(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079414
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】液体処理ノズル
(51)【国際特許分類】
B01F 23/20 20220101AFI20220519BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220519BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20220519BHJP
B05B 1/30 20060101ALI20220519BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20220519BHJP
B05B 15/65 20180101ALI20220519BHJP
E03C 1/02 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B01F3/04 Z
B01F5/06
B01F5/00 D
B01F3/08 Z
B05B1/30
B05B1/02 101
B05B15/65
E03C1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137649
(22)【出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020190078
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521475392
【氏名又は名称】株式会社アクアフューチャー研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓雄
【テーマコード(参考)】
2D060
4D073
4F033
4G035
【Fターム(参考)】
2D060AA01
2D060AB05
2D060AC10
4D073AA05
4D073BB01
4D073BB03
4D073CB02
4D073CB07
4F033AA09
4F033BA02
4F033BA04
4F033DA01
4F033EA01
4F033GA03
4F033GA11
4G035AB27
4G035AB37
4G035AC11
4G035AC26
4G035AE01
4G035AE11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ノズルケーシングをなすケーシング本体にキャビテーションコアが収容され、これに螺合するコア押え部によりキャビテーションコアの抜け止めを図るようにした液体処理ノズルにおいて、該液体処理ノズルを組付先の配管系から取り外す際に、ケーシング本体とコア押え部とに意図せざる分離が生じる不具合を防止する液体処理ノズルを提供する。
【解決手段】ケーシング本体50Bの第一側端部とコア押え部50Aの第二側端部には、その一方に配管系の第一ねじ継手と螺合するノズル側ねじ継手部が刻設され、他方に配管系の第二ねじ継手をなす雄ねじ部と螺合する袋ナット50Cが回転自在に嵌着される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を流通させる配管系に組み込んで使用される液体処理ノズルであって、
両端が開口する形態の収容通路部を有するノズルケーシングと、
一方の端面に液体入口を開口し他方の端面に液体出口を開口する貫通形態の液体流路が形成され、前記ノズルケーシングに形成された流入側開口部に向けて供給される前記液体が前記液体流路を経て前記ノズルケーシングの流出側開口部より流出可能となる位置関係にて前記収容通路部に配置されるとともに、外周面から前記液体流路の内周面に向けて貫通形成されたねじ装着孔を有するコア本体と、頭部及び脚部の脚部基端側が前記コア本体の前記ねじ装着孔内に保持される一方、脚部先端側が前記液体流路の内面から突出するキャビテーション処理部とされたねじ部材とを有し、前記キャビテーション処理部と接触した前記液体がねじ谷部内にて増速するときの減圧作用により、該液体の溶存ガスを過飽和析出させるキャビテーションコアとを備え、
前記液体の流通方向にて、前記ノズルケーシングの前記液体入口と前記液体出口との一方の位置する側を第一側とし他方の位置する側を第二側として、前記ノズルケーシングは、前記第一側を構成するケーシング本体と前記第二側を構成するコア押え部とからなり、
前記ケーシング本体は第二側端面にコア挿入口を開口する形で前記収容通路部が形成され、前記収容通路部に挿入された前記キャビテーションコアの第二側端面よりも前記ケーシング本体の第二側端部が延出するとともに、該第二側端部の内周面に組立用雌ねじ部が形成され、
前記コア押え部の第一側端部の外周面には前記ケーシング本体の前記組立用雌ねじ部と螺合する組立用雄ねじ部が形成されるとともに、前記組立用雄ねじ部を前記組立用雄ねじ部に螺合締結させることにより前記コア押え部は、前記第一側端面を前記キャビテーションコアの第二側端面の外周縁部に当接させる形で該キャビテーションコアを抜止め保持しており、
前記ケーシング本体の第一側端部と前記コア押え部の第二側端部には、その一方に前記配管系の第一ねじ継手と螺合するノズル側ねじ継手部が刻設され、他方に前記配管系の第二ねじ継手をなす雄ねじ部と螺合する袋ナットが回転自在に嵌着されていることを特徴とする液体処理ノズル。
【請求項2】
前記袋ナットが前記コア押え部の第二側端部に回転自在に嵌着されるとともに、前記ケーシング本体の外周面には、前記液体処理ノズルの前記配管系への組付け時に使用する締結用工具を係合させるための、少なくとも1対の平行面を有した工具係合部が形成されている請求項1記載の液体処理ノズル。
【請求項3】
前記コア押え部の前記第二側端部には、前記液体流路の一部をなすとともに前記コア押え部の前記組立用雄ねじ部を前記ケーシング本体の前記組立用雌ねじ部に螺合締結させる際に使用する組立用工具を係合させるための工具係合孔が軸線方向に貫通形成されている請求項1又は2に記載の液体処理ノズル。
【請求項4】
前記ケーシング本体には、前記液体処理ノズルに付加機能を追加する付加機能部が設けられている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体処理ノズル。
【請求項5】
前記付加機能部は、前記液体流路の流路断面積を連続的又は段階的に切り替えるための流路調整バルブを含む請求項4に記載の液体処理ノズル。
【請求項6】
前記付加機能部は、前記液体流路から前記液体を分岐流通させるための分岐配管を含む請求項4又は請求項5に記載の液体処理ノズル。
【請求項7】
前記分岐配管の前記ケーシング本体に接続されている端と反対側の端部には、前記分岐配管からの前記液体の流入を受け入れるとともに受け入れた前記液体に薬液を溶出させる薬液保持部が設けられ、前記薬液が溶出した前記分岐配管内の前記液体が、前記分岐配管の前記ケーシング本体との接続端から前記液体流路側へ逆流形態にて徐放流出するようになっている請求項6に記載の液体処理ノズル。
【請求項8】
前記薬液が洗浄用薬液である請求項7記載の液体処理ノズル。
【請求項9】
前記キャビテーションコアの前記コア本体の前記液体流路は、該液体流路の中心軸線の中点を含む区間が円筒面形態の絞り部とされ、
前記液体流路の前記絞り部の前後区間をなす部分が各々前記絞り部よりも径大の一対の拡径部とされ、
前記ねじ装着孔が前記ねじ部材とともに前記絞り部に配設されるとともに、
前記拡径部のそれぞれの内側に整流部材が前記コア本体と一体化される形態で配置されている請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の液体処理ノズル。
【請求項10】
前記一対の拡径部にそれぞれ配置される前記整流部材が互いに同一の構成を有する請求項9記載の液体処理ノズル。
【請求項11】
前記整流部材は、金属弾性帯状部材を短辺の方向の折り目にて山部と谷部が交互に現れるようにつづら折れ形態となしたものを、さらに前記短辺と平行な軸線周りに丸めることにより星形の断面形態をなすよう形成された星形整流部材であり、該星形整流部材が前記拡径部に対し前記短辺の方向が前記拡径部の軸線と一致する向きに挿入されている請求項10に記載の液体処理ノズル。
【請求項12】
前記拡径部は内周面が前記絞り部よりも径大の円筒面とされるとともに前記絞り部に対し段付き面を介して接続されてなり、
前記星形整流部材は、自由状態にて前記拡径部の内径よりも径大に形成されたものが、前記拡径部内に前記軸線に関する半径方向に弾性的に縮径しつつ圧入されるとともに、前端側を前記段付き面に当接させた状態にて半径方向への弾性復帰力により前記拡径部の内周面に外周面側をグリップさせた形にて前記コア本体に対し一体化されている請求項11に記載の液体処理ノズル。
【請求項13】
前記キャビテーションコアにおいて前記キャビテーション処理部をなす前記ねじ部材として、ねじピッチ及びねじ谷深さが0.10mm以上0.40mm以下、公称ねじ径Mが1.0mm以上2.0mm以下の複数のねじ部材を備えるとともに、前記キャビテーション処理部が、
前記液体流路の中心軸線と直交する仮想的なねじ配置面が前記中心軸線に沿って複数設定されるとともに、総数にて8以上の前記ねじ部材が2つ以上の前記ねじ配置面に分配される形で配置され、前記液体流路の液体流通領域の面積が各前記ねじ配置面において3.8mm2以上確保され、前記液体流路の全断面積に占める液体流通領域の割合として定められる面内流通面積率が40%以上に確保され、前記液体流路の断面の中心軸線と直交する平面への投影にて前記中心軸線から該液体流路の半径の70%以内の領域に位置する谷点を全ねじ配置面について合計した総数を、前記液体流路の断面積で除した70%谷点面積密度と定義したとき、前記70%谷点面積密度の値が1.6個/mm2以上に確保され、
さらに、前記液体流路の中心軸線方向に互いに隣接する前記ねじ配置面の間隔が前記公称ねじ径以上に確保されてなる請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の液体処理ノズル。
【請求項14】
前記液体流路の前記液体流通領域の面積が各前記ねじ配置面において5.0mm2以上確保され、前記70%谷点面積密度の値が2.0個/mm2以上に確保されてなる請求項13記載の液体処理ノズル。
【請求項15】
前記ねじ配置面上にて前記ねじ部材は前記液体流路の円形の軸断面の直径に前記脚部の長手方向を一致させる位置関係にて配置されてなる請求項13又は請求項14に記載の液体処理ノズル。
【請求項16】
前記ねじ部材を3本以上含む前記ねじ配置面が前記中心軸線方向に2面以上設定されてなる請求項15記載の液体処理ノズル。
【請求項17】
前記ねじ配置面上の3本以上の前記ねじ部材は、各ねじの前記脚部の先端面が前記中心軸線を取り囲むことにより中心ギャップを形成するように配置されてなる請求項16記載の液体処理ノズル。
【請求項18】
互いに隣接する前記ねじ配置面のそれぞれにおいて3以上の同数の前記ねじ部材が、前記脚部が前記液体流路の断面半径方向に沿うように前記中心軸線周りに等角度間隔にて配置されるとともに、前記中心軸線周りにおける前記ねじ部材の配置角度位相が隣接する前記ねじ配置面にて一致するように定められてなる請求項13ないし請求項17のいずれか1項に記載の液体処理ノズル。
【請求項19】
前記ねじ部材は前記脚部よりも径大の頭部を有し、前記ねじ配置面の間隔が該頭部の外径よりも大きく設定されてなる請求項18記載の液体処理ノズル。
【請求項20】
互いに隣接する前記ねじ配置面で前記ねじ部材の前記脚部は、前記平面への投影において長手方向を互いに交差させる位置関係にて配置されてなる請求項13ないし請求項17のいずれか1項に記載の液体処理ノズル。
【請求項21】
前記中心軸線方向における前記ねじ配置面の間隔が前記ねじ部材の公称ねじ径の2.0倍以上に設定されてなる請求項20に記載の液体処理ノズル。
【請求項22】
前記中心軸線方向における前記ねじ配置面の間隔が前記ねじ部材の公称ねじ径の4.0倍以上に設定されてなる請求項21記載の液体処理ノズル。
【請求項23】
互いに隣接する前記ねじ配置面のそれぞれにおいて3以上の同数の前記ねじ部材が、前記脚部が前記液体流路の断面半径方向に沿うように前記中心軸線周りに等角度間隔にて配置されるとともに、前記中心軸線周りにおける前記ねじ部材の配置角度位相が隣接する前記ねじ配置面にて互いにずれた形で定められてなる請求項20ないし請求項22のいずれか1項に記載の液体処理ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気体を溶存させた液体をキャビテーション処理するための液体処理ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
水の流路にベンチュリやオリフィスにより絞り部を設け、水が高流速化して通過する際の減圧効果により溶存空気を微細気泡として析出させるノズルが種々提案されている(特許文献1~7及び特許文献9)。特に、特許文献1、2に開示された方式は、流路の途中にねじ部材を配置し、そのねじ谷、あるいは対向するねじ部材間に形成されたギャップにて水流のさらなる高速化を図るものであり、キャビテーション効率を向上させてより高密度にナノバブルを発生できる旨が謳われている。ここで、キャビテーション効率を高めるには、キャビテーションポイントとなるねじ谷の流路断面内における配置密度(谷点密度)を増加させることが重要である。
【0003】
例えば、特許文献1、2、7においては、流路断面内にて同一平面上に複数のねじ部材を断面中心の周りに配置することで、断面内の谷点密度を向上させる提案がなされている。また、同文献においては、液体流路の中心軸線方向(流れ方向)にて複数のねじ部材を互いにずれた位置に配置することが可能であり、それによってキャビテーションポイントとなる谷部に液体の流れを繰り返し接触させることができ、微細気泡の発生効率やガス溶解効率の更なる向上に寄与できる旨も開示されている。
【0004】
上記の液体処理ノズルの構成においては、多数のねじ部材を有するため組立工数の多いキャビテーションコアを、ノズルケーシングから分離して別体化する構成が、例えば特許文献9に開示されている。該構成によると、キャビテーションコアを外段取りにてあらかじめ組み立てておき、そのアセンブリをノズルケーシングに装着することでノズル全体の組立工程の簡略化を図ることができる。例えば特許文献9の
図2においては、ノズルケーシングをなすケーシング本体にキャビテーションコアが収容され、これに螺合するコア押え部によりキャビテーションコアの抜け止めが図られている。そして、コア押え部のねじ継手が雌ねじ部とされ、その外周面には六角状の工具係合部が形成されている。該液体処理ノズルの配管系への組み込みは、ノズルケーシングの両端に形成されたねじ継手部を配管系側のねじ継手部と螺合締結することで実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/178436号公報
【特許文献2】WO2016/195116号公報
【特許文献3】WO2013/011570号公報
【特許文献4】WO2010/055702号公報
【特許文献5】WO2013/012069号公報
【特許文献6】特開2011-240206号公報
【特許文献7】特許第6762461号公報
【特許文献8】特開2002-263678号公報
