド部で規定される掃気ガスの第1吐出方向が、下方部分で形成される第2ガイド部で規定される掃気ガスの第2吐出方向よりも吸気側に差し向けられる。すなわち、水平面上において、第1吐出方向が、第2吐出方向よりもシリンダボア中心から相対的に大きく離れる方向に差し向けられる。好ましくは、第1吐出方向がシリンダの内壁の接線方向に差し向けられる。
【0021】
本発明の作用効果及び他の目的は以下の好ましい実施例の詳しい説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例の単気筒2ストロークエンジンの概略図である。
図2】実施例のエンジンを含む2ストロークエンジンの吸気系の概略図である。
図3図1のA―A線に沿った断面図である。
図4図1のB―B線に沿った断面図である。
図5】可変掃気通路の上端部に形成されたガイド面を説明するための模式図である。
図6図5のVI―VI線に沿った断面図である。
図7】実施例のエンジンのシリンダブロックの斜視図である。
図8図7のVIII―VIII線に沿った断面図である。
図9図7のIX―IX線に沿った断面図である。
図10図5に図示のガイド面の変形例である3段のガイド面を説明するための模式図である。
図11図10のXI―XI線に沿った断面図である。
図12図5に図示のガイド面の変形例である無段のガイド面を説明するための模式図である。
図13図12のXIII―XIII線に沿った断面図である。
図14図3に対応した図であり、4流掃気の気筒の排気側第2掃気ポートと対向する排気側第1掃気ポートに連なる掃気通路の上端部に本発明を適用した例を説明するための図である。
図15】排気側第2掃気ポートに連なる掃気通路の上端部と、吸気側第1掃気ポートに連なる掃気通路の上端部とに本発明を適用した例を説明するための図である。
図16】気筒の片側に位置する排気側第2掃気ポートに連なる掃気通路の上端部と、吸気側第2掃気ポートに連なる掃気通路の上端部とに本発明を適用した例を説明するための図である。
図17】気筒の排気側において、互いに対向する第1、第2の掃気ポートの各々に連なる掃気通路の上端部に本発明を適用した例を説明するための図である。
図18】吸気側第1掃気ポートに連なる掃気通路を除いた3つの掃気ポートに連なる掃気通路の上端部に本発明を適用した例を説明するための図である。
図19】2流掃気の気筒の片側に位置する掃気ポートに連なる掃気通路の上端部に本発明を適用した例を説明するための図である。
図20】2流掃気の気筒の両側に位置する掃気ポートに夫々連なる掃気通路の上端部に本発明を適用した例を説明するための図である。
図21】ガイド面を第1、第2の分割面で構成した例を説明するための図であり、第1、第2の分割面のシリンダに向かって成す角が鋭角である。
図22】ガイド面を第1、第2の分割面で構成した例を説明するための図であり、第1、第2の分割面のシリンダに向かって成す角が鈍角である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0023】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。図1は、単気筒2ストロークエンジンシステム100に含まれる実施例のエンジン2の概略図である。エンジン2は、チェーンソー、ブロワ、刈払機などの携帯作業機に好適に適用される。図1を参照して、図示のエンジン2は、シリンダ4に嵌挿されたピストン6を有し、ピストン6は、上死点と下死点との間を往復動する。ピストン6によって画成される燃焼室8には点火プラグ10が配設されている。
【0024】
燃焼室8とクランク室12とは、掃気行程において、掃気通路14によって連通される。掃気通路14は、その上端に矩形の掃気ポート16を有し、掃気ポート16はピストン6によって開閉される。エンジン2は4つの掃気ポート16を有し、4つの掃気ポートの開放タイミングが同期するように、矩形の掃気ポート16の上端縁が同じ高さレベルに配置されている。各掃気ポート16の下端はクランク室12に開放し、この開放した下端は掃気ガス入り口18を構成している。4つの掃気ポート16を備えた2ストロークエンジンは「4流掃気エンジン」と呼ばれている。
