(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079539
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220519BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B41J2/01 301
A61J3/06 Q
B41J2/01 401
B41J2/01 305
B41J2/01 201
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044176
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2018542414の分割
【原出願日】2017-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2016195009
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016196101
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野 梓
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 保次
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 哲嗣
(72)【発明者】
【氏名】荻本 眞一
(72)【発明者】
【氏名】古水戸 順介
(57)【要約】
【課題】印刷ヘッドのメンテナンスに伴う印刷停止に起因して生産性が低下することを抑える。
【解決手段】外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤を搬送する搬送装置と、搬送される錠剤に対し、錠剤に識別情報を印刷するインクジェット方式の印刷ヘッドと、印刷条件に基づいて錠剤に印刷を行うように、印刷ヘッドを制御する制御装置と、を有し、制御装置は、搬送される錠剤に対して、錠剤の搬送方向と交差する方向であって錠剤の搬送方向と直交する方向でない方向で、かつ、印刷された印刷パターンの向きを搬送方向と平行とするときに用いられるノズルの数よりも、印刷に用いるノズル数が多くなる方向で、印刷パターンを印刷するように印刷ヘッドによる印刷を制御するとともに、識別情報は、錠剤の表面において直線上に複数の文字が並ぶ部分を有するように、印刷ヘッドにより印刷されるよう制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤を搬送する搬送装置と、
複数のノズルを有し、各ノズルから個別に液体を吐出することで、前記搬送装置に搬送される前記錠剤に対し、前記印刷パターンを印刷するインクジェット方式の印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを制御する制御装置と、を有し、
前記印刷パターンは、直線上に複数の文字が並ぶ部分を有し、
前記制御装置は、搬送される前記錠剤に対して、前記錠剤の搬送方向と交差する方向であって前記錠剤の搬送方向と直交する方向でない方向で、かつ、印刷された前記印刷パターンの向きを前記搬送方向と平行とするときに用いられる前記ノズルの数よりも、印刷に用いるノズルの数が多くなる方向で、前記印刷パターンを印刷するように前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項2】
外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤を搬送する搬送装置と、
複数のノズルを有し、各ノズルから個別に液体を吐出することで、前記搬送装置に搬送される前記錠剤に対し、前記印刷パターンを印刷するインクジェット方式の印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを制御する制御装置と、を有し、
前記印刷パターンは、前記錠剤の表面において複数の文字が一方向に並ぶ部分を有し、
前記制御装置は、搬送される前記錠剤に対して、前記錠剤の搬送方向と交差する方向であって、前記印刷ヘッドにおける前記印刷パターンに対応する前記複数のノズルの一端から他端までの間で、前記液体が吐出されないノズルが生じない角度で前記印刷パターンを印刷するように前記印刷ヘッドを制御することを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項3】
前記印刷パターンは、前記錠剤の表面において複数の文字が複数行に並ぶ部分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の錠剤印刷装置。
【請求項4】
前記印刷ヘッドより前記錠剤の搬送方向上流側に配置され、搬送される前記錠剤を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像から、前記錠剤の位置ずれ情報を生成する画像処理装置と、を有し、
前記制御装置は、前記画像処理装置から受け取った前記位置ずれ情報に基づいて、前記錠剤の印刷に用いる前記ノズルを変更して、前記錠剤に対して、前記印刷パターンを印刷するように前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の錠剤印刷装置。
【請求項5】
外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤に対し、直線上に複数の文字が並ぶ部分を有する前記印刷パターンを印刷する印刷方法であって、
前記錠剤の搬送方向と交差する方向であって、前記錠剤の搬送方向と直交する方向でない方向で、かつ、印刷された前記印刷パターンの向きを前記搬送方向と平行とするときに用いられる前記ノズルの数よりも、印刷に用いるノズル数が多くなる方向で、前記印刷パターンを印刷することを特徴とする錠剤印刷方法。
【請求項6】
外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤に対し、複数の文字が一方向に並ぶ部分を有する前記印刷パターンを印刷する印刷方法であって、
複数のノズルを有する印刷ヘッドの前記ノズルから個別に液体を吐出することで、前記錠剤に対し、前記印刷パターンを印刷し、
前記印刷ヘッドによる印刷は、前記錠剤の搬送方向と交差する方向であって、前記印刷ヘッドにおける前記印刷パターンに対応する前記複数のノズルの一端から他端までの間で、前記液体が吐出されないノズルが生じない角度で前記印刷パターンを印刷することによって行われる錠剤印刷方法。
