(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007956
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】布製マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220105BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220105BHJP
D06M 11/83 20060101ALI20220105BHJP
D06M 11/46 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 M
A62B18/02 C
D06M11/83
D06M11/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010893
(22)【出願日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020093785
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020176154
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 千洋
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 陽子
(72)【発明者】
【氏名】浜口 裕香
【テーマコード(参考)】
2E185
4L031
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC34
2E185CC73
4L031AA20
4L031AB32
4L031AB33
4L031BA04
4L031BA09
4L031DA12
(57)【要約】
【課題】着用時の息苦しさやムレ感を軽減できる布製マスクを提供する。
【解決手段】口および鼻を覆うマスク本体10と、マスク本体10の左右に設けられた一対の耳かけ部20とを少なくとも有する布製マスク1であって、マスク本体10の素材の60質量%以上がポリアミド繊維であり、JIS L1096A法(フラジール形法)にて測定したときのマスク本体10の通気度が10~64cm
3/cm
2・sであり、JIS L1927にて測定したときのマスク本体10の口に接触する面の最大熱流束が0.2W/cm
2以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口および鼻を覆うマスク本体と、前記マスク本体の左右に設けられた一対の耳かけ部とを少なくとも有する布製マスクであって、
前記マスク本体の素材の60質量%以上がポリアミド繊維であり、
JIS L1096A法(フラジール形法)にて測定したときの前記マスク本体の通気度が10~64cm3/cm2・sであり、
JIS L1927にて測定したときの前記マスク本体の口に接触する面の最大熱流束が0.2W/cm2以上である
布製マスク。
【請求項2】
前記マスク本体の吸放湿性が2.0%以上である、請求項1に記載の布製マスク。
【請求項3】
前記マスク本体にシートを挟持できるポケットが設けられている、請求項1または請求項2に記載の布製マスク。
【請求項4】
JIS L1096 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときの前記マスク本体における経方向および緯方向の少なくとも一方の破断伸度が、30%以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の布製マスク。
【請求項5】
前記マスク本体が編地である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の布製マスク。
【請求項6】
前記マスク本体を構成する繊維の表面には、少なくとも銀と、光触媒とが付着している、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の布製マスク。
【請求項7】
JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法に準拠して測定した、前記マスク本体のSARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性値が2.0以上である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の布製マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布製マスク、特に布製の衛生マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
衛生マスク(以下、「マスク」と略記する)には、冷気や乾燥から鼻やのどを守ったり、口や鼻から分泌される分泌物を撒き散らすのを防いだり、空気中の花粉や病原体などの浮遊物が体内に取り込まれるのを防いだりする。
【0003】
従来、マスクは、風邪やインフルエンザなどの感染症が流行する冬の時期、または花粉が飛散する春の時期に着用されることが多かった。
