IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファイザー・インクの特許一覧

特開2022-79428インジェクタ内でニードルを隠蔽するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079428
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】インジェクタ内でニードルを隠蔽するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20220519BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A61M5/32 510P
A61M5/24 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021180327
(22)【出願日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/114,008
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】イラン・カハラー
(72)【発明者】
【氏名】イダン・ナーマン
(72)【発明者】
【氏名】アモツ・ポラト
(72)【発明者】
【氏名】トム・シェファー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE06
4C066FF05
4C066HH04
4C066HH13
4C066NN08
(57)【要約】
【課題】インジェクタを提供すること。
【解決手段】インジェクタは、長手方向軸に沿って配置され、薬剤カートリッジを受けるように構成されたハウジングと、ピストンを駆動するための注射駆動機構であって、ピストンが薬剤カートリッジの一部を形成し、ピストンが前方に変位させられたときに注射駆動機構が薬剤を注射する、注射駆動機構と、ハウジングに摺動可能に取り付けられ、延伸配置および後退配置のうちの少なくとも一方に配置可能であるニードル隠蔽要素であって、延伸配置においてニードル隠蔽要素がハウジングから前方に突出し、後退配置においてニードル隠蔽要素がハウジングに対してロックされる、ニードル隠蔽要素と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクタであって、
長手方向軸に沿って配置され、薬剤カートリッジを受けるように構成されたハウジングと、
ピストンを駆動するための注射駆動機構であって、前記ピストンが前記薬剤カートリッジの一部を形成し、前記ピストンが前方に変位させられたときに前記注射駆動機構が薬剤を注射する、注射駆動機構と、
前記ハウジングに摺動可能に取り付けられ、延伸配置および後退配置のうちの少なくとも一方に配置可能であるニードル隠蔽要素であって、前記延伸配置において前記ニードル隠蔽要素が前記ハウジングから前方に突出し、前記後退配置において前記ニードル隠蔽要素が前記ハウジングに対してロックされる、ニードル隠蔽要素と
を備えるインジェクタ。
【請求項2】
前記延伸配置において、前記ニードル隠蔽要素が前記ハウジングに対して摺動可能であり、前記後退配置において、前記ニードル隠蔽要素が前記ハウジングから前方に突出しないかまたは前記延伸配置の場合より少なく突出する、請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項3】
前記ニードル隠蔽要素が部分的な後退配置にも配置可能であり、前記部分的な後退配置では、前記ニードル隠蔽要素が前記後退配置の場合より大きく前記ハウジングから前方に突出し、前記ハウジングに対して摺動可能に移動することができる、請求項1または2に記載のインジェクタ。
【請求項4】
前記ニードル隠蔽要素が、少なくとも1つの付勢要素の付勢下で前方に変位させられるように付勢され、前記少なくとも1つの付勢要素が前記ハウジングと前記ニードル隠蔽要素との間で支持される、請求項1から3までのいずれか一項に記載のインジェクタ。
【請求項5】
前記ニードル隠蔽要素が少なくとも、軸方向に延在する可撓性アームを有し、前記可撓性アームが、前記ハウジング上に設けられる対応する構造部内に係合され得るスナップ嵌合ロック構造部と、前記アームの位置をずらして前記ニードル隠蔽要素を軸方向に移動させるために使用者によって取り扱われ得る径方向に突出するボタンと、を備え、それにより、前記使用者が前記ニードル隠蔽要素を前記延伸配置および前記後退配置の一方に配置することができる、請求項1から4までのいずれか一項に記載のインジェクタ。
【請求項6】
前記可撓性アームの前記スナップ嵌合ロック構造部および前記ハウジングの前記対応する構造部が、前記ニードル隠蔽要素のロック状態の後退配置を提供するように設計され、前記ロック状態の後退配置は、前記使用者により前記ボタンを押し下げることによりロック解除され得、それにより、前記アームの前記ロック構造部が前記ハウジングの前記対応する構造部から外される、請求項5に記載のインジェクタ。
【請求項7】
前記ニードル隠蔽要素が一対の対向する可撓性アームを有し、各々の前記可撓性アームがスナップ嵌合ロック構造部およびボタンを装備し、それにより、前記ニードル隠蔽要素の前記ロック状態の後退配置が、前記アームの位置を同時にずらすために前記使用者により前記ボタンを同時に押し下げることにより、ロック解除され得る、請求項6に記載のインジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本明細書は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている、「ELECTRONIC AUTO-INJECTION DEVICE」と題される、US20150202367として公開済みの、2013年9月3日に出願した米国特許出願第14/423、834号を参照する。
【0002】
加えて、本明細書は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている、「Electronic auto-injection device for drugs in cartridges」と題される、2016年6月6日に出願した米国仮特許出願第62/345、897号を参照する。
【0003】
本明細書は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている、「Multiple use computerized injector」と題される、W02017212473として公開済みの、2017年6月1日に出願したPCT特許出願PCT/IL2017/050607を参照する。
【0004】
加えて、本明細書は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている、「Multiple use computerized injector」と題される、2020年2月18日に出願した米国仮特許出願第62/977、746号を参照する。
【0005】
加えて、本明細書は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている、「SYSTEM AND METHOD FOR INFORMATION MANAGEMENT IN COMPUTERIZED INJECTORS」と題される、2020年7月16日に出願した米国仮特許出願第63/052、562号を参照する。
