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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079625
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】生分解が管理された医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/86 20130101AFI20220519BHJP
   A61F 2/04 20130101ALI20220519BHJP
   A61F 2/14 20060101ALI20220519BHJP
   A61F 2/18 20060101ALI20220519BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20220519BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20220519BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20220519BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A61F2/86
A61F2/04
A61F2/14
A61F2/18
A61L31/04
A61L31/10
A61L31/12
A61L31/14 500
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022056944
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2018567132の分割
【原出願日】2017-06-23
(31)【優先権主張番号】62/354,099
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505208363
【氏名又は名称】ポリ-メド インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】51 Technology Drive, Anderson,South Carolina 29625 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・スコット・テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・カートリッジ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・デイビッド・グレイ・ジュニア
(57)【要約】
【課題】分解した際に宿主に害を引き起こさないか、又は分解した際に少なくとも宿主に対する害を軽減させる医療用インプラントの提供。
【解決手段】この課題は、コイル、ニット、及びコーティングを含む部品からステントを構築すること、及び次に宿主に移植された際に前記ステントの早期分解を誘導するために、前記ステントに化学処理を施すことを含む、ステント形成法を提供することによって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル、ニット、及びコーティングを含む部品からステントを構築すること、及び次に宿主に移植された際に前記ステントの早期分解を誘導するために、前記ステントに化学処理を施すことを含む、ステント形成法。
【請求項2】
医療デバイスを少なくとも部分的に包む閉じ込め層を含む医療用インプラントであって、前記医療デバイスは前記インプラントが宿主に移植された際に少なくとも部分的に生分解性であり、前記閉じ込め層は非生分解性又は生分解性のいずれかであり、ここで、その医療デバイスがin vivoで分解した際に、前記閉じ込め層が前記医療デバイスの容器として機能する、インプラント。
【請求項3】
前記デバイスが宿主内で構造的支持を提供する、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記デバイスがステントである、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記ステントが尿管内ステントである、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
前記閉じ込め層がインプラント上のコーティングである、請求項2に記載のインプラント。
【請求項7】
前記コーティングが親水性である、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
前記コーティングは生分解性であるが、前記コーティングは前記医療デバイスよりも緩慢に分解する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項9】
前記コーティングが20ミクロンより大きい厚さを有する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項10】
前記コーティングが40ミクロンより大きい厚さを有する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項11】
前記コーティングが60ミクロンより大きい厚さを有する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項12】
前記コーティングが80ミクロンより大きい厚さを有する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項13】
前記コーティングが100ミクロンより大きい厚さを有する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項14】
前記コーティングが120ミクロンより大きい厚さを有する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項15】
医療デバイスにより少なくとも部分的に包まれた閉じ込め層を含む医療用インプラントであって、ここで、前記閉じ込め層は前記医療デバイスの中空中心を少なくとも部分的に包み、前記医療デバイスは、前記インプラントが宿主に移植された際に少なくとも部分的に生分解性であり、前記閉じ込め層は非生分解性又は生分解性のいずれかであり、ここで、前記閉じ込め層は、前記医療デバイスの生分解中に形成する分解産物と前記医療デバイスの中空空間との間に障壁を提供する、医療用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35 U.S.C.§119(e)の下、全開示内容が参照により本明細書に援用される2016年6月23日に出願された米国仮特許出願第62/354,099号の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、全般的に、生分解性医療用インプラント及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの医療用インプラントは、宿主内に存在する必要があるのは限定された期間だけである。その期間が経過した後は、インプラントは物理的に取り出せばよいが、これは多くの場合、さらなる外科的介入を必要とする。あるいは、インプラントは、その場所に無期限に残されてもよい。この選択肢は、そのインプラントの長期の存在が有害でない場合、及び特定の処置に永久インプラントが必要である場合に用を満たす。別の選択肢として、インプラントは、生吸収性材料から形成されてもよい。生吸収性材料は、宿主内で分解され、かつ/又は吸収性となり、その成分及びそれらの代謝産物はやがて排泄される。生吸収性インプラントは、医療提供者によってますます望まれているが、それらのインプラントは、例えば宿主が分解産物を忍容しないなどの望まれない結果を招くことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当技術分野には、分解した際に宿主に害を引き起こさないか、又は分解した際に少なくとも宿主に対する害を軽減させる医療用インプラントの必要がある。本発明は、その必要を満たすことを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示は、一態様において、宿主内で分解する医療用インプラントを対象とし、ここで、その分解はインプラントに組み込まれた物理的又は化学的特徴のために特に望ましい様式で起こるように管理される。例えば、インプラントは、インプラントの全部又は一部を取り囲む閉じ込め層を含んでよく、ここで、その閉じ込め層は、それが存在しない場合にインプラントを分解するのとは異なる様式でインプラントを分解するように構築される。別の例として、インプラントは、分解に特に弱い欠陥を故意に含んでよく、ここで、これらの欠陥は、分解がインプラントの他の部位に対して優先的に起こる部位を提供する。一実施形態では、この欠陥は、デバイスにいずれの機能的利益も提供せず、例えば、この欠陥は、デバイスを補強せず、又はより良く働くことがなく、単にインプラントの分解プロフィールに影響を与えるために存在する。さらに別の例として、インプラントは組成ベクトルを含んでよく、これは、インプラントの組成がインプラントの寸法に沿って、例えば長さに沿って異なることを意味する。この異なる組成は、インプラントが宿主内で曝される条件下で、対応する異なる分解感受性を有する。このアプローチにより、例えば、インプラントの一端は、他端が分解する前に分解を引き起こすことができる。最後の例として、インプラントは、組成の不均一性を含んでよく、ここで、不均一性の部位は、インプラントの隣接する均一な部位よりも分解感受性が大きいか又は小さい。例えば、インプラントは、ポリマー中に分散した粒子を含んでもよく、この場合、ポリマーは均一であり、粒子はポリマーよりも分解感受性が大きい不均一性を提供するか、又はポリマーの分解の開始部位として働く。これらは本開示による管理された分解の例であり、これにより、宿主内で分解する医療用インプラントは、インプラントの構築によりインプラントに組み込まれた物理的又は化学的特徴のために特に望ましい様式で分解が起こるように管理された方式で構築される。
【0006】
1つの例示的実施形態では、本発明は、医療デバイスを少なくとも部分的に包む閉じ込め層を含む医療用インプラントであって、上記医療デバイスは上記インプラントが宿主に移植された際に少なくとも部分的に分解性であり、上記閉じ込め層は非生分解性又は生分解性のいずれかであるが、閉じ込め層が生分解性である場合には、それはそれが取り囲んでいる部分よりも緩慢に分解するインプラントを対象とする。
【0007】
所望により、閉じ込め層は、医療デバイスの分解の際に形成する医療デバイスの断片のための容器として働く。所望により、このデバイスは、宿主内に構造的支持を提供し、ここでまた所望により、そのデバイスは尿管内ステントなどのステントである。閉じ込め層は、医療デバイス上のコーティングであってよく、ここで、コーティングは所望により親水性である。コーティングが生分解性である場合には、それはそのコーティングにより包まれる医療デバイスよりも緩慢な分解速度を持つはずである。
【0008】
別の例示的実施形態では、本開示は、医療デバイスにより少なくとも部分的に包まれた閉じ込め層を含む医療用インプラントであって、ここで、上記閉じ込め層は上記医療デバイスの中空中心を少なくとも部分的に包み、上記医療デバイスは、上記インプラントが宿主に移植された際に少なくとも部分的に生分解性であり、上記閉じ込め層は非生分解性又は生分解性のいずれかであり、ここで、上記閉じ込め層は、上記医療デバイスの生分解中に形成する医療デバイスの分解産物と上記医療デバイスの中空空間との間に障壁を提供するインプラントを提供する。あるいは、閉じ込め層は、ステント、例えば、尿管ステントの内部構造及び外部構造を覆うことによって医療デバイスを完全に包んでもよい。
【0009】
閉じ込め層は、デバイスの分解を管理し、これはまたデバイスの移動、例えば、デバイスの排泄を含んでもよい。1つの選択肢では、閉じ込め層は、医療デバイス上又は医療デバイス内に位置するコーティングであってよい。別の選択肢では、閉じ込め層は、医療デバイス上又は医療デバイス内に位置するメッシュであってもよい。閉じ込め層は医療デバイスの一部のみを覆ってもよく、例えば、管状医療デバイスの端部が、閉じ込め層として働くキャップを有してもよい。
【0010】
本開示は、いくつかの医療デバイスを記載するが、記載される医療デバイスはいずれも、本明細書に開示される手段によって管理された分解を示すように修飾されてよい。例えば、これらの医療デバイスはいずれも、スリットを含むように、又は分子量勾配を持つように選択的に分解されるポリマー成分を有し、それにより、本開示によるインプラントに組み込まれた物理的又は化学的特徴のために特に好ましい様式で起こるように管理されたデバイスの分解プロフィールを提供するように修飾されてよい。
【0011】
この簡単な概要は、以下の詳細な説明でさらに詳しく記載される特定の概念を簡略化した形態で紹介するために示したものである。そうではないことが明示されない限り、この簡単な概要は、特許請求される主題の重要又は必須の特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0012】
1以上の実施形態の詳細を以下の明細書に示す。1つの例示的実施形態に関して説明又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせてもよい。よって、本明細書に記載の種々の実施形態のいずれを組み合わせてさらなる実施形態を提供することもできる。実施形態の態様は、要すれば、本明細書に示されるような種々の特許、出願及び刊行物の概念を採用するように修飾してなおさらなる実施形態を提供することができる。他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0013】
詳細な説明
本発明は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明及び本明細書に含まれる実施例を参照すれば、より容易に理解することができる。本明細書で使用される技術用語は、単に具体的実施形態を記載する目的とし、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。さらに、本明細書に特に定義されない限り、本明細書に使用される技術用語は、関連の技術分野で知られているようなその従来の意味を与えられることが理解されるべきである。本明細書内に使用される見出しは、単に読者がその見直しを速やかに行うために利用され、本発明又は特許請求の範囲を何ら限定するものと解釈されるべきでない。
【0014】
特許請求の範囲を含め本文書中に使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、そうではないことが示されない限り、複数の参照を含む。例えば、「1つの(a)」ポリマーは、1以上のポリマーを含む。別の例として、「1つの(a)」層は、1以上の層を指す。
【0015】
「分解する」は、分解性医療デバイスにおいて、医療デバイスは、宿主の、そのデバイスに意図される宿主内の場所に移植された場合に、化学的意味又は構造的意味のいずれかで崩壊又は劣化することを意味する。例えば、崩れて断片となるデバイス(例えば、それは崩れて半分になる、又はそれは分解して多数の断片となる)は、構造的意味で分解したデバイスである。デバイスが移植された際に軟化する場合には、その後そのデバイスは構造的意味で分解する。デバイスの一部又は全部が、そのデバイスが接触している体液中に溶解する場合には、その後そのデバイスは化学的に分解する。化学的分解はまた、加水分解、酸化、及び酵素的結合切断などの分解反応の存在を含む。吸収性又は生吸収性の医療デバイスは、宿主内で分解するデバイスである。分解性の移植可能な医療デバイスは、そのデバイスが宿主内で望ましくは限定された寿命を持つことを推奨する製造者及び/又は医療提供者によって意図される移植可能な医療デバイスを指す。言い換えれば、製造者及び/又は医療提供者は、1つには、そのデバイスが宿主内で自然に分解するべきであり、宿主内で永久定着物となるべきではないことから、そのデバイスを製造及び/又は選択した。
【0016】
「分解プロフィール」は、インプラントがどのように分解するかの描写を指す。分解プロフィールは、インプラント分解の経時的推移ならびに経時的推移中の分解の幾何学的描写を提供し得る。例えば、インプラントは、インプラントが示された日数の経過にわたってその長さに沿って上から下へ分解する分解プロフィールを有し得る。
【0017】
「宿主」は、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、及び家畜を指す。宿主はまた、患者又は対象と呼ばれることもある。
【0018】
移植可能な「医療デバイス」は、本明細書で使用する場合、医療提供者によって宿主の身体に移植されることが意図される器具又は装置などのデバイスを指す。医療デバイスは、それが疾患などの望ましくない医学的状態の診断、予防、治療又は治癒のいずれか1以上によって宿主の健康を改善するという観点から医学的(例えば、単に美容とは対照的)目的又は利益を提供する。医療デバイスは、親医療デバイスがその意図される使用に従って機能することを可能とする若しくは助長することによってその親デバイスの性能を補助すること;親デバイスの意図される使用を変化させずに、親デバイスの新たな機能若しくはその新たな使用方法を付加することによって親デバイスの性能を捕捉すること;又はデバイスがその意図される使用をより安全に若しくは効果的に遂行することを可能とすることによって親デバイスの性能を高めることの1以上を行う付属デバイスであり得る。この医療デバイスは、体内で単に化学的作用を介してその目的を果たすのではなく、この医療デバイスは、代謝された際にはその目的を果たさない。
【0019】
一態様において、この医療デバイスは、宿主内で導管、例えば管又は血管の開通性を維持する又は作り出す上で使用される。例示的管及び血管は、例えば、宿主の消化管(GI)に沿って、例えば、食道、腸(横行結腸、下行結腸、上行結腸、S状結腸及び小腸(ここで、小腸は、十二指腸、空腸、及び回腸を含む)、盲腸、及び直腸を含む)に見られる。一実施形態では、医療用インプラントは、尿管、すなわち、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管に移植されるように設計される。別の実施形態では、医療用インプラントは、尿道、すなわち、膀胱から宿主の外部に尿を輸送する管に移植されるように設計される。他の例示的管及び血管は、心臓、膵臓、前立腺、及び腎臓などの器官に見られる。管又は血管が宿主内に存在し、本開示に従って医療用インプラントが移植され得る別の場所は、小葉(乳汁産生腺)から乳頭へ乳汁を輸送する乳管である。医療用インプラントのための他の場所として、耳及び洞が含まれる。
【0020】
一態様において、この医療デバイスは少なくとも一部には、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマー又はエラストマーポリマーのうち1以上から形成される。一態様において、医療デバイスは無菌である。一態様において、医療デバイスは、宿主中に完全に移植される、すなわち、例えば、耳内に置く補聴器、宿主の口腔内に置く歯科補綴、又は宿主の眼の上に置くコンタクトレンズとは対照的に、完全に宿主の皮下にあることが意図される。一態様において、移植可能な医療デバイスは、管又は血管などの身体通路に移植されることが意図される。移植可能な医療デバイスの例(これもまた分解性であり得る)として、ステント、シャント、縫合糸及び外科用メッシュが含まれる。移植可能な医療デバイスはまた、以下の特許文献:米国特許第8,753,387号;同第8,101,104号;同第7,594,928号;及び米国特許出願第2014/0288636号に記載されている。
【0021】
「医療用インプラント」は、分解性移植可能医療デバイスとその医療デバイスの少なくとも一部に隣接して配置される閉じ込め層の両方を含む本発明のデバイスを指す。
【0022】
簡単に述べれば、本発明は、生吸収性医療デバイス及びそのための閉じ込め層を含む医療用インプラントを提供する。宿主内の生物吸収の過程で、この医療デバイスは分解する。この分解過程を管理するため、例えば、分解の時間、分解のタイプ、分解の程度、及び分解された医療デバイスの移動(宿主内のその部分を含む)を管理するために、医療用インプラントは1以上の閉じ込め層を含む。この閉じ込め層は、例えば、分解断片が宿主内に分散して、近傍の組織及び/又は器官を潜在的に損傷しないようにすることができる。一態様において、閉じ込め層は、医療デバイスを少なくとも部分的に、所望により完全に包む。医療デバイスが分解して断片となる場合、閉じ込め層は、崩壊している医療デバイスを包み、保持に十分な構造的な完全性を維持するか、又は少なくとも、これらの断片を一緒に閉じ込め空間に保持する助けをする。閉じ込め層は、それから形成されたいずれの断片も含めて医療デバイスの宿主からの排出に影響を及ぼし、その排出を誘導することができる。
【0023】
一態様において、本開示は、分解性医療デバイスを提供する。以下に医療デバイスを形成するために使用可能な分解性組成物及び/又はそれらの成分、ならびに医療デバイスの一部であり得る、又は医療デバイスに付加される閉じ込め層を記載する。
【0024】
一般に、医療デバイス及び閉じ込め層は、生体安定性又は非生体安定性材料から製造されてよく、ここで、非生体安定性材料は本明細書では分解性材料とも呼ばれ、生分解性、吸収性又は生吸収性、腐食性又は生腐食性、可溶性又は生可溶性のいずれかとして当技術分野で公知であり得る。分解性ポリマーは、血液などの体液に曝された際に完全に腐食又は吸収される能力があり、身体によって徐々に再吸収、吸収及び/又は排出され得る。いくつかの分解性材料は、宿主の血管環境に見られ得るような体液に曝された際に材料に起こる化学的分解のために吸収性となる。化学的分解は、材料と体液又は体液内の物質との化学反応による材料の分解を指す。化学的分解は、加水分解、酸化、酵素性分解、及び/又は代謝プロセスなどの結果であり得る。化学的分解は、例えば、分子量の低減、機械的特性の劣化、及び腐食による質量の減少をもたらし得る。機械的特性は、材料の強度及びモジュラスに相当し得る。材料の機械的特性の劣化は、それから製造された医療デバイスの、宿主内で最適に機能する能力を低下させる。例えば、デバイスがステントであれば、そのステントは、それが分解するにつれ血管内で低下する機械的支持を提供する。加えて、いくつかの分解性材料は水可溶性である。水可溶性材料は、材料の化学的分解に加えて、又はさらにそれが不在であっても水に溶解する能力のある材料を指す。
【0025】