【0004】
しかし近年、世界的な感染症蔓延、花粉などのアレルゲンの種類増大、および地球環境変化による黄砂やPM2.5などの微小粒状物質の浮遊時期拡大などにより、夏の時期でもマスクを着用する機会が増えてきている。
【0005】
夏にマスクを着用すると、着用時の息苦しさやムレ感によって熱中症の危険性が高まるため、熱中症対策としてマスクを外さざるをえなくなるなど、従来のマスクは夏に着用するには不適であった。
【0006】
そこで、夏に着用するのに適したマスクが提案されている。例えば、特許文献1には、着用者の顔面の対象部位を覆うマスク本体部と、このマスク本体部を着用者の耳に係止するための左右一対の耳かけ部と、着用者の鼻腔を拡張する鼻腔拡張部とを備えるマスクが開示されている。また、特許文献1には、鼻腔拡張部またはマスク本体部に、メントールまたはサリチル酸などの冷感作用を有する冷感剤を配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたマスクは、冷感作用を有する冷感剤を配置しているので、着用者に冷感をもたらすものではある。
【0009】
しかしながら、特許文献1で用いられる冷感剤は、メントールまたはサリチル酸などであり、鼻づまりを解消するための薬剤による刺激を与えるものである。このため、特許文献1に開示されたマスクでは、マスク着用時の息苦しさやムレ感を根本的に解決するものではない。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、着用時の息苦しさやムレ感を軽減できる布製マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)本発明に係る布製マスクは、口および鼻を覆うマスク本体と、前記マスク本体の左右に設けられた一対の耳かけ部とを少なくとも有する布製マスクであって、前記マスク本体の素材の60質量%以上がポリアミド繊維であり、JIS L1096A法(フラジール形法)にて測定したときの前記マスク本体の通気度が10~64cm3/cm2・sであり、JIS L1927にて測定したときの前記マスク本体の口に接触する面の最大熱流束(qmax)が0.2W/cm2以上であることを特徴とする。
【0013】
(2)本発明に係る布製マスクにおいて、前記マスク本体の吸放湿性が2.0%以上であるとよい。
【0014】
(3)本発明に係る布製マスクにおいて、前記マスク本体にシートを挟持できるポケットが設けられているとよい。
【0015】
(4)本発明に係る布製マスクにおいて、JIS L1096 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときの前記マスク本体における経方向および緯方向の少なくとも一方の破断伸度が30%以上であるとよい。
【0016】
(5)本発明に係る布製マスクにおいて、前記マスク本体が編地であるとよい。
【0017】
(6)本発明に係る布製マスクにおいて、前記マスク本体を構成する繊維の表面には、少なくとも銀と、光触媒とが付着しているとよい。
【0018】
(7)本発明に係る布製マスクにおいて、JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法に準拠して測定した、前記マスク本体のSARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性値が2.0以上であるとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る布製マスクによれば、着用時の息苦しさやムレ感を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係る布製マスクを表側(外気側)から見たときの図である。
【
図2】実施の形態に係る布製マスクを裏側(口元側)から見たときの図である。
【
図3】実施の形態に係る布製マスクのポケットを示す図である。
【
図4A】実施の形態に係る布製マスクを着用する前(気温32℃の直射日光下)のサーモグラフを示す図である。
【
図4B】不織布マスクを着用したとき(30分間着用後)のサーモグラフを示す図である。
【
図4C】実施の形態に係る布製マスクを着用したとき(30分間着用後)のサーモグラフを示す図である。
【
図4D】実施の形態に係る布製マスクに水分を含ませたマスクインナーを組み合わせて着用したとき(30分間着用後)のサーモグラフを示す図である。
【
図5】実施例1の布製マスクと不織布マスクとの接触冷感の差を最大熱流束(qmax)で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、本発明は、以下の態様のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲において多くの変形が可能である。
【0022】
まず、
図1~
図3を用いて、実施の形態に係る布製マスクの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る布製マスク1を表側(外気側)から見たときの図である。
図2は、実施の形態に係る布製マスク1を裏側(口元側)から見たときの図である。