【0006】
本発明は、概して、インジェクタ内のニードル隠蔽(hiding)構造部に関し、より詳細には、具体的には、患者に薬剤を投与するように適合される再使用可能なコンピュータ制御のインジェクタである、インジェクタの一部を形成するニードル隠蔽構造部に関する。
【背景技術】
【0007】
多くのインジェクタ、具体的には再使用可能なインジェクタ、より具体的には患者に薬剤を投与するように適合されるコンピュータ制御のインジェクタが知られている。多くの使用者が針恐怖症を有することが知られている。したがって、インジェクタの操作の間、常にニードルを隠蔽することが有利である。
【0008】
本発明は、より具体的には、長手方向軸に沿って配置され、薬剤カートリッジを受けるように構成されたハウジングと、ピストンを駆動するための注射駆動機構であって、ピストンが薬剤カートリッジの一部を形成し、ピストンが前方に変位させられたときに注射駆動機構が薬剤を注射する、注射駆動機構と、ハウジングに摺動可能に取り付けられるニードル隠蔽要素と、を備えるインジェクタに関連する。
【0009】
この種類の再使用可能なインジェクタでは、使用者が、通常、注射へと進む前にインジェクタの遠位端のところにニードルを取り付けると共に使用後にニードルを脱着する必要がある。この操作はニードル隠蔽要素が存在することにより非常に難しいものとなる。その理由は、ニードルを取り付けるとき、使用者がニードル隠蔽要素を後退させて付勢ばねの作用に逆らってニードル隠蔽要素を後退位置で維持することが必要であるからである。ニードルを脱着するときも同様の取り扱いが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ニードルの取り付けおよび脱着の操作を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ニードルを取り付けるかまたは脱着するときに取り扱いが容易であるニードル隠蔽要素を備えるインジェクタを提供することを狙いとする。
したがって、本発明の実施形態によると、長手方向軸に沿って配置され、薬剤カートリッジを受けるように構成されたハウジングと、ピストンを駆動するための注射駆動機構であって、ピストンが薬剤カートリッジの一部を形成し、ピストンが前方に変位させられたときに注射駆動機構が薬剤を注射する、注射駆動機構と、ハウジングに摺動可能に取り付けられ、延伸配置および後退配置のうちの少なくとも一方に配置可能であるニードル隠蔽要素であって、延伸配置においてニードル隠蔽要素がハウジングから前方に突出し、後退配置においてニードル隠蔽要素がハウジングを基準としてロックされる、ニードル隠蔽要素と、を備えるインジェクタが提供される。
【0012】
したがって、使用者が、ニードルを容易に取り付けたりまたは脱着したりすることが可能となる安定した後退位置またはニードルの取り付け時にデバイスを使用する準備が整っている完全な延伸位置のいずれかにおいてニードル隠蔽要素を手動で作動させることによりニードル隠蔽要素を選択的に配置することができる。
【0013】
好適には、延伸配置において、ニードル隠蔽要素がハウジングを基準として摺動可能であり、後退配置において、ニードル隠蔽要素がハウジングから前方に突出しないかまたは延伸配置の場合より少なく突出する。
【0014】
さらに、好適には、ニードル隠蔽要素が部分的な後退配置にも配置可能であり、部分的な後退配置では、ニードル隠蔽要素が後退配置の場合より大きくハウジングから前方に突出し、ハウジングに対して摺動可能に移動することができる。
【0015】
さらに、好適には、ニードル隠蔽要素が、少なくとも1つの付勢要素の付勢下で前方に変位させられるように付勢され、少なくとも1つの付勢要素がハウジングとニードル隠蔽要素との間で支持される。
【0016】
好適な実施形態によると、ニードル隠蔽要素が少なくとも、軸方向に延在する可撓性アームを有し、可撓性アームは、ハウジング上に設けられる対応する構造部内に係合され得るスナップ嵌合ロック構造部と、アームの位置をずらしてニードル隠蔽要素を軸方向に移動させるために使用者によって取り扱われ得る径方向に突出するボタンと、を備え、それにより、使用者がニードル隠蔽要素を上記延伸配置および後退配置の一方に配置することができる。
【0017】
好適には、可撓性アームのスナップ嵌合ロック構造部およびハウジングの対応する構造部が、ニードル隠蔽要素のロック状態の後退配置を提供するように設計され、ロック状態の後退配置が使用者によりボタンを押し下げることによりロック解除され得、それにより、アームのロック構造部がハウジングの対応する構造部から外される。
【0018】
さらに、好適には、ニードル隠蔽要素が一対の対向する可撓性アームを有し、各々の可撓性アームがスナップ嵌合ロック構造部およびボタンを装備し、それにより、ニードル隠蔽要素のロック状態の後退配置が、アームの位置を同時にずらすために使用者によりボタンを同時に押し下げることにより、ロック解除され得る。
【0019】
図面と併せた以下の詳細な説明から本発明がより完全に理解および認識される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】動作可能な閉配置で示される、本発明の実施形態に従って構成されて動作することができるインジェクタを示す簡略化された模式図である。
図2図2Aは、動作可能な開配置で示される図1のインジェクタを示す簡略化された模式図である。 図2Bは、動作可能な開配置で示される図1のインジェクタを示す側面図である。
図3図1~2Bのインジェクタを示す簡略化された分解図である。
図4A図1~3のインジェクタの頂部側ハウジング部分を示す簡略化された模式図である。
図4B図1~3のインジェクタの頂部側ハウジング部分を示す簡略化された背面図である。
図4C図1~3のインジェクタの頂部側ハウジング部分を示す簡略化された側面図である。
図4D図1~3のインジェクタの頂部側ハウジング部分を示す簡略化された正面図である。
図5図5Aは、図1~3のインジェクタの底部側ハウジング部分を示す簡略化された模式図である。 図5Bは、図1~3のインジェクタの底部側ハウジング部分を示す簡略化された背面図である。 図5Cは、図1~3のインジェクタの底部側ハウジング部分を示す簡略化された側面図である。
図6A図1~3のインジェクタのニードル隠蔽要素を示す異なる角度からの簡略化された模式図である。
図6B図1~3のインジェクタのニードル隠蔽要素を示す異なる角度からの簡略化された模式図である。
図6C図1~3のインジェクタのニードル隠蔽要素を示す簡略化された側面図である。
図6D図1~3のインジェクタのニードル隠蔽要素を示す簡略化された側面図である。
図6E図1~3のインジェクタのニードル隠蔽要素を示す簡略化された上面図である。
図6F図1~3のインジェクタのニードル隠蔽要素を示す簡略化された底面図である。
図6G図6Fの線G-Gに沿う、図1~3のインジェクタのニードル隠蔽要素を示す簡略化された断面図である。
図7図1~3のインジェクタの一部としての図6A~6Gのニードル隠蔽要素の一部分を示す、簡略化された模式部分切欠図である。
図8図8Aは、ニードル取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された模式図である。 図8Bは、図8Aの線B-Bに沿う、ニードル取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された断面図である。
