(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079528
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】シャフトの有効ワーキング長を調整可能な装置を備えるシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/018 20060101AFI20220519BHJP
【FI】
A61B1/018 512
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042524
(22)【出願日】2022-03-17
(62)【分割の表示】P 2020541953の分割
【原出願日】2019-04-09
(31)【優先権主張番号】62/655,979
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フォラン、マーティン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】マクナーン、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】モンタギュー、マシュー
(57)【要約】
【課題】内視鏡のワーキングチャネルに対して有効ワーキング長を調整可能なシャフトを有する装置を備えるシステムを提供すること。
【解決手段】内視鏡(320)と装置(300)とを備えるシステムであって、装置(300)は、管状の遠位部材(304)と、管状の延長部材(310)と、管状の近位部材(302)と、近位部材(302)から遠位方向に延出し、内視鏡(320)のワーキングチャネルに収容され得るシャフト(330)とを備える。近位部材(302)は、延長部材(310)の近位端の内側にスライド可能に配置されておりかつシャフト(330)の調整可能有効ワーキング長に対応する目的位置へとテレスコピック式に調整可能である。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーキングチャネルを有する内視鏡と、装置とを備えるシステムであって、
前記装置は、
管状の遠位部材であって、当該遠位部材を貫通する管腔を含む前記遠位部材と、
管状の延長部材であって、近位端と、前記遠位部材の周りに配置される遠位端と、当該延長部材を貫通する管腔とを含む前記延長部材と、
管状の近位部材であって、当該近位部材を貫通する管腔を含む前記近位部材と、
前記近位部材から遠位方向に延出し、前記ワーキングチャネルに収容され得るシャフトと、
を備え、
前記近位部材は、前記延長部材の前記近位端の内側にスライド可能に配置されておりかつ前記シャフトの調整可能有効ワーキング長に対応する目的位置へとテレスコピック式に調整可能である、システム。
【請求項2】
前記遠位部材の遠位端にコネクタをさらに備え、前記コネクタは、前記遠位部材の前記管腔、前記近位部材の前記管腔および前記延長部材の前記管腔を、前記内視鏡の近位端に流体接続するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記シャフトの前記調整可能有効ワーキング長は、前記コネクタから前記シャフトの遠位末端までの前記シャフトの長さである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記シャフトは、前記延長部材の前記管腔を通ってそして前記遠位部材の前記管腔を通って延在し、前記内視鏡の前記ワーキングチャネルを通して挿入可能であり、
前記シャフトの前記調整可能有効ワーキング長は、前記シャフトが前記ワーキングチャネルの遠位端を越えて所定距離だけ延出可能であるようなものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記目的位置において前記近位部材および前記延長部材を互いに対して固定するように構成されたロック用アセンブリをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記目的位置は、前記ロック用アセンブリの少なくとも1つの所定の固定位置を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ロック用アセンブリは、前記近位部材の周りの1つ以上の突出部と、前記延長部材に沿った1つ以上の開口部とを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上の突出部と前記1つ以上の開口部とは複数の所定の目的位置において前記近位部材と前記延長部材とを互いに対して固定するように位置合わせ可能である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