【請求項7】
前記印刷パターンは、前記錠剤の表面において複数の文字が複数行に並ぶ部分を有することを特徴とする請求項5または6に記載の錠剤印刷方法。
【請求項8】
前記印刷ヘッドにより前記錠剤の搬送方向上流側に配置された撮像装置によって、前記錠剤を撮像し、
前記撮像装置により撮像した画像から、前記錠剤の位置ずれ情報を生成し、
前記印刷ヘッドによる印刷は、前記位置ずれ情報に基づいて、前記錠剤の印刷に用いる前記ノズルを変更し、前記錠剤に対して、前記印刷パターンを印刷することを特徴とする請求項6または7に記載の錠剤印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤に文字や記号などの識別情報を印刷するため、インクジェット方式の印刷ヘッドを用いて印刷を行う技術が知られている。この技術を用いる錠剤印刷装置は、コンベアにより複数の錠剤を一列で搬送し、コンベア上方に配置されたインクジェット方式の印刷ヘッドのノズルから、その印刷ヘッド下方を通過する錠剤に向けてインク(例えば可食性インク)を吐出し、コンベア上の錠剤に識別情報を印刷する。
【0003】
この錠剤印刷装置においては、印刷ヘッドのメンテナンスが定期的に行われ、印刷ヘッドは正常な状態に維持されている。通常、印刷ヘッドのメンテナンスが必要となるたび、錠剤の搬送を停止する必要がある。この停止期間中、錠剤に対する印刷が中断されるため、メンテナンスの頻度が高くなればなるほど、また1回のメンテナンスにかかる時間が長くなればなるほど、生産性が低下するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、印刷ヘッドのメンテナンスに伴う印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷装置は、外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤を搬送する搬送装置と、複数のノズルを有し、各ノズルから個別に液体を吐出することで、搬送される前記錠剤に対し、前記錠剤に識別情報を印刷するインクジェット方式の印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、搬送される前記錠剤に対して、前記錠剤の搬送方向と交差する方向であって前記錠剤の搬送方向と直交する方向でない方向で、かつ、印刷された前記印刷パターンの向きを前記搬送方向と平行とするときに用いられる前記ノズルの数よりも、印刷に用いるノズル数が多くなる方向で、前記印刷パターンを印刷するように前記印刷ヘッドによる印刷を制御するとともに、前記識別情報は、前記錠剤の表面において直線上に複数の文字が並ぶ部分を有するように、前記印刷ヘッドにより印刷されるよう制御することを特徴とする。
【0007】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷装置は、外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤を搬送する搬送装置と、複数のノズルを有し、各ノズルから個別に液体を吐出することで、前記搬送装置に搬送される前記錠剤に対し、前記印刷パターンを印刷するインクジェット方式の印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを制御する制御装置と、を有し、前記印刷パターンは、前記錠剤の表面において複数の文字が一方向に並ぶ部分を有し、前記制御装置は、前記錠剤の搬送方向と交差する方向であって、前記印刷ヘッドにおける前記印刷パターンに対応する前記複数のノズルの一端から他端までの間で、前記液体が吐出されないノズルが生じない角度で前記印刷パターンを印刷するように前記印刷ヘッドを制御することを特徴とする。
【0008】
【0009】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷方法は、外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤に対し、直線上に複数の文字が並ぶ部分を有する前記印刷パターンを印刷する印刷方法であって、前記錠剤の搬送方向と交差する方向であって、前記錠剤の搬送方向と直交する方向でない方向で、かつ、印刷された前記印刷パターンの向きを前記搬送方向と平行とするときに用いられる前記ノズルの数よりも、印刷に用いるノズル数が多くなる方向で、前記印刷パターンを印刷することを特徴とする。
【0010】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷方法は、外形に対して印刷パターンを印刷する向きが特定されていない錠剤に対し、複数の文字が一方向に並ぶ部分を有する前記印刷パターンを印刷する印刷方法であって、複数のノズルを有する印刷ヘッドの前記ノズルから個別に液体を吐出することで、前記錠剤に対し、前記印刷パターンを印刷し、前記印刷ヘッドによる印刷は、前記錠剤の搬送方向と交差する方向であって、前記印刷ヘッドにおける前記印刷パターンに対応する前記複数のノズルの一端から他端までの間で、前記液体が吐出されないノズルが生じない角度で前記印刷パターンを印刷することによって行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、印刷ヘッドのメンテナンスに伴う印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0014】
(基本構成)
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、搬送装置20と、検出装置30と、撮像装置40と、印刷装置50と、印刷後撮像部52と、回収装置60と、画像処理装置80と、制御装置90とを備えている。
【0015】
供給装置10は、ホッパ11及びシュータ12を具備する。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、その収容された錠剤Tをシュータ12に順次供給する。シュータ12は、供給された錠剤Tを複数列に整列させ、搬送装置20に供給する。この供給装置10は制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。
【0016】
なお、錠剤Tは、例えば平面視で真円状の形状であり、割線を有さない錠剤である。
【0017】
搬送装置20は、搬送ベルト21(
