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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079323
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】AC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190448
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋明
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006CA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CB07
5H006CB08
5H006CC01
5H006CC02
5H006CC08
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発電電力を最大化しながら定電圧を得ることが可能であるにもかかわらず、整流回路の後段に接続する回路における電力損失を抑える。
【解決手段】AC/DCコンバータは、機械的振動を与えることにより交流電圧を出力するピエゾ素子1と、ピエゾ素子1から出力された交流電圧を整流する整流回路2と、整流回路2の出力電圧を昇降圧し所望の負荷電圧voutを出力する昇降圧回路3と、負荷電圧vout並びに整流回路2の出力電圧vin及び出力電流iRに基づいて昇降圧回路3を制御するための制御電圧vpwmを出力する制御回路4を備えていいる。制御回路4は、基準電圧voutref及び負荷電圧voutに基づいて定電圧制御用電圧voを生成する定電圧出力制御回路5と、定電圧制御用電圧vo並びに整流回路2の出力電圧vin及び出力電流iL1に基づいて制御電圧vpwmを生成する制御電圧生成回路6を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的振動を与えることにより交流電圧を出力するピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子から出力された交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力電圧を入力電圧として昇降圧し、所望の負荷電圧を出力する昇降圧回路と、
前記昇降圧回路から出力される負荷電圧並びに前記整流回路の出力電圧及び出力電流に基づいて前記昇降圧回路を制御するための制御電圧を出力する制御回路からなるAC/DCコンバータであって、
前記制御回路は、
基準電圧及び前記昇降圧回路から出力される負荷電圧に基づいて定電圧制御用を生成する定電圧出力制御回路と、
前記定電圧制御用電圧並びに前記整流回路の出力電圧及び出力電流に基づいて前記制御電圧を出力する制御電圧生成回路を備えている
ことを特徴とするAC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御電圧生成回路は、
前記整流回路の出力電圧及び出力電流に基づいて等価抵抗制御用電圧を生成する等価抵抗制御回路と、
前記定電圧制御用電圧及び前記等価抵抗制御用電圧のいずれかに基づいて前記制御電圧を出力する切替回路を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記定電圧出力制御回路は、
基準電圧から前記負荷電圧を減算し差電圧を出力する電圧減算器と、
前記差電圧に基づいて定電圧制御用電圧を生成する比例積分制御器を有し、
前記等価抵抗制御回路は、
前記整流回路の出力電圧を入力し脈流成分を除去する電圧用ローパスフィルタと、
前記電圧用ローパスフィルタの出力電圧に基づいて基準電流を生成する除算回路と、
前記整流回路の出力電流を入力し脈流成分を除去する電流用ローパスフィルタと、
前記基準電流から前記電流用ローパスフィルタの出力電流を減算する電流減算器と、
前記電流減算器の出力電流に基づいて等価抵抗制御用電圧を生成する比例積分演算器を有し、
前記切替回路は、
前記差電圧が下限値に達しているときに第1信号を出力し、前記差電圧が下限値に達していないときに第2信号を出力する切替用リミッタと、
