(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079534
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】経路探索方法及びクレーンの動作パターンの作成方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20220519BHJP
G05D 3/10 20060101ALN20220519BHJP
【FI】
B66C13/22 M
B66C13/22 A
B66C13/22 Q
G05D3/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043254
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2018145071の分割
【原出願日】2018-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】593005644
【氏名又は名称】JFE物流株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】續木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】八尋 和広
(57)【要約】
【課題】クレーンの動作パターンを吊荷の振れ止めを行いつつ探索した経路に適用させることができるクレーンの動作パターンの作成方法を提供する。
【解決手段】吊荷の加速区間の巻上げ可能量(ΔH1)及び吊荷の減速区間の巻下げ可能量(ΔH2)を算出し、吊荷の最大巻高さ(H
max)及び巻上げ可能量(ΔH1)に基づいて、吊荷の走行開始高さ(H1´=H
max-ΔH1)を算出し、最大巻高さ(H
max)及び巻下げ可能量(ΔH2)に基づいて、吊荷の走行終了高さ(H2´=H
max-ΔH2)を算出する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの巻方向をZ方向、前記クレーンの走行方向をX方向とするとき、XZ平面内の出発位置から目標位置まで吊荷が移動する経路を探索し、
前記経路に基づいて、前記吊荷の最大巻高さ、前記クレーンのX方向の加速区間における前記吊荷の巻上げ可能量、及び前記クレーンのX方向の減速区間における前記吊荷の巻下げ可能量を算出し、
前記最大巻高さ及び前記巻上げ可能量に基づいて、前記吊荷の走行開始高さを算出し、
前記最大巻高さ及び前記巻下げ可能量に基づいて、前記吊荷の走行終了高さを算出するクレーンの動作パターンの作成方法。
【請求項2】
前記加速区間における障害物最大高さを求め、
前記減速区間における障害物最大高さを求め、
前記加速区間における前記障害物最大高さが前記走行開始高さよりも高いとき、前記走行開始高さを補正し、
前記減速区間における前記障害物最大高さが前記走行終了高さよりも高いとき、前記走行終了高さを補正することを特徴とする請求項1に記載のクレーンの動作パターンの作成方法。
【請求項3】
クレーンの巻方向をZ方向、前記クレーンの走行方向をX方向とするとき、XZ平面内の出発位置から目標位置まで吊荷が移動する経路を探索し、
前記経路に基づいて、前記クレーンのX方向の加速区間で前記吊荷を最大巻高さまで巻き上げ、前記クレーンのX方向の等速区間で前記吊荷の前記最大巻高さを維持し、前記クレーンのX方向の減速区間で前記吊荷を前記最大巻高さから巻き下げるように、前記クレーンの動作パターンを作成し、
前記吊荷が前記最大巻高さとなった区間内で前記クレーンの横行動作が完了しない場合、前記加速区間における前記吊荷の巻上げ動作及び前記減速区間における前記吊荷の巻下げ動作の少なくとも一方を前記最大巻高さからの垂直巻き動作に補正するクレーンの動作パターンの作成方法。
【請求項4】
クレーンの巻方向をZ方向、前記クレーンの走行方向をX方向とするとき、XZ平面内の出発位置から目標位置まで吊荷が移動する経路を探索する経路探索部と、
前記経路に基づいて、前記吊荷の最大巻高さ、前記クレーンのX方向の加速区間における前記吊荷の巻上げ可能量、及び前記クレーンのX方向の減速区間における前記吊荷の巻下げ可能量を算出し、前記最大巻高さ及び前記巻上げ可能量に基づいて、前記吊荷の走行開始高さを算出し、前記最大巻高さ及び前記巻下げ可能量に基づいて、前記吊荷の走行終了高さを算出する動作パターン作成部と、