【0025】
参照符号20は吸気ポートを示し、吸気ポート20を通じてクランク室12に混合気が供給される。参照符号22は排気ポートを示す。排気ポート22は吸気ポート20とは反対側に配置されている。エンジン2はピストンバルブ式エンジンである。すなわち、吸気ポート20及び排気ポート22はピストン6によって開閉される。そして、吸気ポート20を通じて混合気がクランク室12に供給され、他方、排気ポート22を通じて燃焼室8の既燃ガスが排出される。
【0026】
図2は、2ストロークエンジンシステム100に含まれる吸気系24の概略図である。吸気系24は、その上流端にエアクリーナ26を有し、エアクリーナ26で浄化したエアが気化器28に供給される。気化器28には燃料タンク30から燃料が供給されて、気化器28によって混合気が生成される。
【0027】
エンジン2は層状掃気式エンジンである。気化器28は、混合気を生成する第1通路28aと、エアクリーナ26から受け取ったエアが通過する第2通路28bとを有している。混合気生成通路である第1通路28aは、クランク室12に通じる混合気通路32の一部を構成し、気化器28で生成された混合気は混合気通路32を通じてクランク室12に供給され、そしてクランク室12で予圧縮される。
【0028】
エアが通過する第2通路28bは、掃気通路14に先導エアを供給する先導エア通路34の一部を構成する。ピストン6は、その周面にピストン溝6aを有している。エアクリーナ26から受け取った先導エアは、ピストン溝6aを介して、掃気通路14の上端部に供給される。ピストン溝6aはUS2016/0376979A1に詳しく説明されていることから、ピストン溝6aに関する説明は省略する。ピストン溝6aに代えてリードバルブを採用してもよい。リードバルブに関してはJP特開2000―337154号公報に詳しく説明されている。
【0029】
層状掃気式のエンジン2は、掃気行程の初期に先導エアが燃焼室8に供給され、次いで、クランク室12の混合気が燃焼室8に供給される。
【0030】
図3図1のA―A線に沿った断面図である。図4図1のB―B線に沿った断面図である。図3図4から分かるように、エンジン2は、4つの掃気ポート16の各々から吐出される掃気ガスを気筒の吸気側に指向させる「反転掃気」式である。
【0031】
図3図4を参照して、矩形の4つの掃気ポート16は、気筒の各側に2つずつ配置されている。各掃気ポート16を識別するために、図面右側に位置する2つの掃気ポート16のうち、排気ポート22側に位置する掃気ポート16を「排気側第1掃気ポート」と呼び、この排気側第1掃気ポートに参照符号「16(ex1)」を付す。図面右側に位置する2つの掃気ポート16のうち、吸気ポート20側に位置する掃気ポート16を「吸気側第1掃気ポート」と呼び、この吸気側第1掃気ポートに参照符号「16(in1)」を付す。
【0032】
図面左側に位置する2つの掃気ポート16のうち、排気ポート22側に位置する掃気ポート16を「排気側第2掃気ポート」と呼び、この排気側第2掃気ポートに参照符号「16(ex2)」を付す。図面左側に位置する2つの掃気ポート16のうち、吸気ポート20側に位置する掃気ポート16を「吸気側第2掃気ポート」と呼び、この吸気側第2掃気ポートに参照符号「16(in2)」を付す。
【0033】
図3図4の矢印40は、各掃気ポート16から吐出される掃気ガスの指向方向を示す。図3図4から掃気ガスが排気ポート22とは反対側の吸気側に向けて吐出されることが分かる。換言すれば、エンジン2の矩形の各掃気ポート16及びこれに連なる掃気通路14の上端部は、その基本構成において、既知の反転掃気式エンジンに含まれる例えばJP特開2000―34927号公報に記載の各掃気ポート及びこれに連なる掃気通路の上端部と実質的に共通している。
【0034】
