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特開2022-7968含窒素6員環芳香族構造を有する化合物、それを用いた有機EL材料、電子輸送材料および有機EL素子
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  • 特開-含窒素6員環芳香族構造を有する化合物、それを用いた有機EL材料、電子輸送材料および有機EL素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007968
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】含窒素6員環芳香族構造を有する化合物、それを用いた有機EL材料、電子輸送材料および有機EL素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 409/14 20060101AFI20220105BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C07D409/14 CSP
H05B33/14 A
H05B33/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014885
(22)【出願日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2020042607
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021012229
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518053747
【氏名又は名称】株式会社フラスク
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】笹部 久宏
(72)【発明者】
【氏名】城戸 淳二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 朋洋
(72)【発明者】
【氏名】大和田 宰
(72)【発明者】
【氏名】河野 朝哉
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 優
【テーマコード(参考)】
3K107
4C063
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC24
3K107DD74
3K107DD78
4C063AA05
4C063BB06
4C063CC94
4C063DD12
4C063EE10
(57)【要約】
【課題】本発明は、高い電子輸送特性及び高い熱安定性を有する含窒素6員環芳香族構造を有する化合物、それよりなる電子輸送材料及びそれを用いた有機EL素子を提供することを課題とする。
【解決手段】
少なくとも3つの含窒素6員環芳香族基で置換された、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物、並びに前記含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する有機EL材料及び電子輸送材料。陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記一対の電極間に挟持された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とからなり、前記有機層のいずれかの層が含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する有機EL素子。本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は高い電子輸送特性及び高い熱安定性を有し、有機EL素子材料、特に電子輸送材料として好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの含窒素6員環芳香族基で置換された、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【請求項2】
下記一般式(1)で表される、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【化1】
(一般式(1)中、XおよびYは、Rで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。ただし、Yのうち少なくともひとつは窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数であり、Yによる6員環はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
少なくとも3つの置換または無置換のピリジン基で置換された、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【請求項4】
下記一般式(2)で表される、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【化2】
(一般式(2)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数であり、ピリジル基の置換位置はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
下記一般式(3)で表される、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【化3】
(一般式(3)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数である。)
【請求項6】
下記一般式(4)で表される、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【化4】
(一般式(4)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数である。)
【請求項7】
下記一般式(5)で表される、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【化5】
(一般式(5)中、含窒素6員環芳香族構造の水素原子の一部または全部が、核炭素原子数6~16のアリール基で置換されている。)
【請求項8】
一般式(6)で表される、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【化6】
(一般式(6)中、含窒素6員環芳香族構造の水素原子の一部または全部が、核炭素原子数10~18のアリール基によって置換されている。)
【請求項9】
一般式(6)で表される、含窒素6員環芳香族構造を有する化合物。
【化7】
(一般式(6)中、4つあるピリジン環のうち、ひとつだけが、その水素原子の一部または全部が、核炭素原子数6~18のアリール基によって置換されている。)
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する有機EL材料。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する有機EL材料用電子輸送材料。
【請求項12】
陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とからなり、
前記有機層のいずれかの層が、請求項1~9のいずれか一項に記載の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する有機EL素子。
【請求項13】
