(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079614
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】空気供給システム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20220519BHJP
B60T 13/36 20060101ALI20220519BHJP
B60T 8/00 20060101ALI20220519BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/36
B60T8/00 Z
B60T7/12 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055895
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2019511284の分割
【原出願日】2018-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2017074285
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】田中 克典
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐介
(57)【要約】
【課題】保安性を高めた空気供給システムを提供する。
【解決手段】車両のサービスブレーキを空気圧で作動及び解除するブレーキ機構に圧縮空気を供給する空気供給システムは、第1空気供給部と、第2空気供給部と、ブレーキ機構に第1空気供給部及び第2空気供給部のうちから選択した一方を連通させて、ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を当該選択した一方に行わせるように構成された選択部と、第1空気供給部が空気圧の供給及び排出を行う第1通路と第2空気供給部が空気圧の排出を行う第2通路との間に設けられ、第2通路から第1通路への方向を順方向とするチェック弁と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサービスブレーキを空気圧で作動及び解除するブレーキ機構に圧縮空気を供給する空気供給システムであって、
前記ブレーキ機構に対して空気圧の供給及び排出を行うように構成された第1空気供給部と、
前記ブレーキ機構に対して空気圧の供給及び排出を行うように構成された第2空気供給部と、
前記ブレーキ機構に前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部のうちから選択した一方を連通させて、前記ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を当該選択した一方に行わせるように構成された選択部と、
前記第1空気供給部が空気圧の供給及び排出を行う第1通路と前記第2空気供給部が空気圧の排出を行う第2通路との間に設けられ、前記第2通路から前記第1通路への方向を順方向とするチェック弁と、を備える
空気供給システム。
【請求項2】
前記第2空気供給部は、前記第1空気供給部が停止しているとき、前記第1空気供給部に替わって、前記ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を行うように構成されている
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記選択部は、前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部からより高い空気圧を有する方を選択するように構成されている
請求項1又は2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記チェック弁には、オリフィスが直列に接続されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【請求項5】
前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部に替わって空気圧を前記ブレーキ機構に供給するように構成された強制ブレーキ部を備え、
前記第2空気供給部は、前記第2空気供給部及び前記強制ブレーキ部のうちからより高い空気圧を有する方を選択して前記選択部に連通するように構成された切替部を備える
請求項1~4のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサービスブレーキを作動及び解除するブレーキ機構に対して空気の供給及び空気の排出を行う空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両には、動力源を圧縮空気とする空気圧ブレーキシステムが設けられている。空気圧ブレーキシステムは、サービスブレーキ(フットブレーキ)を作動及び解除するブレーキ機構と、パーキングブレーキを作動及び解除するブレーキ機構と、コンプレッサに貯留された圧縮空気を各ブレーキ機構に供給する空気供給システムとを備えている。最近では、電子制御ユニットによって制御される空気供給システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、空気供給システムに異常が生じた場合に、その異常が生じた空気供給システムに替わってブレーキ機構に空気を供給する保安用の空気供給システムも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように空気供給システムを2重化したとしても、凍結に対する保安機能としてはなお改善の余地がある。すなわち、空気供給システムは、空気回路の各末端に空気回路内の不要な空気を排出する排出口を備えている。この排出口には大気中の水分や排気中の水分が付着して、付着した水分が低温になると凍結して排出口からの空気の排出が阻害されて、ブレーキの開放動作に影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、保安性を高めた空気供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する空気供給システムは、車両のサービスブレーキを空気圧で作動及び解除するブレーキ機構に圧縮空気を供給する空気供給システムであって、前記ブレーキ機構に対して空気圧の供給及び排出を行うように構成された第1空気供給部と、前記ブレーキ機構に対して空気圧の供給及び排出を行うように構成された第2空気供給部と、前記ブレーキ機構に前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部のうちから選択した一方を連通させて、前記ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を当該選択した一方に行わせるように構成された選択部と、前記第1空気供給部が空気圧の供給及び排出を行う第1通路と前記第2空気供給部が空気圧の排出を行う第2通路との間に設けられ、前記第2通路から前記第1通路への方向を順方向とするチェック弁と、を備える。
【0008】