図1に図示のエンジン2に含まれる4つの掃気ポート16のうち、唯一、排気側第2掃気ポート16(ex2)に関連した掃気通路14の上端部に本発明が適用されている。したがって、排気側第2掃気ポート16(ex2)以外の排気側第1掃気ポート16(ex1)、吸気側第1掃気ポート16(in1)、吸気側第2掃気ポート16(in2)に関連する掃気通路14の上端部は従来と同じである。本発明が適用された掃気通路14、掃気ポート16を「可変掃気通路14(ch)」、「可変掃気ポート16(ch)」と呼ぶ。
【0035】
図5は、可変掃気通路14(ch)の上端部の模式図であり、図6は、図5のVI―VI線に沿った断面図である。可変掃気通路14(ch)の上端部において、気筒吸気側の側壁面がガイド面50を構成している。ガイド面50は、掃気ガスを吸気側に指向させる機能を有している。ガイド面50は上方ガイド部50(H)と下方ガイド部50(L)とで構成されている。図6の参照符号52は段部を示す。段部52は、上方ガイド部50(H)と下方ガイド部50(L)との間に形成され、そして段部52はガイド面50の上下方向中間に設けられている。
【0036】
図5図6を参照して、段部52はシリンダ4の軸線つまりピストン6の移動方向と直交する方向に延びているのがよい。つまり、段部52は水平面上に位置しているのがよい。これにより、ピストン6が下降することで可変掃気ポート16(ch)の開度が大きくなる過程において、上方ガイド部50(H)から下方ガイド部50(L)に切り替わるとき、可変掃気ポート16(ch)から吐出される掃気ガスの流れを乱すことなく掃気ガスを気筒内に導入することができる。なお、図示の段部52は垂直壁で構成されているが、傾斜壁又は湾曲壁で構成してもよい。
【0037】
図3を参照すると良く理解できるように、可変掃気通路14(ch)の上端部の断面形状において、上方ガイド部50(H)は、可変掃気ポート16(ch)つまり排気側第2掃気ポート16(ex2)を一辺とする略三角形の斜辺を実質的に構成している。図3は前述したように、図1のA―A線に沿った断面図である。図1から分かるように、A―Aの切断線は、下降するピストン6が矩形の掃気ポート16の上縁よりも若干下方に位置している。つまり、図3は、可変掃気ポート16(ch)に通じる可変掃気通路14(ch)において、掃気行程が開始された直後の掃気通路14の上端部の断面形状を示している。
【0038】
図3から分かるように、上方ガイド部50(H)は排気側から吸気側に向けてシリンダ4の内壁の接線方向に延びる面で構成されている。すなわち、上方ガイド部50(H)は角度θ(ex-H)を有する傾斜面で構成されている。傾斜角度θ(ex-H)の上方ガイド部50(H)によって、掃気ガスはシリンダ4の内壁の接線方向に指向される。ここに、傾斜角度θは、燃焼室6を平面視したときに、排気ポート22と吸気ポート20とを結ぶ直線Lと並行な直線に対するガイド面50の傾斜角度を意味している。
【0039】
これにより、掃気行程の初期、下降するピストン6によって掃気ポート16が開口された直後から掃気ポート16の上下方向中間部分に至るまでにおいて、上方ガイド部50(H)によって案内される掃気ガスは、気筒の排気側から離れる方向且つシリンダ4の内壁の接線方向に指向される。上方ガイド部50(H)によって吐出方向が規定される掃気ガスを白抜きの矢印42(図3)で示す。この構成により、掃気初期に発生しやすい未燃焼ガスの排気ポート22への吹き抜けを防ぐことができる。また、上方ガイド部50(H)の指向性により形成された略三角形の掃気通路上端部の断面形状により、ガイド面50を備えた可変掃気ポート16(ch)から吐出された掃気ガスは、他の掃気ポート16から吐出される掃気ガスに比べ、その流速が高まるため、方向性のみならず流速の違いによっても、掃気ガス流れをより多様にコントロールできる。また、複数ある掃気通路のうちの一部に本発明を適用することで、その指向性と速度変化により、互いに対向する掃気ポート16から吐出される掃気ガス同士が衝突して、掃気ガスの一部が排気ポート22に短絡するのを防ぐことができる。
【0040】