図3は、実施の形態に係る布製マスク1のポケット11を示す図である。
【0023】
図1~
図3に示されるように、本実施の形態における布製マスク1は、布製マスク1を着用するユーザ(マスク着用者)の口および鼻を覆うマスク本体10と、マスク本体10の左右に設けられた一対の耳かけ部20とを少なくとも有するマスクである。
【0024】
そして、本実施の形態における布製マスク1は、マスク本体10の素材の60質量%以上がポリアミド繊維であり、JIS L1096A法(フラジール形法)にて測定したときのマスク本体10の通気度が10~64cm3/cm2・sであり、JIS L1927にて測定したときのマスク本体10の口に接触する面の最大熱流束(qmax)が0.2W/cm2以上である。
【0025】
ここで、最大熱流束(qmax)とは、生地の接触冷感性を表す特性値であり、皮膚と生地とが接触した時の初期熱流束の極大値を示している。最大熱流束(qmax)は、最大熱吸収速度またはq-maxとも呼ばれる。マスク本体10の口に接触する面の最大熱流束の値が高ければ高いほど、マスク着用者は、より冷たさを感じる。
【0026】
本実施の形態で用いられるマスク本体10を構成する繊維の素材としては、素材の60質量%以上がポリアミド繊維である。ポリアミド繊維は、熱伝導率が高く、排熱性に優れているので、肌に触れるとひんやりと感じる接触冷感作用がある。また、ポリアミド繊維は、吸放湿性が高く、マスク着用者の呼気に含まれる水分を吸収して外部に排出するので、布製マスク1の内側(肌側)の湿度を下げる効果がある。このため、本実施の形態における布製マスク1は、マスク着用時のムレ感の原因である温度と湿度を適切に調節することができ、ムレ感を軽減する作用を有する。
【0027】
また、マスク本体10において、マスク本体10を構成する他の素材の割合が40質量%未満であれば、ポリアミド繊維に他の素材を組み合わせて用いてもよい。素材の組み合わせの例としては、主成分となるポリアミドに対し、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアセタール、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、または、アセテートやキュプラ、ビスコースなどのレーヨンなどがあり、さらに、これらの他に、ポリ乳酸、ポリイミドまたはポリフェニレンサルファイドなどの化学繊維、綿、麻、絹または羊毛などの天然繊維との混紡、混繊、交織、交編、さらに芯鞘構造を有する繊維を用いてもよい。また、マスク本体10は、単独の素材で作製された複数の布が積層されたものであってもよい。
【0028】
特に接触冷感作用を増大させるために、熱伝導率や親水性の高い素材とポリアミド繊維とを組み合わせるとよい。具体的には、上記の素材の中で、熱伝導率や親水性の高い素材としては、アセテートやキュプラ、ビスコースなどのレーヨン、ポリアセタール、芯にポリエステルを用い鞘にEVOHを用いた芯鞘構造の繊維、または、超高分子量ポリエチレン繊維などが挙げられる。
【0029】
また、マスク本体10の伸縮性を向上させてマスク本体10を顔により密着させるために、ポリアミド繊維とポリウレタン弾性糸とを組み合わせてもよい。マスク本体10の伸縮性が高ければ、マスク本体10の気密性および装着感が向上すると同時に、マスク本体10と顔面との接触面積が大きくなり、接触冷感作用をより強調することができる。
【0030】
マスク本体10を構成する繊維は、長繊維および短繊維のいずれであってもよい。また、この繊維を用いた糸は、生糸、撚糸、および加工糸のいずれであってもよい。加工糸についても、特に限定されるものではなく、仮撚加工糸(ウーリー加工糸、DTY、改良仮撚加工糸など)、押込加工糸、賦型加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、糸長差引きそろえ加工糸、複合加工糸、毛羽加工糸、交絡集束糸、交絡混繊糸などを用いることができる。
【0031】
また、マスク本体10を構成する繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、丸型、三角、星形、扁平、C型、中空、井形、ドックボーンなどが挙げられる。
【0032】
また、本実施の形態における布製マスク1では、所期の目的を逸脱しない限りにおいて、染料や顔料などの着色剤、酸化チタンなどの艶消し剤、酸化防止剤、安定剤、変色防止剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱剤、抗菌防臭剤、制菌剤、抗ウイルス剤、SR剤、無機粒子、染色助剤、冷感剤、保湿剤、吸湿剤、撥水剤、香料などの各種機能性剤が、マスク本体10を構成する繊維に内添、または、その繊維表面に付着されていてもよい。これらの機能性剤は、単独で用いてもよいし複数組み合わせて用いてもよいし、さらに、付着量向上や付着した機能性剤の脱離を防ぐためのバインダーと組み合わせてもよい。
【0033】