図2参照)、駆動プーリ22、従動プーリ23及び駆動部24を具備する。搬送ベルト21は、無端状に形成されており、駆動プーリ22及び従動プーリ23に架け渡されている。駆動プーリ22及び従動プーリ23は軸を中心として回転可能に設けられており、駆動プーリ22は駆動部24に連結されている。駆動部24は制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。この駆動部24は、ロータリーエンコーダなどの位置検出器24aを備えている。位置検出器24aは検出信号を制御装置90に送信する。制御装置90は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21の位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。
【0018】
この搬送装置20は、駆動部24による駆動プーリ22の回転によって従動プーリ23と共に搬送ベルト21を回転させ、搬送ベルト21上の錠剤Tを
図1及び
図2中の矢印A1(搬送方向A1)に搬送する。なお、搬送ベルト21には、直線の孔状の吸引口21a(
図2参照)が搬送方向A1に沿って二列になるよう、それぞれ形成されている。二本の
吸引口21aは吸引チャンバを介して吸引装置(いずれも図示せず)に接続されており、吸引装置(例えば吸引ポンプ)の駆動により吸引力を得る。吸引口21a上に供給された錠剤Tは、その吸引口21aの吸引によって搬送ベルト21上に保持されることになる。
【0019】
検出装置30は、複数の検出部31(
図2参照)を具備する。検出部31は、搬送ベルト21の上方に二つ設けられている。これらの検出部31は、供給装置10より搬送方向A1の下流側であって二列の吸引口21aの上方に位置付けられ、水平面内で搬送方向A1に交差する方向(例えば直交する方向)に並べられている。各検出部31は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21上の錠剤Tを検出する。これらの検出部31は制御装置90に電気的に接続されており、制御装置90に検出信号を送信する。検出部31としては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサ(レーザ変位計)を用いることが可能である。また、レーザ光のビーム形状としては、スポットやラインなど各種の形状を用いることが可能である。
【0020】
撮像装置40は、複数の撮像部41(
図2参照)を具備する。撮像部41は、搬送ベルト21の上方に二つ設けられている。これらの撮像部41は、検出装置30より搬送方向A1の下流側であって二列の吸引口21aの上方に位置付けられ、水平面内で搬送方向A1に交差する方向(例えば直交する方向)に並べられている。撮像部41は、錠剤Tが直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像を取得し、取得した画像を画像処理装置80に送信する。撮像部41としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部41は画像処理装置80を介して制御装置90に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置90により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0021】
印刷装置50は、インクジェット方式の印刷ヘッド51を具備する。印刷ヘッド51は、搬送ベルト21の上方に二つ設けられ、撮像装置40より搬送方向A1の下流側に位置付けられている。印刷ヘッド51は、複数のノズル51a(
図2参照)を具備し、それらのノズル51aから個別にインク(液体の一例)を吐出する。
図2においては、ノズル51aは4つしか示されていないが、実際には数十~数千個のノズルが形成されている。この印刷ヘッド51は、各ノズル51aが並ぶノズル整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド51としては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子をノズル51a毎に有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。印刷ヘッド51は制御装置90に電気的に接続されており、その駆動が制御装置90により制御される。
【0022】
印刷後撮像部52は、搬送ベルト21の上方に二つ設けられ、印刷ヘッド51より搬送方向A1の下流側に位置づけられている。これらの印刷後撮像部52は、水平面内で搬送方向A1に交差する方向(例えば直交する方向)に並べられた撮像装置であり、錠剤Tが直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像を取得し、取得した画像を画像処理装置80に送信する。印刷後撮像部52としては、撮像部41と同じく、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各印刷後撮像部52は画像処理装置80を介して制御装置90に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置90により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0023】
回収装置60は、印刷後撮像部52より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送装置20の端部、すなわち搬送ベルト21における搬送方向A1の下流側の端部に設けられている。この回収装置60は、搬送ベルト21による保持が解除されて落下する錠剤Tを順次受けて回収することが可能に構成されている。なお、搬送装置20は、搬送ベルト21上の個々の錠剤Tが所望の位置、例えば、搬送ベルト21における搬送方向A1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。
【0024】
画像処理装置80は、撮像装置40によって撮像された各画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて各画像を処理する。撮像装置40からの画像を取り込むと、錠剤TのX方向、Y方向の位置ずれを検出する。ここで、X方向及びY方向の位置ずれとは、撮像視野の中心に対する錠剤Tの位置ずれであり、その中心に対して錠剤Tがどの程度ずれているかを検出する。本実施形態では、一例として、錠剤Tの搬送方向A1がX方向であり、それに直交する方向がY方向である。