の所定の目的位置は、予め決められた前記シャフトの複数の有効ワーキング長に対応する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記1つ以上の開口部は、複数の目的位置に対応する、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記1つ以上の突出部は、前記近位部材を前記延長部材から係合解除するために圧縮可能なボタンを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記所定距離は、約8センチメートルである、請求項4に記載のシステム。
【請求項13】
前記管状の延長部材は、前記管状の遠位部材の周りに取り外し可能に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記管状の近位部材と前記管状の遠位部材とは同軸である、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療装置の分野に関し、特には、シャフトを有する装置であって、当該シャフトの有効ワーキング長を当該装置のコネクタおよび/または内視鏡のワーキングチャネルに適合可能である前記シャフトを有する装置およびその使用方法、例えばステントを送達するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療装置は、患者内の特定の治療部位に届くようにおよび/または特定の補助医療装置(例えば内視鏡)との互換性を持つように、(例えば送達カテーテルのシャフトなどの)所定長さの複数の部品を有することがある。所定長さのシャフトを有する医療装置の製造は、他の患者の治療部位や、互換性を持つように設計されていない他の補助医療装置ではうまく機能しない場合がある(例えば他のタイプの内視鏡や他の患者の体管腔など)。例えば、或る医療装置は、それが適合するように設計されていない内視鏡に取り付けられることがあり、当該医療装置(例えば送達カテーテル)のシャフトの長さが当該内視鏡のワーキングチャネルから遠位方向に延出することがあり、こうした場合、当該装置および/またはシステムが意図したとおりに動作できないかまたは全く動作できないこととなる。例えば、カテーテルシャフトの遠位末端が超音波内視鏡の端部から遠位方向に延出すると、超音波での画像化ができない場合がある。他の異なる補助医療装置との互換性を持つように他の異なる構造を有する複数の代替医療装置を設計および製造するには、開発コストおよび在庫コストの過度の追加が必要になる場合がある。さらには、単に複数の補助装置と互換性を持たせるために、同じ医療装置の別のバージョンを購入する必要があるため、マーケティングの魅力が失われる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、装置のコネクタおよび/または内視鏡のワーキングチャネルに対して有効ワーキング長を調整可能なシャフトを有する装置およびシステムなどの、複数の内視鏡の複数の異なるワーキングチャネルとの互換性を有する、装置、および/または、システム、及びその使用を提供することが望まれることがある。これらの事項を考慮すると本開示の改善は有利であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、様々な実施形態において、装置のコネクタおよび/または内視鏡のワーキングチャネルに対して有効ワーキング長を調整可能なシャフトを有する装置、およびその使用方法を含むことがある。シャフトは、患者内でワーキングチャネルの遠位端から所定距離だけ延出することがある。前記所定距離は、超音波を介して治療部位をユーザに表示するための超音波内視鏡の機能発揮領域内であり得る。長く延出するカテーテルの遠位端長さは、処置するための超音波内視鏡の機能発揮領域を越えることがあるが、延出する遠位端長さがこれよりも短い場合には、ステントの挿入、留置、および送達を適切にできない場合がある。
【0005】