を備えるクレーンの動作パターンの作成システム。
【請求項5】
クレーンの巻方向をZ方向、前記クレーンの走行方向をX方向とするとき、XZ平面内の出発位置から目標位置まで吊荷が移動する経路を探索する経路探索部と、
前記経路に基づいて、前記クレーンのX方向の加速区間で前記吊荷を最大巻高さまで巻き上げ、前記クレーンのX方向の等速区間で前記吊荷の前記最大巻高さを維持し、前記クレーンのX方向の減速区間で前記吊荷を前記最大巻高さから巻き下げるように、前記クレーンの動作パターンを作成する動作パターン作成部と、
前記吊荷が前記最大巻高さとなった区間内で前記クレーンの横行動作が完了しないとき、前記加速区間における前記吊荷の巻上げ動作及び前記減速区間における前記吊荷の巻下げ動作の少なくとも一方を前記最大巻高さからの垂直巻き動作に補正する補正部と、
を備えるクレーンの動作パターンの作成システム。
【請求項6】
コンピュータに対して、
クレーンの巻方向をZ方向、前記クレーンの走行方向をX方向とするとき、XZ平面内の出発位置から目標位置まで吊荷が移動する経路を探索するステップと、
前記経路に基づいて、前記吊荷の最大巻高さ、前記クレーンのX方向の加速区間における前記吊荷の巻上げ可能量、及び前記クレーンのX方向の減速区間における前記吊荷の巻下げ可能量を算出するステップと、
前記最大巻高さ及び前記巻上げ可能量に基づいて、前記吊荷の走行開始高さを算出するステップと、
前記最大巻高さ及び前記巻下げ可能量に基づいて、前記吊荷の走行終了高さを算出するステップと、を実行させるクレーンの動作パターンの作成プログラム。
【請求項7】
コンピュータに対して、
クレーンの巻方向をZ方向、前記クレーンの走行方向をX方向とするとき、XZ平面内の出発位置から目標位置まで吊荷が移動する経路を探索するステップと、
前記経路に基づいて、前記クレーンのX方向の加速区間で前記吊荷を最大巻高さまで巻き上げ、前記クレーンのX方向の等速区間で前記吊荷の前記最大巻高さを維持し、前記クレーンのX方向の減速区間で前記吊荷を前記最大巻高さから巻き下げるように、前記クレーンの動作パターンを作成するステップと、
前記吊荷が前記最大巻高さとなった区間内で前記クレーンの横行動作が完了しない場合、前記加速区間における前記吊荷の巻上げ動作及び前記減速区間における前記吊荷の巻下げ動作の少なくとも一方を前記最大巻高さからの垂直巻き動作に補正するステップと、を実行させるクレーンの動作パターンの作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索方法及びクレーンの動作パターンの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クレーンの走行方向の加速区間において吊荷を巻き上げ、クレーンの走行方向の等速区間において吊荷の最大巻高さを維持し、クレーンの走行方向の減速区間において吊荷を巻き下げるクレーンの動作パターンの作成方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の発明によれば、吊荷の巻上げ、吊荷の巻下げをクレーンの走行と同時に行うことができ、吊荷の運搬時間を短縮することができる。また、クレーンの加速時間及び減速時間を吊荷の振れ周期に合わせることで、吊荷の振れ止めを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明においては、クレーンの動作パターンのパラメータを手動により設定している。特許文献1には、クレーンの動作パターンを吊荷の振れ止めを行いつついかにして探索した経路に適用させるかは記載されていない。
【0006】
そこで、本発明の第1の目的は、クレーンの動作パターンを吊荷の振れ止めを行いつつ探索した経路に適用させることができるクレーンの動作パターンの作成方法を提供することにある。
【0007】
さらに、特許文献1の発明において、クレーンの横行動作は、クレーンの走行方向の等速区間(正確にいえば、吊荷の最大巻高さが維持される区間)において行う必要がある。なぜならば、吊荷の横行動作中に吊荷の高さが変わると、吊荷の横行方向の振れ周期が変わり、横行方向の振れ止めに影響が出るからである。
【0008】
しかしながら、特許文献1の発明においては、クレーンの走行方向の等速区間が短い場合、クレーンの走行方向の等速区間中にクレーンの横行動作が完了しないという課題がある。
【0009】