このような構成によれば、通常は大気開放されている、第2空気供給部が空気圧の排出を行う通路(第2通路)の空気圧が高くなったようなときであれ、その空気圧がチェック弁を介して、第1空気供給部が空気圧の供給及び排出を行う通路(第1通路)に抜けるようになる。よって、排出口の凍結などの不都合が第2空気供給部が空気圧の排出を行う通路に生じて空気圧が抜けないときであっても、第1空気供給部を通じての空気圧の排出が可能になる。通常、ブレーキ機構としては、1系統が作動しているとき、他の系統は停止していることが好ましい。すなわち、第2空気供給路が作動している場合に停止している第1空気供給部はその空気圧の供給及び排出を行う通路が大気圧に開放されていることから、第2空気供給路が空気圧の排出を行う通路から空気圧の排出が好適になされる。これにより、空気供給システムの保安性を高めることができる。
【0009】
上記空気供給システムについて、前記第2空気供給部は、前記第1空気供給部が停止しているとき、前記第1空気供給部に替わって、前記ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を行うように構成されている。
【0010】
このような構成によれば、冗長化された空気供給システムについて、作動する機会の少ない第2空気供給部について保安性を高めることができる。つまり、一般に常用される第1空気供給部の方が凍結等の不都合に高い耐性を有する構成とされていることが多いため、第2空気供給部の排出を行う排出口に不都合が生じていたとしても、第1空気供給部が空気圧の供給及び排出を行う排出路から適正に排出できる蓋然性が高い。
【0011】
上記空気供給システムについて、前記選択部は、前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部からより高い空気圧を有する方を選択するように構成されている。
このような構成によれば、選択部はいわゆるシャトル弁であり、高い空気圧が選択部で選択され、第1空気供給部を冗長化したシステムにおいて、バックアップ用の第2空気供給部を有する空気供給システムにおいて保安性を高めることができる。
【0012】
上記空気供給システムについて、前記チェック弁には、オリフィスが直列に接続されている。
このような構成によれば、空気圧の排出が行われると第2空気供給部が空気圧の排出を行う通路に急激な圧力変動が生じるおそれがある。圧力変動がオリフィスを介して第1空気供給部が空気圧の供給及び排出を行う通路に伝わるので、該通路に印加される圧力変動が緩和されるようになる。これにより、第2空気供給部が空気圧の排出を行う通路の空気圧が第1空気供給部に抜けたとしても、第1空気供給部に不都合などが生じるおそれが低減される。
【0013】
上記空気供給システムについて、前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部に替わって空気圧を前記ブレーキ機構に供給するように構成された強制ブレーキ部を備え、前記第2空気供給部は、前記第2空気供給部及び前記強制ブレーキ部のうちからより高い空気圧を有する方を選択して前記選択部に連通するように構成された切替部を備える。
【0014】
このような構成によれば、ブレーキシステムが第1空気供給部と第2空気供給部とに加え強制ブレーキ部で冗長化された空気供給システムの保安性が高められる。例えば、隊列走行する無人運転車両のように冗長化された空気供給システムの信頼性がより高められるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、空気供給システムの保安性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態の空気供給システムが搭載された車両が形成する隊列を示す図。
【
図2】
図1の実施形態の空気圧ブレーキシステムのブロック図。
【
図3】
図1の実施形態の空気供給システムの概略構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図3を参照して、空気供給システムを、隊列走行を行う車両の空気圧ブレーキシステムに適用した一実施形態について説明する。空気圧ブレーキシステムは、パーキングブレーキとサービスブレーキとを作動及び解除する。
【0018】
図1を参照して、隊列走行について説明する。隊列走行においては、荷台が一体に設けられたトラック(カーゴ車両)等の車両1によって隊列が形成される。隊列を形成する車両1には、運転者により運転される先頭車両1aと、無人の後続車両1bとが含まれる。車両1は、隊列走行を制御するマスタECU(電子制御装置:Electronic Control Unit)60をそれぞれ備える。先頭車両1aのマスタECU60と、各後続車両1bのマスタECU60とは、無線通信によって各種情報を送受信し、先頭車両1aと後続車両1bとは、一定の車間距離を維持しながら走行する。先頭車両1aは、運転者のブレーキ操作に基づきブレーキを作動し、後続車両1bは、直前を走行中の車両1が減速したときに当該車両1に追従してブレーキを作動させる。なお、先頭車両1aは運転者により運転操作される車両であるため、先頭車両1aの空気圧ブレーキシステムと後続車両1bの空気圧ブレーキシステムとは同じ構成である必要は無いが、同一の構成であってもよい。本実施形態では、先頭車両1aの空気圧ブレーキシステム及び後続車両1bの空気圧ブレーキシステムは同一の構成とする。また、
図1では、3台の車両1によって隊列を形成したが、隊列を形成する車両1の数は複数であればよい。
【0019】
次に、
図2を参照して、車両1のブレーキシステムの概略構成について説明する。
車両1は、ブレーキ機構としてのブレーキチャンバ50と、第1空気供給部としての第1ブレーキモジュール100と、第2空気供給部としての第2ブレーキモジュール200と、強制ブレーキ部を構成する強制ブレーキモジュール300とを備えている。ブレーキチャンバ50は、車両1の車輪毎に設けられる。また、第1ブレーキモジュール100は、車両1の車輪毎に設けられる。また、第2ブレーキモジュール200は、車両1の車輪毎に設けられる。また、強制ブレーキモジュール300は、第2ブレーキモジュール200に接続するかたちで車両1の車輪毎に設けられる。
図2では、複数の車輪のうち、1つの車輪に対して設けられたブレーキチャンバ50、第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200及び強制ブレーキモジュール300を示している。一方、
図2では、複数の車輪のうち、前述した1つの車輪以外の車輪に対して設けられたブレーキチャンバ50、第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200及び強制ブレーキモジュール300の図示を省略している。
【0020】
第1ブレーキモジュール100は、通常状態であるときに動作するブレーキモジュールである。車両1は、第1ブレーキモジュール100が通常状態であれば、第2ブレーキモジュール200よりも優先して第1ブレーキモジュール100を使用する。一方、車両1は、第1ブレーキモジュール100が通常状態ではない場合、第2ブレーキモジュール200を使用する。第1ブレーキモジュール100が通常状態ではない場合とは、第1ブレーキモジュール100が使用できない非常状態等である。
【0021】
