(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079408
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】変性マレイミド化合物、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20220519BHJP
C07D 207/444 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C08G59/40
C07D207/444
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021105059
(22)【出願日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】202011281582.7
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】514309583
【氏名又は名称】廣東生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 偉
(72)【発明者】
【氏名】▲ケイ▼ 龍
(72)【発明者】
【氏名】黄 天 輝
(72)【発明者】
【氏名】遊 江
(72)【発明者】
【氏名】許 永 静
【テーマコード(参考)】
4C069
4J036
【Fターム(参考)】
4C069AD08
4C069BA08
4C069BB49
4C069BC12
4C069CC13
4J036AA01
4J036AA05
4J036AE05
4J036DA09
4J036DC39
4J036DC40
4J036DC42
4J036DC44
4J036FA05
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】変性マレイミド化合物、その調製方法および使用を提供する。
【解決手段】変性マレイミド化合物の調製原料に、マレイミド基含有化合物と、式Iで表される構造を有する活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物とが含まれている。この2種の活性基が互いに協力することで、前記変性マレイミド化合物がより高い反応架橋ポイント、低い吸水率、低い誘電率および誘電損失を有する。前記変性マレイミド化合物を硬化剤としてエポキシ樹脂と反応させて得た硬化生成物は、吸水率が低く、ガラス転移温度が高く、優れた誘電性能、耐熱性および耐湿熱性、低い熱膨張係数、および強い金属結合力を有するとともに、高性能回路基板の使用ニーズを十分に満たすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調製原料に、マレイミド基含有化合物と、式Iで表される構造を有する活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物とが含まれている、ことを特徴とする変性マレイミド化合物。
【化1】
(ただし、Arは、置換または非置換のC6~C30の二価の芳香族基から選ばれ、
Xは、置換または非置換のC6~C20のアリール基、
【化2】
置換または非置換のC1~C20の直鎖または分岐鎖アルキル基、置換または非置換のC3~C20のシクロアルキル基から選ばれ、
X
1、およびX
2は、各々独立に置換または非置換のC6~C12のアリール基から選ばれ、
Y
1は、C1~C5の直鎖または分岐鎖アルキレン基、-O-、-S-、スルホン基またはスルホキシド基から選ばれ、
Ar、およびXにおける前記置換の置換基が各々独立にF、C1~C5の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれる。)
【請求項2】
前記Arは、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、置換または非置換のビフェニレン基から選ばれ、前記置換の置換基がF、C1~C5の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、
好ましくは、前記Xは、C1~C10の直鎖または分岐鎖アルキル基、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のナフチル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のビフェニルエーテル基から選ばれ、前記置換の置換基がF、C1~C5の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、
好ましくは、前記マレイミド基含有化合物は、マレイミド基含有モノマーおよび/またはマレイミド基含有ポリマーを含み、
好ましくは、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物の用量が0.05~1molであり、0.1~0.75molであることがさらに好ましい、ことを特徴とする請求項1に記載の変性マレイミド化合物。
【請求項3】
前記調製原料に、式IIで表される構造を有する芳香族ジアミン化合物がさらに含まれている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の変性マレイミド化合物。
【化3】
(ただし、Ar
1、およびAr
2は、各々独立に置換または非置換のC6~C30のアリーレン基から選ばれ、Ar
1、およびAr
2における前記置換の置換基が各々独立にF、C1~C5の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、
Yは、C1~C5の直鎖または分岐鎖アルキレン基、-O-、
【化4】
【化5】
【化6】
Ar
3、およびAr
4は、各々独立に置換または非置換のC6~C30の二価の芳香族基から選ばれ、
Ar
3、およびAr
4における前記置換の置換基が各々独立にハロゲン、非置換またはハロゲン化のC1~C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、アリール基ホスフィンオキシド構造を含有する基から選ばれ、
Zは、C1~C20の直鎖または分岐鎖アルキレン基、C3~C20のシクロアルキレン基、C6~C20のアリーレン基またはビフェニレンエーテル基から選ばれ、
nは、0~10から選ばれ、
好ましくは、前記Ar
1、およびAr
2は、各々独立に置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、或いは置換または非置換のビフェニレン基から選ばれ、前記置換の置換基が各々独立にF、C1~C5の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、
好ましくは、前記Ar
3、およびAr
4は、各々独立に、
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
Y
2は、非置換またはハロゲン化のC1~C5の直鎖または分岐鎖アルキレン基、-O-、-S-、
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
R1、およびR2は、各々独立にハロゲン、非置換またはハロゲン化のC1~C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、
【化17】
【化18】
n
1、およびn
3は、各々独立に0~4の整数から選ばれ、
n
2は、0~6の整数から選ばれ、
好ましくは、前記Ar
3、およびAr
4は、各々独立に
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
好ましくは、前記Zは、C1~C5の直鎖または分岐鎖アルキレン基、C3~C12シクロアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基またはフェニレンエーテル基から選ばれ、
好ましくは、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物および前記芳香族ジアミン化合物におけるアミノ基の合計量が0.05~1molであり、0.1~0.6molであることがさらに好ましく、
好ましくは、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記芳香族ジアミン化合物の用量が0.01~0.25molである。)
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の変性マレイミド化合物の調製方法であって、
マレイミド基含有化合物、式Iで表される構造を有する活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物、および式IIで表される構造を有していてもよい芳香族ジアミン化合物を反応させて前記変性マレイミド化合物を得ることを含む、調製方法。
【請求項5】
前記反応の温度が70~200℃であり、80~170℃であることがさらに好ましく、
好ましくは、前記反応の時間が0.5~8hであり、
好ましくは、前記反応が保護ガス雰囲気下で行われ、
好ましくは、前記反応が溶剤の存在下で行われる、ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
エポキシ樹脂と、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性マレイミド化合物と、を含み、