前記第1信号を受信すると前記定電圧制御用電圧を出力し、前記第2信号を受信すると前記等価抵抗制御用電圧を出力する切替スイッチと、
鋸歯状波発生回路と、
前記切替スイッチから出力される前記定電圧制御用電圧及び前記等価抵抗制御用電圧のいずれかと前記鋸歯状波発生回路の出力電圧に基づいて前記制御電圧を生成する比較器を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記定電圧出力制御回路は、
基準電圧から前記負荷電圧を減算し差電圧を出力する電圧減算器と、
前記差電圧に基づいて定電圧制御用電圧を生成する比例積分制御器を有し、
前記制御電圧生成回路は、
前記定電圧制御用電圧に基づいて0超1以下の出力値を生成する除算用リミッタと、
前記整流回路の出力電圧を入力し脈流成分を除去する電圧用ローパスフィルタと、
前記電圧用ローパスフィルタの出力電圧を前記除算用リミッタの出力値で除算し参照電圧を出力する除算器と、
前記参照電圧を前記ピエゾ素子の出力インピーダンス値で除算し基準電流を生成する除算回路と、
前記整流回路の出力電流を入力し脈流成分を除去する電流用ローパスフィルタと、
前記基準電流から前記電流用ローパスフィルタの出力電流を減算する電流減算器と、
前記電流減算器の出力に基づいて制御用電圧を生成する比例積分演算器と、
鋸歯状波発生回路と、
前記制御用電圧と前記鋸歯状波発生回路の出力電圧に基づいて前記制御電圧を生成する比較器を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のAC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ素子から出力された交流電力を高い効率で直流電力に変換するAC/DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械的振動を与えることにより交流電圧を出力するピエゾ素子は、発電量が少ないことから最大限に電力を取り出すこと及び電力を取り出す回路の電力損失を低減することが求められている。このピエゾ素子から電力を取り出す手法として、定電圧出力法や等価抵抗制御法が採用されている。
【0003】
定電圧出力法は、ピエゾ素子から出力された交流電圧を整流回路で直流に変換した後に、定電圧出力回路に入力して一定の直流電圧に調整して出力する手法であり、例えば、インフィニオンテクノロジーズ社の定電圧出力IC「MB39C811」等で採用されている。
この定電圧出力ICにおいて、ピエゾ素子からの発電電力を最大化するためには、ピエゾ素子の出力インピーダンスと負荷側の入力インピーダンスをマッチングさせる必要があるが、この定電圧出力法では、定電圧出力回路の入力インピーダンスがその定電圧出力回路の負荷インピーダンスによって決まるので、定電圧出力回路の入力インピーダンスをピエゾ素子の出力インピーダンスとマッチングさせることができず、ピエゾ素子の発電電力を最大化することが困難であった。
【0004】
そこで、本発明者は、特許文献1(特開2019-28578号公報)及び特許文献2(特開2019-30072号公報)に開示されているように、等価抵抗制御法を採用したAC/DCコンバータ回路を開発した。
この等価抵抗制御法は、ピエゾ素子から出力された交流電圧を整流回路で直流に変換した後に、整流回路から出力する電圧を入力電圧として昇圧する昇圧回路の入力インピーダンスをピエゾ素子の発電電力が最大となる出力インピーダンスとなるようにスイッチングトランジスタを制御する方法である。
この方法によれば、ピエゾ素子の出力インピーダンスと負荷側の入力インピーダンスをマッチングさせ、発電電力を最大化できるが、昇圧回路の出力電圧を制御できないために昇圧回路の出力電圧を入力として降圧回路を接続し、所望の定電圧を得る必要がある。
そして、特許文献1及び2に記載されている実施例においては、整流回路の後段に第1制御回路を含む昇圧チョッパ回路及び第2制御回路を含む降圧チョッパ回路を接続しているが、これらの回路における電力損失が大きくなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-28578号公報
【特許文献2】特開2019-30072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、発電電力を最大化しながら定電圧を得ることが可能であるにもかかわらず、整流回路の後段に接続する回路における電力損失を抑えることのできるAC/DCコンバータを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明のAC/DCコンバータは、
