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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079504
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】ソフトウェア更新方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20220519BHJP
   H05K 13/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
G06F8/65
H05K13/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040108
(22)【出願日】2022-03-15
(62)【分割の表示】P 2021129207の分割
【原出願日】2018-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大池 博史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健二
(72)【発明者】
【氏名】稲浦 雄哉
(57)【要約】
【課題】対基板作業機が制御に用いるソフトウェアを効率的に更新し、対基板作業機の生産効率の向上を図ることができるソフトウェア更新方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ソフトウェア更新方法は、部品装着機は、生産ラインを統括して制御する管理装置に通信可能に接続され、部品装着機により実行される生産処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する指定ステップと、管理装置が部品装着機の動作状況を監視する監視ステップと、監視ステップにより監視される動作状況に基づいて、部品装着機の処理負荷が採取した部品を基板に装着する一連のPPサイクルの実行中よりも低減する低負荷期間に、部品装着機が実行予定の次回の生産処理に適用するソフトウェアを指定ステップにより指定されたバージョンに更新する更新ステップと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板製品の生産ラインを構成する複数の部品装着機が生産処理において実行するソフトウェアを異なるバージョンに更新する更新方法であって、
前記部品装着機は、前記生産ラインを統括して制御する管理装置に通信可能に接続され、
前記部品装着機により実行される前記生産処理に適用する前記ソフトウェアのバージョンを指定する指定ステップと、
前記管理装置が前記部品装着機の動作状況を監視する監視ステップと、
前記監視ステップにより監視される前記動作状況に基づいて、前記部品装着機の処理負荷が採取した部品を基板に装着する一連のPPサイクルの実行中よりも低減する低負荷期間に、前記部品装着機が実行予定の次回の前記生産処理に適用する前記ソフトウェアを前記指定ステップにより指定された前記バージョンに更新する更新ステップと、
を備えたソフトウェア更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトウェア更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板製品の生産に用いられる対基板作業機には、供給された部品を基板に装着する部品装着機が含まれる。部品装着機は、部品供給装置や部品移載装置などの複数の構成装置により構成される。上記の構成装置は、要求される機能に応じたファームウェアを実行し、部品供給などの種々の動作を制御する。このようなファームウェアは、新たな機能の追加などに伴いバージョンアップを必要とされることがある。特許文献1には、構成装置に組み込まれたファームウェアのバージョンに基づいて、部品装着機がファームウェアの更新処理を自動的に実行する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-182768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、構成装置が実行するファームウェアを新しいバージョンに更新する処理を実行するために構成装置の動作が停止すると、部品装着機が部品の装着処理を実行することができない。そのため、ファームウェアなどの構成装置が実行するソフトウェアの更新処理の実行によって、部品装着機における生産効率が低下するおそれがある。また、ソフトウェアのバージョンは、より適正に管理されることが望まれる。
【0005】
