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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079360
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】歩行者用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20220519BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20220519BHJP
【FI】
B60R21/36 352
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190518
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA30
3D054CC11
(57)【要約】
【課題】膨張完了後のエアバッグを、コンパクトに収納部位側に纏め可能な歩行者用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】膨張完了後のエアバッグ45を、纏め手段Tにより、収納部位20側に纏め可能な歩行者用エアバッグ装置。エアバッグとともに折り畳まれて収納部位内に収納されるプロテクタ材85と、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の周囲をくるむラッピング材100と、を備える。プロテクタ材が、本体部86と、本体部の周縁に配設されるストラップ90と、を備える。ラッピング材が、エアバッグの膨張時に切目の周縁部位を破断させることにより、前後に分断可能に構成され、切目の前側近傍の領域に、ストラップを挿通可能な挿通孔110を配設させている。ストラップを挿通孔に挿通させて先端側を挿通孔から抜け不能なように縛ることにより、エアバッグを収納部位側に纏め可能な構成である。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、少なくとも、フロントウィンドシールドの下部前面を覆うように膨張する構成のエアバッグを、備えて、膨張完了後の前記エアバッグを、纏め手段により、纏め可能に構成される歩行者用エアバッグ装置であって、
可撓性を有したシート体から形成されるとともに、平らに展開した状態での前端側を前記収納部位側に連結されて、前記エアバッグとともに折り畳まれて前記収納部位内に収納され、前記エアバッグの膨張時に、前記収納部位から後方に延びて、前記エアバッグの下面側を覆うように配設されるプロテクタ材と、
可撓性を有したシート体から形成されるとともに、前記エアバッグを前記収納部位内に収納可能に折り畳んで形成される折り完了体の周囲をくるむように配置されて前記折り完了体の折り崩れを防止するラッピング材と、
を備え、
前記プロテクタ材が、膨張した前記エアバッグの下面側を覆う本体部と、該本体部の周縁において左右方向側で複数箇所に配設されるストラップと、を備える構成とされ、
前記各ストラップが、前記本体部の周縁近傍に連続的な切目を形成することにより、前記周縁に略沿って配置されるとともに、元部側を連結させた状態で先端側を切り離し可能に、両端側を前記本体部側に連結される構成とされ、
前記ラッピング材が、左右方向に略沿った断続的な切目を設けて前記エアバッグの膨張時に該切目の周縁部位を破断させることにより、前記折り完了体の上面側を覆う部位を略全域にわたって前後に分断可能とする破断予定部を、有する構成とされるとともに、前記切目の前側近傍の領域に、対応する前記ストラップを挿通可能な挿通孔を、左右方向側で複数箇所に配設させる構成とされ、
前記纏め手段が、前記ラッピング材における前記挿通孔を含めた少なくとも前側の領域と、前記プロテクタ材と、から構成されて、先端側を前記プロテクタ材から切り離された状態の前記各ストラップを前記各挿通孔に挿通させて先端側を挿通孔から抜け不能なように縛ることにより、前記エアバッグを前記収納部位側に纏め可能な構成であることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記プロテクタ材が、前記エアバッグの膨張完了時に前記収納部位から後方に突出するように配置される前記本体部と、平らに展開した状態の前記本体部における左右両端側から前方に延びて前記収納部位側に連結される2つの連結片部と、を有し、前記各ストラップを、平らに展開した状態の前記本体部の前縁側に配設させる構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記ラッピング材が、前記各挿通孔の周囲に、前記破断予定部の破断時において部分的に突出するように形成されるタブ部を、配設させるように、構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、少なくとも、フロントウィンドシールドの下部前面を覆うように膨張する構成のエアバッグを、備える構成の歩行者用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者用エアバッグ装置では、作動時に、エアバッグは、フロントウィンドシールドの下部前面を覆うように膨張することとなるが、作動後に車両を運転する場合、エアバッグを展開させた状態では、フロントウィンドシールドの下部前面を覆ったままであることから、視界を確保し難い。そのため、運転席からの視界を確保するために、膨張したエアバッグを収納部位側に縮めつつ纏めておく必要がある。そして、従来、このような問題点を解決するために、歩行者用エアバッグ装置として、エアバッグからストラップ部を延ばし、このストラップ部を利用して、膨張後のエアバッグを纏める構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-168995公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の歩行者用エアバッグ装置では、ストラップ部は、平らに展開した状態のエアバッグにおける四隅付近の表面側(車体から離れた側)に配設される構成とされて、前後で離隔して配置されるストラップ部相互を連結させることにより、膨張後のエアバッグを纏める構成であることから、エアバッグをコンパクトに纏めることに、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了後のエアバッグを、コンパクトに収納部位側に纏め可能な歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置は、車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、少なくとも、フロントウィンドシールドの下部前面を覆うように膨張する構成のエアバッグを、備えて、膨張完了後のエアバッグを、纏め手段により、纏め可能に構成される歩行者用エアバッグ装置であって、