図9A】ニードル取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された模式部分切欠図である。
図9B図9Aの線B-Bに沿う、ニードル取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す断面図である。
図9C図9Aの線C-Cに沿う、ニードル取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す断面図である。
図10A】ニードル露出状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された模式図である。
図10B図10Aの線B-Bに沿う、ニードル露出状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された断面図である。
図10C図10Aの線C-Cに沿う、ニードル露出状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された断面図である。
図11図11Aは、ニードル隠蔽状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された模式図である。 図11Bは、図11Aの線B-Bに沿う、ニードル隠蔽状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された断面図である。
図12図12Aは、注射のための動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された模式図である。 図12Bは、図12Aの線B-Bに沿う、注射のための動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された断面図である。
図13図13Aは、ニードルカバー取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された模式図である。 図13Bは、図13Aの線B-Bに沿う、ニードルカバー取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された断面図である。
図14図14Aは、ニードルカバー取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された模式図である。 図14Bは、図14Aの線B-Bに沿う、ニードルカバー取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタを示す簡略化された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図に示される、本発明によるインジェクタは、長手方向軸に沿って配置され、薬剤カートリッジを受けるように構成されたハウジングと、薬剤カートリッジの一部を形成する、薬剤を注入するためにピストンを駆動するための注射駆動機構と、を備える。インジェクタが、インジェクタの一部を形成するニードル隠蔽要素をさらに備える。ニードル隠蔽要素が延伸配置まで付勢され、延伸配置では、ニードルが覆い隠され、ニードル隠蔽要素がさらに後退配置で選択可能にロック可能であり、後退配置では、ニードルが露出する。駆動機構が、手動式、機械式、または電気式のいずれか1つであってよく、インジェクタが、好適には、コンピュータ制御モータを有することに留意されたい。
【0022】
本記述では、例えば「(後退または延伸)配置」または「動作可能な配置」という表現において、ニードル隠蔽要素に関連する「配置」という用語は、ニードル隠蔽要素の軸方向位置を意味するものとして理解される。
【0023】
ここで、動作可能な閉配置で示される、本発明の実施形態に従って構成されて動作可能であるインジェクタの簡略化された模式図である図1と、動作可能な開配置で示される図1のインジェクタの簡略化された模式図および側面図である図2Aおよび図2Bとを参照する。加えて、図1~2Bのインジェクタ100の簡略化された分解図である図3を参照する。
【0024】
図1~3に、カートリッジ挿入のためのインジェクタ100を見ることができる。インジェクタ100は、図1では動作可能な閉配置で示されており、図2Aおよび図2Bでは、薬剤カートリッジ102をインジェクタ100の中に挿入する直前の、動作可能な開配置で示されている。
【0025】
図1~3では、インジェクタ100が、共通の長手方向軸107に沿って共に配置される、頂部側ハウジング部分106および頂部側ハウジング部分106に固定的に結合される底部側ハウジング部分104を備えるハウジングを有することが見てとれる。好適には、頂部側ハウジング部分106内に形成されるディスプレイ108がインジェクタ100内に配置される。
【0026】
さらに、特には、図2A~3では、カートリッジエンクロージャ組立体130が頂部側ハウジング部分106内に形成される開口部132を通す形で設置され、頂部側ハウジング部分106を基準として枢動可能に設置されるように構成されることが見てとれる。
【0027】
選択的にロック可能であるニードル隠蔽要素140がインジェクタ100の前方(または遠位側)端部に設置されて頂部側ハウジング部分106と底部側ハウジング部分104との間に形成されるエンクロージャの容積部分(enclosure volume)の中に少なくとも部分的に挿入されることが本発明の実施形態の特有の特徴である。ニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106を基準として摺動可能に移動することができ、本明細書において後で詳細に説明されるように動作可能な配置のうちの一部の配置において後方(または近位側)位置で選択的にロック可能であることに留意されたい。
【0028】
図3では特に、シャーシ組立体150が頂部側ハウジング部分106と底部側ハウジング部分104との間に形成されるエンクロージャ内に存在することが見てとれる。シャーシ組立体150が、インジェクタ100の内部構成要素を支持するように構成される。駆動組立体160が好適にはシャーシ組立体150上で支持される。駆動組立体が、好適には、長手方向軸107に沿ってプランジャ棒170を軸方向に変位させるように構成される、バッテリー164によって電力供給される電気モータ162を有する。
【0029】
図3では、カートリッジエンクロージャ組立体130がハウジング部分104とハウジング部分106との間に存在することが見てとれる。カートリッジエンクロージャ組立体130がその中で薬剤カートリッジ102を受けるように適合され、一般に、ハウジング部分104および106を基準として枢動可能に設置される。カートリッジエンクロージャ組立体130は、ハウジング部分104および106を基準として動作可能な開配置のまで付勢されるように構成される。カートリッジエンクロージャ組立体130は、ニードル組立体に係合されるように適合される概して雄ねじを有する前方端部172を有する。
【0030】
ピストン174が薬剤カートリッジ102内に配置され、薬剤を薬剤カートリッジ102内に閉じ込めることに留意されたい。プランジャ棒170は、薬剤カートリッジ102からの薬剤の排出を実施することを目的として、インジェクタ100のCPUから適切な信号を受信した後に薬剤カートリッジ102内でピストン174を変位させるように構成される。