好ましくは、他の硬化剤、難燃剤、無機フィラー、有機フィラーまたは硬化促進剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せをさらに含む、ことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
原料に請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物が含まれている、ことを特徴とする半導体シール材。
【請求項8】
基材、および浸漬し乾燥して前記基材に付着された請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物を含み、
好ましくは、前記基材は、ガラス繊維布、不織布またはクォーツクロスのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項9】
少なくとも1枚の請求項8に記載のプリプレグ、および前記プリプレグの一方側または両側に設けられた金属箔を含む、ことを特徴とする回路基板。
【請求項10】
基材薄膜または金属箔、および前記基材薄膜または金属箔の少なくとも1つの表面に塗布された請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物を含む、ことを特徴とする積層薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張板の技術分野に属し、具体的に、変性マレイミド化合物、その調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報産業の迅速な発展に伴い、電子製品が日々に小型・軽薄化、高性能化、多機能化になっている。各種の電子機器の発展ニーズを満たすために、情報通信機器は、信号伝送の高速化、高周波数化になる傾向があり、集積回路は、高密度、高精度および高集積の方向へ進んでいる。そのため、印刷回路基板の製造プロセスの信頼的なニーズを満たすように、印刷回路基板の材料が良好な誘電性能を有しながら、基材が良好な耐熱性を有することが求められている。たとえば、薄型化及び低コスト化で普及されたスマートフォンなどの基板では、薄型化に対応するために誘電率が相対的に低い材料が求められている。サーバ、ルータおよび移動局などを代表とする通信システムの機器では、より高い周波数帯域で用いることができるとともに、融点の高い鉛フリー半田を電子部材のろう付けに用いることができるために、誘電性能(誘電率および誘電損失)が低く、ガラス転移温度(Tg)が高く、リフロー耐熱性に優れた材料が求められている。
【0003】
マレイミド樹脂は、高性能のベース樹脂であり、その硬化物にはガラス転移温度が高く、耐熱性が高く、力学的性能および誘電性能が良好であるなどの利点がある。たとえば、CN105385105Aでは、ビスマレイミド変性エポキシ樹脂、その調製方法およびその使用が開示されている。その調製方法は、まず、変性剤、エポキシ樹脂およびビスマレイミドを反応させて樹脂ゲルを形成し、前記樹脂ゲルを硬化剤、および硬化促進剤と反応させ続けてビスマレイミド変性エポキシ樹脂を得ることを含む。そのうち、変性剤は、o-ジアリルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2-アリルフェノールビスフェノールSまたはジアリルエーテルのアリル化合物から選ばれる。上述した方法により得られた変性エポキシ樹脂は、耐高温で、損失が低く、耐湿熱性がよく、力学的性能が良好な銅張板基材を製造するために用いることができる。CN101652026Aでは、銅張板を製造する方法が開示されている。具体的には、まず、ビスマレイミド樹脂およびアリル化合物を反応させてプレポリマーを得ることと、そして、前記プレポリマー、燐含有エポキシ樹脂、複合硬化剤などを混合させてゲルを得ることと、前記ゲルをガラス繊維布に塗布し、ベークしてB-レベルプリプレグを形成した後、銅箔とを積層してホットプレスして銅張板を得ることと、を含み、得られた銅張板は、ハロゲンフリー難燃のニーズを満たすことができ、耐熱性および耐湿熱性に優れ、誘電損失が低く、加工強靭性が良好である。
【0004】
しかしながら、マレイミド樹脂は脆く、極性の弱い有機溶剤において溶解性が悪いとともに、エポキシ樹脂と直接反応できず、一般的にアミン、ジアリル化合物などにより変性または混合されてこそエポキシ樹脂と組み合わせて用いることができる。反応後に形成したグリッド構造において、極性が強く吸水しやすい第二級アルコールヒドロキシ基が多数含まれているため、誘電性能および耐湿熱性などの点でその硬化生成物の表現が大幅に低下する。
【0005】
CN108401433Aでは、樹脂ワニス、プリプレグ、積層板および印刷回路基板が開示されている。前記樹脂ワニスは、マレイミド化合物、エポキシ樹脂、芳香ビニール化合物由来の構造単位および無水マレイン酸由来の構造単位を有する共重合樹脂、アミノシランカップリング剤で処理されたシリカおよび有機溶剤などを含む。用いられたマレイミド化合物に酸性置換基およびマレイミド基が含まれていることで、耐熱性および粘着性が良好であり、ガラス転移温度が高く、誘電率および熱膨張性が相対的に低く、成形性およびめっき被覆性に優れた熱硬化性樹脂組成物を有する材料を取得することができる。しかし、該樹脂ワニスに用いられたマレイミド化合物は、ヒドロキシ基、カルボキシル基またはスルホン酸基などの酸性置換基を含有し、エポキシ樹脂と反応した後、極性が強く吸水しやすい第二級アルコールヒドロキシ基を生成することで、硬化物の誘電性能、吸水率、および耐湿熱性に対して悪影響を及ぼしている。
【0006】
従って、高性能回路基板の性能および使用ニーズを満たすために、エポキシ樹脂体系に適用され、誘電性能に優れ、吸水率が低く、架橋反応サイトが多い硬化剤を開発することは、当該分野における研究の重点となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN105385105A
【特許文献2】CN101652026A
【特許文献3】CN108401433A
【発明の概要】
【0008】
従来技術の欠陥に対して、本発明は、変性マレイミド化合物、その調製方法および使用を提供することを目的とする。前記変性マレイミド化合物は、特定の原料により調製され、その分子構造においてマレイミド基および活性エステル基を含有する。この2種の活性基が互いに協力することで、前記変性マレイミド化合物が高い反応架橋ポイントを有する。前記変性マレイミド化合物の硬化剤としてのエポキシ樹脂組成物は、硬化された後の吸水率が低く、誘電性能、耐熱性および耐湿熱性に優れ、熱膨張係数が低く、高性能回路基板の使用ニーズを十分に満たすことができる。
【0009】
この目的を達成するために、本発明は以下の技術案を講じた。
第1の態様として、本発明は、調製原料に、マレイミド基含有化合物、および式Iで表される構造を有する活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物が含まれている変性マレイミド化合物を提供する。
【0010】
【0011】
式I中、Arは、置換または非置換のC6~C30(たとえばC6、C9、C10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26またはC28など)の二価の芳香族基から選ばれる。
【0012】
式I中、Xは、置換または非置換のC6~C20(たとえばC6、C9、C10、C12、C14、C16、C18またはC20など)のアリール基、
【0013】
【0014】
置換または非置換のC1~C20(たとえばC2、C3、C4、C5、C7、C9、C10、C12、C14、C16、C18またはC20など)の直鎖または分岐鎖アルキル基、置換または非置換のC3~C20(たとえばC3、C4、C5、C7、C9、C10、C12、C14、C16、C18またはC20など)のシクロアルキル基から選ばれる。
【0015】
X1、およびX2は、各々独立に置換または非置換のC6~C12(たとえばC6、C9、C10またはC12など)のアリール基から選ばれる。
【0016】
Y1は、C1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキレン基、-O-、-S-、スルホン基またはスルホキシド基から選ばれる。
【0017】
Ar、およびXにおける前記置換の置換基が各々独立にF、C1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれる。
【0018】
本発明において、前記「二価の芳香族基」とは、アリール基を含有して2つの結合ポイントを有する基を意味し、アリーレン基(たとえばフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリレン基またはフェナントリレン基など)、および少なくとも2つのアリール基同士が結合基(たとえば-O-、-S-、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、アルキレン基またはシクロアルキレン基など)によって結合して形成した置換基を含む。以下は、同様な記載に関する場合、同様な意味を有する。
【0019】
本発明において、基構造の一方側または両側における短い直線(たとえば
【0020】
【0021】
における右側の短い直線)は、メチル基ではなく、基の結合点を代表する。