一実施形態では、分解性医療デバイス又は閉じ込め層は、全体が又は一部が分解性有機ポリマーから形成される。有機ポリマーは、例えば、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマー又はエラストマーポリマーであり得る。有機ポリマーはコポリマーであってよく、ここで、コポリマーは、ホモポリマーからは容易に得られない特性を提供するために2種類以上の異なるモノマーから製造される。有機ポリマーは、1種類以上の異なるポリマー、例えば、1種類以上の異なる有機ポリマーとの混合物であり得る。よって、本明細書で特定されるような種々の分解性有機モノマーは、ホモポリマー又はコポリマーを作製するために一緒に使用してよく、本明細書で特定されるような種々の有機ポリマーは、混合物を作製するために組み合わせて使用してよい。本開示の医療デバイスは分解性であり、従って、いくつかの分解性成分を含有する。一実施形態では、医療デバイスは全てが分解性材料から製造され、従って、その医療デバイスは完全に分解性である。別の実施形態では、医療デバイスは、大部分が分解性材料から製造され、従って、その医療デバイスの少なくとも50重量%が分解性である。別の実施形態では、医療デバイスは分解性材料と生体安定性材料の両方から製造され、従って、その医療デバイスの100%未満が分解性である。種々の実施形態では、医療デバイスの100%又は95%まで、又は90%まで、又は85%まで、又は80%まで、又は75%まで、又は70%まで、又は65%まで、又は60%まで、又は55%まで、又は50%まで、又は45%まで、又は40%まで、又は35%まで、又は30%まで、又は25%までが分解性材料から製造され、これらのパーセンテージ値は、移植可能な医療デバイスの重量に対する重量%である。
【0026】
本開示の閉じ込め層又は医療デバイスを作製するために使用可能な分解性ポリマーの例としては、ポリ(α-ヒドロキシ酸)ポリマー及びコポリマー、例えば、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(グリコリド-コ-ラクチド)(PGLA)、及びポリグリコリド-コ-トリメチレンカーボネート(PGA/TMCを含むグリコリドのポリマー及びコポリマー);ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-D-ラクチド(PDLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA)、ポリ(ラクチド-コ-テトラメチレングリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド-コ-δ-バレロラクトン)、ポリ(ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)、ポリ(グリシン-コ-DL-ラクチド)及びポリ(ラクチド-コ-エチレンオキシド)を含むポリラクチド(PLA)のポリマー及びコポリマー;ポリジオキサノンポリマー、例えば、不斉3,6-置換ポリ-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン;ポリ(β-ヒドロキシブチレート)(PHBA)及びそのコポリマー、例えば、ポリ(β-ヒドロキシブチレート-コ-β-ヒドロキシバレレート);ポリグルコネート;ポリ(β-ヒドロキシプロピオネート)(PHPA);ポリ(β-ジオキサノン)(PDS);ポリ(δ-バレロラクトン);ポリ(ε-カプロラクトン);メチルメタクリレート-N-ビニルピロリドンコポリマー;ポリエステルアミド;シュウ酸のポリエステル;ポリジヒドロピラン;ポリ(アルキル-2-シアノアクリレート);ポリビニルアルコール(PVA);ポリペプチド;ポリ(β-マレイン酸)(PMLA);ポリ(β-アルカン酸);ポリ(エチレンオキシド)(PEO);ポリ無水物、ポリホスホエステル、及びキチンポリマーが含まれる。
【0027】
一実施形態では、有機ポリマーはポリエステルである。例えば、ポリマーは、ポリ(α-ヒドロキシ酸)ホモポリマー、ポリ(α-ヒドロキシ酸)コポリマー及びそれらのブレンドから選択されるポリエステルであり得る。それに加えて又はその代わりに、ポリエステルは、ポリグリコリド、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、ポリ-DL-ラクチド、及びそれらのブレンドから選択されてもよい。ポリエステルは、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-D-ラクチド(PDLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA)を含むポリラクチド(PLA)のポリマー及びコポリマーから選択されてもよい。
【0028】
一実施形態では、有機ポリマーは半結晶性であるか、又は繊維として形成することができるか、又は半結晶性と繊維形成性の両方である。一実施形態では、閉じ込め層は、半結晶性及び繊維形成性の少なくとも一方である有機ポリマーを用いて作製される。一実施形態では、分解性ステントは、半結晶性及び繊維形成性の両方である有機ポリマーで作製される。さらに有機ポリマーを急速分解性とするためには、有機ポリマーを形成するために使用されるモノマーとして、又は複数のモノマーのうちの1つとしてグリコリドを使用してもよい。パラジオキサン(PDO)は、急速分解性有機ポリマーを形成するためのもう1つの好適なモノマーであり、ここで、相当するホモポリマーはポリ(PDO)として知られる。ポリ(PDO)は、一般に、グリコリド系ポリマーをより緩慢に分解し、従って、超急速分解性有機ポリマーを作製するためには、モノマーフィードは好ましくはグリコリドが豊富である。
【0029】
一実施形態では、有機ポリマーは多軸構造を有するが、別の実施形態では、有機ポリマーは直鎖である。多軸構造は有機ポリマーの一部であってよく、例えば、多軸構造はブロックコポリマーのブロック中に存在してよい。別の選択肢は、急速分解を保証するために半結晶性及び繊維形成性、及びグリコリド系であるセグメント化多軸であるべき有機ポリマーに関するものである。さらに別の選択肢は、いずれか又は両方に関して直鎖コポリマー:ジブロック、トリブロック、ペンタブロックを使用するためのものであり、ここで、中心ブロックとして、外側の結晶性セグメントに接続された非晶質セグメントを有するPEGであり得るペンタブロック以外(均斉ペンタブロックポリマー、すなわちポリエーテル-エステルを形成し;他の全てのポリマーは脂肪族ポリエステルであると言える)は、中心ブロックは非晶質であり、他のブロックは半結晶性である。直鎖ブロックコポリマーはまた、全ての場合で非晶質ブロックを含まずに半結晶性ブロックからなって、繊維を形成する交互ブロックの分解プロフィールにわずかな違いがあるように、結晶構造及び繊維中のパーセンテージが異なる交互パターンを作り出すために繊維形成後に配向させることができるポリマーを生得ることもできる(繊維が配向されると、結晶性領域の水平な縞が形成し、ポリマー鎖を含むブロックを整列させる)。あるいは、非ブロック直鎖コポリマーを置換することもできる。一実施形態では、これらの有機ポリマーが繊維を形成するために使用され、これらの繊維が閉じ込め層を形成するために使用される。別の実施形態では、これらの有機ポリマーは、繊維として形成されないが、この有機ポリマーは、例えば、ポリマー溶液を医療デバイスに単に噴霧するか、又はディップコーティングなどによって、閉じ込め層を形成するために使用される。
【0030】
閉じ込め層又は医療デバイスは、非晶質、コンプライアント及びエラストマーであるベースポリマーから製造してよい。それはまた結晶化可能であるが、大きすぎる結晶度は一般に、ポリマーのコンプライアント性を低下させる。使用のためにより高い結晶性材料が選択されれば、医療デバイスに適用した場合に層の最終的な結晶度を低下させるために、層にPEGなどの可塑剤を配合することが奨励され得る。前述のように、ポリマーは、多軸又は直鎖、ブロック又はセグメント化又はランダムポリマーであり得る。フレキシブル及びコンプライアントな閉じ込め層のためには、有機ポリマーは最小限の結晶度であるか、又は非晶質であり得る。
【0031】
有機ポリマーは、プレポリマーから、及びそれがブロックコポリマーであるか、又はプレポリマーから作製され得ない場合はエンドグラフトから作製されてよい。一実施形態では、分解時間枠を医療デバイスのそれを超えて延長するために、閉じ込め層のための有機ポリマーを形成するため、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、及び/又はl-ラクチドから選択される1以上のモノマーが使用される。
【0032】
ポリエステル以外の好適な分解性有機ポリマーとしては、ポリエーテル-エステル、ポリエーテル-エステル-ウレタン(生吸収性ウレタン)、ポリエーテル-ウレタン及びポリエーテル-ウレタン-尿素が含まれ、上記の例は非常に緩慢で一般に不完全な分解性を示す。
【0033】
種々の実施形態でが、医療デバイス及び/又は閉じ込め層は、以下のポリマーのいずれかから製造される。エンドグラフト中>65%グリコリドを有するMG-5(Poly-Med、Anderson、SC)は、非晶質プレポリマーと結晶性エンドグラフトから二段階反応で作製される半結晶性多軸ブロックコポリエステルである。>80%グリコリドを有するMG-9(Poly-Med、Anderson、SC)は、非晶質プレポリマー及び結晶性エンドグラフトから二段階反応で作製される半結晶性多軸ブロックコポリエステルである。一段階反応(プレポリマーを使用しない)で作製される半結晶性多軸セグメント化コポリエステルである。非晶質プレポリマー及び結晶性エンドグラフトから二段階反応で作製される半結晶性直鎖ブロックコポリエステル。結晶性エンドグラフトを有するトリブロックコポリマー。ジブロックコポリマー。一段階反応(プレポリマーを使用しない)で作製される半結晶性直鎖セグメント化コポリエステル。固有粘度が1.0であり、結晶性エンドグラフトを有するSVG-12(Poly-Med、Anderson、SC)。多軸ブロックコポリマー。非晶質プレポリマー及び非晶質エンドグラフトから作製されるポリマー。直鎖ブロックコポリマー(トリブロック、ジブロック、ペンタブロック)。直鎖セグメント化コポリマー。非晶質、従って、コンプライアント及びフレキシブルの両方である直鎖ランダムコポリマー。上記は、好適な医療デバイス、その部品、又は閉じ込め層を作製するために使用可能な有機ポリマーの単に例に過ぎない。
【0034】
別の好適なポリマーは、(a)ポリオールとポリカルボキシレートを含み、このポリオール及びポリカルボキシレートのうち少なくとも1つが3つ以上の機能を有する反応性種間の反応によって形成される生腐食性ポリエステルネットワーク、ならびに(b)生腐食性熱可塑性ポリマーを含む混合物である。所望により、以下のうちの1以上がこの組成物をさらに特徴付け得る:ポリオールは、非ポリマー性ジオール、ポリマー性ジオール、非ポリマー性トリオール、ポリマー性トリオールから選択される;ポリカルボキシレートは、非ポリマー性ジカルボキシレート、ポリマー性ジカルボキシレート、非ポリマー性トリカルボキシレート、及びポリマー性トリカルボキシレートから選択される;反応性種は、トリオール、トリカルボキシレート、又は両方を含む;反応性種は、(a)非ポリマー性トリカルボキシレート、及び(b)ポリエステルポリオールを含む;反応性種は、(a)クエン酸、及び(b)ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール又は両方を含む;生腐食性熱可塑性ポリマーは、体温より高い融点を有す;生腐食性熱可塑性ポリマーは、室温より低いガラス転移温度を有する;及び生腐食性熱可塑性ポリマーは、生腐食性熱可塑性ポリエステルである。例えば、米国特許公開第20160166739号。
【0035】
一態様において、本開示の医療用インプラントは、医療デバイスに加えて閉じ込め層を含む。医療デバイスに対する閉じ込め層の位置、ならびに物理的特性及び化学的特性の観点からの閉じ込め層の特性の両方が、宿主からの医療用インプラントの分解及び/又は排出の管理を補助する。特に、閉じ込め層は、宿主からの医療用インプラントの分解及び/又は排出を管理するように部分的に働く。閉じ込め層の特性はまた、宿主からの閉じ込め層自体の分解及び/又は排出を管理する目的でも選択されるべきである。
【0036】
本開示の医療用インプラント中に存在する医療デバイスは、少なくともある程度は分解性である。言い換えれば、医療デバイスは、宿主内に置かれた際に分解性となる。その分解は、物理的分解又は化学的分解であり得る。物理的分解は、医療デバイスの物理的又は機械的特性の変化を指す。例えば、デバイスは崩れて断片となり、従って、その完全性を失ってもよい。別の例として、デバイスは軟化し、コンプライアントとなってもよい。さらに別の例として、デバイスは液体を吸収し、膨潤し得る。これらの場合のそれぞれで、デバイスは、物理的又は機械的特性の変化を受ける。化学的分解は、化学組成の変化を指す。例えば、デバイスが製造される有機ポリマーは、加水分解性の結合切断又は酵素的に誘導される結合切断を受け、それにより分子量を減らし得る。別の例として、医療デバイスの水溶性成分は水に溶解し、医療デバイスの近傍に残ってもよい。これらの例のそれぞれでは、化学的分解は、医療デバイスの化学的記述に変化をもたらす。医療用インプラントの分解が物理的分解ならびに化学的分解を同時に達成する場合もあり得る。いずれにせよ、本開示の閉じ込め層は、この分解に影響を及ぼすように部分的に又は全面的に働き得る。よって、閉じ込め層の特性は、宿主からの医療用インプラントの分解及び/又は排出を管理するために使用することができる。
【0037】
一態様において、閉じ込め層は、宿主の組織と医療デバイスの間に物理的障壁を提供する。例えば、デバイスが崩れて断片となることによって分解する場合に、このような障壁は有用であり、それらの断片の分散又は拡散を管理することが望まれる。例えば、一実施形態では、閉じ込め層は、医療デバイスに比べて比較的長持ちしてよく、そのため、医療デバイスが崩れて断片となった際に、閉じ込め層は、それらの断片が閉じ込め層内に保持される十分な構造的完全性を維持している。このような閉じ込め層は、医療デバイスが腎臓に移植される場合に有用であり、医療デバイス由来の断片が腎臓の内側と接触して石灰化することが望ましくない。関連の実施形態では、閉じ込め層は、この場合にも、食道ステントである医療デバイスに比べて比較的長持ちする。この場合、食道ステントが崩れて断片となれば、その中に位置し、ステントの管腔壁を取り囲む閉じ込め層がそれらの断片が胃へ通過するのを阻止する。よって、いずれの例でも、閉じ込め層は医療デバイスの断片の移動を効果的に制限する。
【0038】
別の態様において、閉じ込め層は、宿主の分解誘導体液と医療デバイスとの間に物理的障壁又は化学的障壁を提供する。この層は、医療デバイスの空間的及び時間的分解に影響を及ぼすために使用することができる。例えば、一実施形態では、閉じ込め層は、層が医療デバイスの全部ではないが一部を覆うように不連続層である。この状況で、閉じ込め層は、医療デバイスと宿主の分解を引き起こす体液との間の障壁として効果的に働き、これにより、医療デバイスと体液との間の接触を制限する。閉じ込め層は、医療デバイスの露出部分を医療デバイスの非露出部分よりも迅速に分解することを可能とする。このように、閉じ込め層は、デバイスがまず分解する場合を管理するために使用される。
【0039】
別の実施形態では、医療デバイスの空間的及び時間的分解及び/又は排出を管理するために段階的閉じ込め層が使用される。例えば、医療デバイスは、デバイスの第1の部分の一重コーティング層、デバイスの第2の部分の二重コーティング層、デバイスの第3の部分の三重コーティング層を有してよい。コーティング層の組成が各場所で同じと仮定すると、医療デバイスの第1の部分は、デバイスの第2及び第3の部分の前に分解し始める。各部分の相対的な厚さに応じて、第1の部分は、有意に分解して宿主から排出され得、一方、デバイスの第2及び第3の部分はさらに有意に完全な状態である。医療デバイスの第1の部分の分解及び排出は、医療デバイスの第2の部分への体液の接近の増大を可能とし、第2の部分が閉じ込め層によってなお覆われている可能性があるとしても、第2の部分が分解を受けるという結果を伴う。デバイスの第2の部分が分解及び排出を受けた後、デバイスの第3の部分の分解及び排出が起こる。この例では、閉じ込め層は、医療デバイスの種々の部分が分解し、宿主から排出される速度を管理する。しかしながら、閉じ込め層はまた、それらの断片の分散又は拡散を管理する、すなわち、宿主内でのそれらの断片の移動を制限する働きをし得るということに留意されたい。
【0040】
医療デバイス自体及びその閉じ込め層の一方又は両方を含む医療用インプラントは、治療薬を含んでよい。インプラントに配合される治療薬の量は、インプラントの性質、実際の治療薬、及び対象の状態などによって決まる。その量は当業者により容易に決定できる。例示的治療薬としては、抗血栓薬、抗増殖薬、抗炎症薬、抗遊走薬、抗悪性腫瘍薬、有糸分裂阻害薬、麻酔薬、及び抗凝集薬が含まれる。さらなる好適な治療薬としては、細胞外マトリックスの生産及び組織化に影響を及ぼす薬剤、血管細胞の成長(促進剤プロモーター又は阻害剤のいずれか)、コレステロール降下薬、血管拡張薬、ならびに内因性血管作用性機構に干渉する薬剤が含まれる。
【0041】
本発明の種々の実施形態では、医療デバイスは、尿管ステントであり得る。医療デバイス、例えば、尿管ステントは、1以上の薬物を放出するように設計することができ、ここで、薬物の代表例は、以下のうち1以上の好適なメンバーを含む:とりわけα-アドレナリン遮断薬、鎮痛薬、抗癌薬、抗悪性腫瘍薬、抗炎症薬、抗菌薬、抗増殖薬、抗痙攣薬、β-アドレナリン作動薬、気管支拡張薬(例えば、筋弛緩薬特性のため)、カルシウムチャネル遮断薬、コルチコステロイド、麻酔薬、麻薬性鎮痛薬、酸化窒素供与剤、酸化窒素放出化合物、非麻薬性鎮痛薬、プロスタグランジン、ならびにそれらの組合せ。
【0042】
薬物のさらなる代表例としては、以下のうち1以上が含まれる:血管新生阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤及び拮抗剤、ケモカイン受容体拮抗剤CCR(1、3、及び5)、細胞周期阻害剤、サイクリン依存性プロテインキナーゼ阻害剤、EGF(上皮細胞増殖因子)受容体キナーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、因子Xa阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、フィブリノゲン拮抗剤、グアニル酸シクラーゼ刺激剤、熱ショックタンパク質90拮抗剤、HMGCoAレダクターゼ阻害剤、ヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、IKK2阻害剤、IL-1、ICE及びIRAK拮抗剤、IL-4作動薬、免疫調節薬、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、MCP-1拮抗剤、MMP阻害剤、NFκB Inhibitorsm NO作動薬(NF kappa B Inhibitorsm NO Agonists)、P38MAPキナーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、TGFβ阻害剤、TNFa拮抗剤及びTACE阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ビトロネクチン阻害剤、線維芽細胞増殖因子阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、PDGF受容体キナーゼ阻害剤、内皮増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、レチノイン酸受容体拮抗剤、血小板由来増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、フィブロノジン(Fibronogin)拮抗剤、抗真菌薬、ビスホスホネート、ホスホリパーゼA1阻害剤、ヒスタミンH1/H2/H3受容体拮抗剤、マクロライド抗生物質、GPIIb IIIa受容体拮抗剤、エンドセリン受容体拮抗剤、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体作動薬、エストロゲン受容体薬、ソマトスタチン類似体、ニューロキニン1拮抗剤、ニューロキニン3拮抗剤、ニューロキニン拮抗剤、VLA-4拮抗剤、破骨細胞阻害剤、DNAトポイソメラーゼATP加水分解阻害剤、アンギオテンシンI変換酵素阻害剤、アンギオテンシンII拮抗剤、エンケファリナーゼ阻害剤、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ作動薬 インスリン増感剤、タンパク質キナーゼC阻害剤、CXCR3阻害剤、Itk阻害剤、サイトゾルホスホリパーゼA2-α阻害剤、PPAR作動薬、免疫抑制剤、Erb阻害剤、アポトーシス作動薬、リポコルチン作動薬、VCAM-1拮抗剤、コラーゲン拮抗剤、α2インテグリン拮抗剤、TNFα阻害剤、酸化窒素阻害剤、及びカテプシン阻害剤。
【0043】
α-アドレナリン遮断薬の例としては、アルフゾシン、アモスラロール、アロチニロール(arotinilol)、ダピプラゾール、ドキサゾシン、エルゴロイド、フェンスピリド、イダゾキサン、インドラミン、ラベタロール、マノテピル、メシル酸塩、ナフトピジル、ニセルゴリン、プラゾシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、トリマゾシン、及びヨヒンビンが含まれる。
【0044】
麻酔薬の例としては、ベンゾカイン、コカイン、リドカイン、メピバカイン、及びノバカインが含まれる。
【0045】
β-アドレナリン作動薬としては、アルブテロール、バムブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、デノパミン、エフェドリン、エピネフリン、エタフェドリン、エチルノルエピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イボパミン、イソエタリン、イソプロテレノール、マブテロール、メタプロテレノール、メトキシフェンアミン、オキシフェドリン、ピルブテロール、プレナルテロール、プロカテロール、プロトキロール、レプロテロール、リミテロール、リトドリン、サルメルテロール(salmerterol)、ソテレノール、テルブタリン、トレトキノール(tretoquinol)、ツロブテロール及びキサモテロールが含まれる。
【0046】
抗癌、抗増殖及び抗悪性腫瘍薬の例としては、微小管運動に影響を及ぼす薬剤(例えば、コルヒチン、Epo D、エポチロン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど)、スルホン酸アルキル、血管新生阻害剤(例えば、アンギオスタチン、エンドスタチン、スクアラミンなど)、代謝拮抗物質、例えば、プリン類似体(例えば、6-メルカプトプリン又はクラドリビン、すなわち、塩素化プリンヌクレオシド類似体など)、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル、シタラビンなど)及び抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシンなど)、カスパーゼ活性剤、セリバスタチン、シスプラチン、エチレンイミン、フラボピリドール、リムス系薬物(例えば、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、ゾタロリムスなど)、メトトレキサート、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、プロテアソーム阻害剤、及びスラミンが含まれる。
【0047】
抗菌薬の例としては、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、ニトロフラゾン、銀粒子、銀塩、金属銀及び抗生物質、例えば、ゲンタマイシン、ミノサイクリン及びリファンピン、トリクロサンが含まれる。
【0048】