そこで、本発明の第2の目的は、クレーンの走行方向の等速区間中(正確にいえば、吊荷の最大巻高さが維持される区間中)にクレーンの横行動作を完了することができるクレーンの動作パターンの作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の課題を解決するために、第1の発明は、クレーンの巻方向をZ方向、前記クレーンの走行方向をX方向とするとき、XZ平面内の出発位置から目標位置まで吊荷が移動する経路を探索し、前記経路に基づいて、前記吊荷の最大巻高さ、前記クレーンのX方向の加速区間における前記吊荷の巻上げ可能量、及び前記クレーンのX方向の減速区間における前記吊荷の巻下げ可能量を算出し、前記最大巻高さ及び前記巻上げ可能量に基づいて、前記吊荷の走行開始高さを算出し、前記最大巻高さ及び前記巻下げ可能量に基づいて、前記吊荷の走行終了高さを算出するクレーンの動作パターンの作成方法である。
【0011】
第2の課題を解決するために、第2の発明は、クレーンの巻方向をZ方向、前記クレーンの走行方向をX方向とするとき、XZ平面内の出発位置から目標位置まで吊荷が移動する経路を探索し、前記経路に基づいて、前記クレーンのX方向の加速区間で前記吊荷を最大巻高さまで巻き上げ、前記クレーンのX方向の等速区間で前記吊荷の前記最大巻高さを維持し、前記クレーンのX方向の減速区間で前記吊荷を前記最大巻高さから巻き下げるように、前記クレーンの動作パターンを作成し、前記吊荷が前記最大巻高さとなった区間内で前記クレーンの横行動作が完了しない場合、前記加速区間における前記吊荷の巻上げ動作及び前記減速区間における前記吊荷の巻下げ動作の少なくとも一方を前記最大巻高さからの垂直巻き動作に補正するクレーンの動作パターンの作成方法である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、クレーンの動作パターンを吊荷の振れ止めを行いつつ探索した経路に適用させることができる。
【0013】
第2の発明によれば、クレーンの走行方向の等速区間(正確にいえば、吊荷の最大巻高さが維持される区間)が短い場合でも、クレーンの横行動作を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の経路探索方法及び動作パターンの作成方法が適用されるクレーンの斜視図である。
【
図2】クレーンの制御システムのブロック図である。
【
図3】本実施形態の経路探索システム及び動作パターンの作成システムであるコンピュータの機能ブロック図である。
【
図5】マップ作成部が作成するXY平面における置場マップである。
【
図6】マップ作成部が作成するXZ平面における置場マップである。
【
図7】XZ平面における最短時間経路を示す図である。
【
図8】グリッドへの評価値の設定方法を示す図である。
【
図11】巻上げ動作及び巻下げ動作の補正を説明する図である(
図11(a)は巻上げ動作及び巻下げ動作を行う例を示し、
図11(b)は巻下げ動作を垂直巻き動作に補正する例を示し、
図11(c)は巻上げ動作を垂直巻き動作に補正する例を示す。
【
図12】横行可能区間を延長するロジックのフローチャートである。
【
図13】走行方向の加速度パターンのパラメータを説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の経路探索方法及びクレーンの動作パターンの作成方法を詳細に説明する。ただし、本発明の経路探索方法及びクレーンの動作パターンの作成方法は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(経路探索方法)
【0016】
図1は、本実施形態の経路探索方法が適用される移動体としてのクレーンの斜視図である。クレーン1は、レール2に沿ってX方向に走行可能なガータ5と、ガータ5に沿ってY方向に横行可能なトロリ6と、を備える。トロリ6には、ロープ4を介して吊荷としてのコイル3が吊り下げられる。コイル3は、トロリ6によって巻き上げ、巻き下げされ、Z方向に昇降する。
【0017】
図2は、クレーン1の制御システムのブロック図である。11は、コイル3の出発位置から目標位置までの経路を探索し、探索した経路に基づいてクレーン1の動作パターンを作成するコンピュータである。コンピュータ11には、経路探索プログラム及び動作パターン作成プログラムがインストールされる。コンピュータ11は、作成した動作パターンのパラメータをPLC(programmable logic controller)等の制御装置12に伝送する。