一態様では、装置は、それを貫通する管腔を含む管状の遠位部材を含んでよい。管状の延長部材は、近位端と、前記遠位部材の周りに配置される遠位端と、それを貫通する管腔とを含んでよい。管状の近位部材は、それを貫通する管腔を含んでよい。シャフトは、前記管状の近位部材から遠位方向に延出してよい。前記近位部材は、前記延長部材の近位端の内側にスライド可能に配置されてよく、前記シャフトの調整可能有効ワーキング長に対応する目的位置へとテレスコピック式に調整可能であってよい。コネクタは、前記遠位部材の遠位端にあってよい。前記コネクタは、前記遠位部材の前記管腔、前記近位部材の前記管腔および前記延長部材の前記管腔を、内視鏡のワーキングチャネルの近位端に流体接続するように構成されてよい。前記シャフトは、前記延長部材の前記管腔を通ってそして前記遠位部材の前記管腔を通って延在し、前記内視鏡の前記ワーキングチャネルを通して挿入可能であってよい。前記シャフトの前記調整可能有効ワーキング長は、前記シャフトが前記ワーキングチャネルの前記遠位端を越えて所定距離だけ延出可能であるようなものであってよい。前記シャフトの前記調整可能有効ワーキング長は、前記コネクタから前記シャフトの遠位末端まで測定したシャフトの長さであってよい。前記装置は、前記目的位置において前記近位部材および前記延長部材を互いに対して固定するように構成されたロック用アセンブリをさらに含んでよい。前記目的位置は、前記ロック用アセンブリの少なくとも1つの所定の固定位置を含んでよい。前記ロック用アセンブリは、前記近位部材の周りの1つ以上の突出部と、前記延長部材に沿った1つ以上の開口部とを含んでよい。前記突出部と前記開口部とは複数の所定の目的位置において前記近位部材および前記延長部材を互いに対して固定するように位置合わせ可能であってよい。前記複数の所定の目的位置は、予め決められた前記シャフトの複数の有効ワーキング長に対応してよい。前記ロック用アセンブリは、複数の目的位置に対応する複数の開口部であって、前記シャフトの複数の所定の有効ワーキング長を規定する前記複数の開口部を備えてよい。前記1つ以上の突出部は、前記近位部材を前記延長部材から係合解除するために圧縮可能なボタンを備えてよい。
【0006】
別の態様では、システムは、ワーキングチャネルを有する内視鏡を含んでよい。前記システムは、それを貫通する管腔を含む管状の遠位部材を有し得る装置を含んでよい。前記装置は、近位端と、前記遠位部材の周りに配置される遠位端と、それを貫通する管腔とを含む管状の延長部材を含んでよい。前記装置は、それを貫通する管腔を含む管状の近位部材を含んでよい。シャフトは、前記近位部材から遠位方向に延出してよく、前記ワーキングチャネルに収容可能であってよい。前記近位部材は、前記延長部材の近位端の内側にスライド可能に配置されてよく、前記シャフトの調整可能有効ワーキング長に対応する目的位置へとテレスコピック式に調整可能であってよい。遠位部材の遠位端にコネクタがあってもよい。前記コネクタは、前記遠位部材の前記管腔、前記近位部材の前記管腔および前記延長部材の前記管腔を、内視鏡のワーキングチャネルの近位端に流体接続するように構成されてよい。前記シャフトの前記調整可能有効ワーキング長は、前記コネクタから前記シャフトの遠位末端まで測定したシャフトの長さであってよい。前記シャフトは、前記延長部材の前記管腔を通ってそして前記遠位部材の前記管腔を通って延在してよい。前記シャフトは、前記内視鏡の前記ワーキングチャネルを通して挿入可能であってよい。前記シャフトの前記調整可能有効ワーキング長は、前記シャフトが前記ワーキングチャネルの前記遠位端を越えて所定距離だけ延出可能であるようなものであってよい。前記システムは、前記目的位置において前記近位部材および前記延長部材を互いに対して固定するように構成されたロック用アセンブリを含んでよい。前記目的位置は、前記ロック用アセンブリの少なくとも1つの所定の固定位置を含んでよい。
【0007】
別の態様において、患者を治療する方法は、内視鏡のワーキングチャネルを通して患者に医療装置を挿入することを含んでよい。前記装置は、前記ワーキングチャネルに沿って遠位方向に延出するシャフトを有してよい。前記装置は、前記シャフトが前記ワーキングチャネルの遠位端から所定距離だけ延出するように、前記シャフトの調整可能有効ワーキング長に対応する目的位置へとテレスコピック式に調整可能であってよい。前記装置は、管状の遠位部材を含んでよい。前記装置は、前記遠位部材の周りに配置される管状の延長部材を含んでよい。前記装置は、前記シャフトに接続される管状の近位部材を含んでよい。前記近位部材は、前記延長部材の内側にスライド可能に収容されてよい。前記シャフトは、前記遠位部材を通して並進可能であってよい。前記装置は、コネクタを含むことができ、前記コネクタは、内視鏡に対する遠位部材の動きを固定するために前記ワーキングチャネルに取り付け可能であってよい。前記装置は、前記目的位置にロックされてよい。
【0008】
本開示の非限定的な実施形態を添付の図面を参照して例として説明する。なお、添付の図面は例示であり縮尺が一定でないことがある。図面では図示された同一またはほぼ同一の各部材を通常同じ番号で表す。明確にするために、すべての構成要素がすべての図にラベル付けされているわけではなく、当業者が開示を理解できるようにするために、例示が必要ではない各実施形態の構成要素が全て示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ユーザが内視鏡に接続された固定長の装置を操作する例を示す図。