本明細書は、部品装着機が制御に用いるソフトウェアを効率的に更新し、部品装着機の生産効率の向上を図ることができるソフトウェア更新方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、基板製品の生産ラインを構成する複数の部品装着機が生産処理において実行するソフトウェアを異なるバージョンに更新する更新方法であって、前記部品装着機は、前記生産ラインを統括して制御する管理装置に通信可能に接続され、前記部品装着機により実行される前記生産処理に適用する前記ソフトウェアのバージョンを指定する指定ステップと、前記管理装置が前記部品装着機の動作状況を監視する監視ステップと、前記監視ステップにより監視される前記動作状況に基づいて、前記部品装着機の処理負荷が採取した部品を基板に装着する一連のPPサイクルの実行中よりも低減する低負荷期間に、前記部品装着機が実行予定の次回の前記生産処理に適用する前記ソフトウェアを前記指定ステップにより指定された前記バージョンに更新する更新ステップと、を備えたソフトウェア更新方法を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、対基板作業機の動作状況に応じて適正なタイミングで、対基板作業機が生産処理において実行するソフトウェアが指定されたバージョンに更新される。これにより、対基板作業機は、生産処理に適した指定バージョンのソフトウェアにより種々の動作を制御できる。結果として、生産効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における生産システムを構成する生産ラインおよび管理装置を示す模式図である。
図2図1の生産ラインにおける部品装着機の構成を示す模式図である。
図3】バージョン情報を含む各種データを示す図である。
図4】生産処理に構成機器に記憶されたソフトウェアのバージョン情報を示す図である。
図5】生産処理におけるソフトウェアに管理処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.対基板作業機の管理装置の概要
以下、対基板作業機の管理装置を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。管理装置は、対基板作業機の構成装置が実行するソフトウェアのバージョンを管理する。本実施形態において、管理装置が対基板作業機としての部品装着機2の制御装置50を管理の対象として適用された態様を例示する。部品装着機2は、基板製品の生産に用いられる生産ラインを構成する。管理装置および生産ラインは、生産システムを構成する。
【0010】
2.生産ラインL1の構成
生産ラインL1は、図1に示すように、複数の対基板作業機を基板90(図2を参照)の搬送方向に複数設置して構成される。複数の対基板作業機のそれぞれは、生産ラインL1を統括して制御するホストコンピュータ60に通信可能に接続される。生産ラインL1のそれぞれは、複数の対基板作業機としての印刷機1、複数の部品装着機2、リフロー炉3、および検査機4を備える。
【0011】
印刷機1は、搬入された基板90における部品の装着位置にペースト状のはんだを印刷する。複数の部品装着機2のそれぞれは、生産ラインL1の上流側から搬送された基板90に部品を装着する。部品装着機2の構成については後述する。リフロー炉3は、生産ラインL1の上流側から搬送された基板90を加熱して、基板90上のはんだを溶融させてはんだ付けを行う。検査機4は、生産ラインL1により生産された基板製品の機能が正常であるか否かを検査する。
【0012】
本実施形態において、基板製品の工場には、3つの生産ラインL1-L3が構成されている。第二および第三の生産ラインL2,L3は、上記の第一の生産ラインL1と実質的に同様の構成であるため詳細な説明を省略する。ホストコンピュータ60は、第一の生産ラインL1に加えて、第二の生産ラインL2および第三の生産ラインL3を統括して制御する。
【0013】
なお、3つの生産ラインL1-L3のそれぞれは、例えば生産する基板製品の種別などに応じて、その構成を適宜追加、変更され得る。具体的には、3つの生産ラインL1-L3には、搬送される基板90を一時的に保持するバッファ装置や基板供給装置や基板反転装置、各種検査装置、シールド装着装置、接着剤塗布装置、紫外線照射装置などの対基板作業機が適宜設置され得る。
【0014】
3.部品装着機2の構成
部品装着機2は、基板90に部品を装着する装着処理を実行する。部品装着機2は、図2に示すように、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30、部品カメラ41、基板カメラ42、および制御装置50を備える。基板搬送装置10は、ベルトコンベアおよび位置決め装置などにより構成される。基板搬送装置10は、基板90を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板90を機内の所定位置に位置決めする。基板搬送装置10は、装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機2の機外に搬出する。
【0015】
