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特開2022-79340建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物、硬化被膜付き無機建材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079340
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物、硬化被膜付き無機建材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/00 20060101AFI20220519BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220519BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220519BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220519BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220519BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220519BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20220519BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C09D4/00
C09D7/61
C09D5/00 D
C09K3/10 E
C09K3/10 L
C09K3/10 Q
C09K3/10 Z
B05D7/00 C
B05D7/24 301T
B05D7/24 301N
B05D3/06 Z
E04F13/14 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190487
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】今吉 幸希
(72)【発明者】
【氏名】牧 和夫
(72)【発明者】
【氏名】下野 大悟
【テーマコード(参考)】
2E110
4D075
4H017
4J038
【Fターム(参考)】
2E110AA14
2E110AA41
2E110AA64
2E110AB02
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB22
2E110BA02
2E110BA12
2E110BB04
2E110GB17W
2E110GB23W
2E110GB43W
2E110GB44W
2E110GB52W
2E110GB54W
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4D075CA38
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4D075DA06
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4D075EB22
4D075EB38
4H017AA04
4H017AA25
4H017AA27
4H017AA31
4H017AB01
4H017AB07
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4H017AC01
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4H017AC08
4H017AC16
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4H017AC19
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4H017AE03
4J038FA121
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4J038FA271
4J038FA281
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4J038HA316
4J038HA366
4J038HA526
4J038HA536
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4J038NA09
4J038NA12
4J038PA17
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性に優れる硬化被膜が得られる活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の提供。
【手段】本発明による建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物は、(A)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(B)非球状無機充填剤と、(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーとを含む建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物であって、
前記(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマー中のオキシアルキレン単位の平均繰り返し単位数を表すnが、1<n≦18であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(B)非球状無機充填剤と、(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーとを含む建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物であって、
前記(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマー中のオキシアルキレン単位の平均繰り返し単位数を表すnが、1<n≦18である、建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
【請求項2】
前記(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーの含有量が、前記エネルギー線硬化型シーラー組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
【請求項3】
前記(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーの含有量c(質量%)と前記式(I)の平均付加数を表すnとの積Xが15≦X≦180である、請求項1または2に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
【請求項4】
前記(B)非球状無機充填剤の含有量が、前記エネルギー線硬化型シーラー組成物の固形分換算100質量%を基準として5質量%以上30質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
【請求項5】
(D)光重合開始剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
【請求項6】
前記建材が、無機建材である、請求項1~5のいずれか一項に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
【請求項7】
少なくとも片面に請求項1~6のいずれか一項に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成された硬化被膜を備える、硬化被膜付き無機建材。