機械的振動を与えることにより交流電圧を出力するピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子から出力された交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力電圧を入力電圧として昇降圧し、所望の負荷電圧を出力する昇降圧回路と、
前記昇降圧回路から出力される負荷電圧並びに前記整流回路の出力電圧及び出力電流に基づいて前記昇降圧回路を制御するための制御電圧を出力する制御回路からなるAC/DCコンバータであって、
前記制御回路は、
基準電圧及び前記昇降圧回路から出力される負荷電圧に基づいて定電圧制御用電圧を生成する定電圧出力制御回路と、
前記定電圧制御用電圧並びに前記整流回路の出力電圧及び出力電流に基づいて前記制御電圧を出力する制御電圧生成回路を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のAC/DCコンバータにおいて、
前記制御電圧生成回路は、
前記整流回路の出力電圧及び出力電流に基づいて等価抵抗制御用電圧を生成する等価抵抗制御回路と、
前記定電圧制御用電圧及び前記等価抵抗制御用電圧のいずれかに基づいて前記制御電圧を出力する切替回路を有していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のAC/DCコンバータにおいて、
前記定電圧出力制御回路は、
基準電圧から前記負荷電圧を減算し差電圧を出力する電圧減算器と、
前記差電圧に基づいて定電圧制御用電圧を生成する比例積分制御器を有し、
前記等価抵抗制御回路は、
前記整流回路の出力電圧を入力し脈流成分を除去する電圧用ローパスフィルタと、
前記電圧用ローパスフィルタの出力電圧に基づいて基準電流を生成する除算回路と、
前記整流回路の出力電流を入力し脈流成分を除去する電流用ローパスフィルタと、
前記基準電流から前記電流用ローパスフィルタの出力電流を減算する電流減算器と、
前記電流減算器の出力電流に基づいて等価抵抗制御用電圧を生成する比例積分演算器を有し、
前記切替回路は、
前記差電圧が下限値に達しているときに第1信号を出力し、前記差電圧が下限値に達していないときに第2信号を出力する切替用リミッタと、
前記第1信号を受信すると前記定電圧制御用電圧を出力し、前記第2信号を受信すると前記等価抵抗制御用電圧を出力する切替スイッチと、
鋸歯状波発生回路と、
前記切替スイッチから出力される前記定電圧制御用電圧及び前記等価抵抗制御用電圧のいずれかと前記鋸歯状波発生回路の出力電圧に基づいて前記制御電圧を生成する比較器を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載のAC/DCコンバータにおいて、
前記定電圧出力制御回路は、
基準電圧から前記負荷電圧を減算し差電圧を出力する電圧減算器と、
前記差電圧に基づいて定電圧制御用電圧を生成する比例積分制御器を有し、
前記制御電圧生成回路は、
前記定電圧制御用電圧に基づいて0超1以下の出力値を生成する除算用リミッタと、
前記整流回路の出力電圧を入力し脈流成分を除去する電圧用ローパスフィルタと、
前記電圧用ローパスフィルタの出力電圧を前記除算用リミッタの出力値で除算し参照電圧を出力する除算器と、
前記参照電圧を前記ピエゾ素子の出力インピーダンス値で除算し基準電流を生成する除算回路と、
前記整流回路の出力電流を入力し脈流成分を除去する電流用ローパスフィルタと、
前記基準電流から前記電流用ローパスフィルタの出力電流を減算する電流減算器と、
前記電流減算器の出力に基づいて制御用電圧を生成する比例積分演算器と、
鋸歯状波発生回路と、
前記制御用電圧と前記鋸歯状波発生回路の出力電圧に基づいて前記制御電圧を生成する比較器を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、ピエゾ素子と、整流回路と、昇降圧回路と、昇降圧回路を制御するための制御電圧を出力する制御回路からなるAC/DCコンバータであって、