本発明に係る変性マレイミド化合物の調製原料には、マレイミド基含有化合物および活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物の2種類が含まれている。前記変性マレイミド化合物は、マレイミド基および活性エステル基の2種の官能基を含有する。両者が互いに協力することで、前記変性マレイミド化合物が、高い反応架橋ポイント、低い誘電率、低い誘電損失、高い耐熱性、および低い熱膨張係数を有する。従来技術におけるヒドロキシ基、カルボキシル基またはスルホン酸基などの酸性置換基を含有するマレイミド化合物と比べると、本発明に係る前記変性マレイミド化合物は、誘電率、誘電損失および吸水率を更に低減させることができ、耐熱性および耐湿熱性の点で性能に優れている。前記変性マレイミド化合物を硬化剤としてエポキシ樹脂と硬化反応させて得た硬化生成物は、吸水率が低く、ガラス転移温度が高く、優れた誘電性能、耐熱性および耐湿熱性、低い熱膨張係数、および強い金属結合力を有する。
【0022】
本発明において、式Iで表される構造を有する前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物は、下記方法により調製される。単官能性ニトロフェノール化合物
【0023】
【0024】
および化合物
【0025】
【0026】
を反応させて、活性エステル基含有芳香族モノニトロ化合物
【0027】
【0028】
を得、前記活性エステル基含有芳香族モノニトロ化合物を還元反応させ、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物を得る。そのうち、Ar、およびXは、式Iと同一の限定範囲を有し、Z1は、ヒドロキシ基またはハロゲン(たとえばF、Cl、BrまたはI)から選ばれる。
【0029】
好ましくは、前記Arは、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、置換または非置換のビフェニレン基から選ばれ、前記置換の置換基がF、C1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれる。
【0030】
好ましくは、前記Xは、C1~C10(たとえばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9またはC10)の直鎖または分岐鎖アルキル基、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のナフチル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のビフェニルエーテル基から選ばれ、前記置換の置換基がF、C1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれる。
【0031】
本発明において、前記マレイミド基含有化合物は、マレイミド基含有モノマーおよび/またはマレイミド基含有ポリマーを含む。
【0032】
好ましくは、前記マレイミド基含有モノマーは、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-m-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-2,2,4-トリメチルヘキサン、2,3-ジメチルベンジルマレイミド、2,6-ジメチルベンジルマレイミドまたはN-フェニルマレイミドのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。
【0033】
好ましくは、前記マレイミド基含有ポリマーは、マレイミド樹脂、フェニルメタンマレイミドオリゴマー(或いは、ポリフェニルメタンマレイミドと呼ばれる)、またはC5~C50(たとえばC6、C8、C10、C12、C15、C18、C20、C22、C25、C28、C30、C32、C35、C38、C40、C42、C45またはC48など)の脂肪族長鎖構造を含有するマレイミド化合物のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。
【0034】
例示的には、前記マレイミド基含有化合物は、BMI-1000、BMI-1000H、BMI-1100、BMI-1100H、BMI-2000、BMI-2300、BMI-3000、BMI-3000H、BMI-4000H、BMI-5000、BMI-5100、BMI-7000、BMI-7000H、BMI-70、BMI-80、MIR-3000-70MTまたはMIR-5000-60Tのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであってもよい。上記挙げられたものは、いずれも製品名称であり、BMI-1000、BMI-1000H、BMI-1100、BMI-1100H、BMI-2000、BMI-2300、BMI-3000、BMI-3000H、BMI-4000H、BMI-5000、BMI-5100、BMI-7000、およびBMI-7000Hは、日本Daiwakasei株式会社、BMI-70、およびBMI-80は、日本K.I化学株式会社、MIR-3000-70MT、およびMIR-5000-60Tは、日本NIPPON KAYAKU株式会社から購入されている。
【0035】
例示的には、前記C5~C50の脂肪族長鎖構造を含有するマレイミド化合物は、BMI-689、BMI-1400、BMI-1500、BMI-1700、BMI-2500、BMI-3000、BMI-5000またはBMI-6000のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであってもよい。上記挙げられたものは、いずれも製品名称であり、Designermolecules Inc.から購入されている。
【0036】
好ましくは、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物の用量が0.05~1mol、たとえば0.08mol、0.1mol、0.15mol、0.2mol、0.25mol、0.3mol、0.35mol、0.4mol、0.45mol、0.5mol、0.55mol、0.6mol、0.65mol、0.7mol、0.75mol、0.8mol、0.85mol、0.9molまたは0.95mol、および上記数値間の具体的な値である。簡潔にするために、本発明において、前記範囲に含まれた具体的な値が網羅的に例示されておらず、0.1~0.75molであることが好ましく、0.15~0.5molであることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の好適な技術案として、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物の用量が0.05~1molである。前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物の用量が少ないほど、マレイミド基含有化合物(ベース)に対する変性程度が低くなる。反応による変性マレイミド化合物に対して、有機溶剤における溶解性の改良効果が明らかではない一方、その構造においてエポキシ基と反応可能な官能基の割合が低く、その硬化物の脆性を改良する効果もよくない。逆に言えば、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物の用量が多いほど、変性程度が高くなり、得られた変性マレイミド化合物の溶解性及び強靭性の向上に対して有利であるが、マレイミド基含有化合物(ベース)の高いガラス転移温度および低い膨張係数などの点での優勢を極めて大きく犠牲にする。
【0038】
本発明において、前記調製原料に、式IIで表される構造を有する芳香族ジアミン化合物がさらに含まれている。
【0039】
【0040】
式II中、Ar1、およびAr2は、各々独立に置換または非置換のC6~C30(たとえばC6、C9、C10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26またはC28など)のアリーレン基から選ばれ、Ar1、およびAr2における前記置換の置換基が各々独立にF、C1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれる。
【0041】
式II中、Yは、C1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキレン基、-O-、
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
Ar3、およびAr4は、各々独立に置換または非置換のC6~C30(たとえばC6、C9、C10、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26またはC28など)の二価の芳香族基から選ばれ、Ar3、およびAr4における前記置換の置換基が各々独立にハロゲン(たとえばF、Cl、BrまたはI)、非置換またはハロゲン化のC1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキル基、アリール基ホスフィンオキシド構造を含有する基から選ばれる。
【0046】
Zは、C1~C20(たとえばC2、C3、C4、C5、C7、C9、C10、C12、C14、C16、C18またはC20など)の直鎖または分岐鎖アルキレン基、C3~C20(たとえばC3、C4、C5、C7、C9、C10、C12、C14、C16、C18またはC20など)のシクロアルキレン基、C6~C20(たとえばC6、C9、C10、C12、C14、C16、C18またはC20など)のアリーレン基またはビフェニレンエーテル基から選ばれる。
【0047】