他方、図4に図示の下方ガイド部50(L)は図4を参照すると良く理解できるように、可変掃気ポート16(ch)つまり排気側第2掃気ポート16(ex2)に連なる可変掃気通路14(ch)の上端部の断面形状において、例えば、排気側第1掃気ポート16(ex1)と実質的に同じ形状を有している。下方ガイド部50(L)は、限定するものではないが、従来と同様の角度θ(ex-L)を有する傾斜面で構成されており、断面視略平行四辺形の形状となっている。図3図4とを対比すると分かるように、下方ガイド部50(L)の傾斜角度θ(ex-L)は、上方ガイド部50(H)の傾斜角度θ(ex-H)よりも、その絶対値が大きい。
【0041】
図4は前述したように、図1のB―B線に沿った断面図である。図1から分かるように、B―Bの切断線は、下降するピストン6が矩形の掃気ポート16の下端縁よりも若干上方に位置している。図4は、可変掃気通路14(ch)において、ピストン6が可変掃気ポート16(ch)、つまり排気側第2掃気ポート16(ex2)を閉じる直前の可変掃気通路14(ch)の上端部の形態を示している。換言すると、図4は、ピストン6が矩形の掃気ポート16の上下方向中間よりも下方に位置する状態、つまり掃気行程のうち中盤~後半に相当している。掃気行程のうち中盤~後半の期間においては、排気ポート22が大きく開き、かつ気筒内ガスの燃焼が十分に広がった後であるので、燃焼室内には既燃焼ガスが充満している。このような状態の気筒において、下方ガイド部50(L)は、図4から分かるように、下降するピストン6が可変掃気ポート16(ch)の上下方向中間部分から下端縁に至るまで、下方ガイド部50(L)によって案内される掃気ガスは、排気ポート22とは反対方向であって、シリンダ4の内壁の接線方向から離れてシリンダ4の中央部分に変位した方向に指向される。
【0042】
掃気行程のうち中盤~後半の期間においては、掃気ガスは、燃焼室中央部も含めて全体に広がる既燃焼ガスに対し、全域に亘って入れ替えを実行する。また、上方ガイド部50(H)に比べて断面積も大きくなるため、比較的緩やかな流れを形成する。これにより、各掃気ポート16から吐出される掃気ガスが排気ポート22へ短絡することなく、互いに対向する掃気ポート16から吐出される掃気ガスが緩やかに交わり、燃焼室全体のガスを入れ替える。これにより気筒の全域に亘って過不足無く掃気することができる。
【0043】
上記の説明から分かるように、掃気行程の途中で、可変掃気ポート16(ch)つまり排気側第2掃気ポート16(ex2)から吐出される掃気ガスの指向方向が変化する。可変掃気ポート16(ch)が半開き状態になるまでの第1過程では、掃気ガスはシリンダ4の内壁の接線方向に指向される。ついで、排気側第2掃気ポート16(ex2)が半開き状態から閉じるまでの第2過程では、シリンダ4の内壁の接線方向から離れた方向、つまりシリンダ4の中心軸に近づく方向に指向される。
【0044】
このように、燃焼室8を上から見た水平面において、ピストン6の下降過程において、可変掃気ポート16(ch)つまり排気側第2掃気ポート16(ex2)から吐出される掃気ガスの方向を掃気初期から後期にかけて変化させることによって、初期の「吹き抜け」を防ぐとともに、燃焼室8の全域に掃気ガスを行き渡らせることができ、これにより掃気効率を高めることができる。また、掃気ガスの流れ方向を複数の掃気通路14のうち一部(可変掃気通路14(ch))のみ異ならせることによって、互いに対向する掃気ポート16から吐出される掃気ガス同士の衝突が回避される。これにより、衝突後の掃気ガスが方向性を失って排気ポート22へ短絡することを防ぎ、複数の掃気ポート16から吐出される各々の掃気ガスは各々の流路を維持したまま燃焼室8内を掃気したのちに排気ポート22へ向かうことができる。実施例の2ストロークエンジン2はクランク室12で混合気を予圧縮し、これを掃気ガスとして使用するため、混合気の吹き抜けを防止して給気効率(ηtr)を高めることができる。この給気効率(ηtr)の改善により燃焼効率を高めることができる。
【0045】