第1ブレーキモジュール100の入力ポート14は、ブレーキ用エアタンク10に接続されている。ブレーキ用エアタンク10と入力ポート14とを接続する第1出力路11と第1タンク通路13との間には、ブレーキ用エアタンク10に貯留された圧縮空気を乾燥するフィルタ12が設けられている。第1ブレーキモジュール100の出力ポート15は、第1ブレーキ通路16、シャトル弁40及びチャンバ接続路41を介してブレーキチャンバ50に接続されている。
【0022】
ブレーキチャンバ50は、サービスブレーキを制御する第1制御室51と、パーキングブレーキを制御する第2制御室52とを備えている。また、ブレーキチャンバ50は、スプリング55と、先端に楔53を備えるプッシュロッド54とを有している。プッシュロッド54は、スプリング55の付勢力によって、楔53がブレーキチャンバ50から伸長する方向に移動するように付勢されている。伸長する方向とはすなわち、楔53が車輪に設けられたブレーキライニング(図示略)に向かって移動する方向である。通常状態では、第1制御室51には、ブレーキ用エアタンク10に貯留されていた空気が、第1ブレーキモジュール100から運転者のブレーキペダルの操作量に応じた量だけ供給される。また、通常状態ではないとき、第1制御室51には、サスペンション用エアタンク20に貯留されていた空気が、第2ブレーキモジュール200を介して供給される。
【0023】
第1制御室51に空気が供給されると、第1制御室51の空気圧によってプッシュロッド54が車輪に向かって移動する。そして、プッシュロッド54の先に設けられた楔53がブレーキライニングに差し込まれ、ブレーキライニングを押し広げると、ブレーキシューとブレーキライニングとの摩擦によりサービスブレーキが作動する。逆に、第1制御室51から第1ブレーキモジュール100に空気が排出されると、楔53がブレーキライニングから退出して、サービスブレーキが解除される。
【0024】
第2制御室52は、ポートP5を介して図示しない別の空気供給システムに接続されている。第2制御室52から別の空気供給システムに空気が排出されると、スプリング55が伸張してプッシュロッド54を車輪に向かって移動させる。そして、楔53が車輪に設けられたブレーキライニングを押し広げることで、パーキングブレーキが作動する。逆に、第2制御室52に別の空気供給システムから空気が供給されると、スプリング55が圧縮されて、楔53がブレーキライニングから退出し、パーキングブレーキが解除される。別の空気供給システムは、パーキングブレーキ用の空気供給システムであって、上述した第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200又は強制ブレーキモジュール300とは別に設けられている。
【0025】
なお、第2制御室52を有するブレーキチャンバ50は、車両1の後輪に設けられるものであって、車両1の前輪には、第1制御室51、プッシュロッド54及び楔53を備えるブレーキチャンバ(図示略)が設けられている。このブレーキチャンバは、サービスブレーキを作動及び解除させるものであることから、このブレーキチャンバにも、第1ブレーキモジュール100又は第2ブレーキモジュール200によって空気が供給及び排出される。
【0026】
第2ブレーキモジュール200の入力ポート26は、第1通路25、開閉弁24、フィルタ22及び第2タンク通路23を介して、車両1のエアサスペンション(懸架装置)に備えられるサスペンション用エアタンク20に接続されている。第2出力路21と第2タンク通路23との間には、サスペンション用エアタンク20に貯留された圧縮空気を乾燥するフィルタ22が設けられ、フィルタ22の下流にあって第2タンク通路23と第1通路25との間には通路を開閉する開閉弁24が設けられている。第2ブレーキモジュール200の出力ポート27は、第2ブレーキ通路28、シャトル弁40、チャンバ接続路41を介して、ブレーキチャンバ50の第1制御室51に接続されている。
【0027】
強制ブレーキモジュール300の入力ポート31は、第1通路25、開閉弁24、第2タンク通路23、フィルタ22及び第2出力路21を介して、サスペンション用エアタンク20に接続されている。強制ブレーキモジュール300の出力ポート32は、第4通路33を介して、第2ブレーキモジュール200に接続されている。第4通路33は、第2ブレーキモジュール200に空気圧信号(パイロット圧)を出力するための通路である。
【0028】
開閉弁24は、常時開かれており、第2ブレーキモジュール200の出力ポート27に圧縮空気を供給している。一方、開閉弁24は、強制ブレーキモジュール300による強制ブレーキ作動後、この強制ブレーキを解除したいときに閉じられる。詳述すると、開閉弁24が閉じられると、第2ブレーキモジュール200や強制ブレーキモジュール300に圧縮空気が供給されなくなる。よって、第2ブレーキモジュール200は、ブレーキチャンバ50の第1制御室51に圧縮空気を供給できなくなることから、第2ブレーキモジュール200や強制ブレーキモジュール300の動作状態にかかわらず、強制ブレーキモジュール300が強制的に作動させたサービスブレーキ(強制ブレーキ)も解除される。
【0029】
第1ブレーキモジュール100は、第1制御装置61によって制御される。第2ブレーキモジュール200は、第2制御装置62によって制御される。強制ブレーキモジュール300は、マスタECU60によって制御される。マスタECU60、第1制御装置61及び第2制御装置62は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワーク64に接続され、各種情報を送受信可能に構成されている。マスタECU60は、車速センサ63や、その他のセンサから車両情報が入力され、第1制御装置61及び第2制御装置62に対して指令を送信する。第1制御装置61及び第2制御装置62は、マスタECU60からの指令に基づき各種処理を実行する。また、第1制御装置61、第2制御装置62及びマスタECU60は、単独又は相互監視を通じて第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200の正常や異常を判定するとともに、判定結果を共有する。また、マスタECU60には、検出器としての第4圧力センサ(U/P)320に検出された空気圧を取得する。第4圧力センサ320は、強制ブレーキモジュール300の第3通路316の空気圧を検出する。
【0030】
第1ブレーキモジュール100は、第1制御装置61からの制御によってブレーキ力を調整することができる。第2ブレーキモジュール200は、第2制御装置62からの制御によってブレーキ力を調整することができる。一方、強制ブレーキモジュール300は空気圧が所定の強制ブレーキ圧に設定されている。強制ブレーキ圧は、所定の低速(例えば20km/h)から適切に停止できる制動力を付与することができる圧力に設定されるが、適切に停止できれば実験や論理値として得られる任意の値を設定することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、ブレーキ用エアタンク10、サスペンション用エアタンク20、第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200、及び強制ブレーキモジュール300と、これらタンク及びモジュール同士の接続部分を含む部分とが空気圧ブレーキシステムを構成する。また、マスタECU60、第1制御装置61、第2制御装置62、及び、ブレーキチャンバ50が空気圧ブレーキシステムを構成する。
【0032】