【
図3A】
図3Aは、本開示の一実施形態による内視鏡に接続された装置であって、当該装置の或る調整可能長に対応する位置にある当該装置の正面図。
【
図4A】
図4Aは、本開示の一実施形態による内視鏡に接続された
図3Aおよび
図3Bの装置であって、当該装置の或る調整可能長に対応する別の位置にある当該装置の正面図。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態による、内視鏡に接続された装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
本開示は、説明する特定の実施形態に限定されない。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定を意図するものではない。特に定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語は、本開示の属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0011】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その文脈がそうでないと特に明示しない限り、複数形も含むことを意図する。本明細書で使用する場合、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」などの用語は、記載した特徴、領域、ステップ、要素、および/またはコンポーネントの存在を指すが、他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネント、および/またはそれらの集合が存在したり追加することを排除しない。
【0012】
本明細書で使用する場合、「および」は、その文脈がそうでないと特に明示しない限り、そのように併用される構造、構成要素、特徴などを含み、「または」は、そのように併用される複数の構造、複数のコンポーネント、複数の構造などの一つのまたは他方を、その文脈がそうでないと特に明示しない限り、単独で任意の組み合わせと数をもって含む。
【0013】
本明細書で使用する場合、「遠位」という用語は、装置を患者に導入するときに医療専門家から最も遠い端を指し、「近位」という用語は、装置を患者に導入するときに医療専門家に最も近い端を指す。
【0014】
本明細書では、すべての数値は、明示的に示されているかどうかにかかわらず、「約」という用語で修飾されていると想定されている。「約」という用語は、数値の文脈において、一般に、列挙された値と同等である(すなわち同じ機能または結果を有する)と当業者が見なすであろう数値の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に四捨五入された数値を含むことができる。「約」という用語の他の使用(例えば数値以外の文脈)は、特に明示しない限り、明細書の文脈から理解され文脈と一致する通常の慣習的な定義を持っていると見なされる。
【0015】
端点による数値範囲の記述は、両終点を含めた当該範囲内のすべての数値が含まれる(例えば1~5には1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5が含まれる)。
本明細書における「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明する実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示すが、すべての実施形態に当該特定の機能、構造、または特性が含まれているとは限らない。さらに、それらのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が一実施形態に関連して説明されている場合、そうでないと特に明示しない限り、明示的であろうとなかろうと、他の実施形態に関連するそのような特徴、構造、または特性に影響することは当業者に当然のことである。つまり、特定の組み合わせで明示的に示されていない場合でも、以下に説明する様々な個々の要素は、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成したり、説明した実施形態を補完および/または強化するために互いに組み合わせたりまたは構成可能であると考えられる。
【0016】
本開示の実施形態は、装置、システム、それらの使用方法であって、当該装置のコネクタおよび/または他の異なる内視鏡のワーキングチャネルに当該装置のシャフトの有効ワーキング長を適合できる、装置、システム、それらの使用方法を含む。患者の他の異なる治療部位に延在するようにおよび/または他の異なる補助医療装置(例えば内視鏡)との互換性を有するように設計され得る医療装置(例えばカテーテル)の実施形態をここで説明する。