【0025】
画像処理装置80は、検出した各錠剤TのX方向、Y方向の位置ずれ情報を制御装置90に送信する。なお、画像処理装置80が位置ずれ情報を送信する際には、この位置ずれ情報に各撮像部41の識別情報を付加して送信する。これにより、制御装置90は、送信された位置ずれ情報が、搬送ベルト21により2列で搬送される錠剤Tのうち、いずれの列に位置する錠剤Tの位置ずれ情報であるかを認識することができる。
【0026】
また、画像処理装置80は、印刷後撮像部52によって撮像された各画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて各画像を処理する。画像処理装置80では、印刷後撮像部52からの画像を取り込むと、後述する錠剤Tに対する印刷条件と、印刷後撮像部52から取り込んだ画像上の印刷状態とが合致しているかを確認し、その確認情報を制御装置90に送信する。そして、制御装置90では、画像処理装置80からの送信情報から、例えば90パーセント以上合致しているものについては、「良品」と判断して回収装置60に回収し、90パーセント合致していないものについては、「不良品」と判断して、図示しない不良品ボックスに回収されるようにする。
【0027】
制御装置90は、入出力装置91と、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータ92と、各種情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部93、印刷データ切替部94とを備えている。この制御装置90は、各種情報(例えば、処理情報)や各種プログラムに基づいて供給装置10、搬送装置20、撮像装置40、52及び印刷装置50を制御する。また、制御装置90は、検出装置30や位置検出器24aから送信される検出信号などを受信する。
【0028】
入出力装置91は、印刷パターンなどの各種情報を入力したり、各種情報を出力したりする。記憶部93は、入力された印刷パターンを記憶する。なお、印刷パターンからインクジェット方式の印刷ヘッド51のどのノズル51aからどのタイミングでインクを吐出するかのドットパターンからなる印刷データが生成され、記憶部93に記憶される。また、錠剤Tの搬送方向A1と平行な方向を0°とし、印刷データを回転させた印刷データが生成され、記憶部93に記憶される。この回転させた印刷データは、所定角度毎に生成される。この印刷データを回転させた角度を印刷データ回転角度と呼ぶ。印刷データ切替部94は、あらかじめ定める間隔で、印刷データ回転角度の違う印刷データに切り替える。
【0029】
例えば、制御装置90は、その記憶部93に、錠剤Tに印刷する、文字や記号などの印刷パターンの向きを0度から15度ずつ回転させた、0度、15度、30度、45度の印刷データが登録されていて、それらの印刷データの中から、印刷データを選択して印刷条件を設定する。選択された角度の印刷データによって、使用するノズル51aが変わることになる。詳細については後述する。なお、ここで言う「0度の印刷データ」とは、印刷パターンが錠剤Tの搬送方向A1と平行に印刷されるデータである(このデータに基づいて印刷されたパターンを「基準パターン」と呼ぶ)。また、0度、15度、30度、45度等の角度が印刷データ回転角度である。この印刷データ回転角度で錠剤Tの搬送方向A1に対して規定される方向が、錠剤Tの搬送方向A1に対する印刷方向となる。
【0030】
ここで、従来より錠剤印刷においては、割線が施されている錠剤(以下、「割線錠剤」という。)に印刷をする技術や、真円ではない形の錠剤(以下、「異形錠」という。)に印刷をする技術が知られている。割線錠剤や異形錠のように、方向性を有する錠剤に対する印刷においては、前述の撮像装置40にて得られた画像に基づいてθ方向のずれを検出し、記憶部93に記憶された印刷データを回転させて使用することになる。これに対し、本実施形態における錠剤Tのように、平面視で真円状の形状であり、割線を有さない錠剤に対して印刷を行う場合、錠剤Tが方向性を有さないので、印刷データを回転させる必要性自体がない。つまり、錠剤Tは方向性を考慮せずに印刷可能な錠剤である。したがって、常に基準となる方向の角度(例えば0度)のデータを用いて印刷を行うことになる。このように常に同じ角度のデータを用いて印刷を行うと、常に特定の範囲に位置するノズル51aだけを集中的に使用し続けることになる。
【0031】
印刷ヘッド51は、前述の通り圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドである。これら駆動素子には使用限界があり、駆動素子が使用限界(寿命)に達すると駆動素子を印刷ヘッド51ごと交換するメンテナンスが必要になる。前述のように集中的に使用し続ける特定の範囲のノズル51aは、その他の範囲に存在するノズル51aと比べて駆動素子を多く使用することになるため、駆動素子の寿命を早く迎えることになり、印刷ヘッド51自体を交換する頻度が高くなる。印刷ヘッド51自体を交換するメンテナンスは非常に時間もかかる。この停止期間中、錠剤Tに対する印刷が中断されるため、メンテナンスの頻度が高くなればなるほど、生産性が大きく低下する。
【0032】
また、使用頻度の高いノズル51a周辺にはインクが付着して液溜りが生じることで適正なインクの吐出を妨げたり、使用頻度の低いノズル51aにおいてはノズル51a内のインクが増粘したり、固形物が析出したりすることにより、ノズル51aから正常にインクが吐出されにくい状態となったりする。このような事態を防ぐために、従来においては、図示しないメンテナンス装置によって、例えば10分間に1回程度、ノズル51a周辺をクリーニングするなどのメンテナンス作業を行わなければならなかった。既述の通り、通常、印刷ヘッド51のメンテナンスが必要となるたび、錠剤Tの印刷処理を停止する必要がある。この停止期間中、錠剤Tに対する印刷が中断されるため、メンテナンスの頻度が高くなればなるほど、また1回のメンテナンスにかかる時間が長くなればなるほど、生産性が低下するという問題点がある。
【0033】
本発明者らは、印刷条件設定時に工夫をすることによってこの問題点を解決できることを発見した。以下、錠剤印刷装置1が行う印刷工程を説明しながら、この印刷条件設定について詳述する。
【0034】
(印刷工程)
前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程(印刷処理)について説明する。
【0035】