【特許文献9】特許6762461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献9に開示された液体処理ノズルを配管系から取り外す際には、次のような問題が生ずることがある。すなわち、該工程でははじめに、コア押え部の工具係合部にレンチを係合させてコア押え部の回転を阻止しつつ、配管側を別のレンチで回転させてコア押え部と配管との螺合を解く。そして、コア押え部の工具係合部に係合させたレンチを回転させてケーシング本体と配管との螺合を解く流れとなる。しかし、ケーシング本体と配管との固着が進行していると、ケーシング本体と配管との螺合が解ける前に、コア押え部とケーシング本体との螺合が先にゆるんでしまい、ノズルケーシングをなすケーシング本体とコア押え部とに意図せざる分離が生じる不具合につながる。この不具合は、工具係合部がケーシング本体側に形成されている場合においても同様に発生しうる。
【0007】
本発明の課題は、ノズルケーシングをなすケーシング本体にキャビテーションコアが収容され、これに螺合するコア押え部によりキャビテーションコアの抜け止めを図るようにした液体処理ノズルにおいて、該液体処理ノズルを組付先の配管系から取り外す際に、ケーシング本体とコア押え部とに意図せざる分離が生じる不具合を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を流通させる配管系に組み込んで使用される液体処理ノズルに関し、 両端が開口する形態の収容通路部を有するノズルケーシングと、一方の端面に液体入口を開口し他方の端面に液体出口を開口する貫通形態の液体流路が形成され、ノズルケーシングに形成された流入側開口部に向けて供給される液体が液体流路を経てノズルケーシングの流出側開口部より流出可能となる位置関係にて収容通路部に配置されるとともに、外周面から液体流路の内周面に向けて貫通形成されたねじ装着孔を有するコア本体と、頭部及び脚部の脚部基端側がコア本体のねじ装着孔内に保持される一方、脚部先端側が液体流路の内面から突出するキャビテーション処理部とされたねじ部材とを有し、キャビテーション処理部と接触した液体がねじ谷部内にて増速する時の減圧作用により、該液体の溶存ガスを過飽和析出させるキャビテーションコアとを備え、液体の流通方向にて、ノズルケーシングの液体入口と液体出口との一方の位置する側を第一側(又は前端)とし他方の位置する側を第二側(又は後端)として、ノズルケーシングは、第一側を構成するケーシング本体と第二側を構成するコア押え部とからなり、ケーシング本体は第二側端面にコア挿入口を開口する形で収容通路部が形成され、収容通路部に挿入されたキャビテーションコアの第二側端面よりもケーシング本体の第二側端部が延出するとともに、該第二側端部の内周面に組立用雌ねじ部が形成され、コア押え部の第一側端部の外周面にはケーシング本体の組立用雌ねじ部と螺合する組立用雄ねじ部が形成されるとともに、組立用雄ねじ部を組立用雄ねじ部に螺合締結させることによりコア押え部は、第一側端面をキャビテーションコアの第二側端面の外周縁部に当接させる形で該キャビテーションコアを抜止め保持しており、ケーシング本体の第一側端部とコア押え部の第二側端部には、その一方に配管系の第一ねじ継手と螺合するノズル側ねじ継手部が刻設され、他方に配管系の第二ねじ継手をなす雄ねじ部と螺合する袋ナットが回転自在に嵌着されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成では、ケーシング本体の第一側端部とコア押え部の第二側端部との一方に配管系の第一ねじ継手と螺合するノズル側ねじ継手部が刻設され、他方に配管系の第二ねじ継手をなす雄ねじ部と螺合する袋ナットが回転自在に嵌着されているので、当該袋ナットに工具を係合させて回転させることにより、ケーシング本体とコア押え部との螺合締結状態に影響を与えることなく当該袋ナットと配管系との螺合締結状態を解くことができ、ひいてはノズルケーシングをなすケーシング本体とコア押え部とに意図せざる分離が生じる不具合を効果的に阻止することができる。
【0010】
例えば袋ナットをコア押え部の第二側端部に回転自在に嵌着する場合、ケーシング本体の外周面には、液体処理ノズルの配管系への組付け時に使用する締結用工具を係合させるための、少なくとも1対の平行面を有した工具係合部を形成しておくとよい。コア押え部側の袋ナットと対応する配管との螺合締結状態を解いた後、ケーシング本体の外周面に形成された工具係合部にレンチ等を係合させ回転させれば、ケーシング本体を傷つけることなくケーシング本体側の配管との螺合締結状態をスムーズに解くことができる。
【0011】
この場合、コア押え部の第二側端部に、液体流路の一部をなすとともにコア押え部の組立用雄ねじ部をケーシング本体の組立用雌ねじ部に螺合締結させる際に使用する組立用工具を係合させるための工具係合孔を貫通形成することもできる。この構成によると、コア押え部の組立用雄ねじ部とケーシング本体の組立用雌ねじ部とを螺合させ、その状態でケーシング本体側の工具係合部とコア押え部の工具係合孔とにそれぞれ工具を係合させて軸線周りに相対回転させることで、ノズルケーシングの組立をスムーズかつ容易に完了させることができる。また、組立完了後はコア押え部の工具係合孔を液体流路の一部として流用できるので、液体処理ノズルの構造の簡略化にも貢献する。
【0012】
また、ケーシング本体には液体処理ノズルに付加機能を追加する付加機能部を設けることができる。このような第二本体をケーシング本体に組み込むことで液体処理ノズルに付加機能を容易に追加できる。
【0013】
付加機能部により液体処理ノズルに追加する付加機能の種別は特に限定されない。例えば、付加機能部には、液体流路の流路断面積を連続的又は段階的に切り替えるための流路調整バルブを設けることができる。これにより、液体処理ノズルが組み込まれる配管系の流量を流路調整バルブにより容易に調整できる。なお、流路断面積の切り替えの概念には流路を遮断することも含みえる。この場合、流路を全閉状態(遮断状態)と全開状態(開放状態)の2状態間で切り替えることも「流路断面積を段階的に切り替える」概念に含まれる。
【0014】
また、付加機能部は、液体流路から液体を分岐流通させるための分岐配管を含むものとして構成できる。このような分岐配管を設けることで、液体を液体処理ノズルが組み込まれる配管系の外に分配する機能をケーシング本体に統合することができ、分岐配管系の構成の簡略化を図ることができる。
【0015】
分岐配管の利用形態は特に限定されるものではないが、例えばケーシング本体の第二本体へ接続されている端と反対側の分岐配管の端部に、分岐配管からの液体の流入を受け入れるとともに受け入れた液体に薬液を溶出させる薬液保持部を設け、薬液が溶出した分岐配管内の液体が、分岐配管のケーシング本体との接続端から液体流路側へ逆流形態にて徐放流出するように構成することができる。この構成によると、液体処理ノズルによりキャビテーション処理された液体に対し、配管系を流れる液体に適量の薬液を持続的に注入することができ、簡便な構成により薬液とキャビテーション処理との複合効果を享受することができる。例えば薬液が洗浄用薬液の場合、キャビテーションによる浸透性改善効果が付加されることで液体の洗浄力がさらに改善されたり、あるいは同程度の洗浄力を確保するための薬液注入量の低減を図ったりできるなどの利点が生ずる。
【0016】
また、上記特許文献9の液体処理ノズルには次のような課題がある。
・整流エレメントがキャビテーションコアの下流側にのみ設けられているため、整流エレメントが担う効果は、キャビテーションコアの衝突部で成長停止した微細気泡の衝突による合一抑制にとどまる。
・配管系側のねじ継手との取り合いの関係により、液体処理ノズルの配管系への装着方向が正規の装着方向から逆転することがあり得る。この場合、液体の流れが整流エレメント→キャビテーションコアとなり、整流エレメントを意図通りに機能させることができない。
・液体処理ノズルの組立時において、ノズルケーシングに対し整流エレメントとキャビテーションコアとを順次的に装着しなければならず、工数が増大する。
【0017】
上記の課題を解決するため、キャビテーションコアは次のように構成することが可能である。すなわち、キャビテーションコアのコア本体の液体流路を、該液体流路の中心軸線の中点を含む区間を円筒面形態の絞り部とし、液体流路の絞り部の前後区間をなす部分を各々絞り部よりも径大の一対の拡径部とし、ねじ装着孔をねじ部材とともに絞り部に配設するとともに、拡径部のそれぞれの内側に整流部材をコア本体と一体化した形態で配置する。
【0018】
整流部材は、金属弾性帯状部材を短辺の方向の折り目にて山部と谷部が交互に現れるようにつづら折れ形態となしたものを、さらに短辺と平行な軸線周りに丸めることにより星形の断面形態をなすよう形成された星形整流部材とすることができる。該星形整流部材は拡径部に対し短辺の方向が拡径部の軸線と一致する向きに挿入される。このような星形整流部材に対し軸線方向の端面に流れが供給されると、金属弾性帯状部材のエッジ部分にて剥離流の形成が顕著となる結果、キャビテーションコアの上流側においては予備的なキャビテーション処理による気泡の発生量を増すことができ、微細気泡の発生密度さらに高めることができる。
【0019】
この場合、拡径部を内周面が絞り部よりも径大の円筒面とするとともに絞り部に対し段付き面を介して接続することができる。星形整流部材は、自由状態にて拡径部の内径よりも径大に形成されたものが、拡径部内に軸線に関する半径方向に弾性的に縮径しつつ圧入されるとともに、前端側を段付き面に当接させた状態にて半径方向への弾性復帰力により拡径部の内周面に外周面側をグリップさせた形にてコア本体に対し一体化することができる。これにより、コア本体からの星形整流部材の脱落等が生じにくくなり、整流部材とコア本体とのアセンブリをノズルケーシングに装着する工程の安定化を図ることができる。
【0020】
以下、本発明に付加可能な要件について、さらに詳しく説明する。
特許文献1、2においては、液体処理ノズルにおいて断面内に形成される谷点のうち、キャビテーションポイントとして顕著に機能するのは、液体流速が高くなる断面中心領域、特に中心軸線から流路断面の半径70%までの領域に位置する谷点(70%谷点)である点について言及されている。例えば、特許文献2においては、その
図8等に開示されているごとく、流路断面内にて同一平面上に複数のねじ部材を中心軸線の周りに配置することで、断面内の谷点密度を向上させる提案を行なっている。また、同文献においては、液体流路の軸線方向(流れ方向)にて複数のねじ部材を互いにずれた位置に配置することが可能であり、それによってキャビテーションポイントとなる谷部に液体の流れを繰り返し接触させることができ、微細気泡の発生効率やガス溶解効率の更なる向上に寄与できる旨も開示されている(第5ページ9行~13行)。
【0021】
特許文献2が開示する構成では、70%谷点密度については、流路断面の半径70%以内の領域に空隙として形成される流通領域の断面積(70%断面積)により70%谷点数を除した値として算出され、表4の番号106のノズル試験品における1.8(個/mm2)が最大値である。本明細書においては、後述のごとく、ねじ部に占有される領域も含めた流路全断面積にて70%谷点数を除した値を70%谷点面積密度の定義として採用するが、特許文献2における上記番号106のノズル試験品の70%谷点密度を該定義の70%谷点面積密度に換算すれば1.1(個/mm2)程度の値となる。
【0022】
特許文献2が開示するねじ部材配置においては、70%谷点面積密度の値は上記の1.1(個/mm2)がほぼ限界値とみなされている。その理由は、該文献の第4頁50行以降に記載されているごとく、ねじ部材の先端部が3つ以上の方向から中心軸線に向けて集合する関係上、流路断面の中心付近には谷点の配置が幾何学的に不能となる領域が存在するためである。また、特許文献2に開示されている液体流路は内径Dが7mm以下のものであり、得られる流量は液圧0.1MPaにおいて25L/分程度までである(文献第4頁58行~64行参照)。そして、そのような大流量のノズルの具体例については、脚部長を流路内径に合わせて増加させる点が示唆されている。この場合、流路の流通断面積は流路内径の2乗に比例して増加するのに対し、谷点数はねじの脚部長ひいては流路内径の1乗に比例して増加するのみであるから、この方式では流路内径の拡大に伴い谷点密度は急速に減少するので、十分なキャビテーション効率を達成できなくなる場合があるといえる。
【0023】
この場合、同一面上に配置するねじ部材の数を増やすことで谷点密度を確保することが考えられるが、ねじ部材の占有面積率の増加により、流路断面内径に見合った流量が得られなくなるジレンマがある。また、内径Dが比較的小さいノズルの場合、ねじ部材の占有面積率が増加すると圧損が急速に増し、通常の水道水圧(0.03~0.2MPa程度)での液体流通を行なうとした場合、流速低下によりキャビテーション効率が損なわれる懸念もあるといえる。
【0024】
上記の新たな課題を解決するに際しては、例えば以下の構成を前提部分として考える。すなわち、キャビテーションコアにおいてキャビテーション処理部をなすねじ部材として、ねじピッチ及びねじ谷深さが0.10mm以上0.40mm以下、公称ねじ径Mが1.0mm以上2.0mm以下の複数のねじ部材を備える。キャビテーション処理部には、液体流路の中心軸線と直交する仮想的なねじ配置面が該中心軸線に沿って複数設定されるとともに、ねじ部材が2つ以上のねじ配置面に分配されて、脚部の長手方向が該ねじ配置面に沿うように配置される。そして、気体が溶存した液体を液体入口から液体出口に向けて流通させ、キャビテーション処理部にてねじ部材の脚部外周面に形成されたねじ谷に液体を増速しつつ接触させることにより、該液体に溶存ガスの減圧析出に基づくキャビテーション処理を行なう。そして、上記新たな課題を解決する上で、キャビテーション処理部は次のような構成を具備していることが望ましい。
【0025】
・総数にて8以上のねじ部材が、2つ以上のねじ配置面に分配される形で配置される(以下、1つのねじ配置面に配置されたねじ部材のグループのことを「面ねじ組」ともいう)。
・各ねじ配置面において、液体流路の全断面積に占める液体流通領域の割合として定められる面内流通面積率が40%以上に確保され、液体流路の液体流通領域の面積(全流通断面積)が3.8mm2以上に確保される。
・中心軸線と直交する平面への投影にて液体流路の中心軸線から該液体流路の半径の70%以内の領域に位置する谷点を全ねじ配置面について合計した総数を、液体流路の断面積で除した値を70%谷点面積密度と定義したとき、70%谷点面積密度の値が2.0個/mm2以上に確保される。
・中心軸線方向に互いに隣接するねじ配置面の間隔が公称ねじ径以上に確保される。
【0026】
上記の構成の採用により、通常の水道水圧程度でも十分な液体流速を確保しつつ70%谷点密度を飛躍的に向上でき、特に流路断面積を大幅に拡大した大流量ノズルにおいても単純な構造により70%谷点密度を十分な値に確保することができる。以下、詳細に説明する。
【0027】
まず、ねじ部材のねじ山ピッチ及びねじ谷深さの数値範囲を上記のように設定する理由については、以下の通りである。まず、ねじ谷の深さが0.10mm未満ではねじ谷底位置おいて流れを絞る効果が不十分となり、ねじ谷深さが0.40mm以上になると液体流とねじ谷との接触面積が大きくなりすぎる結果、圧損による流速損失が大きくなる。いずれも、ねじ谷底位置にて十分な流速が確保できなくなり、微細気泡の核発生密度が低下する可能性が高い。その結果、液体の浸透性改善など、キャビテーション処理された液体に特有の効果が十分に得られなくなる問題がある。また、微細気泡が突沸的に激しく生成することにより液体の乱流攪拌効果も不十分となり、析出した気泡の成長が生じやすくなる結果、微細気泡の発生効率も低下しやすくなる。