nは、繰り返し単位の平均値を代表し、0~10、たとえば0.2、0.5、0.8、1、1.2、1.5、1.8、2、2.2、2.5、2.8、3、3.3、3.5、3.7、4、4.2、4.5、4.7、5、5.3、5.5、5.8、6、6.2、6.5、6.8、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10、および上記数値間の具体的な値から選ばれる。簡潔にするために、本発明において、前記範囲に含まれた具体的な値が網羅的に例示されていない。
【0048】
好ましくは、前記Ar1、およびAr2は、各々独立に置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、または置換または非置換のビフェニレン基から選ばれ、前記置換の置換基が各々独立にF、C1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれる。
【0049】
好ましくは、前記Ar3、およびAr4は、各々独立に
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
Y2は、非置換またはハロゲン化のC1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキレン基、-O-、-S-、
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
R1、およびR2は、各々独立にハロゲン、非置換またはハロゲン化のC1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキル基、
【0062】
【0063】
【0064】
n1、およびn3は、各々独立に0~4の整数、たとえば0、1、2、3または4から選ばれる。
【0065】
n2は、0~6の整数、たとえば0、1、2、3、4、5または6から選ばれる。
好ましくは、前記Ar3、およびAr4は、各々独立に
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
好ましくは、前記Zは、C1~C5(たとえばC1、C2、C3、C4またはC5)の直鎖または分岐鎖アルキレン基、C3~C12(たとえばC3、C4、C5、C7、C9、C10またはC12など)のシクロアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基またはフェニレンエーテル基から選ばれる。
【0084】
好ましくは、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物および前記芳香族ジアミン化合物におけるアミノ基の合計量が0.05~1mol、たとえば0.08mol、0.1mol、0.15mol、0.2mol、0.25mol、0.3mol、0.35mol、0.4mol、0.45mol、0.5mol、0.55mol、0.6mol、0.65mol、0.7mol、0.75mol、0.8mol、0.85mol、0.9molまたは0.95mol、および上記数値間の具体的な値である。簡潔にするために、本発明において、前記範囲に含まれた具体的な値が網羅的に例示されていない。
【0085】
本発明の好適な技術案として、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物および前記芳香族ジアミン化合物におけるアミノ基の合計量が0.05~1molである。前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物と芳香族ジアミン化合物の用量が少ないほど、マレイミド基含有化合物(ベース)に対する変性程度が低くなり、反応による変性マレイミド化合物に対して、有機溶剤における溶解性の改良効果が明らかではない一方、その構造においてエポキシ基と反応可能な官能基の割合が低く、その硬化物の脆性を改良する効果もよくない。逆に言えば、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物の用量が多いほど、変性程度が高くなり、得られた変性マレイミド化合物の溶解性及び強靭性の向上に対して有利であるが、マレイミド基含有化合物(ベース)の高いガラス転移温度および低い膨張係数などの点での優勢を極めて大きく犠牲にする。そのため、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物および前記芳香族ジアミン化合物におけるアミノ基の合計量は、0.1~0.6molであることが好ましく、0.15~0.4molであることがさらに好ましい。
【0086】
好ましくは、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記芳香族ジアミン化合物の用量が0.01~0.25mol、たとえば0.03mol、0.05mol、0.08mol、0.1mol、0.12mol、0.15mol、0.18mol、0.2mol、0.21mol、0.22mol、0.23molまたは0.24mol、および上記数値間の具体的な値である。簡潔にするために、本発明において、前記範囲に含まれた具体的な値が網羅的に例示されていない。
【0087】
本発明の好適な技術案として、前記変性マレイミド化合物の調製原料は、マレイミド基含有化合物、活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物および芳香族ジアミン化合物の組合せを含み、活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物および芳香族ジアミン化合物におけるアミノ基とマレイミド基含有化合物におけるマレイミド基とを加成反応させることにより調製されたものである。そのうち、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物とマレイミド基含有化合物との反応が末端封止作用を果たして、変性マレイミド化合物の分子鎖が増長し続けることを防止することができ、変性マレイミド化合物の分子量の大きさを制御することに寄与する。前記芳香族ジアミン化合物とマレイミド基含有化合物との反応がチェーンエクステンション作用を果たして、変性マレイミド化合物の分子鎖が増長し続ける可能となることで、変性マレイミド化合物の最終の分子量を合理的に制御し、分子量が大き過ぎることに起因して溶解性が悪くなるなどの問題を回避することができる。前記芳香族ジアミン化合物の用量が多すぎるのに不適であり、前記マレイミド基含有化合物におけるマレイミド基を1molとする場合、前記芳香族ジアミン化合物の用量が0.01~0.25molである。
【0088】
本発明の好適な技術案として、前記Yは、
【0089】
【0090】
であり、前記芳香族ジアミン化合物の構造は、
【0091】
【0092】
(式II-1と記される)であり、ジフェノール化合物
【0093】
【0094】
化合物
【0095】
【0096】
および化合物
【0097】
【0098】
を反応させて芳香族ジニトロ化合物
【0099】
【0100】
を得ることと、前記芳香族ジニトロ化合物を還元反応させて式II-1で表される構造を有する芳香族ジアミン化合物を得ることと、を含む方法により調製されることができる。そのうち、Ar1、Ar2、およびAr3は、式IIと同様な限定範囲を有し、Z2、およびZ3は、各々独立にヒドロキシ基またはハロゲン(たとえばF、Cl、BrまたはI)から選ばれる。
【0101】
本発明の好適な技術案として、前記Yは、
【0102】
【0103】
であり、前記芳香族ジアミン化合物の構造は、
【0104】
【0105】
(式II-2と記される)であり、ジフェノール化合物
【0106】
【0107】
二官能化合物
【0108】
【0109】
単官能性ニトロフェノール化合物
【0110】
【0111】
および単官能性ニトロフェノール化合物
【0112】
【0113】
を反応させて芳香族ジニトロ化合物
【0114】
【0115】
を得ることと、前記芳香族ジニトロ化合物を還元反応させて式II-2で表される構造を有する芳香族ジアミン化合物を得ることと、を含む方法により調製されることができる。そのうち、Ar1、Ar2、およびAr4は、式IIと同様な限定範囲を有し、Z4、およびZ5は、各々独立にヒドロキシ基またはハロゲン(たとえばF、Cl、BrまたはI)から選ばれる。
【0116】
他の態様として、本発明は、上述したような変性マレイミド化合物の調製方法を提供する。前記調製方法は、マレイミド基含有化合物、式Iで表される構造を有する活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物、および式IIで表される構造を有していてもよい芳香族ジアミン化合物を反応させて前記変性マレイミド化合物を得ることを含む。
【0117】
好ましくは、前記反応の温度が70~200℃、たとえば75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃または195℃、および上記数値間の具体的な値である。簡潔にするために、本発明において、前記範囲に含まれた具体的な値が網羅的に例示されておらず、80~170℃であることがさらに好ましい。
【0118】
好ましくは、前記反応の時間が0.5~8h、たとえば0.6h、0.8h、1h、1.2h、1.5h、1.8h、2h、2.2h、2.5h、2.8h、3h、3.2h、3.5h、3.8h、4h、4.2h、4.5h、4.8h、5.0h、5.5h、6.0h、6.5h、7.0h、7.5hまたは7.8h、および上記数値間の具体的な値である。簡潔にするために、本発明において、前記範囲に含まれた具体的な値が網羅的に例示されていない。
【0119】
好ましくは、前記反応が保護ガス雰囲気下で行われ、前記保護ガス雰囲気が窒素ガスであることが好ましい。