気管支拡張薬の例としては、とりわけ(a)エフェドリン誘導体、例えば、アルブテロール、バムブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、ジオキセテドリン(dioxethedrine)、エフェドリン、エピネフリン、エプロジノール、エタフェドリン、エチルノルエピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イソエタリン、イソプロテレノール、マブテロール、メタプロテレノール、n-メチルエフェドリン、ピルブテロール、プロカテロール、プロトキロール、レプロテロール、リミテロール、サルメテロール、ソテレノール、テルブタリン及びツロブテロール、(b)第四級アンモニウム化合物、例えば、メチル硫酸ベボニウム、臭化フルトロピウム、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム及び臭化チオトロピウム、(c)キサンチン誘導体、例えば、アセフィリン、アセフィリンピペラジン、アンブフィリン、アミノフィリン、バミフィリン、コリンテオフィリネート、ドキソフィリン、ジフィリン、エタミフィリン、エトフィリン、グアイチリン(guaithylline)、プロキシフィリン、テオブロミン、1-テオブロミン酢酸及びテオフィリン、ならびに(d)他の気管支拡張薬、例えば、フェンスピリド、メジバジン、メトキシフェナニメ(methoxyphenanime)及びトレトキノール(tretoquinol)、ならびに上記のものの組合せ及び薬学上許容される塩、エステル及び他の誘導体が含まれる。
【0049】
カルシウムチャネル遮断薬の例としては、アリールアルキルアミン(フェニルアルキルアミンを含む)、例えば、ベプリジル、クレンチアゼン(clentiazen)、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、セモチアジル、テロジリン及びベラパミル;ベンゾチアゼピン、例えば、ジルチアゼム;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、他のカルシウムチャネル遮断薬の中でも、ベンシクラン、エタフェノン、ファントファロン、モノテピル及びペルヘキシリン;ジヒドロピリジン誘導体(1,4-ジヒドロピリジン誘導体を含む)、例えば、アムロジピン、アラニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、エホニジピン、エルゴジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン及びニトレンジピン、ピペラジン誘導体、例えば、シンナリジン、ドタリジン、フルナリジン、リドフラジン及びロメリジンが含まれる。
【0050】
コルチコステロイドの例としては、とりわけ、ベタメタゾン、コルチゾン、デフラザコート、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン、ならびにそれらの組合せ及び薬学上許容される塩、エステル及び他の誘導体が含まれる。
【0051】
酸化窒素供与剤/放出分子の例としては、無機硝酸塩/亜硝酸塩、例えば、亜硝酸アミル、二硝酸イソソルビド及びニトログリセリン;無機ニトロソ化合物、例えば、ニトロプルシドナトリウム;シドノンイミン、例えば、リンシドミン及びモルシドミン;NONOアート、例えば、ジアゼニウムジオレート及びアルカンジアミンのNO付加物;低分子量化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン及びN-アセチルペニシラミンのS-ニトロソ誘導体)及び高分子量化合物(例えば、天然ポリマー/オリゴマー、オリゴ糖、ペプチド、多糖、タンパク質、及び合成ポリマー/オリゴマーのS-ニトロソ誘導体)を含むS-ニトロソ化合物、ならびにC-ニトロソ化合物L-アルギニン、N-ニトロソ化合物、及びO-ニトロソ化合物が含まれる。
【0052】
本開示における使用のためのプロスタグランジン及びその類似体の例は、以下の好適なメンバーから選択されてもよい:プロスタグランジン、例えば、PGE1及びPGI2及びプロスタサイクリン類似体、例えば、ベラプロスト、カルバサイクリン、シプロステン、エポプロステノール、及びイロプロストが含まれる。
【0053】
麻薬性鎮痛薬の例としては、とりわけ、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホネイン(hydromorphonein)、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、プロポキシフェン、及びペンタゾシン、ならびにそれらの組合せ及び薬学上許容される塩、エステル及び他の誘導体が含まれる。
【0054】
非麻薬性鎮痛薬の例としては、鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェン、ならびに非ステロイド系抗炎症薬、例えば、アスピリン、セレコキシブ、ジフルニサル、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンインドメタシン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダック、トルメチン、及びバルデコキシブが含まれる。
【0055】
本開示の医療デバイス、例えば、尿管ステントは、これらの又はその他の治療薬のうち1以上を含有し、放出するように製造してもよい。本明細書に列挙される薬物に加え、それらの薬物の薬学上許容される塩、エステル、及び他の誘導体も利用可能である。本明細書で提供される薬物は、例えば、医療デバイスのポリマー成分に負荷することができる。医療デバイスがステントである場合、薬物は、コイル、そのコイルに隣接するニット構築物、又はニット構築物に含浸するコーティングに配合してよい。薬物は、医療デバイス上にコーティングされるコーティングに配合してもよい。
【0056】
泌尿器科的に有益な薬物は、とりわけ、以下を含む種々の方法で薬物放出ステントと会合させてよい:(a)ステント部品、例えば、モノフィラメント(monofilmant)コイル、又はマルチフィラメントニット構築物の内部(バルク)、又はコーティング若しくはスリーブ若しくはシースへの負荷、(b)ステントの表面、例えば、モノフィラメントコイルの表面、又はマルチフィラメントニット構築物の表面、又は閉じ込め層若しくはスリーブ若しくはシースの表面への結合、ここで、薬物は供給結合的相互作用及び/又は非共有結合的相互作用(例えば、ファンデルワールス力、疎水性相互作用及び/又は静電気的相互作用、例えば、電荷-電荷相互作用、電荷-双極子相互作用、及び双極子-双極子相互作用などの相互作用、水素結合を含む)のいずれかによって表面に結合される、(c)ステント又はその部品の全部又は一部を覆うコーティングとしての適用、(d)ステント又はその部品の表面特徴(例えば、陥凹)への負荷、及び(e)以上の組合せ。
【0057】
薬物放出ステントと会合された泌尿器科的に有益な薬物の量は、治療上又は予防上有効な量であるべきであり、ここで、その量は、特定の薬物及び所望の効果に応じて、1重量%以下から2重量%~5重量%~10重量%~25重量%~50重量%以上の範囲であり得る。
【0058】
薬物を含む医療デバイスの一実施形態では、本開示は、デバイスを形成し、デバイスの端から端まで内腔を画定するポリマーマトリックス、ポリマー高分子を含み、ポリマー高分子間の空間を画定するマトリックス;そのマトリックスの空間の少なくとも一部内に含有される薬物;及び医療デバイスが哺乳動物の身体に置かれた場合にポリマーマトリックスの外部への薬物の拡散に影響を及ぼすために、マトリックスの空間の少なくとも一部内に含有される材料を含む、哺乳動物の身体に置くための医療デバイスを提供する。所望により、以下のうちの1以上が本開示の医療デバイスをさらに特徴付けることができる:ポリマー材料及び薬物のそれぞれは、薬物の分子量がポリマー材料の分子量より小さくなる分子量を有すること;デバイスと会合される薬物の量はデバイスの重量の0.1~50重量パーセントであること;医療デバイスは尿管ステント又はカテーテルであること;ポリマー成分はエチレンビニルアセテート(EVA)を含むこと;ポリマー成分は疎水性であること;薬物を含有する空間の少なくとも一部がポリマー材料も含有すること;薬物は塩化オキシブチニン又はケトロラクを含むこと;薬物と会合した材料はポリエチレングリコール(PEG)を含むこと;薬物は生分解性材料と会合していること;薬物は材料と会合しており、薬物はその材料からポリマーマトリックスの外部へ拡散する前に薬物が解離しなければならないこと;ポリマーマトリックスはデバイス上にコーティングされること。
【0059】
よって、医療デバイスは、患者の身体に1以上の薬物を送達するためのビヒクルとして使用することができる。尿管ステント、カテーテル、及び/又は他の医療デバイスは、そのデバイスを患者の身体に完全に又は部分的に置くことによって薬物を送達するために使用することができる。ポリマーマトリックス中に特定の材料及び薬物を使用することにより、マトリックスの外部への薬物の拡散は、これまでには達成できなかった方法で制御することができる。1以上の薬物はそれにより、患者の身体に持続的期間にわたって(例えば、数日~数ヶ月の範囲)、比較的一定の治療的レベルで投与することができる。
【0060】
本開示による薬物送達医療デバイスは、薬物及びデバイスがヒト又は他の哺乳動物の身体に置かれた場合にマトリックスの外部への薬物の拡散に影響を及ぼす材料を負荷したポリマーマトリックスで全体的に又は部分的に形成されてよい。このデバイスは、尿管ステント、カテーテル、透析管、カニューレ、尿道ステント、縫合糸、又は身体に置く(完全に又は部分的に)ために設計された他の医療デバイスであり得る。本開示によるデバイスは、所望により、このような負荷済みポリマーマトリックスで全体的に又は部分的にコーティングしてよい。例えば、疎水性ポリマーマトリックスは、リードワイヤ、ステント、又はカテーテルの全部又は一部をコーティングすることができる。
【0061】
別の実施形態では、本開示は、細長いステント本体、展開可能な保持構造、ならびに(i)展開可能な保持構造の少なくとも一部に配置される薬物放出材料のスリーブ、(ii)展開可能な保持構造に取り付けられている薬物放出材料のシート、及び(iii)展開可能な保持構造の少なくとも一部に配置される材料のスリーブに接続された薬物放出材料のシートから選択される薬物放出部材を含む尿管ステントを提供する。所望により、以下の特徴のうち1以上がこの薬物放出尿管ステントをさらに説明し得る:薬物放出材料のスリーブは展開可能な保持構造の少なくとも一部に配置され、ここで、所望により、このスリーブは生崩壊性スリーブであり、かつ/又はこのスリーブは熱収縮性スリーブであり、かつ/又はこのスリーブは、内径1~4mm、長さ2~500mm及び厚さ50~200マイクロメーターの範囲であり;このステントは、展開可能な保持構造に取り付けられている薬物放出材料のシートを含み、ここで、所望により、このシートは生崩壊性シートであり、かつ/又はこのシートは弾性シートであり、かつ/又はこのシートは幅2~20mm、長さ2~500mm及び厚さ50~200マイクロメーターの範囲であり;このステントは、コイル又はループの形態の保持構造を含み、ここで、薬物放出材料のシートは、保持構造の展開時にコイル又はループ面積の大部分に;このステントは、展開可能な保持構造の少なくとも一部には位置される材料のスリーブに接続された薬物放出材料のシートを含み;このステントは、尿管を経て送達され、腎臓内で展開されるように構成された腎臓保持構造である保持構造を含み、ここで、所望により、保持構造は、その保持構造が展開時に腎臓に送達されることを可能とするのに十分小さいプロフィールに縮小されるように適合され;このステントは、薬物放出材料のシートが取り付けられ、保持構造の展開時に間に薬物放出材料のシートが位置する複数の細長い部材を含む保持構造を有し;このステント本体及び展開可能な保持構造は生体安定性ポリマーを含む。
【0062】
ポリマー中の薬物の負荷量は、他の因子の中でも材料の性質、ポリマーの量、ポリマーの放出プロフィール、薬物の放出プロフィール、所望の薬物拡散効果、及び所望の薬物送達期間に応じて、デバイスの約0~20重量パーセントであり得る。一実施形態では、薬物の負荷量は、デバイスの約1~10重量パーセントである。
【0063】
特にポリマーからの薬物の放出に影響を及ぼすためにポリマー組成物に材料が添加されてもよい。このような材料には、限定されるものではないが、スチレンエチレン-ブチレン-スチレン(SIBS)、コラーゲン、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、デキストリン、可塑剤、親油性材料及びその他の脂肪酸塩、孔形成剤、糖、グルコース、デンプン、ヒアルロン酸(HA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むキレート剤、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、及びそれらのコポリマーが含まれる。所望の薬物放出プロフィールを達成するために、放出プロフィールの異なる複数の材料を、薬物を含むポリマー組成物内に配合することができる。
【0064】
一態様において、本開示は、外部閉じ込め層によって少なくとも部分的に覆われた生吸収性医療用インプラントを提供し、ここで、閉じ込め層は、非生吸収性であるか、又は少なくとも部分的に生吸収性であるが、医療用インプラントほど急速に分解しない。一実施形態では、in vivoにおいて、医療用インプラントは分解して断片となるが、外部層はインプラント由来の断片が渡ることができない障壁を提供するのに十分な構造的完全性を保持する。このように、これらの断片は、それらが宿主にいずれの害も生じ得ない限局されたエリアに留まるように拘束される。実際に、断片が分解しても、生じたより小さい断片及び最終的にはインプラントの分子成分は全て外部閉じ込め層内に留まり、一緒に排出に安全な場所へ導かれる。
【0065】
所望により、閉じ込め層及び分解された医療デバイスは同時に排出される。医療デバイス及び閉じ込め層の両方は軟質及びコンプライアントとなり得、それらが移植された管、例えば、尿管に沿って、それらが同時に宿主から排出されるまで移動し得る。閉じ込め層は分解性であってよいが、それは分解性である必要はない。閉じ込め層が軟質及び柔軟となり、その完全性を維持する限り、閉じ込め層は医療デバイスが排出されると同時に宿主から排出され得る。
【0066】
閉じ込め層は、デバイスのセグメント化、すなわち、デバイスの断片への崩壊の管理を補助し得る。閉じ込め層は、例えば、デバイスの領域に配置され、それらの領域を宿主の体液との接触から保護し得る。保護されない領域はより急速に分解し、医療デバイスに亀裂又はセグメントをもたらし得る。閉じ込め層は有孔性であってよく、従って、宿主の周囲の体液の制御された量を医療デバイスに接触させることを可能とする。閉じ込め層の孔隙率を調節することにより、デバイスのセグメント化は管理され得る。別の選択肢として、勾配コーティングを使用することにより、比較的薄い(コーティングが少ない)領域で覆われている医療デバイスの部分は、最初に崩れてセグメントとなる。別の選択肢として、医療デバイスは、例えば、デバイスの選択された部分をある程度の期間、水分に曝すことによって予め分解されてもよい。これらの予め選択された領域は、医療デバイスの他の部分よりも早期に分解し得る。この場合、閉じ込め層は、それらの領域が宿主の体液に曝される時を制御するために、予め分解される領域に位置してよい。
【0067】
閉じ込め層は医療デバイスの外部に存在してもよいが、別の実施形態では、閉じ込め層を医療デバイスの内部に、例えば、中空空間を有する医療デバイスの内部、すなわち管腔に配置する。管腔を有する例示的医療デバイスはステントである。閉じ込め層がステントの内部に配置され、ステントが生分解性である場合には、ステント分解の際に形成するステントの断片は、断片が管理可能に小さくなる、すなわち、それらが宿主に有害な大きさでなくなる、あるいはこれらの断片はそれらの成分ポリマー又はモノマー成分に分解し、閉じ込め層を移動できる十分な時間、閉じ込め層と宿主の組織との間に保持される。
【0068】
勾配
一態様において、医療デバイスは、勾配を有するとして特徴付けられる。勾配は、方向の関数としての何らかの特性、例えば、医療デバイスの組成の変動を指す。この勾配は勾配に沿った分解の変動を提供する。例えば、医療デバイスを形成するポリマーの平均分子量を医療デバイスの方向に沿って、医療デバイス又はその一部の遠位端のポリマーが医療デバイス又はその一部の近位端のポリマーよりも高い平均分子量を有するように変動させてよい。このように、医療デバイス又はその一部の近位端は、ポリマーがより高い初期平均分子量を有する遠位端よりも急速に分解し得る。本開示の医療デバイスにおける勾配の提供は、デバイスの管理された分解の機構を提供する。一実施形態では、勾配は、医療デバイスの機能性には影響を及ぼさない又は効果をもたらさないが、デバイスの分解プロフィールにのみ影響を与える。医療デバイスのこのような不均一性は、本明細書では医療デバイスの勾配と呼ぶことができ、このような勾配を有する医療デバイスは、段階的医療デバイスと呼ぶことができる。
【0069】
所望により、本開示の閉じ込め層は、医療デバイスのある部分を覆う閉じ込め層がその医療デバイスの別の部分を覆う閉じ込め層と異なるような勾配を有するということで特徴付けることができる。閉じ込め層のこのような不均一性は、本明細書では閉じ込め層の勾配と呼び、このような勾配を有する閉じ込め層は段階的閉じ込め層と呼ぶことができる。
【0070】
例えば、一実施形態では、勾配は、異なる分解速度を提供する。勾配は、医療デバイスのある部分を覆う閉じ込め層がその医療デバイスの異なる部分を覆う閉じ込め層よりも速い又は遅いいずれかの異なる速度で分解するように構築されてよい。
【0071】
別の例として、別の実施形態では、勾配は、異なる程度の分解を提供する。よって、勾配は、医療デバイスのある部分を覆う閉じ込め層がその医療デバイスの異なる部分を覆う閉じ込め層とは異なる程度に分解するように構築されてよい。分解の程度は、種々の方法で測定することができる。例えば、閉じ込め層の厚さが移植前とその後それが移植されてそれが分解する最大程度まで分解された後に測定されてよい。厚さの変化は、厚さの減少パーセンテージとして記載されてよく、ここで、勾配は、医療デバイスの異なる部分に起こる厚さの減少に比べて大きい又は小さいいずれかの、医療デバイスのある部分の厚さの異なる減少パーセンテージを提供する。
【0072】
さらに別の例として、一実施形態では、勾配は、異なる場所の閉じ込め層には異なる大きさの孔、又は所望により、閉じ込め層のある場所では孔を、別の場所では無孔を提供する。言い換えれば、閉じ込め層は孔隙率に変動を有し得る。よって、勾配は、医療デバイスのある部分の閉じ込め層が、孔を含むメッシュ、ネット、編物又は他の構築物であり、医療デバイスの異なる部分の閉じ込め層が固体である、すなわち、いずれの孔も持たないように構築されてよい。あるいは、勾配は、医療デバイスのある部分の閉じ込め層が比較的大きな孔を有するメッシュなどの形態であり、医療デバイスの異なる部分の閉じ込め層がこれもまたメッシュなどの形態であるが、比較的小さな孔を有するように構築されてよい。
【0073】
勾配は、種々の方法で形成され得る。例えば、異なる分解速度を有する異なる組成物を、医療デバイスの異なる部分の閉じ込め層を形成するために使用してよい。よって、比較的高い分解速度を有する組成物を医療デバイスの第1の部分に配置してよく、比較的遅い分解速度を有する組成物を医療デバイスの第2の部分に配置してよい。このように、閉じ込め層は、ある場所では他の場所より急速に分解する。
【0074】
別の例として、単一の組成物を用いて段階的閉じ込め層を形成してもよい。例えば、単一の組成物を医療デバイスの第1の部分に第1の厚さまでコーティングしてよく、同じ組成物が医療デバイスの第2の部分に第2の厚さを有するコーティングを製造するために使用される。一般に、厚いコーティングほど、薄いコーティングよりも医療デバイス上に長時間保持され、又は言い換えれば、他の全ての因子が等しければ、厚いコーティングほど薄いコーティングよりも緩慢に分解する。より厚いコーティングは、例えば、より大きなコーティング厚みが望まれる閉じ込め層の領域を繰り返しコーティングすることによって形成され得る。
【0075】
閉じ込め層の厚さは、医療用インプラント中で異なってよい。しかしながら、その最も厚い点で、種々の実施形態において、閉じ込め層は、10ミクロンより大きい、又は20ミクロンより大きい、又は30ミクロンより大きい、又は40ミクロンより大きい、又は50ミクロンより大きい、又は60ミクロンより大きい、又は70ミクロンより大きい、又は80ミクロンより大きい、又は90ミクロンより大きい、又は100ミクロンより大きい、又は110ミクロンより大きい、又は120ミクロンより大きい、又は130ミクロンより大きい、又は140ミクロンより大きい、又は150ミクロンより大きい、又は160ミクロンより大きい、又は170ミクロンより大きい、又は180ミクロンより大きい、又は190ミクロンより大きい、又は200ミクロンより大きい厚さを有する。最大の厚さは、500ミクロン、又は400ミクロン、又は300ミクロン、又は200ミクロン、又は150ミクロン、又は100ミクロンであり得る。従前に述べたように、閉じ込め層はコーティングであってよく、ここで、その最も厚い部分でのコーティングの厚さは、前述の厚さのいずれかである。
【0076】
閉じ込め層の量は、医療用インプラント中で異なってよい。一態様において、閉じ込め層の厚さを明示すること加えて、又はその代わりに、閉じ込め層は、所与の容量の医療デバイスに対してどのくらいの有機ポリマーが存在するかという観点で特徴付けることもできる。例えば、その量は、医療デバイス平方センチメートル(cm2)当たりの有機ポリマーmgとして明示することができる。種々の実施形態では、医療デバイスは、少なくとも10mg/cm2;又は少なくとも15mg/cm2;又は少なくとも20mg/cm2;又は少なくとも25mg/cm2;又は少なくとも30mg/cm2;又は少なくとも35mg/cm2;又は少なくとも40mg/cm2;又は少なくとも45mg/cm2;又は少なくとも50mg/cm2の量の閉じ込め層で覆われる。
【0077】
さらに別の例として、編物を形成する微細線維は、編物中の孔の数及び大きさに効果をもたらすためにきつく又はゆるく編むことができる。閉じ込め層は、医療デバイスの第1の部分により大きな孔を、そして医療デバイスの第2の部分により小さな孔を提供する2種類以上の異なる編物から構築されてよい。このように、閉じ込め層は、下にある医療デバイスが医療デバイスの第1の部分(メッシュ孔径がより大きく、従って、メッシュが周囲の体液を医療デバイスにより接近させやすい場所)ではより急速に、そして医療デバイスの第2の部分(メッシュ孔径がより小さい場所)ではより緩慢に分解することを可能とする。
【0078】
よって、一実施形態では、本開示は、医療デバイスと、その医療デバイスの少なくとも一部を覆う段階的閉じ込め層を含む医療用インプラントを提供する。所望により、段階的閉じ込め層は、異なる場所に異なる厚さ、例えば、2、3、4、5、又は5より多い厚さを含んでよい。異なる場所で複数の厚さを有する段階的閉じ込め層は、異なる場所にポリマー組成物の異なる数のコーティング層を有することにより形成することができ、よって、(コーティング組成物の)複数の層を含むと言える。また、所望により、段階的閉じ込め層は、異なる場所に複数の組成物、例えば、2、3、4、5、又は5より多い組成物を含んでよい。所望により、段階的閉じ込め層は、2つ以上の特性、例えば、複数の厚さ及び複数の組成物に変動を含み得る。