【0028】
また、ねじ山ピッチが0.40mm以上に増大すると、脚部の単位長当たりのねじ谷数が減じるので、70%谷点の面積密度を向上できなくなる場合がある。よって、ねじ山ピッチ及びねじ谷深さは0.10mm以上0.40mm以下に設定するのがよい。また、ねじ部材の強度確保と、流路断面がねじ部材により過度に占有されないようにすること、ひいては水道圧程度の通常の送液圧でも液体流通量を十分確保できるようにする観点から、ねじ部材の公称ねじ径は1.0mm以上2.0mm以下に設定するのがよい。この公称ねじ径の値の範囲は、上記のねじ山ピッチ及びねじ谷深さをカバーするJIS並目ピッチねじの公称ねじ径の範囲とほぼ一致する。以上の技術的な前提は、特許文献2と同じである。
【0029】
例えば、特許文献8には、半径方向に放射状の突起を複数設けた円柱体を外筒内に積層し、該外筒内に満たされた汚水に対し該当底部から圧縮空気を噴き上げることにより派生的に生ずる水流を円柱体の突起と接触させてキャビテーションを生じさせる装置が開示されている(例えば、
図6等)。しかし、この装置では、本発明の液体処理ノズルのように、外筒に対し一端から汚水を流入させ他端から流出させる構成がそもそも採用されていないから、突起に接触する水流の速度は極めて小さい。その結果、微細気泡が突沸的に激しく生成することによる液体の乱流攪拌効果が不十分となり、析出した気泡の成長が生じやすくなる結果、微細気泡の発生効率は大幅に低下すると考えられる。また、本発明の好ましい態様として上記のごとく提案する、ねじ谷深さ、ねじ山ピッチあるいは公称ねじ径を有するねじ部材を採用する思想も全く開示されておらず、この観点からも、液体の浸透性改善など、キャビテーション処理された液体に特有の効果はほとんど期待できないと思われる。
【0030】
上記のようなねじ部材は液体流路内に総数にて8以上配置することが望ましい。これは、特許文献2において1つの液体流路内に配置されるねじ部材の最大数(第4頁56行)に相当する。そして、この8以上のねじ部材を1つのねじ配置面内に密集させて配置するのではなく、複数(2以上)の面ねじ組に区分して、複数のねじ配置面に分散配置することで70%谷点密度の増加をより容易に図ることができる。
【0031】
各ねじ配置面において面内流通面積率が過度に小さくなると、水流とねじ部材との接触面積が過剰となり、圧損による流量低下が著しくなる。その結果、通常水道圧による液体流通時において十分な流速が得られる領域は、中心軸線から半径70%よりもさらに縮小し、キャビテーションポイントとして有効に機能する谷点数を十分に確保できなくなる。また、面内流通面積率がある程度大きくても、流路断面内径の縮小により液体流通領域の面積の絶対値が小さくなりすぎると、流量低下が同様に著しくなる。
【0032】
本発明者は本状況に鑑み鋭意検討した結果、各ねじ配置面にて、面内流通面積率が40%以上に確保され、液体流通領域の面積が3.8mm2以上確保されていれば、上記のような問題が解消され、個々のねじ配置面を液体流が通過する際の圧損が顕著に減じられることが判明した。そして、隣接するねじ配置面(面ねじ組)の間隔を、使用されるねじ部材の公称ねじ径以上に確保することで、上記のような条件を充足する面ねじ組を液体流路の中心軸線方向に複数連ねて配置しても、面ねじ組を単独で配置する場合と比較した場合の圧損の増加代を極めて小さくとどめることができ、1つの液体流路内に従来よりも多くのねじ部材が配置されているにも関わらず、断面内にて必要な流速を十分に確保できるようになる。その結果、70%谷点面積密度の値を、従来困難であった1.6個/mm2以上に設定した場合に、70%谷点をなすねじ谷にて十分な流速が確保され、キャビテーション効率に極めて優れた液体処理ノズルが実現することとなる。
【0033】
各ねじ配置面にて、面内流通面積率が40%未満の場合、あるいは液体流通領域の面積が3.8mm2未満の場合は、ねじ配置面に配置される個々の面ねじ組の圧損が大きくなり、70%谷点をなすねじ谷にて十分な流速を確保できなくなる場合がある。また、隣接する2つのねじ配置面(面ねじ組)の間隔が使用されるねじ部材の公称ねじ径よりも小さくなると、それら2つの面ねじ組の合成圧損が大きくなり、同様に70%谷点をなすねじ谷にて十分な流速を確保できなくなる場合がある。
【0034】
特許文献2においては、液体流路の中心軸線方向にて複数のねじ部材を互いにずれた位置に配置する構成も示唆されている。しかし、具体例として開示されているのは、総数にて4本のねじ部材を2本ずつの2組に分割して中心軸線方向にずらして配置した構成のみであり(特許文献2:
図19参照)、70%ねじ谷面積密度の増加には貢献していない。また、該構成よりもさらにねじ部材の総数を増加させた場合の、液体流通時の圧損に及ぼす影響についても何ら言及されていない。例えば、特許文献2の第5頁9~13行には、「衝突部を流れ方向に複数設けることができ、キャビテーションポイントとなる谷部に、流れを繰り返し接触させることが可能となるので、微細気泡の発生効率や後述のガス溶解効率の更なる向上に寄与する。」との記載があるが、衝突部を流れ方向に複数設ける際の圧損増加を抑制するための解決手法については、何らの具体的な示唆を与えるものではない。
【0035】
上記構成の液体処理ノズルにおいては、液体流路の液体流通領域の面積を、各ねじ配置面においてより望ましくは5.0mm2以上確保するのがよい。本発明者は、面内流通面積率を40%以上に確保しつつ液体流通領域の面積を種々に変更した液体処理ノズルを作成し、通常水道圧における通水テストを実施した結果、液体流通領域の面積が5.0mm2以上では、該面積の増加に伴い流量がほぼ直線的に増加する傾向を示すのに対し、5.0mm2未満では、流量は該直線的な関係から下方に外れ、液体流通領域の面積の対数に依存して急速に減少することを見出した。これは、通常の水道圧による流通条件では、液体流通領域の面積が5.0mm2未満となったとき、ノズル内の面ねじ組の挿入数が1つ増えるごとに増大する圧損の増加代が急激に大きくなり、断面積に見合った流量が得られなくなることを意味する。よって、面ねじ組の数を増やし、70%谷点面積密度の値をさらに増加させる構成を実現する上で、液体流通領域の面積を5.0mm2以上に確保することは極めて重要である。この場合、70%谷点面積密度の値は2.0個/mm2(特許文献2が開示する最大値(1.1個/mm2)の約2倍)以上に確保することも可能となる。
【0036】
ねじ配置面上にてねじ部材は、液体流路の円形の軸断面の直径に脚部の長手方向を一致させる位置関係にて配置することが望ましい。液体流路の円形の軸断面の直径に脚部の長手方向を一致させることで、ねじ部材の先端は流速が大きくなる液体流路の中心軸線に近づくので、70%谷点数を増加させる上で有利に作用する。この場合、ねじ部材を3本以上含むねじ配置面を中心軸線方向に2面以上設定することで、ノズル全体の70%谷点面積密度の値を顕著に向上でき、キャビテーション発生効率を大幅に高めることができる。また、ねじ配置面上の3本以上のねじ部材は、各ねじの脚部の先端面が中心軸線を取り囲むことにより中心ギャップを形成するように配置することで、最も高流速となる断面中央の流れ(中心流)が液体流通ギャップの形成により妨げられにくくなり、キャビテーション発生効率のさらなる向上を図ることができる。
【0037】
互いに隣接するねじ配置面にてねじ部材の脚部は、平面への投影において長手方向を一致させつつ互いに重なり合う位置関係にて配置することが望ましい。該構成によると、多数のねじ部材との接触が許容されているにも関わらず圧損が特に小さい液体処理ノズル、ひいては70%谷点数を飛躍的に増加させつつも低圧損となる液体処理ノズルを実現することができる。
【0038】
該構成の液体処理ノズルにおいては、隣接するねじ配置面(面ねじ組)間の距離をねじ部材の公称ねじ径に等しい限界値にまで接近させても圧損増加が生じにくく、結果として液体流路の中心軸線方向におけるねじ部材の配置間隔をより密にすることができ、キャビテーション発生効率に優れた液体処理ノズルをコンパクトに構成できる利点が生ずる。該効果は、隣接するねじ配置面(面ねじ組)間の距離を、公称ねじ径の2倍以下にとどめたときに特に顕著である。また、ねじ部材として脚部よりも径大の頭部を有するものを使用する際には、ねじ配置面(面ねじ組)の間隔は該頭部の外径よりも大きく設定されることとなる。
【0039】
例えば、互いに隣接するねじ配置面のそれぞれにおいて3以上の同数のねじ部材が、脚部が液体流路の断面半径方向に沿うように中心軸線周りに等角度間隔にて配置される構成を採用する場合、中心軸線周りにおけるねじ部材の配置角度位相が隣接するねじ配置面にて一致するように定めておくとよい。このようにすると、複数のねじ配置面のねじ部材が中心軸線方向に壁部状に連なりあい、流路断面は該壁部状のねじ列により分割区画されるとともに、その区画された領域内には他のねじ部材が介在しないため、多数のねじが配置されるにもかかわらず液体の衝突抵抗は大きく低減される。そして、上記壁部状のねじ列により区画された領域の内面には個々のねじ部材のねじ谷が多数密に配列し、キャビテーション効率を飛躍的に高めることができる。
【0040】
一方、互いに隣接するねじ配置面でねじ部材の脚部は、平面への投影において長手方向を互いに交差させる位置関係にて配置することも可能である。この構成では、複数の面ねじ組を液体流が通過する際の、個々のねじ部材と液体流との衝突による損失はやや大きくなるが、液体を衝突により生ずる乱流により攪拌する効果がより顕著となる。例えば、上記構成の液体処理ノズルに、気体(空気、酸素、炭酸ガス、窒素、水素、オゾンなどから選ばれる1種又は2種以上)と液体(水、食用油、ガソリンや軽油などの液体化石燃料、アルコールなど)との混合流を供給すれば、上記の攪拌効果により液体に気体を溶解させる効率を高めることができる。また、相互溶解度の小さい液体同士(例えば、親水性の小さい有機液体と水系液体)を攪拌混合して、エマルジョンを形成したりする目的にも有効に採用可能である。
【0041】
上記の構成では、中心軸線方向におけるねじ配置面の間隔をねじ部材の公称ねじ径の2.0倍以上に設定するのがよい。これにより、複数の面ねじ組に液体を流通させる際の圧損低減を図ることができる。ねじ配置面の間隔は、より望ましくは4.0倍以上に設定するのがよい。
【0042】
例えば、互いに隣接するねじ配置面のそれぞれにおいて3以上の同数のねじ部材が、脚部が液体流路の断面半径方向に沿うように中心軸線周りに等角度間隔にて配置される場合、上記の構成を採用するには、中心軸線周りにおけるねじ部材の配置角度位相が隣接するねじ配置面にて互いにずれた形で定められることとなる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の作用及び効果の詳細については、「課題を解決するための手段」の欄にすでに記載したので、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の液体処理ノズルの水道配管への組み込み例を示す斜視図。
【
図2】本発明の実施形態1にかかる液体処理ノズルの正面図およびその断面図。
【
図3】
図2の液体処理ノズルに使用されるキャビテーションコアの正面断面図。
【
図4A】キャビテーションコアの第一のねじ配置面におけるねじ部材レイアウトを示す軸断面図。
【
図4B】キャビテーションコアの第二のねじ配置面におけるねじ部材レイアウトを示す軸断面図。
【
図5B】
図3のキャビテーションコアの面ねじ組をすべて同相配置とした変形例を示す概念図。
【
図6A】ねじ装着孔の形成例と、該ネジ装着内のねじ部材の配置形態の一例を示す軸断面図。
【
図6B】
図6Aにおけるねじ部材の雄ねじ部近傍を拡大して示す軸断面図。
【
図7A】
図6Aのねじ装着孔にねじ部材を装着する工程を示す第一の説明図。
【
図8】ねじ装着孔内におけるねじ部材の、頭部近傍の配置形態にかかる第一例を拡大して示す軸断面図。
【
図11】
図2の液体処理ノズルのコア押え部を拡大して示す正面断面図。
【
図13】
図1の配管系に対する液体処理ノズルの組み付け工程を説明する図。
【
図14】
図2の液体処理ノズルを配管系に対し、順方向及び逆方向にて装着した状態を対比して示す図。
【
図15】本発明の実施形態2にかかる液体処理ノズルに使用するコア本体のねじ装着孔の一例を示す断面図。
【
図17】本発明の実施形態3にかかる液体処理ノズルの正面図、正面断面図及び側面図。
【
図18】
図17の液体処理ノズルに使用するコアプレートの平面図。
【
図19】
図17の液体処理ノズルに組み込まれるマルチコアアセンブリの正面断面図。
【
図20】キャビテーションコアの組付数を3とした場合のコアプレートの平面図及びそれを用いた液体処理ノズルの側面図。
【
図21】本発明の実施形態4にかかる液体処理ノズルの正面図及び正面断面図。
【
図22】本発明の実施形態5にかかる液体処理ノズルの正面断面図。
【
図23】本発明の実施形態6にかかる液体処理ノズルの正面図及び正面断面図。
【
図24】本発明の実施形態7にかかる液体処理ノズルの正面断面図。
【
図25A】
図24の液体処理ノズルにおけるねじ装着孔内のねじ部材の配置形態の一例を示す軸断面図。
【
図26】
図24の液体処理ノズルにおいて、
図4Aのレイアウトの面ねじ組を中心軸線方向に同相にて4組配置した液体処理ノズルの要部正面断面図。
【
図27】同じく8組配置した液体処理ノズルの要部正面断面図。
【
図28】
図24の液体処理ノズルにおいて、一方の面ねじ組を
図4Bのレイアウトとした液体処理ノズルの要部正面断面図。
【
図29】
図28の構造において、面ねじ組を互いに直交するねじ部材対に分割し、それぞれ中心軸線方向に位置をずらして配置した液体処理ノズルの要部正面断面図。
【
図30】
図28の液体処理ノズルと同様の面ねじ組の対を中心軸線方向に2組配置した液体処理ノズルの要部正面断面図。
【
図31】キャビテーション処理部に気体導入機構を設けた液体処理ノズルの一実施形態を示す正面断面図。
【
図32】面ねじ組を3本のねじ部材で構成した液体処理ノズルの要部軸断面図。
【
図33】面ねじ組を8本のねじ部材で構成した液体処理ノズルの要部軸断面図。
【
図34】面ねじ組を4本のねじ部材により、中心ギャップを形成しない形で構成した液体処理ノズルの要部軸断面図。
【
図35】
図34の面ねじ組を中心軸線方向に2組配置した液体処理ノズルの要部正面断面図。
【
図36】4本のねじ部材を十字状に配置した液体処理ノズルにおいて、一定動水圧にて水を流通させた時の、液体流通領域の面積と流量との関係を示すグラフ。
【
図37】4本のねじ部材を十字状に配置した液体処理ノズルの断面内流速分布を、断面内径が4.2mmのノズルと、断面内径が3.5mmで面ねじ組が1面及び2面のノズルとで比較して示すグラフ。
【
図38】面ねじ組を交互に45°回転させて複数配置した各種液体処理ノズルの通水動水圧と流量との関係を、異なる形態の液体処理ノズルについての結果とともに示すグラフ。
【
図39】面ねじ組を互いに重なる位相関係にて複数配置した各種液体処理ノズルの通水動水圧と流量との関係を、面ねじ組を互いに45°回転させて二組配置した液体処理ノズルについての結果とともに示すグラフ。
【
図40】処理水のぬめり汚れ除去能力を評価する装置の構造を示す図。
【
図41】絞り孔が2孔タイプの液体処理ノズル(参照用ノズル)の要部軸断面図。
【