発光層および陰極の間にある有機層のいずれかの層が、請求項1~9のいずれか一項に記載の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する、請求項12に記載の有機EL素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子輸送性に優れた含窒素6員環芳香族化合物、およびそれを用いた有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、次世代フラットパネルディスプレイ(FPD)として期待され、携帯電話のディスプレイ、照明、およびTV(テレビ受像機)などに応用されており、さらに高機能化を目指した開発が継続されている。有機EL素子は、発光層と該発光層を挟んだ一対の対向電極とから構成される。そして、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入され、発光層において電子と正孔が再結合して励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出する。
【0003】
従来、有機EL素子は、無機発光ダイオードに比べると、駆動電圧が高く、発光効率も低く、駆動時に素子自体の発熱や環境温度により、材料のモルフォロジー変化が生じて輝度劣化に繋がることがあった。このため、低電圧化および高効率化を目指して研究が続いている。
【0004】
有機EL素子を実用化するにあたっては、まず素子の駆動電圧を下げる必要がある。駆動電圧の低減は電力効率の向上に繋がる。一方、有機ELの電極から有機層へのエネルギー障壁は高電圧化および低効率化に繋がることから、例えば、陰極から電子輸送材料へのエネルギー障壁を低減すれば、素子を大幅に低電圧化できると考えられる。このため、陰極から電子輸送材料へのエネルギー障壁を低減しうる新しい電子輸送材料の開発がされている。
【0005】
有機EL材料の駆動電圧を低下するため、例えば、ピリジン環を介して、トリフェニレニル基と電子求引性のターピリジル基とが結合した化合物(特許文献1)や、電子の移動が速く、優れた正孔阻止能力を有する化合物として、ピリジン環を介して3つのビピリジル基が結合した化合物およびピリミジン環を介して3つのビピリジル基が結合した化合物が報告されている(特許文献2)。また、導電性層と、該導電性層に隣接して設けられる中間層とを備えた透明電極が開示され、該中間層がビピリジン誘導体を含有すること、また、該透明電極を備えた有機EL素子が十分な導電性と光透過性とを兼ね備えることが開示されている(特許文献3)。低駆動電圧でかつ長寿命な発光素子として、特許文献4には、ピリジン環に3つのジフェニルピリジル基が結合した化合物を発光層のドーパントとして使用した発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/089165号
【特許文献2】国際公開第2009/107651号
【特許文献3】国際公開第2013/141097号
【特許文献4】特開2008-071993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記したような含窒素複素環化合物は、正孔を受けとると不安定になり、劣化しやすくなる。このため、含窒素複素環化合物を発光層に隣接する電子輸送層などに用いた場合、有機EL素子の耐久特性の低下を招くことがある。さらに、正孔阻止層が含窒素複素環化合物で形成され、発光層のドーパントがアミン化合物であると、発光層が正孔トラップ性となり、正孔阻止層を形成する含窒素複素環化合物と正孔との相互作用により、素子特性の低下に繋がる懸念がある。
そのため、本発明では、電圧特性および耐久特性が改善された有機EL素子用の電子輸送材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の事項からなる。
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、少なくとも3つの含窒素6員環芳香族基で置換されたものである。
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化1】
【0009】
一般式(1)中、XおよびYは、Rで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。ただし、Yのうち少なくともひとつは窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数であり、Yによる6員環はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0010】
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、少なくとも3つの置換または無置換のピリジン基で置換されたものである。
【0011】
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、下記一般式(2)で表される。
【化2】
【0012】
一般式(2)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数であり、ピリジル基の置換位置はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0013】
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、下記一般式(3)で表される。
【化3】
【0014】
一般式(3)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数である。
【0015】
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、下記一般式(4)で表される。
【化4】
【0016】
一般式(4)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数である。
【0017】
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、下記一般式(5)で表される。
【化5】
一般式(5)中、含窒素6員環芳香族構造の水素原子の一部または全部が、核炭素原子数6~16のアリール基で置換されている。
【0018】
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、一般式(6)で表される。
【化6】
【0019】
一般式(6)中、一つの実施形態では、含窒素6員環芳香族構造の水素原子の一部または全部が、核炭素原子数10~18のアリール基によって置換されている。また、もう一つの実施形態では、含窒素6員環芳香族構造の水素原子の一部または全部が、核炭素原子数6~18のアリール基によって置換されている。
【0020】
本発明の有機EL材料は、前記含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する。
本発明の有機EL材料用電子輸送材料は、前記含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する。
【0021】
本発明の有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とからなり、前記有機層のいずれかの層が前記含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する。
【0022】
本発明の有機EL素子は、発光層および陰極の間にある有機層のいずれかの層が、前記含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物は、高い電子輸送特性および高い熱安定性を有し、有機EL素子材料、特に電子輸送材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の有機EL素子の典型的な構成を表す。
図2図2は、本実施例の有機EL素子において、電子輸送材料をs3PyTPy、s3TPyまたはDPBとしたときの正孔輸送材料、発光材料、正孔阻止材料、電子注入材料のエネルギーダイヤグラムである。
図3図3は、本実施例の有機EL素子において、電子輸送材料をT3PyTRZまたはNBPhenとしたときの正孔輸送材料、発光材料、正孔阻止材料、電子注入材料のエネルギーダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の含窒素6員環芳香族構造を有する化合物(以下単に「含窒素6員環化合物」ともいう。)は、少なくとも3つの含窒素6員環芳香族基で置換されたものである。