部品供給装置20は、基板90に装着される部品を供給する。部品供給装置20は、複数のスロット21にセットされたフィーダ22を備える。フィーダ22は、多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給する。また、部品供給装置20は、例えば比較的大型の部品を、パレット24に載置されたトレイ25上に並べた状態で供給する。部品供給装置20の収納装置23は、複数のパレット24を収納し、装着処理に応じて所定のパレット24を引き出して部品を供給する。
【0016】
部品移載装置30は、部品供給装置20により供給された部品を、基板搬送装置10により機内に搬入された基板90上の所定の装着位置まで移載する。部品移載装置30のヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32を水平方向(X軸方向およびY軸方向)に移動させる。移動台32には、図示しないクランプ部材により装着ヘッド33が交換可能に固定されている。装着ヘッド33は、回転可能に且つ昇降可能に複数の吸着ノズル34を支持する。吸着ノズル34は、供給される負圧エアにより、フィーダ22により供給される部品を吸着する。
【0017】
部品カメラ41、および基板カメラ42は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ41、および基板カメラ42は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ41は、装着ヘッド33の吸着ノズル34に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ42は、基板90を上方から撮像可能に構成される。
【0018】
制御装置50は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置50は、基板90に部品を装着する装着処理を制御する。上記の装着処理は、生産処理の一種であり、部品供給装置20により供給された部品を採取して基板90における所定位置に部品を装着するピックアンドプレースサイクル(以下、「PPサイクル」とも称する)を複数回に亘って繰り返す処理が含まれる。制御装置50は、装着処理において、各種センサから出力される情報や画像処理の結果、予め記憶された制御プログラムなどに基づき、部品移載装置30の動作を制御する。これにより、装着ヘッド33に支持された複数の吸着ノズル34の位置および角度が制御される。
【0019】
なお、上記のような構成からなる部品装着機2において、基板搬送装置10、フィーダ22、収納装置23、ヘッド駆動装置31、装着ヘッド33、部品カメラ41、基板カメラ42、および制御装置50は、部品装着機2を構成する構成装置である。これらの構成装置は、要求される機能(例えばフィーダ22が部品を供給する機能、制御装置50が部品移載装置30の動作を制御する機能)に応じたソフトウェアを実行する。本実施形態において、上記のソフトウェアは、構成装置に組み込まれたファームウェアである。
【0020】
また、本実施形態において、制御装置50は、互いに異なる複数のバージョンのソフトウェアを予めインストールされる。より具体的には、制御装置50には、インストールされた同種のソフトウェアを選択的に実行可能な第一起動領域51および第二起動領域52が確保されている。そして、例えば、第一の生産ラインL1を構成する複数の部品装着機2の制御装置50には、図3の表2に示すように、第一起動領域51および第二起動領域のそれぞれに互いに異なるバージョン(Ver2.1、Ver4.0)がインストールされる。
【0021】
制御装置50は、後述する管理装置70により実行するソフトウェアのバージョンを指定され、その指定バージョンに対応するソフトウェアを起動する。なお、本実施形態では、図3の表2に示すように、複数の生産ラインL1-L3ごとにインストールされたソフトウェアのバージョンを管理する。つまり、第一の生産ラインL1を構成する複数の部品装着機2の制御装置50のそれぞれにインストールされた複数のソフトウェアのバージョンは共通する。但し、同一の生産ラインL1における複数の制御装置50ごとにソフトウェアのバージョンを管理してもよい。
【0022】
4.ホストコンピュータ60の概要および管理装置70の構成
ホストコンピュータ60は、生産ラインL1-L3の動作状況を監視し、部品装着機2などの対基板作業機の制御を行う。ホストコンピュータ60は、構成機器およびインストールされたソフトウェアにより対基板作業機の管理装置70として機能する。本実施形態において、管理装置70は、部品装着機2の構成装置の一つである制御装置50を対象として、制御装置50に組み込まれたソフトウェアのバージョンを管理する。
【0023】