【0018】
制御装置12は、受信したパラメータに基づいて加速度パターン及び速度パターンを作成する。制御装置12は、作成した加速度パターン及び速度パターンに基づいて、速度指令をドライバ13に伝送する。ドライバ13は、速度指令に基づいてモータ14に供給する電力を制御する。モータ14には、走行用モータ、横行用モータ、巻用モータがある。
【0019】
15は、コイル3の巻高さ検出装置である。制御装置12には、コイル3の巻高さとコイル3の荷重からコイル3の振れ周期を求めるための振れ周期テーブルが記憶されている。制御装置12は、コイル3の巻高さとコイル3の荷重から求めたコイル3の振れ周期をコンピュータ11に伝送する。
【0020】
16は、クレーン位置検出装置である。制御装置12は、クレーン1が目標位置に近づいたらクレーン1が低速で目標位置に到達するようにクリープ制御を行なう。クリープ制御は公知なので、詳しい説明は省略する。
【0021】
図3は、コンピュータ11の機能ブロック図である。コンピュータ11は、出発位置から目標位置までクレーン1が移動する経路を探索する経路探索部21と、探索した経路に基づいてクレーン1の動作パターンを作成する動作パターン作成部22と、を備える。経路探索部21は、マップ作成部31と、評価値設定部32と、経路決定部33と、を備える。以下に、マップ作成部31、評価値設定部32、経路決定部33を順番に説明する。
【0022】
図4は、倉庫内に置かれたコイル3の斜視図を示す。コンピュータ11には、上位のコイル出荷システムからコイル3を出発位置(図中Fromで示す)から目標位置(図中Toで示す)まで移動させるように指令が入力される。また、コンピュータ11には、上位のコイル出荷システムから障害物として存在するコイル情報(コイル3´の座標・コイル3´の大きさ)が入力される。
【0023】
マップ作成部31は、搬送対象のコイル3の出発位置及び目標位置の座標、並びに障害物として存在するコイル情報から
図4中二点鎖線で示すコイル3の搬送領域の置場マップを作成する。
図5に示すように、置場マップは、搬送領域をXY平面の複数のグリッドにより表したものである。各グリッドは、例えば1辺がPmの正方形の格子状である。各グリッドには、グリッド内に存在するコイル3´の高さ情報が例えば0、2、3、5(m)等の数値で表示される。
【0024】
次に、マップ作成部31は、
図6に示すように、搬送領域をXZ平面の複数のグリッドにより表す。各グリッドは、例えば1辺がPmの正方形の格子状である。各列のグリッドには、コイル3´の最大高さが障害物高さとして表示される。例えば、
図5のXY平面内の4列目のグリッドの障害物の最大高さは3である。このため、
図6のXZ平面内の4列目のグリッドには、障害物高さが3段のグリッドで表される。同様に、
図5のXY平面内の5列目のグリッドの障害物の最大高さは5である。このため、
図6のXZ平面内の5列目のグリッドには、障害物高さが5段のグリッドで表される。
【0025】
評価値設定部32は、XZ平面内の障害物が存在するグリッドに障害物評価値として例えば99999の数値を設定する(これらのグリッドに薄墨を付す)。そして、障害物が存在しないグリッドにクレーン移動可能領域であることを表す評価値0を設定する。
【0026】
次に、
図7に示すように、評価値設定部32は、目標位置(To)のグリッドに評価値1を設定し、クレーン1のX方向(すなわち走行方向)の速度及びZ方向(すなわち巻方向)の速度に基づいて、評価値が0のグリッドに目標位置から当該グリッドまでのクレーン1の移動時間に関連する評価値を設定する。
【0027】
具体的には、
図8に示すように、X方向の速度がVx、Z方向の速度がVzのとき、評価値がxのグリッドにX方向に(左右に)隣接するグリッドにx+P/Vxの評価値を設定し、Z方向に(上下に)隣接するグリッドにx+P/Vzの評価値を設定する。ここでは、P=1mとして、x+1/Vx、x+1/Vzの評価値を設定する。クレーン1のX方向の速度Vxが例えば1.66m/s、クレーン1のZ方向の速度Vzが例えば0.2m/sの場合、X方向に隣接するグリッドにx+0.6の評価値を設定し、Z方向に隣接するグリッドにx+5の評価値を設定する。
【0028】
図7に示すように、これを目標位置(To)のグリッドに隣接するグリッドに対して行い、その後、評価値が設定されたグリッドに隣接するグリッドに対して行い、全てのグリッドに評価値が設定されるまで繰り返す。これにより、目標位置のグリッドに1、目標位置の上隣のグリッドに1+5=6、その上隣のグリッドに6+5=11、その左隣のグリッドに11+0.6=11.6…の評価値が設定される。