可撓性を有したシート体から形成されるとともに、平らに展開した状態での前端側を収納部位側に連結されて、エアバッグとともに折り畳まれて収納部位内に収納され、エアバッグの膨張時に、収納部位から後方に延びて、エアバッグの下面側を覆うように配設されるプロテクタ材と、
可撓性を有したシート体から形成されるとともに、エアバッグを収納部位内に収納可能に折り畳んで形成される折り完了体の周囲をくるむように配置されて折り完了体の折り崩れを防止するラッピング材と、
を備え、
プロテクタ材が、膨張したエアバッグの下面側を覆う本体部と、本体部の周縁において左右方向側で複数箇所に配設されるストラップと、を備える構成とされ、
各ストラップが、本体部の周縁近傍に連続的な切目を形成することにより、周縁に略沿って配置されるとともに、元部側を連結させた状態で先端側を切り離し可能に、両端側を本体部側に連結される構成とされ、
ラッピング材が、左右方向に略沿った断続的な切目を設けてエアバッグの膨張時に切目の周縁部位を破断させることにより、折り完了体の上面側を覆う部位を略全域にわたって前後に分断可能とする破断予定部を、有する構成とされるとともに、切目の前側近傍の領域に、対応するストラップを挿通可能な挿通孔を、左右方向側で複数箇所に配設させる構成とされ、
纏め手段が、ラッピング材における挿通孔を含めた少なくとも前側の領域と、プロテクタ材と、から構成されて、先端側をプロテクタ材から切り離された状態の各ストラップを各挿通孔に挿通させて先端側を挿通孔から抜け不能なように縛ることにより、エアバッグを収納部位側に纏め可能な構成であることを特徴とする。
【0007】
本発明の歩行者用エアバッグ装置では、膨張完了後のエアバッグを収納部位側に縮めて纏めるための纏め手段が、エアバッグとともに折り畳まれて収納されるプロテクタ材と、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の周囲をくるむラッピング材において破断予定部の破断後における前側の領域と、から構成されており、膨張完了後のエアバッグを、収納部位側に縮めた状態で、プロテクタ材における本体部の周縁から延びるように形成される複数のストラップを、それぞれ、ラッピング材の前側の領域における端縁付近に形成される挿通孔に挿通させて、先端側を挿通孔から抜け不能とするように縛ることにより、エアバッグを収納部位側に纏めることができる。すなわち、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、膨張完了後のエアバッグを収納部位側に縮めて纏めるための纏め手段が、エアバッグと別体として、エアバッグの外表面側に配置されるプロテクタ材とラッピング材とから構成されていることから、エアバッグをコンパクトに纏めやすく、また、エアバッグも支障なく膨張させることができる。そしてさらに、ラッピング材は、折り完了体の折り崩れを防止するように、折り完了体の周囲を覆って、折り完了体とともに収納部位内に収納される構成であることから、破断予定部の破断後における前側の領域の端縁は、収納部位において、エアバッグを突出させるための突出用開口付近に配置されることとなる。すなわち、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、ストラップを、プロテクタ材における本体部の周縁からのみ延ばす構成であり、また、このストラップは、収納部位における突出用開口付近に配設されるラッピング材の端縁側の挿通孔に挿通させて、挿通孔の周縁で縛られる構成であることから、ストラップを挿通孔に挿通させて円滑に挿通孔の周縁で縛るためには、エアバッグを、部分的に収納部位内に押し込むように圧縮させつつ、極力収納部位側で小さく縮める必要があって、エアバッグを収納部位側でコンパクトに纏めることができる。その結果、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、作動後に車両を運転する必要が生じた場合にも、エアバッグを収納部位側に極力コンパクトに纏めることにより、運転席からの視界を支障なく確保することができる。
【0008】
したがって、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、膨張完了後のエアバッグを、コンパクトに収納部位側に纏めることができる。
【0009】
また、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、プロテクタ材に形成されているストラップは、本体部の周縁近傍に、連続的な切目を形成することにより、周縁に略沿って配置されるとともに、元部側を連結させた状態で先端側を切り離し可能に、両端側を本体部側に連結される構成であることから、プロテクタ材をエアバッグとともに折り畳む折畳作業時において、ストラップを、プロテクタ材と一体的に取り扱うことができて、取扱作業性が良好である。
【0010】
さらに、本発明の歩行者用エアバッグ装置において、プロテクタ材を、エアバッグの膨張完了時に収納部位から後方に突出するように配置される本体部と、平らに展開した状態の本体部における左右両端側から前方に延びて収納部位側に連結される2つの連結片部と、を有し、各ストラップを、平らに展開した状態の本体部の前縁側に配設させる構成とすれば、ストラップを本体部の後縁側に配設させる場合と比較して、ラッピング材に形成される挿通孔と、ストラップと、の実質的な離隔距離を、本体部の分短くすることができ、換言すれば、纏め手段において、直接的にエアバッグの周囲に配置される部位として、本体部が含まれていないことから、エアバッグの周囲に配置される部位の周長を短くすることができて、ストラップを、挿通孔を挿通させて縛る際に、ストラップと、ラッピング材における前側の領域と、のみによって、エアバッグを、一層コンパクトに纏めることが可能となって、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、ラッピング材を、挿通孔の周囲に、破断予定部の破断時において部分的に突出するように形成されるタブ部を配設させるように、構成すれば、エアバッグを収納部位側に縮めつつ、ストラップを挿通孔に挿通させる際に、ラッピング材における前側の領域の端縁から部分的に突出しているタブ部を目視し易く、また、タブ部を手で引っ張ることにより、挿通孔へのストラップの挿通作業時の作業性が良好となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