【請求項8】
無機建材の少なくとも片面に、請求項1~6のいずれか一項に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を塗装する工程と、
前記無機建材の塗装面に活性エネルギー線を照射して、前記建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を硬化させて硬化被膜を形成させる工程と、
を含む、硬化被膜付き無機建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物に関する。また、本発明は、無機基材の少なくとも片面が該建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成された硬化被膜を備える硬化被膜付き無機建材に関する。さらに、本発明は、該硬化被膜付き無機建材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石綿セメント板や珪酸カルシウム板等の無機質系基材は不燃性でかつ耐久性に優れているため、無機質系基材に塗装を施して、無機建材として使用されてきた。このような無機建材の強度向上や上塗り塗料の付着性向上のためにシーラー組成物が塗装されて無機建材が製造されている。これら無機建材に用いるシーラー組成物として、有機溶剤型のシーラー組成物が用いられており、有機溶剤の空気中への揮散が問題となっていた。そのため、無機建材への含浸性に優れ、揮発性有機化合物の低減(低VOC)を目的としたシーラー組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年では、外装材の長期的な性能へのニーズ(30年保証等)の高まりに伴い、表面のみならず裏面自体の性能の向上が必要になっている。さらに、外装材は現場施工性の向上の観点から軽量化が進み、外装材自体の各種性能が低下しており、シーラー組成物による性能向上が必要になっている。そのため、建材用のシーラー組成物から得られた硬化被膜は、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性等が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-22172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性に優れる硬化被膜が得られる活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物において、非球状無機充填剤と、特定のポリオキシアルキレン構造を有するモノマーとを併用することにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(B)非球状無機充填剤と、(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーとを含む建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物であって、
前記(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマー中のオキシアルキレン単位の平均繰り返し単位数を表すnが、1<n≦18である、建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
[2] 前記(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーの含有量が、前記エネルギー線硬化型シーラー組成物の固形分換算100質量%を基準として1質量%以上60質量%以下である、[1]に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
[3] 前記(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーの含有量c(質量%)と前記式(I)の平均付加数を表すnとの積Xが15≦X≦180である、[1]または[2]に記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
[4] 前記(B)非球状無機充填剤の含有量が、前記エネルギー線硬化型シーラー組成物の固形分換算100質量%を基準として5質量%以上30質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
[5] (D)光重合開始剤をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
[6] 前記建材が、無機建材である、[1]~[5]のいずれかに記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物。
[7] 少なくとも片面に[1]~[6]のいずれかに記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成された硬化被膜を備える、硬化被膜付き無機建材。
[8] 無機建材の少なくとも片面に、[1]~[6]のいずれかに記載の建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を塗装する工程と、
前記無機建材の塗装面に活性エネルギー線を照射して、前記建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を硬化させて硬化被膜を形成させる工程と、
を含む、硬化被膜付き無機建材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性に優れる硬化被膜が得られる、建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を提供することができる。このような建材は、外装材として好適に使用することができる。また、本発明によれば、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性に優れる硬化被膜を備える無機建材を提供することができる。さらに、本発明によれば、このような無機建材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「活性エネルギー線」とは、紫外線の他、可視光線、赤外線、電子線、X線、γ線、プロトン線、中性子線等を含むものを意味する。
「固形分」とは、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。
【0010】
<活性エネルギー線硬化型シーラー組成物>
本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物は、少なくとも、(A)活性エネルギー線硬化型樹脂と、(B)非球状無機充填剤と、(C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーとを含むものである。本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物は、(D)光重合開始剤や他の成分をさらに含んでもよい。
【0011】
本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成された硬化被膜は、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性に優れるものである。このような硬化被膜は、これらの性能が求められる建材用、特に無機建材用として好適に使用できる。また、本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物は、施工性に優れ、工場での生産性の向上に寄与する。また、低VOC化も可能であり、環境対応に優れた建材を得ることができる。以下、本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の各成分について詳細に説明する。