【0017】
本開示全体を通じて内視鏡を参照するが、調整可能有効ワーキング長のシャフトを有する本開示の医療装置は、当該医療装置が挿通するとともに互換性を有する必要のある、所与の長さの「ワーキングチャネル」を有する他の種類の補助医療装置と併せて有用であり得る。
【0018】
例として超音波内視鏡を使用する場合、自己拡張型ドレナージステントの送達用の送達カテーテルを使用することができる。ステント送達装置は、超音波内視鏡と接続されてそれと共に動作するように設計され得る。ドレナージステントの体内留置は、超音波ガイド下で、ステントを運ぶカテーテルを第1の体管腔(例えば胃腸管)の壁から隣接する管腔(例えば偽嚢胞)に挿入し、ステントの遠位保持部材を展開することによって実行できる。次に、カテーテルを後退させ、近位保持部材を胃腸管(例えば胃)内で展開され得る。こうした超音波処置は、超音波内視鏡を使用して実行することができ、送達装置のシャフトが当該超音波内視鏡を通して挿入される。
【0019】
超音波内視鏡のワーキングチャネルは、通常、特定の長さを有し、例えば約125cmから約130cmであり、送達カテーテルまたは装置は、通常約137cmから約138cmのシャフト長を有し、典型的には当該ワーキングチャネルの全長を貫通し、約7.5cm~約8.5cmの当該カテーテルの遠位端が当該ワーキングチャネルの遠位端から患者内に所定距離だけ延出する。
【0020】
この所定距離は、この例では、超音波を介してカテーテル末端とステントとを含めた治療部位をユーザに表示するための超音波内視鏡のワーキング領域内であり得る。このワーキング領域よりも長く延出するカテーテルの遠位端長さは、処置するための超音波内視鏡の機能発揮領域(functioning range)を越えることがあるが、遠位端長さがこのワーキング領域よりも短く延出する場合には、ステントの挿入、留置、および送達を適切にできない場合がある。
【0021】
図1を参照すると、ドレナージステント送達用の、上記説明に従う装置および超音波内視鏡の例が示されている。この装置140は超音波内視鏡130に接続されてユーザ150により操作される。この装置140は、ルアーロックフィッティングであるコネクタ142を介して超音波内視鏡130に接続され、それにより、装置140は超音波内視鏡130に対してロック位置とされる。ユーザ150は、片方の手で超音波内視鏡130を操作しながら、他方の手で装置140を操作することができる。装置140のシャフトは、装置140のハンドルから遠位方向に延出し、超音波内視鏡130のワーキングチャネルを通り、超音波内視鏡130の遠位端から所定距離だけ延出する。ユーザによる超音波内視鏡に対する装置140の移動を通じて前記所定距離が近位方向または遠位方向に変化しないように、装置140は超音波内視鏡130を伴って前記ロック位置にあるとともに設定シャフト長を有する。装置140のハンドル146は、当該装置のシャフトの遠位末端を超音波内視鏡で視覚化しながらステントを送達する処置中に順次作動され得る。
【0022】
医療専門家は、所定のワーキングチャネル長を有する特定の補助医療装置(例えば超音波内視鏡)用に設計された
図1の装置などの医療装置を、他の異なるワーキングチャネル長を有する他の異なる補助医療装置(例えば直接撮像内視鏡や他の異なるブランドや構成の内視鏡)と共に使用することを望む場合がある。もしユーザが当該装置を他の異なる内視鏡に接続すると、この装置の機能部分(例えばカテーテルシャフトの長さ部分)は、処置の必要性を失うことがある。例えば、或る医療装置のコネクタからシャフトの遠位末端(例えば内視鏡に挿通した後、装置をワーキングチャネルの近位端に接続するためのルアーロックコネクタ)まで測定した当該医療装置のシャフトのワーキング長は、1つの長さの内視鏡に対しては「有効」のことがあるが、様々な他の内視鏡の異なる長さの複数のワーキングチャンネルに対しては有効でない場合がある。特には、医療装置が内視鏡とともにユーザの片手で操作可能であるように、または、医療装置が部分的にまたは不意に内視鏡から引き出たり延びたりしないように、内視鏡に対して医療装置をロックする必要がある場合やそれが望ましい場合など、シャフトを内視鏡を越えて延出させる距離の変更のためにカテーテルの全体が内視鏡に対して移動され得ない場合である。
【0023】
図2Aを参照すると医療器具および内視鏡が示されており、装置挿通用の、内視鏡220を貫通するワーキングチャネルを有する内視鏡220が含まれる。ボストンサイエンティフィック社によって製造されたAXIOS(商標)装置としてここに示される例示的なステント送達装置200は遠位端を含んでおり、その遠位端から遠位方向にシャフト230が延出する。シャフト230は、装置200のコネクタ208が内視鏡220の近位端222に接続された状態で、ワーキングチャネルに収容され得る。内視鏡220は、送達装置200との互換性を有しており、シャフト230は内視鏡220の遠位端224から遠位方向に所定距離だけ延出することができる。
