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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079427
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】車両の車輪スリップを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1761 20060101AFI20220519BHJP
   B60T 8/175 20060101ALI20220519BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20220519BHJP
【FI】
B60T8/1761
B60T8/175
B60W30/02 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021180198
(22)【出願日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】20207888.7
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】レオン・ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】レオ・レイン
(72)【発明者】
【氏名】アディシャ・アリカー
(72)【発明者】
【氏名】シドハント・レイ
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241BC01
3D241CC01
3D241CC08
3D241DB02Z
3D241DB23Z
3D241DB32Z
3D246DA01
3D246EA02
3D246EA05
3D246GB01
3D246GB02
3D246GC14
3D246HA64A
3D246HA72A
3D246HA72B
3D246HC04
3D246JA12
3D246JA15
3D246JB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、車両の車輪スリップを制御する方法を提供する。
【解決手段】車両における共通する車輪にトルクを与えるための少なくとも第1および第2の運動支援装置MSD(モーションサポートデバイス(運動支援装置))を含む。車輪トルク要求を受信することを含む。受信した車輪トルク要求に基づいて、第1の動作モードでトルクを車輪に与えるように第1のMSDを制御すること、および、第1の動作モードとは異なる第2の動作モードでトルクを車輪に与えるように第2のMSDを制御することを含む。第1のMSDの制御と第2のMSDの制御とが、少なくとも一時的に同時に実施される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)の車輪スリップを制御する方法(600)であって、前記車両は、当該車両の共通の車輪(102)にトルクを与えるための少なくとも第1および第2の運動支援装置MSD(114、116、116´、116´´、200、202、204、206)を含み、
前記方法は、
車輪トルク要求を受信すること、
受信した車輪トルク要求に基づいて、
・ 第1の動作モードでトルクを車輪に与えるように前記第1のMSD(116)を制御すること、
・ 前記第1の動作モードとは異なる第2の動作モードでトルクを前記車輪に与えるように第2のMSD(114、116’)を制御すること、
を含み、
前記第1のMSDの制御と前記第2のMSDの制御とが、少なくとも一時的に同時に実施される、方法。
【請求項2】
前記第1の動作モードは速度制御モードであり、前記方法は、前記車輪(102)の回転速度を制御するために車輪速度要求を前記第1のMSD(116)に送信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のMSD(116)は電気機械または内燃機関ICEであり、前記第1の動作モードは速度制御モードであり、前記方法は、前記第1のMSD(116)の回転速度を制御するために機械速度要求を前記第1のMSD(116)へ送信することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の動作モードはトルク制御モードであり、前記方法は、前記第2のMSD(114、116´)のトルクを制御するためにトルク要求を前記第2のMSD(114、116´)に送信することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記車輪(102)は、タイヤモデル(120)が提示されているタイヤを備え、前記タイヤモデル(120)においては、縦方向のタイヤ力(Fx)が少なくとも縦方向の車輪スリップ(λ)の関数として表され、縦方向の車輪スリップ(λ)が前記車輪(102)の回転速度および前記車両の速度に依存しており、前記方法は、前記タイヤモデル(120)に基づいて前記回転速度を制御することを含む、請求項2~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
- 前記受信した車輪トルク要求を前記タイヤモデルに基づいて車輪回転速度要求に変換すること、
- 前記車輪回転速度要求に対応する車輪(102)の回転速度が得られるように、または、前記第1のMSD(116)で実現される回転速度が前記車輪回転速度要求に到達せず且つ与えるトルクが規定されたトルク限界未満になるように、最初は第1のMSD(116)だけを制御すること、その後、
- MSD(114、116、116´、116´´)に存在する選択された制御パラメータの値を集計して合計値を得ること、
- 前記合計値を所望の値分割に基づいてMSD(114、116、116´、116´´)の間で分割し、前記合計値のうちのある配分を前記第2のMSD(114、116´)に割り当てること、および、
- 前記第1のMSD(116)が速度制御モードで制御されたまま、前記第2のMSD(114、116´)に対して前記合計値のうちのその配分に対応したパラメータ要求を送信すること、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択された制御パラメータはトルクであり、前記集計し、分割し、および送信することは、
- MSDに存在する現在のトルクを集計して合計値を得ること、
- 前記合計値を所望のトルク分割に基づいてMSDの間で分割し、前記合計値のうちのある配分を前記第2のMSDに割り当てること、および、
- 前記第1のMSDが速度制御モードで制御されたまま、前記第2のMSDに対して前記合計値のうちのその配分に対応したトルク要求を送信すること、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択された制御パラメータが電力であり、前記集計し、分割し、および送信することは、
- MSDによって供給された現在の電力を集計して合計値を得ること、
- 前記合計値を所望の電力分割に基づいてMSDの間で分割し、前記合計値のうちのある配分を前記第2のMSDに割り当てること、および、
- 前記第1のMSDが速度制御モードで制御されたまま、前記第2のMSDに対して前記合計値のうちのその配分に対応した電力要求を送信すること、
を含む。請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ある期間の後に、前記値を集計し、前記合計値を分割し、および前記第2のMSD(114、116´)に対してパラメータ要求を送信するというシーケンスを繰り返す、請求項6~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記受信した車輪トルク要求の値を所望のトルク分割に基づいて前記第1と第2のMSDの間で分割することを含み、
前記第2の動作モードはトルク制御モードであり、前記方法は、トルク要求を前記第2のMSD(114、116´)にトルク要求を送信することを含み、
前記第1の動作モードは速度制御モードであり、前記方法は、機械速度要求を第1のMSD(116)に機械速度要求を送信することを含み、前記機械速度要求は、前記受信した車輪トルク要求の合計値を与えるように前記タイヤモデル(120)に基づいて選択される、