次に、
図3を参照して、第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200及び強制ブレーキモジュール300の概略構成について説明する。また、
図3では、1つの車輪に対して設けられた第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200と、その第2ブレーキモジュール200に接続する強制ブレーキモジュール300を示している。なお、本実施形態では、第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200、及び強制ブレーキモジュール300と、これらモジュール同士の接続部分を含む部分とが空気供給システムに相当する。
【0033】
なお、第1ブレーキモジュール100、第2ブレーキモジュール200や強制ブレーキモジュール300では、空気の流れる方向にかかわらず、ブレーキ用エアタンク10やサスペンション用エアタンク20に近い側を上流側とし、ブレーキチャンバ50に近い側を下流側として説明する。つまり、供給の場合、空気は上流側から下流側へ順方向に流れるが、排出の場合、空気は下流側から上流側へ逆方向に流れる。
【0034】
まず、第1ブレーキモジュール100について説明する。第1ブレーキモジュール100は、ポートP1にブレーキバルブ(図示略)が接続され、ポートP1を介して運転者による操作に応じたブレーキバルブ(図示略)からの空気圧信号が入力される。また、第1ブレーキモジュール100は、ポートP2にブレーキ用エアタンク10が接続され、ポートP2を介してブレーキ用エアタンク10から圧縮空気が供給される。また、第1ブレーキモジュール100は、第1ブレーキ通路16がブレーキチャンバ50に接続され、ブレーキチャンバ50に供給するブレーキ操作用の空気圧信号を第1ブレーキ通路16(16A,16B)から出力する。
【0035】
第1ブレーキモジュール100は、第1電磁制御弁110、第2電磁制御弁120、第3電磁制御弁130、第1圧力調整弁140、及び、第1圧力計150を備えている。また、第1ブレーキモジュール100は、第1圧力調整弁140の下流側に第2シャトル弁40A及び第3シャトル弁40Bが接続されている。
【0036】
第1電磁制御弁110は、上流側にブレーキバルブ回路114が接続され、下流側に第1ブレーキ圧力信号通路125を介して第1圧力調整弁140が接続されている。第1電磁制御弁110は、信号入力ポート111が第1制御装置61に接続されている。
【0037】
第1圧力調整弁140は、信号入力ポート141に入力された空気圧信号に対応する圧力の空気を出力側に出力する弁である。第1圧力調整弁140は、信号入力ポート141に第1ブレーキ圧力信号通路125が接続され、入力側に第1タンク通路13及び排出路135が接続され、出力側に第1ブレーキ通路16が接続されている。
【0038】
第2電磁制御弁120及び第3電磁制御弁130は、第1ブレーキ圧力信号通路125を介して直列接続されているとともに、第1ブレーキ圧力信号通路125を介して第1圧力調整弁140に接続されている。第2電磁制御弁120は、上流側に第1タンク通路13が接続され、下流側に第1ブレーキ圧力信号通路125を介して第3電磁制御弁130及び第1圧力調整弁140が接続されている。第3電磁制御弁130は、上流側に第1ブレーキ圧力信号通路125が接続され、下流側に排出路135が接続される。第2電磁制御弁120の信号入力ポート121及び第3電磁制御弁130の信号入力ポート131はそれぞれ第1制御装置61に接続されている。すなわち、第1圧力調整弁140には、第1ブレーキ圧力信号通路125を介して第2電磁制御弁120と第3電磁制御弁130と動作に応じた空気の圧力が供給される。排出路135の下流側には排出口160が接続される。排出口160は、空気供給回路に供給された空気を排出するための端末装置であって、排出路135を大気開放している。また、排出口160は、空気の排出が滞るようなことがあると、第1ブレーキモジュール100の第1ブレーキ通路16から出力される空気圧が適正な圧力にならず、ブレーキチャンバ50の作動に不良を生じるおそれもある。そこで、本実施形態で通常状態で使用される、いわゆる常用される第1ブレーキモジュール100の排出口160は、空気の排出が滞るおそれが低減される構成を有している。例えば、排出口160は、排出口160に付着した水分が凍結して空気の流れを悪化させたり、妨害したりするおそれがあるため、その形状を水分が付着しづらい形状に工夫したり、ヒータを取り付けたり、外気への暴露が少ない位置へ取り付けたりすること等で凍結を抑えることができる対策が施されている。よって、本実施形態の排出口160は、低温環境下でも第1ブレーキモジュール100が正常に作動するようにしている。なお、こうした排出口160は、コストを要したり、メンテナンスが必要であったり、設置位置に制約があったりする。
【0039】
第1圧力計150は、第1制御装置61に接続されており、検出値を第1制御装置61へ出力する。
第1電磁制御弁110、第2電磁制御弁120、第3電磁制御弁130は、第1制御装置61によって制御される。詳述すると、第2電磁制御弁120は、第1制御装置61による制御によって、第1タンク通路13と第1ブレーキ圧力信号通路125とを連通する接続位置と、第1タンク通路13と第1ブレーキ圧力信号通路125とを遮断する遮断位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第2電磁制御弁120は、非通電状態でバルブスプリング122の付勢力により接続位置となり、通電状態で遮断位置となる。第3電磁制御弁130は、第1制御装置61による制御によって、第1ブレーキ圧力信号通路125と排出路135とを連通する接続位置と、第1ブレーキ圧力信号通路125と排出路135とを遮断する遮断位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第3電磁制御弁130は、非通電状態でバルブスプリング132の付勢力により接続位置となり、通電状態で遮断位置となる。
【0040】
第2電磁制御弁120及び第3電磁制御弁130は、第1制御装置61の制御によって第1ブレーキ圧力信号通路125の空気圧信号が調節される。第2電磁制御弁120が接続位置及び第3電磁制御弁130が遮断位置であることにより、第1圧力調整弁140の信号入力ポート141には、ブレーキ用エアタンク10の圧縮空気の圧力が印加される。また、第2電磁制御弁120が遮断位置及び第3電磁制御弁130が遮断位置であることにより、第1圧力調整弁140の信号入力ポート141には、現状の空気圧の印加が維持される。また、第2電磁制御弁120が遮断位置及び第3電磁制御弁130が接続位置であることにより、第1圧力調整弁140の信号入力ポート141は、大気圧に開放される。
【0041】
第1電磁制御弁110は、第1制御装置61による制御によって、ブレーキバルブ回路114と第1ブレーキ圧力信号通路125とを連通する接続位置と、ブレーキバルブ回路114と第1ブレーキ圧力信号通路125とを遮断する遮断位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第1電磁制御弁110は、非通電状態でバルブスプリング112の付勢力により接続位置となり、通電状態で遮断位置となる。詳述すると、第1電磁制御弁110は、空気供給システムが正常であるとき、通電状態とされて遮断位置となり、空気供給システムに異常があるとき、非通電状態とされて接続位置となる。