【0031】
図3では、ピストン接触要素176がプランジャ棒170の前方端部の上に設置され、本明細書において後で詳細に説明するように、インジェクタ100の特定の動作可能な配置においてピストン174に係合されるように構成されることが見てとれる。
【0032】
薬剤カートリッジ102は、弾性隔壁180を有する前方端部を備える概略円筒形のバレル178を有する。薬剤が円筒形バレル178内に収容され、ピストン174によって円筒形バレル178内で密閉される。円筒形バレル102は、長手方向軸107に沿って配置される。
【0033】
本発明の実施形態の一部として、例えば、液体薬剤を収容する予め充填されるタイプのカートリッジ、粉末ドラッグ製剤および溶剤を収容するデュアルチャンバカートリッジ、または任意適切な他の薬剤カートリッジ102などの、任意の種類の薬剤コンテナが採用され得ることに留意されたい。
【0034】
さらに、インジェクタ100の種々の構成要素の間の具体的な空間関係が、好適には、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれているPCT特許出願PCT/IL2017/050607で説明される空間関係に類似することに留意されたい。
【0035】
ニードル隠蔽要素140が、ニードル隠蔽要素140とハウジング部分104および106との間で支持されるばね190の付勢下で前方に付勢されることが本発明の実施形態の特有の特徴である。
【0036】
次に、図1~3のインジェクタ100の頂部側ハウジング部分106の簡略化された模式図、背面図、側面図、および正面図である、図4A図4B図4C、および図4Dを参照する。
【0037】
頂部側ハウジング部分106は、長手方向軸107に沿って配置される一体に形成される要素であり、ディスプレイ部分108、およびカートリッジエンクロージャ組立体130をそこを通して設置するための開口部132を有する。頂部側ハウジング部分106は、前方端部200および後方端部202を有する。開口部203が前方端部200のところに形成される。
【0038】
特に、図4Bでは、フランジ204が前方端部200に隣接して配置され、フランジ204が概して長手方向軸107に対して横方向に延在することが見てとれる。ばねエンクロージャとして機能する概略円筒形の中空長手方向突出部206がフランジ204から後方に延在し、ばねストップとして機能する後方閉端部208を有する。
【0039】
次に、図1~3のインジェクタ100の底部側ハウジング部分104の簡略化された模式図、背面図、および側面図である、図5A図5B、および図5Cを参照する。
底部側ハウジング部分104は、長手方向軸107に沿って配置される一体に形成される要素であり、前方端部220および後方端部222を有する。開口部223が前方端部220に形成される。
【0040】
特に、図5Aおよび図5Bでは、フランジ224が前方端部220に隣接して配置され、フランジ224が概して長手方向軸107に対して横方向に延在することが見てとれる。ばねエンクロージャとして機能する概略円筒形の中空長手方向突出部226がフランジ224から後方に延在し、ばねストップとして機能する後方閉端部208を有する。フランジ224は、カートリッジエンクロージャ組立体130の一部分をそこを通して挿入するための切欠部230をさらに有する。
【0041】
底部側ハウジング部分104は、その対向する両側にある2つの側壁242に接合される概略凹形の後壁240を画定する。
図5Aおよび図5Cでは、通常、2つの長手方向切欠部250が底部側ハウジング部分104の側壁242上に形成され、切欠部250が概してその前方端部220に隣接して配置されることが見てとれる。通常、比較的小さいスナップ式の切欠部252が切欠部250のうちの各々の1つの切欠部に隣接して形成され、そこからわずかに後方に離間される。
【0042】
別法として、切欠部250と等価である単一の切欠部が底部側ハウジング部分104の後壁240上に形成されてもよく、スナップ式の切欠部252と等価である比較的小さいスナップ式の切欠部がその後方で後壁240上に形成されてもよいことに留意されたい。さらに別法として、任意の他の数のこのような切欠部が底部側ハウジング部分104上の任意の他の場所に形成されてもよい。
【0043】
次に、図1~3のインジェクタ100のニードル隠蔽要素140の簡略化された異なる角度からの2つの模式図、2つの側面図、上面図、底面図、および図6Fの線G-Gに沿う断面図である、図6A図6B図6C図6D図6E図6F、および図6Gを参照する。
【0044】
ニードル隠蔽要素140は、長手方向軸107に沿って配置される一体に形成される要素である。ニードル隠蔽要素140が、後方を向く表面262および前方を向く表面264を画定する基部壁部分260を有する。基部壁部分260は、後方を向く表面262と前方を向く表面264との間を軸方向に延在する実質的に円筒形のセクションをさらに有し、特には、ニードルの先端部を隠してニードルの先端部へのアクセスを防止することを目的として、カートリッジ102に取り付けられるニードルを少なくとも部分的に包囲するように設計される。開口部266が基部壁部分260を通る形で形成される。開口部266は、後方を向く表面262から前方に延在する円筒形部分268と、円筒形部分268から前方を向く表面264まで前方に延在する前方にテーパ状になっている円錐部分270とを有する。前方を向くショルダ272が円筒形部分268と円錐部分270との間に形成される。
【0045】
通常、2つの案内ピン276が後方を向く表面262から後方に延在し、互いに概して対角線上に配置される。
通常、各々互いの方を向く2つの設置アーム208が基部壁部分260から軸方向の後方に延在し、内側を向く表面282および外側を向く表面284を画定する。ボタン290が各々の設置アーム280の外側を向く表面284上に形成され、さらにスナップ式の突出部292が外側を向く表面284上に形成され、ボタン290からわずかに後方に離間される。ボタン290が、好適には、使用者による把持を支援するための小さい吐出部のアレイまたは同様のものを備える外側表面を画定する。軸方向に延在するアーム280が軸107から離間され、軸を基準として対向する場所に設けられる。対向するアーム280の各々が可撓性を有し、アームに径方向の圧力を作用させることにより弾性的に位置をずらされ得る。各スナップ式の突出部292は、ハウジング上に設けられるスナップ式の切欠部252である対応する構造部内に係合され得るスナップ式のロック構造部を画定する。各ボタン290は径方向に突出し、アーム280の位置をずらすために、およびハウジング104、106を基準としてニードル隠蔽要素140を軸方向に移動させるために、使用者によって取り扱われ得、それにより、使用者がニードル隠蔽要素140をハウジングを基準とした延伸位置または後退位置に配置することができる。
【0046】
別法として、すべて本発明の実施形態に従って、単一の設置アームまたは任意の他の数の設置アームがニードル隠蔽要素140の一部として形成されてもよいことに留意されたい。
【0047】
次に、図1~3の組み立てられたインジェクタ100の一部としての図6A~6Gのニードル隠蔽要素140の一部分を示す簡略化された模式部分切欠図である図7を参照する。
【0048】