請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の動作モードは、前記第1のMSD(116)の速度制御モードとは異なる速度制御モードであり、前記方法は、前記第1のMSD(116)を応答時間が比較的短い制御ループを有する高帯域幅MSDとして構成すること、および、第2のMSD(114、116´)を応答時間が比較的長い制御ループを有する低帯域幅MSDとして構成することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のMSD(116)の補正前の回転速度が要求回転速度から比較的小さな値だけ逸脱することを許容する比較的狭い不感帯を有するように前記第1のMSD(116)を構成すること、および、前記第2のMSD(114、116´)の補正前の回転速度が要求回転速度から比較的大きな値で逸脱することを許容する比較的大きい不感帯を有するように前記第2のMSD(114、116´)を構成することを含む、請求項2、3または11に記載の方法。
【請求項13】
前記車両(100)は、前記車輪(102)にトルクを与える第3のMSD(116´´)を含み、前記方法は、前記第2の動作モードで、または前記第1および第2の動作モードとは異なる第3の動作モードで、前記第3のMSD(116’’)を制御することを含む、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
コンピュータ上で実行されたときに請求項1~13のいずれか一つに記載の手順を実施するためのプログラムコード手段(820)を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
コンピュータ上で実行されたときに請求項1~13のいずれか一つに記載の手順を実施するためのプログラムコード手段(820)を含むコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体(810)。
【請求項16】
車両(100)の車輪スリップを制御する制御ユニット(110)であって、
前記車両は、当該車両の共通の車輪にトルクを与える少なくとも第1および第2の運動支援装置を含み、
請求項1~13のいずれか一つに記載の方法の手順を実施するように構成されている、
制御ユニット。
【請求項17】
請求項16に記載の制御ユニット(110)を含み、
前記第1のMSD(116)は、電気機械、ICE、およびブレーキアクチュエータのうちの一つであり、前記第2のMSD(114、116´)は、電気機械およびブレーキアクチュエータのうちの一つである、車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の車輪スリップを制御する方法に関し、前記車両は、当該車両における共通する車輪にトルクを与えるための少なくとも第1および第2のモーションサポートデバイス(運動支援装置)MSDを含む。また、本開示は、コンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体、制御ユニット、および車両にも関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス、および建設機械などの大型車両に適用することができる。本発明は、セミトレーラ車両やトラックなどの貨物輸送車両に関して説明されるが、本発明はこのような特定の車両に限定されず、乗用車などの他の車両に用いることもできる。
【背景技術】
【0003】
大型車両のブレーキシステムは、安全な車両運転のための重要な要素である。ブレーキシステムは、必要なときに車両の速度を制限するだけでなく、車両の安定性を維持する上でも重要な役割を果たす。たとえば、車両の左車輪が道路の凍結した部分を走行することで摩擦やグリップが低下する一方で、対応する右車輪が道路の滑らない部分を走行する場合、ブレーキシステムは、発生したスリップ状態を補償し、打ち消すように作動することができる。
【0004】
特定のタイヤ力を要求するための一般的な手法は、アクチュエータレベルでトルク制御を用いることである。しかし、このような手法には重大な性能上の限界がある。安全上危険または過剰なスリップ状態が発生した場合には、関連する安全機能(トラクションコントロール、アンチロックブレーキなど)が介入し、スリップを制御状態に戻すためにトルクオーバーライドを要求する。この場合の問題は、アクチュエータの主制御とスリップ制御とが2つの異なるコントローラに割り当てられるため、両者の間の通信に要する待ち時間がスリップ制御の性能を大きく制限してしまうことである。
【0005】
上述の手法に対する1つの解決策として、トルク要求を車輪スリップ要求に変換するためのタイヤモデルを使用することが考えられる。すなわち、アクチュエータレベルで制御される特定のタイヤ力を求めるのではなく、代わりに車輪スリップ、すなわち車輪の回転速度を制御することで、より速い制御応答が得られ得る。しかし、複数のアクチュエータが同じ車輪に作用する場合、車輪スリップ要求もまた問題になることがある。このような問題の一例は、電気機械および摩擦ブレーキに連結されている車軸上で生じ得る。別の例は、複数の電気機械(たとえば電動モータ)が同じ車軸に並列に連結されている場合の当該車軸である。これらの場合、車輪スリップ要求に従うには、複数のアクチュエータ間の要求の割り当てがアクチュエータ間の「対立(fighting)」が回避されるように行われなければならない。たとえば、車両の駆動軸に連結された3つの電気機械がすべて、単純に1つのモータ速度要求(要求された車輪スリップに対応)に設定されている場合、モータ速度が目標値に近づいたときに3つの電気機械が互いに干渉してしまう可能性が非常に高くなる。したがって、複数のアクチュエータが1つの共通する車輪に作用する場合、上述の欠点が少なくとも部分的に緩和される車輪スリップ制御を使用することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の欠点を緩和する方法を提供することである。以下の開示で明らかになるであろう、この目的および他の目的は、添付の独立請求項に定義されるような方法によって達成される。
【0007】
本発明の概念は、2つ以上の運動支援装置MSD(上記のまたは別記のアクチュエータの組み合わせなど)が、車両の1つの共通の車輪(または、車軸レベルでトルクを与えるなどの1つの共通の車輪群)にトルクを与えるように構成されている場合、MSD間の対立(fighting)/干渉(interfering)が少なくとも2つの異なる動作モードでトルクを与えるようにMSDを制御することによって回避され得るという認識に基づいている。すなわち、1つまたは複数のMSDが第1の動作モードでトルクを与えるように制御される一方、他のMSDは、第2の動作モードおよび/またはさらなる動作モードでトルクを与えるように制御され得る。たとえば、1つのMSDは、マスター動作モードで制御され、他のMSDは、マスター動作モードに依存するスレーブ動作モードで制御されてもよい。様々な態様および例示的な実施形態が以下で説明される。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、車両の車輪スリップを制御する方法が提供される。車両は、車両の共通の車輪にトルクを与えるための少なくとも第1および第2の運動支援装置MSDを含む。この方法は、
車輪トルク要求を受信すること、
受信した車輪トルク要求に基づいて、
・第1の動作モードでトルクを車輪に与えるように第1のMSDを制御すること、
・第1の動作モードとは異なる第2の動作モードでトルクを車輪に与えるように第2のMSDを制御すること
を含み、
前記第1のMSDの制御と前記第2のMSDの制御とが、少なくとも一時的に同時に実施される。
【0009】
第1のMSDおよび第2のMSDが異なる動作モードでトルクを与えるようにすることにより、たとえ同時に実施されたとしても、第1および第2のMSDが、受信した車輪トルク要求に関連するそれらの目標値に近づいたときに干渉してしまうというリスクが回避され得る。より正確なスリップおよびトルク制御が所定の車輪で同時に達成され得、および、エネルギー効率の改善、個々のMSDへの負担の軽減などをもたらすMSD全体にわたるトルクおよび/または電力の所望の分配をも達成しながらより正確なスリップ制御が達成され得るなどのような、他のいくつかの利点もあり得る。