【0042】
第1圧力調整弁140は、上流側が第1ブレーキ圧力信号通路125を介してブレーキ用エアタンク10に接続され、下流側が第1ブレーキ通路16に接続されている。第1圧力調整弁140は、その信号入力ポート141に入力される空気圧信号に応じた圧力の圧縮空気を第1ブレーキ通路16に出力する。
【0043】
よって、第1ブレーキモジュール100は、第1電磁制御弁110が遮断位置にあるとき、第2電磁制御弁120及び第3電磁制御弁130の制御によって調節された空気圧信号が第1圧力調整弁140の信号入力ポート141に入力されるとともに、入力された空気圧信号に応じた圧縮空気が第1圧力調整弁140から出力される。一方、第1ブレーキモジュール100は、第1電磁制御弁110が接続位置のとき、ブレーキバルブ(図示略)からの運転者による操作に応じた空気圧信号が第1圧力調整弁140の信号入力ポート141に入力されるとともに、入力された空気圧信号に応じた圧縮空気が第1圧力調整弁140から出力される。
【0044】
また、第1ブレーキ通路16には第1圧力計(U/P)150が設けられており、この第1圧力計150の検出値が第1制御装置61に入力されて、第2電磁制御弁120及び第3電磁制御弁130による圧力調整が行われるようになっている。
【0045】
次に、強制ブレーキモジュール300について説明する。強制ブレーキモジュール300は、ポートP4にサスペンション用エアタンク20が接続され、ポートP4を介してサスペンション用エアタンク20から圧縮空気が供給される。また、強制ブレーキモジュール300は、第4通路33が第2ブレーキモジュール200を介してブレーキチャンバ50に接続され、ブレーキチャンバ50に供給する強制ブレーキ用の空気圧信号を第1ブレーキ通路16(16A,16B)から出力させる。
【0046】
強制ブレーキモジュール300は、第6電磁制御弁310及び空気圧制御弁330を備えている。強制ブレーキモジュール300は、第6電磁制御弁310及び空気圧制御弁330を直列接続させている。また、第6電磁制御弁310は、サスペンション用エアタンク20がポートP4、第2タンク通路23、開閉弁24及び第1通路25を介して接続されている。
【0047】
第6電磁制御弁310は、3ポート2位置弁であって、上流側に第1通路25及び回路の空気を排出する排出口340に接続する排出路315が接続され、下流側に第3通路316が接続される。第6電磁制御弁310は、信号入力ポート311が接続されるマスタECU60によって制御され、第1通路25と第3通路316とを連通する接続位置と、第1通路25を遮断するとともに、第3通路316と排出路315とを接続する排出位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第6電磁制御弁310は、バルブスプリング312の付勢力により接続位置となるように構成され、非通電状態で接続位置となり、通電状態で排出位置となる。
【0048】
空気圧制御弁330は、3ポート2位置弁の空気圧信号によって制御される弁であって、上流側が第6電磁制御弁310側の第3通路316と排出路315とに接続され、下流側が第4通路33に接続される。空気圧制御弁330は、上流側の第3通路316を遮断して空気圧制御弁330の下流側の第4通路33を排出路315に接続する排出位置、第3通路316と第4通路33とを連通する接続位置との2つに位置を変更可能に構成されている。空気圧制御弁330の信号入力ポート331は、ポートP5を介して、ブレーキチャンバ50の第2制御室52に接続されている。よって、第2制御室52から空気が排出されることでパーキングブレーキが作動したとき、信号入力ポート331には空気圧信号が入力されない。逆に、第2制御室52に空気が供給されることでパーキングブレーキが作動したとき、信号入力ポート331には空気圧信号が入力される。空気圧制御弁330は、バルブスプリング332の付勢力により排出位置となるように構成され、信号入力ポート331に空気圧信号を入力しない場合には排出位置となり、空気圧信号を入力した場合には接続位置となる。
【0049】
次に、第2ブレーキモジュール200について説明する。第2ブレーキモジュール200は、ポートP3にサスペンション用エアタンク20が第2タンク通路23、開閉弁24及び第1通路25を介して接続されており、ポートP3を介してサスペンション用エアタンク20から圧縮空気が供給される。また、第2ブレーキモジュール200は、第2ブレーキ通路28がブレーキチャンバ50に接続され、ブレーキチャンバ50に供給するブレーキ操作用の空気圧信号を第2ブレーキ通路28から出力する。
【0050】
第2ブレーキモジュール200は、第4電磁制御弁220、第5電磁制御弁230、第1シャトル弁240、及び、切替部としての第2圧力調整弁250を備えている。また、第2ブレーキモジュール200は、第2ブレーキ通路28の下流側に選択部としての第2シャトル弁40A及び選択部としての第3シャトル弁40Bが接続される。第1~第3シャトル弁240,40A,40Bは、2入力1出力の弁である。
【0051】
第1シャトル弁240は、一方の入力に第1通路25が接続され、他方の入力に第2ブレーキ空気圧信号通路225が接続され、出力に選択ブレーキ空気圧信号通路241が接続されている。
【0052】
第2シャトル弁40Aは、一方の入力に第1ブレーキ通路16(16A)が接続され、他方の入力に第2ブレーキ通路28が接続され、出力にチャンバ接続路41Aが接続されている。チャンバ接続路41Aには、第2圧力計270が接続されている。
【0053】
第3シャトル弁40Bは、一方の入力に第1ブレーキ通路16(16B)が接続され、他方の入力に第2ブレーキ通路28が接続され、出力にチャンバ接続路41Bが接続されている。チャンバ接続路41Bには、第3圧力計271が接続されている。
【0054】
第4電磁制御弁220の信号入力ポート221及び第5電磁制御弁230の信号入力ポート231はそれぞれ、第2制御装置62に接続されている。よって、第4電磁制御弁220及び第5電磁制御弁230は、第2制御装置62に制御される。
【0055】
第4電磁制御弁220は、第2制御装置62による制御によって、第1通路25と第2ブレーキ空気圧信号通路225とを連通する接続位置と、第1通路25と第2ブレーキ空気圧信号通路225とを遮断する遮断位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第4電磁制御弁220は、非通電状態でバルブスプリング222の付勢力により接続位置となり、通電状態で遮断位置となる。
【0056】
第5電磁制御弁230は、第2制御装置62による制御によって、第2ブレーキ空気圧信号通路225と排出路235とを連通する接続位置と、第2ブレーキ空気圧信号通路225と排出路235とを遮断する遮断位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第5電磁制御弁230は、非通電状態でバルブスプリング232の付勢力により接続位置となり、通電状態で遮断位置となる。
【0057】