【0120】
好ましくは、前記反応が溶剤の存在下で行われる。
前記溶剤は、特に限定されず、反応を妨害しなければよい。例示的に、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、窒素含有系溶剤または硫黄含有系溶剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含むが、それに限定されない。そのうち、前記アルコール系溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記エーテル系溶剤は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記ケトン系溶剤は、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記芳香族炭化水素系溶剤は、トルエン、キシレンまたはベンゼンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記窒素含有系溶剤は、N,N-ジメチルホルムアミドおよび/またはN,N-ジメチルアセトアミドを含む。前記エステル系溶剤は、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンまたはエトキシエチルアセテートのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記硫黄含有系溶剤は、ジメチルスルホキシドを含む。溶解性の点から見れば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤または窒素含有系溶剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであることが好ましい。毒性が低い点から見れば、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブまたはγ-ブチロラクトンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであることがより好ましい。揮発性が高い点も考えれば、後続製造時に残液の形態で残っていないために、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであることがさらに好ましい。
【0121】
前記溶剤の用量は、原料および生成物の異なる溶解性によれば、適当に調整されることで、各々の原料および生成物が溶剤に溶解可能となる。溶解性および反応効率の両方から総合的に考えれば、溶剤の質量は、各々の原料の質量の和の0.2~10倍、たとえば0.25倍、0.3倍、0.5倍、0.7倍、0.9倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍または9.5倍などであることが好ましく、0.4~5倍であることがより好ましい。
【0122】
他の態様として、本発明は、エポキシ樹脂と、上述したような変性マレイミド化合物とを含む熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0123】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、上述したような変性マレイミド化合物とを含む。前記変性マレイミド化合物は、分子構造において、活性エステル基およびマレイミド基を同時に含有し、多くの反応活性ポイントを有する。それは硬化剤としてエポキシ樹脂と反応する場合、活性エステル基がエポキシ樹脂と反応した際に極性の強い二次ヒドロキシ基を生成せず、硬化生成物が低い誘電損失、低い吸水率および低い誘電率を有する一方、マレイミド基が硬化して自己重合可能となるだけでなく、剛性が高く耐熱性が高い構造を形成することができるため、優れた耐熱性能、高いTgと力学的性能、および低い熱膨張係数を有する。
【0124】
好ましくは、前記エポキシ樹脂とは、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂を指す。例示的に、二官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂、二官能ビスフェノールF型エポキシ樹脂、二官能ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールホルムアルデヒド型エポキシ樹脂、メチルフェノールアルデヒド型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型フェノールエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)エポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、DCPD型フェノールエポキシ樹脂、ビフェニルフェノールエポキシ樹脂、m-ベンゼンジフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、燐含有エポキシ樹脂、珪素含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタンテトラグリシジルエーテル、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、二官能シアネートエステルとエポキシ樹脂の縮合体または二官能イソシアナートとエポキシ樹脂の縮合体のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含むが、それに限定されない。例示的な組合せは、二官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂と二官能ビスフェノールF型エポキシ樹脂の組合せ、二官能ビスフェノールS型エポキシ樹脂とフェノールホルムアルデヒド型エポキシ樹脂の組合せ、m-ベンゼンジフェノール型エポキシ樹脂とナフタレン系エポキシ樹脂の組合せ、脂環式エポキシ樹脂とポリエチレングリコール型エポキシ樹脂の組合せを含む。
【0125】
好ましくは、前記熱硬化性樹脂組成物は、他の硬化剤、難燃剤、無機フィラー、有機フィラーまたは硬化促進剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せをさらに含む。
【0126】
好ましくは、前記他の硬化剤は、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、通常の活性エステル硬化剤(本発明に係る変性マレイミド化合物と異なる)、無水物系硬化剤またはアミン変性のマレイミド硬化剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せから選ばれる。
【0127】
好ましくは、前記難燃剤は、ハロゲン系有機難燃剤、燐系有機難燃剤、窒素系有機難燃剤または珪素含有有機難燃剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せから選ばれる。
【0128】
好ましくは、前記無機フィラーは、非金属酸化物、金属窒化物、非金属窒化物、無機水和物、無機塩、金属水和物または無機燐うちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、熔融シリカ、結晶型シリカ、球状シリカ、中空シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、タルク、窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウムまたはマイカのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであることがさらに好ましい。
【0129】
好ましくは、前記有機フィラーは、テフロン(登録商標)粉末、ポリフェニレンサルファイド粉末またはポリエーテルスルホン粉末のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。
【0130】
好ましくは、前記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物、イミダゾール系化合物の誘導体、ピペリジン系化合物、ピリジン系化合物、有機金属ルイス酸またはトリフェニルホスフィンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。
【0131】
本発明に記載される「含む」とは、前記成分以外、他の成分を含んでもよい。これらの他の成分は、前記熱硬化性樹脂組成物に対して異なる特性を付与する。それ以外、本発明に記載される「含む」は、クローズドの「である」または「…からなる」に差し替えられてもよい。
【0132】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の調製方法は、固形物を投入した後、溶剤を添加し、固形物を完全に溶解させるまで撹拌した後、液体樹脂および硬化促進剤を添加し、均一に撹拌し続けばよい。
【0133】