図2Bを参照すると、
図2Aの同じ装置200が、より長いワーキングチャネルを有する他の異なる内視鏡240に接続されている。内視鏡220は送達装置200との互換性を有するが、シャフト230は、
図2Aにあるような、内視鏡240の遠位端244から遠位方向に同様の所定距離だけ延出するのに十分な長さではない。
【0024】
図3Aおよび3Bは、本開示の一実施形態を示しており、これには、医療装置のシャフトの有効ワーキング長を、他の異なる長さを有する様々なワーキングチャネルに適合させる能力を有する、装置と、内視鏡を含む装置用のシステムとが含まれる。このシステムは、患者に挿入される内視鏡320であって、装置挿通用の、内視鏡320を貫通するワーキングチャネルを有する内視鏡320が含まれる。装置300は、それを貫通する管腔を含む管状の遠位部材304を含む。また、この装置は、近位端312と、遠位端314と、それを貫通する管腔とを含む管状の延長部材310を有する。遠位端314は、遠位部材304の周りに配置される。この装置は、それを貫通する管腔を含む管状の近位部材302を有する。管状の近位部材302は、管状の遠位部材304と同軸である。医療装置300は、管状の近位部材302から遠位方向に延出し遠位部材304を挿通するシャフト330を含む。シャフト330は、内視鏡320のワーキングチャネルを貫通するように挿入可能である。遠位部材304の遠位端に配置されたコネクタ308は、内視鏡320の近位端に接続するように構成される。近位部材302は、延長部材310の近位端312の内側にスライド可能に配置され、延長部材310に対してテレスコピック式に調整可能であり、近位部材302は、シャフト330の調整可能ワーキング長に対応する目的位置へとスライドされ得る。
図3Aおよび
図3Bの装置は、複数の突出部318と、複数の開口部316と、複数のばね319とを含むロック用アセンブリとともに示されている。複数の突出部318および複数のばね319は、装置300の長手方向軸に垂直な平面内において近位部材302の周りに配列され、複数の開口部は延長部材310に沿って配列される。ロック用アセンブリの突出部318と開口部316とは複数の所定の目的位置において近位部材302と延長部材310とを互いに対して固定するように位置合わせ可能である。図示されている装置300は、突出部318が開口部316から延出し、遠位部材304と近位部材302との間にギャップを有する、一つの目的ロック位置にある。しかしながら、内視鏡320を通って延在するシャフト330は、内視鏡320の遠位端を越えて遠位方向に延出しない。内視鏡320内のシャフト330の末端の位置は、内視鏡320を通してユーザからは視認できず、患者内において役立たないことがある。
【0025】
図4Aおよび
図4Bは、コネクタ408を介して内視鏡420に接続された装置400の遠位部材404を伴った
図3Aおよび3Bのシステムを示す。図示した延長部材は、
図3Aおよび
図3Bにおける目的位置とは異なる目的位置にある。ロック用アセンブリの突出部418は、延長部材410の開口部416に圧入されており、装置400の近位部材402が延長部材410および遠位部材404に対して遠位方向にスライドでき、遠位部材404と近位部材402との間のギャップを埋めつつコネクタとシャフト430の遠位末端との間のシャフト430の有効長を延長できるようになっている。ロック用アセンブリは、突出部418を、ばね419に抗して延長部材410内へ、延長部材の管腔の内面の内側へ、そしてそこから脱し近位部材402の内側へと圧縮することによって、機能する。次に、近位部材402をスライドさせて、突出部418を別の目的位置に対応する別の開口部416の組と係合させる。
図4Aおよび
図4Bに示すように、近位部材402は、ロック用アセンブリの突出部418が
図3Aおよび
図3Bのものとは異なる開口部416の組と位置合わせされるように、別の目的位置に向けて遠位部材404に対して遠位方向にスライドされている。
図4Aおよび
図4Bの目的位置は、シャフト430を内視鏡420のワーキングチャネルの遠位端から遠位方向に外に所定距離だけ前進させる。シャフト430は、ルアーロックおよびコネクタ405に対してスライド可能である。この装置は、突出部418、近位部材402、およびシャフト430を遠位方向に動かすことによって、
図3Aおよび
図3Bの位置から
図4Aおよび
図4Bの位置に移動され得る。シャフト330および430の有効ワーキング長は、