管理装置70は、図1に示すように、記憶装置71と、バージョン指定部72と、更新部73とを備える。記憶装置71は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、またはフラッシュメモリなどにより構成される。この記憶装置71には、対基板作業機の制御に用いられる制御プログラムなどの各種データが記憶される。また、記憶装置71には、生産計画M1、バージョン情報M2、機能情報M3、適用情報M4、およびバージョン適用計画M5が予め記憶される。上記の生産計画M1は、図3の表1に示すように、複数の生産ラインL1-L3のそれぞれにおける基板製品の製品種(U1,U2,U3,・・・)ごとの目標生産数(T1,T2,T3,・・・)を示す。
【0024】
バージョン情報M2は、生産処理(装着処理)において対基板作業機の構成装置が実行したソフトウェアの現在バージョンを複数の構成装置ごとに関連付けた情報である。より具体的には、本実施形態において、バージョン情報M2は、装着処理において部品装着機2の制御装置50が実行したソフトウェア(例えば、部品移載装置30の動作を制御するためのファームウェア)の現在バージョンを複数の生産ラインL1-L3における制御装置50ごとに関連付けて示す。
【0025】
ここで、本実施形態において、制御装置50には、互いに異なるバージョンのソフトウェアをインストールすることが可能である。そこで、バージョン情報M2は、インストールされた2種類のバージョンのうち最後に実行された方を現在バージョンとして記憶する(図3の表2における太枠部)。具体的には、図3の表2によると、第一の生産ラインL1における複数の制御装置50が最後に実行した現在バージョンは、第二起動領域52にインストールされたVer4.0である。
【0026】
機能情報M3は、図3の表3に示すように、ソフトウェアの機能を複数のバージョンごとに関連付けた情報である。具体的には、機能情報M3には、主機能である基本動作(例えば、装着処理における部品移載装置30の動作)、オプション機器対応の可否、特殊な装着処理に対応した専用動作、把握している不具合の有無などの項目がバージョンごとに関連付けられている。例えば、図3の表3によると、Ver2.1は、オプション機器には対応しないが、専用動作に対応する。また、Ver4.0は、オプション機器や専用動作に対応しないが、ソフトウェアの改良等によって基本動作が良好であると記録されている。
【0027】
適用情報M4は、生産処理(装着処理)において必要なソフトウェアの機能と生産処理の種別ごとに関連付けた情報である。具体的には、適用情報M4には、図3の表4に示すように、製品種(U1,U2,U3,・・・)を生産するために実行される装着処理の種別(P1,P2,P3,・・・)ごとに、当該装着処理において必要なソフトウェアの機能が関連付けられる。例えば、図3の表4によると、製品種(U4)を生産するために実行される装着処理(P4)には、オプション機器に対応する機能が要求される。
【0028】
バージョン適用計画M5は、実行予定のそれぞれの装着処理に適用するバージョンを示す。バージョン適用計画M5は、ソフトウェアの管理処理において後述するバージョン指定部72により生成される。ソフトウェアの管理処理およびバージョン適用計画M5の詳細については後述する。
【0029】
バージョン指定部72は、生産処理(装着処理)に適用するソフトウェアのバージョンを生産処理の種別およびバージョン情報M2に基づいて指定する。本実施形態において、バージョン指定部72は、実行予定の装着処理の種別が記録された生産計画M1、機能情報M3、および適用情報M4に基づいて、装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する。ここで、本実施形態において、制御装置50には、第一起動領域51および第二起動領域のそれぞれに互いに異なるバージョンのソフトウェアが予めインストールされている。
【0030】
そこで、バージョン指定部72は、制御装置50が実行するソフトウェアのバージョンを指定する場合に、装着処理の種別に基づいて、制御装置50にインストールされているソフトウェアの複数のバージョンの一つを選択することにより装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する。これにより、管理装置70は、新たなインストール作業を伴うことなく、装着処理に適したバージョンのソフトウェアを実行させることができる。
【0031】
更新部73は、部品装着機2の構成装置に複数のバージョンのソフトウェアがインストールされている場合に、何れか一つのソフトウェアを更新する。本実施形態において、更新部73は、生産計画M1に基づいて、制御装置50が複数のバージョンの一つのソフトウェアを実行している際に、他のバージョンのソフトウェアを更新する。更新部73は、例えば実行予定の装着処理に適したバージョンのソフトウェアが制御装置50にインストールされていない場合に、その装着処理が実行される前に、休止しているソフトウェアを更新する。これにより、指定バージョンのソフトウェアが実行予定の装着処理が実行される前にインストールすることができる。
【0032】