本発明の含窒素6員環化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化7】
【0026】
一般式(1)中、XおよびYは、Rで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。ただし、Yのうち少なくともひとつは窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数であり、Yによる6員環はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0027】
本発明の含窒素6員環化合物は、下記一般式(2)で表される。
【化8】
【0028】
一般式(2)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数であり、ピリジル基の置換位置はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0029】
本発明の含窒素6員環化合物は、下記一般式(3)で表される。
【化9】
【0030】
一般式(3)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数である。
【0031】
本発明の含窒素6員環化合物は、下記一般式(4)で表される。
【化10】
【0032】
一般式(4)中、XはRで置換された炭素原子(-CR-)または窒素原子である。Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。-CR-が複数存在する場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環を形成してもよい。nは3~5の自然数である。
【0033】
本発明の含窒素6員環化合物は、下記一般式(5)で表される。すなわち、ピリジン環の2位、4位および6位にピリジル基が結合した、いわゆるクアトロピリジン骨格を有する誘導体である。
【化11】
一般式(5)中、含窒素6員環芳香族構造の水素原子の一部または全部が、核炭素原子数6~16のアリール基で置換されている。
【0034】
また、本発明の含窒素6員環化合物は、一般式(6)で表されるクアトロピリジン誘導体でもある。
【化12】
【0035】
一般式(6)中、一つの実施形態では、含窒素6員環芳香族構造の水素原子の一部または全部が、核炭素原子数10~18のアリール基によって置換されている。また、もう一つの実施形態では、4つあるピリジン環のうち、ひとつだけが、その水素原子の一部または全部が、核炭素原子数6~18のアリール基によって置換されている。
【0036】
Rは水素原子、重水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、核炭素原子数6~30のアリール基、核原子数5~30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、シアノ基、またはハロゲン元素である。
【0037】
炭素原子数1~6のアルキル基には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、およびn-ヘキシル基などが挙げられる。
【0038】
核炭素原子数6~30のアリール基は、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、9,9’-スピロビフルオレニル基、9,9’-ジフェニルフルオレニル基、ターフェニル基、トリフェニレニル基およびクオーターフェニル基などの単環アリール基または多環アリール基が用いられる。一般式(5)では、核炭素原子数6~16のアリール基が好ましい。また、一般式(6)では、核炭素原子数10~18のアリール基が好ましく、4つあるピリジン環のうち、ひとつだけがアリール基で置換される場合は、核炭素原子数6~18のアリール基が好ましい。これらのアリール基には、本発明の効果を損なわない範囲で、シアノ基、フッ素原子および重水素原子などが結合していてもよい。
【0039】
また、前記アリール基には、後述する核原子数5~30のヘテロアリール基が結合していてもよい。すなわち、前記ヘテロアリール基がアリール基を介してクアトロピリジン骨格に結合していてもよい。
【0040】
核原子数5~30のヘテロアリール基は、単環ヘテロアリール基でも多環ヘテロアリール基でもよく、例えば、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピペリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピペラジル基、トリアジニル基、2,4-ジフェニルトリアジニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、モルホリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、インドリル基、9-フェニルカルバゾリル基、カルバゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾイミダゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、プリニル基、プテリジル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、クマリル基、ベンゾチオフェニル基およびジベンゾチオフェニル基等が用いられる。これらのうち、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、ターピリジル基、ピリミジル基およびジベンゾチオフェニル基などが好ましい。これらのヘテロアリール基には、本発明の効果を損なわない範囲で、シアノ基、フッ素原子および重水素原子などが結合していてもよい。
【0041】
置換または無置換のアミノ基は、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基およびジエチルアミノ基などである。
【0042】
置換または無置換のシリル基は、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基およびt-ブチルジフェニルシリル基などである。
ハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素である。
【0043】
-CR-が複数存在する場合、隣り合うR同士で飽和または不飽和の環、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカンおよびシクロドデカンなどの飽和炭素環、ならびに、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンおよびシクロオクテンなどの不飽和炭素環を形成してもよい。
【0044】
前記一般式(1)~(4)で表される含窒素6員環化合物は、具体的には、下記構造式を有する化合物であることが好ましい。
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
前記構造式を有する化合物のうち、前記一般式(5)または(6)で表される骨格を含むものが好ましい。そして、前記一般式(5)および(6)で表されるクアトロピリジン誘導体は、下記構造式を有するs2PyTPy、s3PyTPy、s4PyTPy、T2PyTRZ、T3PyTRZ、T4PyTRZおよびss3PyTPyがより好ましい。
【化15】
【0047】
本発明の含窒素6員環化合物は、種々の公知の方法により製造することができる。一例にs3PyTPyの合成を示す。
【化16】
【0048】
三つ口フラスコに、TPY-33-Py-BrおよびDBTPhBを等モル添加し、ここに1.35Mリン酸三カリウム(K3PO4)水溶液および1,4-ジオキサンを加え、窒素バブリングした後、2mol%Pd2(dba)3および4mol%S-Phosを加え、窒素雰囲気下で加熱還流した。精製後、灰色固体の目的物を収率58%で得る。
【0049】