特に、マスク本体10を構成する繊維の表面には、消臭剤、防カビ剤、抗菌剤、抗ウイルス剤として機能する銀と、光触媒とが付着しているとよい。銀は、口臭の主な原因物質である硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物と結びつきやすく、口臭の消臭能力が高い。また、銀および光触媒は、真菌、細菌、ウイルスなどの微生物に対して抗微生物能を有することが知られているが、銀および光触媒を併用して用いることで、それぞれ単独で用いた場合または他の抗微生物剤を用いた場合と比較して、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)やSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)などのプラス鎖RNAウイルスに対して特異的に高い抗ウイルス性が発現されるため、幅広い抗微生物スペクトルを有するマスクを得ることができる。なお、銀を安定的に繊維表面に付着させるために、銀は、多孔質体に担持した形態で用いることが好ましい。また、多孔質体は、臭気成分を物理吸着し、消臭剤としての効果も発揮する。
【0034】
また、これらの機能性剤は、例えば、機能性剤、および必要に応じてバインダーが溶解または分散している液中に、マスク本体10とする前の生地または出来上がったマスク本体10または布製マスク1を浸漬し、これを、脱水、乾燥することによって、マスク本体10を構成する繊維の表面に機能性剤を付着させることができる。
【0035】
マスク本体10は、布製である。本実施の形態において、マスク本体10は、織物または編物である。具体的には、マスク本体10は、平織、綾織、朱子織などの組織の織物、または経編、緯編(横編または丸編)などの組織の編物である。マスク本体10が織物または編物であれば、不織布と比較して連続した長い糸が使用され、ポリアミド繊維の高い熱伝導性を容易に発現させることができる。また、マスク本体10の伸縮性を高めて気密性および装着感を向上させることで接触冷感作用を強調する観点から、マスク本体10は、編物であることが好ましい。さらに、編物の中でも、トリコット編地など、片面に畝、反対の面が平滑な編地を用いるとよい。そして、この編物からなるマスク本体10の平滑な面をマスク着用者の口に接触させることにより、マスク本体10と顔面との接触面積が大きくなるので、接触冷感作用がさらに強調される。
【0036】
本実施の形態で用いられるマスク本体10については、マスク本体10をJIS L1096A法(フラジール形法)にて測定したときのマスク本体10の通気度が10~64cm3/cm2・sである。マスク本体10の通気度が10cm3/cm2・s以上であれば、マスク着用時の息苦しさを低減することができる。また、マスク本体10の通気度が64cm3/cm2・s以下であれば、マスク本体10のろ過能力(花粉や病原体などの微小粒状物質捕集能力や、せきやくしゃみなどによるマスク着用者からの飛沫飛散防止能力)を十分に確保できる。なお、一般に、不織布よりも織物や編物の方がろ過能力は低いが、通気度が65~90cm3/cm2・sである一般的な不織布マスクよりもマスク本体10の通気度を低くすることにより、布製マスク1のろ過能力を不織布と同程度に高めることができる。また、マスク本体10の通気度が低くなっていくと息苦しさは高くなっていくが、後述するマスク本体10の最大熱流束を高くすることで、マスク本体10そのものの通気度がそれほど高くなくても、マスク着用者は、息苦しさをあまり感じることなく布製マスク1を着用することができる。
【0037】
マスク本体10のより好ましい通気度の範囲は、25~60cm3/cm2・sであり、より好ましくは30~55cm3/cm2・sであり、さらに好ましくは35~50cm3/cm2・sである。
【0038】
本実施の形態で用いられるマスク本体10については、マスク本体10の口に接触する面をJIS L1927にて測定したときのマスク本体10の口に接触する面の最大熱流束(qmax)が0.2W/cm2以上である。上記のように、マスク本体10の素材として熱伝導率が高いポリアミド繊維を用いるとともに、マスク本体10を織物または編物の布製とすることで、マスク本体10の排熱性が高まってマスク本体10の最大熱流束を0.2W/cm2以上と高くすることができ、接触冷感作用を発現させることができる。この場合、さらに、前記の接触冷感作用を有する繊維素材を組み合わせたり、キシリトールやエリスリトールなどの糖アルコールといった冷感剤を繊維に内添または付着させたりすることによって、最大熱流束をさらに高めてもよい。
【0039】
マスク本体10のより好ましい最大熱流束(qmax)は、0.25W/cm2以上であり、さらに好ましくは0.3W/cm2以上である。
【0040】
さらに、本実施の形態で用いられるマスク本体10の構成によれば、吸放湿性を2.0%以上にすることができる。特に、マスク本体10は、60質量%以上がポリアミド繊維によって構成されているので、ポリアミド繊維の高い吸放湿性を利用して、マスク着用者の呼気に含まれる水分を吸収して外部に効率良く排出することができる。これにより、マスク本体10の内側(肌側)の湿度を下げる効果を発現させることができる。この場合、さらに、マスク本体10の素材に、前記の繊維素材のうち吸放湿性の高い素材を組み合わせたり、吸湿剤を繊維に内添または付着させたり、親水性の高いモノマーを繊維にグラフト重合させたりすることによって、マスク本体10の吸放湿性をさらに高めることができる。