【0029】
次に、経路決定部33は、出発位置(From)のグリッドから評価値勾配の低い方向を辿る。すなわち出発位置のグリッドから目標位置のグリッドまで、各グリッドの8近傍のグリッド(各グリッドの上下方向、左右方向及び斜め方向に隣接する8つのグリッド)の中で評価値が自分(当該各グリッド)から最も小さいグリッドを選択する。これにより、障害物を回避しつつ、
図7中斜線で示す最短時間経路10を探索することができる。
【0030】
なお、上記の出発位置のグリッドと目標位置のグリッドを逆にすることもできる。すなわち出発位置からの移動時間に関連する評価値を各グリッドに設定し、目標位置のグリッドから評価値勾配の低い方向を辿ることもできる。
(走行動作パターン作成方法)
【0031】
動作パターン作成部22は、探索された最短時間経路10に基づいてクレーン1の走行方向の動作パターンを作成する。
【0032】
図9に示すように、まず動作パターン作成部22は、探索された最短時間経路10に基づいて、コイル3の最大巻高さH
maxを算出する。次に、動作パターン作成部22は、制御装置12に記録された振れ周期テーブルを用いて、最大巻高さH
max及びコイル3の荷重Wを元に、コイル3の振れ周期T
2,T
3を求める。同様に、初期搬送開始高さH1及びコイル3の荷重Wを元にコイル3の振れ周期T
1を求め、初期搬送終了高さH2及びコイル3の荷重Wを元にコイル3の振れ周期T
4を求める。
【0033】
図9に示すように、加速区間において、時間T
1/2で加速度を零値からαx/2まで一定勾配で増大させ、時間t
upの間、加速度を一定のαxに保持し、時間T
2/2で加速度をαx/2から零値まで減少させれば、加速区間の終了時にコイル3の振れを止めることができる。
【0034】
同様に、減速区間において、時間T
3/2で加速度を零値から-αx/2まで一定勾配で減少させ、時間t
downの間、加速度を一定の-αxに保持し、時間T
4/2で加速度を-αx/2から零値まで増大させれば、減速区間の終了時にコイル3の振れを止めることができる。なお、
図9のt
aは任意の時間に設定される。
【0035】
図9に示すように、t
upの間、コイル3の振れ角は-θ
maxで一定である。このt
upの間、コイル3を巻き上げてもコイル3の振れ角は-θ
maxから変化することがない。このため、t
upの間にコイル3を一定速度で巻き上げる。巻平均速度をVzとすると、t
upの間のコイル3の巻上げ可能量ΔH1は、Vz×t
upとなる。同様に、t
downの間のコイル3の巻下げ可能量ΔH2は、Vz×t
downとなる。
【0036】
次に、動作パターン作成部22は、最大巻高さHmaxから巻上げ可能量ΔH1を引いて、コイル3の走行開始高さH1´(=Hmax-ΔH1)を求める。同様に、最大巻高さHmaxから巻下げ可能量ΔH2を引いて、コイル3の走行終了高さH2´(=Hmax-ΔH2)を求める。
【0037】
次に、動作パターン作成部22は、加速度パターンを元に加速区間を求め、加速区間にある障害物最大高さHm1を求める。同様に、加速度パターンを元に減速区間を求め、減速区間にある障害物最大高さHm2を求める。
【0038】
次に、動作パターン作成部22は、走行開始高さH1´と加速区間における障害物最大高さHm1を比較し、H1´<Hm1のとき、走行開始高さH1´を補正し、H1´=Hm1とする。一方、H1´>Hm1のとき、走行開始高さH1´は補正せず、H1´のままとする。同様に、動作パターン作成部22は、走行終了高さH2´と減速区間における障害物最大高さHm2を比較し、H2´<Hm2のとき、走行終了高さH2´をH2´=Hm2とし、H2´>Hm2のとき、走行終了高さH2´のままとする。これにより、加速区間中にコイル3を巻き上げ、減速区間中にコイル3を巻き下げても、コイル3が障害物に干渉するのを防止できる。
【0039】
次に、動作パターン作成部22は、コイル3の巻高さHmax、走行開始高さH1´、走行終了高さH2´を元に振れ周期を求め、最終的な加速度パターン、速度パターンを作成する。そして、加速度パターンのパラメータ、速度パターンのパラメータを算出する。動作パターン作成部22は、これらのパラメータを制御装置12に伝送する。
(巻上げ動作及び巻下げ動作の補正方法)
【0040】