第4電磁制御弁220及び第5電磁制御弁230は、第2制御装置62の制御によって第2ブレーキ空気圧信号通路225の空気圧信号が調節される。第4電磁制御弁220が接続位置及び第5電磁制御弁230が遮断位置であることにより、第1シャトル弁240の他方の入力に第2ブレーキ空気圧信号通路225からの空気圧信号が入力される。第2制御装置62や、第4電磁制御弁220及び第5電磁制御弁230が正常である場合、一方の入力に接続された第1通路25は大気圧に開放されていて空気圧が印加されないことから、第1シャトル弁240は、出力である選択ブレーキ空気圧信号通路241に第2ブレーキ空気圧信号通路225からの空気圧信号を出力する。
【0058】
第2圧力調整弁250は、信号入力ポート251に入力された空気圧信号に対応する圧力の空気を出力側に出力する弁である。第2圧力調整弁250は、信号入力ポート251に選択ブレーキ空気圧信号通路241が接続され、入力側に第1通路25及び排出路235が接続され、出力側に第2ブレーキ通路28が接続されている。
【0059】
第2圧力調整弁250の信号入力ポート251には、第1シャトル弁240からの空気圧信号が印加される。このとき、第4電磁制御弁220が遮断位置及び第5電磁制御弁230が遮断位置であることにより、第2圧力調整弁250の信号入力ポート251には、現状の空気圧の印加が維持される。また、第4電磁制御弁220が遮断位置及び第5電磁制御弁230が接続位置であることにより、第2圧力調整弁250の信号入力ポート251は大気圧に開放される。
【0060】
よって、第2圧力調整弁250は、信号入力ポート251に入力された空気圧信号に応じた空気圧を第2ブレーキ通路28に出力する。また、第2圧力調整弁250は、信号入力ポート251が大気圧に開放されているとき第2ブレーキ通路28も大気圧に開放する。なお、第2ブレーキモジュール200は、第1ブレーキモジュール100の動作が正常であれば、第2ブレーキ通路28は常に大気開放されるように第2制御装置62及びマスタECU60により制御されている。
【0061】
第2シャトル弁40A及び第3シャトル弁40Bはそれぞれ、一方の入力に第1ブレーキ通路16(16A,16B)が接続され、他方の入力に第2ブレーキ通路28が接続されている。また、第2シャトル弁40Aは、出力側であるチャンバ接続路41AがポートP10を介してブレーキチャンバ50に接続され、第3シャトル弁40Bは、出力側であるチャンバ接続路41BがポートP11を介してブレーキチャンバ50とは別のブレーキチャンバ(図示略)に接続される。第1ブレーキモジュール100の動作が正常であれば、第2ブレーキモジュール200の第2ブレーキ通路28は大気開放されているので、各チャンバ接続路41A,41Bには第1ブレーキ通路16から伝達される空気圧が出力される。一方、第1ブレーキモジュール100の動作が異常であれば、第1ブレーキ通路16が大気開放されるとともに、第2ブレーキモジュール200の第2ブレーキ通路28に第2ブレーキモジュール200又は強制ブレーキモジュール300で調整された空気圧が出力される。そして、各チャンバ接続路41A,41Bには第2ブレーキ通路28から伝達される空気圧が出力される。また、チャンバ接続路41Aには第2圧力計(U/P)270が設けられ、チャンバ接続路41Bには第3圧力計(U/P)271が設けられており、これら第2圧力計270及び第3圧力計271の検出値が第2制御装置62に入力されて、第4電磁制御弁220及び第5電磁制御弁230による圧力調整が行われるようになっている。
【0062】
ところで、第2ブレーキモジュール200の第2ブレーキ空気圧信号通路225を大気圧に開放するためには、第4電磁制御弁220が遮断位置及び第5電磁制御弁230が接続位置である必要があるとともに、第5電磁制御弁230の出力側の排出路235が排出口236によって大気開放されている必要がある。しかしながら、排出口236は、外気温が低温であるとき、排気や外気に含まれている水分が付着し、これらが凍結することで空気の排出が妨げられるおそれがある。そこで、第1ブレーキモジュール100の排出口160と同様に、排出口236の構造を工夫したりヒータを取り付けたりすることも考えられるが、排出口236は、常用されない排出口であるため、構造を複雑にしたり、コストをかけることはできれば避けたい。その一方、排出口236の通気が妨げられると、第2ブレーキモジュール200が作動したとき第2ブレーキ空気圧信号通路225が大気圧に開放されなくなるため、サービスブレーキが解除されなかったり、解除が不足してブレーキがかかったまま走行して、ブレーキが過熱したりするおそれもある。
【0063】
そこで、本実施形態の空気供給システムは、排出口236の通気が妨げられたような場合であっても、第2ブレーキ空気圧信号通路225を大気圧に開放することができるための構成を備えている。詳述すると、第2ブレーキモジュール200の排出路235と第1ブレーキモジュール100から延びる第1ブレーキ通路16Aとの間に、オリフィス280と逆止弁(チェック弁)282とを直列に設け、同排出路235と第1ブレーキ通路16Bとの間に、オリフィス281と逆止弁(チェック弁)283とを直列に設けた。各逆止弁282,283は、排出路235から第1ブレーキ通路16への方向への空気の流れを許容する一方、第1ブレーキ通路16から排出路235への方向への空気の流れは許容しない構成となっている。よって、第2ブレーキモジュール200の排出路235の空気圧が高ければ第1ブレーキモジュール100に抜けるようになる一方、第1ブレーキモジュール100の第1ブレーキ通路16から供給される圧縮空気は第2ブレーキモジュール200に抜けることなくブレーキチャンバ50が作動する。各オリフィス280,281は、排出路235に生じた急激な気圧変動を緩和して第1ブレーキ通路16に伝達させるために設けられている。
【0064】
次に、上記のように構成された空気供給システムの作用について説明する。
第2ブレーキモジュール200が作動しているとき、第1ブレーキモジュール100は、第1圧力調整弁140の信号入力ポート141に空気圧信号が入力されないので、第1ブレーキ通路16を排出口160に接続させる。つまり、第1ブレーキ通路16は、大気開放されている。よって、凍結等によって排出口236から空気の排出ができなかったり、空気の排出が不十分であったりしても、排出路235の空気が各オリフィス280と逆止弁282、又は、オリフィス281と逆止弁283を通って第1ブレーキ通路16に排出される。このため、第2ブレーキモジュール200が作動しているとき、排出口236から空気の排出ができないような場合であっても、ブレーキ圧が低下しない不都合の発生が抑制されるようになる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)通常は大気開放されている、第2ブレーキモジュール200が空気圧の排出を行う排出路(第2通路)235の空気圧が高くなったようなときであれ、その空気圧が各逆止弁282,283を介して、第1ブレーキモジュール100が空気圧の供給及び排出を行う第1ブレーキ通路(第1通路)16に抜けるようになる。よって、排出口340の凍結などの不都合が第2ブレーキモジュール200が空気圧の排出を行う排出路235に生じて空気圧が抜けないときであっても、第1ブレーキモジュール100を通じての空気圧の排出が可能になる。通常、ブレーキ機構としては、モジュールのうちの1系統が作動しているとき、他の系統は停止していることが好ましい。すなわち、第2ブレーキモジュール200が作動している場合に停止している第1ブレーキモジュール100はその空気圧の供給及び排出を行う第1ブレーキ通路16が大気圧に開放されていることから、第2ブレーキモジュール200が空気圧の排出を行う排出路235から空気圧の排出が好適になされる。これにより、空気供給システムの保安性を高めることができる。