【0010】
本開示で提示された方法は、自律走行車両または運転者が操作する車両において適切に実施され得る。
【0011】
本発明の概念は、2つのMSDだけに限定されるのではなく、共通の車輪または(共通の車軸上にあるなどの)共通の車輪グループにトルクを与える3つ以上のMSDでも有利に実施され得る。2つ以上のMSDは、同じタイプであっても異なるタイプであってもよい。本開示にしたがって制御されると考えられるMSDの例には、電動モータなどの電気機械、内燃機関ICE、および摩擦ブレーキが含まれる。
【0012】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記第1の動作モードは速度制御モードであり、前記方法は、車輪の回転速度を制御するために車輪速度要求を第1のMSDへ送信することを含む。速度制御モードを適用することにより、速く正確なスリップ制御が達成可能になる。このような速度制御モードは、電気機械、ICEおよび摩擦ブレーキを含む様々なタイプのMSDに対して実施され得る。以下の例示的な実施形態では前者の2つが例示される。
【0013】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記第1のMSDは電気機械または内燃機関ICEであり、前記第1の動作モードは速度制御モードであり、前記方法は、第1のMSDの回転速度を制御するために機械速度要求を前記第1のMSDに送信することを含む。上記のように、これにより、速く正確なスリップ制御が可能になる。
【0014】
したがって、上記から、機械自体の回転速度を制御してもよいし、または実際の車輪の回転速度を制御してもよいことが理解されるであろう。機械の回転速度は、(間にあるギアボックスなどのために)車輪速度とは異なることもある。機械速度を制御することが有利であるのは、MSDがシャフトを介して車輪に連結され得るモータ(電動またはICEなど)である場合である。これは、車輪の速度信号が、ドライブシャフトの剛性などにより、いくらかの遅延や位相差を持つことがあり得るからである。したがって、機械速度に基づく制御ループは、車輪速度に基づく制御ループよりも安定であり得る。
【0015】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記第2の動作モードはトルク制御モードであり、前記方法は、前記第2のMSDのトルクを制御するためにトルク要求を第2のMSDに送信することを含む。前記速度制御モードでトルクを与えるように前記第1のMSDを制御し、および前記トルク制御モードでトルクを与えるように前記第2のMSDを制御することにより、MSD同士が対立するというリスクが低減され得る。さらに、応答時間が適宜異なっていてもよい。たとえば、前記速度制御モードは、前記トルク制御モードよりも制御応答時間が速くてもよい。
【0016】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、車輪は、タイヤモデルが提示されているタイヤを備え、このタイヤモデルにおいてが、縦方向(longitudinal)のタイヤ力は、少なくとも縦方向の車輪スリップの関数として表され、縦方向の車輪スリップは、車輪の回転速度および車両の速度に依存しており、前記方法は、前記タイヤモデルに基づいて回転速度を制御することを含む。したがって、タイヤモデルは、トルク要求を車輪スリップ要求または速度要求に変換するために有利に使用され得る。このように、本開示によれば、トルク制御をスリップ制御と同じ車両サブシステムで行うことにより、トルク制御の待ち時間を回避することができる。このようなサブシステムは、トルク要求を従来通り送信する車両制御ユニットと比較して、応答時間が相対的に短い。縦方向のタイヤ力が少なくとも縦方向の車輪スリップの関数であるタイヤモデルを使用することにより、スリップ制御サブシステムは、所望の縦方向の力に対応するスリップ要求を提供することができる。これにより、速い応答時間が得られる。
【0017】
タイヤモデルは、その最も基本的な形態においては、縦方向の車輪スリップの単なる関数として表された縦方向のタイヤ力になり得るが、少なくともいくつかの例示的な実施形態では、他の変数もまたタイヤモデルに含まれ得ることを理解されたい。たとえば、タイヤモデルは、横方向の車輪スリップ、タイヤにかかる垂直の力などの他の入力を含んでもよい。
【0018】
他の例示的な実施形態は、タイヤモデルなしで実施されてもよいことも理解されたい。たとえば、前記第1のMSDは、速度が縦方向のスリップ値(一定であっても変化してもよい)に基づいて計算される速度制御モードに設定され得る。一定のスリップ値が使用される場合、MSDは、最大の駆動力(または制動力)設定に到達しようとするはずであるが、多くの場合、MSDにも送信されるトルク限界によって制限される。これは、タイヤモデルを必要としない簡略化された手法であるが、タイヤモデルを用いる例示的な実施形態ではもっと正確であり得る。
【0019】
縦方向の車輪スリップは、正の車輪スリップであってもよいし、負の車輪スリップであってもよい。たとえば加速時には、正の推進スリップが得られることがある。すなわち、車輪の回転速度とその半径の積は、車輪の方向における車両の速度よりも大きい。制動時には、負のスリップが得られることがある。すなわち、車輪の回転速度とその半径との積は、車輪の方向における車両の速度よりも小さい。
【0020】
縦方向の車輪スリップは、正の車輪スリップであってもよいし、負の車輪スリップであってもよい。たとえば加速時には、正の推進スリップが得られることがある。すなわち、車輪の回転速度とその半径の積は、車輪の方向における車両の速度よりも大きい。制動時には、負のスリップが得られることがある。すなわち、車輪の回転速度とその半径との積は、車輪の方向における車両の速度よりも小さい。
【0021】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、車輪トルク要求から車輪回転速度要求への変換において、制御ユニットは、補正された関数に基づいてスリップ要求を計算し、そのスリップ要求を、以下のスリップ式を用いて車輪回転速度要求に変換するように構成されている。
【数1】
ここで、λは縦方向の車輪スリップであり、Rωは車輪の回転速度であり、Rはメートル単位の車輪半径であり、ωは車輪の角速度であり、vは車輪の縦方向の速度である。こうして、車輪回転速度要求は、タイヤモデルの式および関数から簡便に得られる。
【0022】
したがって、λは、-1から1の間にあり、車輪が路面に対してどれだけ滑っているかを定量化している。制御ユニットは、vに関する情報を(車輪の参照フレームに)適切に保持してもよく、一方、車輪速度センサがωを決定するために使用され得る。
【0023】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、方法は、
- 前記受信した車輪トルク要求を前記タイヤモデルに基づいて車輪回転速度要求に変換すること、
- 前記車輪回転速度要求に対応する車輪の回転速度が得られるように、または、第1のMSDで実現される回転速度が前記車輪回転速度要求に到達せず且つ与えるトルクが規定されたトルク限界未満になるように、最初は第1のMSDだけ制御すること、その後、
- MSDに存在する選択された制御パラメータの値を集計して合計値を得ること、
- 前記合計値を所望の値分割に基づいてMSD間で分割し、前記合計値のうちのある配分を第2のMSDに割り当てること、および、
- 第1のMSDが速度制御モードで制御されたまま、第2のMSDに対して前記合計値のうちのその配分に対応するパラメータ要求を送信すること、
をさらに含む。