図42】実験例に使用した液体処理ノズルの各部の寸法関係を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づき説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の液体処理ノズルを組み込んだ水道配管システムの一例を示す斜視図である。この水道配管システム1200は、上水道に直結される冷水供給部1203と、図示しない給湯器につながる温水供給部1204とのそれぞれが、止水栓1211と配管系1205、1206を介して湯水混合栓1201に接続される。湯水混合栓1201は、冷水供給部1203からの冷水と温水供給部1204からの温水とを、レバー1202の操作状態に応じた混合比および流量にて混合し、流出口1201から流出させる周知の構成のものである。配管系1205及び1206はいずれも同一の構成であり、止水栓1211の流出側継手部(本実施形態では雄ねじ継ぎ手部1212(
図13))と給水フレキ配管1213との間に本発明の一実施形態である液体処理ノズル100が組み込まれた構成となっている。なお、液体処理ノズル100は冷水供給部1203と温水供給部1204とのどちらか一方、例えば冷水供給部1203側にのみ設けるようにしてもよい。
【0046】
図2はその液体処理ノズルを取り出し拡大して示すものであり、ノズルケーシング50を備える。液体処理ノズル100の液体の流通方向Oにおいて、ノズルケーシング50の液体入口と液体出口との一方の位置する側を第一側(又は前端、
図2では図面左側)とし、他方の位置する側を第二側(又は後端、
図2では図面右側)として、ノズルケーシング50は、第一側を構成するケーシング本体50Bと第二側を構成するコア押え部50Aとからなり、いずれも金属(例えば真鍮等の銅合金(クロムあるいはニッケル等のメッキ層で覆われていてもよい)、ステンレス鋼等の鉄系材料)により構成されている。液体処理ノズル100は双方向に液体としての水道水を流通可能となっており、例えば順方向に通水する場合は第二側開口部55が流入側開口部として、第一側開口部54が流出側開口部としてそれぞれ機能し、逆方向に通水する場合はその逆となる。本実施形態においては、ノズルケーシング50の第一側開口部54を含む側が円筒状のケーシング本体50Bとして構成され、第二側開口部55を含む側がコア押え部50Aとして構成されている。
【0047】
ケーシング本体50Bは第二側端面にコア挿入口50pを開口する形で収容通路部56が形成されており、収容通路部56に挿入されたキャビテーションコア1の第二側端面よりもケーシング本体50の第二側端部が延出するとともに、該第二側端部の内周面に組立用雌ねじ部50gが形成されている。また、ケーシング本体50Bの第一側端部には、軸線方向の一端が第一側開口部54として開口し他端が収容通路部56に連通する形で、液体流路3の一部をなす第一側流路部50uが貫通形成されている。
【0048】
他方、コア押え部50Aの第一側端部の外周面には、ケーシング本体50Bの組立用雌ねじ部50gと螺合する組立用雄ねじ部50dが形成されており、その基端位置にはオーリング50eがはめ込まれている。また、コア押え部50Aを軸線方向に貫通する形で液体流路3の一部をなす第二側流路部50vが形成され、コア押え部50Aの第二側端面に第二側開口部55を形成している。
【0049】
コア押え部50Aの外周面には半径方向外向きに突出するフランジ部50fが形成されており、該フランジ部50fの第一側端面がケーシング本体50Bの第二側端面と当接することで、オーリング50eの圧縮量が過剰とならないよう、組立用雄ねじ部50dの組立用雌ねじ部50gに対する相対的な螺進量が規制されるようになっている。このフランジ部50fの外周面は、ノズルケーシング50の組立時において、コア押え部50Aをケーシング本体50Bに螺合締結する際の、工具あるいは治具の係合面としても利用される。組立用雄ねじ部50dを組立用雌ねじ部50gに螺合締結することによりコア押え部50Aは、第一側端面(本実施形態では、座繰り50nの底面)をキャビテーションコア1の第二側端面に当接させる形でこれを抜止め保持する。他方、キャビテーションコア1の第一側端面は収容通路部56の第一側端部の外周縁部に当て止めされている。
【0050】
ケーシング本体50Bの第一側端部には、配管系の第一ねじ継手1213a(
図13)と螺合するノズル側ねじ継手部51が刻設されている。他方、コア押え部50Aの第二側端部には、配管系の第二ねじ継手1212(
図13)をなす雄ねじ部と螺合する袋ナット50Cが回転自在に嵌着されている。袋ナット50Cの外周面は六角状の工具係合面53とされている。
図11にコア押え部50A及び袋ナット50Cを拡大して示す。コア押え部50Aの第二側端部の外周面は円筒面とされ、その前端部に溝50kが周方向に刻設されるとともに、該溝50kには金属製のスナップリング58が嵌着されている。他方、袋ナット50Cの第一側端部の内周縁には周方向のフランジ部50rが突設されている。
【0051】
フランジ部50rの内径は、コア押え部50Aの第二側端部の外径より大きく、溝50kに嵌着されたスナップリング58の外径よりも小さく設定されている。袋ナット50Cのフランジ部50rの内側にコア押え部50Aの第二側端部を挿入し、その状態でコア押え部50Aの内側にスナップリング58を装着する。次いで、図示しない治具により袋ナット50Cを弾性的に拡径しつつ装着したスナップリング58を溝50kに向けて軸線方向に押し込み、スナップリング58を溝50kに嵌着させつつ袋ナット50Cを弾性復帰させれる。これにより、袋ナット50Cはコア押え部50Aに対し、スナップリング58により軸線方向に抜け止めされた状態で軸線周りに相対回転可能に嵌着される。
【0052】
図2に示すように、ケーシング本体50Bの外周面には、液体処理ノズル100の配管系への組付け時に使用する締結用工具を係合させるために、少なくとも1対の平行面を有した工具係合部57が形成されている。本実施形態では、工具係合部57はケーシング本体50Bの第一側端部の外周面に、3つの平行部を有する六角部として形成されている。
【0053】
なお、本実施形態では、ケーシング本体50Bの第一側端部に形成されるノズル側ねじ継手部51は雄ねじ部として形成されている。ノズル側ねじ継手部51の雄ねじ部の寸法、および袋ナット50Cの雌ねじ部52の寸法については特に制限はないが、
図2においてはいずれも管用平行ねじ規格のG1/2の寸法が採用されている。なお、袋ナット50Cの内側には板状のシールリング50sが装着されている。
【0054】
次に、キャビテーションコア1のコア本体1Mには、液体流路9Aが軸線方向に貫通形成されている。キャビテーションコア1はノズルケーシング50に対し、第一側開口部54及び第二側開口部55の一方から供給される液体が液体流路9Aを経て他方より流出可能となる位置関係にて、外周面側が収容通路部56の内周面に対し圧入又は隙間嵌めとなるよう軸線方向に挿入されている。具体的には、コア本体1Mは外周面が円筒面状であり、収容通路部56に対しコア挿入口50pから挿入されている。
【0055】
図3はキャビテーションコア1の拡大断面図であり、
図4A及び
図4Bは軸断面図である。コア本体1Mの外周面から液体流路9Aの内周面に向けて貫通する形態でねじ装着孔19が形成されている。ねじ部材10は、頭部10h及び脚部10fの基端側がコア本体1Mのねじ装着孔19内に保持される一方、脚部10fの先端側が液体流路9Aの内面から突出し、キャビテーション処理部CVを形成している。コア本体1Mに対しねじ装着孔19は複数形成され、そのそれぞれにねじ部材10が装着されている。キャビテーション処理部CVにおいて液体は、脚部10fに形成された雄ねじ部と接触するに伴い、ねじ谷部内にて増速する時の減圧作用により溶存ガスを過飽和析出させる。
【0056】
コア本体1Mの材質は、たとえばABS、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)などの樹脂であるが、ステンレス鋼や真鍮などの金属やアルミナ等のセラミックスとしてもよく、用途に応じて適宜選択される。また、ねじ部材10の材質はたとえばステンレス鋼であるが、用途に応じて、より耐食性の高いチタンやハステロイ、インコネル(いずれも登録商標名)などの耐熱合金を用いてもよいし、耐摩耗性が問題となる場合は石英やアルミナなどのセラミック材料を用いることも可能である。特に、金属コンタミを嫌う分野(たとえば半導体製造分野)への適用には、石英の採用が好適であり、この場合は樹脂製のキャビテーションコア1はたとえばPTFEで構成するとよい。
【0057】
図6Aは、コア本体1Mのねじ装着孔19と、該ねじ装着孔19に対するねじ部材10の配置形態を拡大して示す軸断面図であり、
図6Bは、その雄ねじ部10mt近傍をさらに拡大して示す図である。コア本体1Mに形成されるねじ装着孔19は、ねじ部材10の脚部10f基端側を挿通保持するための脚部挿通部19fと、コア本体1Mの外周面側の開口部を形成する形で脚部挿通部19fと一体形成され、該脚部挿通部19fよりも径大に形成されるとともに頭部を収容する頭部収容部19hとを備える。脚部挿通部19f内にて脚部10fの外周面に形成されている雄ねじ部10mtの外径をmd、雄ねじ部10mtのねじ山高さをmtdとしたとき、脚部挿通部19fの内径hd2が、
md-mtd≦hd2<md
の範囲となるように定められている。
図6Aに示す如く、ねじ部材10の脚部10fはコア本体1Mの脚部挿通部19fに対しセルフタッピング形態にてねじ込まれる。符号10eはドライバー等の工具を係合させるための工具係合凹部である。
【0058】
また、
図8に示すように、ねじ部材10の頭部の厚さをhtとしたとき、頭部収容部19hの形成深さは、収容通路部56の内周面56Pと頭部10hの頂面との間の距離が0.5ht以下となるように定められている。
図8において、収容通路部56の内周面56Pとコア本体1Mの外周面1Pとの間には狭小な隙間GP1(例えば0.15mm以下)が形成されている。一方、頭部10hの頂面は、隙間GP1に対応する高さだけ頭部収容部19hの開口から突出することで、収容通路部56の内周面56Pに当て止めされた状態になっている。また、
図8においては、ねじ部材10の頭部10hの外周面と頭部収容部19hの内周面との間には隙間GP2が形成されている。
【0059】
上記の構成により、コア本体1Mの脚部挿通部19fには、ねじ部材10の雄ねじ部10mtを螺合させるための雌ねじ部を予め深くタッピングしておく必要がなくなり、加工工数を削減することができる。また、ねじ部材10の頭部10hの頂面が収容通路部56の内周面に対し当て止めされていることで、頭部10hの頂面位置が収容通路部56の内周面により規制され、ねじ装着孔19内のねじ部材10にスラスト方向のがたつきが生じる心配がない。よって、キャビテーションコア1の液体流路9Aに液体を流通することでキャビテーション処理を問題なく実施することができる。
【0060】
他方、脚部挿通部19fにねじ部材10の脚部10fを装着するに際しては、ドライバー等により、ねじ部材10を脚部挿通部19fにセルフタッピングしながらねじ込む。セルフタッピングにより脚部挿通部19fの内面には浅い雌ねじ部が刻設される結果、例えば、キャビテーション処理の繰り返しにより摩耗したねじ部材10を交換したい場合や、脚長の異なるねじ部材10を脚部挿通部19fに誤組付けした場合などにおいて、組み付け時とは逆方向にねじ部材10を回転させることにより、ねじ部材10を脚部挿通部19fから容易に抜き取ることができる利点が生ずる。
【0061】
また、
図6B右に示す如く、セルフタッピングにより刻設される雌ねじ部19ftとねじ部材10の雄ねじ部10mtとの半径方向のラップ長ftdは0.5mtd以下(好ましくは0.4mtd以下、より好ましくは0.35mtd以下)の小さい値となる。そして
図6Aに示すように、頭部10hの頂面位置がノズルケーシング50(の収容通路部56の内周面)により規制されるため、ねじ装着孔19内のねじ部材10にスラスト方向のがたつきが過度に生じる心配はない。さらに、ラップ長は小さいがねじ部材10と脚部挿通部19fとが螺合していることで、キャビテーションコア1を収容通路部56に装着する際に、コア本体1Mのねじ装着孔19からねじ部材10が抜け落ちる不具合を生じにくい利点も生じる。
【0062】
図6Aの脚部挿通部19fは、より詳しくは次のように構成されている。すなわち、脚部挿通部19fは、頭部収容部19hとの接続側端部を含み第一内径hd1を有する第一部分19f1と、液体流路3との接続側端部を含み第一内径hd1よりも小さい第二内径hd2を有する第二部分19f2とからなる。そして、頭部収容部の内径をhd3としたとき、第一部分19f1の第一内径hd1が、
md≦hd1<hd3
の範囲となるように定められ、
図6Bの左に示すように、ねじ部材10の脚部10fは該第一部分19f1に対し隙間嵌め形態にて挿入される。一方、第二部分19f2の第二内径hd2は、
md-mtd≦hd2<md
の範囲となるように定められ、
図6Bの右に示すように、ねじ部材10の脚部10fは該第二部分19f2に対しセルフタッピング形態にてねじ込まれる。第二部分19f2の内径hd2は、望ましくはmd-0.8mtd以上、より望ましくはmd-0.7mtd以上である。部挿通部の内径hdがmd-mtd未満では、セルフタッピングにより、脚部挿通部内に雌ねじ部を刻設することが難しくなる。また、雌ねじ部を刻設する効果を確実にするには、脚部挿通部の内径hdはmd-0.2mtd以下、より望ましくはmd-0.4mtd以下に設定するのがよい。すなわち、前述のラップ長ftdを0.1mtd以上、より望ましくは0.2mtd以上確保するのがよい。なお、ねじ部材10の脚部10fを第一部分19f1により安定的に隙間嵌め保持させる観点において、hd1≦md+mtd、より望ましくはhd1≦md+0.5mtdとなっているのがよい。また、ねじ頭部10hの座面を頭部収容部19hと脚部挿通部19fとの間に形成される段付き面に確実に当て止めできるようにする観点から、hd1≦0.9hd3(より望ましくはhd1≦0.8hd3)を充足しているのがよい。
【0063】
ねじ部材がJISに定めれたM1.4ノーマルピッチの0番1種なべ小ねじである場合、mtdは0.1625mm、ねじピッチPは0.3mm、ねじ頭外径はφ2.0mm、同じく高さは0.5mmである。本実施形態では、該M1.4のなべ小ねじが採用され、hd1=1.4mm、hd2=1.3mmである。また、コア本体1Mの外径はφ14.8mm、絞り部9の内径はφ8.0mmである。また、脚部挿通部19fは、頭部収容部19hの内径がφ2.1mm、同じく深さが0.8mmである。また、脚部挿通部19fは、第一部分19f1の深さが1.7mm(約5.7P)、第二部分19f2の深さが0.9mm(3P)である。
【0064】
図7A及び
図7Bにより、上記の構造の脚部挿通部19fを有したコア本体1Mにねじ部材10を組み付ける工程を説明する。まず、
図7Aの左に示すように、ねじ部材10の脚部10fの先端部を、脚部挿通部19fの第一部分19f1に差し込む。第一部分19f1に対し脚部10fは隙間嵌め形態にて安定に保持される。次いで
図7Aの右に示すように、その状態で脚部10fを第二部分19f2にセルフタッピングすることで、脚部10fの先端は該第二部分19f2に対して極めてスムーズに食い付かせることができる。また、第一部分19f1に脚部10fを隙間嵌めにて差し込むことで、脚部10fの軸線は第一部分19f1をガイドとして第二部分19f2の軸線に対し平行に位置合わせできる。よって、