【0012】
((A)活性エネルギー線硬化型樹脂)
活性エネルギー線硬化型樹脂とは、少なくとも1つ以上の不飽和二重結合を有するオリゴマーおよびポリマーから選択される少なくとも1種である。活性エネルギー線硬化型樹脂は、エネルギー照射された時に不飽和二重結合が重合することで、硬化被膜(硬化物)を形成する。前記不飽和二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等を挙げることができ、活性エネルギー線照射時の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0013】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような活性エネルギー線硬化型樹脂は、従来公知の方法により製造することができる。
【0014】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基(CH=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH=C(CH)-CO-)と、ウレタン結合(-NH・COO-)とを有する。
【0015】
上記ポリイソシアネートとしては、本発明の効果を損なわない限り炭素数を限定するものではないが、たとえば、全炭素数が4~20、好ましくは6~15の直鎖状または分岐状のイソシアネート基含有炭化水素、イソシアネート基含有環状炭化水素、イソシアネート基含有芳香族炭化水素を用いることができる。
【0016】
具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有直鎖状炭化水素、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有分岐鎖状炭化水素、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等のイソシアネート基含有環状炭化水素、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4、4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート基含有芳香族炭化水素等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0017】
上記ポリイソシアネートは、イソシアヌレート等に変性されていてもよく、イソシアヌレート変性されたものとしては、たとえば、イソシアヌレート変性トルエンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記以外のポリイソシアネートとして、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソシアネート基含有アクリレート等の多官能イソシアネートを用いてもよい。このようなポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基を少なくとも1個以上、好ましくは1~5個有する(メタ)アクリレートを用いることができる。また、このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、本発明の効果を損なわない限りその炭素数を限定するものではないが、好ましくは炭素数が2~20の炭化水素部位を有することが望ましい。ここで、炭化水素部位とは、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を有する有機基をいい、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。なお、当該炭化水素部位の一部には、エーテル結合(C-O-C結合)が含まれていてもよい。
【0019】
具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。また、上記以外にも、ポリカプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の変性体を用いてもよい。このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
必要に応じて用いられる、上記水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等の公知のポリオールを用いることができ、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトンポリオール、アルキレンジオール等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。このようなポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、2つの不飽和二重結合をもつ2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることが好ましい。成分を含む活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成される硬化被膜は、密着性により優れる。
【0022】
2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記のポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールと反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、2官能のものを適宜選択して利用することができる。市販品としては、具体的には、EBECRYL210、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL280、EBECRYL284、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、(商品名、以上ダイセル・オルネクス株式会社製)、紫光UV-3310B、紫光UV-6630B、紫光UV-6640B(商品名、以上三菱ケミカル株式会社製)、UA-122P、U-200PA、UA-4200(商品名、以上新中村化学工業株式会社製)、アートレジンUN-333、アートレジンUN-2601、アートレジンUN-2701、アートレジンUN-9000PEP(商品名、以上根上工業株式会社製)等が挙げられる。このような2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、上記の2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとともに、あるいは2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの代わりに、3つ以上の不飽和二重結合をもつ3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有しても良い。3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いる本発明の活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成される硬化被膜は、密着性により優れたものとなる。
【0024】