エンジンシステム100は層状掃気式エンジンに関するものである。層状掃気式エンジンにおける掃気通路14は、掃気行程の初期に混合気に先んじて先導エアを燃焼室8に吐出する。本発明が適用された排気側第2掃気ポート16(ex2)を含む4つの掃気ポート16は、従来の層状掃気式エンジンと共通した矩形形状を有し、矩形の掃気ポート16の上縁部の高さレベル、つまり掃気の開始タイミングが略同一である。つまり、吸気行程において先導エア通路34から先導エアがピストン溝を通じて各掃気通路14に導入される際、全ての掃気通路14に、略同量の充分な量の先導エアを充填することができ、このことから、従来から知られている層状掃気効果を損なうことなく掃気効率を高めることができる。
【0046】
また、図3図4を参照すると良く分かるように、上方ガイド部50(H)によって構成される可変掃気通路14(ch)の上端部の断面形状と、下方ガイド部50(L)によって構成される断面形状とを比較すると、その通路有効断面積が異なる。この違いによって、可変掃気ポート16(ch)から吐出される掃気ガスの流速に多様性が付加され、指向性及び時間の観点においても、互いに対向して吐出される掃気ガスを衝突させることなく且つ燃焼室8内に満遍なく行き渡らせることができる。実施例における上方ガイド部50(H)によって形成される掃気通路断面積は、下方ガイド部50(L)によって形成される掃気通路断面積の37%に設定されているが、この「37%」の数値は、エンジン排気量及び必要とされる先導エア量とのバランスに応じて20~70%の範囲内で調整することで最適化できる。
【0047】
図7図9は、図1図3図5を参照して説明したエンジン2の具体例を示す。図7はエンジン2を構成するシリンダブロック60を示す。シリンダブロック60において、4つの掃気ポート16及びこれに連なる掃気通路14の上部に相当する部分は、シリンダブロック60にねじ止めされる一対の掃気通路形成キャップ62で構成されている。図7の参照符号64はねじ穴を示す。
【0048】
図8は、図7のVIII-VIII線に沿って切断した断面図であり、上述した図3に対応する断面図である。図9は、図7のIX-IX線に沿って切断した断面図であり、上述した図4に対応する断面図である。これらの図面から分かるように、掃気通路形成キャップ62によってガイド面50が形成される。なお、実施例では掃気通路形成キャップ62によって4つ全ての掃気通路の上端部が形成されているが、可変掃気通路14(ch)だけを掃気通路形成キャップ62によって形成するようにしてもよい。
【0049】
上述したように、矩形の可変掃気ポート16(ch)に連なる可変掃気通路14(ch)の上端部の気筒吸気側の側壁面がガイド面50を構成し、このガイド面50によって掃気ガスが吸気側に差し向けられる。そして、掃気行程において、掃気ガスの指向方向が水平面上で変化する。図10図13は、図5に図示のガイド面50の変形例を説明するための図である。前述した図5に図示のガイド面50は上方ガイド部50(H)と下方ガイド部50(L)の2段のガイド部で構成されているが、図10図11に示すように上下3段のガイド部で構成してもよい。
【0050】
図11は、図10のXI―XI線に沿った断面図である。図10図11を参照して具体的に説明すると、第1変形例のガイド面54は、上方ガイド部54(H)と下方ガイド部54(L)との間に中間ガイド部54(M)を有している。第1変形例に含まれる上方ガイド部54(H)、下方ガイド部54(L)は、上述した図5のガイド面50に含まれる上方ガイド部50(H)、下方ガイド部50(L)と、夫々、例えば同じ傾斜角度θを有する面で構成されている。中間ガイド部54(M)は、上方ガイド部54(H)、下方ガイド部54(L)の中間の傾斜角度θを有しているのがよいが、これに限定されず異なっていてもよい。これにより、掃気行程において、掃気ガスの指向方向を水平面上で3段階に変化させることができる。
【0051】
中間ガイド部54(M)は、上述したように、上方ガイド部54(H)、下方ガイド部54(L)の中間の傾斜角度θを有しているのがよいが、これに限定されない。例えば中間ガイド部54(M)の傾斜角度θを、図5のガイド面50に含まれる下方ガイド部50(L)の傾斜角度θと同じ値に設定し、下方ガイド部54(L)の傾斜角度θに関しては、中間ガイド部54(M)の傾斜角度θとは異なる値に設定してもよい。また、上方ガイド部54(H)、中間ガイド部54(M)、下方ガイド部54(L)の各々の傾斜角度が、順に、段階的に異なる値に設定してもよい。