図7Bに示すように、脚部挿通部19fに対しねじ部材10の脚部10fが傾いた状態でねじ込まれるおそれがない。なお、脚部10fに形成されているねじ山のピッチをPとしたとき、第一部分19f1の長さは3P以上に確保されていることが望ましい。また、第二部分19f2の長さは1P以上10P以下に設定されていることが望ましい。
【0065】
なお、
図9に示すように、コア本体1Mは収容通路部56に対し圧入する形で装着することもできる。この場合、コア本体1Mの外周面と収容通路部56の内周面は密着し、隙間は形成されない。その際、ねじ部材10の頭部10hの頂面がコア本体1Mの外周面と面一となるように、頭部収容部19hの形成深さを定めておく。また、ねじ部材10の頭部10hの外周面を頭部収容部19hの内周面に密着させるようにしてもよい。この構成によれば、キャビテーションコア1を収容通路部56に装着する際に、コア本体1Mのねじ装着孔19からねじ部材10が抜け落ちる不具合を生じにくくすることができる。他方、
図10に示すように、頭部の厚さをhtとしたとき、収容通路部56の内周面56Pと頭部10hの頂面との間に、0.5ht以下の範囲であれば隙間GP3を形成するようにしてもよい。
【0066】
図3に戻り、キャビテーションコア1のコア本体1Mの液体流路3は、該液体流路3の中心軸線の中点Gを含む区間が円筒面形態の絞り部9とされ、液体流路3の絞り部9の前後区間をなす部分が各々絞り部9よりも径大の一対の拡径部9Bとされている。ねじ装着孔19はねじ部材10とともに絞り部9に配設され、拡径部9Bのそれぞれの内側に整流部材63がコア本体1Mと一体化した形態で配置されている。
【0067】
図12は整流部材63の詳細を示すものであり、鋼等の弾性帯状部材を短辺の方向の折り目にて山部と谷部が交互に現れるようにつづら折れ形態に加工し、さらに短辺と平行な軸線周りに丸めて星形の断面形態となるように形成したものである(以下、星形整流部材63ともいう)。該星形整流部材63は、
図3に示すように、上記短辺の方向が収容通路部56の軸線と一致する向きに挿入され、前端面外周縁部が流入側開口部55に近い側の段付き面9jに当て止めされている。
【0068】
整流部材63がキャビテーションコア1の下流側だけでなく上流側にも設けられるので、上流側の整流部材63を液体が流通する際に予備的なキャビテーション処理(以下、予備キャビテーション処理という)が実施される。この予備キャビテーション処理により発生した気泡は、これに続くキャビテーションコア1を流通する際のより強いキャビテーション処理により微粉砕することができる。これにより、下流側の整流部材63により、微細気泡の衝突合一が抑制される効果と相まって、微細気泡の発生密度をより高めることができる。
【0069】
特に、
図12の星形整流部材63に対し軸線方向の端面に流れが供給されると、金属弾性帯状部材のエッジ部分にて剥離流の形成が顕著となる結果、キャビテーションコア1の上流側においては予備的なキャビテーション処理による気泡の発生量を増すことができ、微細気泡の発生密度をさらに高めることができる。ただし、整流部材63の構成はこれに限定されるものではなく、例えば円柱状の部材の軸線方向に複数の細孔をレンコン状に貫通形成したものを、前記軸線が液体流通方向と平行になるよう配置してもよい。
【0070】
図3に戻り、拡径部9Bは内周面が絞り部9よりも径大の円筒面とされ、絞り部9に対し段付き面9jを介して接続されている。星形整流部材63は、自由状態にて拡径部9Bの内径よりも径大に形成されたものが、軸線に関する半径方向に弾性的に縮径されつつ拡径部9B内に圧入される。これにより、星形整流部材63は前端側が段付き面9jに当接した状態にて半径方向への弾性復帰力により外周面を拡径部9Bの内周面にグリップさせた形にてコア本体1Mに対し一体化される。これにより、コア本体1Mからの星形整流部材63の脱落等が生じにくくなり、整流部材63とコア本体1Mとのアセンブリをノズルケーシング50に装着する際の工程安定化を図ることができる。
【0071】
例えば、
図1の水道配管システム1200に対し液体処理ノズル100は、次のような手順で組み込まれる。すなわち、
図13の左に示すように、止水栓1211に直結されている給水フレキ配管1213のナット継手1213a(第一ねじ継手1213a:雌ねじ)を緩め、フレキ配管1213を変形させて止水栓1211側の継ぎ手部1212(第二ねじ継手1212:雄ねじ)との間にノズル設置のためのスペースを作る。次いで、液体処理ノズル100の袋ナット50C(雌ねじ)を第二ねじ継手1212に螺合締結する。次いで、フレキ配管1213を再度変形させてナット継手1213aを液体処理ノズル100のノズル側ねじ継手部51(雄ねじ)に位置合わせしつつ螺合締結すれば取り付けが完了する。液体処理ノズル100は液体の流入側が
図13において下側、すなわち
図2の第二側(右側)となり、流出側が
図13において上側、すなわち
図2の第一側(左側)となる(以下、これを「順方向」とする)。しかし、現場の施工状況によっては、液体処理ノズル100の組付先となる配管系のねじ継手の種別が
図13とは逆になっていることもある(以下、これを「逆方向」とする)。このような場合は、液体処理ノズル100を
図13とは上下反転して配管系に組付けなければならない。
【0072】
図3の構造のキャビテーションコア1を用いると、液体処理ノズル100を配管系へ組付ける向きが、
図14左の順方向になった場合と、
図14右の逆方向になった場合とのいずれにおいても、液体処理ノズル100への液体の流通形態は、整流部材63→キャビテーションコア1→整流部材63となる。その結果、液体処理ノズル100の配管系への装着方向が順逆いずれとなった場合も、整流部材63を意図通りに機能させることができる。よって、液体処理ノズル100の配管系への組付方向にかかる柔軟性が大きく向上する。また、コア本体1Mの拡径部9Bに整流部材63が一体的に組み付けられていることで、液体処理ノズル100の組立時において整流部材63とコア本体1Mとを一体のアセンブリとしてノズルケーシング50に一括装着できる。その結果、液体処理ノズル100の組立工程の簡略化を図ることができる。
【0073】
次に、液体処理ノズル100のキャビテーション処理部CVの構造の詳細について説明する。ねじ部材10は、ねじピッチ及びねじ谷深さが0.10mm以上0.40mm以下、公称ねじ径Mが1.0mm以上2.0mm以下のものが使用されている。本実施形態にてねじ部材10は、JISに定められた0番1種なべ小ねじが使用されている。キャビテーション処理部CVには、液体流路3の中心軸線Oと直交する仮想的なねじ配置面が該中心軸線Oに沿って複数、
図3においてはLP1~LP5の5面が設定されている。上記のねじ部材10は、脚部の長手方向が個々のねじ配置面LP1~LP5に沿うように配置される。また、ねじ部材10の総数は20(すなわち、8以上)であり、各ねじ配置面LP1~LP5に対し2つ以上、
図3においては4つずつ分配されている。
【0074】
各ねじ配置面LP1~LP5においてねじ部材10は、
図4A及び
図4Bに示すレイアウトに従い配置されている。具体的には、いずれのレイアウトにおいても各ねじ配置面LP1~LP5上の4本のねじ部材10が、互いに直交する十字形態に配置された面ねじ組を形成している。コア本体1Mに形成されたねじ装着孔19の脚部挿通部19fに対し、各ねじ部材10は脚部先端が絞り部9内へ突出するようコア本体1Mの外周面側から半径方向に挿入されている。
図5Aは、絞り部9の内側をさらに拡大して示すものであり、ねじ部材10と絞り部9の内周面との間には主流通領域21が形成されている。また、各絞り部9において、4つのねじ部材10が形成する十字の中心位置には、液体流通ギャップ15が形成されている。液体流通ギャップ15を形成する4つのねじ部材10の先端面は平坦に形成され、中心軸線と直交する平面への投影において液体流通ギャップ15は正方形状に形成されている。
【0075】
図5Aにおいて、各ねじ配置面LP1~LP5における液体流通領域の面積(以下、全流通断面積ともいう)aを、液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積(ここでは、
図2の絞り部9の円形軸断面の面積:内径をdとしてπd
2/4))をS1、ねじ部材10(4本のねじ部材)の投影領域面積をS2として、
a=S1-S2 (単位:mm
2)
として定義する。この実施形態では、主流通領域21と液体流通ギャップ15との合計面積が全流通断面積aに相当する。
図2に示すごとく、流入側開口部55及び流出側開口部54の開口径は、絞り部9の内径よりも大きい。すなわち、流入側開口部55及び流出側開口部54の開口断面積は全流通断面積aよりも大きく設定されている。そして、各ねじ配置面LP1~LP5において、全流通断面積aは3.8mm
2以上確保され、液体流路の全断面積S1に占める液体流通領域の割合(すなわち、a/S1×100(%))として定められる面内流通面積率は40%以上に確保されている。
【0076】
図5Aにおいて、ねじ部材10の投影外形線に現れる谷部の深さhは0.1mm以上確保されている。また、中心軸線Oの投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた円を基準円C70として定めたとき、谷部の最底位置を表す谷点のうち、基準円C70の内側に位置するもの(○で表示)の数、つまり、中心軸線Oと直交する平面への投影にて液体流路3の中心軸線Oから該液体流路3の半径の70%以内の領域に位置する谷点の数を70%谷点数N70と定義する。そして、該70%谷点数N70の値を全ねじ配置面について合計した値を、液体流路3(絞り部9)の全断面積S1で除した値を70%谷点面積密度と定義する。
図2の液体処理ノズル100においては、70%谷点面積密度の値が1.6個/mm
2以上に確保されている。
【0077】
図4A及び
図4Bにそれぞれ示す面ねじ組は幾何学的には等価であるが、コア本体1Mに組付けたときの中心軸線周りの角度位相が互いに45°ずれたものになっている。
図3のキャビテーションコア1の構成では、ねじ配置面LP1~LP5において
図4Aの第一型面ねじ組と
図4Bの第二型面ねじ組とが交互に配置されることで、左右対称のねじレイアウトが形成されている。また、隣接するねじ配置面LP1~LP5間の面間隔dpは、
図2の頭部10hの外径をdh、脚部10fの公称ねじ径をMとして、例えば1.05dh以上2M以下に設定されている。
【0078】
なお、
図5Bに示すように、互いに隣接するねじ配置面LP1~LP5にてねじ部材10の脚部を、中心軸線Oと直交する平面への投影において長手方向を一致させつつ互いに重なり合う位置関係にて配置することもできる。
図5Bにおいては、
図4Aのごとく十字状に配置された4本のねじ部材10からなる面ねじ組が、ねじ配置面LP1~LP5にて互いに重なり合う位置関係(すなわち、十字状の面ねじ組の中心軸線周りの配置角度位相が互いに一致する位置関係:以下、このような配置を「同相配置」ともいう)にて配置されている。
【0079】
後述のごとく、
図5Bのように複数の面ねじ組を同相配置したキャビテーション処理部は、ねじ部材の配置数が増加したときの液体流通時の圧損増加を効果的に抑制できる利点がある。他方、
図3のように中心軸線周りの配置角度位相が互いに異なる面ねじ組を交互に配したキャビテーション処理部については、
図5Bの構成と同等の70%谷点面積密度を実現できるが、ねじ配置面LP1~LP5の面間隔dpが
図5Bの構成と同一の場合は、液体流通時の圧損が若干大きくなる。他方、液体の乱流攪拌効果は
図5Bの構成よりも大きいため、例えば混相流供給により気体を液体に溶解させる目的においてはより有利となる。
【0080】
図2の液体処理ノズル100に対し、例えば液体流出側を開放し、動圧が通常水道圧(例えば、0.077MPa)程度となるように、液体として例えば空気が溶存した水(例えば一般水道水:20℃(常温)での酸素濃度は約8ppm)を流通させた場合の作用について説明する。
図5Aに示すように、キャビテーション処理部において水流は、ねじ部材10と絞り部9内周面との間に形成される主流通領域21と液体流通ギャップ15とからなる液流通領域にて、ねじ部材10に衝突しながら通過する。
【0081】
そして、ねじ部材10の脚部の外周面を通過する時に、ねじ谷部(特に谷底位置)に高速領域が、ねじ山部に低速領域がそれぞれ発生する。すると、ねじ谷部の高速領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、キャビテーションが生ずる。ねじ谷部はねじ部材の外周に複数巻形成され、かつ8本以上のねじ部材10が複数のねじ配置面LP1~LP5に分配配置されていることから、キャビテーションは絞り部9内のねじ谷部にて同時多発的に起こることとなる。すると、水流がねじ部材10に衝突する際に、ねじ谷部での溶存空気の減圧析出が沸騰的に激しく起こり、ねじ部材10の表面及び液体流路3の内面との間で水流を激しく摩擦しつつ撹拌する。
【0082】
図3のキャビテーションコア1は、各ねじ配置面LP1~LP5にて、面内流通面積率が40%以上に確保され、全流通断面積が3.8mm
2以上に確保され、さらに隣接するねじ配置面LP1~LP5(面ねじ組)の間隔dpが、使用されるねじ部材10の公称ねじ径よりも大きく確保されている。これにより、面ねじ組を中心軸線Oの方向に複数連ねて配置してもノズルの圧損増加を極めて小さくとどめることができる。その結果、1つの液体流路3内に従来よりも多くのねじ部材が配置されているにも関わらず、断面内にて必要な流速を十分に確保できるようになる。例えば、特許文献2では1.1個/mm
2程度が限界と思われていた70%谷点面積密度の値を、十分な流速を確保しつつも一挙に1.6個/mm
2以上もの大きな値に設定できるようになる。
【0083】
本発明者は、特許文献2において、当該文献に開示された液体処理ノズルによりキャビテーション処理を行なった水は肌や髪などへの浸透性が向上すること、該浸透性の向上効果は、液体処理ノズルの70%谷点密度が大きくなるほど顕著となることを示唆した。また、肌や髪の構成成分は高分子であるたんぱく質であり、こうした高分子ネットワークからなる構造体への分子レベルでの水の浸透性改善については、水の中に微小気泡が介在することによる効果のみでは説明がつかない側面があること、例えば、水の物理的な性状、特に、極性分子である水の集団的(統計的)な振る舞いに微細気泡が関与し、水の浸透力等が増している可能性があること、などについても言及した。しかし、70%谷点面積密度の値が上記の大きな値に拡大したノズルを用いてキャビテーション処理を行なった場合に、処理後の液体の特性がどのように改善されるかについては、特許文献2は沈黙している。
【0084】
上記の液体処理ノズル1にてキャビテーション処理を行なった水は、例えばレーザー回折式粒度計などにより測定すれば、特許文献2と同様に、平均径が100nm~300nm程度のナノ域の微小気泡を多量に含んだ水になっていることを確認できる。後述の実験結果から明らかな通り、レーザー回折式粒度計によって確認できる上記平均径の微小気泡は、キャビテーション処理後タンクなどに貯留して数分放置すれば大部分が消失し、通常の感度のレーザー回折式粒度計では検出できなくなる。しかし、この微小気泡が検出されなくなった貯留後の処理水であっても、70%谷点面積密度を高めた液体処理ノズルを用いれば、キャビテーション処理に伴う浸透性改善等の効果は、微小気泡が検出されるノズル流通直後の処理水と同様に発揮される。浸透性改善等の効果がどのような機構に基づいて生ずるのかについては目下のところ研究途上段階であるが、本発明者は、瞬時的なキャビテーションにより成長停止した、あるいは気泡が再溶解する際に残留する10nm未満の安定な気泡核(レーザー回折・散乱法や粒子トラッキング解析法などの既存の方法では計測不能)が水中に大量に形成され、それら気泡核が分極した水分子の集団的な流動挙動を改善することが要因ではないか、と考えている。