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置90の記憶部93に記憶される。また、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入される。そして、錠剤印刷装置1が駆動されると、搬送装置20の搬送ベルト21は、駆動部24による駆動プーリ22及び従動プーリ23の回転に伴い、搬送方向A1に回転する。搬送ベルト21が回転している状態で、供給装置10から錠剤Tが搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに順次供給される。錠剤Tは搬送ベルト21上で所定の移動速度で搬送されていく。
【0036】
搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、各検出部31によって検出され、各検出部31から各々の検出信号がトリガ信号として制御装置90に入力される。その後、搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、各撮像部41によって撮像される。前述のトリガ信号に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが撮像部41の下方に到達したタイミングで錠剤Tの上面が撮像部41により撮像され、その撮像された画像が画像処理装置80に送信される。各撮像部41から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、X方向、Y方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理装置80により生成され、制御装置90に送信される。
【0037】
このとき、印刷データ回転角度が設定される。前述の通り、制御装置90の記憶部93には、文字や記号などの印刷パターンの向きを0度から15度ずつ回転させた、0度、15度、30度、45度の印刷データが登録されている。制御装置90は、まず印刷データ回転角度が0度の印刷データを選択し、これに基づく印刷条件が設定される。なお、錠剤TのY方向位置ずれがある場合など、本実施形態における制御装置90は、選択した印刷データを、画像処理装置80から送信される個々の錠剤Tの位置ずれ情報を加味して、錠剤T個々に対する印刷条件を修正するようにしている。
【0038】
その後、搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、前述のトリガ信号に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド51の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて0度の印刷データを用いて印刷装置50により印刷が実行される。印刷装置50の各印刷ヘッド51において、各ノズル51aからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字やマークなどの識別情報が印刷される。この錠剤Tに塗布されたインクは、その錠剤Tが回収装置60により回収される前に乾燥する。印刷後、撮像装置52において印刷後の錠剤Tが撮像され、制御装置90の制御のもと、印刷状態が「正常」であると判断された錠剤Tは、搬送ベルト21の下流側の端部において保持された状態から解放され、搬送ベルト21から落下して回収装置60により回収される。
【0039】
印刷処理を開始して、予め設定した所定時間(例えば、3分間)が経過すると、制御装置90は、印刷データ回転角度が15度の印刷データに変更し、これに基づく印刷条件に変更する。この印刷条件によって上述の印刷処理を行う。なお、印刷データの変更間隔としては、予め設定した所定時間以外も、例えば、駆動素子の使用回数(吐出回数)や印刷錠剤回数などを用いることも可能である。
【0040】
さらに印刷条件を変更してから再び所定時間が経過すると、制御装置90は印刷データ回転角度が30度の印刷データに変更し、これに基づく印刷条件に変更する。この印刷条件によって上述の印刷処理を再び行う。
【0041】
さらに再び所定時間が経過すると、制御装置90は印刷データ回転角度が45度の印刷データに変更し、これに基づく印刷条件に変更する。この印刷条件によって上述の印刷処理を再び行う。
【0042】
さらに再び所定時間が経過すると、制御装置90は印刷データ回転角度が0度の印刷データに戻し、以後は同様に、所定時間経過毎に15度、30度、45度と印刷条件を変更しながら印刷処理を進める。
【0043】
このように、所定時間が経過する度に印刷データ回転角度が15度ずつ異なる印刷データに変更し、印刷処理開始から例えば一時間が経過すると、印刷処理を中断して図示しないメンテナンス装置によるメンテナンス作業を行う。
【0044】
図3~
図6は、「XYZ 789」という印刷パターンを1錠の錠剤Tに印刷する場合の、各印刷データ回転角度におけるノズル51aの吐出回数を表わしたものである。一つの印刷ヘッド51内にノズル51aが161個形成されている印刷ヘッド51を使用して錠剤Tに印刷処理を行うことを前提としている。図中、左側に錠剤Tの印刷パターンの回転状態(数字は印刷データ回転角度)を表わし、右側に縦軸がノズル51aの孔番号、横軸がそれぞれのノズル51aにおける吐出回数のグラフを表わしている。なお、このデータは、錠剤TのY方向位置ずれがない場合のデータである。
【0045】
図3~
図6に示す通り、0度、15度、30度、45度のそれぞれの印刷データ回転角度によって、ノズル51aの吐出回数が変わる。例えば、印刷データ回転角度が0度のとき(
図3参照)には孔番号が概ね64~101番のノズル51aからは一切吐出されないが、印刷データ回転角度が15度のとき(
図4参照)には概ね73~92番と、使用されないノズルの範囲が減ることになる。さらに、先に示した印刷データ回転角度が0度のときには、概ね孔番号26~63番、および102~139番の範囲においてノズル51aからのみ吐出されるが、印刷データ回転角度が30度のとき(
図5参照)には、概ね孔番号18~82番および85~144番の範囲においてノズル51aから吐出されることになり、印刷データ回転角度が45度のとき(
図6参照)には、概ね孔番号18~143番の範囲においてノズル51aから吐出されることになり、0度のときに比べて使用されるノズル51aの範囲が広くなる。さらに、印刷データ回転角度が45度のときには、0度のときに使用しなかった孔番号64~101番のノズル51aからインクを吐出させることになる。
【0046】