こうして、速度制御モードに設定された前記第1のMSDは、他のMSDを「リード」する。ある期間(第1のMSDと車輪と道路との間で準定常状態に達するのに十分な適切な長さ)の後、前記選択された制御パラメータの値が合計され、次いで分割される。合計値は均等に分割されてもよいが、各MSDが合計値のうちのある配分を受け取るという他の規則が適用されてもよい。この方法では、前記第1のMSDが目標速度に到達するのを必ずしも待つ必要がないことに留意されたい。むしろ、前記第1のMSDへの現在の適用トルクが速度要求を超えないように、十分に長い時間が経過することが許容される。たとえば、(乾いた道路では)前記第1のMSDが目標速度に全く達しないことがあるが、他のMSDは、全体の車輪速度を可能な限り目標に近づけるように、または合計トルクが限度値に達するように、(最終的に)トルクを追加しなければならない場合があり得る。
【0024】
また、前記受信した車輪回転速度要求は、車輪の回転速度を制御することによって、または前記第1のMSD自体の回転速度を制御することによって、満たされ得ることも理解されたい(したがって、回転速度間の任意のギア比などは、車輪トルク要求を計算および車輪回転速度要求に変換することに含まれ得る)。
【0025】
上記の選択された制御パラメータは、たとえばトルクまたは電力であってもよい。このことは、以下に開示される例示的な実施形態に反映される。
【0026】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記選択された制御パラメータはトルクであり、前記集計し、分割し、および送信することは、
- MSDに存在する現在のトルクを集計して合計値を得ること、
- 合計値を所望のトルク分割に基づいてMSD間で分割し、合計値のちのある配分を第2のMSDに割り当てること、および、
- 前記第1のMSDが速度制御モードで制御されたまま、前記第2のMSDに前記合計値のうちのその配分に対応するトルク要求を送信すること、
をさらに含む。
その利点は、制御パラメータについての上記の大まかな開示と同様である。
【0027】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記選択された制御パラメータは、電力であり、前記集計し、分割し、および送信することは、
- MSDによって提供される現在の電力を集計して合計値を得ること、
- 合計値を所望の電力分割に基づいてMSD間で分割し、合計値のうちのある配分を第2のMSDに割り当てること、および、
- 第1のMSDが速度制御モードで制御されたまま、第2のMSDに合計値のうちのその配分に対応する電力要求を送信すること、
をさらに含む。
その利点は、制御パラメータについての上記の大まかな開示と同様である。
【0028】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記方法は、ある期間の後に、値(たとえばトルクまたは電力)を集計し、合計値を分割し、および前記第2のMSDに対してパラメータ要求(たとえば、トルク要求または電力要求)を送信するというシーケンスを繰り返すことを含む。このため、MSDには、全体の状態におけるそれらの配分に基づくパラメータ要求が送信され得る。システムが再び安定化するための時間が与えられ、その後に、パラメータ状態が再び読み込まれ、前記シーケンスが繰り返される。2つより多いMSD、たとえば3つのMSDが同じ車輪に作用する場合、第1のMSDは速度制御モードで動作し、第2および第3のMSDは、選択されたパラメータの合計値のそれらの配分に基づいて制御され得る。3つのMSDが設けられている場合、パラメータ分割は3で割ることであり得る(但し、他のルールが適用されてもよい)。
【0029】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記方法は、前記受信した車輪トルク要求の値を所望のトルク分割に基づいて第1と第2のMSDの間で分割することを含み、前記第2の動作モードはトルク制御モードであり、前記方法は、トルク要求を第2のMSDに送信することを含み、前記第1の動作モードは速度制御モードであり、前記方法は、機械速度要求を第1のMSDに送信することを含み、機械速度要求は、前記受信した車輪トルク要求の合計値が得られるようにタイヤモデルに基づいて選択される。分割は、好ましいトルク分割に基づいて行われるとよく、すなわち、要求されたトルクは必ずしも均等に分割されなくてもよい。要求されたトルクの値を2つ以上のMSDの間で分割し、MSDのうちの一つを速度制御モードで動作させ、他をトルク制御モードで動作させることにより、MSD間の対立が回避され得る。トルク制御モードにある1つ以上のMSDは、比較的大まかなベースラインを提供すると考えることができ、(速度制御モードにある)第1のMSDは、前記受信した車輪トルク要求と関連する所望のスリップを達成するための微調整を提供すると考えることができる。この例示的な実施形態において、速度制御モードは、必ずしもトルク制御モードよりも応答が速い制御ループを有する必要がないことに留意されたい。したがって、応答時間は、この例示的な実施形態では、両方のMSDで同じになり得る。
【0030】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記第2の動作モードは、前記第1のMSDの速度制御モードとは異なる速度制御モードであり、前記方法は、前記第1のMSDを応答時間が比較的短い制御ループを有する高帯域幅MSDとして構成すること、および前記第2のMSDを応答時間が比較的長い制御ループを有する低帯域幅MSDとして構成することを含む。異なる応答時間の制御ループを設定することにより、MSDが互に干渉しない。したがって、前記第2のMSDは粗い速度制御を実施するために使用され、前記第1のMSDは細かい分解能の速度制御を実施するために使用され得る。また、関連する調整パラメータを適切に選ぶことにより、2つ以上のMSDは、MSD間で望ましくないチャタリングおよび/または対立を生じることなく、同じ速度目標を持つことができる。帯域幅とは別に、調整パラメータが狭いまたは大きい不感帯(deadzone)を選択することも可能である。これは、以下の例示的な実施形態に反映されている。
【0031】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記方法は、前記第1のMSDの補正前の回転速度が要求された回転速度から比較的小さな値だけ逸脱することを許容する比較的狭い不感帯(deadzone)を有するように第1のMSDを構成すること、および前記第2のMSDの補正前の回転速度が要求された速度から比較的大きな値で逸脱することを許容する比較的大きい不感帯(deadzone)を有するように第2のMSDを構成することを含む。このように、粗い速度制御を実施するように第2のMSDを設定し、および細かい分解能の速度制御を実施するように第1のMSDを設定することにより、MSD間の対立が回避され得る。
【0032】
このように、上記から、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとは、いくつかの例示的な実施形態においては別々のパラメータが制御されるという点で異なることがあり(たとえば、速度制御とトルクまたは電力制御)、また、他の例示的な実施形態においては、同じ制御パラメータが実施されているが動作範囲は異なるという点で異なることがある(たとえば、速い制御帯域幅および/または狭い不感帯での速度制御と、低速の制御帯域幅および/または大きい不感帯での速度制御)ことを理解されたい。
【0033】
本開示で何度か述べたように、同じ車輪または同じ車輪グループに作用するMSDが2つよりも多いことがある。このことは、少なくとも1つの例示的な実施形態に反映されており、それによると、車両は、車輪にトルクを与えるための第3のMSDを含み、前記方法は、第2の動作モードで、または第1および第2の動作モードとは異なる第3の動作モードで第3のMSDを制御することを含む。このように、MSDが3つ以上ある場合、一般に、第2のMSDと第3のMSDとが同じ動作モードで制御されたとしても、MSD間の対立を回避できるという有利な効果を得ることが可能である。たとえば、第1のMSDが速度制御モードで動作し、第2および第3のMSDがトルク分割の配分に応じてトルク制御モードで動作してもよい。いくつかの例示的な実施形態では、第1のMSDは、マスターMSDとみなすことができ、第2および第3のMSDは両方ともスレーブMSDとみなすことができる。第2および第3のMSDは、同じ動作モードで制御され得るが、いくつかの例示的な実施形態では、別々の動作モードで制御されてもよい。たとえば、すべてのMSDが速度制御モードに設定されている実施形態において、第1のMSDは狭い不感帯および速い制御帯域幅で設定され、第2のMSDは中間の不感帯および中速の制御帯域幅で設定され、第3のMSDは大きい不感帯および定速の制御帯域幅で設定され得る。