図2】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略拡大縦断面図であり、インフレーターの部位を示す。
図3】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略拡大縦断面図であり、取付ブラケットの部位を示す。
図4】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、インフレーターの部位を示す左右方向に沿った概略縦断面図である。
図5】実施形態の歩行者用エアバッグ装置で使用するエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
図6図4のエアバッグを平らに展開した状態の底面図である。
図7】実施形態の歩行者用エアバッグで使用するプロテクタ材を平らに展開した状態の平面図である。
図8図4のエアバッグと図7のプロテクタ材とを重ねて平らに展開した状態を示す底面図である。
図9】実施形態の歩行者用エアバッグ装置で使用するラッピング材を平らに展開した状態の平面図である。
図10図4のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
図11】エアバッグをプロテクタ材とともに折り畳む折畳工程を示す概略図である。
図12図11の後の工程を示す概略図であり、エアバッグを折り畳み、折り完了後に、折り完了体の周囲をラッピング材によってくるむ工程を示す概略図である。
図13】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略平面図である。
図14】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略縦断面図である。
図15】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、膨張完了後のエアバッグをケース側に接近させて纏め手段により纏める状態を示す概略部分拡大斜視図である。
図16】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、膨張完了後のエアバッグをケース側に接近させて纏め手段により纏める状態を示す概略部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の歩行者用エアバッグ装置M(以下「エアバッグ装置」と省略する)は、車両Vにおけるフードパネル15の後端15c付近に搭載されている。実施形態のエアバッグ装置Mは、図1~3に示すように、フードパネル15の後端15cの後側に近接した位置であって、左右のフロントピラー5L,5Rの間となる車両Vの左右方向の略中央となる位置に、配置されている。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて説明する。
【0014】
フードパネル15は、図1に示すように、車両Vにおけるエンジンルームの上方を覆うように配設されるもので、左右両縁側における後端15c近傍に配置される図示しないヒンジ部により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム(アルミニウム合金)等の板材からなり、図2,3,14に示すように、アウタパネル15aとインナパネル15bとを備えている。フードパネル15は、後述するフロントウィンドシールド4に合わせて、図1に示すように、後端15c側を、左右方向の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。
【0015】
フードパネル15の後方には、図2,3,14に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド4の下部4a側に連ならせるように、配設されている。このカウル7も、フードパネル15の後端15cの湾曲形状に合わせて湾曲して形成されている(図1参照)。また、カウル7の部位には、図1に示すように、ワイパ8が配設されている。このワイパ8は、図2,3,14の二点鎖線に示すように、カウルルーバ7bから上方に突出するように配設されている。フロントウィンドシールド4の左右の外方には、フロントピラー5L,5Rが、配設されている。
【0016】
エアバッグ装置Mは、図2~9に示すように、エアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター30と、エアバッグ45とインフレーター30とを収納する収納部位としてのケース20と、折り畳まれたエアバッグ45を覆うエアバッグカバー25と、エアバッグ45とともに折り畳まれてケース20内に収納されるプロテクタ材85と、エアバッグ45をケース20内に収納可能に折り畳んで形成される折り完了体127の周囲をくるむラッピング材100と、エアバッグ45の後述する取付片部70をケース20に取り付ける取付ブラケット115と、を備えている。
【0017】
収納部位としてのケース20は、板金製として、図2,3に示すように、底壁部21と、底壁部21から上方に延びて上端側を開口させて構成される略四角筒形状の周壁部22と、を備えた略箱形状とされるもので、上端側の突出用開口20aから、膨張するエアバッグ45を突出させる構成である。底壁部21には、インフレーター30を取り付ける取付ボルト39と、エアバッグ45の取付片部70を取り付ける取付ボルト117と、を、それぞれ、挿通させてナット42,119止めして取り付けるための取付孔21aが、形成されている(図2~4参照)。また、実施形態では、プロテクタ材85における連結片部88も、取付ボルト117を利用して、ケース20の底壁部21に取り付けられている。実施形態の場合、ケース20は、前側の領域をフードパネル15の後端15cの直下に位置させ、後側の領域をフードパネル15より後側に位置させるように、配置されるもので、図示しないブラケットを利用して、ボディ1側のカウルパネル7aに取り付けられる構成である。また、ケース20は、フードパネル15の後端15cの湾曲形状に合わせて、湾曲して形成されている(図1参照)。
【0018】
エアバッグカバー25は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質合成樹脂製とされるもので、ケース20の上端側の突出用開口20aを覆うように配置されて、エアバッグ45の展開膨張時に、エアバッグ45に押されて後側に向かって開き可能な扉部26を、有する構成とされている(図2,3,14参照)。このエアバッグカバー25は、所定箇所を、図示しない取付手段を用いてケース20に取り付けられている。
【0019】