また、更新部73は、生産計画M1に基づいて実行予定の装着処理を認識することにより、装着処理に適したソフトウェアのバージョンを設定できる。また、更新部は、生産計画M1に基づきどのようなタイミングでソフトウェアを更新するかを設定することができる。これにより、ソフトウェアのインストールに伴う生産効率の低下を防止することができる。
【0033】
ここで、部品装着機2が実行する装着処理には、上記のようにPPサイクルを繰り返す処理が含まれる。そして、本実施形態において、更新部73は、装着処理のうち制御装置50の処理負荷がPPサイクルの実行中よりも低減する低負荷期間にソフトウェアを更新する。ここで、ソフトウェアの更新処理は、所定の時間を要するとともに、対象の制御装置50の制御装置に所定の負荷がかかる。そのため、ソフトウェアの更新処理を実行すると、実行のタイミングによっては装着処理における制御装置50の動作に影響するおそれがある。そこで、上記のように更新処理を低負荷期間に実行することによって、装着処理における制御装置50の動作への影響を防止できる。
【0034】
5.管理装置70による管理処理
管理装置70によるソフトウェアの管理処理について図3図5を参照して説明する。ここで、管理装置70は、対基板作業機である部品装着機2を構成する制御装置50を管理の対象とする。制御装置50には、装着処理において部品移載装置30の動作を制御するためのソフトウェアが組み込まれている。詳細には、図4の表2-1に示すように、制御装置50の第一起動領域51にはVer2.0のソフトウェアがインストールされ、第二起動領域にはVer4.0のソフトウェアがインストールされている。
【0035】
なお、図4に示すバージョン情報M2は、管理装置70の記憶装置71に記憶されている。また、図4の表2-1の太枠部は、制御装置50が装着処理に最後に実行したソフトウェアのバージョンを示している。以下では、図3の表1に示す生産計画M1にある複数の装着処理を実行予定としているものとする。管理装置70のバージョン指定部72は、先ずそれぞれの装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する(S11)。
【0036】
詳細には、バージョン指定部72は、装着処理の種別が記録された生産計画M1、機能情報M3、および適用情報M4に基づいて、それぞれの装着処理に適用するバージョンを指定し、図3の表5に示すように、バージョン適用計画M5を生成する。具体的には、第一の装着処理(P1)には、適用情報M4によると製品種(U1)を生産する処理であり専用動作を要することから、機能情報M3に基づきVer2.1が適用されるようにバージョンが指定される。
【0037】
次に、更新部73は、次回の装着処理に適したバージョンのソフトウェアが制御装置50に記憶されているか判定する(S12)。例えば、次回の装着処理(P1)で実行されるソフトウェアの指定バージョンがVer2.1であり、現在の制御装置50にその指定バージョンのソフトウェアが記憶されていない場合には(S12:No)、更新部73は、装着処理が実行中であるか否かを判定する(S13)。更新部73は、制御装置50が装着処理を実行している場合には(S13:Yes)、装着処理における次回の低負荷期間を検出する(S14)。
【0038】
ここで、上記の低負荷期間には、例えば基板搬送処理やメンテナンス処理の実行期間が含まれる。基板搬送処理は、装着処理において一連のPPサイクルが実行された後に部品を装着された基板を搬出するとともに新たな基板を搬入する処理である。メンテナンス処理は、PPサイクルの実行回数が規定回数に達したり、所定の構成装置の稼働時間が規定時間に達したりした場合に、構成装置の適正な動作を維持するために機械的な誤差が発生していないか測定し、必要に応じて校正を行う処理である。
【0039】
上記のような基板搬送処理やメンテナンス処理は、装着ヘッド33の動作を伴わない処理、または装着ヘッド33の動作を伴ってもPPサイクルにおける動作より簡易な処理であり、制御装置50などの種々の構成装置における処理負荷が小さい。更新部73は、例えば現在の装着処理の進行の度合いを制御プログラムに基づいて推定し、現在以降においてソフトウェアの更新を行うのに十分な時間を確保できる低負荷期間を検出する。なお、低負荷期間は、連続した一つの期間、または複数の期間により構成される期間としてもよい。
【0040】
更新部73は、S14にて検出した低負荷期間となった場合に、または現在のところ制御装置50が装着処理を実行していない場合には(S13:No)、ソフトウェアの更新処理を実行する(S15)。ソフトウェアの更新処理では、管理装置70は、部品装着機2の制御装置50との通信により指定バージョンのソフトウェアを送出する。制御装置50は、入力したソフトウェアを所定の起動領域に記憶させる。
【0041】
ここで、新たなソフトウェアを記憶する起動領域は、制御装置50が装着処理を実行している場合には(S13:Yes)、その装着処理に適用されて実行中のソフトウェアが記憶されている起動領域とは異なる起動領域が指定される。また、新たなソフトウェアを記憶する起動領域は、制御装置50が装着処理を実行していない場合には(S13:No)、次回以降の装着処理において先に適用されるバージョンのソフトウェアが記憶されている起動領域とは異なる起動領域が指定される。