【0041】
ここで、吸放湿性とは、人間がムレを感じやすい温湿度環境下(例えば30℃×90%RH)での生地の吸湿率と、一般的な室内の温湿度環境下(例えば20℃×65%RH)での生地の吸湿率との差で求められる特性値である。この吸放湿性は、高ければ高いほど、マスク本体10における湿度の高い肌側から外側に向かってマスク本体10の内側(肌側)の湿気を外部に逃がすことができ、ムレを抑える能力を高めることができる。
【0042】
マスク本体10のより好ましい吸放湿性は、2.5%以上であり、さらに好ましくは3.0%以上である。
【0043】
さらに、本実施の形態で用いられるマスク本体10の構成によれば、マスク本体10をJIS L1096 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときのマスク本体10の経方向および緯方向の少なくとも一方の破断伸度を、30%以上とすることができる。ポリアミド繊維とポリウレタン弾性糸との組み合わせや、マスク本体10を編地とすることにより、マスク本体10の気密性および装着感を向上させることができる。また、マスク本体10の経方向および緯方向の少なくとも一方の破断伸度を30%以上とすることで、マスク着用者の呼吸や発話などの顔の動きに合わせてマスク本体10の目が開いて、マスク着用者の呼気量の大小によってマスク本体10の通気度が可変するため、呼吸や発話などの際の息苦しさが緩和する効果も奏する。
【0044】
マスク本体10のより好ましい破断伸度は、経方向および緯方向がともに30%以上であり、さらに好ましくは経方向および緯方向がともに50%以上である。
【0045】
さらに、本実施の形態で用いられるマスク本体10の構成によれば、JIS L1922(2016)に規定されるプラーク測定法に準拠して測定した、マスク本体10のSARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性値が2.0以上とすることができる。前記プラーク測定法に準拠して測定したマスク本体10のSARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性値が2.0以上であれば、比較的短時間でマスク本体10に付着したウイルスの感染能力を抑制することができ、マスク着用者が感染症に罹患してしまう危険性を低減できる。特に、前記プラーク測定法に準拠して測定した、マスク本体10のSARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性値は、2.5以上であることが好ましい。
【0046】
本実施の形態における布製マスク1は、次のようにして製造することができる。例えば、マスク本体10に使用する織物または編物を所定の形状に切り出したり打ち抜いたりしてマスク本体10のパーツとし、そのマスク本体10に一対の耳かけ部20を取り付けることで布製マスク1を製造することができる。
【0047】
マスク本体10は、平坦な布そのままでもよいが、マスク本体10を構成する布に、布にプリーツを設けたり、立体形状を与えたり、後述するシートを挟持するポケットを設けたりしてもよい。
【0048】
図3に示すように、マスク本体10には、マスクインナーであるシート(マスク用シート)を挟持できるポケット11が設けられているとよい。具体的には、マスク本体10の下部をシートが挟持できる大きさだけ折り返したり、マスク本体10の下部および上部の各々を折り返したりすることで、折り返した部分の間にシートを挟持できる構造を形成し、シートを挿入するための開口部11aを残して一部を縫い付けたり接着剤で接着したりなどして接合することで、マスク本体10にポケット11を設けることができる。あるいは、マスク本体10となる布を2枚以上積層して、その重なっている部分(例えば周辺端部)の一部を縫い付けたり接着剤で接着したりなどして接合することで、マスク本体10にポケット11を設けることもできる。
【0049】
マスク本体10のポケット11に挟持されるシートとしては様々な機能を有するものを用いることができる。例えば、このようなシートとしては、目の細かい多孔質体によるフィルター、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤などが担持されている有害物質不活化機能を有するシート材、メントールやカルボンなどのテルペノイドといった物質が担持されている香気や涼感作用のあるシート材、または、水などの揮発剤が担持されている気化熱による冷却シート材などが挙げられる。より好ましくは、マスク本体10の通気性を阻害せずに、上記の機能性剤を担持することができ、しかも、マスクの着用感に影響を与えにくい柔軟性を有する、繊維シートやスポンジシートが挙げられる。
【0050】
マスク本体10にポケット11を設けることで、マスク本体10のポケット11にシートを挿入して布製マスク1を着用することができる。これにより、シートの洗濯や交換、シートへの薬剤の噴霧などにより、布製マスク1の交換頻度を下げたり、清潔さを保ったり、布製マスク1の繰り返しの着用により低下した機能を再生させたりすることができる。なお、布製マスク1を用いる場合、必ずしもポケット11にシートを挿入する必要はない。つまり、ポケット11にシートを挿入することなく布製マスク1を着用してもよい。