インフレーター30は、インフレーター本体31と、インフレーター本体31をケース20に取り付けるための取付ブラケット35と、を備える構成とされている。
【0020】
インフレーター本体31は、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとされるもので、図2,4に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして、エアバッグ45における後述する横膨張部48の前後左右の略中央となる位置の内部に、配置される構成である(図5,6の二点鎖線参照)。インフレーター本体31は、図4に示すように、軸方向の一端側(左端31a側)に、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出部32を配設させて構成されるもので、軸方向の他端側(右端31b側)から延びる図示しないリード線を介して、作動回路と電気的に接続されている。実施形態のエアバッグ装置Mを搭載する車両Vのフロントバンパ6(図1参照)には、歩行者との衝突を検知可能な図示しないセンサが、配設されている。作動回路は、センサからの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター本体31を作動させることとなる。
【0021】
インフレーター本体31をケース20に取り付けるための取付ブラケット35は、図2,4に示すように、インフレーター本体31を保持する保持部36と、保持部36から下方に突出する複数(実施形態の場合、3個)の取付ボルト39と、を備える構成とされている。保持部36は、板金製として、インフレーター本体31の下面側を支持するように左右方向(インフレーター本体31の軸方向)に略沿って延びる帯状として構成され、左右方向に沿った複数箇所(実施形態の場合、3箇所)に、インフレーター本体31を支持する支持片部37を、前後両側に突出させて構成されている。各支持片部37は、インフレーター本体31の外周面を支持可能に、保持部36の前後の縁部から先端を前後の外方に向けつつ上側に向かって延びるように傾斜して形成されるもので、前後で対称形とされている(図2参照)。実施形態の場合、支持片部37は、図4に示すように、取付ボルト39に対応した位置に、形成されている。取付ボルト39は、保持部36の左右両端側と左右の略中央との3箇所に、それぞれ、下方に突出するように形成されている。そして、実施形態では、この取付ブラケット35は、保持部36にインフレーター本体31を保持させた状態で、外周側からクランプ40を巻き付けることにより、インフレーター本体31を取り付ける構成である。クランプ40は、実施形態の場合、左右両端側の2箇所に、配置されている(図4参照)。
【0022】
インフレーター30は、クランプ40を用いて、取付ブラケット35にインフレーター本体31を取り付けた状態で、後述する挿通孔52及び取付孔56から、取付ボルト39を外部に突出させるようにして、インフレーター本体31と取付ブラケット35における保持部36とをエアバッグ45の内部に収納される構成である(図2参照)。そして、インフレーター30は、インフレーター本体31と保持部36とをエアバッグ45の内部に収納させた状態で、ケース20の底壁部21に取り付けられる構成であり、後述する蓋パネル54から突出している取付ボルト39を、プロテクタ材85の連結片部88及びラッピング材100を介して、ケース20の底壁部21から突出させてナット42止めすることにより、エアバッグ45とともに、ケース20に取り付けられる構成である。インフレーター30において、インフレーター本体31と取付ブラケット35における保持部36との外周側には、図示しないインナチューブが、配設されている。
【0023】
エアバッグ45は、図5,6に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体46と、バッグ本体46の後述する車体側壁部46a側をケース20に取り付ける取付片部70と、を備えている。
【0024】
バッグ本体46は、膨張完了時の形状を、正面側から見て、左右に幅広の略U字形状とされるもので、フロントウィンドシールド4の下部4aに略沿うように左右方向に略沿って配置される横膨張部48と、横膨張部48の両端からそれぞれ後方へ延びて左右のフロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側を覆う縦膨張部60L,60Rと、を備えて構成されている。バッグ本体46は、膨張完了時に上面側に位置する歩行者側壁部46bと、歩行者側壁部46bと対向するように下面側に位置する車体側壁部46aと、を有し、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの外周縁相互を全周にわたって結合(縫着)させることにより、袋状とされている。
【0025】
横膨張部48は、実施形態の場合、膨張完了時に、フードパネル15の後端15c側の部位から、カウル7を経て、フロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての領域の上面側(前面側)を、ワイパ8も含めて覆うように構成されている(図13,14参照)。実施形態のバッグ本体46では、車体側壁部46aにおいて、横膨張部48の前後左右の略中央となる位置に、インフレーター30を内部に挿入させるための挿入用開口部50が、形成されている(図6参照)。
【0026】
挿入用開口部50は、図6,10に示すように、車体側壁部46aに形成される挿入用スリット51と、インフレーター30の取付ボルト39を挿通させるための挿通孔52と、挿入用スリット51を外周側から塞ぐ蓋パネル54と、を備えている。挿入用スリット51は、インフレーター30を挿入させるためのもので、インフレーター本体31の軸方向に沿うように、左右方向に略沿った直線状に形成されている。この挿入用スリット51は、長さ寸法を、インフレーター本体31の長さ寸法より小さく設定されている(図6参照)。挿通孔52は、インフレーター30の取付ボルト39を突出させるためのもので、取付ボルト39に対応して、左右方向に沿って3箇所に形成されている。この挿通孔52は、実施形態の場合、バッグ本体46を平らに展開した状態で、挿入用スリット51の前側の領域に形成されている。蓋パネル54は、可撓性を有したシート体からなる別部材から構成されるもので、車体側壁部46aの外周側において、挿入用スリット51を塞ぎ可能に、外形形状を、左右方向側を幅広とした略長方形状とされている。蓋パネル54は、後端54b側を、挿入用スリット51の後側となる位置で、左右の全域にわたって連続的に形成される結合部位55によって車体側壁部46aに結合させ、前端54a側に、インフレーター30の取付ボルト39を突出させるための取付孔56を、挿通孔52に対応して、配設させている構成である。実施形態の場合、蓋パネル54は、図10に示すような蓋パネル用基布82から、形成されている。