図3A、
図3B、
図4Aおよび
図4Bの間で調整される。コネクタ405からシャフト430の遠位末端まで測定したシャフト430の有効ワーキング長は、複数の開口部430の組の間のギャップ空間に等しい距離だけ、シャフト430を遠位方向に延出することによって増加し、これによって、当該遠位末端がワーキングチャネルの遠位端を越えて所定の所望距離だけ延出するようになる。シャフト430がこの位置にあると、シャフト430の遠位末端の視認および操作が可能になる。
【0026】
図5を参照すると、本開示の一実施形態に従う、シャフトの有効ワーキング長をワーキングチャネルに適合させることのできるシステムが図示されており、ユーザの手指や親指で操作され得る第1のハンドル501および第2のハンドル502を有する装置500を含む。この装置500は、内視鏡520に接続可能な遠位部材510を含む。シャフト530の端部におけるエンドエフェクタまたは送達機構(例えばステント送達用)は、第1のハンドル501に対して第2のハンドル502を動かす(例えば第2のハンドル502を引くまたは押す)ことによって関節運動され得る。近位部材としての第1のハンドル501は、例えば、突出部518を、遠位部材510の管腔の内面内へ、そしてそこから脱するように圧縮することによって第1のハンドル501を遠位部材510からアンロックすることにより、遠位部材510に対してスライド可能になる。加えてまたは代替として、突出部518が開口部516と係合していない限り、ノブ付きねじ517を緩めることおよび締めることで、第1のハンドル501を遠位部材510に対してそれぞれアンロックおよびロックすることができる。ユーザは、ノブ付きねじ517を締めて、第1のハンドル501に対して遠位部材510を係合させロックできる。ノブ付きねじ517には、所定のロック位置がなく(つまり、突出部518に対する開口部516とは異なり)、突出部518および開口部516と比較して、有効ワーキング長の調整の分解能が高くなる。装置500は、特定の内視鏡用の複数の所定のロック位置に対応する複数の開口部516を有することができるが、ユーザは、ノブ付きネジ517を使用して装置500を調整しカスタム有効ワーキング長に対応する目的位置に固定することによって、事前設定された開口部516によって提供されるものとは異なる長さの内視鏡のワーキングチャネルにシャフト530のワーキング長を適合させてロックすることができる。
【0027】
様々な実施形態では、ロック用アセンブリは、装置内の事前設定された開口部に対応する突出部(例えば、圧縮可能ボタン、戻り止めなど)を含む。突出部は、延長部材、近位部材、および/または遠位部材などの装置の一部の管腔の内面に完全に進入してこれを通過するように、半径方向に圧縮することができる。圧縮された突出部は、装置の少なくとも1つの部材と他の部材との係合を解除し、1つ以上の部材および突出部を、1つ以上の他の部材に対してスライドできるようにし、シャフトのワーキング長を調整する。装置の有効ワーキング長を調整すると、内視鏡のワーキングチャネルの遠位端から延出するシャフトの所定距離が変化することがある。いくつかの実施形態では、ロック用アセンブリは、多数の目的位置に対応する多数の事前設定された開口部を含み得る。ロック用アセンブリのこの多数の位置は、複数の調整可能有効ワーキング長および/またはシャフトの複数の所定距離を規定し得る。開口部および目的位置は、ワーキングチャネルの長さが異なる複数の内視鏡などの一群の補助装置とともに使用するのに必要な複数の既知の長さに対応し得る。各開口部は、または開口部の組は、内視鏡のタイプに対応し得る。突出部は、シャフトの適切な調整可能有効ワーキング長を達成するために、使用されている内視鏡に対応する開口部と係合し得る。シャフトの有効ワーキング長は、内視鏡のワーキングチャネルの遠位端からシャフトを所定長さ延出させるものであり得る。例えば、開口部の3組が、装置の延長部材および近位部材の3つの所定の固定位置に対応することができ、ひいては、複数の内視鏡の対応する複数のワーキングチャネルまたは本開示の装置と共に使用される他の補助装置のワーキングチャネルと互換性を有する装置の3つの所定の有効ワーキングシャフト長に対応し得る。複数の目的位置に対応するマークなどの視覚表示子を部材上に設けることができる。突出部および開口部を有するロック用アセンブリの代替として、他の実施形態では、遠位部材、延長部材および近位部材のうちの1つまたは複数は、ファスナーを含むことができ、当該ファスナーは、互いに係合するように構成された1つの部材上の第1の要素と別の部材上の第2の要素とを有することができる。
【0028】