前記溶剤は、特に限定されず、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤または窒素含有系溶剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、ケトン系溶剤であることが好ましい。そのうち、前記アルコール系溶剤は、メタノール、エタノールまたはブタノールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記エーテル系溶剤は、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトールまたはブチルカルビトールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記芳香族炭化水素系溶剤は、ベンゼン、トルエンまたはキシレンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記エステル系溶剤は、酢酸エチル、酢酸ブチルまたはエトキシエチルアセテートのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記ケトン系溶剤は、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトンまたはシクロヘキサノンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。前記窒素含有系溶剤は、N,N-ジメチルホルムアミドおよび/またはN,N-ジメチルアセトアミドを含む。
【0134】
前記溶剤の用量は、実際の加工および使用ニーズによれば調節することができる。
本発明は、さらに、上述したような熱硬化性樹脂組成物を硬化させて調製された硬化物に関する。
【0135】
他の態様として、本発明は、原料に上述したような熱硬化性樹脂組成物が含まれている半導体シール材を提供する。
【0136】
他の態様として、本発明は、基材、および浸漬し乾燥して前記基材に付着された上述したような熱硬化性樹脂組成物を含むプリプレグを提供する。
【0137】
好ましくは、前記基材は、ガラス繊維布、不織布またはクォーツクロスのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。
【0138】
前記不織布は、アラミド不織布であることが好ましい。
前記ガラス繊維布は、E-ガラス繊維布、D-ガラス繊維布、S-ガラス繊維布、T-ガラス繊維布またはNE-ガラス繊維布などであってもよい。
【0139】
前記基材の厚みは特に限定されない。サイズ安定性が良好である点から考えれば、前記基材の厚みは、0.01~0.2mm、たとえば0.02mm、0.05mm、0.08mm、0.1mm、0.12mm、0.15mm、0.17mmまたは0.19mmなどであることが好ましい。
【0140】
好ましくは、前記基材は、開繊処理および/またはシランカップリング剤表面処理された基材である。良好な耐水性および耐熱性を提供するために、前記シランカップリング剤は、エポキシシランカップリング剤、アミノ基シランカップリング剤またはビニルシランカップリング剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであることが好ましい。
【0141】
例示的には、前記プリプレグの調製方法は、基材を前記熱硬化性樹脂組成物の樹脂ゲルに浸漬させた後、取り出して乾燥させることにより、前記プリプレグを得る。
【0142】
好ましくは、前記乾燥の温度は、100~250℃、たとえば105℃、110℃、115℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃または245℃などである。
【0143】
好ましくは、前記乾燥の時間は、1~15min、たとえば2min、3min、4min、5min、6min、7min、8min、9min、10min、11min、12min、13minまたは14minなどである。
【0144】
他の態様として、本発明は、少なくとも1枚の上述したようなプリプレグ、および前記プリプレグの一方側または両側に設けられた金属箔を含む回路基板を提供する。
【0145】
前記金属箔の材質は、特に限定されない。好ましくは、前記金属箔は、銅箔、ニッケル箔またはSUS箔を含む。
【0146】
例示的には、前記回路基板の調製方法は、1枚のプリプレグの一方側または両側に金属箔を圧着し、硬化させて前記回路基板を得るか、或いは少なくとも2枚のプリプレグを粘着して積層板を製造した後、前記積層板の一方側または両側に金属箔を圧着し、硬化させて前記回路基板を得る。
【0147】
好ましくは、前記硬化は、ホットプレス機器で行われる。
好ましくは、前記硬化の温度は、150~250℃、たとえば150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、200℃、205℃、210℃、215℃、220℃、225℃、230℃、235℃、240℃または245℃などである。
【0148】
好ましくは、前記硬化の圧力は、10~60kg/cm2、たとえば15kg/cm2、20kg/cm2、25kg/cm2、30kg/cm2、35kg/cm2、40kg/cm2、45kg/cm2、50kg/cm2または55kg/cm2などである。
【0149】
他の態様として、本発明は、基材薄膜または金属箔、および前記基材薄膜または金属箔の少なくとも1つの表面に塗布された上述したような熱硬化性樹脂組成物を含む積層薄膜を提供する。
【0150】
従来技術に対して、本発明は、以下の有益な効果を有する。
(1)本発明に係る変性マレイミド化合物は、分子構造においてマレイミド基および活性エステル基を同時に含有し、多くの反応架橋ポイントを有しながら、酸性置換基を含まず、誘電損失、誘電率および吸水率を効果的に低減させることができるとともに、硬化剤としてエポキシ樹脂と硬化反応して得た硬化生成物が優れた誘電性能、耐熱性および耐湿熱性、ならびに低い熱膨張係数と加工性能を有する。
【0151】
(2)本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、架橋ポイントが高い変性マレイミド化合物およびエポキシ樹脂を含み、前記変性マレイミド化合物における活性エステル基がエポキシ樹脂と反応した際に極性の強い二次ヒドロキシ基を生成せず、得た硬化物が低い誘電損失、低い誘電率および低い吸水率を有する一方、前記変性マレイミド化合物におけるマレイミド基が自己重合して高剛性構造を形成し、優れた耐熱性能を有することで、得た硬化物が高いTg、優れた耐熱性、耐湿熱性、力学的性能および粘着性能、ならびに良好な誘電性能および加工性能を有する。
【0152】
(3)前記変性マレイミド化合物を含む熱硬化性樹脂組成物およびその回路基板は、低い熱膨張係数、低い誘電率および誘電損失を有し、優れた誘電性能、耐熱性、耐湿熱性および金属との粘着強度を示し、回路基板の高性能ニーズを満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0153】
以下は、具体的な実施形態により、本発明の技術案についてさらに説明する。当業者であれば、前記実施例は、本発明に対する理解を助けるためのものに過ぎず、本発明を具体的に限定すると見なすべきではない。
【0154】
調製例1
活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-1は、構造式が以下の通りである。
【0155】
【0156】
調製方法は、以下のステップを含む。
(1)温度計、滴下ホッパー、撹拌装置が取り付けられた3Lのフラスコに、139.1g(1mol)のp-ニトロフェノール、140.6g(1mol)の塩化ベンゾイルおよび1500gのジクロロメタンを添加し、撹拌しながら溶解させた。フラスコを-5℃の低温タンクに置き、106.2g(1.05mol)のトリエチルアミンを2h徐々に滴下し、体系温度を-5~10℃の範囲内に制御した。トリエチルアミンの滴下が完了した後、継続して1h反応させた。反応終了後、脱イオン水を添加して10min撹拌した。静置分液して水層を除去し、水層のpHが7となったまで、得たジクロロメタン層を繰り返し洗浄した。最後に、加熱、減圧、濃縮、および乾燥を行うことで、活性エステル基含有芳香族モノニトロ化合物
【0157】
【0158】
(2)温度計、滴下ホッパー、撹拌装置、リフロー凝縮管および窒素ガス管が取り付けられた3Lのフラスコに、243.2gのステップ(1)で得た活性エステル基含有芳香族モノニトロ化合物、6gの5%ウェットパラジウムカーボン(Pdの含有量が5%であり、水の含有量が55%である)および1000gのN,N-ジメチルホルムアミドを添加して、窒素ガスを導入しながら撹拌した。50℃までに昇温した後、75gのヒドラジンハイドレートを約2h徐々に滴下し、反応温度を60℃程度に制御した。滴下が完了した後、継続して6h撹拌しながら反応させた。反応終了後、濾過して、濾過液を減圧し、蒸留し、濃縮した後、脱イオン水-メタノールに添加して再結晶化させた。析出した沈殿物を順に脱イオン水、メタノールで繰り返し洗浄した後、濾過した。濾滓を真空乾燥させることで、活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-1を得た。
【0159】
投入比に基づいて計算し測定することにより、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-1における第一級アミン(-NH2)の当量が213.2g/eq.であり、活性エステル基の当量が213.2g/eq.である。
【0160】
調製例2
活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-2は、構造式が以下の通りである。
【0161】
【0162】
調製方法は、以下のステップを含む。