【0027】
また、バッグ本体46内には、膨張完了時における歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの離隔距離を規制可能に、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとを連結する前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CRと、左右テザー64L,64Rと、端側テザー65L,65Rと、が、配設されている(図5,6,14参照)。左右テザー64L,64Rは、横膨張部48の前後の略中央よりやや前方となる位置において、左右方向に略沿うように配設されている。前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CRは、各左右テザー64L,64Rの左右の外方となる位置の1箇所と、各左右テザー64L,64Rの前側の2箇所と、に、それぞれ、形成されるもので、前後方向に略沿うようにして、左右方向側で並設されている。左右テザー64L,64Rの外方に配置される前後テザー62AL,62ARは、左右テザー64L,64Rよりも後方に延びるように、幅寸法を、残りの前後テザー62BL,62CL,62BR,62CRよりも大きく設定されている。実施形態の場合、左右テザー64L,64Rと前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CRとには、膨張用ガスを挿通可能に開口した開口部64a,62aが、それぞれ、形成されている(図5,6,10,14参照)。各前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CRには、開口部62aは、上下方向に沿った長孔状として、1つずつ、形成されている。各左右テザー64L,64Rには、開口部64aは、上下方向に沿った長孔状として、2つずつ、形成されている。端側テザー65L,65Rは、横膨張部48と各縦膨張部60L,60Rとの境界部位付近において、それぞれ、左右の内側を後方に位置させるように、左右方向に対して傾斜して、配設されている。これらの各前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CR、左右テザー64L,64R、及び、端側テザー65L,65Rは、バッグ本体46内において、左右対称的に配置されている。
【0028】
バッグ本体46の車体側壁部46a側をケース20に取り付ける取付片部70は、バッグ本体46と別体として、可撓性を有したシート体から構成されるもので、図6に示すように、前端側と後端側とを、車体側壁部46aに結合(縫着)されている。この取付片部70(70L,70R)は、取付ブラケットを用いて、ケース20の底壁部21に取り付けられる構成であり、実施形態の場合、図6に示すように、バッグ本体46を平らに展開した状態で、挿入用開口部50と端側テザー65L,65Rとの間であって、かつ、左右テザー64L,64Rの後側において、略左右対称となる2箇所に、配置されている。この取付片部70(70L,70R)は、車体側壁部46aとの間に、取付ブラケット115の後述する取付プレート116を挿入させるもので(図3参照)、取付ブラケット115に形成される後述する取付ボルト117を挿通可能な貫通孔70aを、有している。
【0029】
実施形態のエアバッグ45は、図10に示すように、バッグ本体46において車体側壁部46aを構成する車体側基布75及び歩行者側壁部46bを構成する歩行者側基布76と、前後テザー62AL,62BL,62CL,62AR,62BR,62CR,左右テザー64L,64R,端側テザー65L,65Rをそれぞれ構成するテザー用基布78A,78B,79,80と、蓋パネル54を構成する蓋パネル用基布82と、取付片部70と、から構成されている。なお、これらの基布(基材)は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布を、所定形状に裁断して、形成されている。
【0030】
エアバッグ45とともに折り畳まれてケース20内に収納されるプロテクタ材85は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、エアバッグ45を構成する基材と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布から、形成されている。プロテクタ材85は、図7に示すように、本体部86と、平らに展開した状態の本体部86における左右両端側から前方に延びるように形成される2つの連結片部88,88と、本体部86の前縁86a側に形成されるストラップ90と、を備えている。
【0031】
本体部86は、エアバッグ45の膨張完了時に、ケース20から突出するように配置されてバッグ本体46(エアバッグ45)の下面側を覆うもので(図13,14参照)、外形形状を、左右方向側に幅広とした略長方形状とされている。具体的には、本体部86は、平らに展開した状態のエアバッグ45に、連結片部88に形成される後述する取付孔89を取付片部70の貫通孔70aと一致させるようにして、平らに展開して重ねられた状態で、図8に示すように、バッグ本体46における横膨張部48の後縁48a側の部位を(縦膨張部60L,60R間の部位)を、覆い可能な大きさに、設定されている。詳細には、本体部86は、左右方向側の幅寸法を、横膨張部48における後縁48a側の部位の左右方向側の幅寸法よりも、若干小さく設定されており、前後方向側の幅寸法を、左右方向側の幅寸法の1/5程度に、設定されて、平らに展開してエアバッグ45に重ねられた状態で、後縁86bを横膨張部48の後縁48aよりも後方に位置させ、前縁86aを横膨張部48の後縁48aよりも前方に位置させる構成とされている(図8参照)。また、この本体部86は、左右方向側の幅寸法を、後述する折り完了体127の左右方向側の幅寸法と略同等として(図12のC,D参照)、ケース20の左右方向の幅寸法と略同等に、設定されている。この本体部86は、エアバッグ45の膨張完了時に、図13,14に示すように、横膨張部48よりも後方に延びるように配置されることとなり、エアバッグ45と、カウルルーバ7bから部分的に上側に突出しているワイパ8と、の接触を、的確に防止することができる。
【0032】