図7では、組み立てられたインジェクタ100を見ることができる。特には、ニードル隠蔽要素140が、上側ハウジング部分106および底部側ハウジング部分104のそれぞれの開口部203および223を通して、上側ハウジング部分106および底部側ハウジング部分104によって形成されるエンクロージャの中に部分的に挿入される。
【0049】
ニードル隠蔽要素140の案内ピン276が上側ハウジング部分106の突出部206および底部側ハウジング部分104の突出部226に軸方向において位置合わせされる。付勢ばね190のうちの1つの付勢ばねが案内ピン276のうちの1つの案内ピンの上に設置され、上側ハウジング部分106の突出部206の閉端部208に接触する形で支持される。もう一方の付勢ばね190が案内ピン276のうちの別の1つの案内ピン上に設置され、底部側ハウジング部分104の突出部226の閉端部228に接触する形で支持される。
【0050】
別法として、本発明の実施形態に従って、任意適切な他の手法で支持される任意の他の数の付勢ばね190が採用されてもよいことに留意されたい。
両方の付勢ばね190の位置を明確に示すためにインジェクタの前方部分が2つの異なる平面で切断されていることに留意されたい。その理由は、ばね190が互いに対して対角線上に配置され、したがって2つの異なる平面内に存在するからである。
【0051】
ばね190が、ハウジング部分104および106を基準として長手方向軸107に沿ってニードルハウジング要素140を前方に付勢するように構成される。
図7では、ばね190が非応力配置(つまり、非応力状態または非圧縮状態)にあり、ニードル隠蔽要素140が完全に前方に付勢されている。
【0052】
次に、ニードル取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタ100の簡略化された模式図、および図8Aの線B-Bに沿う断面図である、図8Aおよび図8Bを参照する。
【0053】
図8Aおよび図8Bではニードル組立体300をカートリッジエンクロージャ組立体130の雄ねじを有する端部172に取り付ける前の保管状態でインジェクタ100を見ることができる。
【0054】
図8Aおよび図8Bでは、ニードル隠蔽要素140がインジェクタ100のハウジング部分104および106の前方端部の中に部分的に挿入されており、図7を参照して具体的に説明したように付勢ばね190の付勢下で長手方向軸107に沿って前方に付勢されていることが見てとれる。
【0055】
ニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106上に解除不可に摺動可能に設置されてハウジング部分104および106を基準として摺動可能に変位させられ得ることが本発明の実施形態の特有の特徴である。具体的には、ニードル隠蔽要素140のボタン290およびスナップ式の突出部292が、ニードル組立体300をインジェクタ100に取り付ける前の、動作可能な保管配置において、底部側ハウジング部分104の切欠部250内に着座する。
【0056】
特に、図8Bでは、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部に接触する形で支持され、したがってニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106を基準として長手方向軸107に沿って前方に変位することおよびそこから取り外されることが制限されることが見てとれる。
【0057】
この動作可能である保管位置では、付勢ばね190がその動作可能な非応力配置に配置され、したがってニードル隠蔽要素140をその前方位置まで付勢し、ここでは、ニードル隠蔽要素140が上側ハウジング部分および底部側ハウジング部分の前方端部200および220からそれぞれ前方に延在し、その結果、ニードル隠蔽要素140の前方を向く表面264が前方端部200および220から前方に離間されることが見てとれる。
【0058】
特には、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部のところに配置され、スナップ式の突出部292が底部ハウジング部分104内のスナップ式の切欠部252から前方に離間されることが見てとれる。
【0059】
さらに、図8Bでは、薬剤がピストン174により薬剤カートリッジ102内に収容され、プランジャ棒170のピストン接触要素176がピストン174に係合されることが見てとれる。長手方向軸107に沿ってプランジャ棒170を駆動する駆動組立体160が、好適には、あらゆる点において、好適には、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれているPCT特許出願PCT/IL2017/050607で説明される駆動組立体に類似する。
【0060】
次に、ニードル取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタ100の簡略化された模式図、ならびに図9Aの線B-BおよびC-Cに沿う2つの断面図である、図9A図9B、および図9Cを参照する。
【0061】
図9A~9Cでは、ニードル組立体300をカートリッジエンクロージャ組立体130の雄ねじを有する端部172に取り付けた後のニードル取り付け状態の動作可能な配置でインジェクタ100を見ることができる。特には、図9Bでは、ニードル組立体300が、好適には、雌ねじを有するニードルハブに取り付けられたニードル302を有し、雌ねじがカートリッジエンクロージャ組立体130の雄ねじを有する端部172の上にねじ込まれるように適合される、ことが見てとれる。好適には、内部ニードルキャップ304がニードル302上に設置され、外側ニードルキャップ306が内部ニードルキャップ304およびニードルハブの上に設置される。外側ニードルキャップ306が円周状の後方端部308を有する。
【0062】
特には、図9Bでは、ニードル組立体300がインジェクタ100に取り付けられると、ニードルハブを備えるニードル302がカートリッジエンクロージャ組立体130の雄ねじを有する端部172にねじ込み式に取り付けられ、それにより外側ニードルキャップ306の円周状の後方端部308がニードル隠蔽要素140の前方を向くショルダ272に係合される。外側ニードルキャップ306がニードル隠蔽要素140に係合されることにより、付勢ばね190の付勢に逆らって、ハウジング部分104および106を基準としてニードル隠蔽要素140が摺動可能に後方に変位させられる。
【0063】
図9A~9Cでは、この時点のニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106によって形成されるエンクロージャ内に配置されており、その結果、ニードル隠蔽要素140の前方を向く表面264がハウジング部分106および104の前方端部200および220からそれぞれ前方に離間されることが見てとれる。
【0064】