s2PyTPy、s3PyTPyおよびs4PyTPyは、電子供与性のジベンゾチオフェン骨格の存在により、LUMOがクアトロピリジン骨格に全体的に非局在化しており、隣接する分子への電荷の移動に有利な電子状態を形成している。また、LUMO準位は-2.39~-2.00eVと、汎用の電子輸送材料である2,2’,2”-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBi)のLUMO準位 -1.68eVよりも深い値を示し、高い電子注入性が期待できる。また、クアトロピリジン骨格が準平面構造を持つため、電子輸送に有利な分子間パッキング効果を示す。
【0050】
さらに、s3PyTPyではイオン化ポテンシャルが(Ip)-6.7eVであり、公知物質である1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2-イル)ベンゼン(DPB)やs3TPyに比べて、イオン化ポテンシャル(Ip)とエネルギーギャップ(Eg)との差が大きく、深い電子親和力(Ea)を有することも高い電子注入性を示唆している。
【0051】
本発明の含窒素6員環化合物はπ共役系を有する。π共役系分子に官能基を適宜付加して電子的性質を変えることで、エネルギーギャップ(Eg)を調節することができる。本発明では、一重項励起状態(ES1)と三重項励起状態(ET1)とのエネルギーギャップをできるだけ小さくするよう分子設計すべく、ジベンゾチオフェン骨格およびクアトロピリジン骨格をベンゼン環におけるメタ位に配置することにより、いったん三重項励起状態に移ったエネルギーを、再び一重項励起状態に戻すことが可能となり、効率の高い蛍光を取り出すことを可能となる。本発明の含窒素6員環化合物は、例えば、ピーク波長514nmのIr(ppy)3を用いた緑色リン光素子に好適に用いられる。
【0052】
さらに、s3PyTPyの融点(Tm)は247℃であり、分解温度(Td)が471℃であることから、前記含窒素6員環化合物は高い熱安定性を有することがわかる。
【0053】
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、陽極2および陰極9からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された、発光層5を含む少なくとも一層の有機層とからなり、前記有機層のいずれかの層が前記含窒素6員環芳香族構造を有する化合物を含有する。有機層は、発光層5、正孔阻止層6および電子輸送層7などである。
【0054】
本発明の有機EL素子は、含窒素6員環化合物を電子輸送層に用いた構造を有する。前記有機EL素子は、典型的には、基板1の上に、例えばITO等を陽極2として成膜し、正孔注入層3、正孔輸送層4,4’、発光層5、正孔阻止層6、電子輸送層7、電子注入層8および陰極9がこの順に積層した構造を有する。正孔輸送層4と発光層5との間にさらに電子阻止層を設けてもよい。つまり、前記多層構造において、いくつかの層を省略してもよいし、また、例えば、電子注入層8を電子輸送層7の機能も併せ持つ電子注入・輸送層としてもよい。図1は、本発明の実施例の形態であり、ガラス基板1上のITO透明電極2上に、正孔注入層3としてPTPD-1:PPBiを20nm、正孔輸送層4としてNPDを10nm、正孔輸送層4’として4DBTHPBを10nm、発光層5としてIr(ppy)3を12wt%ドープしたmCBPを15nm、正孔阻止層6としてDBT-TRZを10nm、電子注入・輸送層として、Liqを20wt%ドープした本発明の含窒素6員環化合物を40nm、電子注入層8としてLiqを1nm、陰極9としてAlを100nm積層した有機EL素子を表している。
【0055】
基板1には、透明かつ平滑であって、少なくとも70%以上の全光線透過率を有するものが用いられ、具体的には、フレキシブルな透明基板である、数μm厚のガラス基板や特殊な透明プラスチック等が用いられる。
【0056】
陽極2は、正孔を、正孔注入層3、正孔輸送層4,4’、および発光層5に注入する機能を有する電極である。陽極2の材料には、一般的に、仕事関数が4.5eV以上の金属酸化物、金属、合金および導電性材料などが用いられるが、発光した光を透過させる観点から、全光線透過率は通常80%以上であるものが好ましい。具体的には、ITO(酸化インジウムスズ)やZnO(酸化亜鉛)等の透明導電性セラミックス、導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)やポリアニリン等の透明導電性高分子、その他の透明導電性材料が用いられる。陽極2の膜厚は、通常5~500nm、好ましくは10~200nmである。
陽極2は、蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法、および塗布法などにより形成される。
【0057】
陰極9は、電子を、電子注入層8、電子輸送層7、および発光層5に注入する機能を有する電極である。陰極9の材料としては、一般的に、仕事関数がおおよそ4eV以下の金属や合金が適している。陰極9に使用される金属には、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、すず、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどが好ましい。合金を使用した陰極としては、これらの低仕事関数の金属とアルミニウムもしくは銀などの金属との合金からなる電極、または、これら低仕事関数の金属とアルミニウムもしくは銀などの金属とを積層した構造の電極などが挙げられる。積層構造の陰極には、フッ化リチウムのような無機塩も使用することができる。陰極9の膜厚は、通常10~200nmである。
陰極9は、蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法、および塗布法などにより形成される。
【0058】
正孔注入層3は発光効率の向上のために導入される層である。正孔注入層3は低電圧で電流を流すため、ピンホールなどが発生しない程度に膜厚を1~20nm程度と薄く、かつ、一定にすることが好ましい。このような正孔注入材料には、例えば、PTPD-1:PPBi、トリフェニルアミン含有ポリマー:(4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(KLHIP:PPBI)、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(TPAPEK)、ヘキサアザトリフェニレンカルボニトリル(HATCN)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、およびポリアニリンなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で成膜してもよいし、二種以上を混合して成膜した単層としてよいし、複数の材料をそれぞれ単独で成膜して複数層としてもよい。
【0059】
正孔輸送層4,4’は、陽極2と発光層5の間に設けられ、陽極2から正孔を効率良く発光層5に輸送するための層である。正孔輸送材料には、イオン化ポテンシャルが小さいもの、すなわち、HOMOから電子が励起されやすく、正孔が生成されやすいものが用いられ、具体的には、ヘキサフェニルベンゼン誘導体(4DBTHPB)、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-アルト-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)、4,4’-シクロヘキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン](TAPC)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPD)、4,4’,4’’-トリ-9-カルバゾリルトリフェニルアミン(TCTA)および4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン)などが挙げられる。これらのうち、立体的に嵩高く、高い三重項エネルギーを併せ持つだけでなく、発光材料との相互作用もしにくい点で、4DBTHPBが好ましい。これらの化合物は、単独で成膜してもよいし、二種以上を混合して成膜した単層としてよいし、複数の材料をそれぞれ単独で成膜して複数層としてもよい。
【0060】
発光層5には、有機EL素子で用いられる他の発光層と同様に、発光材料と共にホスト化合物を併用することが好ましい。