図10は、クレーン1の走行方向の加速度パターン、速度パターンを示す。クレーン1の横行動作は、クレーン1の走行方向の等速区間(正確にいえば、コイル3の最大巻高さが維持される
図10の横行可能区間)において行う必要がある。なぜならば、コイル3の横行動作中にコイル3の高さが変わると、コイル3の横行方向の振れ周期が変わり、横行方向の振れ止めに影響が出るからである。
【0041】
図11(a)に示すように、横行可能区間が短く、横行可能区間でクレーン1の横行動作が完了しないとき、動作パターン作成部22は、
図11(b)に示すように、減速区間におけるコイル3の巻下げ動作24を垂直巻き動作24´に補正する。すなわち、減速区間においてコイル3の巻下げ動作24を行わず、走行終了時にコイル3を最大巻高さH
maxから垂直に巻き下げる。及び/又は、動作パターン作成部22は、
図11(c)に示すように、加速区間におけるコイル3の巻上げ動作25を垂直巻き動作25´に補正する。すなわち、加速区間においてコイル3の巻上げ動作を行わず、走行開始時に最大巻高さH
maxまで垂直に巻き上げる。このように、コイル3の巻下げ動作及び/又は巻上げ動作を垂直巻き動作に補正することで、横行可能区間を延長することができ、コイル3の横行動作が可能になる。
【0042】
図12は、横行可能区間を延長するロジックのフローチャートである。
図12のフローチャートにおいて、
図13に示す走行方向の加速度パターンのパラメータty、ty1、ty2、ΔH1、ΔH2を使用する。tyは、最大巻高さが維持される時間である。ty1は、走行開始時点から減速区間の最大巻高さが終了する時点までの時間である。ty2は、加速区間の最大巻高さが開始する時点から走行終了時点までの時間である。ΔH1は、加速区間における巻上げ可能量であり、ΔH2は減速区間における巻下げ可能量である。
【0043】
図12に示すように、動作パターン作成部22は、まず横行時間<tyであるかどうかを判断する(S1)。横行時間<tyがyesのとき、巻上げ動作及び巻下げ動作を行う(S2)。横行時間<tyがnoのとき、横行時間≦max(ty1,ty2)かどうかを判断する(S3)。横行時間≦max(ty1,ty2)がnoのとき、巻上げ動作及び巻下げ動作の両方を垂直巻き動作に補正する(S7)。横行時間≦max(ty1,ty2)がyesのとき、ΔH1≧ΔH2かどうかを判断する(S4)。ΔH1≧ΔH2がyesのとき、巻上げ動作のみを行う(S5)。ΔH1≧ΔH2がnoのとき、巻下げ動作のみを行う(S6)。
【0044】
以上に本実施形態の経路探索方法及びクレーンの動作パターンの作成方法を説明した。本発明の経路探索方法及びクレーンの動作パターンの作成方法は、上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまな実施形態に変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、移動体としてのクレーンの最短時間経路を探索しているが、移動体はクレーンに限られることはなく、ロボット、車両等でもよい。
【0046】
上記実施形態では、XZ平面内の最短時間経路を探索しているが、XY平面内の最短時間経路を探索することもできるし、本発明の経路探索方法を3次元に拡張してXYZ空間内の最短経路を探索することもできる。
【0047】
上記実施形態では、最短時間経路に基づいてクレーンの動作パターンを作成しているが、最短経路に基づいてクレーンの動作パターンを作成することもできる。
【0048】
上記実施形態では、
図1に示すクレーンのX方向を走行方向、Y方向を横行方向としているが、Y方向の移動距離がX方向の移動距離よりも長い場合、
図1に示すクレーンのY方向を走行方向、X方向を横行方向とすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1…クレーン(移動体)
3…コイル(吊荷)
10…最短時間経路
11…コンピュータ(経路探索システム、動作パターン作成システム)
21…経路探索部
22…動作パターン作成部
31…マップ作成部
32…評価値設定部
33…経路決定部
From…出発位置
To…目標位置
X方向…第1方向
Z方向…第2方向
Hmax…最大巻高さ
ΔH1…巻上げ可能量
ΔH2…巻下げ可能量
H1´…走行開始高さ
H2´…走行終了高さ
Hm1…加速区間における障害物最大高さ
Hm2…減速区間における障害物最大高さ
24…巻下げ動作
25…巻上げ動作
24´,25´…垂直巻き動作