【0052】
別の例として、中間ガイド部54(M)の傾斜角度θを図5のガイド面50に含まれる上方ガイド部50(H)の傾斜角度θと同じ値に設定し、上方ガイド部54(H)、下方ガイド部54(L)の傾斜角度θを、図5のガイド面50に含まれる下方ガイド部50(L)の傾斜角度θと例えば同じ値に設定してもよい。もちろん、上方ガイド部54(H)、下方ガイド部54(L)の傾斜角度θを異ならせてもよい。
【0053】
ガイド面50の更なる変形例として、4段、5段というように多段のガイド部で構成してもよい。これにより、掃気行程において、掃気ガスの指向方向を水平面上で多段階に変化させることができる。また、ガイド面50の別の変形例56として、図12図13に図示のように、湾曲した無段階のガイド面で構成してもよい。図13は、図12のXIII―XIII線に沿った断面図である。これにより、掃気行程において、掃気ガスの指向方向を水平面上で無段階に変化させることができる。
【0054】
以上、本発明を層状掃気式エンジンに適用した実施例を説明したが、掃気ガスに先導エアを含まない2ストロークエンジン、つまりクランク室12で予圧縮した混合気を掃気ガスとして用いるタイプのエンジンに対して本発明を適用することができる。
【0055】
また、気化器28に代えて燃料噴射装置を採用した2ストロークエンジンに対しても本発明を好適に適用することができる。例えば本発明を筒内直噴2ストロークエンジンに適用した場合、クランク室で予圧縮されたエアが掃気ガスとして使われる。この筒内直噴2ストロークエンジンに本発明を適用することにより、気筒内の掃気効率を高めることができる。
【0056】
以下に、図14図18を参照して、本発明を適用した可変掃気ポート16(ch)及びこれに連なる可変掃気通路14(ch)の上端部に関する変形例を説明する。これら変形例に関しても、層状掃気式エンジン及びクランク室12で予圧縮した混合気を掃気ガスとして用いるタイプのエンジンに適用可能であるのは勿論である。上記の図3を参照して、上述した実施例では、排気側第2掃気ポート16(ex2)に連なる掃気通路14の上端部に対して本発明を適用したが、これに代えて、図14に図示のように、排気側第2掃気ポート16(ex2)と対向する排気側第1掃気ポート16(ex1)に連なる掃気通路14(ch)の上端部に本発明を適用してもよい。更なる変形例として、排気側第1又は第2掃気ポート16(ex1 or ex2)に代えて、吸気側第1又は第2掃気ポート16(in1 or in2)に連なる掃気通路14の上端部に対して本発明を適用してもよい。
【0057】
図15は、排気側第2掃気ポート16(ex2)に連なる掃気通路14(ch)の上端部と、吸気側第1掃気ポート16(in1)に連なる掃気通路14(ch)の上端部とに本発明を適用した例を示す。変形例として、排気側第1掃気ポート16(ex1)に連なる掃気通路14の上端部と、吸気側第2掃気ポート16(in2)に連なる掃気通路14の上端部とに本発明を適用してもよい。
【0058】
図16は、気筒の片側に位置する排気側第2掃気ポート16(ex2)に連なる掃気通路14(ch)の上端部と、吸気側第2掃気ポート16(in2)に連なる掃気通路14(ch)の上端部とに本発明を適用した例を示す。変形例として、排気側第1掃気ポート16(ex1)に連なる掃気通路14の上端部と、吸気側第1掃気ポート16(in1)に連なる掃気通路14の上端部とに本発明を適用してもよい。
【0059】
図17は、気筒の排気側において、互いに対向する第1、第2の掃気ポート16(ex1)、16(ex2)の各々に連なる掃気通路14(ch)の上端部に本発明を適用した例を示す。変形例として、気筒の吸気側において、互いに対向する第1、第2の掃気ポート16(in1)、16(in2)の各々に連なる掃気通路14の上端部に本発明を適用してもよい。
【0060】
