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▶ 株式会社ピラミッドの特許一覧

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  • 特開-ゴム巻き取り用ライナー 図1
  • 特開-ゴム巻き取り用ライナー 図2
  • 特開-ゴム巻き取り用ライナー 図3
  • 特開-ゴム巻き取り用ライナー 図4
  • 特開-ゴム巻き取り用ライナー 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079370
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】ゴム巻き取り用ライナー
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/00 20060101AFI20220519BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B29D30/00
B32B27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190545
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】390007054
【氏名又は名称】株式会社ピラミッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】倉富 敏史
【テーマコード(参考)】
4F100
4F215
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DD01A
4F100JA12A
4F215AH20
4F215VA12
4F215VM04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】破損等が生じてもゴム部材に異物を混入させる可能性が低いゴム巻き取りライナーを提供する。
【解決手段】ゴム巻き取りライナー1は、未加硫ゴムの巻き取りに使用され、非晶性フィルム7を含む。非晶性フィルム7は、例えば、非晶性樹脂をフィルム状にしたものである。非晶性フィルム7は、表面にエンボス加工がなされたものでもよい。また、ゴム巻き取りライナー3は、非晶性フィルム7を芯材として複数の他の材料5,9を貼り合わせたものであってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性のフィルムを含むゴム巻き取り用ライナー。
【請求項2】
前記非晶性のフィルムの単体構造を含み、前記非晶性のフィルムは、非晶性樹脂をフィルム状にしたものである、請求項1記載のゴム巻き取りライナー。
【請求項3】
前記非晶性のフィルムは、表面にエンボス加工がなされたものである、請求項2に記載のゴム巻き取りライナー。
【請求項4】
前記非晶性のフィルムを芯材として複数の材料を貼り合わせたものである、請求項1から3のいずれかに記載のゴム巻き取りライナー。
【請求項5】
未加硫ゴムの巻き取りに使用される、請求項1から4のいずれかに記載のゴム巻き取りライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ゴム巻き取り用ライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム部材の巻き取りを行うときに、ゴム同士の密着を防ぐためにライナーと呼ばれる緩衝材が使用されている(特許文献1など参照)。ライナーは、例えば、布や積層フィルムが使用されている。ここで、積層フィルムは、複数の材料を何層にも組み合わせてフィルム化したものである
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-026964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、布のライナーでは布の糸が切れたり、積層フィルムではフィルムの表面が割れたり中の基材が剥がれたりして、ゴム部材に異物を混入させる問題が生じる可能性がある。
【0005】
図4は、従来のライナーに使用されている積層フィルムの一例を示す。図4(a)は、複数の材料を多数の層に組み合わせてフィルム化したものである。図4(b)及び(c)は、図4(a)の積層フィルムを芯材として、複合材料(ウレタン、布、フィルムなど)を貼り合わせて作ったものである。
【0006】
図5は、図4(a)の積層フィルムの引裂き実験を示す。
【0007】
図5(a)及び(b)は、引裂き方向をヨコとした場合である。積層フィルムを構成する材料の一つは、2軸(縦・横)もしくは、3軸(縦・両斜)構造のものであり、格子状・メッシュ状のものである。切れ込みを格子の交点上とした場合について3回、切れ込みを格子の間とした場合について3回、実験を行ったときの引裂強力(N)の平均は、最大凸点で57.0N、全凹凸平均で29.0Nであった。
【0008】
図5(c)は、引裂き方向をタテとした場合である。切れ込みを格子の交点上とした場合について3回、切れ込みを格子の間とした場合について3回、実験を行ったときの引裂強力(N)の平均は、最大凸点で45.5N、全凹凸平均で27.0Nであった。
【0009】
さらに、積層フィルムは、引裂かれた個所で基材が剥がれている(図5(b)参照)。また、引裂かれた個所ではフィルムの表面が割れている(図5(c)参照)。そのため、ゴム部材に異物を混入させる可能性がある。こととなる。
【0010】