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記のポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのうち、3官能以上のものを適宜選択して利用することができる。市販品としては、具体的には、EBECRYL 4738、EBECRYL 4740、EBECRYL 8254(商品名、ダイセル・オルネクス株式会社製)等が挙げられる。このような3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、エポキシ系オリゴマーに、(メタ)アクリル酸を付加させて得られる(メタ)アクリル酸変性エポキシ系オリゴマーが挙げられる。変性に供されるエポキシ系オリゴマーとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSまたはフェノールノボラックと、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるオリゴマー、シクロペンタジエンオキシドまたはシクロヘキセンオキシドと、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるオリゴマーが挙げられる。このようなエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
活性エネルギー線硬化型樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーの重量平均分子量は、通常500~100,000、好ましくは600~50,000、より好ましくは1,000~30,000である。本明細書において、重量平均分子量は、(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0027】
活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量は、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは20質量%以上55質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上50質量%以下である。活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成された硬化被膜は、密着性により優れたものとなる。
【0028】
((B)非球状無機充填剤)
本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物は、無機充填剤を含む。本発明で用いる無機充填剤の形状は、球状ではなく、非球状、例えば薄片状、板状、鱗片状である。
【0029】
本発明においては、非球状無機充填剤を用いることで、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成された硬化被膜の耐透水性を向上させることができる。その理由としては、以下の通りと推察される。通常、ポリオキシアルキレン構造を有するモノマー等の含有量が増すほど、硬化被膜自体の親水性が高まり、耐透水性は低下する傾向にある。一方、親油性の非球状無機充填剤とポリオキシアルキレン構造を有するモノマーの組み合わせにおいては、適度に親水変性された当該モノマーにより、無機充填剤との間に静電反発が生じ、無機充填剤が基材面に平行に配列し易くなり、ラビリンス効果(迷路効果)が発現することで、浸透率が大幅に低下するため、耐透水性が向上している推察される。
【0030】
無機充填剤としては、非球状であれば、従来公知の無機充填材を用いることができる。無機充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、クレー、シリカ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、硬化被膜の耐透水性の観点から、タルク、マイカを用いることが好ましい。これらの無機充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
非球状無機充填剤の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上100μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上80μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上50μm以下である。なお、平均粒子径とは、レーザー回折式粒子径分布測定により算出されたD50の値である。
【0032】
非球状無機充填剤が薄片状、板状、または鱗片状の場合、平均アスペクト比(=無機充填剤の平均粒子径/平均厚み)は、好ましくは3~500であり、より好ましくは4~250であり、さらに好ましくは5~100である。なお、平均アスペクト比は、硬化被膜断面のSEM画像から算出することができる。
【0033】
非球状無機充填剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは5質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは7質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上20質量%以下である。非球状無機充填剤の含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成された硬化被膜は、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性により優れたものとなる。
【0034】
((C)ポリオキシアルキレン構造を有するモノマー)
本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物は、下記のポリオキシアルキレン構造を有するモノマーを含む。このようなモノマーを上記の非球状無機充填剤と併用することで、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性に優れる硬化被膜を得ることができる。
【0035】
ポリオキシアルキレン構造を有するモノマー中のオキシアルキレン単位(-(AO)n-)の平均繰り返し単位数を表すnは、1<n≦18であり、2≦n≦15であることが好ましく、3≦n≦12であることがより好ましい。オキシアルキレン単位(-(AO)n-)中のアルキレン基(A)の炭素数は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~5であり、さらに好ましくは2~4である。このようなアルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、およびテトラメチレン基等が挙げられる。本発明においては、オキシアルキレン単位としては、オキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、およびオキシブチレン基(BO)の少なくとも1つを含むことが好ましい。前記ポリオキシアルキレン構造に含まれる複数のアルキレン基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーとしては、例えば、多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物を用いることができる。多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物は、好ましくは、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、およびトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸等が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、イソプロピレンオキサイド、およびブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0037】
2官能の多官能性(メタ)アクリレート変性物としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;
グリセリルジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、グリセリルジ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、グリセリルジ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、グリセリルジ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びグリセリルジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のグリセリルジ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;
1、4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、1、4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、1、4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、1、4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及び1、4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等の1、4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;
1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等の1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;並びに
1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等の1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物等が挙げられる。
【0038】
3官能の多官能性(メタ)アクリレート変性物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;
グリセリルトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、グリセリルトリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、グリセリルトリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、グリセリルトリ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びグリセリルトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のグリセリルトリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;並びに、
トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートのエチレンオキサイド変性物、トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートのプロピレンオキサイド変性物、トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートのイソプロピレンオキサイド変性物、トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートのブチレンオキサイド変性物、及びトリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のトリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートのアルキレンオキサイド変性物等が挙げられる。
【0039】
4官能の多官能性(メタ)アクリレート変性物としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物;並びに
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物等が挙げられる。
【0040】
5官能以上の多官能性(メタ)アクリレート変性物として、具体的には、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物等のジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物等が挙げられる。
【0041】
ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーとしては、市販品を用いることもできる。例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物としては、東洋ケミカルズ株式会社製の商品名:Miramer M3130、Miramer M3160およびMiramer M3190、サートマー社製の商品名:SR454、SR499、およびSR502、大阪有機化学社製の商品名:ビスコート#360等が挙げられる。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物としては、東洋ケミカルズ株式会社製の商品名:Miramer M360、サートマー社製の商品名:SR492およびCD501等が挙げられる。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物としては、日本化薬社製の商品名:TPA-330等が挙げられる。
【0042】
ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーの含有量は、エネルギー線硬化型シーラー組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは1質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上55質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上50質量%以下である。ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーの含有量が上記範囲内であれば、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性により優れる硬化被膜を得ることができる。
【0043】
ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーの含有量c(質量%)と前記式(I)の平均付加数を表すnとの積Xは、好ましくは15≦X≦180であり、より好ましくは30≦X≦150であり、さらに好ましくは40≦X≦130であり、さらにより好ましくは50≦X≦120である。積Xが上記範囲内であれば、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性により優れる硬化被膜を得ることができる。
【0044】
((D)光重合開始剤)
本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を紫外線等の光により重合硬化させる場合には、光重合開始剤を使用する。電子線により重合硬化させる場合は、通常用いない。
【0045】