【0085】
(実施形態2)
例えば
図2の液体処理ノズル100のキャビテーションコア1において、ねじ装着孔19を
図6Aの構成のものから
図15の構成のものに置き換えることにより実現可能である(ねじ装着孔19の構造を除くその余の構成は実施形態1と同じであるため、詳細な説明は略する)。
【0086】
図15の脚部挿通部19fは、頭部収容部19hとの接続側端部を含み第一内径hd1を有する第一部分19f1と、液体流路3との接続側端部を含み第一内径hd1よりも小さい第二内径hd2を有する第二部分19f3とからなる。そして、頭部収容部の内径をhd3としたとき、第一部分19f1の第一内径hd1が、
md≦hd1<hd3
の範囲となるように定められ、ねじ部材10の脚部10fは該第一部分19f1に対し隙間嵌め形態にて挿入される。一方、第二部分19f3の第二内径hd2は、
md-mtd≦hd2<md
の範囲となるように定められる。脚部10fに形成されているねじ山のピッチをPとしたとき、第二部分19f3の長さが1P以上2P以下に設定されている。ねじ部材10の脚部10fは該第二部分19f3に対しセルフタッピングではなく、
図16の右に示すように、第二部分19f3の内周面に圧入されつつ先端を液体流路3内に突出させる形となっている。
【0087】
脚部挿通部19fにねじ部材10を装着する際は、
図16の左に示す如く、第一部分19f1に脚部を隙間嵌め装着した後、第二部分19f3に対してはねじ部材10を、軸線方向(スラスト方向)に圧入する。これにより、金属製の脚部10fは、ねじ山が第二部分19f3の樹脂製の内周面部を乗り越える形でコア本体1Mに装着される。ねじ部材10のコア本体1Mへの組付工程がより簡略化されていることがわかる。
【0088】
(実施形態3)
図17の液体処理ノズル200においては、複数のキャビテーションコア1をノズルケーシング50に組み込んでいる。また、キャビテーションコア1の外周面とノズルケーシング50の収容通路部56の内周面との間には空間が形成されている。以下、主に実施形態1の液体処理ノズルとの相違点を中心に説明し、概念的に共通する部分については同一の符号を付与して詳細な説明を略する場合がある。
【0089】
ノズルケーシング50はケーシング本体50B、コア押え部50A及び該コア押え部50Aに回転自在に嵌着された袋ナット50Cからなる。キャビテーションコア1の構成は
図3に示すものと同一であり、ケーシング本体50Bに形成されている収容通路部56には、2つ(複数)のキャビテーションコア1,1が軸線方向に並列に配置されている。また、収容通路部56の内径はキャビテーションコア1の外径の2倍より大きく設定されている。ケーシング本体50Bには、外周面の第一側端部をオフセット形態に切り欠くことで1対の平行面からなる工具係合部257が形成されている。
【0090】
複数のキャビテーションコア1は各々中心軸線が平行となる配列にて両端面にアセンブリプレート201がはめ込まれることにより一体化され、マルチコアアセンブリ210が形成されている。該マルチコアアセンブリ210はケーシング本体50Bの収容通路部56に軸線方向に装着され、コア押え部50Aの第一側端面の外周縁部がアセンブリプレート201,201の一方(図面上側)と液密形態に密着することで、マルチコアアセンブリ210の抜け止めがなされている。また、アセンブリプレート201,201の他方(図面下側)の外周縁部は収容通路部56の第一側端部の外周縁部と液密形態に密着している。
【0091】
図18はアセンブリプレート201の平面図であり、複数のコア嵌着部213が形成されている。各コア嵌着部213は円形の座繰り211と、該座繰り211よりも径小の液体流通孔212からなる。
図3に示すように、コア本体1Mの各端面外周縁部を階段状に切り欠くことで周方向の嵌着溝1Gが形成され、その内側に径小部1Cが形成されている。
図19に示すように、マルチコアアセンブリ210の各キャビテーションコア1は、両端の径小部1Cにおいて対応するアセンブリプレート210の座繰り211に嵌着されている。アセンブリプレート201の液体流通孔212は、キャビテーションコア1,1の拡径部9Bに対応する内径に設定されている。
【0092】
図17に示すように、ケーシング本体50Bの第一側流路部50uとコア押え部50Aの第二側流路部50vとはいずれも、対応するアセンブリプレート201に面する側において内周面が、すべての液体流通孔212を包含する寸法となるように該アセンブリプレート210に向けて連続的に拡径するテーパ面50ut,50vtとされている。
【0093】
該液体処理ノズル200は、例えば第二側開口部55から第二側流路部50vに液体を流入させることで、拡径部50vtを経て各キャビテーションコア1を流通し、拡径部50utにて合流した後、第一側流路部50uを経て第一側開口部54から流出する。これにより、実施形態1の液体処理ノズル100よりさらに大流量の液体をキャビテーション処理することができる。ノズル側ねじ継手部51の雄ねじ部の寸法、および袋ナット50Cの雌ねじ部52の寸法については、本実施形態では、いずれも管用平行ねじ規格のG3/4の寸法が採用されている。
【0094】
なお、マルチコアアセンブリ210に組み込むキャビテーションコア1の数は2つに限定されず、例えば
図20に示すように、3つのキャビテーションコア1を組み込むことも可能である。
【0095】
以下、ケーシング本体に付加機能部を追加した液体処理ノズルの実施形態について説明する。
(実施形態4)
図21の液体処理ノズル300においてはノズルケーシング50が、付加機能部をなす流路調整バルブ50D、ケーシング本体50B’、コア押え部50Aからなり、コア押え部50Aに袋ナット50Cが回転自在に嵌着されている。以下、主に実施形態1の液体処理ノズルとの相違点を中心に説明する(概念的に共通する部分については同一の符号を付与して詳細な説明を略する場合がある)。
【0096】
流路調整バルブ50Dはバルブケーシング69を備え、その第二側端部内周面に雌ねじ部71が形成されている。また、ケーシング本体50B’の第一側端部の外周面には雄ねじ部51’が形成され、流路調整バルブ50Dの雌ねじ部71とシールリング70を介して螺合している。ケーシング本体50B’に形成された第一側流路部50u1は、バルブケーシング69に貫通形成されている主バルブ流路部50u2と連通している。また、ノズル側ねじ継手部51はバルブケーシング69の第一側端部に雄ねじ部として形成されている。
【0097】
主バルブ流路部50u2の途中にはボール弁体72を操作軸線HAの周りに回転自在に保持する弁体保持部74が組み込まれている。ボール弁体72には弁体流路80が形成され、該バルブ流路80の軸線と直交する向きに操作軸線HAが設定されるとともに、ボール弁体72には操作軸部76の一端が操作軸線HAに関して同軸的に結合されている。また、操作軸部76の他端には操作ハンドル78が操作軸部76に対し相対回転不能に結合されている。
【0098】
操作ハンドル78を操作軸線HAの周りに回転操作すると、ボール弁体72が操作軸部76を介して回転する。ボール弁体72に形成された弁体流路80の開口と、主バルブ流路部50u2の流路断面との重なり面積は、操作ハンドル78の角度位相に応じて連続的に変化する。これにより、液体処理ノズル300の実質的な流路断面積を連続的に切り替えることができ、ひいては液体処理ノズル300が組み込まれる配管系の流量を流路調整バルブ50Dにより容易に調整できる。なお、流路調整バルブ50Dは上記のようなボールバルブに限定されず、例えば、流路を全閉状態(遮断状態)と全開状態(開放状態)の2状態間で切り替えるストップバルブとして構成してもよい。
【0099】
(実施形態5)
図22の液体処理ノズル400は、液体流路から液体を分岐流通させるための分岐配管31を付加機能部として設けた例を示すものである。液体処理ノズル400においてはノズルケーシング450が、ケーシング本体50B’、コア押え部50A’及び袋ナット50C’からなる。袋ナット50C’はケーシング本体の第一側端部に、
図11と同様の構成にて回転自在に嵌着されている。また、ノズル側ねじ継手部51’はコア押え部50A’の第二側端部に雄ねじ部として形成されている。以下、主に実施形態1の液体処理ノズルとの相違点を中心に説明する(概念的に共通する部分については同一の符号を付与して詳細な説明を略する場合がある)。
【0100】
分岐配管31は、その一端の外周面に雄ねじ部97mが形成され、ケーシング本体50B’の側壁部を貫通して形成された雌ねじ部97fと螺合することにより、ケーシング本体50B’の第一側流路部50uと連通する形で結合されている。一方、ケーシング本体50B’の側壁部には、中心軸線に関して分岐配管31の連通位置と反対側にバルブ孔98が貫通形成され、該バルブ孔98の内側には分岐配管31の連通側開口部に向け、分岐配管31側への液体分配量を調整するための調整バルブ(本実施形態ではバタフライバルブ)99がシールリング99cを介して装着されている。
【0101】
他方、分岐配管31の反対側の端部には、分岐配管31からの液体の流入を受け入れるとともに、受け入れた液体に薬液を溶出させる薬液保持部33が設けられている。薬液保持部33からの薬液が溶出した分岐配管31内の液体は、分岐配管31のケーシング本体50B’との接続端から液体流路3側へ逆流形態にて徐放流出する。調整バルブ99により第一側流路部50uの流通断面積を変更することにより分岐配管31への液体の分配流出量を変更することができる。分岐配管31への液体の分配流出量が多くなるほど、第一側流路部50u側への液保持部33からの薬液の徐放流出量は多くなる。このような液体処理ノズル400は、例えばトイレの便器(例えば小便器)に洗浄水を供給する配管上にサニタイザーとして取り付けることができる。
【0102】
薬液としては、除菌及び尿石除去用の洗浄薬液(例えば、ジデシルジモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、ポリヘキサメチレンビグアニドあるいはジメチコンなどを香料及び界面活性剤とともに水に溶解した周知のもの)を用いることができ、便器内面や排水管の除菌及び尿石除去を図ることができる。
図22の構成では、洗浄水は液体処理ノズル400に対し第二側開口部55(図面左側)から供給され、キャビテーションコア1にてキャビテーション処理されたのち分岐配管31から洗浄用薬液が混合され、第一側開口部54(図面右側)から図示しない便器に向け流出する。洗浄水には、キャビテーションによる浸透性改善効果が付加されており、便器に対する洗浄力がさらに改善される。また、同程度の洗浄力を確保するための薬液注入量の低減を図ることもできる。
【0103】
(実施形態6)
図23の液体処理ノズル500は、ノズルケーシング550がケーシング本体550B、コア押え部550A及び袋ナット550Cからなり、コア押え部550Aの第二側端部には、液体流路3の一部をなすとともにコア押え部550Aの組立用雄ねじ部50dをケーシング本体550Bの組立用雌ねじ部50gに螺合締結させる際に使用する組立用工具を係合させるための工具係合孔550vを形成している。以下、主に実施形態1の液体処理ノズルとの相違点を中心に説明し、概念的に共通する部分については同一の符号を付与して詳細な説明を略する場合がある。
【0104】
袋ナット550Cはコア押え部550Aの第二側端部に回転自在に嵌着されている。袋ナット550Cの第一側端部をなすフランジ部552と、コア押え部550Aの第二側端部をなすフランジ部551とは直接接する形で互いに係合しており、
図11の構成におけるスナップリング58が省略された構成とされている。工具係合孔550vは本実施形態では六角断面形状であり、工具として六角レンチを活用することが可能となっている。この構成によると、コア押え部550Aの組立用雄ねじ部550dとケーシング本体550Bの組立用雌ねじ部550gとを螺合させ、その状態でケーシング本体550B側の工具係合部57とコア押え部550Aの工具係合孔550vとにそれぞれ工具を係合させて軸線周りに相対回転させることで、ノズルケーシング550の組立をスムーズかつ容易に完了させることができる。また、組立完了後はコア押え部550Aの工具係合孔550vを液体流路3の一部として流用できるので、液体処理ノズル550の構造の簡略化にも貢献している。
【0105】
(実施形態7)
図24の液体処理ノズル600は、全体の外観が円筒状に形成され、中心軸線Oの向きに円形断面の1つの液体流路603が貫通形成されている。液体流路603は一方の端(図面右側)に流入側開口部604を、他方の端に流出側開口部605を開口しており、その流れ方向中間位置には流入側開口部604及び流出側開口部605よりも径小の絞り部609が液体流路603の一部区間をなす形で形成されている。液体流路603は絞り部609よりも流入側開口部604側が流入側テーパ部606とされ、流出側開口部605側が流出側テーパ部607とされる。そして、絞り部609には、脚部先端側が流路内側に突出するようにねじ部材10が組み付けられ、キャビテーション処理部CVを形成している。処理対象となる液体は、例えば水(あるいは必要に応じて所望の溶質成分を溶かし込んだ水溶液)であるが、水以外の液体(例えば、アルコール等の有機溶媒、ガソリンや軽油などの化石燃料、食用油など)を用いてもよい。
【0106】
液体処理ノズル600は、ノズルケーシング602とキャビテーションコア1とを含んで構成される。本実施形態において液体処理ノズル600は、キャビテーションコア1、ノズルケーシング602を構成するケーシング本体602CA及びコア押え部602CB、及びテーパピース602CPの4つの主要パーツからなる。また、キャビテーションコア1は、コア本体1Mとねじ部材10とを有する。
【0107】
ノズルケーシング602のケーシング本体602CAには、液体流通方向(中心軸線Oの方向)にて両端が開口する形態の収容通路部651を有する。具体的には、ケーシング本体602CAには第二側端部に流入側開口部604が形成されるとともに、袋ナット616が回転自在に嵌着されている。また、流入側開口部604の下流に続く形で液体流通方向に漸次縮径する形で流入側テーパ部606が形成されている。また、流入側テーパ部606の流出開口につながる形で該流出開口と同一内径の円筒面部609Bが形成されている。この円筒面部609Bは絞り部609の一部を形成する。収容通路部651は円筒面部609Bよりも径大であり、段付面652を生ずる形で円筒面部609Bと連通している。この収容通路部651の液体流通方向における下流側には、ケーシング接続用の雌ねじ部653が、段付面652を生ずる形で該収容通路部651よりも径大に形成されている。
【0108】
次に、キャビテーションコア1のコア本体1Mには、中心軸線Oの方向における一方の端面に液体入口を開口し他方の端面に液体出口を開口する液体流路609Aが貫通形成され、ノズルケーシング602の流入側開口部604に向けて供給される液体が液体流路609Aを経て流出側開口部605より流出可能となる位置関係にて、外周面側が収容通路部651の内周面に対し圧入又は隙間嵌めとなるように中心軸線Oの方向に挿入されている。具体的には、コア本体1Mは外周面が円筒面状であり、収容通路部651に対し雌ねじ部653側から同軸的に挿入されている。
【0109】
キャビテーション処理部CVへのねじ部材10の配置構造は