そこで、本願発明は、破損等が生じてもゴム部材に異物を混入させる可能性が低いゴム巻き取り用ライナーを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の第1の観点は、非晶性のフィルムを含むゴム巻き取り用ライナーである。
【0012】
本願発明の第2の観点は、第1の観点のゴム巻き取りライナーであって、前記非晶性のフィルムの単体構造であって、前記非晶性のフィルムは、非晶性樹脂をフィルム状にしたものである。
【0013】
本願発明の第3の観点は、第2の観点のゴム巻き取りライナーであって、前記非晶性のフィルムは、非晶性樹脂をフィルム状にして表面にエンボス加工がなされた単体構造である。
【0014】
本願発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点のゴム巻き取りライナーであって、前記非晶性のフィルムを芯材として複数の材料を張り合わせたものである。
【0015】
本願発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点のゴム巻き取りライナーであって、未加硫ゴムの巻き取りに使用される。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の各観点によれば、非晶性のフィルムを利用することによって、破損した場合でも割れたり剥がれたりせずに徐々に裂けることとなり、ゴム部材に異物を混入させる可能性を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願の発明の実施の形態に係るゴム巻き取りライナーの構成の一例を示す図である。
図2図1のゴム巻き取りライナーの構成の具体例を示す図である。
図3図2(a)の非晶性フィルムの引裂き実験を示す。
図4】従来のライナーに使用されている積層フィルムの一例を示す。
図5図4(a)の積層フィルムの引裂き実験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例0019】
図1は、本願の発明の実施の形態に係るゴム巻き取りライナーの構成の一例を示す図である。図1(a)及び(b)を参照して、ゴム巻き取りライナー1は、非晶性材料をフィルム状にしたものであり、非晶性のフィルムの単体構造である。また、図1(c)及び(d)は、図1(a)及び(b)のゴム巻き取りライナーを芯材として、複合材料(ウレタン、布、フィルムなど)を貼り合わせて作ったゴム巻き取りライナー3である。図1(c)及び(d)において、非晶性材料をフィルム化した非晶性フィルム7を芯材とし、他の材料5及び9を張り合わせたものである。芯材は、表面処理を行わなくてもよく、また、例えばブラスト処理や大気プラズマ処理などの表面処理を行ってもよい。
【0020】
図2は、図1のゴム巻き取りライナーの構成の具体例を示す図である。図2(a)を参照して、本願発明のゴム巻き取りライナーの一例は、非晶性樹脂をフィルム状にしたものであり、非晶性のフィルムの単体構造である。具体的には、NC-PET(登録商標)を使用した。また、図2(b)及び(c)は、図2(a)の非晶性フィルム11を芯材として、複合材料(ウレタン、布、フィルムなど)を張り合わせて作ったものである。
【0021】
ゴム部材を巻き取るときに、ライナーにシワや傷が生じると、そこを起点としてゴム部材が密着し、基材を引き裂いたり、破断を起こしたり、ゴム部材に異物を混入させたりする問題が生じる。
【0022】
図3は、図2(a)の非晶性フィルムの引裂き実験を示す。
【0023】
図3(a)は、引裂き方向をヨコとした場合である。切れ込みを入れて3回実験を行ったときの引裂強力(N)は、最大凸点が84N、55N、66Nであり平均が68.3N、全凹凸平均が44N、34N、40Nであり平均が39.3Nであった。
【0024】
図3(b)は、引裂き方向をタテとした場合である。切れ込みを入れて3回実験を行ったときの引裂強力(N)は、最大凸点が47N、48N、49Nであり平均が48.0N、全凹凸平均が37N、38N、39Nであり平均が38.0Nであった。
【0025】
引裂強力は、図5の場合と比較して、タテ及びヨコのいずれも大きく、ライナーとして使用できる能力を有している。なお、ナナメ方向の引裂強力(N)は、図4(a)では最大凸点の平均が37.3N、全凹凸平均の平均が17.5Nであったのに対し、図2(a)では最大凸点の平均が102.3N、全凹凸平均の平均が55.3Nであった。
【0026】
さらに、非晶性フィルムは、しなやかで芯材に適しており、非晶性であるために引裂かれた個所で徐々に破れており、裂けた断面が滑らかであり、剥がれたり割れたりしていない。そのため、ゴム部材に異物を混入させる可能性を低下させることができる。
【0027】
図2(a)の非晶性フィルムは、剥離性評価(ゴム密着テスト)、水・ガソリン含浸評価(水・ガソリンに含浸したときの性能の変化)、剛軟度評価(サンプルをループ状にして圧縮した際の抵抗力)などの評価実験で、少なくとも同等の性能を示している。そのため、耐水、耐溶剤によって破壊されることもなく、タイヤ工程で使用されるゴムセメントにも破壊されることはない。さらに、芯材として使用した場合に、表面加工を行わなかったときの接着力が、図2(b)及び(c)のものは1.42(N/25mm)であったのに対し、図4(b)及び(c)のものは1.27(N/25mm)であり、接着力を改善できる。さらに、ブラスト+大気プラズマ処理により表面加工を行うと、接着力が、図2(b)及び(c)のものは3.09(N/25mm)であったのに対し、図4(b)及び(c)のものは2.63(N/25mm)であり、接着力を大きく改善できる。
【符号の説明】
【0028】
1,3 ゴム巻き取りライナー、5,9 他の材料、7,11 非晶性フィルム
図1
図2
図3
図4
図5