発光材料には、例えば、ビス(2,3-ジフェニルキノキザゾリン)イリジウム(ジピバロイルメタン)((DPQ)2Ir(dpm))、トリス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、ビス[2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-C2,N](ピコリナト)イリジウム(III)(FIrpic)、トリス[1-フェニルイソキノリン-C2,N]イリジウム(III)(Ir(piq)3)、およびビス(3-(トリフルオロメチル)-5-(2-ピリジル)-ピラゾレート)プラチナム(II)(Pt(fppz)2)などのリン光発光材料が挙げられる。
【0061】
ホスト化合物には、例えば、9,9’-ジフェニル-9H,9’H-3,3’-ジカルバゾール(BCzPh)、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド(DPEPO)、3,6-ビス(ジフェニルホルホリル)-9-フェニルカルバゾール(PO9)、4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル(CBP)、3,3’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル(mCBP)、トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾチオフェン(PPT)、アダマンタン・アントラセン(Ad-Ant)、ルブレン、および2,2’-ビ(9,10-ジフェニルアントラセン)(TPBA)、および1,4-ジ(1,10-フェナントロリン-2-イル)ベンゼン(DPB)などが挙げられる。
【0062】
正孔阻止層6は、電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層7に到達することを阻止することで、発光層5中で電子および正孔が再結合する確率を向上させる役割を有する。正孔阻止材料には、例えば、2-(3’-(ジベンゾ[b,d]チオフェン―4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(DBT-TRZ)、バソクプロイン(BCP)等のフェナントロリン誘導体、およびアルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(BAlq)等のキノリノール誘導体の金属錯体、各種の希土類錯体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびベンゾオキサゾール誘導体等が用いられる。これらの材料は電子輸送層7の材料を兼ねてもよい。これらの化合物は、単独で成膜してもよいし、二種以上を混合して成膜した単層としてもよいし、複数の材料をそれぞれ単独で成膜して複数層としてもよい。
【0063】
電子輸送層7は、陰極9と発光層5の間に設けられ、陰極から電子を効率良く発光層に輸送するための層である。電子輸送材料には、本発明の含窒素6員環化合物が用いられる。その他、電子輸送材料には、電子親和力が大きいもの、すなわち、LUMOのエネルギーが小さく、励起電子が存在しやすくする材料が挙げられる。例えば、3,3”,5,5’-テトラ(3-ピリジル)-1,1’;3’,1”-ターフェニル(B3PyPB)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル)-2-メチルピリミジン(B3PyMPM)、2-(4-ビフェニリル)-5-(p-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(tBu-PBD)、1,3-ビス[5-(4-t-ブチルフェニル)-2-[1,3,4]オキサジアゾリル]ベンゼン(OXD-7)、3-(ビフェニル-4-イル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBi)等がある。これらの化合物は、単独で成膜してもよいし、二種以上を混合して単層または複数層を成膜してもよい。
【0064】
電子注入層8は陰極に接し、電子を輸送する役割を有する層である。電子注入材料には、例えば、フッ化リチウム(LiF)、8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム(Liq)およびリチウム2-(2’,2’’-ビピリジン-6’-イル)フェノラート(Libpp)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で成膜してもよいし、二種以上を混合して成膜した単層としてもよいし、複数の材料をそれぞれ単独で成膜して複数層としてもよい。
【0065】
基板1上に形成される、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層7、および電子注入層8などの薄膜は、真空蒸着法または塗布法で積層される。真空蒸着法には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、および分子積層法等が挙げられる。真空蒸着法を用いる場合、通常10-3Pa以下に減圧した雰囲気で、蒸着物を加熱して行う。
【0066】
塗布法を用いる場合、各層の構成材料を例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、および水等に溶解させて公知の塗布法により各層を形成する。塗布法には、例えば、バーコート法、キャピラリーコート法、スリットコート法、インクジェット法、スプレーコート法、ノズルコート法、および印刷法が挙げられる。各層の形成にすべて同じ塗布法を用いてもよいし、インクの種類に応じて適宜最適な塗布法を個別に用いてもよい。
【0067】
陽極2および陰極9の間の各有機層の膜厚は、構成材料の抵抗値や電荷移動度によって異なるが、通常1~100nm、好ましくは1~50nmである。
なお、本発明の有機EL素子は、枚葉方式によって各層を形成する以外に、例えば、ロール・ツー・ロール法によって形成してもよい。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0069】
[含窒素6員環化合物の合成]
[実施例1]s3PyTPyの合成
【化17】
【0070】
200mL三つ口フラスコに、TPY-33-Py-Br 2.74g(7.05mmol)、DBTPhB3.27g(8.46mmol)、水45mL、リン酸三カリウム13.2g、および1,4-ジオキサン130mLを加え、1時間窒素バブリングをした。4mol% S-Phos0.116g、2mol% Pd2(dba)3 0.129gを加え、窒素雰囲気下、104℃で21時間加熱還流させた。析出物をろ別し、メタノールで超音波分散洗浄を行った。その後ろ過を行い、ろ物を減圧乾燥し、灰色固体3.28gを得た。その後、得られた灰色固体に、クロロホルム220mLを加え超音波により溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル500cc、展開溶媒 クロロホルム:メタノール=100:0、100:1、100:3、100:10、v/v)により精製し、溶媒を留去し、白色粉末s3PyTPy(2.3g、58%)を得た。
【0071】
s3PyTPyをさらに昇華精製して、1H-NMR(日本電子(株)製;JNM-EX270FT-NMR)の測定および元素分析(Perkin Elmer 2400II CHNS/O アナライザー、CHNモード)を行った。結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CHLOROFORM-D)δ9.45(d,J=1.4Hz,2H),8.68-8.62(m,3H),8.55-8.50(m,4H),8.28-8.20(m,3H),8.03-7.94(m,3H),7.84(d,J=7.8Hz,1H),7.74(dd,J=16.9,7.8Hz,2H),7.65-7.62(m,2H),7.54-7.41(m,2H),7.35-7.30(m,2H)
【0072】
Anal. Calcd for C38244S:C,80.26;H,4.25;N,9.85;S,5.64%.Found:C,79.99;H,4.17;N,9.77;S,5.56%.