【0034】
少なくともいくつかの例示的な実施形態では、別々のMSDの制御モードは、時間経過ととともに切り替えられてもよいことを理解されたい。たとえば、速度制御がなされている特定のMSDは、時間とともに、利用可能なMSDとの間で交換され得る(たとえば、複数の同一の電気機械がある場合、これらを順番にリードMSDにすることができる)。
【0035】
本開示の第2の態様によれば、コンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、当該プログラムがコンピュータで実行されたときに第1の態様による方法(その任意の実施形態を含む)を実施するためのプログラムコード手段を含む。第2の態様のコンピュータプログラムの利点は、第1の態様(その任意の実施形態を含む)の利点にほぼ対応する。
【0036】
本開示の第3の態様によれば、コンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体が提供され、前記コンピュータプログラムは、当該プログラムがコンピュータで実行されたときに第1の態様による方法(その任意の実施形態を含む)を実施するためのプログラムコード手段を含む。第3の態様のコンピュータ可読媒体の利点は、第1の態様(その任意の実施形態を含む)の利点にほぼ対応する。
【0037】
本開示の第4の態様によれば、車両の車輪スリップを制御するための制御ユニットが提供される。前記車両は、車両における共通の車輪にトルクを与えるための少なくとも第1および第2の運動支援装置MSDを含み、前記制御ユニットは、第1の態様による方法を実施するように構成されている。第4の態様の制御ユニットの利点は、第1の態様(その任意の実施形態を含む)の利点にほぼ対応する。
【0038】
前記制御ユニットは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、または別のプログラム可能デバイスを含み得る。前記制御ユニットは、さらにまたは代わりに、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイもしくはプログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、またはデジタル信号プロセッサを含み得る。前記制御ユニットが、上述のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはプログラマブルデジタル信号プロセッサなどのプログラマブルデバイスを含む場合、プロセッサは、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードをさらに含み得る。
【0039】
本開示の第5の態様によれば、第4の態様による制御ユニットを含む車両が提供され、そこにおいて、前記第1のMSDは、電気機械、ICE、およびブレーキアクチュエータのうちの一つであり、前記第2のMSDは、電気機械およびブレーキアクチュエータのうちの一つである。第5の態様の車両の利点は、第1の態様(その任意の実施形態を含む)の利点にほぼ対応する。
いくつかの例示的な実施形態(ただし網羅的ではない)は、以下のMSDの組み合わせを含む。
- 1つの車輪または車輪群に連結された複数の電気機械を連係させること。
- 1つの車輪または車輪群に連結された1つまたは複数の電気機械と1つまたは複数のブレーキアクチュエータ(たとえば、摩擦ブレーキ)とを連係させること。
- 1つの車輪または車輪群に連結された1つまたは複数の電気機械と1つまたは複数のICEとを連係させること。
- 1つの車輪または車輪群に連結された1つまたは複数のICEと1つまたは複数のブレーキアクチュエータとを連係させること。
- 1つの車輪または車輪群に連結された1つまたは複数の電気機械と1つまたは複数のICEと1つまたは複数のブレーキアクチュエータとを連係させること。
【0040】
一般に、特許請求の範囲で使用されているすべての用語は、特にことわらない限り、その技術分野における通常の意味に従って解釈されるものである。「1つの/前記要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」と呼ぶものすべてが、特に明記されていない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどのうちの少なくとも1つの例を指しているとしてオープンに解釈されるものである。本明細書で開示されたどの方法のステップも、特に明記されていない限り、開示された順序で正確に実施される必要はない。本発明のさらなる特徴および利点は、添付の特許請求の範囲および以下の説明を検討すれば明らかになろう。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の様々な特徴を組み合わせて、以下に説明された実施形態以外の実施形態を作成できることが理解される。
【0041】
添付の図面を参照して、以下に、例として示された本発明の実施形態について、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による車両を示す図である。
図2】本発明が実施され得るいくつかの構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による制御ユニットが含まれている制御システムを示す図である。
図4】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による制御ユニットが含まれている別の制御システムを示す図である。
図5】タイヤ力が縦方向の車輪スリップの関数として表されたタイヤモデルの一例を示す図である。
図6】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による方法を概略的に示す図である。
図7】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による制御ユニットを概略的に示す図である。
図8】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態によるコンピュータプログラム製品を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明のいくつかの態様が示されている添付の図面を参照して、以下で本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書に記載された実施形態および態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全になるように、また本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提示されている。したがって、本発明は、本明細書に記載され、図面に示された実施形態に限定されないこと、むしろ、当業者には、添付の特許請求の範囲内で多くの変更および修正が加えられ得ることが理解されよう。同様の参照数字は、明細書全体を通して同様の要素を指す。
【0044】
図1は、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による車両100を示す。図1の例示的な図は、トレーラユニット(図示せず)を牽引するためのトラクタユニットを示しており、これらは一緒になってセミトレーラ車両を構成する。しかし、本発明は、他のタイプの車両にも適用可能である。たとえば、車両は、トラックや、トレーラユニットを牽引するように構成された台車ユニットを備えたトラックなどの、貨物輸送のための様々なタイプの車両であってもよい。さらに、本発明の概念は、大型車両に限定されず、乗用車などの他の車両でも実施可能であることを理解されたい。
【0045】