このニードル取り付け状態の動作配置にあるニードル302が内部ニードルキャップ304および外側ニードルキャップ306によって覆い隠され、ニードル隠蔽要素140が、ニードル隠蔽要素140の最も後退側の位置であるロック状態の後退配置に配置される、ことが本発明の実施形態の特有の特徴である。特には、図9Bでは、ニードル隠蔽要素140のこのロック状態の後退配置では、スナップ式の突出部252がハウジング部分104および106を基準として後方に変位させられ、ここでは、底部側ハウジング部分104のスナップ式の切欠部292の中に挿入されており、ボタン290が切欠部250の後方端部に隣接して配置されることが見てとれる。ニードル隠蔽要素140がその後退位置において一時的にロックされ、スナップ式の突出部292とスナップ式の切欠部252との間での係合により、長手方向軸107に沿って長手方向の前方に変位させられることが制限される。スナップ式の切欠部252を用いてスナップ式の突出部292をロックすることが、ニードル隠蔽要素140の設置アーム280が一時的にその位置を内側にずらされることにより、可能となる。
【0065】
さらに、特には、図9Cでは、付勢ばね190がこの時点では動作可能な圧縮配置に配置されるが、スナップ式の突出部292をスナップ式の切欠部252にロック係合させることによりニードル隠蔽要素140を前方に変位させることが防止されることが見てとれる。
【0066】
特に、図9Bでは、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部ハウジング部分104の切欠部250の前方端部から後方に離間されることが見てとれる。
さらに、図9Bでは、薬剤がピストン174により薬剤カートリッジ102内に収容され、プランジャ棒170のピストン接触要素176がピストン174に係合される。プランジャ棒170を長手方向軸107に沿って駆動する駆動組立体160が、好適には、あらゆる点において、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれているPCT特許出願PCT/IL2017/050607で説明される駆動組立体に類似する。
【0067】
さらに、図9Bでは、ニードル302がこの時点で薬剤カートリッジ102の隔壁180を貫通し、したがって薬剤カートリッジ102内に収容される薬剤に流体連通されて配置される。
【0068】
ニードルを取り付ける操作中、対応するスナップ式の切欠部252に対してスナップ式の突出部292が係合されることにより後退位置においてニードル隠蔽要素140が一時的にロックされることにより、この操作を完了することが容易になり、その理由は、使用者がばね190の付勢力に逆らってニードル隠蔽要素を維持する必要がないからであることが認識されよう。説明したニードルを取り付ける操作は外側ニードルキャップ306を用いてニードル隠蔽要素140を後方に押すステップを伴うが、別法として、使用者がニードル組立体300に係合させる前にニードル隠蔽要素140をロック状態の後退位置まで手動で移動させるためにボタン290を作動させてもよい。
【0069】
次に、ニードル露出状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタ100の簡略化された模式図、ならびに図10Aの線B-BおよびC-Cに沿う2つの断面図である、図10A図10B、および図10Cを参照する。
【0070】
図10A~10Cでは、内部ニードルキャップ304と共に外側ニードルキャップ306をニードル302から取り外した後の、ニードル露出状態の動作可能な配置でインジェクタ100を見ることができる。
【0071】
特に、図9Bでは、ニードルハブを備えるニードル302がカートリッジエンクロージャ組立体130の雄ねじを有する端部172にねじ式に取り付けられた状態を維持する、ことが見てとれる。
【0072】
図10A~10Cでは、ニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106によって形成されるエンクロージャ内に配置された状態を維持し、その結果、ニードル隠蔽要素140の前方を向く表面264がハウジング部分106および104の前方端部200および220からそれぞれ後方に離間されることが見てとれる。
【0073】
このニードル露出状態の動作可能な配置では、ニードル302が露出しており、ニードル隠蔽要素140がロック状態の後退配置に配置され、ロック状態の後退配置がニードル隠蔽要素140の最も後方側の位置である。特に、図10Bでは、ニードル隠蔽要素140のこのロック状態の後退配置では、スナップ式の突出部252が底部側ハウジング部分104のスナップ式の切欠部292の中に挿入された状態を維持し、ボタン290が切欠部250の候補端部に隣接して配置されることが見てとれる。ニードル隠蔽要素140がその後退位置で一時的にロックされ、スナップ式の突出部292とスナップ式の切欠部252との間に係合により、長手方向軸107に沿う長手方向の前方の変位が制限される。
【0074】
さらに、特に、図10Cでは、付勢ばね190が動作可能な圧縮配置に配置された状態を維持するが、スナップ式の切欠部252に対してのスナップ式の突出部292のロック係合によりニードル隠蔽要素140を前方に変位させることが防止されることが見てとれる。
【0075】
特に、図10Bでは、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部から後方に離間された状態を維持することが見てとれる。
【0076】
さらに、図10Bでは、薬剤がピストン174により薬剤カートリッジ102内に収容され、プランジャ棒170のピストン接触要素176がピストン174に係合されることが見てとれる。ニードル302が薬剤カートリッジ102の隔壁180を貫通し、したがって、薬剤カートリッジ102内に収容される薬剤に流体連通されて配置される。
【0077】
次に、ニードル隠蔽状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタ100の簡略化された模式図、および図11Aの線B-Bに沿う断面図である、図11Aおよび図11Bを参照する。
【0078】
図11Aおよび図11Bでは、使用者によりニードル隠蔽要素140のボタン290を押してしたがってニードル隠蔽要素140をハウジング部分104および106からロック解除してばね190の付勢下でハウジング部分104および106を基準としてニードル隠蔽要素140を長手方向の前方に変位させた後の、ニードル隠蔽状態の動作可能な配置でインジェクタ100を見ることができる。したがって、可撓性アーム280のスナップ式の突出部292およびハウジング104、106の対応する構造部すなわちスナップ式の切欠部252が、ニードル隠蔽要素140のロック状態の後退配置を提供するように設計される。このロック状態の位置は使用者によりボタン290を同時に押し下げることによりロック解除され得、それによりスナップ式の突出部292が対応するスナップ式の切欠部252から外される。
【0079】
図11Aおよび図11Bでは、使用者によりボタン290を内側に押すときに、ニードル隠蔽要素140の設置アーム280の位置を一時的に内側にずらしてそれによりニードル隠蔽要素140のスナップ式の突出部252を底部側ハウジング部分104のスナップ式の切欠部252から解除してそれにより付勢ばね190の付勢下でハウジング部分104および106を基準としてニードル隠蔽要素140を軸方向の前方に摺動可能に変位させることにより、ニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106からロック解除されることが見てとれる。
【0080】