【0051】
マスク本体10の左右に一対の耳かけ部20が設けられている。つまり、マスク本体10の左右の各々に耳かけ部20が設けられている。一対の耳かけ部20の各々は、マスク着用者の耳が入る大きさの穴を有する。一対の耳かけ部20の一方は、マスク着用者の左耳にかけられる第1の耳かけ部21であり、一対の耳かけ部20の他方は、マスク着用者の右耳にかけられる第2の耳かけ部22である。本実施の形態において、マスク本体10と一対の耳かけ部20とは別体に構成されており、一対の耳かけ部20は、マスク本体10に後付けで取り付けられている。
【0052】
この場合、一対の耳かけ部20は、次のようにしてマスク本体10に取り付けることができる。例えば、適切な長さ、弾性率を有するゴムひも、または、マスク本体10に用いたものと同一の生地を細長く切り出しひも状としたものを、マスク本体10の左右に縫い付けたり、接着剤で接着したり、あらかじめマスク本体10の左右の端部に設けておいた筒状の挿通孔に通して結んだりなどして、一対の耳かけ部20をマスク本体10に取り付けることができる。
【0053】
なお、マスク本体10に後付けで耳かけ部20を取り付けるのではなく、マスク本体10と耳かけ部20とを一体に編んでもよい。つまり、マスク本体10と一対の耳かけ部20とが同じ生地によって一体に構成されていてもよい。
【0054】
次に、本実施の形態に係る布製マスク1の作用効果について説明する。
【0055】
一般的に、季節を問わず長時間マスクの着用を続ける場合、マスク着用者の呼気に含まれる蒸気によって、マスクの内側が蒸れて肌荒れの原因になるおそれがある。これに対して、本実施の形態に係る布製マスク1は、マスク本体10の素材の60質量%以上がポリアミド繊維であり、JIS L1096A法(フラジール形法)にて測定したときのマスク本体10の通気度が10~64cm3/cm2・sであり、JIS L1927にて測定したときのマスク本体10の口に接触する面の最大熱流束が0.2W/cm2以上である、という構成を有する。
【0056】
この構成により、本実施の形態に係る布製マスク1は、上記のように、優れた吸放湿性を有する。つまり、本実施の形態に係る布製マスク1は、マスクの内側(肌側)の湿気を効率良く吸収して外部に放出することができるので、マスク本体10を介して湿度の高い肌側から外側に湿気を逃がすことができる。これにより、マスク本体10の内側の蒸れを抑えることができる。
【0057】
また、本実施の形態に係る布製マスク1は、そのような構成を有することで、上記のように、息苦しさを軽減することもできる。
【0058】
しかも、本実施の形態に係る布製マスク1は、優れた吸放湿性だけではなく、優れた接触冷感を有する。
【0059】
以下、この接触冷感の効果について、
図4A~
図4Dを用いて説明する。
図4A~
図4Dは、マスク着用による顔面温度変化をサーモグラフ撮影により示す図である。
【0060】
図4Aは、実施の形態に係る布製マスク1を着用する前(気温32℃の直射日光下)のサーモグラフを示す図である。
図4Aは、直射日光下で測定した結果を示している。
【0061】
図4Bは、不織布マスクを着用したとき(30分間着用後)のサーモグラフを示す図である。
図4Bは、不織布マスクを30分間着用した直後に測定した結果を示している。
【0062】
図4Cは、実施の形態に係る布製マスク1を着用したとき(30分間着用後)のサーモグラフを示す図である。
図4Cは、本実施の形態に係る布製マスク1を30分間着用した直後に測定した結果を示している。
【0063】
図4Dは、実施の形態に係る布製マスク1のポケット11に、水分を含ませたシート(マスクインナー)を挿入して布製マスク1を着用したとき(30分間着用後)のサーモグラフを示す図である。
図4Dは、水分を含ませたシートをポケット11に挿入した本実施の形態に係る布製マスク1を30分間着用した直後に測定した結果を示している。
【0064】
図4Aと
図4Bとの比較および
図4Aと
図4Cとの比較により、不織布マスクも本実施の形態に係る布製マスク1も着用することで顔の温度は上昇するものの、
図4Bと
図4Cとの比較により、本実施の形態に係る布製マスク1は、不織布マスクに比べて着用時の温度上昇を約2℃も抑えることができた。つまり、本実施の形態に係る布製マスク1は、不織布マスクに比べて、優れた接触冷感を有する。これにより、マスク着用時の息苦しさやムレ感を軽減することができる。
【0065】
さらに、シート(マスクインナー)に水分を含ませて、本実施の形態に係る布製マスク1と組み合わせることで、気化熱による冷却効果の働きから、より一層ひんやり感を得ることができる。具体的には、
図4Bおよび
図4Dとの比較により、本実施の形態に係る布製マスク1のポケット11に、水分を含ませたシートを挿入することで、不織布マスクを着用したときと比べて、温度上昇を3℃も抑えることができた。つまり、水分を含ませたシートをポケット11に挿入して布製マスク1を着用することで、さらに優れた接触冷感を得ることができる。
【0066】
このように、本実施の形態に係る布製マスク1によれば、マスク着用時の息苦しさやムレ感を軽減することができる。
【0067】