このように、所定時間毎に印刷データ回転角度の異なる印刷データに変更して印刷条件を変更することによって、複数のノズル51aから分散させてインクを吐出することができる。錠剤Tには印刷条件が変更されるたびに搬送方向A1に対する角度の異なったパターンの印刷がなされるが、画像処理装置80において、印刷後撮像部52が取り込んだ画像に基づいて印刷状態を確認する際には、印刷後の錠剤から取得した画像と、その錠剤を印刷した時に用いた印刷データ回転角度、つまり印刷条件を加味して、合致度合いを確認するようにしている。
【0047】
ここで、錠剤TのY方向位置ずれがある場合、前述のように、本実施形態における制御装置90は、選択した印刷データを、画像処理装置80から送信される個々の錠剤Tの位置ずれ情報を加味して、錠剤T個々に対する印刷条件を修正する。位置ずれ情報を加味するので、錠剤TのY方向のずれに対応する分、使用するノズル51aもY方向にシフトされる。つまり、錠剤Tの供給位置のY方向バラつき分は印刷データがY方向にシフトするので、少なくともその分使用するノズル51aは多くなる。これは、わずかな範囲であるが均等化にも貢献する。なお、供給位置のバラつきに頼らずに、もっと適切となるよう、使用するノズル51aのY方向のシフトを印刷データの回転に加えてもよい。印刷の外観上問題のない範囲でシフトを行うことが可能である。
【0048】
例えば、
図7に示すように、印刷ヘッド51をY方向(搬送方向A1に水平面内で交差する方向の一例)に移動させるヘッド移動機構53を設けて、印刷ヘッド51をY方向にずらしてノズル51aの使用領域をシフトさせてもよい。
図7では、二点鎖線で示す一つの印刷ヘッド51のノズル51aを、点線で示す区画A、区画B、区画Cに分けて、区画Bから区画A、区画Cとノズル51aの使用領域を切り替える様子を示している。なお、印刷ヘッド51が、錠剤Tの搬送方向A1に対して斜めに移動していることを示しているわけではない。このとき、印刷パターンをシフトさせなくてもよいが、印刷パターンのY方向のシフトを印刷ヘッド51のシフトと組み合わせてもよい。また、必ずしも区画を用いる必要はなく、例えば
図3の印刷データ回転角度が0度のときには孔番号が概ね64~101番のノズル51aからは一切吐出されないが、使用するノズル51aがこの64~101番となるように、使用するノズル51aをY方向にシフトさせても良い。このように、印刷位置に対して印刷ヘッド51のノズル列方向(Y方向)を相対移動できるようにし、印刷位置に対して印刷ヘッド51のノズル列方向を相対移動させることで、定常的に使用頻度の低いノズル領域を定常的に使用する領域にシフトさせる。これにより、印刷ヘッド51全体としてさらに寿命の均等化を実現できる。
【0049】
前述の印刷パターンのシフトでは、基準パターンをY方向にずらす。また、Y方向にずらした基準パターンに基づいて、所定角度毎の印刷データを生成してもよい。あるいは、印刷データ毎に印刷パターンをY方向にずらしてもよい。これにより、定常的に使用頻度の低いノズル領域を定常的に使用する領域にシフトさせることが可能となり、印刷ヘッド51全体としてさらに寿命の均等化を実現できる。
【0050】
また、使用するノズル51aを間引き、間引いたノズル51aと選択したノズル51aとを交互に使うことを組み合わせてもよい。また、複数ノズル列の場合、各列を切り替えて使用することを前述のシフトと組み合わせてもよい。例えば、2列ノズルで300dpiとなる印刷ヘッド51で、列毎にノズル51aを使用(150dpi印刷)し、2列でノズル51aを切り替えて使用してもよい。また、1列ノズルで300dpiとなるヘッドで、一つ置きでノズル51aを使い(150dpi印刷)、使用するノズル51aを切り替えてもよい。このようにノズル51aの使用時間を分散させることで、さらに寿命を延ばすことができる。
【0051】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、印刷条件を所定時間毎に変更することによって、複数のノズル51a毎の吐出回数を分散させることができる。これにより、印刷ヘッド51のメンテナンスに伴う印刷の停止時間が短縮されるため、印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる。また各ノズル51aの駆動素子が分散して使用されるので、印刷ヘッド51に用いられている駆動素子をより均等に使用することができ、特定のノズル51aの駆動素子だけが早く寿命を迎えることを防止できる。したがって、印刷ヘッド51をより長く使用することが可能になる。これにより、少なくとも、駆動素子の故障などに伴う印刷ヘッド51の交換を必要とするメンテナンス頻度を低くでき、メンテナンス時間も削減でき、印刷ヘッドのメンテナンスに伴う印刷停止に起因する生産性の低下を抑えることができる。
【0052】
さらに、使用頻度の低いノズル51aにおいてはノズル51a内のインクが増粘したり、固形物が析出したりすることにより、ノズル51aから正常にインクが吐出されにくい状態となりやすいが、各ノズル51aが分散して使用されるので、使用頻度の低いノズル51aの数が減り、ノズル51aの正常にインクが吐出されにくい状態を解消するためのメンテナンス頻度を低くすることもできる。また、使用頻度の高いノズル51a周辺にはインクが付着して液溜りが生じ、適正なインクの吐出を妨げたりする。これにより、ノズル51aから正常にインクが吐出されにくい状態となったりするが、各ノズル51aが分散して使用されるので、使用頻度の高いノズル51aの数が減り、ノズル51a周辺の液溜りを解消するためのメンテナンス頻度を低くすることもできる。したがって、メンテナンス時間も削減でき、印刷ヘッドのメンテナンスに伴う印刷停止に起因する生産性の低下を抑えることができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について
図3~
図6、
図8を用いて説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、その他の説明を省略する。
【0054】
前述の第1の実施形態においては、錠剤Tの印刷処理工程の途中に、所定時間毎に印刷条件を変更する例を説明したが、本実施形態においては、これに代えて最適な印刷条件を設定するようにする。
【0055】
図3~
図6に示すように、印刷データ回転角度によって、使用するノズル51aの範囲および最も使用するノズル51aの吐出回数は大きく変わることになる。例えば、印刷データ回転角度が0度のときには最も使用するノズル51aの吐出回数が45回近くなるのに対し、印刷データ回転角度が45度のときには最も使用するノズル51aの吐出回数は30回を超える程度となる。