特に、図11Aおよび図11Bでは、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部に接触した状態で支持され、したがって、ニードル隠蔽要素140が、ハウジング部分104および106を基準として長手方向軸107に沿って前方にさら変位させられ、ハウジング部分104および106から取り外されることを制限されることが見てとれる。
【0081】
このニードル隠蔽状態の動作可能な配置では、付勢ばね190がそれらの動作可能な非応力配置に配置され、したがってニードル隠蔽要素140を延伸位置まで付勢し、延伸位置がニードル隠蔽要素140の最も前方側の位置であり、ここでは、ニードル隠蔽要素140が上側ハウジング部分および底部側ハウジング部分の前方端部200および220からそれぞれ前方に延在し、その結果、ニードル隠蔽要素140の前方を向く表面264が前方端部200および220から前方に離間され、ニードル302がニードル隠蔽要素140の開口部266内で隠蔽され、したがって使用者の視界から隠蔽されることが見てとれる。
【0082】
特には、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部のところに配置され、このニードル隠蔽状態の動作可能な配置では、スナップ突出部292が底部側ハウジング部分104内のスナップ式の切欠部252から前方に離間される。
【0083】
さらに、図11Bでは、薬剤がピストン174により薬剤カートリッジ102内に収容され、プランジャ棒170のピストン接触要素176がピストン174に係合されることが見てとれる。プランジャ棒170を長手方向軸107に沿って駆動する駆動組立体160が、好適には、あらゆる点において、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている、PCT特許出願PCT/IL2017/050607で説明される駆動組立体に類似する。
【0084】
さらに、図11Bでは、ニードル302が薬剤カートリッジ102の隔壁180を貫通し、したがって薬剤カートリッジ102内に収容される薬剤に流体連通されて配置された状態を維持する。
【0085】
次に、注射のための動作可能な配置において使用者によって動作せられる図1~3のインジェクタ100の簡略化された模式図、および図12Aの線B-Bに沿う断面図である、図12Aおよび図12Bを参照する。
【0086】
図12Aおよび図12Bでは、使用者の皮膚の注射部位に対してインジェクタ100を押圧した後の、注射のための動作可能な配置でインジェクタ100を見ることができる。注射部位に対してインジェクタ100を押圧すると、ニードル隠蔽要素140の前方を向く表面264が皮膚に係合され、使用者がインジェクタ100を皮膚に接触させた状態で軸方向の前方に押すことを進めるときにニードル隠蔽要素140が付勢ばね190の付勢に逆らって摺動可能に後方に変位させられる。
【0087】
この注射のための動作可能な配置において、ニードル隠蔽要素140の前方を向く表面264がハウジング部分106および104の前方端部200および220にそれぞれ概して位置合わせされるまで、ニードル隠蔽要素140が後方に変位させられる、ことが本発明の実施形態の特有の特徴である。この注射のための動作可能な配置では、ニードル隠蔽要素140が部分的な後退配置に配置され、ここでは、ニードル隠蔽要素140が中間位置に配置され、この中間位置は、その延伸位置の前方かつその延伸位置の後方に配置される。
【0088】
ニードル隠蔽要素140がこの部分的な後退配置ではロックされず、したがって使用者によりニードル隠蔽要素に加えられる圧力を取り除くときにハウジング部分104および106を基準として摺動可能に前方に付勢され得ることが、本発明の実施形態の別の特有の特徴である。
【0089】
図12Aおよび図12Bでは、その部分的な後退配置にあるニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部からわずかに離間されるが、図10Bと比較してより小さく後方に離間されることが見てとれる。スナップ式の突出部292が切欠部250内に配置され、底部側ハウジング部分104のスナップ式の切欠部252から前方に離間され、したがってニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106に対してロックされない。
【0090】
この注射のための動作可能な配置では、付勢ばね190がその部分的に圧縮された状態の動作可能な配置に配置されることが見てとれる。この注射のための動作可能な配置にあるニードル302がニードル隠蔽要素140から前方の延在し、したがってハウジング部分104および106が使用者の皮膚を貫通する。
【0091】
さらに、図12Bでは、プランジャロッド170を軸方向の前方に前進させて薬剤カートリッジ102を基準としてピストン174を変位させる駆動組立体160により、薬剤がニードル302を介して薬剤カートリッジ102から排出されることが見てとれる。プランジャロッド170を長手方向軸107に沿って駆動する駆動組立体160は、好適には、あらゆる点において、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれているPCT特許出願PCT/IL2017/050607で説明される駆動組立体に類似する。
【0092】
次に、ニードルカバーを取り付けた状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられる図1~3のインジェクタ100の簡略化された模式図、および図13Aの線B-Bに沿う断面図である、図13Aおよび図13Bを参照する。
【0093】
図13Aおよび図13Bでは、使用者の皮膚からインジェクタ100を離した後の、外側ニードルキャップ306をニードル302に取り付ける直前の状態のインジェクタ100を見ることができる。
【0094】
インジェクタ100を皮膚から離すと、ニードル隠蔽要素140が、付勢ばね190の付勢下で、その延伸配置まで、ハウジング部分104および106を基準として前方に変位させられるように付勢される。
【0095】
特に、図13Aおよび図13Bでは、インジェクタ100を皮膚から離すと、ニードル隠蔽要素140が図11Aおよび図11Bを参照して説明したのと同じ配置に配置されることが見てとれる。具体的には、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部に接触した状態で支持され、したがってニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106を基準として長手方向軸107に沿ってさらに前方に変位させられてハウジング部分104および106から取り外されることが制限される。
【0096】
この動作可能な配置では、付勢ばね190がそれらの動作可能な非応力配置に配置され、したがってニードル隠蔽要素140を延伸位置まで付勢し、この延伸位置がニードル隠蔽要素140の最も前方側の位置であり、ここでは、ニードル隠蔽要素140が上側および底部側ハウジング部分のそれぞれの前方端部200および220から前方に延在し、その結果、ニードル隠蔽要素140の前方を向く表面264が前方端部200および220から前方に離間され、ニードル302がニードル隠蔽要素140の開口部266内で隠蔽され、したがって使用者の視界から隠蔽されることが見てとれる。
【0097】