【0079】
厚さ、組成及び孔隙率は閉じ込め層に存在し得る変動の例であるが、これらは単に例である。いくつか挙げると、例えば、テクスチャーの変動、親水性の変動、熱安定性の変動、引張強度の変動、及び閉じ込め層が繊維を含有する場合には繊維密度の変動など、他の変動も本開示に従い段階的閉じ込め層を作出するために使用可能である。
【0080】
一実施形態では、閉じ込め層は、1以上の有機ポリマーから製造される。閉じ込め層は、完全に非生分解性であってよい。しかしながら、別の実施形態では、閉じ込め層は生分解性であるが、それは医療デバイスよりも緩慢な速度で分解する。このように、医療デバイスが分解して断片となれば、閉じ込め層は、その構造的完全性を保持し、それらの断片が宿主にとって有害でないさらに小さい断片に、及び/又は医療デバイスのポリマー成分及び/又はモノマー成分に分解するために十分な時間、それらの断片を一緒に閉じ込め空間に保持する。
【0081】
一実施形態では、閉じ込め層は、医療デバイス上のコーティングである。このコーティングは、医療デバイスの露出面の全てに存在してもよく、又はそれらの表面の一部、例えば側面のみに存在してもよい。コーティングは完全に非生分解性であってよい。しかしながら、別の実施形態では、コーティングは生分解性であるが、それは医療デバイスよりも緩慢な速度で分解する。このように、医療デバイスが分解して断片となれば、コーティングは、その構造的完全性を保持し、それらの断片が宿主によって有害でないさらに小さい断片に、及び/又は医療デバイスのポリマー成分及び/又はモノマー成分に分解するために十分な時間、それらの断片を一緒に閉じ込め空間に保持する。
【0082】
特に、コーティングが生分解性であり、かつ、医療デバイスが分解して断片となる場合には、コーティングは、コーティングがコーティング内に断片を含有することができるように、医療デバイスが崩壊する期間、十分な強度を維持しなければならない。この機能を提供するために、コーティングは、十分な厚さでなければならない。十分な厚さのコーティングを提供するために、医療デバイスは、ポリマー溶液、すなわち、溶解したポリマーの溶液に浸漬してよい。医療デバイスの崩壊中に閉じ込め層として機能するために十分な強度と完全性を維持するポリマーの厚さを構築するために、デバイスは複数回溶液に浸漬してよい。あるいは、医療デバイスをポリマー溶液にくぐらせてもよい。デバイスを溶液にくぐらせる速度は、コーティングの厚さに影響を与え、くぐらせる速度が遅いほど厚いコーティングを提供する。
【0083】
医療デバイス上にコーティングを形成するためにポリマー溶液が使用される場合、溶液中のポリマーの濃度も考慮しなければならない要因である。高濃度のポリマーほど、閉じ込め層を形成するためにデバイスが浸漬されるか、くぐらせるか、又はそれ以外の方法によりポリマーでコーティングされる場合に、医療デバイスの表面により多くのポリマーを堆積する傾向がある。
【0084】
閉じ込め層は、生分解中に形成されるデバイスの断片による傷害又は損傷又は外傷から宿主を保護することが望まれる、医療デバイスの部分に配置される。例えば、宿主に移植されるステントの場合、そのステントが一部は宿主の腎臓に、一部は腎臓外に移植される時、崩壊中のステントの断片が腎臓内に分散して腎臓結石を生じないことが望ましい。よって、ステントの腎臓内に移植される部分はコーティングされてよいが、ステントの腎臓外に移植される部分はコーティングされなくてよい。このように、閉じ込め層は医療デバイスの部分にのみ存在する。
【0085】
本開示は、崩壊プロセスによって、すなわち、デバイスが崩れて断片となるプロセスによって分解するいずれの医療デバイスにも閉じ込め層を提供可能であることを示す。この種の例示的デバイスは尿管内ステントである。このステントは、まず、所定の時間、最適な尿管開通性を維持するように生分解性かつ崩壊性である。しかしながら、この期間の終了時には、このステントは崩壊して小断片となり始める。それらの小断片の移動を防ぐために、このステントは閉じ込め層により少なくとも部分的に包まれる。この層は、小断片が形成され、その後、無害な断片に分解するか、又はそれらのポリマー成分又は分子成分に分解する期間、閉じ込め層がそれらの小断片を含有するように十分な完全性を保持する。従って、閉じ込め層は、ステントの崩壊時に形成される小断片から宿主を保護する働きをする。閉じ込め層はまた、体外に容易に送り出されない堅い断片との接触から宿主を保護する。
【0086】
所望により、デバイスは、より小さい断片に崩壊しなくてもよいが、代わりに、それが移植された導管、例えば、尿管を通過できるような程度に軟化すればよい。
【0087】
一実施形態では、本開示は、ステントの異なる場所で多様な特性を有するが、ステント及びその部品が複数のセグメントから組み立てられない尿管ステントを提供する。むしろ、このステントは、単一の均一な構築物から組み立てられ、その後、その構築物は構築物の異なる場所で多様な特性を提供するように修飾される。多様性は、生分解性、放射線不透過性、剛性又は柔軟性、及び治療薬の負荷を含む1以上の特性であり得る。多様性は、本明細書に開示されるような方法により、例えば、ステントの部品にスリットを入れることにより、ステント又はその部品をそれが宿主に移植される前に選択的に分解すること、及び本明細書に開示される他の方法より創出される。
【0088】
一実施形態では、医療デバイスはステントであり、このステントは、繊維補強材が(a)モノフィラメントコイルと横編み管状マルチフィラメント糸の組合せ;(b)モノフィラメントコイルと編組マルチフィラメント糸の組合せ;(c)編組若しくは横編みモノフィラメント糸を含む管;又は(d)管の形態の横編み若しくは編組モノフィラメント糸である、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物である。
【0089】
さらに別の実施形態では、ステントは、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であり、ここで、繊維補強材はモノフィラメントとニット又は編組マルチフィラメント糸の組合せであり、繊維補強エラストマーフィルムは、患者の尿管よりも小さな直径を有する中心主要部品を有する管の形態であり、位置保持端のそれぞれは、最初に部分的にオーバーラップする主要中心部品のバイチューブラー端(bitubular ends)と主要中心管の完全な半円筒拡張部に取り付けられた2つの過拡張フラップを作り出すために放射状に及び軸方向に切断された横方向に融合された管とからなる2つの自由に横方向に変形可能な部品を画定する。
【0090】
なおさらに別の実施形態では、ステントは、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であり、ここで、繊維補強材はモノフィラメント糸又はニット若しくは編組マルチフィラメント糸との組合せであり、繊維補強エラストマーフィルムは、患者の尿管よりも小さな直径を有し、少なくとも1つの位置保持端を有する管の形態であり、位置保持端は、患者の尿管に匹敵する長さを有し、かつ、変形応力がなく、主要管に対して30°より大きい角度を維持する柔軟な継手を含む主要管の傾斜部分である。
【0091】
別の実施形態では、ステントは、患者の体内の適切な位置にステントを保持することを助けるように構成された保持部分とその保持部分から延伸する延伸部分とを含み、延伸部分は、管腔を画定する側壁を有し、側壁は第1の区画と第2の区画を有し、側壁の第1の区画は第1の厚さを有し、側壁の第2の区画は、第1の厚さとは異なる第2の厚さを有する。所望により、ステントは、以下のうち1以上をさらに特徴とし得る:保持部分は患者の腎臓内に配置されるように構成されること;保持部分は第1の保持部分であり、ステントは患者の体内の適切な位置にステントを保持することを助けるように構成された第2の保持部分をさらに含むこと;側壁の第1の区画はアニュラリングを形成すること;側壁の第1の区画はらせんを形成すること;側壁の第1の区画は凹部を形成すること;側壁は第3の部分を有し、側壁の第2の部分は側壁の第1の部分と側壁の第3の部分の間に配置されること;側壁は第3の部分を有し、第3の部分は第2の厚さとは異なる厚さを有し、側壁の第2の部分は側壁の第1の部分と側壁の第3の部分の間に配置されること;側壁は第3の部分を有し、側壁の第2の部分は側壁の第1の部分と側壁の第3の部分の間に配置され、第3の部分は第3の厚さを有し、第2の厚さは第1の厚さよりも大きく、第2の厚さは第3の厚さよりも大きいこと;側壁の第1の部分は第1の区画と第2の区画を有し、第1の部分の第1の区画は第1の方向に回転するらせんを形成し、第1の部分の第2の区画は、第1の方向とは異なる第2の方向に回転するらせんを形成すること。このステントは、その任意選択の実施形態を含め、本明細書に開示される技術によって、ステントが宿主内に置かれた際に管理された分解を示すように修飾され得る。例えば、スリットは、分解を促進する部位を提供するためのスリットに作製することができる。
【0092】
別の実施形態では、ステントは、患者の体内の適切な位置にステントを保持することを助けるように構成された保持部分とその保持部分から延伸する延伸部分とを含み、延伸部分は第1の部材と第2の部材を有し、第1の部材は管腔を欠き、第2の部材は管腔を欠き、第1の部材と第2の部材は編み合わせられている。別の実施形態では、ステントは、患者の体内の適切な位置にステントを保持することを助けるように構成された保持部分と、その保持部分から延伸し、拡張構成及び公称構成を有する延伸部分とを含み、延伸部分は、延伸部分の第1の端部から延伸部分の第2の端部へ延伸する管腔を画定する側壁を有し、側壁はチャンバーを画定し、チャンバーは、延伸部分をその拡張構成内に配置するために流体を受容するように構成される。この場合にも、これらのステントはいずれも、宿主内で位置を定められた管理された分解を示すように本明細書に開示される技術によって修飾されてよい。
【0093】
別の実施形態では、ステントは、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であり、ここで、繊維補強材は、モノフィラメントとニット又は編組マルチフィラメント糸の組合せであり、繊維補強フィルムは、患者の尿管よりも小さい直径を有し、かつ、少なくとも1つの位置保持端を含む中心主要部品を有する管状であり、位置保持端は、患者の尿管に挿入された後に雁首形状を採る中心主要管の柔軟性の高い延伸部であるが、アプリケーターを用いた挿入中に中心主要管と同一直線となり得る。
【0094】
別の実施形態では、ステントは、第1の部分と第2の部分を有する延伸部材を含み、第2の部分は、単一の管腔を画定する側壁を有し、第1の部分は第2の部分と結合され、第1の部分は患者の腎臓内に配置されるように構成され、延伸部材の第2の部分の側壁は、毛管作用及びウイッキングの少なくとも1つを介して第2の部分の側壁の第1の場所から第2の部分の側壁の第2の場所へ流体を送達するように構成され、延伸部材の第2の部分は、患者の膀胱及び患者の尿管の少なくとも1つの内部に配置されるように構成され、第1の部分の少なくとも一部は管腔内に配置される。所望により、以下の特徴のうち1以上がこのステントをさらに特徴付け得る:延伸部材の第2の部分はマルチストランド材料から構築されること;延伸部材の第2の部分は糸から構築されること;延伸部材の第2の部分は、編組管構成及び長い織りストリップ構成からなる群から選択される構成を有すること;延伸部材の第2の部分は、硫酸バリウムの負荷が高いメルトスパンポリプロピレンから構築されること;ステントは、患者の膀胱内に配置されるように構成された近位保持構造をさらに含み、近位保持構造は延伸部材の第2の部分に結合されること;ステントは、本特許の腎臓(the kidney of the patent)内に位置されるように構成された遠位保持構造をさらに含み、遠位保持構造は延伸部材の第1の部分に結合されること;第1の部分は絞まりばめを介して第2の部分に結合されること;延伸部材の第2の部分は実質的に充実管形状を有すること;延伸部材の第2の部分は実質的に柔軟であること;延伸部材の第1の部分は実質的に硬質であること;延伸部材の第2の部分は延伸部材の第1の部分よりも柔軟であること。このステントは、その任意選択の実施形態を含め、本開示に従い、管理された分解を示すように修飾されてよい。
【0095】
別の実施形態では、医療デバイスは、第1の部分と第2の部分を有する延伸部材を含む尿管ステントであり、第2の部分は実質的に充実円筒形状を有し、第1の部分は第2の部分に結合され、第1の部分は患者の腎臓内に配置されるように構成され、第1の部分は、第1の部分が患者の腎臓及び尿管のうち少なくとも1つで終わるような長さを有し、延伸部材の第2の部分は、毛管作用及びウイッキングのうち少なくとも1つを介して第2の部分の第1の場所から第2の部分の第2の場所に流体を送達するように構成され、延伸部材の第2の部分は、患者の膀胱及び患者の尿管のうちの少なくとも1つの内部に配置されるように構成される。このステントは、本開示に従い、管理された分解を示すように修飾されてよい。
【0096】
別の実施形態では、ステントは、少なくとも1つの微細線維を含有し、ここで、この微細線維は長手方向軸を有し、生吸収性ポリマー材料を含む材料から形成される。生吸収性ポリマー材料内のポリマー分子は、微細線維の長手方向軸に対して整列されるらせん配向を持ち得る。ステントは、患者へのステントの移植又は挿入時に患者によって少なくとも部分的に生吸収される。例えば、ステントは、編組又は織り構成;ステントの近位端又は遠位端の張り出し端部;及び長手方向軸を有し、かつ、配向された生吸収性ポリマー材料を含む少なくとも1つの微細線維を含んでよく、ここで、生吸収性ポリマー材料内のポリマー分子は、少なくとも1つの微細線維の長手方向軸に対して整列されるらせん配向を有する。所望により、以下のうちの1以上がこのステントをさらに説明し得る:近位端及び遠位端が張り出し端部を含むこと;少なくとも1つの微細線維がステントの長さの少なくとも一部に沿ってらせん状に巻かれていること;ステントは複数の微細線維を含み、ここで、所望により、それら複数の微細線維はステントの長さの少なくとも一部に沿ってらせん状に巻かれており、かつ、さらに所望により、それら複数の微細線維の第1の部分は第1の方向でらせん状に巻かれ、それら複数の微細線維の第2の部分は第1の方向とは反対の方向でらせん状に巻かれていること;複数の微細線維は編組であり、かつ、ステントの長さの少なくとも一部に沿ってらせん状に巻かれていること;ステントはステンレス鋼又はニチノールの微細線維を含むこと;ステントは12~36のらせん状微細線維を含むこと;ここで、所望により6~18の微細線維がらせんの形態であって、それぞれに対して軸方向に変位され、それらのらせんは第1の方向に延伸し、同数の微細線維が、第1の方向とは反対の第2の方向に延伸するらせんを含み、微細線維はステントの長手方向軸に均一に配置されること;配向された生吸収性ポリマー材料は、単一の生吸収性ポリマー又は生吸収性ポリマーのブレンドを含むこと;配向された生吸収性ポリマー材料は、ポリ(α-ヒドロキシ酸)ホモポリマー、ポリ(α-ヒドロキシ酸)コポリマー及びそれらのブレンドから選択されるポリマーを含むこと;配向された生吸収性ポリマー材料は、ポリグリコリド、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、ポリ-DL-ラクチド、及びそれらのブレンドから選択されるポリマーを含むこと;配向された生吸収性ポリマー材料は0.1~20%の範囲の結晶度を有すること;少なくとも1つの微細線維は、配向された生吸収性ポリマー材料のコアを含むこと;少なくとも1つの微細線維は、配向された生吸収性ポリマー材料のコーティングを含むこと;ステントは、幾何学的菱形セルのパターンを形成するように配置された複数の配向微細線維を含むこと;複数の微細線維は連結を形成するように互いに包みあっていること;少なくとも1つの微細線維が治療薬を含むこと;及びステントは冠動脈血管ステント、末梢血管ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管ステント、消化管ステント及び食道ステントから選択されること。
【0097】
別の任意選択の実施形態は、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であるステントを提供し、ここで、繊維補強材は、モノフィラメント糸又はニット又は編組マルチフィラメント糸との組合せであり、ここで、繊維補強エラストマーフィルムは、少なくとも1つの位置保持端を有する管の形態であり、この保持端は、主要管の横断面を超えるより大きく、また、横断面の直径を有し、アプリケーター内に半径方向の圧縮力をかけた際に、主要管の直径(これはまた患者の尿管の直径よりも小さい)に合うように可逆的に圧縮することができる逆円錐である。アプリケーターを用いた挿入の際に半径方向の圧縮力を助長するために、この逆円錐には部分的にスリットが入れられ、少なくとも2つの小葉、好ましくは3~4つの小葉を有する円錐壁とすることが好ましい。
【0098】
さらに別の任意選択の実施形態は、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であるものを提供し、ここで、繊維補強材は、モノフィラメントとニット又は編組マルチフィラメント糸の組合せであり、エラストマーフィルムは、患者の尿管の直径よりも小さい直径を有する中心主要部品を有し、少なくとも1つの位置保持端を有する管状であり、位置保持端は、涙型の横断面を有する非対称逆円錐であり、中心主要管の横断面を超えるより大きな横断面の平均直径を有する涙型の尖端において軸方向にスリットを持ち、このスリット入り非対称円錐は、アプリケーター内に半径方向の圧縮力をかけた際に、中心主要管直径に合うように可逆的に圧縮することができる。
【0099】
さらに別の任意選択の実施形態では、ステントは、繊維補強エラストマーフィルムの構築物であり、繊維補強材はモノフィラメント糸又はニット若しくは編組マルチフィラメント糸との組合せであり、補強エラストマーフィルムは、外延展開された際に患者の尿管の横断面よりも小さい円形横断面を有し、かつ、少なくとも1つの位置保持端を有する、片側だけ長手方向に圧着された可膨張性の管である中心主要部品を伴った管状であり、ここで、位置保持端は、涙型の横断面幾何学と中心主要管の圧着部と同一直線にある涙型の尖端における圧着部を有する、片側だけ圧着された可膨張性の非対称逆円錐であり、ここで、外延展開した際のこの逆円錐の平均直径は、中心主要管の平均直径を超える。
【0100】
所望により、繊維補強エラストマーフィルムは、ポリエチレングリコールと、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリン-ジオン、p-ジオキサノン、及び1,5-ジオキサパン-2-オンにより代表される群から選択される少なくとも1つの環式モノマーとから製造されるセグメント化コポリマーから形成される。所望により、このフィルムは、ε-カプロラクトンとグリコリドの混合物から形成される。所望により、このフィルムは、L-ラクチドとグリコリドの混合物から形成される。エラストマー系膨潤性フィルム組成物の例示的組成は、高分子量(20~35kDa)ポリエチレングリコール(PEG)とε-カプロラクトン/グリコリドの95/5(モル)混合物との結晶性コポリマーであり、ここで、コポリマー中のPEG成分の重量パーセントは、約10パーセントである。
【0101】
エラストマーフィルム組成物の別の例示的組成は、二段階で製造される結晶性セグメント化コポリマーである。第1段階は、開始剤及び触媒としてそれぞれトリエタノールアミン及びオクタン酸第一スズの存在下での重合によりε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン及びグリコリドから製造される非晶質又は低融点コポリマーの形成を伴う。第2段階では、第1段階の生成物をl-ラクチドとε-カプロラクトンの混合物と反応させて、最終的な結晶性三軸コポリマーを生成する。
【0102】
所望により、フィルムは、電気紡糸繊維から作製してもよい。また、所望により、繊維補強フィルムは、モノフィラメント糸を、所望によりニット又は編組マルチフィラメント糸と組み合わせて含む又は含有してよく、ここで、補強モノフィラメント糸は、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリン-ジオン、p-ジオキサノン、及び1,5-ジオキサパン-2-オンにより代表される群から選択される少なくとも2つの環式モノマーから製造されるセグメント化コポリマーから形成される。所望により、補強モノフィラメント糸は、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、及び炭酸トリメチレンから形成され、これは比較的緩慢に分解する組成物である。所望により、補強モノフィラメント糸は、グリコリド、ε-カプロラクトン、及び炭酸トリメチレンから形成され、これは比較的急速分解する組成物である。
【0103】
補強モノフィラメント糸はまた、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスから選択される少なくとも1つの材料の無機微粒子分散相と、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーから製造される結晶性セグメント化コポリマーの吸収性ポリマーマトリックスとの複合材であってもよい。さらに、補強モノフィラメント糸は、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスからなる群から選択される少なくとも1つの材料の無機微粒子分散相と、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーの結晶性セグメント化コポリマーの吸収性ポリマーマトリックスとの複合材であり得る。
【0104】
なおさらに別の任意選択の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物である、生吸収性及び崩壊性、多部品、非移動尿管内ステントを提供し、ここで、繊維補強材はモノフィラメント糸又はニットマルチフィラメント若しくは編組糸との組合せであり、補強ニット又は編組マルチフィラメント織物は、結晶性セグメント化コポリマーから形成される。このようなコポリマーの例示的組成物は、二段階で製造される三軸コポリマーである。第1段階は、開始剤及び触媒としてそれぞれトリメチロールプロパン及びオクタン酸第一スズの存在下でε-カプロラクトン及び/又は炭酸トリメチレンを用いた非晶質又は低融点三軸プレポリマーの形成を伴う。第2段階では、第1段階の生成物をグリコリド又はグリコリドとε-カプロラクトン及び/若しくは炭酸トリメチレンの混合物と反応させる。別の例示的組成物は、ニット又は編組マルチフィラメント糸の生成において使用するためのコポリマー、すなわち、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン;炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリン-ジオン、p-ジオキサノン、及び1,5-ジオキサパン-2-オンにより代表される群から、好ましくは、ポリエチレングリコール、l-ラクチド、及び炭酸トリメチレンから選択される少なくとも1種類の環式モノマーとから製造される結晶性コポリマー、より好ましくは、l-ラクチド及び炭酸トリメチレンのセグメント化コポリマーである。所望により、このコポリマーはグリコリドと炭酸トリメチレンから製造され、これは糸に対して比較的急速な分解プロフィールを提供する。