【0042】
更新部73は、バージョン適用計画M5に基づいて制御装置50の第一起動領域51または第二起動領域52を指定し、指定した起動領域に新たなソフトウェアを記憶させる。これにより、例えば第一起動領域51のソフトウェアがVer2.0からVer2.1に更新される。更新部73は、ソフトウェアの更新処理が終了した後に、図4の表2-2の斜線部に示すように、バージョン情報M2を更新する(S16)。
【0043】
その後に、バージョン指定部72は、予定の装着処理が実行開始される前に、その装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する(S17)。具体的には、バージョン指定部72は、制御装置50に記憶されているソフトウェアの複数のバージョン(Ver2.1、Ver4.0)の一つを選択することにより装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する。これにより、予定の装着処理が開始されると(S18)、制御装置50は、例えば第一起動領域51に記憶されたソフトウェアを実行する。
【0044】
管理装置70は、実行中の装着処理が最終処理であるか否かを生産計画に基づいて判定する(S19)。実行中の装着処理が最終処理でない場合には(S19:No)、管理装置70は、S12-S18の処理を繰り返す。ここで、例えば、図3の表5によると、第二の装着処理(P2)および第三の装着処理(P3)に適用するバージョン(Ver4.0)のソフトウェアは、既に制御装置50の第二起動領域52に記憶されている。一方で、第四の装着処理(P4)に適用するバージョン(Ver3.2)のソフトウェアは、何れの起動領域にも記憶されていない。
【0045】
そこで、更新部73は、上記の処理(S12-S18)により、第二の装着処理(P2)実行中、または第三の装着処理(P3)の実行中に、第一起動領域51のソフトウェアを適用予定のバージョン(Ver3.2)のソフトウェアに更新する(S15)。さらに、更新部73は、ソフトウェアの更新処理が終了した後に、図4の表2-3の斜線部に示すように、バージョン情報M2を更新する(S16)。管理装置70は、実行中の装着処理が最終処理である場合に(S19:Yes)、ソフトウェアの管理処理を終了する。
【0046】
6.実施形態の構成による効果
上記の対基板作業機(部品装着機2)の管理装置70は、生産処理(装着処理)において部品装着機2の制御装置50が実行したソフトウェア(ファームウェア)の現在バージョンを複数の制御装置50ごとに関連付けたバージョン情報M2を記憶する記憶装置71と、生産処理に適用するソフトウェアのバージョンを生産処理の種別およびバージョン情報M2に基づいて指定するバージョン指定部72と、を備える。
【0047】
このような構成によると、現在時点において制御装置50により実行されるソフトウェアのバージョンが管理される。これにより、部品装着機2の外部装置である管理装置70によるバージョンの管理が可能となり部品装着機2の管理性が向上する。また、管理装置70は、バージョン情報M2に基づいて装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する。これにより、部品装着機2は、装着処理に適した指定バージョンのソフトウェアにより種々の動作を制御できる。結果として、生産効率の向上を図ることができる。
【0048】
7.実施形態の変形態様
7-1.ソフトウェアの実行について
実施形態において、構成装置である制御装置50が実行するソフトウェアは、制御装置50に組み込まれたファームウェアであるものとした。これに対して、ソフトウェアは、例えば管理装置70の記憶装置71における所定の起動領域に予め記憶されたものであってもよい。そして、制御装置50は、外部装置である管理装置70とネットワークを介して通信し、所定の起動領域に記憶されたソフトウェアを実行する。
【0049】
このような構成において、バージョン指定部72は、装着処理の種別に基づいて、起動領域に所定のバージョンのソフトウェアを予め記憶することにより装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する。また、所定の起動領域に適用すべきバージョンのソフトウェアが記憶されていない場合には、例えば更新部73がソフトウェアを適宜更新することにより対応することができる。
【0050】
このような構成によると、部品装着機2の制御装置50は、ネットワークを介して管理装置70の記憶装置71における所定の起動領域に記憶されたソフトウェアを実行する。これにより、起動領域に記憶するソフトウェアのバージョンを適宜設定することによって、装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定することができる。よって、実行予定の装着処理の段取りとして制御装置50に予めソフトウェアをインストールする作業を省略することができる。結果として、生産効率を向上できる。