【0073】
示差走査熱量測定(DSC)により、ガラス相転移点(Tg)および融点(Tm)を測定し、熱重量分析(TGA)により、分解温度(Td)を測定した。s3PyTPyのTgは104℃、Tmは247℃、Tdは471℃であった。
【0074】
[実施例2]s2PyTPy
【化18】
【0075】
[実施例3]s4PyTPyの合成
【化19】
50mL三つ口フラスコに、TPY-44-Py-Br 0.78g(2.00mmol)、DBTBPhin 0.93g(2,4mmol)、水13mL、リン酸三カリウム3.74g、1,4-ジオキサン45mLを加え、1時間窒素バブリングをした。4mol%S-Phos 0.033g、2mol% Pd2(dba)3 0.037gを加え、窒素雰囲気下、104℃で36時間加熱還流させた。放冷後、析出物をろ別し、水で洗浄した。その後、ろ物にメタノール分散洗浄を行い、減圧乾燥し、黄白色固体を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/CH3OH=100:0、100:1、100:3、100:5、v/v)より精製後、白色粉末 s4PyTPy(0.9g、79%)を得た。その後、トルエン:エタノールにて再結晶法で精製した。純度99.5%以上を示した。
1H-NMR(400MHz,CHLOROFORM-D) δ8.80-8.90(1H),8.61-8.70(6H),8.17-8.31(3H),8.07-8.14(4H),7.93-8.06(3H),7.80-7.87(1H),7.69-7.79(2H),7.59-7.68(2H),7.50-7.59(1H),7.39-7.50(1H)
【0076】
s4PyTPyのガラス相転移点(Tg)は観察されず、融点(Tm)は287℃、分解温度(Td)は479℃であった。
【0077】
[実施例4]ss3PyTPyの合成
(i)ステップ1
【化20】
200mL三つ口フラスコにジムロートコンデンサーを付け、3,5-ジクロロフェニルボロン酸(1.91g、10mmol)、6-ブロモ-2-ピリジンカルボキシアルデヒド(1.86g、10mmol)、トルエン(40mL)、エタノール(20mL)、2M炭酸カリウム水溶液(20mL)を順次加え、強攪拌下、19時間加熱還流を行った。エタノールを濃縮後、残りの反応溶液をトルエン、飽和食塩水を用いて分液し、硫酸マグネシウムにて脱水後、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)より精製後、白色固体0.9g(36%)を得た。
【0078】
(ii)ステップ2
【化21】
200mL三角フラスコに合成したステップ1の合成物(0.75g、3mmol)、特級エタノール(30mL)、3-アセチルピリジン(1.0mL、9mmol)、水酸化カリウム(0.5g)、28%アンモニア水(30mL)を順次加え、大気下、常温(24℃、湿度42%)で17時間強攪拌を行った。反応液を水、エタノールで洗浄しながらろ過を行った。その後、得られたろ物をメタノールにて超音波分散洗浄を行い、ろ過し、得られた白色固体を減圧乾燥した。続いて、得られた白色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム:メタノール混合溶媒=100:1、100:3、100:5、v/v)により精製し、白色固体を得た。その後、トルエン:エタノールにて再結晶法で精製を行った(1.72g、最終収率:26.9%)。純度は99.5%以上を示した。
【0079】
(iii)ステップ3
【化22】
100mL 三つ口フラスコにジムロートコンデンサーを付け、ステップ2の合成物(0.91g、2.0mmol)、ジベンゾチオフェン-4-ボロン酸(1.82g、4mmol)、1,4-ジオキサン(45mL)、1.35Mリン酸三カリウム水溶液(10mL)を順次加え、強攪拌下、19時間加熱還流を行った。放冷後、吸引ろ過を行い、ろ物をメタノールにて超音波洗浄し、ろ過し、得られた白色固体を減圧乾燥した。続いて、得られた白色固体(1.5g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム:メタノール混合溶媒=100:1、100:3、100:5、v/v)により精製し、白色固体を得た。トルエンおよびエタノールの混合溶媒にて再結晶での精製を複数回行った。さらにクロロホルム:メタノール混合溶媒(100:1、v/v)により、精製し、白色固体0.51gを得た(収率34%)。
ss3PyTPyの分子量は750、ガラス相転移点(Tg)は150℃、融点(Tm)は308℃、分解温度(Td)は545℃であった。
【0080】
s3PyTPy、s4PyTPyおよびss3PyTPyの光学特性の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0081】
[比較例1]
下記構造式を有する化合物を用いた。
【化23】
【0082】
[比較例2]
下記構造式を有する化合物を用いた。
【化24】
【0083】
[比較例3]Ph-QYY-4Py
下記構造式を有するクアトロピリジン誘導体を用いた。
【化25】
【0084】
[比較例4]TrP-QYY-3Py-1
下記構造式を有するクアトロピリジン誘導体を用いた。
【化26】
【0085】
[比較例5]TrP-QYY-3Py-2
下記構造式を有するクアトロピリジン誘導体を用いた。
【化27】
【0086】
[量子化学計算]