(1)温度計、滴下ホッパー、撹拌装置が取り付けられた3Lのフラスコに、139.1g(1mol)のp-ニトロフェノール、78.5g(1mol)の塩化アセチルおよび1000gのジクロロメタンを添加し、撹拌して溶解させた。フラスコを-5℃の低温タンクに置き、106.2g(1.05mol)のトリエチルアミンを2h徐々に滴下し、体系温度を-5~5℃の範囲内に制御した。トリエチルアミンの滴下が完了した後、継続して1h反応させた。反応終了後、脱イオン水を添加して10min撹拌した。静置分液して水層を除去し、水層のpHが7となったまで、得たジクロロメタン層を繰り返し洗浄した。最後に、加熱、減圧、濃縮、および乾燥を行うことで、活性エステル基含有芳香族モノニトロ化合物
【0163】
【0164】
(2)温度計、滴下ホッパー、撹拌装置、リフロー凝縮管および窒素ガス管が取り付けられた3Lのフラスコに、195.2gのステップ(1)で得た活性エステル基含有芳香族モノニトロ化合物、6gの5%ウェットパラジウムカーボン(Pdの含有量が5%であり、水の含有量が55%である)、および1000gのN,N-ジメチルホルムアミドを添加した後、窒素ガスを導入しながら撹拌した。50℃までに昇温した後、75gのヒドラジンハイドレートを約2h徐々に滴下し、反応温度を60℃程度に制御した。滴下が完了した後、継続して6h撹拌しながら反応させた。反応終了後、濾過して、濾過液を減圧し、蒸留し、濃縮した後、脱イオン水-メタノールに添加して再結晶化させた。析出した沈澱物を順に脱イオン水、メタノールで繰り返し洗浄した後、濾過した。濾滓を真空乾燥させることで、活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-2を得た。
【0165】
投入比に基づいて計算し測定することにより、前記活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-2における第一級アミン(-NH2)の当量が165.2g/eq.であり、活性エステル基の当量が165.2g/eq.である。
【0166】
調製例3
芳香族ジアミン化合物L-3は、構造式が以下の通りである。
【0167】
【0168】
調製方法は、以下のステップを含む。
(1)温度計、滴下ホッパー、および撹拌装置が取り付けられた3Lのフラスコに、55.1g(0.5mol)のヒドロキノン、203g(1mol)のテレフタロイルクロリドおよび2000gのジクロロメタンを添加し、撹拌して溶解させた。フラスコを-10℃の低温タンクに置き、106.2g(1.05mol)のトリエチルアミンを徐々に滴下し、体系温度を-10~0℃の範囲内に制御した。トリエチルアミンの滴下が完了した後、継続して1h反応させた。その後、139.1g(1mol)のp-ニトロフェノールを添加して、106.2g(1.05mol)のトリエチルアミンを徐々に滴下した。トリエチルアミンの滴下が完了した後、継続して2h反応させた。反応が終了した後、2h静置した。室温で濾過して、析出したトリエチルアミン塩を除去し、濾過液を減圧し、蒸留し、乾燥して初期生成物粉末を得た。順にイオン水およびエタノールで初期生成物を複数回洗浄した後、濾過した。濾滓を乾燥させることで、芳香族ジニトロ化合物を得た。その構造は以下の通りである。
【0169】
【0170】
(2)温度計、滴下ホッパー、撹拌装置、リフロー凝縮管、および窒素ガス管が取り付けられた3Lのフラスコに、259.3gのステップ(1)で得た芳香族ジニトロ化合物、6gの5%ウェットパラジウムカーボン(Pdの含有量が5%であり、水の含有量が55%である)、1000gのN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、窒素ガスを導入して撹拌した。50℃までに昇温した後、80gのヒドラジンハイドレートを約2h徐々に滴下し、反応温度を60℃程度に制御した。滴下が完了した後、継続して6h撹拌しながら反応させた。反応終了後、濾過して、濾過液を減圧し、蒸留し、濃縮した後、脱イオン水-メタノールに添加して再結晶化させた。析出した沈殿物を順に脱イオン水、メタノールで繰り返し複数回洗浄した後、濾過した。濾滓を真空乾燥させることで、活性エステル基含有芳香族ジアミン化合物L-3を得た。
【0171】
投入比に基づいて計算し測定することにより、前記活性エステル基含有芳香族ジアミン化合物L-3における第一級アミン(-NH2)の当量が147.1g/eq.であり、活性エステル基の当量が147.1g/eq.である。
【実施例0172】
実施例1
変性マレイミド化合物M-1の調製方法は、以下の通りである。
【0173】
温度計、リフロー凝縮管、撹拌装置、および窒素ガス装置が取り付けられたフラスコに、179.2gの4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(K.I株式会社製のBMI、マレイミド基の含有量が1molである)、36.1g(0.17mol)の活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-1および323gのジメチルアセトアミドを投入して、体系に対して減圧および窒素ガス置換を行い、撹拌しながら溶解させた。そして、100℃までに昇温して2h反応させて、前記変性マレイミド化合物M-1のジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0174】
投入比に基づいて計算し測定することにより、本実施例に係る変性マレイミド化合物M-1における活性エステル基と第二級アミンの当量の和が約636g/eq.である。
【0175】
実施例2
変性マレイミド化合物M-2の調製方法は、以下の通りである。
【0176】
温度計、リフロー凝縮管、撹拌装置、および窒素ガス装置が取り付けられたフラスコに、179.2gの4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(K.I株式会社製のBMI、マレイミド基の含有量が1molである)、19.8g(0.1mol)の4,4’-ジアミノジフェニルメタン、14.5g(0.068mol)の活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-1および320gのジメチルアセトアミド320gを投入し、体系に対して減圧および窒素ガス置換を行い、撹拌しながら溶解させた。そして、100℃までに昇温して2h反応させて、前記変性マレイミド化合物M-2のジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0177】
投入比に基づいて計算し測定することにより、本実施例に係る変性マレイミド化合物M-2における活性エステル基と第二級アミンとの当量の和が約636g/eq.である。
【0178】
実施例3
変性マレイミド化合物M-3の調製方法は、以下の通りである。
【0179】
温度計、リフロー凝縮管、撹拌装置、および窒素ガス装置が取り付けられたフラスコに、179.2gの4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(K.I株式会社製のBMI、マレイミド基の含有量が1molである)、29.4g(0.1mol)の活性エステル基含有芳香族ジアミン化合物L-3、16.4g(0.076mol)の活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-1および338gのジメチルアセトアミドを投入し、体系に対して減圧および窒素ガス置換を行い、撹拌しながら溶解させた。そして、100℃までに昇温して2h反応させて、前記変性マレイミド化合物M-3のジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0180】
投入比に基づいて計算し測定することにより、本実施例に係る変性マレイミド化合物M-3における活性エステルと第二級アミンとの当量の和が約636g/eq.である。
【0181】
実施例4
変性マレイミド化合物M-4の調製方法は、以下の通りである。
【0182】
温度計、リフロー凝縮管、撹拌装置、および窒素ガス装置が取り付けられたフラスコに、181gのポリフェニルメタンポリマレイミド(Daiwakasei株式会社製のBMI-2300、マレイミド基の含有量が1molである)、82.6g(0.5mol)の活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-2および395.5gのジメチルアセトアミドを投入し、体系に対して減圧および窒素ガス置換を行い、撹拌しながら溶解させた。そして、110℃までに昇温して2h反応させて、前記変性マレイミド化合物M-4のジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0183】
投入比に基づいて計算し測定することにより、本実施例に係る変性マレイミド化合物M-4における活性エステル基と第二級アミンとの当量の和が約264g/eq.である。
【0184】
実施例5
変性マレイミド化合物M-5の調製方法は、以下の通りである。
【0185】
温度計、リフロー凝縮管、撹拌装置、および窒素ガス装置が取り付けられたフラスコに、144.8gのポリフェニルメタンポリマレイミド(Daiwakasei株式会社製のBMI-2300、マレイミド基の含有量が0.8molである)、68.9gの脂肪族長鎖構造を含有するマレイミド化合物(Designermolecules Inc.製のBMI-689、マレイミド基の含有量が0.2molである)、44.1g(0.15mol)の活性エステル基含有芳香族ジアミン化合物L-3、16.5g(0.1mol)の活性エステル基含有芳香族モノアミン化合物L-2および412gのジメチルアセトアミドを投入し、体系に対して減圧および窒素ガス置換を行い、撹拌しながら溶解させた。そして、150℃までに昇温して2h反応させて、前記変性マレイミド化合物M-5のジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0186】