本明細書に記載したまたは本開示の範囲内にある様々な実施形態では、内視鏡の遠位端からのシャフトの所定距離は、約7.5cmから約8.5cmの範囲であり得る。装置の調整可能有効ワーキング長は、最小で約0cm、最大で約2cmであり得る。延長部材の管腔は、近位部材のおよび/または遠位部材の外径と実質的に一致する直径を有し得る。
【0029】
本明細書に記載したまたは本開示の範囲内にある様々な実施形態では、延長部材、近位部材、および遠位部材は、様々な高分子材料および/または金属材料を備えることができる。当該材料には、アルミニウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばデュポン社から入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えばポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル-エステル(例えばDSMエンジニアリングプラスチックス社から入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテル系またはエステル系共重合体(例えばブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタル酸エステル、および/または他のポリエステルエラストマー、例えばデュポン社から入手可能なHYTREL(登録商標))、ポリアミド(例えばバイエル社から入手可能なDURETHAN(登録商標)またはエルフアトケム社から入手可能なCRISTAMID(登録商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えばPEBAX(登録商標)の商品名で入手可能)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex(登録商標)高密度ポリエチレン、Marlex(登録商標)低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(REXELL(登録商標)など)、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えばKEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(EMSアメリカングリロン社から入手可能なGRILAMID(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、および/またはポリ塩化ビニリデン(PVdC)を含むことができる。材料は、患者内の医療装置および内視鏡の前進および後退に係る力に耐えるように選択することができる。
【0030】
本明細書に記載したまたは本開示の範囲内にある様々な実施形態では、コネクタは、オスまたはメスのルアーフィッティングであってよい。コネクタは、遠位部材の遠位端にあってよく、遠位部材の管腔、近位部材の管腔および延長部材の管腔を、内視鏡のワーキングチャネルの近位端に流体接続するように構成されてよい。コネクタは、回転式ルアーナットおよび/または巻き式ルアーフィッティングを含んでよい。コネクタは、様々な内視鏡や医療装置に取り外し可能に接続して締め付けることができる。
【0031】
本明細書に記載したまたは本開示の範囲内にある様々な実施形態では、患者を治療する方法は、内視鏡のワーキングチャネルを通して患者に医療装置を挿入することを含んでよい。この装置は、ワーキングチャネルに沿って遠位方向に延びるシャフトを有してよい。この装置は、シャフトの調整可能有効ワーキング長に対応する目的位置にテレスコピック式に調整することができ、それにより、シャフトは、ワーキングチャネルの遠位端から所定距離だけ延出してよい。この装置は、管状の遠位部材を含んでよい。この装置は、遠位部材の周りに配置される管状の延長部材を含んでよい。この装置は、シャフトに接続される管状の近位部材を含んでよい。近位部材は、延長部材の内側にスライド可能に収容されてよい。シャフトは、遠位部材を通して並進可能であってよい。装置はコネクタを含んでよい。コネクタは、遠位部材の動きを固定するためにワーキングチャネルに取り付け可能であってよい。装置は、目的位置にロックされてよい。
【0032】
本明細書に開示され特許請求されるすべての装置および/または方法は、本開示に照らして、過度の実験なしに作成および実行することができる。本開示の装置および方法を特定の実施形態に関して説明したが、本開示の概念、技術的思想および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の装置および/または方法およびステップまたはステップのシーケンスを変形し得ることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の代替物および変形は、本開示の範囲内にあると見なされる。