気筒に含まれる4つの掃気ポート16のうち、一つを除いた3つの掃気ポート16に夫々連なる各掃気通路14の上端部に本発明を適用してもよい。図18は、例示的に吸気側第1掃気ポート16(in1)に連なる掃気通路14を除いた3つの掃気ポート16(ch)に連なる掃気通路14(ch)の上端部に本発明を適用した例を示す。本発明を適用しない一つの掃気ポート16は、吸気側第2掃気ポート16(in2)又は排気側第1又は第2掃気ポート16(ex1 or ex2)であってもよい。
【0061】
本発明は、気筒の両側にそれぞれ1つの掃気ポート16を備えた2流掃気エンジンに好適に適用可能である。図19は、気筒の片側に位置する掃気ポート16(2)に連なる掃気通路14の上端部に本発明を適用した例を示す。図20は、気筒の両側に位置する掃気ポート16(1)、16(2)に夫々連なる掃気通路14の上端部に本発明を適用した例を示す。
【0062】
図17図18図20に図示の例において、互いに対向する排気側掃気ポート16(ex1)、16(ex2)、16(1)、16(2)は本発明が適用された可変掃気通路14(ch)に関連した可変掃気ポート16(ch)であるが、図17の例を代表して説明すると、排気側第1掃気ポート16(ex1)から吐出される掃気流42(1)と、排気側第2掃気ポート16(ex2)から吐出される掃気流42(2)とが衝突しないように、排気側第1掃気ポート16(ex1)に関連した上方ガイド面50(H)の傾斜角度θ(ex-H1)と、排気側第2掃気ポート16(ex2)に関連した上方ガイド面50(H)の傾斜角度θ(ex-H2)とを異なる値に設定するのが好ましい。この構成により、互いに対向する掃気ポート16から吐出される掃気ガス同士が衝突して排気ポート22へ短絡することが回避され、各掃気ポート16から吐出される掃気ガスが各々の流路を維持したまま燃焼室内を掃気した後に排気ポート22へ向かうこととなる。
【0063】
以上、図15図16などを参照して上方ガイド部50(H)に関連した説明を行なったが、この説明は下方ガイド部50(L)についても同様である。
【0064】
上述した各ガイド面50(H)、50(L)、54(H)、54(M)、54(L)は、図面から分かるように直線状に延びる面で構成されているが、平面視したときに湾曲した面で構成してもよい。また、各ガイド面50(H)、50(L)、54(H)、54(M)、54(L)の少なくとも1つのガイド面は、その面形状において、複数の分割面を備えた屈曲した面形状であってもよい。この分割面に参照符号58を付して屈曲した面形状を説明すると、図21図22は、2つの分割面58(1)、58(2)で構成した例を示すが、これは例示に過ぎず、3以上の分割面で構成してもよい。
【0065】
図21は、第1、第2の分割面58(1)、58(2)の挟み角α1、つまり第1、第2の分割面58(1)、58(2)がシリンダ4の内部に向かって作る角度が鋭角である例を示し、図22は、第1、第2の分割面58(1)、58(2)の挟み角α2、つまり第1、第2の分割面58(1)、58(2)がシリンダ4の内部に向かって作る角度が鈍角である例を示す。図21図22で例示した第1、第2の分割面58(1)、58(2)で構成したガイド面50(H)、50(L)、54(H)、54(M)、54(L)は、図21図22に白抜きの矢印42(1)、42(2)で示すように2方向に掃気ガスを吐出することができる。
【符号の説明】
【0066】
100 単気筒2ストロークエンジンシステム
2 実施例のエンジン
4 シリンダ
6 ピストン
8 燃焼室
12 クランク室
14 掃気通路
14(ch) 可変掃気通路
16 掃気ポート
16(ch) 可変掃気ポート
22 排気ポート
50 ガイド面
50(H) 上方ガイド部
50(L) 下方ガイド部
52 段部
54 第1変形例のガイド面
54(H) 上方ガイド部
54(M) 中間ガイド部
54(L) 下方ガイド部
60 シリンダブロック
62 掃気通路形成キャップ
64 ねじ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22