投入比に基づいて計算し測定することにより、本実施例に係る変性マレイミド化合物M-5における活性エステルと第二級アミンとの当量の和が約549g/eq.である。
【0187】
比較例1
マレイミド化合物N-1の調製方法は、以下の通りである。
【0188】
温度計、リフロー凝縮管、撹拌装置、および窒素ガス装置が取り付けられたフラスコに、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド179.2g(K.I株式会社製のBMI、マレイミド基の含有量が1molである)、16.8g(0.15mol)のp-アミノフェノールおよび294gのジメチルアセトアミドを投入し、体系に対して減圧および窒素ガス置換を行い、撹拌しながら溶解させた。そして、100℃までに昇温して2h反応させて、フェノール性ヒドロキシル基およびN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物N-1のジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0189】
投入比に基づいて計算し測定することにより、本比較例に係るマレイミド化合物N-1におけるヒドロキシ基と第二級アミンとの当量の和が約636g/eq.である。
【0190】
比較例2
マレイミド化合物N-2の調製方法は以下の通りである。
【0191】
温度計、リフロー凝縮管、撹拌装置、および窒素ガス装置が取り付けられたフラスコに、179.2gの4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(K.I株式会社製のBMI、マレイミド基の含有量が1molである)、19.8g(0.1mol)の4,4’-ジアミノジフェニルメタン、6.8g(0.06mol)のp-アミノフェノールおよび309gのジメチルアセトアミドを投入し、体系に対して減圧および窒素ガス置換を行い、撹拌しながら溶解させた。そして、100℃までに昇温して2h反応させて、フェノール性ヒドロキシル置換基およびN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物N-2のジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0192】
投入比に基づいて計算し測定することにより、本比較例に係るマレイミド化合物N-2中ヒドロキシ基と第二級アミンとの当量の和が約635g/eq.である。
【0193】
本発明の下記適用例および比較例に用いられる試験材料は、表1に示される。
【0194】
【0195】
適用例1
熱硬化性樹脂組成物、それを含むプリプレグおよび回路基板の調製方法は、以下の通りである。
【0196】
(1)31.5重量部のエポキシ樹脂A-1、68.5重量部の変性マレイミド化合物M-1、0.04重量部の4-ジメチルアミノピリジン(硬化促進剤D-1)および0.06重量部の2-エチル-4-メチルイミダゾール(硬化促進剤D-2)を溶剤に均一に混合させて、固形分が65%の熱硬化性樹脂組成物の樹脂ゲルを得た。2116ガラス繊維布で上記ゲルを浸漬し、適切な厚みに制御した後、160℃のオーブンで10minベークしてプリプレグを製造した。
【0197】
(2)7枚のプリプレグを重ね合わせて、上下両面に1 OzのRTF銅箔を重ね合わせ、硬化温度200℃、硬化圧力45kg/cm2、硬化時間120minの条件下で、回路基板を製造した。
【0198】
適用例2
熱硬化性樹脂組成物、それを含むプリプレグおよび回路基板の調製方法は、以下の通りである。
【0199】
(1)31.5重量部のエポキシ樹脂A-1、68.5重量部の変性マレイミド化合物M-2、0.04重量部の4-ジメチルアミノピリジン(硬化促進剤D-1)および0.06重量部の2-エチル-4-メチルイミダゾール(硬化促進剤D-2)を溶剤に均一に混合させて、固形分が65%の熱硬化性樹脂組成物の樹脂ゲルを得た。2116ガラス繊維布で上記ゲルを浸漬し、適切な厚みに制御した後、145℃のオーブンで15minベークしてプリプレグを製造した。
【0200】
(2)7枚のプリプレグを重ね合わせて、上下両面に1 OzのRTF銅箔を重ね合わせ、硬化温度190℃、硬化圧力60kg/cm2、硬化時間150minの条件下で回路基板を製造した。
【0201】
適用例3
熱硬化性樹脂組成物、それを含むプリプレグおよび回路基板の調製方法は、以下の通りである。
【0202】
(1)31.5重量部のエポキシ樹脂A-1、68.5重量部の変性マレイミド化合物M-3、0.04重量部の4-ジメチルアミノピリジン(硬化促進剤D-1)および0.06重量部の2-エチル-4-メチルイミダゾール(硬化促進剤D-2)を溶剤に均一に混合させて、固形分が65%の熱硬化性樹脂組成物の樹脂ゲルを得た。2116ガラス繊維布で上記ゲルを浸漬し、適切な厚みに制御した後、175℃のオーブンで5minベークしてプリプレグを製造した。
【0203】
(2)7枚のプリプレグを重ね合わせて、上下両面に1 OzのRTF銅箔を重ね合わせ、硬化温度220℃、硬化圧力30kg/cm2、硬化時間90minの条件下で回路基板を製造した。
【0204】
適用例4~6、比較例3~5
熱硬化性樹脂組成物、それを含むプリプレグおよび回路基板について、熱硬化性樹脂組成物の成分および含有量は、表2に示される。プリプレグおよび回路基板の調製方法は、適用例1と同様である。適用例1~6、比較例3~6に係る重量部は、いずれも、溶剤を含まない固体樹脂の重量部を指す。
【0205】
【0206】
性能試験
適用例1~6、比較例3~6に係る熱硬化性樹脂組成物、およびそれを含む回路基板に対して性能試験を行い、その方法は以下の通りである。
【0207】
(1)ガラス転移温度(Tg):ダイナミックサーモメカニカルアナライザー(Dynamic Thermomechanical Analyzer、DMA)を用いて試験を行い、標準IPC-TM-650 2.4.24に規定されたDMA試験方法によって測定した。
【0208】
(2)熱膨張係数CTE(Z-axis):サーモメカニカルアナライザー(Thermomechanical Analyzer、TMA)を用い、標準IPC-TM-650 2.4.24に規定されたCTE(Z-axis)試験方法によって50~260℃の間の熱膨張係数を測定した。
【0209】
(3)誘電率Dkおよび誘電損失係数Df:標準IPC-TM-650 2.5.5.9に規定されたプレート法によって、1gHzでのDkおよびDfを測定した。
【0210】
(4)熱分層時間T288(銅付き)またはT300(銅付き):サーモメカニカルアナライザー(TMA)を用い、標準IPC-TM-650 2.4.24.1におけるT288(銅付き)またはT300(銅付き)試験方法によって測定した。
【0211】
(5)耐湿熱性(PCT)の評価:3個の100×100mmのサンプルを、180℃、105KPaの加圧蒸し煮処理装置内で5h保持した後、288℃のはんだ槽に5min浸しながら、サンプルが分層、バブリングなどの現象を発生したか否かを観察した。3個がいずれも分層、バブリングを発生しないことを3/3、2個が分層、バルリングを発生しないことを2/3、1個が分層、バルリングを発生しないことを1/3、0個が分層、バルリングを発生しないことを0/3として記した。
【0212】
(6)PCT吸水性:試験方法(5)におけるPCT試験条件で前処理された基板を取り、標準IPC-TM-650 2.6.2.1に規定された吸水性試験方法によって測定した。
【0213】
(7)剥離強度(PS):標準IPC-TM-650 2.4.8に規定された「受取り状態」という試験条件によって、金属被覆層の剥離強度を測定した。
【0214】
具体的な試験結果は、表3に示される。
【0215】
【0216】
表3における性能試験のデータから分かるように、比較例3~6に対して、本発明の適用例1~6に係る回路基板において用いられた熱硬化性樹脂組成物は、本発明に係る変性マレイミド化合物を硬化成分として、低い誘電率、低い誘電損失、優れた耐熱性および耐湿熱性を有しながら、高いガラス転移温度(Tg)、低い熱膨張係数(Z-CTE)および良好な金属との粘着強度を有した。その誘電率が3.90(1gHz)以下であり、誘電損失係数が0.0090(1gHz)未満であり、T288(銅付き)が60minよりも大きく、T300(銅付き)熱分層時間が45min以上であり、ガラス転移温度が258~274℃に達し、Z-CTEが1.4~1.86%に低く、剥離強度が1.28~1.45N/mmに達し、耐湿熱性がPCT(5h)試験に合格したので、高性能回路基板の使用ニーズを十分に満たすことができる。
【0217】
適用例1と比較例3、適用例2と比較例4、適用例4および5と比較例5、適用例6と比較例6をそれぞれ比較することにより、本発明に係る前記変性マレイミド化合物(活性エステル基含有)を用いて硬化した熱硬化性樹脂組成物および回路基板は、通常のマレイミド化合物硬化体系と比べると、誘電率、誘電損失係数、耐熱性、吸水率および耐湿熱性などの点でより明らかな優勢を示していることを分かることができる。
【0218】
本発明において、上述した実施例により本発明に係る変性マレイミド化合物、その調製方法および使用を説明したが、本発明を上記実施例に依存して実施しなければならないわけではないことを出願人より声明する。当業者であれば、本発明に対するあらゆる改良、本発明の製品の各原料に対する等価置換及び補助成分の添加、具体的な形態に対する選択などは、すべて本発明の保護範囲と開示範囲に属することを理解すべきである。