(実施例)
以下、本実施の形態に係る布製マスク1について、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で変更を施した態様は、全て本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下の実施例における「%」は、「質量%」を意味する。また、以下の実施例の各評価項目における各種物性などの評価は、次の方法によって行った。
【0068】
[通気度]
マスク本体10に対して、JIS L1096(2010)A法(フラジール形法)に準じて測定した。
【0069】
[最大熱流束(qmax)]
マスク本体10の口に接触する面に対して、JIS L1927(2020)に準じて測定した。
【0070】
[吸放湿性]
マスク本体10を105℃×24時間乾燥した後の重量を測定し、これを絶乾時の重量W0とする。続いて繊維試料を恒温恒湿器(Espec社製PL-1KP)にて20℃×65%RHの雰囲気下中に24時間放置した後の重量を測定し、これをW1とする。引き続き繊維試料を30℃×90%RHの雰囲気下中に24時間放置した後の重量を測定し、これをW2とする。これらから、以下の式1、式2および式3から吸放湿性を算出し、4つの試料(n=4)での測定値の平均値をもって各実施例の布製マスクの吸放湿性とした。
【0071】
AL(%)=(W1-W0)/W0×100・・・(式1)
AH(%)=(W2-W0)/W0×100・・・(式2)
吸放湿性(%)=AH-AL・・・・・・・・・・(式3)
【0072】
[破断伸度]
マスク本体10の経方向および緯方向それぞれに対して、JIS L1096(2010)JIS法 A法(ストリップ法)に準じて試験を行い、切断時の伸び率を破断伸度と
した。
【0073】
[消臭性]
社団法人繊維評価技術協議会のSEKマーク繊維製品認証基準(JEC301)に規定の消臭性試験法(検知管法)に準じて、口臭の原因の代表物質であるメチルメルカプタン減少率を測定した。なお、ガス中に試験体を静置している間は、白色蛍光灯(ネオルミスーパー FL20SW、三菱電機株式会社製)を用い、400lxの光環境とした。
【0074】
[抗菌性]
JIS L1902(2015)に規定の菌液吸収法にて準じて、黄色ブドウ球菌(ATCC6538P)に対する抗菌活性値を測定した。具体的には、黄色ブドウ球菌を菌濃度2.2×105CFU/mLで接種し、白色蛍光灯(ネオルミスーパー FL20SW、三菱電機株式会社製)を用いた400lxの光環境下で18時間培養後、混釈平板培養法にて定量測定を行って得られた培養前後の生菌数、および標準布で同様の試験を行って得られた培養前後の生菌数を基に抗菌活性値を計算した。
【0075】
[抗インフルエンザウイルス性]
JIS L1922(2016)に規定のプラーク測定法に準じ、A型インフルエンザウイルス(H3N2 ATCC VR-1679)をウイルス株として、MDCK細胞(ATCC CCL-34)を宿主細胞として用い、白色蛍光灯(FHF32EX-N-H、パナソニック株式会社製)を用いた200lxの光環境下で2時間作用させ、測定された試験前後の感染価を用いてA型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値を計算した。
【0076】
[抗ヒトコロナウイルス性]
JIS L1922(2016)に規定のプラーク測定法に準じ、ヒトコロナウイルス229E(ATCC VR-740)をウイルス株として、MRC-5細胞(ATCC CCL-171)を宿主細胞として用い、白色蛍光灯(FHF32EX-N-H、パナソニック株式会社製)を用い、200lxの光環境下で2時間作用させ、測定された試験前後の感染価を用いてヒトコロナウイルス229Eに対する抗ウイルス活性値を計算した。
【0077】
[抗SARSコロナウイルス2性]
JIS L1922(2016)に規定のプラーク測定法に準じ、SARSコロナウイルス2(NIID分離株;JPN/TY/WK-521)をウイルス株として、VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819)を宿主細胞として用い、白色蛍光灯(FHF32EX-N-H、パナソニック株式会社製)を用い、1000lxの光環境下で6時間作用させ、測定された試験前後の感染価を用いてSARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性値を計算した。
【0078】
(実施例1)
経糸および緯糸の両方とも83dtexのポリアミド繊維を平織にした平織物を、酸性染料を用いてベージュ色に染色した。次いで、この平織物を170℃で熱セットをし、経糸が115本/2.54cmで緯糸が98本/2.54cmの繊維密度とした。
【0079】
次に、この平織物を縦9cm×横17cmの長方形に切り出してマスク本体10とし、このマスク本体10の四隅に2本のゴムバンドを接着してマスク本体10の左右に耳かけ部20を取り付けて布製マスク1を得た。
【0080】
得られた布製マスク1において、マスク本体10の通気度は48.8cm3/cm2・sであり、マスク本体10の口に接触する面の最大熱流束(qmax)は0.38W/cm2であり、マスク本体10の吸放湿性は3.3%であり、マスク本体10の破断伸度は経方向が28%で緯方向が35%であった。得られた布製マスク1の各種評価結果を表1に示す。