制御回路が、基準電圧及び昇降圧回路から出力される負荷電圧に基づいて定電圧制御用電圧を生成する定電圧出力制御回路と、定電圧制御用電圧並びに整流回路の出力電圧及び出力電流に基づいて制御電圧を出力する制御電圧生成回路を備えているので、負荷電圧に応じて適切な制御電圧で昇降圧回路を制御することができ、発電電力を最大化しながら定電圧を得ることが可能であるにもかかわらず、整流回路の後段に接続する回路における電力損失を抑えることができる。
【0012】
請求項2に係る発明のAC/DCコンバータによれば、請求項1に係る発明の効果に加え、制御電圧生成回路が、整流回路の出力電圧及び出力電流に基づいて等価抵抗制御用電圧を生成する等価抵抗制御回路と、定電圧制御用電圧及び等価抵抗制御用電圧のいずれかに基づいて制御電圧を出力する切替回路を有しているので、単純な回路構成で昇降圧回路を適切に制御することができる。
【0013】
請求項3に係る発明のAC/DCコンバータによれば、請求項2に係る発明の効果に加え、切替回路が、差電圧が下限値に達しているときに第1信号を出力し、差電圧が下限値に達していないときに第2信号を出力する切替用リミッタと、第1信号を受信すると定電圧制御用電圧を出力し、第2信号を受信すると等価抵抗制御用電圧を出力する切替スイッチと、鋸歯状波発生回路と、切替スイッチから出力される定電圧制御用電圧及び等価抵抗制御用電圧のいずれかと鋸歯状波発生回路の出力電圧に基づいて制御電圧を生成する比較器を有しているので、定電圧出力制御回路からの定電圧制御用電圧による昇降圧回路の制御と、等価抵抗制御回路からの等価抵抗制御用電圧による昇降圧回路の制御を、的確に切り替えることができる。
【0014】
請求項4に係る発明のAC/DCコンバータによれば、請求項1に係る発明の効果に加え、定電圧出力制御回路が、基準電圧から負荷電圧を減算し差電圧を出力する電圧減算器と、差電圧に基づいて定電圧制御用電圧を生成する比例積分制御器を有し、
制御電圧生成回路が、定電圧制御用電圧に基づいて0超1以下の出力値を生成する除算用リミッタと、整流回路の出力電圧を入力し脈流成分を除去する電圧用ローパスフィルタと、電圧用ローパスフィルタの出力電圧を除算用リミッタの出力値で除算し参照電圧を出力する除算器と、参照電圧をピエゾ素子の出力インピーダンス値で除算し基準電流を生成する除算回路と、整流回路の出力電流を入力し脈流成分を除去する電流用ローパスフィルタと、基準電流から電流用ローパスフィルタの出力電流を減算する電流減算器と、電流減算器の出力に基づいて制御用電圧を生成する比例積分演算器と、鋸歯状波発生回路と、制御用電圧と鋸歯状波発生回路の出力電圧に基づいて制御電圧を生成する比較器を有しているので、請求項3に係る発明のように切替用リミッタから第1信号と第2信号を出力することなく、また、切替スイッチを用いて定電圧制御用電圧及び等価抵抗制御用電圧のいずれかを選択することなく、昇降圧回路を負荷電圧の状態に適した制御電圧によって制御することができるので、制御の複雑化を回避でき、かつ、制御の切り替えに伴う余剰電力により昇降圧回路内のコンデンサの電圧が上昇する問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係るAC/DCコンバータのブロック図。
図2】本発明の実施形態2に係るAC/DCコンバータのブロック図。
図3】本発明のピエゾ素子、整流回路及び昇降圧回路の具体例を示す図。
図4】実施例1に係るAC/DCコンバータの制御回路を示す図。
図5】比較器における制御電圧vpwmの生成を説明する図。
図6】最大電力取り出し時における入力電圧vin、入力電流iL1及びインピーダンスRmaxの関係を示す図。
図7】実施例2に係るAC/DCコンバータの制御回路を示す図。
図8】実施例2に係るAC/DCコンバータのシミュレーション結果を示す図。
図9】等価抵抗制御法として動作している期間におけるSEPIC回路への入力電圧vinL及び入力電流iL1Lの拡大波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態1に係るAC/DCコンバータのブロック図である。
本発明の実施形態1に係るAC/DCコンバータは、図1に示すように、機械的振動を与えることにより交流電圧vrecを出力するピエゾ素子1と、ピエゾ素子1から出力された交流電圧vrecを整流する整流回路2と、整流回路2の出力電圧を入力電圧vinとして昇降圧し、所望の負荷電圧voutを出力する昇降圧回路3と、負荷Rと、基準電圧voutref及び昇降圧回路3から出力される負荷電圧vout並びに整流回路2の出力電圧vin及び出力電流iL1に基づいて昇降圧回路3を制御するための制御電圧vpwmを出力する制御回路4からなっている。