【0051】
また、上記のような態様において、記憶装置71には、互いに異なる複数のバージョンのソフトウェアが複数の起動領域に予め記憶された構成としてもよい。この構成は、実施形態において構成装置である制御装置50の第一起動領域51および第二起動領域52に互いに異なるバージョンのソフトウェアを予めインストールした構成と同様であるため詳細な説明を省略する。それぞれの構成の主な相違点は、ソフトウェアを記憶する記憶装置が相違する点、構成装置である制御装置50がソフトウェアを実行する際にネットワークを介するか否かの点である。
【0052】
これに伴い、バージョン指定部72は、装着処理の種別に基づいて、複数の起動領域の一つに記憶されたソフトウェアを制御装置50に起動させることにより、装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する。このような構成によると、制御装置50は、ネットワークを介して起動領域に記憶されたソフトウェアを実行する際に、バージョン指定部72によって複数の起動領域の一つを指定される。
【0053】
これにより、バージョン指定部72は、起動領域の設定によって制御装置50が実行するソフトウェアのバージョンを切り換えることができる。これにより、実行予定の装着処理に適したソフトウェアを予め所定の起動領域に記憶させることができ、複数の制御装置50に対して個別にバージョンを指定することができる。なお、バージョン指定部72は、制御装置50が実行するソフトウェアが記憶される起動領域が固定されている場合には、更新部73によりその起動領域に記憶されたソフトウェアを予め更新することにより、実質的にバージョンを指定してもよい。
【0054】
7-2.バージョンの指定について
実施形態において、バージョン指定部72は、生産計画M1、機能情報M3、および適用情報M4に基づいて、装着処理に適用するソフトウェアのバージョンを指定する構成とした。これに対して、バージョン指定部72は、種々の方法により指定するバージョンを設定してもよい。例えば、バージョン指定部72は、現在バージョンをバージョン情報M2に基づいて認識し、最新のバージョンを指定してもよいし、作業者や管理者により設定されたバージョンを指定してもよい。
【0055】
また、実施形態および変形態様においては、制御装置50または管理装置70の記憶装置71が互いに異なる2種類のバージョンのソフトウェアを記憶させる構成とした。これに対して、制御装置50または管理装置70には、3種類以上のバージョンのソフトウェアが予め記憶され、これらの一つをバージョン指定部72が指定するようにしてもよい。このような構成によると、更新処理を伴わずにより詳細なバージョンの切り換えが可能となる。
【0056】
7-3.管理装置について
実施形態において、管理装置70は、ホストコンピュータ60に組み込まれた構成とした。これに対して、管理装置70は、対基板作業機である部品装着機2の外部装置であれば、ホストコンピュータ60の他に種々の態様を採用し得る。例えば、管理装置70は、基板製品の工場に設置された管理専用の装置であってもよいし、対基板作業機とインターネットを介して通信可能に接続されたサーバであってもよい。何れの構成においても実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
7-4.その他
実施形態において、ソフトウェアが組み込まれた構成装置は、部品装着機2の制御装置50である構成とした。これに対して、構成装置は、部品装着機2を構成するものであれば、制御装置50の他に、例えば基板搬送装置10や装着ヘッド33などであってもよい。さらに、実施形態において、管理装置70は、対基板作業機である部品装着機2を管理の対象とした。これに対して、管理装置70は、部品装着機2以外の対基板作業機(印刷機、検査機、シールド装着装置など)を対象としてもよい。
【0058】
また、管理装置70は、複数の生産ラインL1-L3について同一の生産ラインであれば共通のバージョンが指定される構成とした。これに対して、管理装置70は、上記のように生産ラインごとに管理する他に、対基板作業機ごとにバージョンが異なることが許容されるように管理するようにしてもよい。また、管理装置70は、生産ラインごとの一斉管理と対基板作業機ごとの個別管理とを複合的に行い、これらを適宜切り換えてもよい。これにより、対基板作業機の管理性をより向上できる。
【符号の説明】
【0059】
2:部品装着機(対基板作業機)、 50:制御装置(構成装置)、 51:第一起動領域、 52:第二起動領域、 70:管理装置、 71:記憶装置、 72:バージョン指定部、 73:更新部、 90:基板、 M1:生産計画、 M2:バージョン情報、 M3:機能情報、 M4:適用情報、 M5:バージョン適用計画
図1
図2
図3
図4
図5