図示された車両100は、車輪102に支持されており、そのうちのいくつかは被駆動車輪である。図1の車両100は、4つの車輪102しか有していないが、本発明の概念は、上述した様々なタイプの車両などの、より多くの車輪を有する車両にも適用可能である。
【0046】
各車輪102、または少なくとも大部分の車輪には、それぞれの車輪ブレーキが付随している。この車輪ブレーキは、たとえば、空気圧で作動するディスクブレーキまたはドラムブレーキであってもよいが、本開示のいくつかの態様は、車両の減速時に電力を生成する回生ブレーキ、および要求に応じて車輪の回転速度を減速させることができる電気機械にも適用可能である。車輪ブレーキは、ホイールエンドモジュール(WEM)によって制御され、このWEMは、図1の車両100などの車両の少なくとも1つの車輪102に加えられる制動力を制御することができる。各WEMは、制御ユニット(図1には図示せず)と通信可能に結合されていて、制御ユニットがWEMと通信し、それによって、車両ブレーキを制御することが可能になっている。この制御ユニットは、車両100の全体にわたって分散したいくつかのサブユニットを含むことがあるが、単一の物理的ユニットであってもよい。制御ユニットは、たとえばブレーキ力を車輪間で配分して車両の安定性を維持することができる。
【0047】
他の例示的な実施形態では、WEMを有する代わりにまたは加えて、アキシャルコントロールモジュール(ACM)が設けられてもよいことに留意されたい。たとえば、ACMは、車軸が差動装置を介して動作する機械を含む場合に実施することができる。したがって、説明を簡単にするため、WEMは、図面の説明と関連して論じられるが、対応する機能は、ACMによって実施されてもよいことを理解されたい。
【0048】
各被駆動車輪102は、適切な電気機械(電動モータ、一体化モータ/発電機など)もしくは内燃機関ICEまたはこれらの組み合わせによって駆動され得る。電気機械および/またはICEは、たとえばオープン差動装置を越えて動作して、複数の車輪を駆動してもよい。他の例示的な実施形態では、各被駆動車輪は、個々に関連付けられた電気機械によって推進されてもよい。いずれの場合も、上述の制御ユニットは、車輪間で推進力を割り当てるために、このような電気機械と適切に通信可能に結合され得る。上述の制御ユニットについてのより詳細な説明は、図3および図4に関連付けて後で行われる。
【0049】
発明の概要のところで説明したように、大まかな本発明の概念は、第1の動作モードで車輪にトルクを与えるように第1の運動支援装置MSDを制御する一方、第1の動作モードとは異なる第2の動作モードで車輪にトルクを与えるように第2のMSDを制御することにより、車両の車輪スリップを制御することに関する。次に、運動支援装置(MSD)の構成例について図2に関連付けて説明する。
【0050】
図2は、本発明が実施され得るいくつかの構成を概略的に示す図である。実線で示されるように、本開示は、同じ車輪102に作用する少なくとも2つのMSD200、202を制御することを想定している。しかし、破線で示されるように、同じ車輪102に作用するさらなるMSD204、206があってもよい(図には4つのMSDが示されているが、MSDの数は3つでもよいし、5つ以上でもよいことを理解されたい)。さらに、破線で示されるように、MSD202~206が作用する少なくとも1つのさらなる車輪102´があってもよい。すなわち、MSD202~206は、いくつかの例示的な実施形態においては、同じグループの車輪102、102´に作用することができる。図1の車両100などの本発明の概念を実現できる車両は、たとえば、電気機械の形態、ICEの形態、および/またはブレーキアクチュエータの形態の1つまたは複数のMSD202~206を有することができ、これらは、共通の車輪102または共通のグループの車輪102、102’に作用する。したがって、組み合わせのいくつかの例としては、以下の形態のMSDがあり得る。
- 2つ以上の電気機械。
- 1つまたは複数の電気機械と、1つまたは複数のブレーキアクチュエータ(たとえば、摩擦ブレーキ)。
- 1台または複数の電気自動車と、1つまたは複数のICE。
- 1つまたは複数のICEと、1つまたは複数のブレーキアクチュエータ。
- 1つまたは複数の電気機械と、1つまたは複数のICEと、1つまたは複数のブレーキアクチュエータ。
【0051】
図3は、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による制御ユニット110が含まれた制御システム104を示す図である。制御ユニット110は、本開示で論じられている発明方法を実施することができる。
【0052】
より具体的に、図3には、ここでは車両の前車軸の左側車輪で例示された車輪102のための制御システム104が示されている。ホイールエンドモジュール(WEM)112は、ブレーキアクチュエータ114、すなわち、ここではディスクブレーキで例示されたブレーキシステムの一部によって、車輪の制動を制御するように構成されている。上述のように、WEM112は、アキシャルコントロールモジュール(ACM)に置換され得、または補完され得る。また、ブレーキシステムは、1つまたは複数の電気機械(EM)116で、および/または異なるブレーキアクチュエータを組み合わせで構成され得る。また、図示の電気機械116は、車輪102に推進力を与えるように制御されてもよい。したがって、例示された電気機械116が第1の運動支援装置MSD116を表すことがあり、例示されたブレーキアクチュエータ114が第2の運動支援装置MSD114を表すことがあり、またはその逆のことがある。
【0053】
WEM112は、制御ユニット110、たとえば車両運動管理(ビークルモーションマネージメント)VMMシステムに、通信可能に結合されている。WEM112およびVMM110は、2つの機能的に別個の物として図示されてきたが、構造的に1つの共通の物として提供されてもよいことを理解されたい。したがって、いくつかの例示的な実施形態において、WEM112とVMM110は、1つのユニットとして提供される。他の例示的な実施形態では、WEM112とVMM110とが構造的に分離されていてもよい。また、VMM110は、いくつかの構造物に分散させることもでき、そのうちのいくつかは、リモート、たとえば車両外にあってもよいことを理解されたい。たとえば、VMM110によって行われる計算などのいくつかの機能は、クラウドベースであってもよく、この場合、VMM110の一部が1つまたは複数のリモートサーバなどで提供され得る。
【0054】
ここではVMM110として具現化されている制御ユニット110は、データストレージ118を含んでもよいし、それに動作可能に接続されてもよい。したがって、データストレージ118は、車両に搭載されてもし、車両外に設置されてもよい。図3は、車輪102のタイヤについての格納されたタイヤモデル120をデータストレージ118が有し得ることを描写するためのグラフを概略的に示している。図5に関連してより詳細に説明されるように、タイヤモデル120において、縦方向のタイヤ力は、少なくとも縦方向の車輪スリップの関数として表される。縦方向の車輪スリップは、車輪102の回転速度および車両の速度に依存する。車輪102の回転速度は、速度センサ122(図3参照)によって測定され得る。測定された回転速度は、有線または無線によってセンサ122からWEM112に送信され得る。車両100の速度は、ホール効果センサなどの別のセンサ(図示せず)によって測定されてもよく、測定された速度は、VMM110および/またはWEM112によって取得可能である。
【0055】
したがって、ここではVMM110の形態である制御ユニット110は、図1の車両100などの車両の車輪スリップを制御するために使用され得る。VMM110は、本発明の上述の第1の態様による方法(その任意の実施形態を含む)の各手順(step)を実施するように構成され得る。すなわち、VMM110は、車輪トルク要求を受信し、次に、受信した車輪トルク要求に基づいて、VMM110は、第1の動作モードでトルクを車輪に与えるように第1のMSD116を制御し、および、第1の動作モードとは異なる第2の動作モードでトルクを車輪に与えるように第2のMSD114を制御するように構成されてよく、第1のMSD116および第2のMSD114の制御は、少なくとも一時的に同時に実施される。
【0056】