【0105】
よって、一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物である吸収性及び崩壊性、多部品、非移動尿管内ステントを提供し、ここで、繊維補強材は、モノフィラメントコイルと編組マルチフィラメント糸の組合せであり、フィルムは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。フィルムはまた、l-ラクチドとグリコリド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとモルホリンジオンとから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成されてもよい。
【0106】
さらに、本開示は、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物である吸収性及び崩壊性、多部品、非移動尿管内ステントを提供し、ここで、繊維補強材は、モノフィラメントコイルと編組マルチフィラメント糸の組合せであり、補強モノフィラメント糸は、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリンジオン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。あるいは、補強モノフィラメント糸は、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスの群から選択される少なくとも1つの材料の無機微粒子分散相と、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーから製造される結晶性セグメント化コポリマーの吸収性ポリマーマトリックスとの複合材である。補強モノフィラメント糸はまた、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスの群から選択される少なくとも1つの材料の無機微粒子分散相と、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーの吸収性ポリマーマトリックスとの複合材であってもよい。
【0107】
よって、本開示はまた、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物である吸収性及び崩壊性多部品、非移動尿管内ステントである任意選択の実施形態を提供し、繊維補強材は、モノフィラメントコイルと編組マルチフィラメント糸の組合せであり、補強編組マルチフィラメント織物は、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、炭酸トリメチレン、ε-カプロラクトン、グリコリド、p-ジオキサノン、モルホリンジオン及び1,5ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。あるいは、補強編組マルチフィラメント管は、l-ラクチドとグリコリド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーから形成される。
【0108】
別の実施形態では、本開示は、ステントが少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であることを示し、ここで、繊維補強材は、編組又は横編みモノフィラメント糸の管であり、繊維補強フィルムは、患者の尿管の直径よりも小さい直径を有する中心主要部品と少なくとも1つの位置保持端を有する管状であり、位置保持端は、患者の尿管に挿入した後に中心主要管の軸に平行な開放端を有するループ形状を採る中心主要管の柔軟性の高い延伸部であり、このループは、アプリケーターを用いた挿入中に中心主要管と同一直線となり得る。組み立てられたステントのフィルム部品は、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。あるいは、フィルムは、l-ラクチドとグリコリド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとモルホリンジオンとから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。
【0109】
別の実施形態では、本開示は、ステントが少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であることを示し、ここで、繊維補強材は、編組又は横編みモノフィラメント糸の管であり、ここで、補強編組又は横編みモノフィラメント糸は、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリンジオン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。あるいは、補強編組又は横編みモノフィラメント糸は、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、炭酸トリメチレン、ε-カプロラクトン、グリコリド、p-ジオキサノン、モルホリンジオン及び1,5ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。補強横編み又は編組モノフィラメントはまた、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスの群から選択される少なくとも1つの材料の無機微粒子分散相と、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーから製造される結晶性セグメント化コポリマーの吸収性ポリマーマトリックスの複合材であり得る。さらに、補強横編み又は編組モノフィラメントは、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスの群から選択される少なくとも1つの材料の無機微粒子分散相と、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーの吸収性ポリマーマトリックスとの複合材であり得る。
【0110】
所望により、ステントは、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であり、ここで、繊維補強材は横編み又は編組モノフィラメントスキャフォールドであり、それ由来の補強構築物は、患者の尿管の直径よりも小さい直径を有する中心主要部品と少なくとも1つの位置保持端とを含む管の形態であり、ここで、位置保持端は、中心主要管の横断面よりも段階的に大きい横断面を提供するように設計された一連の直径を有し、管状アプリケーターを用いた尿生殖路への挿入時に半径方向に圧縮力をかける際に中心主要管と放射状に合うように可逆的に圧縮することができる逆円錐であり、フィルムは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとから製造された結晶性セグメント化コポリマーから形成される。あるいは、フィルムは、l-ラクチドとグリコリド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとモルホリンジオンとから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。補強横編み又は編組モノフィラメント糸は、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリンジオン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーから製造される結晶性セグメント化コポリマーから所望により形成されてよい。あるいは、補強編組又は横編みモノフィラメント糸は、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、炭酸トリメチレン、ε-カプロラクトン、グリコリド、p-ジオキサノン、モルホリンジオン及び1,5ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとから製造される結晶性セグメント化コポリマーから形成される。
【0111】
別の任意選択の実施形態では、ステントは、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物であり、ここで、繊維補強材は、横編み又は編組モノフィラメントスキャフォールドであり、それに由来する補強構築物は、患者の尿管の直径よりも小さい直径を有する中心主要部品と少なくとも1つの位置保持端とを含む管の形態であり、位置保持端は、中心主要管の横断面よりも段階的に大きい横断面を提供するように設計された一連の直径を有し、管状アプリケーターを用いた尿生殖路への挿入時に半径方向に圧縮力をかける際に中心主要管と放射状に合うように可逆的に圧縮することができる逆円錐であり、ここで、補強横編み又は編組モノフィラメント糸は、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスの群から選択される少なくとも1つの材料の無機微粒子分散相と、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーから製造される結晶性セグメント化コポリマーの吸収性ポリマーマトリックスとの複合材である。あるいは、補強編組又は横編みモノフィラメント糸は、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスの群から選択される少なくとも1つの材料の無機微粒子分散相と、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される、及び少なくとも1種類の環式モノマーの結晶性セグメント化コポリマーの吸収性ポリマーマトリックスとの複合材である。
【0112】
別の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの位置保持端を用いて設計された繊維補強エラストマーフィルムの構築物である吸収性及び崩壊性、多部品、非移動尿管内ステントを提供し、ここで、繊維補強材は横編みモノフィラメント糸であり、補強構築物は、患者の尿管の直径よりも小さい直径を有する中心主要部品と少なくとも1つの位置保持端を有する管の形態であり、ここで、位置保持端は、患者の尿管に挿入した後に中心主要管の軸に平行な開放端を有するループ形状を採る中心主要管の柔軟性の高い延伸部であり、このループは、アプリケーターを用いた挿入中に中心主要管と同一直線となり得、このフィルムは、結晶性セグメント化エラストマー高l-ラクチドコポリマーから形成され、モノフィラメントは、グリコリド、ε-カプロラクトン及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1つの環式モノマーとのセグメント化l-ラクチドコポリマーから形成され、モノフィラメントは、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスの群から選択される微粒子無機充填剤を含有する。
【0113】
一実施形態では、医療デバイスは、長手方向軸を有し、かつ、配向された生吸収性ポリマー材料を含む微細線維を含むステントであり、ここで、生吸収性ポリマー材料内のポリマー分子は、微細線維の長手方向軸に対して整列されるらせん配向を有し、ステントは、患者にそのステントを移植又は挿入する際に患者によって少なくとも部分的に生吸収される。任意選択の実施形態では、以下の1以上の特徴がこの医療デバイスをさらに特徴付けることができる:a)微細線維はステントの長さの少なくとも一部に沿ってらせん状に巻かれていること;b)ステントは複数の上記微細線維を含み、ここで、所望により、それら複数の微細線維はステントの長さの少なくとも一部に沿ってらせん状に巻かれており、所望により、複数の微細線維の第1の方向でらせん状に巻かれ、かつ、複数の微細線維は反対の方向でらせん状に巻かれていること;c)微細線維は編組微細線維であり、その複数の編組微細線維は編組され、ステントの長さの少なくとも一部に沿ってらせん状に巻かれていること;d)微細線維はニット微細線維であること;e)それら複数の微細線維はニット微細線維であり、配向された生吸収性ポリマー材料が単一の生吸収性ポリマーか又は生吸収性ポリマーのブレンドのいずれかを含むこと;f)配向された生吸収性ポリマー材料が、ポリ(α-ヒドロキシ酸)ホモポリマー、ポリ(α-ヒドロキシ酸)コポリマー及びそれらのブレンドから選択されるポリマーを含むこと;g)配向された生吸収性ポリマー材料が、ポリグリコリド、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、ポリ-DL-ラクチド、及びそれらのブレンドから選択されるポリマーを含むこと;h)配向された生吸収性ポリマー材料が0.1~20%の範囲の結晶度を有すること;i)微細線維が、配向された生吸収性ポリマー材料のコアを含むこと;j)ステントが冠動脈血管ステント、末梢血管ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管ステント、消化管ステント及び食道ステントから選択されること。
【0114】
所望により、ステントは、少なくとも2日間、若しくは2~3週間、適用部位で開通性を維持し、そこに留まることができ、又は7週間後に分解されたか、又は90日後に分解されたか、又は4か月後に分解された。
【0115】
本開示は、以下のさらなる例示的実施形態を提供する:
【0116】
一実施形態では、医療デバイスは、生分解性尿管内ステントである。このステントは、管状エラストマーフィルムと管状繊維補強材を含み、ここで、管状エラストマーフィルムは、管状繊維補強材を覆う単一の管である。ステントは、少なくとも1つの位置保持端と、患者の尿管の直径よりも小さい直径を有する中心主要管とを有し、ここで、少なくとも1つの位置保持端は、中心主要管の延伸部である。ステントは患者の尿管に配置され、かつ、患者の腎臓から患者の膀胱へ延伸し、かつ、少なくとも1つの位置保持端によって適切な位置に保持されるように構成される。フィルムは、繊維補強材を補強し、それに含浸させ、繊維補強材は、モノフィラメント又はマルチフィラメント糸のニット管又は編組管に配置されたモノフィラメントコイルを含む。フィルム及び繊維補強材はそれぞれ、少なくとも1種類の環式モノマーを含む吸収性結晶性セグメント化コポリマーを含む。フィルム及び繊維補強材のみで、尿管開通性を維持することができる。
【0117】
以下の選択肢がこのステントをさらに定義することができる:a)少なくとも1つの位置保持端は、患者の尿管に挿入された後に雁首形状を採る中心主要管の柔軟な延伸部であるが、アプリケーターを用いた挿入中に中心主要管と同一直線となり得ること;b)管状エラストマーフィルムは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;c)管状エラストマーフィルムは、l-ラクチドとグリコリド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;d)モノフィラメントコイルは、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリンジオン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;e)モノフィラメントコイルは、ポリマーマトリックスとそのマトリックス内に含有される無機微粒子分散相とを含む複合材を含み、このマトリックスは、結晶性セグメント化コポリマーと硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む無機微粒子分散相とを含むこと;f)モノフィラメントコイルは、ポリマーマトリックスとそのマトリックス内に含有される無機微粒子分散相とを含む複合材を含み、このマトリックスは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーと、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む無機微粒子分散相とを含むこと;g)モノフィラメントコイルは、ポリマーマトリックス及びそのマトリックス内に含有される無機微粒子分散相とを含む複合材を含み、このマトリックスは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;h)繊維補強材は、モノフィラメントコイルとマルチフィラメント糸の編組管とを含み、ここで、所望により、1)管状エラストマーフィルムは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含み;2)管状エラストマーフィルムは、l-ラクトンとグリコリド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノン、及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとモルホリンジオンとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;3)モノフィラメントコイルは、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリンジオン、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;4)モノフィラメントコイルは、ポリマーマトリックスとそのマトリックス内に含有される無機微粒子分散相とを含む複合材を含み、このマトリックスは、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーの結晶性セグメント化コポリマーと、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む無機微粒子分散相とを含むこと;5)モノフィラメントコイルは、ポリマーマトリックスとそのマトリックス内に含有される無機微粒子分散相とを含む複合材を含み、このマトリックスは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーと、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む無機微粒子分散相とを含むこと;6)マルチフィラメント糸は、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、炭酸トリメチレン、ε-カプロラクトン、グリコリド、p-ジオキサノン、モルホリンジオン及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;7)マルチフィラメント糸は、l-ラクチドとグリコリド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;j)モノフィラメントコイルは横編みモノフィラメント糸の管に配置され、ここで、所望により、1)管状エラストマーフィルムは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;2)管状エラストマーフィルムは、l-ラクチドとグリコリド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、p-ジオキサノン及び1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;3)モノフィラメント糸は、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、モルホリンジオン、p-ジオキサノン、及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;4)モノフィラメント糸は、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、炭酸トリメチレン、ε-カプロラクトン、グリコリド、p-ジオキサノン、モルホリンジオン、及び1,5-ジオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーを含むこと;5)モノフィラメント糸は、ポリマーマトリックスとそのマトリックス内に含有される無機微粒子分散相とを含む複合材を含み、このマトリックスは、l-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも2種類の環式モノマーの結晶性セグメント化コポリマーと、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む無機微粒子分散相とを含むこと;ならびに6)モノフィラメント糸は、ポリマーマトリックスとそのマトリックス内に含有される無機微粒子分散相とを含む複合材を含み、このマトリックスは、ポリエチレングリコールとl-ラクチド、ε-カプロラクトン、炭酸トリメチレン、グリコリド、p-ジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及びモルホリンジオンからなる群から選択される少なくとも1種類の環式モノマーとの結晶性セグメント化コポリマーと、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び吸収性リン酸塩ガラスからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む無機微粒子分散相とを含むこと;k)ステントは、少なくとも2日間、適用部位で開通性を維持し、そこに留まることができること;l)ステントは、2~4か月、適用部位で開通性を維持し、そこに留まることができること;ならびにm)少なくとも1つの位置保持端は、少なくとも4重量%の、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、及び次炭酸ビスマスからなる群から選択される少なくとも1種類の粉末放射線不透過剤を含有すること。
【0118】
以下は本開示のいくつかのさらなる実施形態である:
1)医療デバイスを少なくとも部分的に包む閉じ込め層を含む医療用インプラントであって、この医療デバイスはインプラントが宿主に移植された際に少なくとも部分的に生分解性であり、この閉じ込め層は非生分解性又は生分解性のいずれかであり、ここで、この閉じ込め層は、その医療デバイスがin vivoで分解すると医療デバイスの容器として働く、インプラント。
2)デバイスが宿主内で構造的支持を提供する、実施形態1のインプラント。
3)デバイスがステントである、実施形態1~2のインプラント。
4)ステントが尿管内ステントである、実施形態1~3のインプラント。
5)閉じ込め層がインプラント上のコーティングである、実施形態1~4のインプラント。
6)コーティングが親水性である、実施形態5のインプラント。
7)コーティングが生分解性であるが、コーティングが医療デバイスよりも緩慢に分解する、実施形態5~6のインプラント。
8)コーティングが20ミクロンより大きい厚さを有する、実施形態5~7のインプラント。
9)コーティングが40ミクロンより大きい厚さを有する、実施形態5~8のインプラント。
10)コーティングが60ミクロンより大きい厚さを有する、実施形態5~9のインプラント。
11)コーティングが80ミクロンより大きい厚さを有する、実施形態5~10のインプラント。
12)コーティングが100ミクロンより大きい厚さを有する、実施形態5~11のインプラント。