そして、制御回路4は、基準電圧voutref及び昇降圧回路3から出力される負荷電圧voutに基づいて定電圧制御用電圧voを生成する定電圧出力制御回路5と、定電圧制御用電圧vo、整流回路2の出力電圧vin及び出力電流iL1に基づいて制御電圧vpwmを出力する制御電圧生成回路6を備えている。
なお、負荷電圧voutは、昇降圧回路3と負荷Rとを接続するラインから定電圧出力制御回路5に入力し、定電圧制御用電圧voは、定電圧出力制御回路5から制御電圧生成回路6に入力し、整流回路2の出力電圧vinは、整流回路2と昇降圧回路3とを接続するラインから制御電圧生成回路6に入力し、出力電流iL1は、整流回路2と昇降圧回路3とを接続するラインの途中に設けた電流センサCSから制御電圧生成回路6に入力し、制御電圧生成回路6から出力された制御電圧vpwmは、昇降圧回路3の制御部に入力される。
【0017】
図2は本発明の実施形態2に係るAC/DCコンバータのブロック図である。
本発明の実施形態2に係るAC/DCコンバータは、図2に示すように、ピエゾ素子1、整流回路2、昇降圧回路3と、負荷Rと、負荷電圧vout、出力電圧vin及び出力電流iL1に基づいて昇降圧回路3を制御するための制御電圧vpwmを出力する制御回路4からなっている点並びに制御回路4が定電圧出力制御回路5を備えている点では実施形態1と共通している。
そして、実施形態2では、実施形態1の制御回路4における制御電圧生成回路6が、整流回路2の出力電圧vin及び出力電流iL1に基づいて等価抵抗制御用電圧vmを生成する等価抵抗制御回路7と、定電圧制御用電圧vo及び等価抵抗制御用電圧vmのいずれかに基づいて制御電圧vpwmを出力する切替回路8に置き換わっている点で実施形態1と異なっている。
なお、定電圧制御用電圧voは、定電圧出力制御回路5から切替回路8に入力し、整流回路2の出力電圧vinは、整流回路2と昇降圧回路3とを接続するラインから等価抵抗制御回路7に入力し、出力電流iL1は、整流回路2と昇降圧回路3とを接続するラインの途中に設けた電流センサCSから等価抵抗制御回路7に入力する。
また、切替回路8は適宜の手段によって、負荷電圧voutが所望の電圧である基準電圧voutrefに近い電圧(例えば、基準電圧の95%)に達したか否かを判別し、基準電圧voutrefに近い電圧に達していれば定電圧制御用電圧voを制御電圧vpwmとして出力し、達していなければ等価抵抗制御用電圧vmを制御電圧vpwmとして出力し、出力された制御電圧vpwmは、昇降圧回路3の制御部に入力される。
【0018】
図3は本発明のピエゾ素子1、整流回路2、昇降圧回路3及び負荷Rの具体例を示す図である。
ピエゾ素子1は、等価キャパシタCp及び等価抵抗Rpを有しており、外部から機械的振動が加わることにより、交流電圧vpを発生し、交流電圧vrecとして出力する。
整流回路2は、ブリッジ接続のダイオードD1~D4と、平滑キャパシタCrecからなり、ピエゾ素子1から出力される交流電圧vrecを整流平滑して、平滑キャパシタCrecに整流された電圧vinを蓄積する。
昇降圧回路3は、ピエゾ素子1から最大電力を取り出すように制御又は所望の電圧(基準電圧)を負荷Rへ出力するように制御されるSEPIC回路(Single Ended Primary Inductor Converter)であり、インダクタL1、L2、NMOSのスイッチングトランジスタM、整流用ダイオードD5、結合用キャパシタC1及び平滑用キャパシタCoutを備えている。
そして、制御回路4から出力され、昇降圧回路3に入力される制御電圧vpwmは、NMOSのスイッチングトランジスタMをPWM制御する。
以下、実施例によって本発明の実施形態1及び2を説明する。
【実施例0019】
図4は、実施例1に係るAC/DCコンバータの制御回路を示す図であり、図2に示す本発明の実施形態2における制御回路4の具体例である。
なお、実施例1に係るAC/DCコンバータにおけるピエゾ素子1、整流回路2及び昇降圧回路3は、図3に示した具体例と同じ構成である。