実施例1~3のs3PyTPy、s2PyTPyおよびs4PyTPyの密度汎関数法(DFT)(RB3LYP/6-311+G(d,p)//B3LYP/6-31G(d)レベル)および時間依存密度汎関数法(TD-DFT)(RB3LYP/6-31G(d)//RB3LYP/6-31G(d)レベル)による計算を行った。
【0087】
s2PyTPy、s3PyTPyおよびs4PyTPyの量子化学計算の結果を表2に示す。
【表2】
【0088】
[光学特性評価]
有機半導体デバイスへの応用を指向し、固体状態での光学特性を評価した。
真空蒸着法によりs3PyTPyの薄膜を作製し、光電子収量分光法(PYS)(住友重機械工業(株)製イオン化ポテンシャル測定装置)によりイオン化ポテンシャル(Ip)を求めた。
紫外・可視(UV-vis)吸収スペクトル((株)島津製作所製 UV-3150)を測定し、規格化したスペクトルのピークの立ち上がり波長からエネルギーギャップ(Eg)を算出した。
イオン化ポテンシャル(Ip)とエネルギーギャップ(Eg)の差から電子親和力(Ea)を概算した。
s3PyTPyのIpは-6.7eV、Egは3.4eV、Eは-3.3eVであった。
【0089】
[含窒素6員環化合物を用いた有機EL素子]
<素子の作製>
電子輸送材料として、実施例1で合成したs3PyTPyに、8-ヒドロキシキノラトリチウム(Liq)50mol%をドープした材料を用いて有機EL素子を作製した。
比較例1~5の化合物にLiqを50mol%ドープした電子輸送材料を用いて、有機EL素子を作製した。
前記有機EL素子における各層は、ポリマーバッファー層 PDPD-1:PPBI 層は塗布、その他の層は蒸着にて形成した。
【0090】
素子構造を以下に示す(図1)。ETMは電子輸送材料を表す。
[ITO/PTPD-1:テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートテトラキス(PPBI)(20nm)/N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(NPD)(10nm)/4DBTZHPB(10nm)/mCBP:12wt%Ir(ppy)3(15nm)/DBT-TRZ(10nm)/ETM:20wt% Liq(40nm)/Liq(1nm)/Al(100nm)]
ETM:s3PyTPy、s3TPy、DPB、Ph-QYY-4Py、TrP-QYY-3Py-1、またはTrP-QYY-3Py-2
【0091】
素子に使用した材料を以下に示す。
【化28】
【0092】
<素子の評価>
実施例1のs3PyTPy、比較例1のs3TPy、比較例2のDPB、比較例3のPh-QYY-4Ph、比較例4のTrP-QYY-3Py-1および比較例5のTrP-QYY-3Py-2のELスペクトル((株)浜松ホトニクス製 PHOTONIC MULTI-CHANNEL ANALYZER PMA-1)を測定した。素子評価の結果を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
[含窒素6員環化合物の合成]
[実施例5]T3PyTRZの合成
(i)TPY33PyBrの合成
【化29】
500mLの三角フラスコに6-ブロモ-2-ピリジンカルボキシアルデヒド(5.0g、26.9mmoL)、3-アセチルピリジン(5.85mL)、アンモニア水(136mL)、エタノール(201mL)および水酸化カリウム(1.5g)を順次加え、攪拌させた。反応開始後は黄色透明溶液であったが、攪拌開始後すぐに透明な赤色になり、のちに濁った黄色になった。攪拌開始25時間後にTLCにて、原料の消失と、Rf値0.25に目的物のスポットを確認し、反応を止めた。攪拌後、析出物をろ別し、エタノールで洗浄した。得られた黄白色固体をメタノール100mLで分散洗浄し、白色固体TPY33PyBr(2.21g、21%)を得た。
【0095】
次にトルエン再結晶を用いて精製を行った。300mLのナスフラスコにTPY33PyBr(0.45g)およびトルエン(10mL)を入れ、オイルバスにて、約100~110℃で攪拌しながら加熱した。その後、トルエンを5mLずつ段階的に注ぎ25mL入れた。最終的にトルエン35mLがナスフラスコに入った状態で飽和状態になり、溶液の色が白色から透明に変わった。60時間後、ろ過を行い、ろ物(0.28g、63%)を得た。
【0096】
(ii)T3PyTRZの合成
【化30】
100mLの四つ口フラスコにTPY33PyBr(0.78g、2.0mmoL)、TRZ-Bpin(1.04g、2.4mmoL)、1,4-ジオキサン(43mL)、リン酸三カリウム(3.74g)および水(13mL)を順次加え、1時間N2バブリングさせた。バブリング後、S-Phos(0.033g)およびPd2(dba)3(0.037 g)をさらに加え、104℃で還流攪拌させた。初めは透明な黄色であったが、攪拌開始後すぐに濁った黄色になり、のちに濁ったオレンジ色になった。18時間後、Rf値0.22に新しいスポットを確認し、反応を止めた。攪拌後、析出物をろ別し、水で洗浄した。メタノール100mLで分散洗浄し白色固体T3PyTRZを得た。
【0097】
次にシリカカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行った。展開溶媒にはクロロホルムを用い、メタノールで徐々に極性を上げた。白色固体T3PyTRZ(1.19g、97%)を得た。