【0066】
(2)第1ブレーキモジュール100を第2ブレーキモジュール200が代替できるように冗長化された空気供給システムについて、作動する機会の少ない第2ブレーキモジュール200について保安性を高めることができる。つまり、一般に常用される第1ブレーキモジュール100の方が凍結等の不都合に高い耐性を有する構成とされていることが多いため、第2ブレーキモジュール200の排出を行う排出口236に不都合が生じていたとしても、第1空気供給部が空気圧の供給及び排出を行う排出路から適正に排出できる蓋然性も高い。
【0067】
(3)第1ブレーキモジュール100と第2ブレーキモジュール200とのうち高い空気圧が第2シャトル弁40Aで選択され、第1ブレーキモジュール100を冗長化したシステムにおいて、バックアップ用の第2ブレーキモジュール200を有する空気供給システムにおいて保安性を高めることができる。
【0068】
(4)空気圧の排出が行われると第2ブレーキモジュール200が空気圧の排出を行う排出路235に急激な圧力変動が生じるおそれがある。圧力変動が各オリフィス280,281を介して第1ブレーキモジュール100が空気圧の供給及び排出を行う第1ブレーキ通路16に伝わるので、該第1ブレーキ通路16に印加される圧力変動が緩和されるようになる。これにより、第2ブレーキモジュール200が空気圧の排出を行う通路の空気圧が第1ブレーキモジュール100に抜けたとしても、第1ブレーキモジュール100に不都合などが生じるおそれが低減される。
【0069】
(5)ブレーキシステムが第1ブレーキモジュール100と第2ブレーキモジュール200とに加え強制ブレーキモジュール300で冗長化された空気供給システムの保安性が高められる。例えば、隊列走行する無人運転車両のように冗長化された空気供給システムの信頼性がより高められるようになる。
【0070】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記空気供給システムは、先頭車両1aに設けられていても、無人の後続車両1bに設けられていても、それらの両方に設けられていてもよい。
【0071】
・上記実施形態では、強制ブレーキモジュール300は空気圧が所定の強制ブレーキ圧に設定されている場合について例示した。しかしこれに限らず、強制ブレーキモジュールに減圧弁を設けて空気圧を調整するようにしてもよい。例えば、隊列走行では、減圧弁は、隊列走行の後の車両になるほど強いブレーキ力となるように後の車両ほどブレーキ用の空気圧が大きくなるように調整されており、後の車両が前の車両よりも先に速度を落とすことにより衝突しないようにしている。このような構成によれば、圧縮空気の圧力を調整することによりブレーキ力を調整するのではなく、ブレーキをかける時間的なタイミングを調整することにより隊列走行時に衝突しないように制動制御することもできる。
【0072】
・上記実施形態では、第1制御装置61、第2制御装置62及びマスタECU60がそれぞれ個別の装置である場合について説明した。しかしこれに限らず、第1制御装置、第2制御装置及びマスタECUの2つ以上が一つの制御装置でその機能が兼ね備えられていてもよい。
【0073】
・上記実施形態では、空気供給システムに強制ブレーキモジュール300が設けられている場合について例示したが、これに限らず、空気供給システムに強制ブレーキモジュールが設けられていなくてもよい。このときであれ、第1ブレーキモジュールと第2ブレーキモジュールとで空気圧ブレーキシステムの保安性が高められる。
【0074】
・上記実施形態では、第2ブレーキモジュール200の排出路235と第1ブレーキ通路16との間に各逆止弁282,283とともに、各オリフィス280,281を設ける場合について例示した。しかしこれに限らず、第2ブレーキモジュールの排出路と第1ブレーキ通路との間に逆止弁を設ければ、オリフィスを設けなくてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、第2及び第3各シャトル弁40A,40Bによって、第1ブレーキモジュール100又は第2ブレーキモジュール200のうちの高い空気圧が選択される場合について例示した。しかしこれに限らず、適切なブレーキモジュールを電磁制御弁や空気圧制御弁で選択してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、第2ブレーキモジュール200は第1ブレーキモジュール100が停止しているとき、第1ブレーキモジュール100と切り替わる場合について例示した。しかしこれに限らず、第1ブレーキモジュールが作動しているときであっても、第1ブレーキモジュールを停止させるとともに、第2ブレーキモジュールを作動させてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、各オリフィス280,281及び各逆止弁282,283が第1ブレーキモジュール100及び第2ブレーキモジュール200とは別に設けられる場合について例示した。しかしこれに限らず、各オリフィス又は各逆止弁が第1ブレーキモジュール及び第2ブレーキモジュールの少なくとも一方にまとめて設けられていてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、第1ブレーキモジュール100は、第1圧力調整弁140の下流側が第2シャトル弁40A及び第3シャトル弁40Bに接続されている場合について例示した。しかしこれに限らず、第1圧力調整弁の下流側に接続されているシャトル弁は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0079】
・上記実施形態では、第2ブレーキモジュール200は、第2ブレーキ通路28の下流側に第2シャトル弁40A及び第3シャトル弁40Bが接続される場合について例示した。しかしこれに限らず、第2ブレーキ通路の下流側に接続されるシャトル弁は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0080】
・上記実施形態では、第2ブレーキモジュール200と第1ブレーキモジュール100との間に一方のオリフィス280及び逆止弁282の直列回路と、他方のオリフィス281及び逆止弁283の直列回路との2組の回路が設けられる場合について例示した。しかしこれに限らず、第2ブレーキモジュールと第1ブレーキモジュールとの間に直列回路が1つだけ設けられてもよいし、3つ以上設けられてもよい。
【0081】
・上記実施形態では、空気供給システムを、隊列走行を行う車両1のブレーキシステムを構成するものとして説明したが、隊列走行を行わず単独で走行する車両のブレーキシステムに搭載してもよい。
【0082】