図4に示すように、実施例1における制御回路は、図2に示す定電圧出力制御回路5として、基準電圧voutrefから負荷電圧voutを減算し差電圧vdを出力する電圧減算器10と、差電圧vdを増幅し定電圧制御用電圧voを生成する比例積分制御器11を有している。
また、実施例1における制御回路は、図2に示す等価抵抗制御回路7として、整流回路2の出力電圧vinを入力し脈流成分を除去する電圧用ローパスフィルタ12と、電圧用ローパスフィルタ12の出力電圧をインピーダンスRmaxで除算し基準電流iL1refを生成する除算回路13と、整流回路2の出力電流iL1を入力し脈流成分を除去する電流用ローパスフィルタ14と、基準電流iL1refから電流用ローパスフィルタ14の出力電流iL1Lを減算する電流減算器15と、電流減算器15の出力電流を入力して比例制御の演算結果である等価抵抗制御用電圧vmを生成する比例積分演算器16を有している。
なお、インピーダンスRmaxには、ピエゾ素子1の出力インピーダンス値Zpを用いるのが通常である。
さらに、実施例1における制御回路は、図2に示す切替回路8として、差電圧vdが下限値(例えば、50mV以下)に達しているときに第1信号(例えば、Hレベル信号)を出力し、差電圧vdが下限値に達していないときに第2信号(例えば、Lレベル信号)を出力する切替用リミッタ17と、第1信号を受信すると定電圧制御用電圧voを出力し、第2信号を受信すると等価抵抗制御用電圧vmを出力する切替スイッチ18と、鋸歯状波発生回路19と、切替スイッチ18から出力される定電圧制御用電圧vo及び等価抵抗制御用電圧vmのいずれかと鋸歯状波発生回路19の出力電圧vbに基づいて制御電圧vpwmを生成する比較器20を有している。
そして、定電圧制御用電圧vo及び等価抵抗制御用電圧vmのいずれかを、制御用電圧vaとして比較器20に入力すると、制御電圧vpwmのデューティ比が決定され、昇降圧回路3のスイッチングトランジスタMがPWM駆動される。
【0020】
図5は、比較器20における制御電圧vpwmの生成を説明する図である。
例えば、等価抵抗制御用電圧vmが制御用電圧vaとして比較器20に入力されるときであって、出力電流iL1Lが基準電流iL1refより大きい場合(iL1L>iL1ref)には、図5(a)に示すように制御電圧vpwmのデューティ比が小さくなって、出力電流iL1Lが減少するように昇降圧回路3が制御され、逆に、出力電流iL1Lが基準電流iL1refより小さい場合(iL1L<iL1ref)には、図5(b)に示すように制御電圧vpwmのデューティ比が大きくなって、出力電流iL1Lが増大するように昇降圧回路3が制御される。
そして、iL1L=iL1refになったとき、昇降圧回路3の入力インピーダンスがRmaxに制御されることになり、ピエゾ素子1から昇降圧回路3に向けて取り出される電力が最大値を示すことになる。
【0021】
iL1L=iL1refになった時点における整流回路2の出力電流iL1は、iL1=vinref/Rmaxとなる。つまり、整流回路2の出力電流iL1がこの値となるように昇降圧回路3が制御されることによって、ピエゾ素子1から最大電力が取り出される。
図6に最大電力取り出し時における昇降圧回路3への入力電圧vin、入力電流iL1及びインピーダンスRmaxの関係を示す。
図6から分かるように、最大電力取り出し時には、入力電流iL1と入力電圧vinは同相であり、それらの大きさの比率はiL1:vin=1:Rmaxとなっている。
また、差電圧vdが安定的に0となった後においては、制御用電圧vaは差電圧vdが0となった時点の比例積分制御器11の出力値となり、その出力値に対応する制御電圧vpwmによって負荷電圧vout及び負荷電流iRは一定の状態に保持されることとなる。
【0022】
実施例1に係るAC/DCコンバータの制御回路は上記のように構成されているので、定電圧制御用電圧voが下限値に達していないとき(負荷電圧voutが基準電圧voutrefに近い電圧に達していないとき)には、インピーダンスRmaxをピエゾ素子1の特性から求めて基準電流iL1refを演算し、iL1=iL1refになるようにスイッチングトランジスタMをPWM制御するので、昇降圧回路3の入力インピーダンス(vin/iL1)がRmaxになるように制御される。
このため、昇降圧回路3の入力インピーダンスをピエゾ素子1の出力インピーダンスにマッチングさせることができ、ピエゾ素子1から最大電力を取り出すことができる。