特には、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部のところに配置され、この動作可能な配置では、スナップ式の突出部292が底部側ハウジング部分104内のスナップ式の切欠部252から前方に離間されることが見てとれる。
【0098】
さらに、図13Bでは、薬剤カートリッジ102が空であることが見てとれる。別法として、薬剤カートリッジ102内に収容されるすべての量の薬剤ではなく、一定の投与量の薬剤が注射されてもよい。
【0099】
次に、ニードルカバー取り付け状態の動作可能な配置において使用者によって動作させられるインジェクタ100の図1~3の簡略化された模式図、および図14Aの線B-Bに沿う断面図である図14Aおよび図14Bを参照する。
【0100】
図14Aおよび図14Bでは、外側ニードルキャップ306をニードル302に取り付けた後のニードルカバー取り付け状態の動作可能な配置にあるインジェクタ100を見ることができる。この動作可能な配置は図9A~9Cを参照して示されて説明される動作可能な配置に本質的に類似し、加えてこの動作可能な配置では、薬剤の一部またはすべてが薬剤カートリッジ102から排出される。
【0101】
好適には、この時点で、外側ニードルキャップ306がニードル302およびニードルハブの上に設置される。
特に、図14Aおよび図14Bでは、外側ニードルキャップ306をインジェクタ100に取り付けた後、外側ニードルキャップ306の円周状の後方端部308がニードル隠蔽要素140の前方を向くショルダ272に係合されることが見てとれる。外側ニードルキャップ306がニードル隠蔽要素140に係合されることにより、付勢ばね190の付勢下で、ハウジング部分104および106を基準としてニードル隠蔽要素140が後方に摺動可能に変位させられる。
【0102】
図14Aおよび図14Bでは、ニードル隠蔽要素140がこの時点でハウジング部分104および106によって形成されるエンクロージャ内に配置され、その結果、ニードル隠蔽要素140の前方を向く表面264がハウジング部分106および104のそれぞれの前方端部200および220から前方に離間されることが見てとれる。
【0103】
このニードル取り付け状態の動作可能な配置にあるニードル302が外側ニードルキャップ306よって覆い隠され、ニードル隠蔽要素140がロック状態の後退配置にあり、このロック状態の後退配置がニードル隠蔽要素140の最も後方側の配置であることが、本発明の実施形態の特有の特徴である。具体的には、ニードル隠蔽要素140のこのロック状態の後退配置では、スナップ式の突出部252がハウジング部分104および106を基準として後方に変位させられており、この時点では底部側ハウジング部分104のスナップ式の切欠部292の中に挿入されており、ボタン290が切欠部250の後方端部に隣接して配置されることが見てとれる。ニードル隠蔽要素140がその後退位置で一時的にロックされ、スナップ式の突出部292とスナップ式の切欠部252との間の係合により長手方向軸107に沿って長手方向の前方に変位させられることを制限される。スナップ式の切欠部252を用いてスナップ式の突出部292をロックすることが、ニードル隠蔽要素140の設置アーム280が一時的にその位置を内側にずらされることにより、可能となる。
【0104】
さらに、付勢ばね190がこの時点でその動作可能な圧縮配置に配置されるが、スナップ式の突出部292をスナップ式の切欠部252にロック係合させることによりニードル隠蔽要素140を前方に変位させることが防止されることに留意されたい。
【0105】
特に、ニードル隠蔽要素140のボタン290が底部側ハウジング部分104の切欠部250の前方端部から後方に離間されることが見てとれる。
薬剤が薬剤コンテナ102の中に依然として残っており、使用者が、ニードルを皮膚に挿入するときおよびニードルを皮膚から後退させるときにニードル302を隠蔽しながら、追加の投与量の薬剤を注射するのを望む場合、使用者がニードル隠蔽要素140のボタン290を長手方向軸107の方に押す必要があり、それによりニードル隠蔽要素140がハウジング部分104および106からロック解除される。
【0106】
インジェクタ100が、インジェクタ100のハウジング部分104および106を基準として変位可能であり、さらに、ニードルを露出する延伸配置と、ニードル隠蔽要素140をハウジング部分104および106に対してロックする後退配置と、薬剤カートリッジ102から薬剤を注射するときの部分的な後退配置とに配置可能であるニードル隠蔽要素140を有することが、本発明の実施形態の特有の特徴である。
【0107】
別法として、ニードル隠蔽要素140の示される2つの設置アーム280の代わりに、特定の動作可能な配置においてハウジング部分104および106に対してニードル隠蔽要素140をロックすること/ハウジング部分104および106からニードル隠蔽要素140をロック解除することを可能にするニードル隠蔽要素140の任意の他の数のまたは他の構成のこのような設置アームも本発明の実施形態に範囲内にあると考えられることを認識されたい。例えば、底部側ハウジング部分104の側壁上242ではなく底部側ハウジング部分104の後壁240上に形成される切欠部に係合される単一の接地アーム280が本発明の一部として採用されてもよい。
【0108】
例えば、インジェクタ100のハウジングの前方端部に開口部を設けて薬剤カートリッジ102をそこを通して回転可能に挿入するなどの、インジェクタ100の中への代替の薬剤カートリッジの挿入方法も本発明の範囲内にあると考えられることに留意されたい。さらに、薬剤カートリッジをインジェクタ100の中に挿入する他の方法も本発明の範囲内にあると考えられる。
【0109】
本明細書において上記で具体的に示して説明したもののみに本発明が限定されないことを当業者であれば認識するであろう。むしろ、本発明は、本明細書で説明される種々の特徴の組み合わせおよび下位の組み合わせの両方、ならびに上記の説明を読むことにより当業者には思い付くであろう従来技術ではない改善および変形形態も含む。
【符号の説明】
【0110】
100 インジェクタ
102 薬剤カートリッジ
104 底部側ハウジング部分
106 頂部側ハウジング部分
107 長手方向軸
108 ディスプレイ
130 カートリッジエンクロージャ組立体
140 ニードル隠蔽要素
150 シャーシ組立体
160 駆動組立体
162 電気モータ
164 バッテリー
170 プランジャ棒
172 雄ねじを有する端部
174 ピストン
176 ピストン接触要素
178 概略円筒形のバレル
180 弾性隔壁
190 ばね
200 前方端部
202 後方端部
203 開口部
204 フランジ
206 中空長手方向突出部
208 後方閉端部
220 前方端部
222 後方端部
223 開口部
224 フランジ
226 突出部
228 閉端部
230 切欠部
240 後壁
242 側壁
250 長手方向切欠部
252 スナップ式の切欠部
260 基部壁部分
262 後方を向く表面
264 前方を向く表面
266 開口部
268 円筒形部分
270 円錐部分
272 前方を向くショルダ
276 案内ピン
280 設置アーム
282 内側を向く表面
284 外側を向く表面
290 ボタン
292 スナップ式の突出部
300 ニードル組立体
302 ニードル
304 内部ニードルキャップ
306 外側ニードルキャップ
308 円周状の後方端部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】