13)コーティングが120ミクロンより大きい厚さを有する、実施形態5~12のインプラント。
14)医療デバイスにより少なくとも部分的に包まれる閉じ込め層を含む医療用インプラントであって、ここで、閉じ込め層は医療デバイスの中空中心を少なくとも部分的に包み、この医療デバイスはインプラントが宿主に移植された際に少なくとも部分的に生分解性であり、この閉じ込め層は非生分解性又は生分解性のいずれかであり、ここで、この閉じ込め層は、その医療デバイスの生分解中に形成する分解産物と医療デバイスの中空空間の間に障壁を提供する、インプラント。
【0119】
本明細書で使用される技術用語は単に特定の実施形態を説明することを目的とし、限定を意図しないことが理解されるべきである。さらに、本明細書に具体的に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語は関連の分野で知られているようなその従来の意味を与えられることも理解されるべきである。
【0120】
本明細書中で「一実施形態」又は「ある実施形態」と言う場合及びそれらの変形は、その実施形態に関して記載される特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書中の様々な場所で「一実施形態では」又は「ある実施形態では」は、必ずしも全て同じ実施形態を参照するものではない。さらに、これらの特定の特徴、構造、又は特性は、1以上の実施形態においていずれの好適な様式で組み合わせてもよい。本明細書に開示される医療デバイス実施形態はいずれも、医療デバイスの一部として、薬物、例えば、治療薬又は予防薬を含み得る。
【0121】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容及び文脈がそうではないことを明示しない限り、複数の、すなわち、1以上の指示対象を含む。また、接続語「及び」及び「又は」は一般に、内容及び文脈が場合に応じて包含又は排除を明示しない限り、最も広義において、「及び/又は」を含んで使用されることに留意されたい。よって、選択肢(例えば「又は」)の使用は、それらの選択肢の一方、両方、又はいずれかの組合せのいずれかを意味するものと理解されるべきである。加えて、本明細書に列挙される「及び」と「又は」の合成は、本明細書「及び/又は」として列挙される場合、関連の項目又は概念の全てを含むある実施形態及び関連の項目又は概念の全てよりも少ないものを含む1以上の他の選択的実施形態を包含するものとする。
【0122】
文脈はそうではないことを必要としない限り、本明細書及び以下の特許請求の範囲において、「含む(comprise)」という語及びその同義語及び変形、例えば、「有する(have)」及び「含む(include)」ならびにその変形、例えば、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、オープンな包含の意味で、例えば、「限定されるものではないが含む」と解釈されるべきである。用語「から本質的になる」は、請求の範囲を、明示された材料若しくは工程、又は特許請求される発明の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0123】
本明細書内で使用されるいずれの見出しも、単に読者がその見直しを速やかに行うために利用され、本発明又は特許請求の範囲を何ら限定するものと解釈されるべきでない。よって、本明細書に提供される見出し及び開示の要約は単に便宜上のものであって、実施形態の範囲又は意味を説明するものではない。
【0124】
本明細書において、開示されている種々の実施形態の詳細な理解を提供するために特定の具体的詳細が示される。しかしながら、当業者は、それらの実施形態がこれらの具体的詳細の1以上を用いずに、又はその他の方法、部品、材料などを用いて実施され得ることを認識するであろう。
【0125】
以下に示される実施例及び製品は、本発明の医療デバイス及びそのようなデバイスを作製する方法を説明及び例示する。本発明の範囲は以下の実施例及び製品の範囲により何ら限定されないことが理解されるべきである。実際に、文脈がそうではないことを示さない限り、特定のポリマーが実施例で使用される場合、このポリマーは単に例であり、本発明に従って別のポリマーに置換されてもよい。また、分解時間及び特性が例示される場合には、これらの値は近似値であり、異なる出発材料を使用すると他の値が得られるであろうことが理解されるべきである。実施例で使用又は参照される出発材料及び種々の反応物は商業的供給者から入手可能であるか、又は市販の有機化合物から当業者に周知の方法を用いて作製される。よって、以下の例は、本発明の実施形態の例示であり、その限定として解釈されるべきではない。
【実施例0126】
実施例1
MG5-Bからのコイルの作製
オーバーヘッド機械撹拌装置、バキュームアダプタ、及び窒素流入口を備えた三つ口ガラス蓋付きの1リットルのステンレス鋼ケトルを組み立てる。このケトルを約0.5mmHgの圧力まで排気した後、窒素でパージする。このケトルに、220℃に加熱することによって予め乾燥させた9.15gのpaxTMC-1を装填する。paxTMC-1は、オクタン酸第一スズなどのスズ触媒の存在下、加熱及び撹拌しながら、炭酸トリメチレン(TMC)とトリメチロールプロパン(TMP)を15:1のTMC:TMPモル比で合わせることによって作製する。また、このケトルにグリコリド(313.8g、2.705mol)、ε-カプロラクトン(132.1g、1.159mol)及び放射線不透過剤も加える。一実施形態では、放射線不透過剤は硫酸バリウム微粒子(245g)、1~4ミクロンの直径を有する。この装置を油浴に沈め、その内容物を40℃で1時間真空下に置いた後、この系を窒素でパージする。油浴の温度を95℃に上げ、ケトルの内容物をよく混合する。均質な流体組成物が得られた後、オクタン酸第一スズの0.2Mトルエン溶液(2.576mL、5.152×10-4モルオクタン酸第一スズ)を加える。油浴の温度を重合反応が起こる180℃に上げ、撹拌をできる限り長く続ける。撹拌が可能でなければ(高粘度のため)、この反応生成物を180℃で7時間維持する。
【0127】
ケトルを室温まで放冷した後、ポリマーを凍結させるために冷浴に沈める。凍結ポリマーをケトルから取り出し、粉砕する。粉砕した材料を篩に掛けて所望の最大粒径を有する粉末を得る。篩に掛けた粉末を2リットルのナシ型ガラスフラスコに移し、ビュッヒロータベーパーに配置する。0.25mmHgの真空が得られた後に、フラスコを油浴に沈め、温度を40℃に上げる。40℃で2時間後、油浴の温度を80℃に上げ、80℃で1時間後、温度を110℃に上げる。温度を110℃で4時間維持する。
【0128】
放射線不透過剤の属性、粒径及び量は、インプラント分解プロフィールに所望の影響を与えるように選択することができる。一般に、組成物の可視化を可能とするために十分な量の放射線不透過剤を組成物に含めるべきである。組成物の分解速度に影響を与えるために、過剰な放射線不透過剤、すなわち、可視化に必要とされる量より多い超過の量の放射線不透過剤を組成物に含めてもよい。理論に縛られることを意図するものではないが、過剰な放射線不透過剤は、分解を促進する応力点を組成物内に作り出すと考えられる。例えば、インプラントを可視化するために少なくとも20重量パーセントの放射線不透過剤が存在しなければならない場合には、種々の実施形態において、本開示は、少なくとも5%、又は少なくとも10%(さらに2重量パーセント)、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%(さらに4重量パーセント)、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%(さらに6重量パーセント)、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%(さらに8重量パーセント)、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%(さらに10重量パーセント)、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%の過剰な放射線不透過剤を含有する組成物を提供する。
【0129】
放射線不透過剤の量の選択に加え、放射線不透過剤の粒径を選択することもできる。種々の粒径及び粒径分布の放射線不透過剤粒子が、例えば、Sigma-Aldrich、セントルイス MOから市販されている。硫酸バリウムなどの放射線不透過剤は、約1.0~約20ミクロンの公称粒径を有してよい。実施形態では、本開示の医療デバイスに使用される放射線不透過剤は、少なくとも1.0、又は2.0、又は3.0、又は4.0、又は5.0、又は6.0、又は7.0、又は8.0、又は9.0、又は10.0、又は11.0、又は12.0、又は13.0、又は14.0、又は15.0、又は16.0、又は18.0、又は19.0又は20.0の公称粒径を有し、各値はミクロンの単位である。所望により、最大粒径は、20.0、又は19.0、又は18.0、又は17.0、又は16.0、又は15.0、又は14.0、又は13.0、又は12.0、又は11.0、又は10.0、又は9.0、又は8.0、又は7.0、又は6.0、又は5.0、又は4.0、又は3.0、又は2.0、又は1.0で規定されてよく、この場合にも各値はミクロンの単位である。一般に、大きい粒子ほど得られる繊維内のより大きな応力濃度を付与するので、大きい粒子ほど医療デバイスに速い分解プロフィールを付与し、引張特性のより早期の低下及び最終的にはより早期の断片化をもたらす。また、放射線不透過剤粒子の重量パーセンテージが高いほどより速い分解プロフィールに寄与する。
【0130】
一般に、より低濃度の、より高密度の放射線不透過剤(radiopacifer)が使用され得る。硫酸バリウムは4.5g/cm3の密度を有し、従って、硫酸バリウムより高密度の放射線不透過剤の例である例えば、酸化タンタル、タングステン金属及び酸化ジルコニウムに比べて効果的な可視化を達成するためには、一般により多い硫酸バリウムを医療デバイスに負荷しなければならない。粒子形態のBi22(CO3)、すなわち、次炭酸ビスマス、BiOCl、すなわち、オキシ塩化ビスマス、及びBi23、すなわち、三酸化ビスマスは、本開示の医療デバイスに組み込むことができるその他の放射線不透過剤である。
【0131】
一実施形態では、放射線不透過剤は重合過程に存在するが、別の実施形態では、放射線不透過剤はプレフォームポリマーに添加される。
【0132】
実施例2
実施例1から得られたMG5-Bを用いた放射線不透過性モノフィラメントの溶融紡績及び特性ならびにそのコイルスキャフォールド(CS)への加工
4区画を備えた単軸押出機を用いてqポリマーを押し出し、モノフィラメントとする。例えば、実施例1から得られたポリマーを、0.6mmのダイを用いて押し出す。フィルターパック1インチ当たり325ラインを使用する。区画1は100℃で維持し、区画2は175℃で維持し、区画3は212℃で維持し、区画4/スピンパックは214℃で維持する。計量ポンプは8rpmで運転し、巻取りロールは40~60rpmに設定する。回収したモノフィラメントは0.58mm~0.61mmの直径を有し得る。この繊維を第1段階で55℃にて4.5倍に、第2段階で70℃にて0.5倍に引き伸ばして0.30mm~0.33mmの直径とする。自由収縮は50℃で約8.85%~10.43%である。この繊維を70℃で自由収縮の半分+2%に弛緩させる。得られた繊維は最大加重約13Nを持ち得、寸法安定性がある。
【0133】
次に、加工済みの放射線不透過性モノフィラメントをコイルスキャフォールドの内径を維持する0.55”径のテフロン(登録商標)コードの周囲にらせん状にコイルとする。このモノフィラメントを1インチ当たり33~35コイルでテフロンコードの周囲に巻き付ける。
【0134】
実施例3
三軸セグメント化グリコリドコポリマー(MG-9)の合成及び特性評価又はニットスキャフォールドの作製における使用
オーバーヘッド機械撹拌装置、バキュームアダプタ、及び窒素流入口を備えた三つ口ガラス蓋付きの1Lステンレス鋼ケトルを含む反応装置を組み立てた。0.5mmHgの真空を得た後に、装置を窒素でパージした。paxTMC-1(16.0g、実施例1に記載のとおり)、ε-カプロラクトン(38.6g、0.3382モル)、及びグリコリド(745.4g、6.4262モル)の初期装填物をケトルに加える。この装置を油浴に沈める。ケトル及び内容物を110℃に加熱し、窒素陽圧下で混合する。重合開始剤がモノマーに十分に溶解したことが確認されれば、オクタン酸第一スズの0.2Mトルエン溶液(0.966ml、1.933×10-4モル)を加える。温度を180℃に上げる。生じたポリマー混合物が粘稠過ぎて撹拌できなくなったところで撹拌を停止する。反応を180℃で5時間維持する。ポリマーを凍結させ、取り出し、粉砕する。粉砕した材料を篩に掛ける。篩に掛けたポリマーを2Lのナシ型ガラスフラスコに移し、ビュッヒロータベーパーに配置する。0.5mmHgの真空が得られた後に、フラスコを油浴に沈める。温度を40℃に上げる。40℃で2時間後、油浴の温度を80℃に上げる。80℃で1時間後、温度を110℃に上げる。温度を110℃で4時間維持する。
【0135】
実施例4
実施例3から得られたMG-9を用いたマルチフィラメント糸の溶融紡績及び特性ならびにそのニットスキャフォールド(KS)への加工
5区画を備えた単軸押出機を用いてポリマーを押し出し、マルチフィラメントとする。実施例3から得られたポリマーを、0.018”径の孔を有する20穴ダイを用いて押し出す。フィルターパック1インチ当たり400ラインを使用する。区画1は190℃で維持し、区画2は210℃で維持し、区画3は222℃で維持し、区画4/ポンプは228℃で維持し、区画5/スピンパックは228℃で維持する。0.584cc/rev Zenith計量ポンプは6.0rpmで運転し、デニール制御ロールを315メートル/分の線速度に設定する。次に、この繊維を320、465、480M/分で移動する3つの高速ゴデット上に配向させ、それぞれ60℃、80℃、及び26℃に加熱する。その後、回収したマルチフィラメントを100℃の温度で250M/分~280M/分の速度で再配向させる。得られる繊維は3.26のテナシティ及び80.4のデニールを持ち得る。次に、加工済みのマルチフィラメントを、40フィラメント線維を作製するために一度撚り、その後、実施例2から得られたコイル化スキャフォールド上にラム円形編み機を用いて連続様式で横編みする。12コースゲージニードルを備えた7/8”ニッティングシリンダを用いて、コイル化スキャフォールド上にニットスキャフォールドを形成する。
【0136】
実施例5
三軸セグメント化l-ラクチドコポリマー(SVG-12)の合成及び特性評価又は補強複合マトリックス(CM)としての使用
オーバーヘッド機械撹拌装置、バキュームアダプタ、及び窒素流入口を備えた4Lのステンレス鋼リアクタを含む反応装置を組み立てる。0.5mmHg未満の真空が得られた後に、装置を窒素でパージする。油を加熱し、ジャケット付きリアクタに循環させて温度を制御する。グリコリド(254.9g、2.1976モル)、炭酸トリメチレン(348.7g、3.4185モル)、予め乾燥させたトリエタノールアミン(3.0319g、2.0348×10-2モル)、オクタン酸第一スズ(354.5mg、8.752×10-4モル)、及びε-カプロラクトン(974.3g、8.5463モル)の初期装填物を2Lのフラスコに加え、高真空下、40℃で1.25時間乾燥させる。次に、フラスコの内容物を4Lのリアクタに加える。その後、この系を窒素でパージする。油の温度を175℃に上げ、内容物を6.5時間よく混合し、次いで、温度を下げる。混合したところで、グリコリド(226.6g、1.9534モル)及びl-ラクチド(1195.5g、8.3021モル)の最終装填物を加える。次に、油の温度を135℃に上げ、19時間維持する。
【0137】
生じたポリマーを取り出し、ポリマーが-60℃のイソプロピルアルコール(IPA)中に析出し、いずれのモノマーも溶解状態で留まり、すすぎ流すことができるように、ジクロロメタン(DCM)中に1グラム当たり4ミリリットルの濃度で溶解させる。次に、ポリマーを一定重量となるまで乾燥させる。
【0138】
実施例6
複合尿管ステント構築物の組み立て
ポリマーマトリックス溶液の作製――実施例5から得られたSVG-12、ポリエチレングリコール(MW=4600)及びアセトンを含有するポリマー溶液は、1つの64オンスのジャーに1600ミリリットルのアセトンを加え、その後、16.0グラムのPEG4600及び144.0グラムの精製SVG-12を加えることによって作製する。この溶液を封じ、溶解を助けるために軽い加熱を用いる。このジャーを完全な溶解が得られるまで自動回転装置に入れる。
【0139】
ニットコアの連続的含浸――0.75リットル浴のポリマー溶液を通してニットコア材料を連続的に移動させることを含む連続的マトリックス含浸法を用いて、乾燥ニットコアにSVG-12及びPEG4600のポリマーマトリックスを含浸させる。含浸装置の開始からニットコアをスプールから送り出し(unspooled)、すぐにポリマー溶液の槽に供給し、ここで、2つのインライン浸漬プーリーはスキャフォールド材料を槽の長さに対して浸漬した状態で保つ。含浸材料が槽を出ると、それは40℃に加熱された空気循環乾燥管に、次いで、50℃に加熱されたステンレス鋼部材に通され、次いで、含浸材料は最終の巻き取りスプールに巻き取られる。
【0140】
含浸ニット核の成形――最終的なステントの長さを制御するために分離距離を調整することができる0.5インチ径の2本の平行のステンレス鋼バーを備えたラックに含浸材料を巻き付ける。新たに含浸させたニットコアをこれらのラックに連続様式で巻き付ける。これらのラックを130℃で30分間アニーリングした後、これらのラックを層流フード内で室温まで放冷する。成形ラックの分離ロッドの内部の位置の適当な位置でスキャフォールド材料を切断することにより、各ラックから複数のステントを取り出す。テフロンコアをなお含んだこれらのステントは、各ステントの基部の、最終的に各ステントの近位ループとなるものの1センチメートル以内にUVJマーカーを付加することによって修飾される。次に、全てのステントの近位ループを、各近位ループをアセトン中、SVG-12及びPEG4600の10%(w/v;9.3%SVG-12、0.7%PEG4600)ポリマー溶液150ミリリットルに手で浸漬することによってさらなるコーティングを施す。ステントは、層流フード内で遠位ループによって吊り下げて乾燥させる。次に、テフロンコアの一端を位置が固定されたバイスグリッププライヤーに固定することにより各ステントからテフロンコアを除去する(テフロンコアの反対端は第2のセットのバイスグリッププライヤーを用いて引っ張られているため)。固定端において引っ張られているテフロンコアをきれいに切断した後、直径が小さくなったテフロンコアをステントから抜き、廃棄する。最後に、各ステントを適当な仕様にトリミングする。
【0141】
実施例7
複合尿管ステント構築物の組み立て
ポリマー溶液の作製。ポリマー溶液は、16.0グラムのポリエチレングリコール(PEG4600;MW=4600)、1600ミリリットルのアセトン、及び144.0グラムの精製SVG-12をジャー内で合わせることによって作製した。溶液を封じ、溶解を助けるために軽い加熱を用いる。このジャーを完全な溶解が得られるまで自動回転装置に入れる。
【0142】
ポリマー溶液の0.75リットル槽へのニットコア材料の連続的移動を含んだ連続含浸法を用い、実施例4から得られた乾燥ニットスキャフォールドに、上記のポリマー溶液を含浸させる。スキャフォールドをスプールから送り出し、コーティング溶液の槽に供給し、ここで、2つのインライン浸漬プーリーはスキャフォールド材料を槽の長さに対して浸漬した状態で保つ。含浸材料が槽を出ると、それは40℃に加熱された空気循環乾燥管に、次いで、50℃に加熱されたステンレス鋼部材に通され、次いで、含浸材料は最終の巻き取りスプールに巻き取られる。このプロセスをより厚いコーティングをスキャフォールド上に得るために繰り返し、より厚いコーティングは平滑な表面を有する。
【0143】
含浸されたニットスキャフォールドを、最終的なステントの長さを制御するために分離距離を調整することができる0.5インチ径の2本の平行のステンレス鋼バーを備えたラックに巻き付ける。新たに含浸させたニットスキャフォールドをこれらのラックに連続様式で巻き付ける。これらのラックを130℃で30分間アニーリングした後、これらのラックを層流フード内で室温まで放冷する。
【0144】
成形ラックの分離ロッドの内部の位置の適当な位置でスキャフォールド材料を切断することにより、各ラックから複数のステントを取り出す。テフロンコアをなお含有するこれらのステントは、各ステントの基部の、最終的に各ステントの近位ループとなるものの1センチメートル以内にUVJマーカーを付加することによって修飾される。
【0145】
ステントの近位ループには、制御された様式で多回サイクルを用い、ステントの近位端をコーティング溶液に機械的に浸漬するためのMTS Synergie試験装置を使用することで、付加的コーティングが施される。ステントの遠位端は、100mLのコーティング溶液を含有する100mLのメスシリンダーにステントを浸漬するようにプログラムされた、MTS試験装置の垂直取り付け具に取り付けられる。プログラム手順は、ステントをシリンダ中、20mLのマークまで降下させ、すぐにステントをシリンダの外に引き上げる。MTS装置は、ステントがコーティング溶液の上に吊り下げられている時、それが粘着しない状態となるまで約30~300秒、コーティングを乾燥させるに十分な時間停止し、その後、ステントを40mLのマークまで降下させること以外は浸漬手順が繰り返される。MTSプログラムは、ステントが60mLのマークまで、次いで80mLのマークまで降下される2回の最終浸漬サイクルを遂行する。これにより、最大の厚さのコーティング層が近位ループに配される厚さ勾配を有する外部コーティング層が得られる。これにより、近位ループが早期分解しないように、近位ループが残りのステントよりも多いコーティング材料で補強されることが保証される。
【0146】
ステントは、層流フード内で遠位ループによって吊り下げて乾燥させる。次に、テフロンコアの一端を位置が固定されたバイスグリッププライヤーに固定することにより各ステントからテフロン(商標)PTFEコアを除去する(テフロンの反対端は第2のセットのバイスグリッププライヤーを用いて引っ張られているため)。固定端において引っ張られているテフロンコアをきれいに切断した後、直径が小さくなったテフロンコアをステントから抜き、廃棄する。最後に、各ステントを適当な仕様にトリミングする。
【0147】
得られたステントは、急速分解性内部構造(ニットスキャフォールド)と、この内部構造よりも緩慢に分解する親水性の外部閉じ込め層を有する。この内部構造は、4日、又は1週間、又は2~4週間、又は2~7週間以内、又は90日といった長期、又は6か月といった長期で分解し、完全に排除されるが、より長く持続する閉じ込め層は、内部構造が完全に分解された後、閉じ込め層が、それが分解し排泄されるまでに少なくとも4週間存在するようになお存在する。結果として、閉じ込め層は、完全な分解及び排泄が起こるまで内部構造及びその分解産物を保持する働きをする。閉じ込め層のこの機能は、遮断などを引き起こし得る残存材料の除去を必要とする合併症をもたらす可能性のある急速分解性材料の分解産物の腎臓への侵入を防ぐ。これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、医療デバイス、例えば本明細書に開示される医療デバイスのいずれかと関連して使用され得る閉じ込め層の一例である。