各連結片部88は、本体部86の左右両端側から前方に延びるように形成されるもので、具体的には、図7に示すように、本体部86から左右の外方に突出しつつ前方に延びる略帯状とされている。この連結片部88は、エアバッグ45の取付片部70に対応した位置に配置されるもので、前端88a側(詳細には、前後の中央よりやや前側となる位置)に、取付ブラケット115の取付ボルト117を挿通させるための取付孔89を、有する構成とされている。すなわち、プロテクタ材85は、本体部86から前方に延びる連結片部88の前端88a側(平らに展開した状態での前端側)を、取付ブラケット115を利用して、エアバッグ45の取付片部70とともに、ケース20側(底壁部21)に連結される構成である(図3参照)。
【0033】
本体部86の前縁86a側に形成されるストラップ90は、左右方向側で複数箇所(実施形態の場合、4箇所)に配設されている。各ストラップ90は、本体部86を平らに展開した状態において、本体部86の前縁86a近傍に連続的な切目92を形成することにより、形成されるもので、この切目92を間にするようにして、本体部86の前側で、左右方向に略沿った帯状として、配置されるとともに、両端側(元部90a側と先端90b側)を、本体部86側に連結されている。詳細には、各ストラップ90は、元部90a側を連結させた状態で、先端90b側を、本体部86から切り離し可能に、両端側を本体部86側に連結される構成であり、具体的には、先端90b側を、端末にかけて収束させれるようなテーパ状とするとともに、本体部86と連結させている先端側連結部位94の幅寸法を、元部90a側を本体部86と連結させている元部側連結部位93の幅寸法よりも小さく設定することにより、元部90a側を連結させた状態で、先端90b側を本体部86から切り離し可能とされている。実施形態の場合、各ストラップ90は、先端90bを左右方向の中央側に位置させるように、本体部86における左右方向の中央を中心として、左右対称形に、形成されている(図7参照)。実施形態の場合、これら4つのストラップ90は、間に隙間を殆ど設けず、本体部86の前縁86aの左右の略全域にわたって形成されている。各ストラップ90は、車両Vへの搭載時には、先端90b側の本体部86側との連結を維持され、エアバッグ45の膨張完了後に、先端側連結部位94を破断させるようにして、先端90b側を本体部86から分離させて、ラッピング材100に形成される後述する挿通孔110に挿通可能に、構成されている。
【0034】
エアバッグ45を折り畳んで形成される折り完了体127の周囲をくるむラッピング材100は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、エアバッグ45及びプロテクタ材85を構成する基材と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布から、形成されている。このラッピング材100は、図9に示すように、平らに展開した状態の外形形状を、左右方向側を幅広とした略長方形状として構成されている。ラッピング材100における短手方向側の両方の縁部100a,100b側には、それぞれ、インフレーター30の取付ボルト39と、取付ブラケット115の取付ボルト117と、を挿通可能な挿通孔101,102が、形成されている。そして、ラッピング材100は、両方の縁部100a,100b側の挿通孔101,102に、折り完了体127から突出している取付ボルト39,117を挿通させるようにして折り完了体127の周囲に巻き付けられて、折り完了体127の折り崩れを防止している(図2,3、及び、図12のD参照)。ラッピング材100は、長手方向側(左右方向側)の幅寸法を、折り完了体127の左右方向側の幅寸法と略同一として構成され、短手方向側の幅寸法を、折り完了体127を僅かに圧縮させつつ、折り完了体127の周囲に隙間なく巻き付け可能な寸法に、設定されている。ラッピング材100における短手方向側の中央には、長手方向(インフレーター30の軸方向であって、車両搭載時における左右方向)に略沿った断続的な切目105を設けられるようにして、破断予定部104が、形成されている。また、ラッピング材100において、破断予定部104の前側には、プロテクタ材85に形成されるストラップ90を挿通可能とする挿通孔110が、ストラップ90に対応して、左右方向側で複数箇所(実施形態の場合、4箇所)に、形成されている。各挿通孔110は、長手方向を左右方向に略沿わせた略楕円状に開口して形成されている。破断予定部104を構成する切目105は、左右方向に略沿った直線状として構成される一般部105aと、挿通孔110の後方となる位置において一般部105aから部分的に突出するように形成されて破断時にタブ部111の周縁を形成するタブ側部位105bと、を備えている。タブ側部位105bは、分断時に、先端側にかけて僅かに狭幅の台形状とされるタブ部111を形成可能に、構成されている。この破断予定部104は、車両搭載時に、折り完了体127の上面側を覆う部位の前後の略中央となる位置に、配置されることとなる(図12のD参照)。そして、破断予定部104は、エアバッグの膨張時に、切目105間(一般部105a,105a間、若しくは、一般部105aとタブ側部位105bとの間)の周縁部位(連結部位106)を破断させることにより、ラッピング材100を、左右の全域にわたって前後で分断させることとなる。
【0035】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張完了後のエアバッグ45を、纏め手段Tにより収納部位としてのケース20側に纏め可能な構成とされるもので、纏め手段Tは、ラッピング材100において破断予定部104の破断後の前側部位108と、プロテクタ材85と、から、構成されている。具体的には、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ45の膨張完了後に、エアバッグ45を、内部から膨張用ガスを抜くように圧縮させて、ケース20側に縮めつつ、本体部86から先端90b側を切り離された状態の各ストラップ90を、それぞれ、ケース20の突出用開口20a付近に配置されているラッピング材100の前側部位108の端縁108a近傍に配置される挿通孔110に挿通させて、先端90b側を、挿通孔110の周縁において挿通孔110から抜け不能なように縛れば(実施形態の場合、挿通孔110よりも先端側の部位で結び目130を形成するように縛れば)、エアバッグ45をケース20側に纏めることができる(図15,16参照)。そして、ラッピング材100における前側部位108の幅寸法(平らに展開した状態での前後方向側での幅寸法)、プロテクタ材85における各ストラップ90の長さ寸法、及び、連結片部88の長さ寸法(平らに展開した状態の前後方向側での幅寸法)は、ストラップ90を挿通孔110に挿通させた状態で、挿通孔110の周縁で支障なく縛り可能で、かつ、エアバッグ45を、極力、ケース20側にコンパクトに纏め可能な寸法に、設定されている。