また、定電圧制御用電圧voが下限値に達しているとき(負荷電圧voutが基準電圧に近い電圧に達しているとき)には、制御電圧vpwmによって、スイッチングトランジスタMがPWM制御されるので、安定的に基準電圧(所望の電圧)に等しい負荷電圧voutが得られる。
そして、特許文献1及び2のように、2つの電圧調整回路(昇圧チョッパ回路と降圧チョッパ回路)及び2つの制御回路(第1制御回路と第2制御回路)によらず、1つの昇降圧回路及び1つの制御回路によって、負荷電圧vout及び負荷電流iRを適切に制御できるので、回路構成が簡素化されるとともに、消費電力も小さくなる。
【実施例0023】
図7は、実施例2に係るAC/DCコンバータの制御回路を示す図であり、図1に示す本発明の実施形態1における制御回路4の具体例である。
そして、実施例2に係るAC/DCコンバータにおけるピエゾ素子1、整流回路2及び昇降圧回路3も、実施例1と同じく図3に示した具体例と同じ構成である。
図7に示すように、実施例2における制御回路も、図1に示す定電圧出力制御回路5として、実施例1と同じく、基準電圧voutrefから負荷電圧voutを減算し差電圧vdを出力する電圧減算器21と、差電圧vdを増幅し定電圧制御用電圧voを生成する比例積分制御器22を有している。
また、実施例2における制御回路は、図1に示す制御電圧生成回路6として、比例積分制御器22で生成された定電圧制御用電圧voに基づいて0超1以下の出力値voLを生成する除算用リミッタ23と、整流回路2の出力電圧vinを入力し脈流成分を除去する電圧用ローパスフィルタ24と、電圧用ローパスフィルタ24の出力電圧vinLを除算用リミッタ23の出力値voLで除算し参照電圧vinrefを出力する除算器25と、参照電圧vinrefをインピーダンスRmax(ピエゾ素子1の出力インピーダンス値Zp)で除算し基準電流iL1refを生成する除算回路26と、整流回路2の出力電流iL1を入力し脈流成分を除去する電流用ローパスフィルタ27と、基準電流iL1refから電流用ローパスフィルタ27の出力電流iL1Lを減算する電流減算器28と、電流減算器28の出力電流を入力して比例制御の演算結果である制御用電圧vaを生成する比例積分演算器29と、鋸歯状波発生回路30と、制御用電圧vaと鋸歯状波発生回路30の出力電圧vbに基づいて制御電圧vpwmを生成する比較器31を有している。
【0024】
そして、制御用電圧vaを比較器31に入力することで、制御電圧vpwmのデューティ比が決定され、昇降圧回路3のスイッチングトランジスタMがPWM駆動される。
ここで、負荷電圧voutが0から基準電圧voutrefに上昇していく過程では、除算用リミッタ23の出力値voLは、1から0に向かって徐々に小さくなる。
そのため、除算回路26で生成される参照電圧vinrefは、出力値voLの減少に反比例して大きくなり、除算回路26で生成される基準電流iL1refも、それに伴って大きくなるので、整流回路2の出力電流iL1Lは基準電流iL1refより小さい状態(iL1L<iL1ref)が続き、上述のとおり、図5(b)に示すように制御電圧vpwmのデューティ比が大きくなって、出力電流iL1Lを増大させる制御が行われる。
その後、負荷電圧voutが基準電圧voutrefに近づくと、出力値voLは0に近づき基準電流iL1refが急激に大きくなるが、同時に出力電流iL1Lも基準電流iL1refと等しくなるように制御されるため、鋸歯状波vbより制御用電圧vaが十分大きく、制御電圧vpwmのデューティ比が1に近づき、ピエゾ素子を短絡した状態に近づくことから、負荷側へ伝送される電力が小さくなり、負荷電圧vout及び負荷電流iRは一定の状態に保持されることとなる。
なお、除算用リミッタ23の出力値voLは0超1以下と説明したが、0に近づきすぎると参照電圧vinrefが大きくなりすぎるので、下限値を0より若干大きい値(例えば0.02)としても良い。
【0025】
実施例2に係るAC/DCコンバータの制御回路は上記のように構成されているので、負荷電圧voutが0から基準電圧voutrefに上昇していく過程では、出力電圧vinLを出力値voLで除算して得た参照電圧vinrefと、ピエゾ素子1の特性から求めたインピーダンスRmaxに基づいて基準電流iL1refを演算し、iL1=iL1refになるようにスイッチングトランジスタMをPWM制御する。