・上記実施形態では、空気供給システムは、荷台を備えるカーゴ車両に搭載されるものとして説明した。これ以外の態様として、空気供給システムは、乗用車、トラクタにトレーラを連結した連結車両、鉄道車両等、他の車両に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…車両、1a…先頭車両、1b…後続車両、10…ブレーキ用エアタンク、11…第1出力路、12…フィルタ、13…第1タンク通路、14…入力ポート、15…出力ポート、16,16A,16B…第1ブレーキ通路、20…サスペンション用エアタンク、21…第2出力路、22…フィルタ、23…第2タンク通路、24…開閉弁、25…第1通路、26…入力ポート、27…出力ポート、28…第2ブレーキ通路、31…入力ポート、32…出力ポート、33…第4通路、40,40A…第2シャトル弁、40,40B…第3シャトル弁、41,41A,41B…チャンバ接続路、50…ブレーキチャンバ、51…第1制御室、52…第2制御室、53…楔、54…プッシュロッド、55…スプリング、60…マスタECU、61…第1制御装置、62…第2制御装置、63…車速センサ、64…車載ネットワーク、100…第1ブレーキモジュール、110…第1電磁制御弁、112…バルブスプリング、114…ブレーキバルブ回路、120…第2電磁制御弁、122…バルブスプリング、125…第1ブレーキ圧力信号通路、130…第3電磁制御弁、132…バルブスプリング、135…排出路、140…第1圧力調整弁、141…信号入力ポート、150…第1圧力計、160…排出口、200…第2ブレーキモジュール、220…第4電磁制御弁、222…バルブスプリング、225…第2ブレーキ空気圧信号通路、230…第5電磁制御弁、232…バルブスプリング、235…排出路、236…排出口、240…第1シャトル弁、241…選択ブレーキ空気圧信号通路、250…第2圧力調整弁、251…信号入力ポート、270…第2圧力計、271…第3圧力計、280,281…オリフィス、282,283…逆止弁、300…強制ブレーキモジュール、310…第6電磁制御弁、312…バルブスプリング、315…排出路、316…第3通路、320…第4圧力センサ、330…空気圧制御弁、331…信号入力ポート、332…バルブスプリング、340…排出口、P1,P2,P3,P4,P5,P10,P11…ポート。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサービスブレーキを空気圧で作動及び解除するブレーキ機構に圧縮空気を供給する空気供給システムであって、
前記ブレーキ機構に対して空気圧の供給及び排出を行うように構成された第1空気供給部と、
前記ブレーキ機構に対して空気圧の供給及び排出を行うように構成された第2空気供給部と、
前記ブレーキ機構に前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部のうちから選択した一方を連通させて、前記ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を当該選択した一方に行わせるように構成された選択部と、を備え、
前記第1空気供給部は、二つの電磁制御弁の動作に応じた空気の圧力が供給される第1圧力調整弁が前記ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を行い、
前記第1空気供給部の二つの電磁制御弁は、非通電状態で遮断位置となり、
前記第2空気供給部は、二つの電磁制御弁の動作に応じた空気の圧力が供給される第2圧力調整弁が前記ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を行い、
前記第2空気供給部の一方の電磁制御弁は、非通電状態で遮断位置となり、
前記第2空気供給部の他方の電磁制御弁は、非通電状態で接続位置となる
空気供給システム。
【請求項2】
前記第2空気供給部は、前記第1空気供給部が停止しているとき、前記第1空気供給部に替わって、前記ブレーキ機構に対する空気圧の供給及び排出を行うように構成されている
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記選択部は、前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部からより高い空気圧を有する方を選択するように構成されている
請求項1又は2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記第1空気供給部が空気圧の供給及び排出を行うブレーキ通路と前記第2空気供給部の排出路との間に設けられ、前記第2空気供給部の排出路から前記ブレーキ通路への方向を順方向とするチェック弁を備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【請求項5】
前記チェック弁には、オリフィスが直列に接続されている
請求項4に記載の空気供給システム。
【請求項6】
前記第1空気供給部及び前記第2空気供給部に替わって空気圧を前記ブレーキ機構に供給するように構成された強制ブレーキ部を備え、
前記第2空気供給部は、前記第2空気供給部及び前記強制ブレーキ部のうちからより高い空気圧を有する方を選択して前記選択部に連通するように構成された切替部を備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【請求項7】
前記第2空気供給部の一方の電磁制御弁は、通電状態でエアタンクと接続される通路と前記第2空気供給部の圧力調整弁の信号入力ポートに接続されるブレーキ空気圧信号通路とを連通する接続位置と、非通電状態で前記エアタンクと接続される通路と前記ブレーキ空気圧信号通路とを遮断する遮断位置とに変更可能に構成され、
前記第2空気供給部の他方の電磁制御弁は、非通電状態で前記ブレーキ空気圧信号通路と前記第2空気供給部の排出路とを連通する接続位置と、通電状態で前記ブレーキ空気圧信号通路と前記第2空気供給部の排出路とを遮断する遮断位置とに変更可能に構成されている
請求項1~6のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
第1圧力計150は、第1制御装置61に接続されており、検出値を第1制御装置61へ出力する。
第1電磁制御弁110、第2電磁制御弁120、第3電磁制御弁130は、第1制御装置61によって制御される。詳述すると、第2電磁制御弁120は、第1制御装置61による制御によって、第1タンク通路13と第1ブレーキ圧力信号通路125とを連通する接続位置と、第1タンク通路13と第1ブレーキ圧力信号通路125とを遮断する遮断位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第2電磁制御弁120は、非通電状態でバルブスプリング122の付勢力により遮断位置となり、通電状態で接続位置となる。第3電磁制御弁130は、第1制御装置61による制御によって、第1ブレーキ圧力信号通路125と排出路135とを連通する接続位置と、第1ブレーキ圧力信号通路125と排出路135とを遮断する遮断位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第3電磁制御弁130は、非通電状態でバルブスプリング132の付勢力により遮断位置となり、通電状態で接続位置となる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
第4電磁制御弁220は、第2制御装置62による制御によって、第1通路25と第2ブレーキ空気圧信号通路225とを連通する接続位置と、第1通路25と第2ブレーキ空気圧信号通路225とを遮断する遮断位置との2つに位置を変更可能に構成されている。第4電磁制御弁220は、非通電状態でバルブスプリング222の付勢力により遮断位置となり、通電状態で接続位置となる。