【0056】
図3~
図6に示すように、「XYZ 789」という印刷パターンを印刷する場合においては、印刷データ回転角度が45度程度であるときが、最も多くのノズル51aを使用し、かつ、すべてのノズル51aにおいて、各ノズル51aの駆動素子を最も均等に使用することができることが分かった。このように、最も多くのノズル51aを使用することによって、各ノズル51aの使用回数が分散されて均一に近くなるような角度を最適な印刷データ回転角度とする。印刷パターンによって異なるが、最適な印刷データ回転角度は、
図3~
図6のようなデータ(吐出回数パターン)を作成することで、事前に最適な角度を知ることができる。
【0057】
図8は、「XYZ 789」という印刷パターンを1錠の錠剤Tに印刷する場合の、印刷データ回転角度が90度である場合の各ノズル51aの吐出回数を表わしたものである。印刷データ回転角度が0度である場合(
図3参照)と比較すると、使用するノズル51aの数はさらに減り、最も使用するノズル51aの吐出回数は50回近くにもなる。つまり、印刷パターンによっては、印刷データ回転角度を0度から増加していけば良い結果が得られるとは限らず、最適な印刷データ回転角度、最不適な印刷データ回転角度はパターンによって全く異なることになる。したがって、実験等により、前述の通り印刷パターン毎に事前にデータを作成し、最適な角度を知ることが必要となる。なお、実験等には、印刷データ回転角度ごとに、印刷パターンから各ノズルの吐出回数を算出し、吐出回数パターン(使用ノズルの吐出回数分布)を比較するシミュレーションを含む。
【0058】
制御装置90は、最適な印刷データ回転角度に基づいて印刷条件を設定し、印刷処理を開始する。この最適な印刷条件は、複数のノズル51aを最も均等に使用することができる条件であるので、複数のノズル51a毎の吐出回数を分散させることができる。これにより、印刷ヘッド51のメンテナンスに伴う印刷の停止時間が短縮されるため、印刷停止に起因して生産性が低下することを抑えることができる。なお、最適な印刷データ回転角度に基づく印刷条件の選択や設定は、制御装置90によって行わずに、外部のホストコンピュータ、ローカルの演算装置等によって得られた結果を反映させてもよいし、オペレータによって設定されるようにしても良い。
【0059】
さらに、最適な印刷条件で印刷処理を行い、所定時間が経過すると(予め定める間隔で)、比較的好適な印刷条件に切り替えて印刷処理を行うようにしても良い。例えば、印刷データ回転角度が30度の場合は(
図5参照)、印刷データ回転角度が45度の場合(
図6参照)と比較すると、使用するノズル51aの数は少ないものの、他の印刷データ回転角度である0度、15度、90度の場合と比較して、多くのノズル51aを使用して印刷が行われることになり、各ノズル51aが他の角度と比較して均等に使用される。このような比較的好適な印刷条件を選択する。そして、例えば、印刷データ回転角度が45度の印刷条件で印刷処理を行い、所定時間としての3分が経過すると印刷データ回転角度が30度の印刷条件に変更して印刷処理を行う。さらに3分が経過すると、再び45度の印刷条件に変更する、というように、最適な印刷条件と比較的好適な印刷条件とを交互に切り替えて印刷処理を行うようにしても良い。また、予め定める間隔での印刷データ回転角度の切替と、その切替回数とを組み合わせることも可能である。例えば、印刷データ回転角度が30度の印刷条件で6分間(3分×2)印刷処理し、印刷データ回転角度を0度の印刷条件にして3分間印刷処理し、次に印刷データ回転角度を45度の印刷条件に切り替える、などのように切り替えて印刷処理を行うようにしても良い。使用するノズル51aの数や位置、時間等での使用する印刷条件の最適な組み合わせを予め調べ、これを採用するようにすれば良い。印刷データ回転角度も、例示した0度~90度に限られず、180度まであるいは359度までの範囲としても良い。印刷パターンによっては、同じノズル51aの使用、吐出回数のパターンが出現するが、上述のように適宜組み合わせを行うようにすれば良い。前述のいずれの場合においても、複数のノズル51a毎の吐出回数を分散させることができ、印刷ヘッド51のメンテナンスに伴う停止時間が短縮され、生産性の低下を抑えることができる。また各ノズル51aの駆動素子が分散して使用されるので、駆動素子をより均等に使用することができ、従来に比べて、特定のノズル51aの駆動素子だけが早く寿命を迎えることを防止できる。したがって、印刷ヘッド51をより長く使用することが可能になる。
【0060】
また、必ずしも好適な印刷条件、最適な印刷条件の組み合わせとする必要はない。各ノズル51aを少しでも均等使用するために、定期的に(予め定める間隔で)印刷データ回転角度を変更することが可能である。一例として、「XYZ 789」という印刷パターンの印刷データ回転角度を180度変える。例えば、印刷データ回転角度が0度の場合、
図3にみられるように、「XYZ」に対する吐出回数のパターンと「789」に対する吐出回数のパターンは相違する。印刷データ回転角度が0度から180度に切り替えられると、印刷パターンの上下は逆転する。したがって、「XYZ」と「789」の吐出パターンが重畳したような吐出が実行されるので、ノズルの使用の均等化を実現できる。
【0061】
さらに、各ノズル51a分散して使用されるので、使用頻度の高いノズル51aの数が減り、ノズル51aの正常にインクが吐出されにくい状態(詰まり)を解消するためのメンテナンス頻度を低くすることもできることは、前記第1の実施形態と同様である。
【0062】
(他の実施形態)
前述の各実施形態においては、複数の吸引孔21aの形成された搬送ベルト21を例示したが、これに限るものではなく、吸引孔21aが搬送方向A1に沿って形成されるスリットであってもよい。
【0063】
また、前述の各実施形態においては、供給装置10から錠剤Tが搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに順次供給されるとしたが、これに限るものではなく、例えば搬送ベルト21上に規則的に形成された凹部(ポケット)に錠剤Tが供給されるようにしても良い。
【0064】
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21によって錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、一列や三列又は四列以上であっても良く、その数は特に限定されるものではない。なお、一つの印刷ヘッド51によって一列の錠剤Tに印刷を行うことを例示したが、これに限るものではなく、例えば二列以上の錠剤Tに対して一つの印刷ヘッド51を設けるようにしても良い。また、搬送ベルト21を複数有していても良い。