【0148】
実施例8
管理された分解を提供するために医療デバイスと関連して使用され得る閉じ込め層
この実施例は、内部閉じ込め層、らせん構成の中間モノフィラメントコイル、モノフィラメントコイルの外部上の横編メッシュ、及び他の3成分の材料、特に、中間コイルと横編メッシュ成分の間の欠如及び空隙空間に浸透して充填もする外層として適用される外部親水性閉じ込め層を含む生吸収性尿管ステントを提供する。外部閉じ込め層は、モノフィラメントコイル及び横編メッシュ成分よりも緩慢に分解し、2~4週間以内で分解するコイル及びメッシュの分解産物を保持する働きをする閉じ込め層を生じる。
【0149】
多成分生吸収性尿管ステントを構築する第1段階は、およそ0.055インチの径を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のモノフィラメントコードに内部コーティング層を施すことを含む。内部コーティング層は、内部閉じ込め層として機能する。PTFEモノフィラメントコードは、実施例1に開示されるドローイング法に従ってコーティングされるが、PTFEモノフィラメントコードはニットコアに置き換えられ、アセトン中15%(重量/容量)ポリマーのポリマー溶液が使用され、モノフィラメントは、記載の手順を用いて2回コーティングされる。モノフィラメントは、PTFEの表面に、コーティングが閉じ込め層として機能できる十分な厚さのポリマーコーティングが施されることを保証するために6メートル毎秒(m/s)を超えない速度でポリマー溶液に供給される。これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、医療デバイス、例えば本明細書に開示される医療デバイスのいずれかと関連して使用され得る閉じ込め層の一例である。
【0150】
実施例9
分解を管理するために医療デバイスに関連して使用され得るキャップ
ステントにキャップを付加してもよく、ここで、キャップは閉じ込め層の一部又は全部を提供する。キャップはステントのいずれかの端部に位置し、キャップされたステントの端部を塞ぐようにステントの開放管腔に橋渡しをする。
【0151】
キャップは本明細書に例示されるようにステント上に配置されてよい。キャップは、ステントからテフロンモノフィラメントコードを除去した後に形成される。コードが除去された後、ステントの端部は分解性ポリマーの溶液に浸漬される。この溶液は、ステントが溶液から取り出された後に、少量の溶液がステントの端部の開放管腔に橋渡しをし、かつ、蒸発により溶媒が除去された際にステントの浸漬端を覆うポリマーフィルムが残るように十分粘稠である。このポリマーフィルムがキャップである。このプロセスは、このキャップに望まれる厚さとするために、必要に応じて数回繰り返してよい。
【0152】
別法として、キャップは分解性メッシュから作製されてもよく、このメッシュは、キャップが形成するようにステントの端部に取り付けられる。この実施形態では、キャップは有孔性であり、例えば、ステントが尿道ステントである場合に望ましい。しかしながら、キャップは、有孔性である必要はなく、又はキャップはそれが移植された後にのみ有孔性となってもよい。
【0153】
これらは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、医療デバイス、例えば本明細書に開示される医療デバイスのいずれかと関連して使用され得るキャップの例である。
【0154】
実施例10
コイル部品において予測可能な破壊点を作り出すためのコイル部品の縦スリットの形成
グリコリドコポリマー(MG5-B)は溶融押出しにより作製して安定化モノフィラメントとし、直径約0.3mmの繊維を作出するために配向され、これは、コイルの内径を維持するために0.055”径テフロンコードに対するコイル化プロセスを介してさらに加工される。コイル化後、なおテフロンコード上で、コイル部品を繊維軸に対して横方向にかつコイルの長さに沿って軸方向に深さおよそ0.02mmの縦スリットを付与するために固定ナイフエッジカッターに通す。縦スリットは、初期引張強度を少量、例えば約5%小さくする。引張強度は、コードからモノフィラメントを外した後にモノフィラメントのセグメントを引張強度テスターに入れることによって測定される。カッティングの結果として、グリコリドコポリマーモノフィラメント1インチ当たり33~35コイル及びスキャフォールドの長さに沿って横スリットを有するコイル化スリットスキャフォールドが得られる。in vivoにおいてインプラントは、スリット点に沿って破断し、まずそのスリットの場所で分解が起こる。
【0155】
スリットの深さはモノフィラメントの直径の観点から選択することができる。種々の実施形態では、スリットの深さは、モノフィラメントの直径の1%又は2%又は3%又は4%又は5%、又は6%、又は7%、又は8%、又は9%、又は10%、又は11%、又は12%、又は13%、又は14%、又は15%、又は16%、又は17%、又は18%、又は19%、又は20%、又は21%、又は22%、又は23%、又は24%、又は25%、又は26%、又は27%、又は28%、又は29%、又は30%、又は31%、又は32%、又は33%、又は34%、又は35%であり得る(これらのパーセンテージ値から選択される範囲を含む)。
【0156】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、医療デバイス、例えば本明細書に開示される医療デバイスのいずれかにおいて作出可能なスリットの例である。
【0157】
実施例11
予測可能な分解破壊点を提供するための縦欠陥を含む分解性尿管ステントの作製
マルチフィラメント繊維へと形成され、微細線維当たり3.26のテナシティ及び4.0のデニールを有するグリコプレンポリマー(93%グリコリド、5%カプロラクトン、及び3%炭酸トリメチレンから作製)を溶融押出し法によって作製する。ラム円形編み機を用い、実施例10から得られたコイル化スリットスキャフォールド上に連続様式でグリコプレンマルチフィラメント繊維のニットを形成する。12コースゲージニードルを備えた7/8”ニッティングシリンダを用いて、コイル化スリットスキャフォールド上にニットスキャフォールドを形成する。
【0158】
別の容器で、SVG-12、ポリエチレングリコール(Mw=4600)及びアセトンを含有するポリマー溶液を、1つの64-ozジャーに1600mLのアセトンを加えた後、16.0グラムのPEG4600及び144グラムのSVG-12を加えることにより作製する。この溶液を封じ、簡単に述べれば、溶解を助けるために軽く加熱する。このジャーを完全な溶解が得られるまで自動回転装置に入れる。ニットコア[全てこの槽で行う;テフロンコアであっても]の連続的含浸は、ポリマー溶液の0.75リットル槽を通してニットコアを連続的に移動させることにより行う。含浸装置(スプール;コーティング槽;及び回収スプールからなる)の開始からニットコアをスプールから送り出し、すぐにポリマー溶液の槽に供給し、ここで、2つのインライン浸漬プーリーはスキャフォールド材料を槽の長さに対して浸漬した状態で保つ。含浸材料が槽を出ると、それは40℃に加熱された空気循環乾燥管に、次いで、50℃に加熱されたステンレス鋼部材に通され、次いで、最終の巻き取りスプールに回収され、乾燥プロセスを完了させるために減圧下で保存する。
【0159】
ステントは、含浸ニットコアから、最終的なステントの長さを制御するために分離距離を調整することができる0.5インチ径の2本の平行のステンレス鋼バーを備えたラックに巻き付けることにより形成される。形成ラック上に置かれたところで、この構造を130℃で30分間アニーリングし、層流フード内で室温まで放冷する。ステントは、形成ラックから切断して分解性尿管ステントの最終ネット形状とし、テフロンの一端を位置が固定されたバイスグリッププライヤーに固定することによりテフロンコアを除去する(反対端は、直径を縮小してステント長からの除去を可能とするよう、テフロンコアを引っ張るために使用されるため)。本方法で作出される各ステントは適当な仕様に対して検査する。
【0160】
このコーティング及び成形技術によって、内部コイルの長さに沿って作出された縦スリットは残るが、含浸プロセスのために最初は保護される。これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、医療デバイス、例えば本明細書に開示される医療デバイスのいずれかに関連して使用され得るスリット形成及びコーティング技術の例である。
【0161】
実施例12
コイル部品の縦方向のスリット形成を伴って作製したステントのin vitro加水分解
実施例11から得られた含浸及び成形分解性尿管ステントは、主として、ポリマー骨格の主鎖エステルの加水分解から分解する。ステントは後段階の分解に到達すると、MG5-Bモノフィラメントコイル部品には、生成された断片の長さを規定する能力があるが、より長い断片長は尿管括約筋を部分的に又は完全に閉塞させ、一過性の失禁に至る高い可能性がある。実施例11から得られた含浸及び成形分解性尿管ステントのin vitro加水分解中、縦スリットはスリット部位で破断しやすくする欠陥を作り出す。人工尿中、37℃でのインキュベーション時、分解性ステントは、最初の約5~7日間(スリットが無い場合の約7~12日と比較)はバルク形態を維持しつつ、まず、ステントの全長に沿って強度を失う。人工尿の組成についてはASTM F1828-97(2006年再承認)作製法A1.2を参照されたい。
【0162】
その後、主としてMG5-Bモノフィラメントコイル内での分解は、引張強度を初期の強度のおよそ約20%未満に低下させ、機械的入力で破断可能な脆弱なモノフィラメントを作り出す。コイルは分解性尿管ステントから断片化する前に、まずスリットの場所で破断する。この断片は0.03mm~15mmの長さであり、これは次にステントの移動とともにより小さなセグメント長に容易に破断する。実施例11に記載されるような分解性尿管ステントは、約30日以内の留置で加水分解して、尿生殖路からの移動に好適なセグメントとなる。
【0163】
実施例13
予測可能なコイル破壊点を提供するための欠陥を作り出すための別の機構
生分解性医療用インプラントの管理された分解を作り出す欠陥は、いくつかの方法で付与することができる。従前に例示したように、コイル化形態のモノフィラメントは、特定の深さのスリットを提供するためにカットすることができる。カットの深さは、繊維引張強度に所望の影響を与えるように選択することができ、カットの深さの増大は引張強度の損失の増大と正の相関がある。カットの深さが繊維直径の30%を超えると、引張強度は初期強度からの50%以上の損失となり得、コイルの機械的性能は尿管開通性を維持するために必要とされるものを下回るようになる。よって、一実施形態では、カットの深さはコイル化モノフィラメントの直径の30%未満である。カットの深さの増大はステントのコイル部分のより速い分解を提供するが、これはステントの機能性に必要とされる強度保持時間の提供とのバランスをとらなければならない。
【0164】
カットは均一である必要はない。各個のコイルが1つのカットを有する連続的様式ではなく、例えば、コイルの軸に沿って中断された様式で少なくとも0.03mmの浅いカットが形成されてもよい。これは分解プロセス中にステントのより大きな断片を作り出す働きをし得るが、10mmより大きいステント断片は閉塞の多能性のために望ましいものではないかもしれない。
【0165】
ナイフエッジカッターでコイルにカットを入れる代わりに、医療デバイスのコイル部分を破壊するための別の技術を使用してもよい。例えば、レーザーを用いて、大きな熱影響区画を作り出すことなくステントからコイル直径の3~30%を切断することによりスリットを作出してもよい。
【0166】
レーザーはまた、又はその代わりに、ポリマー結晶構造の崩壊、コイルポリマー内の応力の付与、及びポリマー鎖長の分解(全てより急速な分解を惹起するため)を介した応力の1以上の領域を作出する目的で点エネルギー源を提供するために用いてもよい。加熱とレーザーアブレーションの組合せもまた組合せ降下のために使用可能である。
【0167】
これらは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、医療デバイス、例えば本明細書に開示される医療デバイスに欠陥を作り出す例である。
【0168】
実施例14
ステント含浸コーティングの選択的除去による分解部位の作出
含浸及び成形分解性尿管ステントは、ステントの長さに沿った含浸コーティングの選択的除去により小さい区画への分解を促進するように修飾してもよい。含浸及び形成ステントは、シャフトの長さに沿って、すなわち、ステントの中央区画に沿って、一定の距離を開けた、例えば1cm離したコーティングの周囲バンドを除去することによって加工してよい。これは、シャフトからステントの全周にわたって所望の幅、例えば、およそ1mm幅の狭いバンドで、含浸コーティングを溶解させるためのアセトンなどの好適な溶媒を適用することによって達成することができる。このプロセスは、ステントのニット及びコイル部品の処理区画を露出する。得られたステントは、例えばMG5-Bから形成される連続コイル、コイルを収容する連続ニット部品、及び区画においてステントの長さに沿った、例えば1cm長、次いで含浸したコーティングの次の区画の前に例えば1mm離した含浸コーティングを含む。
【0169】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能な医療デバイスにおいて欠陥を作出する方法を例示する。
【0170】
実施例15
選択的に除去される含浸コーティングの区画を有する分解性尿管ステントのin vitro加水分解
ステントの含浸コーティングは本質的に、下にあるコイル部品ならびにニット部品の加水分解速度を制御するための不動態化層として働く。実施例14で作出されたステントの加水分解中、除去されるコーティングを有する区画は分解からあまり保護されない。実施例14から得られたステントのin vitro加水分解は、37℃で人工尿を用いて行うことができる。選択的に除去される含浸コーティングを有するステントの区画は、コーティングを有するものよりもおよそ20%急速に強度を失い、それらの部位で破断の発生を促し、それにより、閉塞無く尿管及び膀胱からのより容易なクリアランスを可能とするためにおよそ1cmの分解長を生じるものと思われる。
【0171】
実施例16
電離放射線の適用による好ましい分解ベクトルの作出方法
電離放射線の適用は、合成生体吸収性ポリエステルの分子量を小さくするために使用し得る。ステント内に好ましい分解ベクトル又は勾配を生成する試みにおいて、β線を一方向から、ステントの長さに沿って、ステントの膀胱カール側の総暴露を約10~50kGとし、ステントの腎臓カール側において約50%減の照射線量に移行して適用することができる。
【0172】
この線量ベクトルを生成するために、実施例6に記載されるようなステントを金属箔ポーチに入れ、減圧下室温で乾燥させて残留水分を最小とする。次に、このパッケージを窒素雰囲気で密封して、光及び水分からの保護を提供する。ステントを含むこの密閉パッケージに、膀胱カール端を処理のために単層でまっすぐに封入する。
【0173】
高エネルギーのβ線を含むプロセスである電子線照射をこのパッケージステントに施す。この技術では、加速化された電子を生成するために陰極源を使用し、平行ビームに成形する。このプロセスは、浸透の深度が制限される放射線を生成する。この技術を膀胱カールが放射線源に最も近いように配向されているステント含有ボックスに適用することにより、膀胱カールは高用量の放射線を受容し、パッケージングの長さに沿って有効適用線量が弱まり、最終的には、ステントの腎臓カール端は膀胱カール端の放射線エネルギーのおよそ60%を得る。
【0174】
段階的放射線線量を有するステントを作出することにより、分解プロフィールは、ステントが優先的に膀胱カールで始まって腎臓カールへ徐々に向かうように破断し、それにより、小型の分解産物を促進し、これがステント誘発性の失禁のリスクを最小限とするように調整される。
【0175】
よって、本開示は、デバイス自体がデバイスに沿って不均一な分子量(Mw又はMn)を有するポリマーを含むように、デバイスに沿って不均一な様式で電子線照射が適用される医療デバイスを作製するための方法を提供する。本開示はまた、デバイスの寸法に沿って徐々に不均一なポリマー分子量(Mw又はMn)の変化があるデバイスを提供する。
【0176】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて欠陥を作出する方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0177】
実施例17
コイルパターン及びコイル密度の調整により好ましい分解ベクトルを作出する方法
分解中に形状を保持するための主要な機構は、ステント内のMG5-Bコイルの存在である。優先的分解経路を作出するために、一実施形態では、ステントコイルをコイル製造中にステントシャフトの長さに沿って調整する。この結果を達成するために、テフロンモノフィラメントは、製造中のステントの内部管腔を作出及び維持するためのコアとして働く。MG5-B又は他のモノフィラメント繊維は、ステントのコイル部品を作出するためにテフロンコアに巻き付けられる。コイル作出中、最終的に膀胱カール及び腎臓カールとなるコイルの区画は、1インチ当たり約33~35コイルのコイル密度で形成される。ステントの中央区画を形成するステントのシャフト領域では、コイルは、腎臓カール遷移部での1インチ当たり約33から35コイルから、膀胱カール遷移部での1インチ当たり約15から20コイルへ進行する調整されたコイル密度で作出される。
【0178】
これらのコイル密度は、シャフトの開始部、端部、及びシャフトに沿って変動してよい。例えば、ステントのシャフト領域は、シャフトの1つにおいて(例えば、腎臓カール遷移部付近)において例えば、30、又は31、又は32、又は33、又は35コイル/インチのコイル密度を有してよい。コイル密度は、シャフトの長さに沿って徐々に低下してよい。例えば、膀胱コイル遷移部において、コイル密度は例えば、12、又は13、又は14、又は15、又は16、又は17、又は18、又は19、又は20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25コイル/インチでしかなくてもよい。
【0179】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、1インチ当たり15~20コイルを有するステントシャフトの区画は、腎臓に最も近い遷移部よりも、数日、例えば、1日、又は2日、又は3日又は4日又は5日早いステント破断を補助するレベルにまで強度を落とし、膀胱から腎臓への分解ベクトルを提供する。ステントシャフトは段階的に破断し始めるので、小区画はステントシャフトから分離され、「ボトムアップ」分解経路を提供し、ステント誘発性の失禁のリスクを最小とする。
【0180】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて分解ベクトルを作出する方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0181】
実施例18
ステント部品の調整により好ましい分解ベクトルを作出する別法
さらなる実施形態では、ステントシャフトに沿って好ましい分解ベクトルを作出するために別の技術を用いてもよい。
【0182】
含浸コーティングを、スプレーコーティング技術により、コイル、例えば、MG5-Bベースのコイルの、テフロンコア上に施してよく、ここで、付着される厚さはシャフトの長さに沿って変動する。このアプローチに従い、含浸コーティング厚みは、両カールならびに腎臓カール遷移部上のMG5-B+グリコプレン+SVG12/PEGの総重量の8重量%のレベルで施され、一方、膀胱カール遷移部では、コーティングは4重量%のレベルで、膀胱及び腎臓カール間の線形コーティング勾配で施される。このアプローチにより、ステントの完全性はシャフトの膀胱端で最初に失われる。
【0183】
他の実施形態では、含浸コーティング厚みは、両カールならびに腎臓カール遷移部上のMG5-B+グリコプレン+SVG12/PEGの総重量の5重量%、又は6重量%、又は7重量%、又は8重量%、又は9重量%、又は10重量%、又は11重量%、又は12重量%のレベルで施され、一方、膀胱カール遷移部では、コーティングはより低レベルで、膀胱及び腎臓カール間の線形コーティング勾配で施される。例えば、含浸コーティング厚みが最大12重量%である場合には、コーティング厚みは、11重量%、次に10重量%、次に9重量%、次に8重量%などの所望の厚さまで、徐々に低下されてよく、このようにコーティング厚み勾配が作出される。
【0184】
これらの例は、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて分解ベクトルを作出する方法を例示し、これらのアプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0185】
実施例19
ステント部品の調整により好ましい分解ベクトルを作出する別法
先に記載したようなコイル、ニット、及びコーティング構築物を有するステントの好ましい分解ベクトルを作出する別法は、デバイスの表面を血漿で処理することである。血漿処理は、デバイスの表面にヒドロキシル基を付加し、これはデバイスが宿主に移植された際により多くの水を動員し、それにより、表面の分解を促進する。血漿処理は、一部の表面が他の表面よりも多くの血漿処理を受け、従って、より多くのヒドロキシル基を有するように選択することができる。このように、ヒドロキシル基の勾配は、ステントシャフトに沿って作出され、膀胱カール遷移部において、最大レベルの暴露であり、局部的親水性を高め、ポリマーを局部的に分解/崩壊し、それにより、膀胱カールに最も近いところで最初の強度低下が起こることを促し、ステントシャフトに沿って腎臓カールへと進行する。
【0186】
早期分解を誘導するためのこの化学処理は、鎖の切断及び親水性を誘導するための種々のレベルでの酸処理を含め、別の手段によっても同様に施すことができる。加えて、スプレーコーティング組成は、PEG4,600とSVG12の比を変化させることにより、膀胱カール遷移部ではより高濃度のPEG4,600及び腎臓カール遷移部ではより低い濃度で用いて、ステントの長さに沿って調整することができる。
【0187】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて分解ベクトルを作出する方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。よって、本開示は、ステントを形成する方法、コイル、ニット、及びコーティングを含む部品からステントを構築すること、及び次いでそのステントに、それが宿主に移植される場合にステントの早期分解を誘導する化学処理を施すことを含む方法を提供する。
【0188】
実施例20
層状コアからシースへの分解ベクトルを作出するための設計よび製造
放射線不透過性、グリコリドベースのモノフィラメント、グリコリドベースのマルチフィラメントを有するオーバーニットから製造し、次いで、分解性ポリマーフィルムでシースを形成した最内コイルを有する分解性尿管ステント、ここで、モノフィラメントコイルは最速の分解プロフィールを示し、すぐそれに次いで、オーバーニットマルチフィラメント(multilament)、最後にフィルムシースは最長の分解寿命を示す。
【0189】