光重合開始剤は、特に限定されず、従来公知の活性エネルギー線硬化用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系重合開始剤、フォスフィンオキサイド系重合開始剤、ベンゾイルホルメート系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤、ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アセトフェノン系重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、および2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられる。
フォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系重合開始剤としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系重合開始剤としては、チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]およびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、および4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロ-ブタノン-1および2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
【0047】
光重合開始剤の含有量は、硬化性の観点から、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物中に、組成物の固形分換算100質量%を基準として、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上8質量%以下である。
【0048】
(重合禁止剤)
重合禁止剤は、特に限定されず、従来公知の活性エネルギー線硬化用の重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p-tert-ブチルカルビトール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。
【0049】
(その他の成分)
本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分の他にもその他の成分を含んでもよい。その他の成分として、防汚剤、帯電防止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、可塑剤等を必要に応じて配合することができる。
【0050】
<活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の調製方法>
本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0051】
活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の25℃における粘度は、通常、10~20,000mPa・sであり、好ましくは100~10,000mPa・sである。粘度の測定はB型粘度計を用いることができる。
【0052】
本発明においては、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を塗装に適した粘度に調整する等、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤としては、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステル又はエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-又はi-プロパノール、n-、i-、sec-又はt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、水およびこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
【0053】
<硬化被膜付き無機建材>
本発明による硬化被膜付き無機建材は、無機建材の少なくとも片面が、上記の活性エネルギー線硬化型シーラー組成物から形成された硬化塗膜を備えるものである。本発明においては、無機建材の少なくとも片面、特に、外壁の裏面側に硬化塗膜を備えることで、裏面側からの透水による性能劣化を防止し、耐水性等の性能を長期的に維持することができる。
【0054】
建材としては、建築物の構造や仕上げに使用される部材をいう。例えば、窓、壁、天井、床、屋根、建具、壁紙等が挙げられる。特に、壁材や床材等が好ましい。
【0055】
無機建材は、通常用いられる無機質系の基材であれば特に限定されない。例えば、無機質系の基材としては、石綿セメント板、石綿パーライト板、珪酸カルシウム板、石綿セメント珪酸カルシウム板、石膏ボード、モルタルボード、パルプセメント板、木片セメント板、GRC(ガラス繊維強化セメント)ボード、CFRC(カーボン繊維強化セメント)ボード、SFRC(スチール繊維強化セメント)ボード、ロックウール無機質成形体等が挙げられる。
【0056】
建材の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1~30mmが好ましく、1~20mmがより好ましい。
【0057】
<硬化被膜付き無機建材の製造方法>
本発明による硬化被膜付き無機建材は、無機建材の少なくとも片面に、上記の活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を塗装する工程(塗装工程)と、該塗装面に活性エネルギー線を照射して、該活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を硬化させる工程(硬化工程)とを含むものである。
【0058】
(塗装工程)
塗装工程は、無機建材の少なくとも片面に、従来公知の方法により、上記の活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を塗装する工程である。塗装には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗装機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からロールコーターを用いた塗装方法が好ましい。
【0059】
塗装膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、0.5~150μmであることが好ましい。乾燥性、硬化性の観点からより好ましい上限は100μmであり、密着性、耐水性、耐透水性、および耐凍結融解性の観点からより好ましい下限は5μmである。
【0060】
活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗装後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点からより好ましい下限は30℃である。
【0061】
(硬化工程)
硬化工程は、建材の塗装面に活性エネルギー線を照射して、塗装された活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を硬化させて、硬化塗膜を形成する工程である。活性エネルギー線としては、紫外線(遠紫外線、近紫外線等)、赤外線等の光線に加えて、電子線等が挙げられ、中でも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等の面から、紫外線が好ましい。
【0062】
本発明による活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を、上記紫外線等の光線により硬化させる場合は、光重合開始剤を使用する。一方、上記電子線等により硬化させる場合は、通常、光重合開始剤を使用しなくてもよい。
【0063】
紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量(積算光量)は、活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは50~2,000mJ/cmであり、より好ましくは100~1,000mJ/cmである。
【実施例0064】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
[実施例1~11、比較例1~6]
<建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の調製>
まず、建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
・UV硬化性樹脂1:ウレタンアクリレート(大竹明新化学株式会社製、商品名:CUV-35C2)
・UV硬化性樹脂2:エポキシアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名:EBECRYL 3700)
・タルク:非球状(林化成株式会社製、商品名:タルカンパウダーPK-Z)
・マイカ:非球状(平均粒子径:42μm、株式会社ヤマグチマイカ製、商品名:SYA-41R@240)
・アクリルビーズ:球状(アイカ工業株式会社製、商品名:ガンツパールGM-2001)
・重質炭酸カルシウム:球状(丸尾カルシウム株式会社製、商品名:スーパーSS)
・エチレン変性モノマー1:TMP(EO)TA(東洋ケミカルズ株式会社製、商品名:Miramer M3130)
・エチレン変性モノマー2:TMP(EO)TA(東洋ケミカルズ株式会社製、商品名:Miramer M3160)
・エチレン変性モノマー3:TMP(EO)TA(東洋ケミカルズ株式会社製、商品名:Miramer M3190)
・エチレン変性モノマー4:TMP(EO)15TA(東洋ケミカルズ株式会社製、商品名:Miramer M3150)
・プロピレン変性モノマー1:NPG(PO)DA(東洋ケミカルズ株式会社製、商品名:Miramer M216)
・エチレン変性モノマー5:TMP(EO)20TA(新中村化学工業式会社製、商品名:AT-20E)
・光重合開始剤1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resin株式会社製、商品名:Omnirad 184)
・光重合開始剤2:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(IGM Resin株式会社製、商品名:Omnirad TPO)
・親水性モノマー:アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社製、商品名:ACMO)
・非EO変性モノマー1:TMPTA(東洋ケミカルズ株式会社製、商品名:Miramer M300)
・非EO変性モノマー2:(東亜合成株式会社製、商品名:2EHA)
・重合禁止材:ハイドロキノン
・消泡剤:ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名:BYK-1791
【0066】
次に、表1に記載の配合に従って、(A)成分~(D)成分および他の成分を、ホモディスパーを用いて混合・攪拌して、建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を得た。なお、得られたシーラー組成物は、いずれも、塗装用として好適な粘性を有するものであった。
【0067】
<硬化被膜付き無機建材の製造>
無機建材板(珪酸カルシウム板)に、実施例1~11、比較例1~6で得られた建材用活性エネルギー線硬化型シーラー組成物を、スポンジロールコーターを用い、44g/mの塗装量で塗装した。次に、無機建材板の塗装面に、高圧水銀灯(80W/cm、アイグラフィック社製)を用いて積算光量が100mJ/cmとなる量で紫外線を照射し、塗膜を硬化させて硬化被膜付き無機建材を得た。紫外線照射の条件は、光源と塗膜との距離が15cm、無機建材板の移動速度が5m/分であった。また、硬化被膜の膜厚は40μmであった。
【0068】
<硬化被膜付き無機建材の評価>
実施例1~11および比較例1~6で製造した各硬化被膜付き無機建材について、以下に示す評価試験を行った。
【0069】
(密着性試験)
硬化被膜の無機建材への密着性を評価するため、JIS K5400に基づき、碁盤目試験を行った。具体的には、各硬化被膜付き試験片(10mm×10mm)の硬化被膜上にカッターで4mm幅、25マスの傷を入れ、碁盤目を付けた試験片を作製し、「セロテープ(登録商標)」を試験片に貼りつけた後、テープを剥離させ、剥離した硬化被膜の面積で、密着性を下記評価基準に従って評価した。評価基準が4点以上であるものを合格とした。
[評価基準(初期密着性/碁盤目試験)]
・5点:残存マス数が25であった。
・4点:残存マス数が23以上25未満であった。
・3点:残存マス数が21以上23未満であった。
・2点:残存マス数が19以上21未満であった。
・1点:残存マス数が17以上19未満であった。
・0点:残存マス数が19未満であった。
【0070】
(耐水性試験)
硬化被膜の耐水性を評価するため、耐温水試験を行った。具体的には、各硬化被膜付き試験片(10mm×10mm)を60℃の温水に240時間浸漬した。その後、該温水から取り出し、塗膜面を軽く拭いた試験体を用いた以外は、上記の密着性試験と同様にして温水に浸漬した後の塗膜の密着性を下記評価基準に従って評価した。評価基準が4点以上であるものを合格とした。
[評価基準(耐水試験240時間後の密着性/碁盤目試験)]
・5点:残存マス数が25であった。
・4点:残存マス数が23以上25未満であった。
・3点:残存マス数が21以上23未満であった。
・2点:残存マス数が19以上21未満であった。
・1点:残存マス数が17以上19未満であった。
・0点:残存マス数が17未満であった。
【0071】
(耐透水性試験)
硬化被膜の耐透水性を評価するため、耐透水性試験を行った。具体的には、各硬化被膜付き試験片(300mm×300mm)の試験面に200mm×200mm×40mmのステンレス製治具をシリコーン・シーリング材で試験板に取り付け、一昼夜静置してシリコーン・シーリング材を硬化させた。「試験板+治具の重量」(Wo)を測定した。20±5℃の水を約800ml計量し、吸水面に静かに入れた。24時間放置後、水を廃棄し、吸水面に付着した水分を軽く拭き取った後、重量を測定し、次式によって透水量を算出した。耐透水性を下記評価基準に従って評価した。評価基準が3点以上であるものを合格とした。
24時間の透水量(g/m)=(W-Wo)/(0.2×0.2)
[評価基準(24時間の透水量(g/m))]
・5点:24時間の透水量が100g/m未満であった。
・4点:24時間の透水量が100g/m以上200未満であった。
・3点:24時間の透水量が200g/m以上400g/m未満であった。
・2点:24時間の透水量が400g/m以上800g/m未満であった。
・1点:24時間の透水量が800g/m以上1600g/m未満であった。
・0点:24時間の透水量が1600g/m以上であった。
【0072】
(耐凍結融解性)
硬化被膜の耐凍結融解性を評価するため、耐凍結融解試験を行った。具体的には、各硬化被膜付き試験片(80mm×150mm)を-20℃の空気中で2時間冷却した後、20℃の水中で2時間浸漬する操作を1サイクルとし、300サイクル行った。その後、硬化被膜付き試験片に対して、上記の密着性試験と同様にして碁盤目試験を行い、耐凍結融解性試験後の密着性を下記評価基準に従って評価した。評価基準が3点以上であるものを合格とした。
[評価基準(初期密着性/碁盤目試験)]
・5点:残存マス数が25であった。
・4点:残存マス数が23以上25未満であった。
・3点:残存マス数が21以上23未満であった。
・2点:残存マス数が19以上21未満であった。
・1点:残存マス数が17以上19未満であった。
・0点:残存マス数が17未満であった。
【0073】
【表1】