このため、実施例1に係るAC/DCコンバータの制御回路より迅速に、昇降圧回路3の入力インピーダンス(vin/iL1)がRmaxになるように制御でき、昇降圧回路3の入力インピーダンスをピエゾ素子1の出力インピーダンスにマッチングさせ、ピエゾ素子1から最大電力を取り出すことができる。
そして、実施例1の制御回路と同様に、1つの昇降圧回路及び1つの制御回路によって、負荷電圧vout及び負荷電流iRを適切に制御できるので、回路構成が簡素化されるとともに、消費電力も小さくなる。
さらに、実施例1(実施形態2)に係るAC/DCコンバータでは、負荷電圧voutに応じて制御電圧vpwmを出力する切替回路8を有していたため、制御の複雑化や制御の切り替えに伴う余剰電力による結合用キャパシタC1の電圧上昇といった問題があるが、実施例2に係るAC/DCコンバータでは切替回路8が不要であるため、迅速な制御と電力損失の低減を達成することができる。
【0026】
図8は、実施例2に係るAC/DCコンバータのシミュレーション結果を示す図であり、負荷電圧vout及び負荷電流iRの変化を示している。
シミュレーションの前提条件は、ピエゾ素子1の振動周波数=17Hz、発電電圧=16Vrms、Zp=38kΩ、R=55kΩ、出力値voLの下限値=0.02とした。
図8によれば、定電圧に達する前(0.6秒以前)には、等価抵抗制御法で制御回路が動作し、ピエゾ素子1の発電電力が最大化されていることが分かり、負荷電圧voutが3.3Vに到達する前後でオーバーシュートなどは生じず、一定の電圧3.3Vが得られていることが確認できる。
図9は、等価抵抗制御法として動作している期間におけるSEPIC回路への入力電圧vinL及び入力電流iL1Lの拡大波形を示す図である。
図9によると、SEPIC回路への入力電圧vinと入力電流iL1は同相であり、等価抵抗(vin/iL1)は約38kΩとなっている。
【0027】
実施例1及び2のAC/DCコンバータに関する変形例を列記する。
(1)実施例1及び2では、整流回路2としてブリッジ接続のダイオードD1~D4と、平滑キャパシタCrecからなる全波整流回路を用いたが、サイリスタやトライアックからなる全波整流回路やダイオードからなる半波整流回路等を用いても良い。
(2)実施例1及び2では、昇降圧回路3としてSEPIC回路を用いたが、PWM制御によって入力電圧を昇圧又は降圧して出力することのできる回路であれば、どのような回路構成のものでも良い。
(3)実施例1では、切替スイッチ18として機械的なスイッチを用いたが、トランジスタ等の電子的なスイッチを用いても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 ピエゾ素子 2 整流回路 3 昇降圧回路
4 制御回路 5 定電圧出力制御回路 6 等価抵抗制御回路
7 等価抵抗制御回路 8 切替回路 10 電圧減算器
11 比例積分制御器 12 電圧用ローパスフィルタ 13 除算回路
14 電流用ローパスフィルタ 15 電流減算器 16 比例積分演算器
17 切替用リミッタ 18 切替スイッチ 19 鋸歯状波発生回路
20 比較器 21 電圧減算器 22 比例積分制御器
23 除算用リミッタ 24 電圧用ローパスフィルタ 25 除算器
26 除算回路 27 電流用ローパスフィルタ 28 電流減算器
29 比例積分演算器 30 鋸歯状波発生回路 31 比較器
C1 結合用キャパシタ Cout 平滑用キャパシタ Cp ピエゾ素子1のキャパシタ
Crec 平滑キャパシタ CS 電流センサ D1~D4 ダイオード
D5 整流用ダイオード iL1 整流回路2の出力電流、SEPIC回路の入力電流
iL1L 電流用ローパスフィルタ14、27の出力電流 iL1ref 基準電流
L1、L2 インダクタ M スイッチングトランジスタ
R 負荷 Rmax インピーダンス Rp ピエゾ素子1の抵抗
va 制御用電圧 vb 鋸歯状波発生回路19、30の出力電圧 vd 差電圧
vin 整流回路2の出力電圧、昇降圧回路3の入力電圧 vm 等価抵抗制御用電圧
vo 定電圧制御用電圧 vout 負荷電圧 voutref 基準電圧
vp ピエゾ素子1から出力された交流電圧 vpwm 制御電圧
vrec ピエゾ素子1から出力される交流電圧
Zp ピエゾ素子1の出力インピーダンス値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9