もちろん、VMM110は、車輪スリップを制御するための他のMSD構成を有する車両に実装されてもよい。そのような別の例示的な構成は、図4に示されており、3つのMSD116、116´、116´´が、第1の電気機械(第1のMSD116)、第2の電気機械(第2のMSD116´)、および第3の電気機械(第3のMSD116´´)の形態で示されている。すなわち、図4に示された構成において、VMM110は、たとえば、第1の動作モードでトルクを車輪102に与えるように第1のMSD116を制御し、第1の動作モードとは異なる第2の動作モードでトルクを車輪102に与えるように第2のMSD116´を制御し、第2の動作モードで、または第1の動作モードとも第2の動作モードとも異なる第3の動作モードでトルクを車輪102に与えるように第3のMSD116´´を制御してもよい。第1のMSD116と、第2のMSD116´および第3のMSD116´´のうちの少なくとも1つとは、少なくとも一時的にトルクを同時に与えるように制御され得る。
【0057】
すでに説明したように、ICEの形態のMSDを含む構成など、図3および図4に示された構成以外の構成も当然ながら考えられる。
【0058】
第1の動作モードは、速度制御モードであり得る。したがって、図3の例において、VMM110は、車輪102の回転速度を制御するために、車輪速度要求を第1のMSD116に送信してもよい。同様に、図4の例において、VMM110は、車輪速度要求を第1のMSD116に送信してもよい。すでに述べたように、第1のMSD116は電気機械として図示されているが、他の例示的な実施形態では、ICEまたはブレーキアクチュエータであり得る。たとえば、VMM110は、摩擦ブレーキによって車輪102の回転速度を制御するために、たとえばWEM112を介して車輪速度要求を送信してもよい。第1のMSDが電気機械またはICEである場合、VMM110は、車輪速度要求または機械速度要求を送信してもよい。機械速度要求は、第1のMSD116の回転速度を制御するために使用することができる。本開示で先に説明したように、機械速度に基づく制御ループは、車輪速度に基づく制御ループよりも安定であり得る。
【0059】
第2の動作モードは、少なくともいくつかの例示的な実施形態においては、トルク制御モードであってよく、VMM110は、第2のMSD114、116´のトルクを制御するためにトルク要求を第2のMSD114、116´に(WEM112などを介して)送信する。たとえば、第2のMSD114がブレーキアクチュエータの形態で図示されている図3において、ブレーキアクチュエータは、(前の段落で論じたように特定の車輪速度を得るように制御されるのではなく)車輪102に特定のトルクを加えるように制御され得る。第2のMSD116´が図4などの電気機械(またはICE)である場合、制御パラメータは、(前の段落で論じた回転速度ではなく)電気機械によって与えられるトルクになる。
【0060】
以上で説明した例は、本発明の概念を実施することによってMSD間の対立を回避することのできるいくつかの方法にすぎない。当業者であれば、本発明の概念の範囲内で他の方法を容易に想到し得る。
【0061】
上述の車輪回転速度の制御または機械回転速度の制御には、図5に例示されるようなタイヤモデル120が好適に使用され得る。説明されたように、車輪102のタイヤは、タイヤモデル120を適切に備えてもよく、このタイヤモデルにおいて、縦方向のタイヤ力Fxは、少なくとも、車輪の回転速度および車両の速度に依存する縦方向の車輪スリップλの関数として表される。
【0062】
図5は、タイヤ力が縦方向の車輪スリップの関数として表されたタイヤモデル120の一例を示す図である。縦方向のタイヤ力Fxが連続した曲線で示され、横方向のタイヤ力Fyが破線の曲線で示されている。なお、これに関連して、縦方向とは、車輪102の半径方向、具体的には、路面に平行であり、通常の状態で車輪102が進行している半径方向を指すことに留意されたい。横方向とは、車輪の回転軸に平行な方向を指す。縦方向のスリップ率、または単に縦方向の車輪スリップであるλは、単位はなく、次式のように表すことができる。
【数2】
ここで、Rはメートル単位の車輪半径であり、ωは車輪の角速度であり、vは車輪の縦方向の速度(車輪の座標系における)である。したがって、λは、-1から1の間にあり、車輪が路面に対してどれだけ滑っているかを定量化している。制動時にはv>Rωとなり、それゆえに車輪スリップは負になる。加速字はv<Rωとなり、それゆえに車輪スリップは正になる。VMM110は、(車輪の参照フレームにおける)vの情報を維持/取得することができ、速度センサ122は、ωを決定するのに使用され得る。
【0063】
VMM110は、データストレージ118に格納されたタイヤモデル120に基づき、受信した車輪トルク要求を車輪回転速度要求に変換することができる。いくつかの例示的な実施形態において、VMM110は、車輪回転速度要求に対応する車輪102の回転速度が得られるように、または、第1のMSD116で実現される回転速度が車輪回転速度要求に到達せず且つ与えるトルクが規定されたトルク限界未満になるように、最初は第1のMSD116だけ制御すればよい。したがって、最初は第1のMSD116だけが第1の動作モードでトルクを車輪102に与えるように制御される。第2のMSD114、116´は、最初、第2の動作モードでトルクを車輪102に与えるように制御されない。
【0064】
その後、VMM110は、MSD114、116、116´、116´´に存在する選択された制御パラメータの値を集計して合計値を得することができる。すなわち、図3の例では、第1のMSD116および第2のMSD114に存在する選択された制御パラメータの値が合計され、図4の例では、第1のMSD116、第2のMSD116´、および第3のMSD116´´に存在する選択された制御パラメータの値が合計される。選択される制御パラメータは、たとえば、別々のMSDに現在存在しているトルクであってもよいし、あるいは、選択されるパラメータは、たとえば、別々のMSDによって現在供給されている電力であってもよい。
【0065】
次に、VMM110は、合計値をすべてのMSD間で(すなわち、図3では第1のMSD116と第2のMSD114との間で、図4では第1のMSD116と第2のMSD116´と第3のMSD116´´との間で)、所望の値分割に基づいて分割することができる。すなわち、選択された制御パラメータがトルクである場合、分割は、所望のトルク分割に基づいてなされ得る。選択された制御パラメータが電力である場合、分割は、所望の電力分割に基づいてなされ得る。したがって、VMM110は、所望の値分割に基づいて、合計値のうちのある配分を(図3においては)第2のMSD114に割り当てることができ、または、合計値のうちのある配分を第2のMSD116´に割り当て、および合計値のうちの別の配分を第3のMSD116´´に割り当てることができる(図4)。ある配分を第2のMSD114、116´(および第3のMSD116´´)に割り当てると、VMM110は、第1のMSD116が速度制御モードで制御されたままで、合計値のうちのその配分に対応するパラメータ要求を第2のMSD114、116´(および第3のMSD116´´)へ送信することができる。選択された制御パラメータがトルクである場合には、パラメータ要求はトルク要求であり得る。選択された制御パラメータが電力の場合には、パラメータ要求は電力要求であり得る。
【0066】
したがって、上記によれば、VMM110は、タイヤモデル120を使用して、第1の動作モード、すなわち速度制御モードで動作するように第1のMSD116を制御すること、および、MSD114、116、116´、116´´に存在する選択された制御パラメータの現在の値に基づいてパラメータ要求を計算し、第2の(場合によっては第3の)動作モードで第2のMSD114、116´(および第3のMSD116´´)を制御することができる。このようにして、第1のMSD116は、スレーブである他のMSD114、116´(116´´)の状態を設定するために使用されるマスターとなり、スレーブMSDの制御は、合計値のうちのそれらの配分に依存し、ひいては速度制御モードの結果として第1のMSD116によって車輪102に与えられるトルクに依存する。
【0067】