トルエン:エタノール再結晶を用いて精製を行った。500mLのナスフラスコにT3PyTRZ(0.90g)およびトルエン:エタノール[3:1](400mL)を入れ、オイルバスにて約100~110℃で攪拌しながら加熱し、T3PyTRZを完全に溶かした。その後、ディーンスターク管を取り付け、還流の原理を用いて、溶媒量を徐々に減らした。溶媒量が約半分(200mL)の時に、溶液中に目的物が析出してきたため、加熱攪拌を停止させた。20時間後、ろ過を行い、減圧乾燥し、白色固体(698mg、77.6%)を回収した。
1H-NMRの測定および純度測定(UPLC)を行った。結果を以下に示す。
【0098】
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ9.51-9.49(m,3H),8.92(d,J=8.2Hz,1H),8.81(d,J=7.8Hz,4H),8.71-8.70(m,2H),8.59-8.52(m,5H),8.11-8.06(m,2H),8.02-7.99(m,1H),7.80(t,J=7.8Hz,1H),7.61(t,J=7.3Hz,2H),7.57-7.52(m,4H),7.42(dd,J=8.0,4.8Hz,2H)ppm
【0099】
UPLC(保持時間(min);ピーク面積%) (0.63min;0.02%)、(0.71min;0.09%)、(0.83min;99.56%)、(1.03min;0.33%)
【0100】
[実施例6]T4PyTRZの合成
(i)TPY44PyBrの合成
【化31】
500mLの三角フラスコに6-ブロモ-2-ピリジンカルボキシアルデヒド(5.0g、26.9mmoL)、4-アセチルピリジン(5.85mL)、アンモニア水(136mL)、エタノール(201mL)および水酸化カリウム(1.5g)を順次加え、攪拌させた。反応開始後は黄色透明溶液であったが、攪拌開始後すぐに透明な赤色になり、のちに濁った黄色になった。攪拌開始25時間後にTLCにて、原料の消失、Rf値0.25に目的物のスポットを確認し、反応を止めた。攪拌後、析出物をろ別し、エタノールで洗浄した。得られた黄白色固体をメタノール100mLで分散洗浄し白色固体TPY44PyBr(2.89g、27%)を得た。
【0101】
次にトルエン再結晶を用いて精製を行った。200mLのナスフラスコにTPY44PyBr(3.68g)およびトルエン(30mL)を入れ、オイルバスにて約100~110℃で攪拌しながら加熱した。その後、トルエンを5mLずつ段階的に注ぎ110mL入れた。最終的にトルエン140mLがナスフラスコに入った状態で飽和状態になり、溶液の色が白色から透明に変わった。20時間後、ろ過を行い、トルエンを含んだろ物(8.26g)得た。同様の方法にてもう一度トルエン再結晶を行った。60時間後、ろ過を行い、ろ物(1.95g、53%)得た。
【0102】
(ii)T4PyTRZの合成
【化32】
三つ口フラスコ300mLにTPY44PyBr(1.56g、4.0mmoL)、TRZ-Bpin(2.08g、4.8mmoL)、1,4-ジオキサン(86mL)、リン酸三カリウム(7.48g)および水(26mL)を順次加え、1時間N2バブリングさせた。バブリング後、S-Phos(0.066g)、Pd2(dba)3(0.074g)をさらに加え、104℃で還流攪拌させた。初めは透明な黄色であったが、攪拌開始後すぐに濁った黄色になり、のちに濁ったオレンジ色になった。攪拌開始18時間後にRf値0.26に新しいスポットを確認し、反応を止めた。攪拌後、析出物をろ別し、水で洗浄した。得られた黄白色固体をメタノール150mLで分散洗浄し、白色固体を得た。収率は2.42gで98%であった。
次にシリカカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行った。展開溶媒にはクロロホルムを用い、メタノールで徐々に極性を上げた。白色固体T4PyTRZ(1.16g、96%)を得た。
【0103】
[含窒素6員環化合物を用いた有機EL素子]
<素子の作製>
ホール輸送材料にNPD、ホスト材料にmCBP、燐光ドーパントにIr(ppy)3を用いて素子を作製した。比較材料としてNBPhenを用いた。大型真空蒸着装置を用いて成膜し、評価した。
【0104】
素子構造を以下に示す(図1)。ETMは電子輸送材料を表す。
[ITO/PTPD-1:PPBi(20nm)/NPD(10nm)/4DBFHPB (10nm)/mCBP:12wt% Ir(ppy)3(15nm)/DBF-TRZ(10nm)/ETM:20wt% Liq (40nm)/Liq(1nm)/Al]
ETM:T3PYTRZまたはNBPhen
【0105】
素子に使用したT3PyTRZ、NBPhenおよびDBF-TRZの構造式を示す。
【化33】
【0106】
<素子の評価>
T3PyTRZおよびNBPhenを用いて作製した素子の評価結果を表4に示す。
【表4】
【0107】
デバイスを作製した結果、T3PyTRZはNBphenと同等の駆動電圧(1cd/m2)を示した。これは、深いLUMO準位を有するために陰極からの電子注入性が高くなったことに起因すると考察される。また、実用的なスマートフォンや大型TVの輝度である100cd/m2および1000cd/m2時においても同等な駆動電圧が確認された。電力効率については、1.1~1.3倍の高効率化を達成した。外部量子効率は25%近くに達しており、ロールオフを低減できていることから、キャリアバランスを崩すことなく、高効率化が実現できると考察される。
【符号の説明】
【0108】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4,4’ 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
図1
図2
図3