図4Aに示したものと概念的にはほぼ同じである。すなわち、キャビテーション処理部CVには、液体流路3の中心軸線Oと直交する仮想的なねじ配置面が該中心軸線Oに沿って複数、
図24においてはLP1,LP2の2面が設定され、
図4Aの面ねじ組が、ねじ配置面LP1,LP2に対し同相に配置されている。また、
図25Aに示すように、ねじ装着孔19の脚部挿通部19fの内径hdが、脚部挿通部19fの全長にわたって
md-mtd≦hd<md
の範囲となるように定められている。よって、
図25Bに示すように、脚部挿通部19f内にてねじ部材10の脚部10fは全区間にわたってセルフタッピング形態に装着されている。
【0110】
図24に戻り、テーパピース602CPは外周面が円筒面状とされ、キャビテーションコア1の下流側に隣接する形で収容通路部651に中心軸線Oの向きに挿入配置されている。テーパピース602CPには、液体流通方向(中心軸線Oの方向)にて両端が開口する形態の第一テーパ部607Aが貫通形成されている。第一テーパ部607Aは流出側テーパ部607の上流側の一部をなすものであり、その流入側の開口は、キャビテーションコア1の液体流路609Aと同一内径に形成されるとともに、流出側の開口に向けて漸次拡径する形で形成されている。
【0111】
また、コア押え部602CBは流出側開口部605を開口形成する雌ねじ継手部617を有し、この雌ねじ継手部617の上流にはコア押え部602CBの流入側の開口を形成する第二テーパ部607Bが形成されている。第二テーパ部607Bは流出側テーパ部607の下流側の一部をなすものであり、テーパピース602CPの流出側開口と同一内径をなす流入側の開口に向けて漸次縮径する形で形成されている。また、流入側の開口が位置する上流端部分は段付面655により縮径され、その外周面にはケーシング本体602CAの雌ねじ部653と螺合する雄ねじ部656が形成されている。テーパピース602CPの下流側の端面は、コア押え部602CBの上流側の端面により、中心軸線Oの方向における下流側への移動が規制されている。
【0112】
上記の構成において、流出側テーパ部607は流入側テーパ部606よりも液体流通方向における区間長が大きくなるように形成されている。流出側テーパ部607の区間長をこのように大きく定めることで、液体を流通した場合にテーパ面内周に沿う旋回流の形成が顕著となる。例えばキャビテーションコア1で減圧析出した溶存気体が多少大きく気泡成長しても、流出側テーパ部607に沿う旋回流に巻き込むことで微粉砕することができる。また、
図31に示す後述の変形例のごとく、流通する液体に外部から可溶性ガスを導入する場合は、この旋回流に巻き込むことで可溶性ガスの溶解効率を向上させることができる。
【0113】
また、流出側テーパ部607を、テーパピース602CPの第一テーパ部607Aとコア押え部602CBの第二テーパ部607Bとにより分割形成することで、例えば流出側テーパ部607を内面切削により形成する場合の切削工具の軸線方向の挿入長を短くでき、加工の実施は各段に容易となる。なお、より区間長の長い流出側テーパ部607を形成したい場合、テーパピース602CPを2個以上にさらに分割することも可能である。
【0114】
ケーシング本体602CA、コア押え部602CB、テーパピース602CP及びコア本体1Mの材質は、たとえばABS、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PTFEなどの樹脂であるが、ステンレス鋼や真鍮などの金属やアルミナ等のセラミックスとしてもよく、用途に応じて適宜選択される。
【0115】
図31は、上記の液体処理ノズル600において気体導入機構を設けた変形例を示す横断面図である。ケーシング本体602CAには、該ケーシング本体602CAの外周面に開口し、キャビテーション処理部CVよりも上流にて絞り部609に連通する気体導入孔626が形成されている。気体導入孔626のケーシング本体602CAの外周面側の開口にはめねじ孔629が形成され、ここに気体供給管を接続するための図示しない気体導入用継手が取付可能となっている。これら気体導入孔626及び気体導入用継手が気体導入機構を構成し、該気体導入用継手に気体供給配管(図示せず)を接続すれば、絞り部609内に溶解するべき気体を簡単に導入することができる。例えば、エアコンプレッサ(図示せず)からの気体供給配管を接続することで被処理水に空気を溶解でき、例えば溶存空気の欠乏した被処理水においてもキャビテーションに必要な溶存空気量を確保できる。
【0116】
以下、キャビテーション処理部の種々の変形例について説明する。これらの変形例は、上記実施形態のいずれについても適用可能である。
図26は、
図24の液体処理ノズル600のキャビテーション処理部CVにて、
図4Aに示すレイアウトの面ねじ組を中心軸線Oの方向に4組配置した構成を示す。具体的には、中心軸線Oの向きに4つのねじ配置面LP1~LP4が、
図24と同じ面間隔dpにて配置され、
図4Aの十字状の面ねじ組が互いに重なるように(すなわち、同相に)配置されている。この場合、16本のねじ部材10が4つのねじ配置面LP1~LP4に分配されることとなる。また、
図27は、
図4Aの面ねじ組を8つのねじ配置面LP1~LP8に対し同相に配置したキャビテーション処理部CVの例を示す。この場合、32本のねじ部材10が8つのねじ配置面LP1~LP8に分配されることとなる。各キャビテーション処理部CVの70%谷点面積密度は、
図24の構成と比較して、
図26の構成では2倍に、
図27の構成では4倍に増加させることができる。
【0117】
図28は、
図24の液体処理ノズル600のキャビテーション処理部CVにて、
図4Aに示すレイアウトの面ねじ組をねじ配置面LP1に、
図4Bに示すレイアウトの面ねじ組をねじ配置面LP2に、それぞれ設けた例を示す。また、
図29は、
図28の構成において、面ねじ組を互いに直交するねじ部材対に分割し、それぞれ中心軸線Oの向きに位置をずらして配置したキャビテーション処理部CVの例を示す。具体的には、
図24においてねじ配置面LP1,LP2上に配置されていた各々4本のねじ部材10が、
図29の構成では、ねじ部材10の公称ねじ径Mだけ隔てられた2つのねじ配置面LP1,LP1’及びLP2,LP2’に、互いに直交する2本ずつを分散させて配置している。すなわち、8本のねじ部材10を4つのねじ配置面LP1,LP1’,LP2,LP2’に分配した例を示すものである。また、ねじ配置面LP1’とねじ配置面LP2との間隔は、公称ねじ径Mよりも大きく(例えば1.5M~2.0M程度)に設定されている。該構成における70%谷点面積密度は
図24の構成と同等である。
【0118】
また、
図30は、
図4Aのレイアウトの面ねじ組と、
図4Bのレイアウトの面ねじ組とを、4つのねじ配置面LP1~LP4に対し、交互に2つずつ合計4組配置したキャビテーション処理部CVの例を示す。この例では、16本のねじ部材10が4つのねじ配置面LP1~LP4に4本ずつ分配配置されている。該構成における70%谷点面積密度は
図24の構成の2倍となる。
【0119】
上記の種々の実施形態では、ねじ配置面に対しねじ部材を4本十字状に配置していたが、ねじ配置面におけるねじ部材の配置数及び配置形態はこれらに限定されるものではない。
図32は、面ねじ組を3本のねじ部材10で構成した例を示すものである。3本のねじ部材10の先端面は三角形状の液体流通ギャップ15を形成している。
【0120】
また、
図24の構成において、液体流路3(絞り部609)の内径が拡大した場合、全流通断面積が3.8mm
2以上確保され、かつ、面内流通面積率が40%以上に確保される条件が充足されるのであれば、1つのねじ配置面上に配置するねじ部材の数、すなわち、面ねじ組の構成ねじ部材数は4つを超えた数とすること、例えば6本や8本としてもよい。
図33は、面ねじ組を8本のねじ部材で構成した例を示している。
【0121】
また、ねじ部材を液体流路3(絞り部609)の内径(直径)に沿って配置する場合、該内径を横断するねじ部材を用いることで、中心ギャップを省略する構成も可能である。
図34は、面ねじ組を4本のねじ部材により、中心ギャップを形成しない形で構成した例を示す。また、
図35は、
図34の面ねじ組を、中心軸線Oの方向に位置をずらし、かつ角度位相を45°ずらして2組配置した例を示すものである。特に、絞り部9の内径が10mmを超える大流量のノズルにおいては、中心ギャップを省略しても中心軸線O付近の流速は十分に確保でき、高流速となる中心軸線O付近のねじ谷数を増加させる上での支障がない。
【0122】
(実験例)
以下、本発明の液体処理ノズルを用いて処理した水の、種々の効果を確認するために行った実験の結果について説明する。
試験用の液体処理ノズル(以下、「試験ノズル」と称する)として、
図24に示す形状のものを種々作成した。
図42に
図24の各部の寸法関係を図示している。キャビテーションコア1の材質はABS樹脂であり、流入側開口部604と流出側開口部605の内径はφ20mm、流入側テーパ部606及び流出側テーパ部607の流れ方向の長さはそれぞれ15mm及び45mmである。また、キャビテーション処理部において絞り部609の長さLは12mm(面ねじ組数4まで)ないし17mm(面ねじ組数8)、絞り部609の内径Dはφ4.2(2孔)~φ11.5mmの種々の値に設定した。
【0123】
採用したねじ部材は、JIS:B0205(1997)に規定されたメートル並目ピッチを有する0番1種なべ小ねじであり、材質はステンレス鋼(SUS304)である。また、脚部の公称ねじ径はM1.0(ねじピッチ:0.25mm、ねじ頭外径:1.8mm)、M1.4(ねじピッチ:0.30mm、ねじ頭外径:2.0mm)、M1.6(ねじピッチ:0.35mm、ねじ頭外径:2.4mm)、M2.0(ねじピッチ:0.40mm、ねじ頭外径:3.0mm)である。また、各ねじともねじ山の高さmtdはねじピッチの約50%であり、ねじ装着孔19の脚部挿通部19fの内径は前述のラップ長ftdが0.31mtdとなるように定めている。キャビテーション処理部におけるねじ配置面(面ねじ組)の数は1~8であり、種々の面間隔にて設定している。なお、比較のため、
図41に示す如く、キャビテーション処理部に形成した隔壁部8に2つの絞り部9を形成し、各絞り部9について十字形態に4本のねじ部材10を配置した液体処理ノズルも作成した。
【0124】
各ねじ配置面のねじ部材(面ねじ組)の配置数及びレイアウトは、
図32に示す3本、
図4A及び
図4Bに示す4本及び
図33に示す8本であり、隣接するねじ配置面の面ねじ組の位置関係(角度位相)は、
図24、26、27に示す同相か、
図28~
図30に示す45°又は60°(ねじ配置面が3以上の場合は交互に45°又は60°ずらした配置)のいずれかとした。また、個々のねじ配置面の全流通断面積aは5.1~56.8mm
2、面内流通面積率は26.0%~73.7%の種々の値とした。なお、表3の番号13及び番号15の試験ノズルについては、直径方向に2本のみねじ部材を配置した1つのねじ配置面を1つ含むように構成した(表中、「1/2」と表示)。
【0125】
また、絞り部内のねじ部材のレイアウトを示す投影画像上で各ねじ配置面上の基準円内側の70%谷点数を計数し、これをねじ配置面で合計した値を絞り孔の全断面積で除することにより、70%谷点面積密度の値を各試験ノズルについて算出した。作成した各ノズルについて、絞り部内径、組内ねじ数、面ねじ組数、面ねじ組配置、面ねじ組間隔、各ねじ配置面の面内流通断面積、各ねじ配置面の面内流通面積率、流量、70%谷点総数、70%谷点面積密度及び70%谷点流量密度の各値を、表1~表4にまとめて示している。なお、*を付与した番号のノズルは参照用ノズル(本発明の範囲内であるが、一部の値が好ましい数値から外れているノズル)であることを示す。また、表1及び表3の各試験ノズルにおいては、公称ねじ径が上記M1.4のねじ部材を使用している。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
上記の試験用ノズルを用い、以下のような試験を行なった。
(1)通水テスト
図43に示す試験装置を構築し、各試験ノズルを組み込んで通水テストを行なった。具体的には、水温20℃、溶存酸素濃度6ppmの水道水を容量50Lの貯留タンクに注水した。配管系は内径20mmのPVC管を用いて作成した。吸引配管は一端をベーンポンプの吸引側に接続し、他端側を貯留タンクに挿入した。一方、ポンプ吐出側の配管は試験ノズルを装着する試験配管と、試験ノズルを経由しない逃がし配管とに分岐し、逃がし配管を通る水は貯留タンクに戻される。試験配管の先端には試験ノズルが装着され、その上流に動水圧計と流量計とが挿入される。この状態でベーンポンプを駆動することにより、試験ノズルを開放通水した時の動水圧と流量とが読み取り可能である。また、試験ノズルを通過した処理水は回収タンクに回収される。逃がし配管上には流量調整弁が設けられ、その開度を調整することで、ノズルに付加される動水圧及び流量が任意の値に無段階に設定可能である。
【0131】
通水テストは、動水圧を0.077MPaに固定設定した時の流量を全ての試験ノズルについて測定したほか、特に選定したいくつかの試験ノズルについては、動水圧を種々に変更した時の流量変化についての測定を行なっている。また、ねじ配置面を1面のみとし、ねじ部材(面ねじ組)の配置数及びレイアウトを
図4Aに示す4本とし、絞り部609の内径及びねじ部材10の公称ねじ径Mにより全流通断面積aを種々に変更した試験ノズルを用い、動水圧を0.077MPaに固定設定した時の流通断面積と流量の関係を調べる試験も別途行なっている。
【0132】
(2)ぬめり汚れ洗浄力評価テスト
バイオフィルムに類似したぬめり汚れのモデルとしてひきわり納豆を用い、
図40の装置2200を用いて、各試験ノズルを通水させた水道水の洗浄力評価を行なった。装置2200の要部をなす散水ノズル2201は、内径20mmのPVC管の先端をキャップで封止するとともに、管軸線方向に5mm間隔で管壁部を貫通するノズル孔を複数ドリル孔設したものである。この散水ノズルを水平に支持するとともに、基端側に試験水を供給することで各ノズル孔から下向きに噴射される。
【0133】
上記の散水ノズルを、
図43の装置系にて試験ノズルに代えて装着した。また、(1)の通水テストで試験ノズルの通過によりキャビテーション処理された処理済み水が回収タンクに回収されるので、これを貯留タンクと置き換える形で設置した(ただし、動水圧を0.077MPaに設定して得られた回収水を用いている)。これにより、
図43を援用して説明すれば、回収タンク内の処理済み水はベーンポンプにより吸い上げられ、試験ノズルの代わりに散水ノズルから噴射されることとなる。散水ノズル2201の直下には整流用タイル2207が垂直に立てた状態で設置される。整流用タイル2207の上面に向け斜め手前に水流が当たるように、散水ノズル2201は軸線周り手前に傾けてセッティングしてあり、各ノズル孔から噴射された水流WFは、整流用タイル2207上で広がって一体化し、水膜状となって流下する。
【0134】
汚れモデルNTを塗布したサンプルタイル2206は整流用タイル2207の直下に配置され、整流タイルからの水膜状の水流WFが幅方向に均等に流下する。サンプルタイル2206はスペーサ2205により、下端側が前方にせり出す形で約3°傾けられている。散水ノズル2201の水流噴射区間の幅は約30cmである。また、整流用タイル2207及びサンプルタイル2206は、片面に白色・平滑な釉薬層が形成された陶器製であり、高さTHが9cm、幅TWが18cmである。サンプルタイル2206上の汚れモデルNTの幅は3~4cmに設定され、噴射される処理水の総流量は6L/分、汚れモデルNTに当たる実質流量は0.6~0.7L/分に調整されている。これにより、汚れモデルNTの除去に対しては、水流の衝突運動エネルギーよりも、納豆粒子をタイルに付着させているぬめり層への浸潤が効果として主体的となる。