【0036】
エアバッグ45の取付片部70をケース20の底壁部21に取り付ける取付ブラケット115は、それぞれ、略長方形板状の取付プレート116と、取付プレート116から下方に突出する取付ボルト117と、を備えている。取付プレート116は、外形形状を、図6の二点鎖線に示すように、左右方向側を幅広とした略長方形板状とされている。取付ボルト117は、詳細な図示は省略するが、左右方向に沿って2個並設されている。この取付ブラケット115は、取付片部70から突出している取付ボルト117を、プロテクタ材85の連結片部88に形成される取付孔89と、ラッピング材100に形成される挿通孔102と、に挿通させつつ、ケース20の底壁部21から突出させてナット119止めすることにより、取付片部70を、ケース20の底壁部21に取り付ける構成である。このとき、プロテクタ材85の連結片部88も、ケース20の底壁部21側に共止めされることとなる(図3参照)。
【0037】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。インフレーター30は、クランプ40を利用して取付ブラケット35にインフレーター本体31を保持させた状態として、予め、挿入用スリット51を経て、エアバッグ45内に挿入させておく。このとき、インフレーター本体31を保持している取付ブラケット35の取付ボルト39は、挿通孔52と、蓋パネル54の取付孔56と、から突出させておく。また、取付ブラケット115も、取付片部70に、貫通孔70aから取付ボルト117を突出させるようにして、取り付けておく。そして、まず、エアバッグ45をケース20内に収納可能に折り畳む。具体的には、車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとを重ねて平らに展開した状態のエアバッグ45の車体側壁部46a側に、取付ボルト39を取付孔89から突出させるようにして、平らに展開した状態のプロテクタ材85を重ね(図11のA参照)、その後、エアバッグ45を、図11のBに示すように、プロテクタ材85ごと、歩行者側壁部46b相互を重ねるようにして、前後方向側の幅寸法を縮めるように二つ折りし、初期折りバッグ125を形成する。次いで、この初期折りバッグ125の左端125a側と右端125b側とを、それぞれ、左右の中央側に接近させつつ蛇腹折りするようにして、歩行者側壁部46b側に乗せ、ケース20内に収納可能に左右方向側の幅寸法を縮められた左右縮小折りバッグ126を形成する(図11のB,C参照)。その後、左右縮小折りバッグ126を、図12のA,Bに示すように、前縁126a側から歩行者側壁部46b側に向かって巻くようにロール折りして、折り完了体127を形成する(図12のB参照)。次いで、折り完了体127の周囲に、各挿通孔101,102から取付ボルト39,117を突出させるようにして、ラッピング材100を巻き付ける(図12のC,D参照)。
【0038】
その後、各取付ボルト39,117を底壁部21から突出させるようにして、折り完了体127をケース20内に収納させ、底壁部21から突出している各取付ボルト39,117に、ナット42,119を締結させれば、エアバッグ45とインフレーター30とをケース20に取り付けることができ、また、プロテクタ材85の前端側(連結片部88)をケース20側に取り付けることができる。そして、エアバッグカバー25をケース20に取り付け、ケース20から延びる図示しないブラケットを、カウルパネル7aに取り付け、インフレーター本体31を、図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Mを、車両Vに搭載することができる。
【0039】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ6に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター30が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ45が膨張することとなる。膨張するエアバッグ45は、まず、ラッピング材100の破断予定部104を破断させてラッピング材100を前側部位108と後側部位113とに分断させ、エアバッグカバー25の扉部26を押し開き、扉部26を押し開いて形成されるケース20の突出用開口20aから、上方に向かって突出することとなる。そして、エアバッグ45は、フードパネル15の後端15cの上面からカウル7の上面を経てフロントウィンドシールド4の下部4a前面側にかけてと、フロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側と、を覆うように、膨張を完了させることとなる(図13,14参照)。
【0040】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張完了後のエアバッグ45を収納部位としてのケース20側に縮めて纏めるための纏め手段Tが、エアバッグ45とともに折り畳まれて収納されるプロテクタ材85と、エアバッグ45を折り畳んで形成される折り完了体127の周囲をくるむラッピング材100において破断予定部104の破断後における前側の領域(前側部位108)と、から構成されており、膨張完了後のエアバッグ45を、ケース20側に縮めた状態で、プロテクタ材85における本体部86の周縁(実施形態の場合、本体部86の前縁86a)から延びるように形成される複数のストラップ90を、それぞれ、ラッピング材100の前側の領域(前側部位108)における端縁108a付近に形成される挿通孔110に挿通させて、先端90b側を挿通孔110から抜け不能とするように縛ることにより(実施形態の場合、ストラップ90を、挿通孔110よりも先端側の部位で結び目130を形成するように縛ることにより)、エアバッグ45をケース20側に纏めることができる(図15,16参照)。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張完了後のエアバッグ45をケース20側に縮めて纏めるための纏め手段Tが、エアバッグ45と別体として、エアバッグ45の外表面側に配置されるプロテクタ材85とラッピング材100とから構成されていることから、エアバッグ45をコンパクトに纏めやすく、また、エアバッグ45も支障なく膨張させることができる。そしてさらに、ラッピング材100は、折り完了体127の折り崩れを防止するように、折り完了体127の周囲を覆って、折り完了体127とともにケース20内に収納される構成であることから、破断予定部104の破断後における前側部位108の端縁108aは、ケース20において、エアバッグ45を突出させるための突出用開口20a付近に配置されることとなる。