【0081】
図5に示すように、実施例1の布製マスク1は、接触冷感を感じる目安値とされる0.2W/cm
2の1.5倍を超える高い接触冷感を発揮することが分かる。
【0082】
(実施例2)
78dtexのポリアミド86%/44dtexのポリウレタン14%の複合糸を経編にしたトリコット編地を、酸性染料を用いてベージュ色に染色した。次いで、このトリコット編地を170℃で熱セットをし、ウェール方向が52ループ/2.54cmでコース方向が62ループ/2.54cmの繊維密度とした。
【0083】
次に、このトリコット編地を縦17cm×横17cmの正方形に切り出し、マスク本体10の上辺から3cm下の位置、下辺から5cm上の位置を、上辺および下辺に平行に、トリコット編地の畝が内側となるよう折り返してから左辺および右辺を上下方向に縫って、シートを挟持できるポケット11を形成することで、外形が縦9cm×横17cmでポケット付きのマスク本体10を得た。このマスク本体10の四隅に2本のゴムバンドを接着してマスク本体10の左右に耳かけ部20を取り付けて布製マスク1を得た。なお、マスク本体10の口に接触する面は、表面から連続する折り返されたポケット11となり、トリコット編地の平滑な面とした。
【0084】
得られた布製マスク1において、マスク本体10の通気度は37.9cm3/cm2・sであり、マスク本体10の口に接触する面の最大熱流束(qmax)は0.36W/cm2であり、マスク本体10の吸放湿性は3.7%であり、破断伸度は経方向が72%で緯方向が184%であった。得られた布製マスク1の各種評価結果を表1に示す。
【0085】
(実施例3)
78dtexのポリアミド86%/44dtexのポリウレタン14%の繊維を経編にしたトリコット編地を、酸性染料を用いてベージュ色に染色した。次いで、このトリコット編地を、可視光応答型酸化チタン系光触媒0.5%、銀ゼオライト0.4%、およびシリコーン系バインダー0.05%の水分散液中に浸漬させ、脱水、乾燥することで、トリコット編地の繊維表面に光触媒と銀が担持されたゼオライト粒子とを付着させた。その後、このトリコット編地を170℃で熱セットをし、ウェール方向が52ループ/2.54cmでコース方向が62ループ/2.54cmの繊維密度とした。
【0086】
このようにして得られた生地は、メチルメルカプタン減少率が98%であり、抗菌活性値が4.2であり、A型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値が3.11であり、ヒトコロナウイルス229Eに対する抗ウイルス活性値が4.70であり、SARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性値が3.8以上であった。
【0087】
また、得られた生地を実施例2と同様に加工してマスク本体10を作製し、実施例2と同様にしてマスク本体10に耳かけ部20を取り付けて布製マスク1を得た。
【0088】
得られた布製マスク1において、マスク本体10の通気度は37.0cm3/cm2・sであり、マスク本体10の口に接触する面の最大熱流束(qmax)は0.36W/cm2であり、マスク本体10の吸放湿性は3.2%であり、破断伸度は経方向が73%で緯方向が181%であった。得られた布製マスク1の各種評価結果を表1に示す。
【0089】
(実施例4)
78dtexのポリアミド86%/44dtexのポリウレタン14%の繊維を経編にしたトリコット編地を、酸性染料を用いてベージュ色に染色した。次いで、このトリコット編地を、銀ゼオライト0.8%、およびシリコーン系バインダー0.05%の水分散液中に浸漬させ、脱水、乾燥することで、トリコット編地の繊維表面に銀が担持されたゼオライト粒子を付着させた。その後、このトリコット編地を170℃で熱セットをし、ウェール方向が52ループ/2.54cmでコース方向が62ループ/2.54cmの繊維密度とした。
【0090】
このようにして得られた生地は、メチルメルカプタン減少率が99%であり、抗菌活性値が4.3であり、A型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値が3.22であり、ヒトコロナウイルス229Eに対する抗ウイルス活性値が3.01であり、SARSコロナウイルス2に対する抗ウイルス活性値が1.48であった。
【0091】
また、得られた生地を実施例2と同様に加工してマスク本体10を作製し、実施例2と同様にしてマスク本体10に耳かけ部20を取り付けて布製マスク1を得た。
【0092】
得られた布製マスク1において、マスク本体10の通気度は37.5cm3/cm2・sであり、マスク本体10の口に接触する面の最大熱流束(qmax)は0.35W/cm2であり、マスク本体10の吸放湿性は3.0%であり、破断伸度は経方向が69%で緯方向が176%であった。得られた布製マスク1の各種評価結果を表1に示す。
【0093】
【符号の説明】
【0094】
1 布製マスク
10 マスク本体
11 ポケット
11a 開口部
20 耳かけ部
21 第1の耳かけ部
22 第2の耳かけ部