0.3mm直径のMG5-Bモノフィラメントコイルを、0.055”の直径を有するテフロンコアに1インチ当たり33~35コイルで巻き付ける。ラム円形横編み機を用いて従前に記載したコイル化及びスリットスキャフォールド上に連続様式でグリコプレンマルチフィラメントのニットを形成する。12コースゲージニードルを備えた7/8” ニッティングシリンダを用いて、コイル化スキャフォールド上にニットスキャフォールドを形成する。およそ165℃に加熱したチュービングダイとともに3/4”シングルバレルカスタム溶融押出機を用いて、SVG-12及びポリエチレングリコールブレンドを薄いシースとして押し出す。コイル化及びニットテフロンアセンブリをチュービングダイヘッドに通し、管状シースの直接適用を可能とする。
【0190】
ステントは、含浸ニットコアから、最終的なステントの長さを制御するために分離距離を調整することができる0.5インチ径の2本の平行のステンレス鋼バーを備えたラックに巻き付けることにより形成される。新たに含浸させたニットコアをこれらのラックに巻き付けることにより形成される。形成ラック上に置かれたところで、この構造を130℃で30分間アニーリングし、層流フード内で室温まで放冷する。ステントは、形成ラックから切断して分解性尿管ステントの最終ネット形状とし、テフロンの一端を位置が固定されたバイスグリップに固定することによりテフロンコアを除去する(反対端は、直径を縮小してステント長からの除去を可能とするよう、テフロンコアを引っ張るために使用されるため)。このようにして作出される各ステントは適当な仕様に対して検査する。この様式では、分解性尿管ステントは、SVG-12及びPEGシースが、ステント外径を維持するがMG5-Bコイル又はグリコプレンニットを個々にコートしない明瞭な層として残るように作製することができる。
【0191】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、MG5-Bコイルは、約7~14日で強度を失い、その後、それは断片化し、残留しているグリコプレン繊維及び外部シースから容易に移動する。コイル、及びその後はニット、断片として、それらは残存するステントから分離して、膀胱に沈積することがあり、人工排尿による排泄の前にさらに分解してより小さな断片となる。同様に、SVG-12/PEGシースも、人工排尿による排泄の前に膀胱に集まり、断片化し得る。
【0192】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、医療デバイスの特定の部品において分解ベクトルを作出する方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0193】
実施例21
コイル分離の速度を制御するための複数コイルの包含
ポリジオキサノンポリマーは、3/4”単軸押出機を用い、モノフィラメントとして溶融押出し、次いで、配向及び熱処理を行って、0.3mm直径の熱的に安定な強いモノフィラメントを作出する。MG5-B安定化モノフィラメント繊維は、ラム円形編み機を用い、0.055”直径のモノフィラメントテフロンコア上に連続様式でコイル化する。15cmの別の区画で、ポリジオキサノンモノフィラメントは、第2のコイル部品を付与するために、MG5-Bモノフィラメントと共コイル化する。コイルの両区画(ポリジオキサノンモノフィラメントを含む及び含まない)で、ネットコイル密度は1インチ当たり33~35コイルで一定を維持する。得られたコイルをおおよそシャフトの中点から膀胱カールまで、MG5-B単独コイルを有するステントを形成するために、実施例6に記載されるような仕上がり分解性尿管ステントとして加工する。シャフト中点と腎臓カールの先端の間のステントの部分は、MG5-Bとポリジオキサノンモノフィラメントの両方のコイルを含む。
【0194】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、シャフトの中点より下のステントの区画がまず、ステント本体から破断し、分離する。ステントの腎臓半分内のMG5-Bコイルは、第2のコイル部品の延長された強度保持のためにステント内に保持される。14日後にMG5-Bが有意に分解し断片化されると、ポリジオキサノンコイルは断片化し始め、微粒子MG5-B、残存コーティング及びニット部品を放出し、やがて残存ポリジオキサノンコイルの膀胱への移行を可能とする。これらの断片を、人工排尿により排出されるまで膀胱内でさらに分解される。
【0195】
よって、本開示は、それぞれユニークな分解プロフィールを有する(すなわち、これら2種類のポリマーは互いに異なる分解プロフィールを有する)2種類の異なるポリマーを含む医療デバイスを提供し、ここで、これら2種類のポリマーは、それぞれ医療デバイスの同じ部品を作製するために使用される。この例では、その同じ部品はステントのコイルである。よって、ステントのコイル部品は2つのコイルから製造され、ここで、これらの2つのコイルは、異なる分解プロフィールを有する異なるポリマーを含む。
【0196】
実施例22
不連続分解粒子を生成するための製造別法:
モノフィラメント直径の調整
分解性尿管ステントのコイル部品は一般に、ステントの構造的支持ならびに移植された際に管腔開通性を維持するための主要な強度機構を提供するための主要な特徴である。モノフィラメントの不連続粒子への分解を促進するために、コイル材料、例えば、MG5-Bを連続モノフィラメントとして溶融押出し、パルス様式で、2×及び5.5×ドロー比で、得られる繊維が山で直径0.3mm、谷で0.2mmを示すように5mmの周期で配向させる。これらの直径値は単に例である:他の同一でない直径値も、パルス様式の押出を用いて作出できる。このモノフィラメントを、次に、0.055”直径を有するテフロンコア上に1インチ当たり33~35コイルのコイル密度で巻き付けることにより加工する。このコイルを、分解性尿管ステントを形成するために実施例6に記載されるようにさらに加工する。
【0197】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、様々な直径を有するMG5-Bモノフィラメントはモノフィラメントの最も小さい直径の区画で優先的に分解し、およそ5mm長のMG5-B粒子を生じる。
【0198】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて不均一性を作り出す方法を例示し、本アプローチは微細線維を含む本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む微細線維を有する任意の医療デバイスに適用可能である。
【0199】
実施例23
不連続分解粒子を生成するための製造別法:
エンボスモノフィラメント
MG5-Bモノフィラメントを、均一な直径となるように溶融押出し、配向させる。第2のプロセスでは、モノフィラメントを、繊維の長さに沿って応力濃度及び物理的欠陥を作製するために2~10mm刻みで凹パターンを備えたロータリーエンボス加工機に通す。エンボス加工したモノフィラメントを次に、0.055”直径を有するテフロンコア上に、1インチ当たり33~35コイルのコイル密度で巻き付け、分解性尿管ステントを形成するために実施例6に記載したようにさらに加工する。
【0200】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、エンボス加工したモノフィラメントは、エンボス加工の凹部の場所で優先的に分解し、およそ5mm長のMG5-B粒子を生じる。
【0201】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて欠陥を作り出す方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0202】
実施例24
不連続分解粒子を生成するための製造別法:
熱処理
MG5-Bモノフィラメントを、均一な直径となるように溶融押出し、配向させる。第2のプロセスでは、モノフィラメントを、繊維軸に沿って2mmセグメントで部分的に熱処理し、MG5-Bモノフィラメントの結晶配向を低下させる。部分的に熱処理したモノフィラメントを、次に、0.055”直径を有するテフロンコア上に、1インチ当たり33~35コイルのコイル密度で巻き付け、分解性尿管ステントを形成するために実施例6に記載したようにさらに加工する。
【0203】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、部分的に熱処理したモノフィラメントは、熱処理の場所で優先的に分解し、およそ2mm長のMG5-B粒子を生じる。
【0204】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて欠陥を作り出す方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0205】
実施例25
不連続分解粒子を生成するための製造別法:
環状支持
MG5-Bポリマーを、内部管腔直径0.050”及び壁厚0.3mmを有する開環構造(クリップ)として射出成形する。コイルを、このクリップの「上面」及び「下面」が積層の改善、下流加工中の取り扱い及びステント挿入中の座屈抵抗の補助のために平坦な特徴を有するようにさらに設計する。これらのクリップを、1インチ当たり30~35クリップの空間配置で、0.055”直径を有するテフロンコア上に配置し、摩擦力によってその場に留まる。MG5-Bクリップを含むテフロンコアを、分解性尿管ステントを形成するために実施例6に記載したようにさらに加工する。
【0206】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、射出成形クリップは、ニット層及びコーティング層における分解のために分離し、0.3mm未満の厚さの不連続粒子を生じる。
【0207】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて欠陥を作り出す方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0208】
実施例26
不連続分解粒子を生成するための製造別法:
海の島
MG5-B及び85:15 PLGAを、MG5-Bの「海」内に「島」を含む、微細線維当たり5デニールで85:15 PLGAの1~10微細線維を用い、海の島型モノフィラメント構成として同時に押し出す。このモノフィラメントを、引張強度を増すために配向させ、熱安定性を最適化するために熱安定化を行う。この減弱モノフィラメントを、0.055”直径を有するテフロンコアに、1インチ当たり33~35コイルの空間配置で巻き付ける。コイル化テフロンコアを、分解性尿管ステントを形成するために実施例6に記載したようにさらに加工する。
【0209】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、コイルのMG5-B成分は、それが0.5mmより小さい断片になるようにMG5-B成分が分解されるまでステントの初期コイル構造を保持する助けをする85:15 PLGA「島」の前に強度を失う。コイルのMG5-B成分がひと度「島」から分離されると、微細線維は一般に集合して小さく、稠密度が緩んだ構造となり、排尿とともに膀胱から容易な排泄が可能である。
【0210】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて欠陥を作り出す方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0211】
実施例27
不連続分解粒子を生成するための製造別法:
モノフィラメント形状
MG5-Bポリマーは、単軸3/4”押出機を用い、中心ハブ由来の複数のフィンを有するマルチローブダイで溶融押出し、およそ0.07mm2の断面積を有するプロフィールモノフィラメントを作出する。配向及び熱処理後、モノフィラメントを0.055”テフロンコアに、1インチ当たり33~35コイルの密度でコイル化し、ステントコイルを形成する。
【0212】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて非対称部品を作り出す方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0213】
実施例28
別のモノフィラメント形状
分解形態学を制御するために、MG5-Bポリマーは様々な非円形横断面形状に溶融押出してよい。例えば、ポリマーは、分解副産物のコンプライアンスを増すために、分解を誘導して主として2つの分離した縦方向の長さとするために、狭い中心区画を有する二裂モノフィラメントの形態に溶融押出してよい。あるいは、ポリマーは、コイル部品のより小さな粒子への分解を促進しつつ、曲げ剛性を維持するため及びステント力学を維持するために、扁平モノフィラメント又は管の形態に溶融押出してもよい。
【0214】
これは、デバイスが宿主に移植される場合に管理された分解を提供するための、特定の医療デバイスにおいて非対称部品を作り出す方法を例示し、本アプローチは本明細書に開示される医療デバイスのいずれかを含む任意の医療デバイスに適用可能である。
【0215】
実施例29
分解副産物の酸度を中和するための緩衝剤の包含
分解性尿管ステントを、修飾したコーティング溶液を用い、実施例6に記載されるように作製する。コーティング溶液は、アセトンに溶解及び分散させたSVG-12、ポリエチレングリコール(Mw=4,600)、及び微粉リン酸水素ナトリウム(例えば、5重量%)を用いて作製する。得られた分解性尿管ステント含浸コーティングは、およそ0.5~3重量%のリン酸水素ナトリウムを含有する。移植後、リン酸水素ナトリウムはコーティングから放出され、酸性分解副産物の影響に対して尿を緩衝する助けをして6.5~8.0の典型的な尿内pHレベルを維持する。
【0216】
実施例30
外来物により誘導される刺激作用を中和する鎮痙薬の包含
分解性尿管ステントを、修飾したコーティング溶液を用い、実施例6に記載されるように作製する。コーティング溶液は、アセトンに溶解及び分散させたSVG-12、ポリエチレングリコール(Mw=4,600)、及びアトロピンなどの鎮痙薬を用いて作製する。得られた分解性尿管ステント含浸コーティングは、少なくとも0.5mgのアトロピンを含有する。移植後、アトロピンは含浸コーティングから放出され、抗コリン作動性作用によって、外来物本体又はそれに由来する分解産物の存在によって引き起こされ得る尿管及び尿道内の痙攣を制御する働きをする。
【0217】
実施例31
留置安定性を改善するためのステント表面特徴
分解性尿管ステントを、コイル部品として0.3mm直径を有する反矢尻モノフィラメント繊維を用い、実施例6に記載されるように作製する。得られたステントは、ステント移動のリスクを軽減するために留置後に浸透する働きをする反矢尻表面特徴を示す。所望により、ステントは、ステント表面の反矢尻の存在により留置場所の安定性が維持されるので、膀胱カール無しで作製される。所望により、膀胱カールは、ステントが腎臓に上行移動しないように張り出し区画に置き換えてもよい。
【0218】
実施例32
分解性尿管ステントを形成するためのさらなる製造アプローチ
留置安定性のための表面特徴を含め、持続的に様々な分解経路を作り出すために、さらなる製造アプローチが使用される。Stratasys J750ポリジェットプリンタは、記載されるように最終的なステント構造の部材を提供するため、3種類の異なる材料を付着させるために利用される。
【0219】
成分1は、無機放射線不透過剤を負荷した急速分解性グリコリドベースの光硬化性樹脂であり、半径方向剛性要素として使用され、コイルとしてのステントの本体内に印刷される。
【0220】
成分2は、留置及び潜在的賦活化のために補強部材として働くように、ステントのシャフト全体に軸方向に含まれる、急速分解性ポリ(フマル酸プロピレン)光硬化性樹脂である。
【0221】
成分3は、フレキシブルな炭酸トリメチレンベースの光硬化性樹脂であり、ステントのシースを形成するため、成分1及び2と結合させるため、またネットステント形状を維持するために組織界面被覆として含まれる。
【0222】
成分1は、コイル構造の配向及び形状が平坦な内部管腔、ならびに留置安定性の改善のために尿管壁とステント表面の間の摩擦を大きくするためのテクスチャーとされた外面を提供するように、ステント内に含まれる。
【0223】
ステント内の成分3の厚さの調整により、より多い成分3を被覆したものよりも1~3日早く破断する欠陥を作り出すための特定の場所でより早い分解を提供することが可能である。加えて、成分3は、所望により有孔性(不連続)フィルム障壁を作り出すように設計される。
【0224】
成分2は、ステントの連続性を維持するために含まれ、特定の部位でステント断片の破断及び分離を可能とするように中断の様式で軸成分として含まれる。
【0225】
膀胱カール及び腎臓カールの両方を含む、ネットステント形状は、付加的硬化又は熱処理の必要なく、単一のプロセスで生成される。ステントは、乾燥、パッケージング及び滅菌前に、残留する光開始剤及び未反応試薬を除去するために、37℃で1時間、イソプロパノール浴中で洗浄する。
【0226】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、断片化は、成分3の少ない領域に優先的に起こる。ステントの接続性は成分2により維持されるが、コイルが破断する場合、ステントの一貫性は成分2の中断でコイル破断が起こるまでステント構造内で維持される。この破断はステントの小区画を膀胱へ逃がすことを可能とし、そこでそれは排尿とともに排泄される。
【0227】
実施例33
コイル部品弾性率
USDポリマーは、ポリジオキサノン及びPEGマクロモノマー(Mw=10,000)を用いた開環重合により作製され、100~120℃の融点を有する半結晶性ポリマーが形成する。USDポリマーを単離し、粉砕し、及び篩に掛けて1~4mmの顆粒サイズを得、残留するモノマーを除去するためにデボリタライズ(devolitalized)する。
【0228】
USDポリマーは、3/4”単軸押出機を用いてモノフィラメントとして溶融押出する。モノフィラメントを2×~5.5×で配向させ、熱安定性を高めるために80℃でアニーリングする。繊維引張試験により、約500~800MPaの引張弾性率が確認され、これはMG5-Bモノフィラメントの弾性率のおよそ2倍である。USDモノフィラメントは、0.055”のテフロンコアに、30~40コイル/インチのコイル密度、又は1インチ当たり33~35コイルのコイル密度でコイル化する。コイル化モノフィラメントは、実施例6の記載と同様にして分解性尿管ステントとして加工される。
【0229】
人工尿中、37℃でのin vitro分解中、USDモノフィラメントコイルのポリエーテル成分は、約10~21日の間にコイルの分解及び断片化をもたらし、残存するステント断片が膀胱へ移動すること可能とする。MG5-Bモノフィラメントに比べて、USDモノフィラメントの弾性率が高いために、コイル断片はコイル化形状を保持する傾向があり、他のステント部品が崩壊すること及び稠密塊となることを防ぎ、これは失禁及び/又は尿道内の遮断のリスクを軽減する助けとなり得る。
【0230】
実施例34
本質的に放射線不透過性のポリマー
コーティングポリマーRS-1は、開始剤としての4%3-ヨード-1-プロパノールとともに33%ε-カプロラクトン、32%l-ラクチド、17%グリコリド、14%炭酸トリメチレンを用いて合成される。オクタン酸第一スズを触媒として使用する。ポリマーを単離し、ジクロロメタンに溶解させ、冷イソプロパノール中に沈澱させて不純物を除去し、その後、分析及び保存の前に乾燥させる。
【0231】
分解性尿管ステントは、放射線不透過性添加剤を用いずに、実施例1に記載されるようにMG5-Bを用いてまずコイル化構築物を作出することにより生産する。グリコプレンマルチフィラメント繊維は、コイル部品に横編みする。RS-1をアセトンに溶解し、コイル/ニット部品を連続浸漬コーティングによってコーティングし、コーティングスキャフォールドを作製する。コーティングスキャフォールドは、実施例6に記載されるようにステントネット形状として形成する。
【0232】
RS-1から作製されたコーティングは、ポリマー内のヨウ素含量の結果として、本質的に放射線不透過性であり、移植後にX線によって可視化できるステントが作出される。放射線不透過剤として固体無機粒子を含有する上記の例に記載された他の開示のステント構造とは異なり、本実施例のステントは固体無機微粒子を含有しない。ステントがin vivoで分解すると、無機微粒子の不在は、高硬度の微粒子から生じる炎症性応答を最小とする。
【0233】
本明細書に記載のものと類似又は同等のいずれの方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用することができるが、本明細書は限定された数の例示的方法及び材料が記載される。一般に、特に断りのない限り、本発明及び/又はその部品を製造するための材料は生分解性ポリマーなどの適当な材料から選択されてもよい。
【0234】
本明細書で値の範囲が示される場合、文脈がそうではないことを明示しない限り、下限値の単位の10分の1までの各介在値、その範囲の上限と下限との間、及び記載される他のいずれか、又はその記載の範囲の介在値が本発明内に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は独立に含まれ得るものであり、記載の範囲のいずれの特に除外される限界を条件として、より小さい範囲もまた本発明内に包含される。記載の範囲が限界の一方又は両方を含む場合には、含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0235】
例えば、本明細書に示される濃度範囲、パーセンテージ範囲、比の範囲、又は整数範囲はいずれも、特に断りのない限り列挙される範囲内の整数の値、適当であれば、その分数(整数の10分の1及び100分の1)を含むものと理解されるべきである。また、ポリマーサブユニット、サイズ又は厚さなどの物理的特徴に関して本明細書に列挙されるいずれの数値範囲も特に断りのない限り列挙される範囲の範囲内のいずれの整数も含むものと理解されるべきである。本明細書で使用する場合、用語「約」は、特に断りのない限り、示される範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0236】
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許は、今回記載される発明に関して使用され得る刊行物に記載の例えば材料及び方法を記載及び開示する目的で、それらの全内容が参照により本明細書に援用される。上記及び本明細書中に記載される刊行物は本願の出願日以前のそれらの開示を単に示すものである。本明細書において、本発明者らは先行発明によって、参照されるいずれの刊行物にも先行する権利がないことを認めたものと解釈されるべきでない。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の膀胱内に配置されるように構成された近位保持構造体と患者の腎臓内に配置されるように構成された遠位保持構造体とを有する生分解性尿管内の形成方法であって、コイル、ニット、及びコーティングを含む生分解性有機ポリマー部品から完全にステントを構築し、次に前記ステントに放射線処理、熱処理及び化学処理から選択される処理を施して前記ステントの処理領域を形成し、前記処理領域は、宿主に移植された際に、前記ステントの処理を受けていない領域の分解と比較して早期分解をすことを含む方法
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって作製されたステント。
【外国語明細書】