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ストラップ90を、プロテクタ材85における本体部86の周縁(前縁86a)からのみ延ばす構成であり、また、このストラップ90は、ケース20における突出用開口20a付近に配設されるラッピング材100の端縁108a側の挿通孔110に挿通させて、挿通孔110の周縁で縛られる構成であることから、ストラップ90を挿通孔110に挿通させて円滑に挿通孔110の周縁で縛るためには、エアバッグ45を、部分的にケース20内に押し込むように圧縮させつつ、極力、ケース20側で小さく縮める必要があって、エアバッグ45をケース20側でコンパクトに纏めることができる。その結果、実施形態のエアバッグ装置Mでは、作動後に車両を運転する必要が生じた場合にも、エアバッグ45をケース20側に極力コンパクトに纏めることにより、運転席からの視界を支障なく確保することができる。
【0041】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張完了後のエアバッグ45を、コンパクトにケース20側に纏めることができる。
【0042】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、プロテクタ材85に形成されているストラップ90は、本体部86の周縁近傍(前縁86a近傍)に、連続的な切目92を形成することにより、周縁(前縁86a)に略沿って配置されるとともに、元部90a側を連結させた状態で先端90b側を切り離し可能に、両端側を本体部86側に連結される構成であることから、プロテクタ材85をエアバッグ45とともに折り畳む折畳作業時において、ストラップ90を、プロテクタ材85と一体的に取り扱うことができて、取扱作業性が良好である。
【0043】
さらに、実施形態のエアバッグ装置では、プロテクタ材85が、エアバッグ45の膨張完了時にケース20から後方に突出するように配置される本体部86と、平らに展開した状態の本体部86における左右両端側から前方に延びてケース20側に連結される2つの連結片部88,88と、を有し、各ストラップ90を、平らに展開した状態の本体部86の前縁86a側に配設させる構成とされている。そのため、ストラップを本体部の後縁側に配設させる場合と比較して、ラッピング材100に形成される挿通孔110と、ストラップ90と、の実質的な離隔距離を、本体部の分短くすることができ、換言すれば、纏め手段Tにおいて、直接的にエアバッグ45の周囲に配置される部位として、本体部86が含まれていないことから、エアバッグ45の周囲に配置される部位の周長を短くすることができて、ストラップ90を、挿通孔110を挿通させて縛る際に、ストラップ90と、ラッピング材100における前側部位108と、のみによって、エアバッグ45を、一層コンパクトに纏めることができる。なお、このような点を考慮しなければ、ストラップは、プロテクタ材の後縁側に配設させる構成としてもよい、
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ラッピング材100が、挿通孔110の周囲に、破断予定部104の破断時において部分的に突出するように形成されるタブ部111を配設させるように、構成されている。そのため、エアバッグ45をケース20側に縮めつつ、ストラップ90を挿通孔110に挿通させる際に、ラッピング材100における前側部位108の端縁108aから部分的に突出しているタブ部111を目視し易く、また、タブ部111を手で引っ張ることにより、挿通孔110へのストラップ90の挿通作業時の作業性が良好となる。なお、このような点を考慮しなければ、挿通孔の周囲に、タブ部を設けない構成としてもよい。
【0044】
実施形態のエアバッグ装置Mにおいて、膨張完了後のエアバッグ45のケース20側への纏め作業を具体的に説明すれば、膨張完了後のエアバッグ45は、詳細な図示を省略するが、縦膨張部60L,60Rを、前方に縮ませ、その後、横膨張部48の中央側へ折り返しつつ、横膨張部48もケース20側に接近させるように、前後を縮ませるようにして、ケース20側に纏められる。このとき、エアバッグ45は、内部から膨張用ガスを抜くように、圧縮させる。その後、さらに、エアバッグ45をケース20内に押し込むように膨張用ガスを抜きながら圧縮させつつ、プロテクタ材85における本体部86の前縁86a側から延びているストラップ90を、それぞれ、ラッピング材100の前側部位108の端縁108a側において、対応する位置に配置される挿通孔110に挿通させた状態で、挿通孔110から抜け不能とする結び目130を、挿通孔110よりも先端側となる位置で形成するように縛れば、エアバッグ45をケース20側に極力コンパクトに纏めることができる(図15,16参照)。そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ストラップ90を備えるプロテクタ材85の本体部86は、左右方向側の幅寸法を、ケース20の左右方向側の幅寸法と略同一として構成され、この本体部86の前縁86a側において前縁86aに沿うように配置されるストラップ90と、ストラップ90を挿通させる挿通孔110と、は、左右方向側で4箇所に配置されていることから、ケース20の左右の略全域にわたる広い範囲にわたって、エアバッグ45を、ケース20内に押し込みつつ、安定して、ケース20側にコンパクトに纏めることができる。なお、実施形態では、各ストラップ90の先端90b側は、挿通孔110に挿通させた状態で、先端側に結び目130を形成することにより、挿通孔110から抜け不能とされているが、勿論、ストラップの縛り方は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、ストラップの先端側を、挿通孔に挿通させた状態で、タブ部の周囲に巻き付けて縛ることにより、挿通孔から抜け不能としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
4…フロントウィンドシールド、4a…下部、15…フードパネル、15c…後端、20…ケース(収納部位)、20a…突出用開口、30…インフレーター、45…エアバッグ、85…プロテクタ材、86…本体部、86a…前縁、88…連結片部、90…ストラップ、90a…元部、90b…先端、100…ラッピング材、104…破断予定部、105…切目、106…連結部位(周縁部位)、108…前側部位、108a…端縁、110…挿通孔、111…タブ部、127…折り完了体、T…纏め手段、V…車両、M…歩行者用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16