【0135】
汚れモデルNTはひきわり納豆であり、染料により赤く着色してサンプルタイル2206に塗付されている。ひきわり納豆に含まれる豆粒子のサイズは2~3mmであり、塗布総重量はデジタルスケールを用いて1g(粒子数:40~50個)に統一している。汚れモデルNTを塗布後のサンプルタイルは、20℃、湿度50%RHの空調室内で90分乾燥させたのち試験に供した。試験中、洗浄進行に伴いサンプルタイル2206から納豆粒子が落下・除去されてゆく様子を動画撮影し、サンプルタイル2206上の初期総粒子数に対する除去粒子数の比率の通水経過に伴う変化を動画から読み取った。具体的には、処理済み水を流通させる場合と通常水を流通させる場合のそれぞれについて3回同じ試験を繰り返し、除去率が50%となる通水時間の3回の平均値を読み取るようにした。
【0136】
処理済み水の洗浄力は、上記の通水時間により評価したが、キャビテーション処理を行なっていない通常水道水や、異なる試験ノズルによる処理済み水の間での比較を行いやすくするために、次のような手法を用いた。
・処理済み水については、回収タンクに回収後、10分間静置状態で放置したのち、試験に供した。10分放置後の処理済み水は、レーザー回折式粒度計(島津製作所製:SALD2200)により微細気泡が計測されるか否かを確認したが、いずれの試験ノズルによる処理済み水も、通常水である水道水とともに測定結果は検出限界以下となった(一方、本発明の好ましい要件を充足する試験ノズル(*印のないノズル)を通水した処理済み水を直ちに測定に供した場合は、平均気泡径100~200nm前後の微細気泡が検出された)。
・洗浄性の評価は、複数の試験ノズルの処理済み水間で通水時間の絶対値を横断的に比較するのではなく、同条件にて作成したサンプルタイルを用いたときの、キャビテーション処理を行わない通常水(ブランク水)と処理済み水との通水時間比(除去率:50%)で比較するようにした。以上の試験結果を、表1~表4にまとめて示している。
【0137】
以下、得られた結果について説明する。
図36は、表1~4に記載の試験に供したノズルとは別に、ねじ配置面を1面のみとし、ねじ配置面の全流通断面積(液体流通領域の面積)を種々に変更した試験ノズルを用意し、動水圧を通常水道圧領域の0.077MPaに固定設定したときの、全流通断面積aと流量ρの関係を調べた結果を示すグラフである。このグラフから明らかな通り、ねじ配置面における全流通断面積aが5.0mm
2以上となる領域では、該面積aの増加に伴い流量ρがaの一次関数:
ρ=1.75a+2.93・・・(I)
に従って直線的に増加する傾向を示していることがわかる。一方、全流通断面積aが5.0mm
2未満となる領域では、流量ρは上記直線的な関係から下方に外れ、全流通断面積aの縮小に伴って、該面積aの対数に依存する関数:
ρ=9.28×ln(a)-3.37・・・(II)
に従い、流量ρが急速に減少していることがわかる。これは、通常の水道圧領域による流通条件では、全流通断面積aが5.0mm
2未満となったとき、ノズル内の面ねじ組の挿入数が1つ増えるごとに増加する圧損が急激に大きくなり、流通断面積に見合った流量が得られなくなることを意味している。全流通断面積aが5.0mm
2となる具体的な条件は、例えば、絞り部9の内径を4.2mmに設定し、M1.4のねじ部材を
図4Aのレイアウトに従い4本配置した場合に相当する。
【0138】
また、70%谷点面積密度の値をさらに増加させる上で、全流通断面積aを5.0mm
2以上に確保することが重要である事情を説明するために、ねじ配置面を2面として面ねじ組の数を増やした試験ノズルを用意し、別途試験を実施した。
図37は、その結果を示すグラフである。横軸は、円形のねじ配置面をなす絞り孔の、断面半径方向の流速分布を示すものである。断面内にねじ部材が配置されるので、流速分布形状はその影響を当然受けると考えられるが、ねじ部材配置の対称性を考慮すれば、断面内にねじ部材が配置されていない場合と同様に、中心軸線Oが極大値となる放物線状の流速分布を仮定することは、おおむね妥当と考えられる(図中の実線)。この状態から、例えば絞り部9の内径を3.5mmに縮小すると、全流通断面積aは3.5mm
2となる。この領域においても、面積aに対し流量ρが(I)式が示す一次関数に従い変化すると考えた場合、(I)式のa=3.5mm
2への外挿値から推定される流量は約9.0L/minとなる。しかし、実際には圧損増大のため該領域での流量はaの対数を含む(II)式に支配され、(I)式の上記外挿値よりも10%低い8.3L/min前後となることがわかる。
【0139】
この場合、該領域でも圧損の影響が小さく(I)式が成立していれば、断面半径方向の流速分布はa=5.0mm
2の場合と同じになるはずであるが、実際には断面半径方向の流速分布は、
図37に破線で示すように、a=5.0mm
2の場合から最大値が10%減じた放物線状となる。断面半径の70%となる位置では、最大値ρMのほぼ1/2の流速となる。よって、最大流速が(I)式による外挿値から10%減ずれば、a=5.0mm
2の場合の最大値ρMの1/2の流量となる断面半径位置は、計算によると70%位置から67%位置へ縮小する。このような特性の面ねじ組を、中心軸線Oの方向にさらに一組追加すれば、ρMの1/2を与える断面半径位置はさらに縮小して63%位置となる。
【0140】
絞り部9の内径が3.5mm、ねじ部材の公称ねじ径Mが1.4の場合、幾何学的な計算によると、70%ねじ谷数は8個となるのに対し、63%ねじ谷数は半分の4個に減ずる。このように、a=3.5mm2の面ねじ組は、仮に中心軸線Oの方向に2組配置して流路断面内のねじ部材数を倍増させても、圧損増加により、面ねじ組を1組のみとした場合と比較して70%ねじ谷数の増加には寄与できなくなることがわかる。逆に、a>3.5mm2に設定される面ねじ組であれば、中心軸線方向に2組配置したときの圧損増加がa=3.5mm2の場合よりも小さくなるので、面ねじ組の増加は70%ねじ谷数の増加、すなわち70%谷点面積密度の増加に理論的には貢献すると考えられる。全流通断面積aの下限値は例えば3.8mm2に定めるのがよいが、より好ましくは上記(I)式が成立する5.0mm2以上に設定するのがよいといえる。そして、実験結果に基づいて以下に詳細に説明するごとく、面ねじ組を構成する十字状の4つのねじ部材を、互いに隣接するねじ配置面で同相に配置する(つまり、ねじ部材の脚部を、長手方向を一致させつつ互いに重なり合う位置関係にて配置する)構成を採用するとき、面ねじ組の追加に伴う圧損増加はほとんど生じなくなり、70%ねじ谷数を劇的に増加させることができる。また、互いに隣接するねじ配置面で角度位相をずらして面ねじ組を配置した場合も、面ねじ組間の距離を増加させることにより、面ねじ組の追加に伴う圧損増加を抑制でき、70%ねじ谷数を同様に増加させることができるようになるのである。
【0141】
図38は、絞り部の内径を5.0mmとし、十字状の4つのねじ部材(M1.4)からなる面ねじ組を、ねじ配置面間隔が1.4mm~8.4mm(公称ねじ径をMとして、1.0M~6.0M)となるように設定し、
図28のごとく、それらを互いに45°ずれた角度位相にて配置した試験ノズル(番号1~5、以下、45°ノズルという:前述の表1にて、洗浄性評価に供したのは番号2及び4のみ)を用いて行った通水テストの結果を示すものである。動水圧は0.046MPa~0.089MPaの種々の値に設定され、各々測定された流量の値を、設定動水圧の値に対してプロットしている。また、面ねじ組を1組のみとしたもの(番号101)、面ねじ組を1組のみとしつつねじ部材の本数を8本に増加させたもの(番号102)、絞り孔を
図41の2孔タイプとしたもの(番号103)を用いた場合の結果についても併せて示している。
【0142】
上記の結果によると、面間隔dpが公称ねじ径と等しくなる1.4mm(1.0M)の場合は、面ねじ組を1組のみとした番号101のノズルと比較すれば圧損増加は大きいが、同一面内に8本のねじ部材を配置した番号102のノズルよりは流量が大きくなっており、面ねじ組を中心軸線Oの方向に分散配置することによる圧損減少効果が明確に認められる。また、面間隔dpを1.5Mに拡大した番号2のノズルは流量が大幅に増加しており、圧損減少効果は極めて顕著となる。この傾向は面間隔dpがさらに拡大することによってより顕著となり(番号3:dp=3.0M)、面間隔dpが4.5Mに達すると、面ねじ組を中心軸線Oの方向に多重化しない番号101及び番号103と比較しても流量特性はほぼ等しくなる。すなわち、このような配置面間隔を採用することで、角度移相をずらした形で面ねじ組を追加しても、圧損増加がほとんど生じていないことがわかる。
【0143】
図39は、絞り部の内径を5.0mmとし、十字状の4つのねじ部材(M1.4)からなる面ねじ組を、面間隔dpが2.1mm(=1.5M)となるように設定し、
図24、
図26及び
図27のごとく、それらを互いに同相にて2~8組配置した試験ノズル(番号6~8)を用いて行った通水テストの結果を示すものである。動水圧は0.046MPa~0.089MPaの種々の値に設定され、各々測定された流量の値を、設定動水圧の値に対してプロットしている。また、同じねじ配置面間隔を有する、
図38の番号2の45°ノズルの結果についても併せて示している。面ねじ組を同相配置することにより、面ねじ組の数を8組まで増加させても、圧損はほとんど増加していないことがわかる。また、同じ面間隔による45°ノズル(番号2)よりも、流量の値は大幅に増加していることもわかる。
【0144】
以下、各ノズルについて行ったぬめり汚れ洗浄力評価テストの結果について、表1~表4を参照しつつ説明する。表1は、上記通水テストで用いた番号2及び番号4の45°ノズル及び番号6の同相ノズルについての結果を、番号101~103の参照用ノズルについての結果とともに示している。また、番号200は、キャビテーション処理を行わない通常の水道水をブランク水(通常水)として用いた場合の結果を示すものである。評価は前述のごとく、除去率が50%となるときのブランク水に対する処理済み水の通水時間比(除去率:50%)で行っており、この通水時間比の値が1のとき、ぬめり汚れに対する洗浄力はブランク水と同等であり、1より小さいときは、ブランク水より短時間でぬめり汚れを除去できていることを意味し、その絶対値が小さいほどぬめり汚れに対する洗浄力に優れていることを示す。
【0145】
まず、参照用のノズルについての結果を説明すると、面ねじ組を1組のみとした番号101のノズルによる処理水は、通水時間比が1よりも小さい値となっており、ブランク水よりは洗浄力は良好である。また、面ねじ組を1組のみとしつつねじ部材の本数を8本に増加させた番号102のノズル、及び絞り孔を2孔タイプとした番号103についての結果も、ブランク水よりは良好であることを示している。
【0146】
ここで、番号102のノズルは70%谷点面積密度が番号101のノズルの1.8倍程度となっており、特に良好な洗浄効果を示している。また、全流通断面積も5.1mm2確保されており、ねじ谷底での流速はキャビテーションを発生させる上で十分確保されていると考えられるが、面内流通面積率の値は26%とやや小さく、流量も6.8L/minと小さいことがわかる。なお、汚れ洗浄力評価テストは、処理水をブランク水にて2倍(ないし3倍)に希釈した水についても同様に行っているが、番号102のノズルは2倍希釈した場合も通水時間比は0.5以下と良好な値を示す。表中には、70%谷点数を動水圧0.077MPaでの通水流量で除して得られる70%谷点流量密度の計算値も併せて示しているが、この値が大きいほど通水時間比が示す洗浄能力が良好となることも把握できる。これは、全流量のうち、キャビテーションにより気泡核析出が顕著となるねじ谷内の通過流量の占める割合が大きくなることに起因すると考えられる。なお、70%谷点流量密度が高いほど洗浄能力が増加する傾向が発現するためには、70%谷点位置にてキャビテーション発生に必要な流速が十分確保されていることが必要であり、全流通断面積が小さくなり、全流量が小さくなるほどキャビテーション発生が顕著となることを意味するものではない。
【0147】
次に、本発明の実施形態にかかる番号2、4、6の試験ノズルの結果については、番号101及び番号103のノズルと比較して70%谷点面積密度が大きいため、処理水の洗浄能力は明らかに優れていることがわかる。他方、70%谷点流量密度の比較では、番号102のノズルよりも若干劣っており、洗浄能力はこれには及ばないものの、これに近い能力が発揮されており、かつ、番号102のノズルと比較したとき、面内流通面積率が増大していることにより、流量については非常に良好な結果を示している。
【0148】
表2は、同相配置にて面ねじ組の数を増加させた番号7及び番号8のノズルについての結果を、番号101及び番号6の試験ノズルの結果と比較して示すものである。番号7及び番号8のノズルは、面ねじ組数の増加に伴う圧損増加が小さいため、大流量を維持しつつ70%谷点面積密度及び70%谷点流量密度がいずれも顕著に増加している。その結果、希釈率を2倍ないし3倍に増加させた場合においても通水時間比が示す洗浄能力は良好である。
【0149】
表3は、M1.4のねじ部材を用いつつ、絞り部内径、面ねじ組のねじ本数及び面ねじ組の数を種々に変更した試験ノズル(番号9~15)についての結果をまとめたものである。また、番号109、111、112及び113は、番号9、11、12及び13の試験ノズルと同じ構成の面ねじ組を1組のみ設けた参照用ノズルを表している。番号10のノズルは、3本のねじ部材で構成した
図32に示す面ねじ組を用いたものであり、番号15は、絞り部内径が10mmを超える値に設定される一方、面ねじ組を
図17に示す8本にて構成したものである。また、番号13及び番号15のノズルは、4本ないし8本の面ねじ組を用いつつ、1層だけねじ本数を1/2(4本の面ねじ組については、直径方向に対抗する2本のみとし、8本の面ねじ組については、十字状の4本のみに間引いたもの)に縮小したものとして構成している。番号9~15の実施例の試験ノズルは、絞り部609の内径の拡大に伴い流量が30L/min以上に増加しているにも関わらず、70%谷点面積密度を2.0個/mm
2以上に確保できており、参照用ノズルよりも大幅に良好な洗浄性能が発揮されている。
【0150】
表4は、各ねじ配置面の面内流通断面積の値をほぼ同等に設定しつつ、使用するねじ部材の公称ねじ径を変更することにより、70%谷点密度を種々の値に設定した試験ノズル(番号21~24)についての結果を示すものである。いずれも良好な洗浄性能を発揮しているが、ねじ谷深さの大きいM1.4~M2.0のねじ部材を用いた番号22~番号24のノズルは、ねじ谷深さの小さいM1.0のねじ部材を用いた番号21のノズルと比較して、より小さい70%谷点面積密度にて同等の洗浄性能が達成できていることがわかる。
【符号の説明】
【0151】
1 キャビテーションコア
1M コア本体
3 液体流路
9A コア流路(液体流路)
10 ねじ部材
10f 脚部
10h 頭部
10mt 雄ねじ部
15 液体流通ギャップ
19 ねじ装着孔
19f 脚部挿通部
19ft 雌ねじ部
19h 頭部収容部
50 ノズルケーシング
50B ケーシング本体
50A コア押さえ部
56 収容通路部
54 第一側開口部
55 第二側開口部
100~600 液体処理ノズル