ある期間の後、システムが再び安定すると、次にVMM110は、値を集計し、合計値を分割し、およびパラメータ要求を第2のMSD114、116´(および第3のMSD116´´)に送信するというシーケンスを繰り返すことができる。
【0068】
他の例示的な実施形態では、VMM110は、受信した車輪トルク要求の値を、所望のトルク分割に基づいて第1のMSD116と第2のMSD114との間で(図3)、または第1のMSD116と第2のMSD116´と第3のMSD116´´との間で(図4)分割することができる。このような場合、第2の動作モードは、トルク制御モードとすることができる。同様に、図4の第3のMSD116´´が第3の動作モードで動作する場合、第3の動作モードもトルク制御モードとすることができる。どちらの場合も、VMM110は、トルク要求を第2のMSD114、116´に(および第3のMSD116´´に)送信することができる。したがって、上記の前の例とは対照的に、第2および第3のMSD114、116´、116´´は、それらの配分値を受信する前に第1のMSD116が制御されるのを待つ必要がない。その代わりに、第2および第3のMSD114、116´、116´´には、それらの配分を第1のMSD116とは独立して割り当てることができる。したがって、VMM110は、受信した車輪トルク要求の合計値が得られるように、タイヤモデル120に基づいて選択される機械速度要求を、第1のMSD116に送信することができる(速度制御モード)。すなわち、この例において、第1のMSD116は、第2(および第3)のMSD114、116´、116´´のスレーブとみなすことができる。図3の場合、車輪トルク要求がVMM110によって受信されると、電気機械(第1のMSD116)の能力が取り込まれて総車輪トルク要求から減算されてもよい。VMM110は、残りのトルクをブレーキアクチュエータ(第2MSD114)にトルク要求として送信してもよい。電気機械(第1のMSD116)に対し、VMM110は、車輪スリップλに対応する速度要求(タイヤモデル120を介して総トルクに対応する)を送信してもよい。
【0069】
上記は、1つのMSD116を速度制御モードにするとともに、他のMSD114、116´、116´´をトルク制御モードなどの別の制御モードにすることにより、MSD間の対立を回避する方法のいくつかの例である。しかし、第1および第2(および第3)の動作モードは、異なる速度制御モードによっても差別化され得る。すなわち、VMM110は、少なくともいくつかの例示的な実施形態では、第1のMSD116を、応答時間が比較的短い制御ループを有する高帯域幅MSDとして構成し、他のMSD114、116´、116´´を、応答時間が比較的長い制御ループを有する低帯域幅MSDとして構成することができる。さらに、第1のMSD116は、第1のMSD116の補正前の回転速度が要求された回転速度から比較的小さな値だけ逸脱することを許容する比較的狭い不感帯を有して構成され、他のMSD114、116´、116´´は、他のMSD114、116´、116´´の補正前の回転速度が要求された速度から比較的大きな値まで逸脱することを許容する比較的大きな不感帯を有して構成されてもよい。異なる動作モード、すなわち異なる速度制御モードでのこの差別化により、MSD間の対立が回避され得る。適切には、図4の例において、第3のMSD116´´は、帯域幅および/または不感帯に関して、第1のMSD116と差別化されるだけでなく、第2のMSD116´´とも差別化される。
【0070】
図6は、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による方法600を概略的に示す図である。すなわち、車両の車輪スリップを制御するための方法600が提供され、車両は、当該車両における共通の車輪にトルクを与えるための少なくとも第1および第2のモーションサポートデバイスMSDを含む。
方法は、
ステップS1において、車輪トルク要求を受信すること、
受信した車輪トルク要求に基づいて、
ステップS2において、第1の動作モードでトルクを車輪に与えるように第1のMSDを制御すること、および、
ステップS3において、第1の動作モードとは異なる第2の動作モードでトルクを車輪に与えるように第2のMSDを制御すること、
を含み、
第1のMSDの制御と第2のMSDの制御とが少なくとも一時的に同時に実施される。
これまでの議論から容易に理解できるように、いくつかの例示的な実施形態では、ステップS2がステップS3の前に開始されてもよく、他の例示的な実施形態では、ステップS3がステップS2の前に開始されてもよく、さらなる例示的な実施形態では、ステップS2およびS3が同時に開始されてもよい。
【0071】
図7は、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態による制御ユニット110を概略的に示す図である。特に、図7は、いくつかの機能ユニットに関して、本明細書の議論の例示的な実施形態による制御ユニット110の構成要素を示している。制御ユニット110は、たとえばVMMユニットの形態で車両100に備えられ得る。処理回路710は、適切な中央処理ユニットCPU、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサDSPなどのうちの1つまたは複数の任意の組み合わせを用いて設けられてもよく、たとえば記憶媒体730の形態でコンピュータプログラム製品に格納されたソフトウェア命令を実行することができる。処理回路710はさらに、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASIC、またはフィールドプログラマブルゲートアレイFPGAとして設けられてもよい。
【0072】
特に、処理回路710は、図6に関連して議論された方法、および本開示全体を通して議論されたその例示的な実施形態などの一連の動作や手順(ステップ)を制御ユニット110に実施させるように構成されている。たとえば、記憶媒体730は、一連の動作を記憶してもよく、処理回路710は、その一連の動作を記憶媒体730から取り出して、制御ユニット110に一連の動作を実施させるように構成されてもよい。一連の動作は、実行可能な一連の命令として提供されてもよい。したがって、処理回路710は、それによって、本明細書に開示されたような例示的な方法を実行するように構成される。
【0073】
また、記憶媒体730は、永続的な記憶装置で構成されてもよく、たとえば、磁気メモリ、光学メモリ、ソリッドステートメモリ、さらには遠隔に実装されたメモリのうちの任意の単独のものまたは組み合わせであってよい。
【0074】
制御ユニット110は、入力/要求を与える他のコントローラなどの少なくとも1つの外部デバイスと通信するためのインターフェース720をさらに含み得る。そのため、インターフェース720は、アナログおよびデジタルの構成要素と、有線または無線通信のための適切な数のポートとを含む1つまたは複数の送信機および受信機で構成され得る。
【0075】
処理回路710は、たとえば、データおよび制御信号をインターフェース720および記憶媒体730へ送信することにより、データおよびレポートをインターフェース720から受信することにより、および、データおよび命令を記憶媒体730から取り出すことにより、制御ユニット110の全体的な動作を制御する。制御ユニット110の他の構成要素、ならびに関連する機能は、本明細書に提示された概念を不明瞭にしないようにするために省略されている。
【0076】
図8は、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態によるコンピュータプログラム製品800を概略的に示す図である。より具体的には、図8は、コンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体810を示し、この媒体は、プログラム製品がコンピュータ上で実行されたときに図6に例示された方法を実施するためのプログラムコード手段820を含む。コンピュータ可読媒体810及びプログラムコード手段820は、一緒にコンピュータプログラム製品800を形成し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】