【0065】
また、前述の各実施形態においては、搬送装置20として、錠剤Tを吸引により保持して搬送する搬送装置を例示したが、これに限るものではなく、各種の搬送機構を用いることが可能である。
【0066】
また、前述の各実施形態においては、検出装置30に基づいて印刷のタイミングを取っているが、これに限るものではなく、例えば、撮像装置40に基づいて印刷のタイミングを取るようにしても良い。
【0067】
また、前述の各実施形態においては、制御装置90の記憶部93には、文字や記号などの印刷パターンの向きを0度、15度、30度、45度、90度回転させた5つの印刷データを記憶させた例を示したが、数はいくつでもよい。ただし、異なる印刷データ回転角度の数が多いほど、最適な印刷条件を見つけ出せることになるので好都合である。この条件は、実験等により求められることは前述したとおりであり、制御装置90によって、印刷データとノズルの位置等に基づいて、異なる印刷データ回転角度ごとに使用ノズル数を求め、使用ノズル数が一番多いときの印刷データ回転角度の印刷条件を求めて設定することも可能である。
【0068】
また、方向性を考慮せずに印刷可能な錠剤として、平面視で真円状の形状のものを例示したが、この条件を満たす錠剤としては、形状が真円状でない場合であっても、印刷がされれば向きは考慮しないような錠剤であれば適用可能である。
【0069】
制御装置90は、例えば、基準となる一つの角度の印刷データ、例えば印刷データ回転角度が0度の印刷パターン(基準データ)のみを記憶部93に登録させておき、都度回転させた印刷データを演算して印刷条件を変更するようにしても良い。ただし、前述の各実施形態において示したように、予め複数の印刷データの登録がなされている方が、印刷条件の変更を容易に行うことができ、印刷処理にかかる時間も短縮できる。
【0070】
また、前述の各実施形態においては、インクジェット方式の印刷ヘッド51として、ノズル51aが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。
【0071】
また、前述の各実施形態においては、予め定める間隔として、予め定める時間毎に印刷パターンの角度を変更したが、これに限られず、印刷した錠剤数によってもよい。また、錠剤毎に印刷パターンの角度を変更するようにしてもよい。ノズル51aの使用時間、使用回数を抑制し、また、複数のノズル51aでより均等に使用することになる間隔で切替が行われればよく、印刷のパターンによって適宜決定される。
【0072】
また、頻繁に吐出するノズル51aの周囲にはインクが溜ったり、吐出の頻度が低いノズル51aはノズル51a内のインクの粘度が高まってしまったりする場合がある。いずれの場合でもその状態からは、吐出できなかったり、適切な量や方向への吐出ができないなどの吐出不良のために、印刷の品位が低下したりしてしまう。したがって、これらのような状態とならないうちに、ノズル51aのクリーニング等のメンテナンスを行う必要がある。複数のノズル51aが均等に使用されることで、前述のような状態となる間隔はのびるので、メンテナンスを行う頻度を低くすることができる。したがって、このような吐出不良となる状態を考慮した間隔で切替を行うようにしてもよい。
【0073】
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがある。さらに、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。また、錠剤の形状としては、平面視において真円状の形状であるとしたが、これに限らず、方向性をもって印刷する必要のない錠剤が印刷の対象であれば良い。また、割線を有さない錠剤としたが、例えば割線が片面に形成された錠剤の、割線を有さない面に、方向性を考慮することなく印刷する処理の場合には、たとえ片面に割線が形成されていたとしても、前述の各実施形態を採用することができる。
【0074】
また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合、使用するインクとしては、可食性インクが好適である。具体的には、可食性色素としてアマランス、エリスロシン、ニューコクシン(以上、赤色)、タートラジン、サンセットイエローFCF、β-カロチン、クロシン(以上、黄色)、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン(以上、青色)などを用い、これらをビヒクルに分散または溶解し、必要に応じて色素分散剤(界面活性剤)を配合したものを使用することができる。なお、可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0075】
また、実施形態では、錠剤Tの片面に印刷する例を説明したが、錠剤Tの表裏面とも印刷の方向性を考慮しないのであれば、
図1に示した装置を2基備え、1基目にて一方の面が印刷された錠剤を2基目に搬送し、2基目で他方の面の印刷を行うようにすれば、表裏面の両面への印刷に適用が可能である。このとき、一方の面への印刷パターン(第1の印刷パターン)と他方の面への印刷パターン(第2の印刷パターン)が相違する場合、1基目と2基目の印刷パターンを予め定めた間隔で切り替えてもよい。すなわち、1基目で他方の面の印刷パターン(第2の印刷パターン)を印刷し、2基目で一方の面の印刷パターン(第1の印刷パターン)を印刷するように入れ替える。例えば、錠剤Tの一方の面に印刷パターンとして「ABC」を印刷し、他方の面に印刷パターンとして「456」を印刷する場合、1基目の装置で「ABC」を印刷し、2基目の装置で「456」を印刷する状態から、予め定めた間隔で1基目の装置で「456」を印刷し、2基目の装置で「ABC」を印刷する状態に切り替える。もちろん、このような切替を、それぞれの印刷パターンを回転させた印刷データとの切替と組み合わせても良い。同じ錠剤Tの印刷処理であっても、1基目と2基目それぞれの装置のそれぞれの印刷ヘッド51で相違する印刷パターンを使うことができるので、よりノズル51aの使用の均等化を実現することができる。
【0076】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 錠剤印刷装置
20 搬送装置
21 搬送ベルト
51 印刷ヘッド
51a ノズル
90 制御装置
A1 搬送方向
T 錠剤